携帯端末
【課題】携帯端末の補強フレームの撓みを減少させ、かつねじり剛性を高めることにより、落下時の表示ディスプレイ等の割れ、破壊に対する強度向上を図る。
【解決手段】表示ディスプレイと、この表示ディスプレイを背面側から補強する補強フレーム10とを備えた携帯電話機において、補強フレーム10に、矩形板状の平板部11と、この平板部11の外周に垂直に立設された対向する二対の縦壁部12,13とを設け、4つの角部14において、それぞれ互いに垂直に交わる一対の縦壁部12,13を互いに隙間15を開けて立設し、各縦壁部12,13の端部から隙間15に向けて延長折曲部16,17を延ばし、それぞれ平板部11の厚さ方向に異なる高さに配置して他方側の縦壁部12,13を覆うように垂直に折り曲げる。
【解決手段】表示ディスプレイと、この表示ディスプレイを背面側から補強する補強フレーム10とを備えた携帯電話機において、補強フレーム10に、矩形板状の平板部11と、この平板部11の外周に垂直に立設された対向する二対の縦壁部12,13とを設け、4つの角部14において、それぞれ互いに垂直に交わる一対の縦壁部12,13を互いに隙間15を開けて立設し、各縦壁部12,13の端部から隙間15に向けて延長折曲部16,17を延ばし、それぞれ平板部11の厚さ方向に異なる高さに配置して他方側の縦壁部12,13を覆うように垂直に折り曲げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示ディスプレイ及び該表示ディスプレイを背面側から補強する補強フレームを備えた携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、表示ディスプレイと、この表示ディスプレイを背面側から補強する補強フレームとを備えた携帯端末は知られている。例えば、特許文献1の携帯端末では、第1板金の表示装置収容凹部に表示装置が嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−109760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯電話機に代表される携帯端末では、表示ディスプレイを覆う筐体は、薄く、かつ強度が高いことが要求され、その補強フレームは、ステンレス鋼板やアルミ合金板が主流となっている。ステンレス鋼板やアルミ合金板は平板のままで厚さを薄くすると強度が不足する。このため、外周に縦壁部を立ち上げることで強度の向上を図っている。
【0005】
しかしながら、ステンレス鋼板やアルミ合金板を絞り加工して縦壁部を設けると、平板部や折曲部分が変形するという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、携帯端末の補強フレームの撓みを減少させ、かつねじり剛性を高めることにより、落下時の表示ディスプレイ等の割れ、破壊に対する強度向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、補強フレームの縦壁部の角部に延長折曲部を設けた。
【0008】
具体的には、第1の発明では、表示ディスプレイ及び該表示ディスプレイを背面側から補強する補強フレームを備えた携帯端末を前提とする。
【0009】
そして、上記補強フレームは、
矩形板状の平板部と、
該平板部の外周に垂直に立設された対向する二対の縦壁部とを備え、
4つの角部において、それぞれ互いに垂直に交わる一対の上記縦壁部は、互いに隙間を開けて立設され、各縦壁部の端部から上記隙間に向けて延びると共に、それぞれ上記平板部の厚さ方向に異なる高さに配置され、他方側の縦壁部を覆うように垂直に折り曲げられる延長折曲部を有する。
【0010】
上記の構成によると、各角部において、一対の縦壁部が互いに隙間を空けて立設されているので、隙間なく絞り加工する場合のように縦壁部の折り曲げ加工において角部に撓みが生じることはない。そして、各縦壁部の端部から平板部の厚さ方向に異なる高さに隙間に向けて延長折曲部を延ばし、この延長折曲部を他方側の縦壁部を覆うように垂直に折り曲げることにより、一方の縦壁部からそれぞれ延びる延長折曲部が他方の縦壁部が外側へ倒れようとするのを防ぐので、捩り剛性が向上する。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記二対の縦壁部は、上記平板部の長手方向に沿う一対の左右縦壁部と、該平板部の幅方向に沿う一対の上下縦壁部よりなり、
上記延長折曲部は、上記左右縦壁部から延びる左右延長折曲部と、上記上下縦壁部から延びる上下延長折曲部とからなり、
上記上下延長折曲部は、上記左右延長折曲部よりも上記平板部から厚さ方向で高い位置にある。
【0012】
すなわち、携帯端末の場合、補強フレームの長手方向中心としてねじられる頻度が、幅方向を中心としてねじられる頻度よりも多いが、上記の構成によると、長手方向を中心にねじられたとき、左右縦壁部が左右外側へ広がろうとしても、上下延長折曲部が、その広がりを防止するので、捩り剛性が向上する。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記補強フレームは、上記携帯端末の筐体を形成する樹脂と共にインサート成形されている。
【0014】
上記の構成によると、延長折曲部が樹脂で覆われて外観がよくなり、延長折曲部に他の部品が引っ掛かることもない。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、補強フレームの各角部において、互いに垂直に交わる一対の縦壁部を互いに隙間を開けて立設し、各縦壁部の端部からこの隙間に向けて延長折曲部を延ばし、それぞれ平板部の厚さ方向に異なる高さに配置し、他方側の縦壁部を覆うように垂直に折り曲げるようにしたことにより、携帯端末の補強フレームの撓みを減少させ、かつねじり剛性を高めることにより、落下時の表示ディスプレイ等の割れ、破壊に対する強度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】補強フレームの1つの角部を拡大して示す斜視図である。
【図2】閉じた状態のスライド式携帯電話機を示す斜視図である。
【図3】開いた状態のスライド式携帯電話機を示す斜視図である。
【図4】第1の筐体の一部を分解して示す斜視図である。
【図5】補強フレームを示す斜視図である。
【図6】第1の筐体の製造工程の概略を示すフローチャートである。
【図7】外形プレス加工後の補強フレームの角部を拡大して示す正面図である。
【図8】絞り加工した比較例の補強フレームを示す図1相当図である。
【図9】比較試験を行う様子を示す斜視図である。
【図10】比較試験の結果を現すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図2及び図3は、本発明の実施形態の携帯端末としての携帯電話機1を示し、この携帯電話機1は、液晶、有機ELなどの表示ディスプレイ2を表面側に有する第1の筐体3と、この第1の筐体3をスライド自在に支持し、表面側に操作部4を有する第2の筐体5とを備えている。
【0019】
図4に示すように、第1の筐体3の表面側に凹陥されたディスプレイ用凹部3aに表示ディスプレイ2が嵌め込まれるようになっている。ディスプレイ用凹部3aには、表示ディスプレイ2を背面側から補強する補強フレーム10が露出している。
【0020】
そして、図5に示すように、補強フレーム10は、矩形板状の平板部11と、この平板部11の外周に垂直に立設された対向する二対の縦壁部12,13とを備えている。具体的には、補強フレーム10は、平板部11の長手方向に延びる一対の左右縦壁部12と幅方向に延びる一対の上下縦壁部13とを有する。平板部11は、インサート成形時の位置決めのためや軽量のために円形貫通孔11aが複数設けられている。また、平板部11には、表示ディスプレイ2から延びるフレキシブル基板2aを通過させるための矩形貫通孔11bも設けられている。
【0021】
図1に示すように、補強フレームの4つの角部14において、それぞれ互いに垂直に交わる一対の縦壁部12,13は、厚さ方向に直線状に延びる隙間15を形成するように立設されている。左右縦壁部12の上下端部から隙間15に(上下外側に)向けて左右延長折曲部16が延び、上下縦壁部13の左右端部から隙間15に(左右外側に)向けて上下延長折曲部17が延びている。左右延長折曲部16が平板部11の厚さ方向の下側(携帯電話機1の裏側)に、上下延長折曲部17が厚さ方向上側となるように互いに異なる高さに配置されている。そして、左右延長折曲部16の先端は、上下縦壁部13を上下外側から覆うように垂直に折り曲げられ、上下延長折曲部17の先端は、左右縦壁部12を左右外側から覆うように垂直に折り曲げられている。
【0022】
そして、第1の筐体3は、図6に示す手順で製造される。
【0023】
まず、ステップS01において、例えば角部14が図7に示すような形状となるように、SUS304等のステンレス鋼板から補強フレーム10となる部分を切り出す。
【0024】
次いで、ステップS02において、箱曲げ加工を行い、二対の縦壁部12,13を立設させる。このとき、一対の縦壁部12,13間に隙間15が形成される。
【0025】
次いで、ステップS03において、各角部14において延長折曲部16,17の折り曲げ加工を行う。
【0026】
最後に、このようにして成形された補強フレーム10を円形貫通孔11aを利用して射出成形型に位置決めし、インサート成形を行う。これにより、補強フレーム10がインサート成形された第1の筐体3が完成する。延長折曲部16,17は、樹脂で完全に覆われているので、外観がよくなり、延長折曲部16,17に他の部品が引っ掛かることもない。
【0027】
次いで、補強フレーム10のねじり剛性を調べるためにねじり解析による強度解析を行った。実施例として上記補強フレーム10を用い、比較例として図8に示す絞り加工で成形した補強フレーム110を用いた。比較例では、角部114において、一対の縦壁部112,113が隙間なく連続している。
【0028】
解析条件は、補強フレーム10の材料をSUS304とし、ヤング率が145674MPa、ポアソン比が0.3とし、図9に示す治具50に補強フレーム10又は110を嵌めて長手方向中心軸51を中心に徐々に大きなねじりトルクを加えていき、ねじれ角αの移り変わりを比較調査した。治具50の角部50aは、切り欠いて角部14,114への影響をなくしている。その解析結果を図10に示す。
【0029】
図10に示すように、特にねじりトルクが30N・cmを超えると、比較例の補強フレーム110のねじり角α2と実施例の補強フレーム10のねじり角α1との差が大きく広がっている(α2>α1)。このグラフを見てもわかるように、従来の絞り加工の補強フレーム110よりも、本実施形態の補強フレーム10の方がねじり剛性が高いことがわかった。長手方向中心軸51を中心にねじられたとき、左右縦壁部12が左右外側へ広がろうとしても、上下延長折曲部17が、その広がりを防止するので、捩り剛性が向上していることがわかる。
【0030】
このように、本実施形態の補強フレーム10では、各角部14において、左右縦壁部12と上下縦壁部13とが互いに隙間15を空けて立設されているので、隙間15なしに絞り加工する比較例のように左右縦壁部12及び上下縦壁部13の折り曲げ加工において角部14に撓みが生じることはない。そして、左右縦壁部12及び上下縦壁部13の端部からそれぞれ平板部11の厚さ方向に異なる高さに隙間15に向けてそれぞれ左右延長折曲部16、上下延長折曲部17を延ばし、左右延長折曲部16が上下縦壁部13を覆い、左右延長折曲部16が上下縦壁部13を覆うように垂直に折り曲げることにより、左右縦壁部12から延びる左右延長折曲部16が上下縦壁部13が外側へ倒れようとするのを防ぎ、上下縦壁部13から延びる上下延長折曲部17が左右縦壁部12が外側へ倒れようとするのを防ぐので、捩り剛性が向上する。
【0031】
したがって、本実施形態にかかる携帯電話機1によると、補強フレーム10の撓みを減少させると共に、捩り剛性を高めることにより、落下時に補強フレーム10に嵌め込んだ表示ディスプレイ2等の割れ、破壊に対する強度向上を図ることができる。
【0032】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0033】
すなわち、上記実施形態では、携帯端末は、スライド式の携帯電話機1としたが、折畳み式や第1の筐体と第2の筐体とが一体の携帯電話機としてもよく、また、表示ディスプレイを有するものであれば、PHS(Personal Handy-phone System )、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン、パソコン、モバイルツール、電子辞書、電卓、ゲーム機等であってもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、補強フレーム10は、ステンレス製としたが、折り曲げ加工可能な金属であればよく、アルミニウム合金等でもよい。
【0035】
さらに、上記実施形態では、左右延長折曲部16が平板部11の厚さ方向の下側に、上下延長折曲部17が厚さ方向上側となるように配置したが、上下反対としてもよい。
【0036】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 携帯電話機(携帯端末)
2 表示ディスプレイ
3 第1の筐体
10 補強フレーム
11 平板部
12 左右縦壁部
13 上下縦壁部
14 角部
15 隙間
16 左右延長折曲部
17 上下延長折曲部
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示ディスプレイ及び該表示ディスプレイを背面側から補強する補強フレームを備えた携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、表示ディスプレイと、この表示ディスプレイを背面側から補強する補強フレームとを備えた携帯端末は知られている。例えば、特許文献1の携帯端末では、第1板金の表示装置収容凹部に表示装置が嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−109760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯電話機に代表される携帯端末では、表示ディスプレイを覆う筐体は、薄く、かつ強度が高いことが要求され、その補強フレームは、ステンレス鋼板やアルミ合金板が主流となっている。ステンレス鋼板やアルミ合金板は平板のままで厚さを薄くすると強度が不足する。このため、外周に縦壁部を立ち上げることで強度の向上を図っている。
【0005】
しかしながら、ステンレス鋼板やアルミ合金板を絞り加工して縦壁部を設けると、平板部や折曲部分が変形するという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、携帯端末の補強フレームの撓みを減少させ、かつねじり剛性を高めることにより、落下時の表示ディスプレイ等の割れ、破壊に対する強度向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、補強フレームの縦壁部の角部に延長折曲部を設けた。
【0008】
具体的には、第1の発明では、表示ディスプレイ及び該表示ディスプレイを背面側から補強する補強フレームを備えた携帯端末を前提とする。
【0009】
そして、上記補強フレームは、
矩形板状の平板部と、
該平板部の外周に垂直に立設された対向する二対の縦壁部とを備え、
4つの角部において、それぞれ互いに垂直に交わる一対の上記縦壁部は、互いに隙間を開けて立設され、各縦壁部の端部から上記隙間に向けて延びると共に、それぞれ上記平板部の厚さ方向に異なる高さに配置され、他方側の縦壁部を覆うように垂直に折り曲げられる延長折曲部を有する。
【0010】
上記の構成によると、各角部において、一対の縦壁部が互いに隙間を空けて立設されているので、隙間なく絞り加工する場合のように縦壁部の折り曲げ加工において角部に撓みが生じることはない。そして、各縦壁部の端部から平板部の厚さ方向に異なる高さに隙間に向けて延長折曲部を延ばし、この延長折曲部を他方側の縦壁部を覆うように垂直に折り曲げることにより、一方の縦壁部からそれぞれ延びる延長折曲部が他方の縦壁部が外側へ倒れようとするのを防ぐので、捩り剛性が向上する。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記二対の縦壁部は、上記平板部の長手方向に沿う一対の左右縦壁部と、該平板部の幅方向に沿う一対の上下縦壁部よりなり、
上記延長折曲部は、上記左右縦壁部から延びる左右延長折曲部と、上記上下縦壁部から延びる上下延長折曲部とからなり、
上記上下延長折曲部は、上記左右延長折曲部よりも上記平板部から厚さ方向で高い位置にある。
【0012】
すなわち、携帯端末の場合、補強フレームの長手方向中心としてねじられる頻度が、幅方向を中心としてねじられる頻度よりも多いが、上記の構成によると、長手方向を中心にねじられたとき、左右縦壁部が左右外側へ広がろうとしても、上下延長折曲部が、その広がりを防止するので、捩り剛性が向上する。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記補強フレームは、上記携帯端末の筐体を形成する樹脂と共にインサート成形されている。
【0014】
上記の構成によると、延長折曲部が樹脂で覆われて外観がよくなり、延長折曲部に他の部品が引っ掛かることもない。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、補強フレームの各角部において、互いに垂直に交わる一対の縦壁部を互いに隙間を開けて立設し、各縦壁部の端部からこの隙間に向けて延長折曲部を延ばし、それぞれ平板部の厚さ方向に異なる高さに配置し、他方側の縦壁部を覆うように垂直に折り曲げるようにしたことにより、携帯端末の補強フレームの撓みを減少させ、かつねじり剛性を高めることにより、落下時の表示ディスプレイ等の割れ、破壊に対する強度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】補強フレームの1つの角部を拡大して示す斜視図である。
【図2】閉じた状態のスライド式携帯電話機を示す斜視図である。
【図3】開いた状態のスライド式携帯電話機を示す斜視図である。
【図4】第1の筐体の一部を分解して示す斜視図である。
【図5】補強フレームを示す斜視図である。
【図6】第1の筐体の製造工程の概略を示すフローチャートである。
【図7】外形プレス加工後の補強フレームの角部を拡大して示す正面図である。
【図8】絞り加工した比較例の補強フレームを示す図1相当図である。
【図9】比較試験を行う様子を示す斜視図である。
【図10】比較試験の結果を現すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図2及び図3は、本発明の実施形態の携帯端末としての携帯電話機1を示し、この携帯電話機1は、液晶、有機ELなどの表示ディスプレイ2を表面側に有する第1の筐体3と、この第1の筐体3をスライド自在に支持し、表面側に操作部4を有する第2の筐体5とを備えている。
【0019】
図4に示すように、第1の筐体3の表面側に凹陥されたディスプレイ用凹部3aに表示ディスプレイ2が嵌め込まれるようになっている。ディスプレイ用凹部3aには、表示ディスプレイ2を背面側から補強する補強フレーム10が露出している。
【0020】
そして、図5に示すように、補強フレーム10は、矩形板状の平板部11と、この平板部11の外周に垂直に立設された対向する二対の縦壁部12,13とを備えている。具体的には、補強フレーム10は、平板部11の長手方向に延びる一対の左右縦壁部12と幅方向に延びる一対の上下縦壁部13とを有する。平板部11は、インサート成形時の位置決めのためや軽量のために円形貫通孔11aが複数設けられている。また、平板部11には、表示ディスプレイ2から延びるフレキシブル基板2aを通過させるための矩形貫通孔11bも設けられている。
【0021】
図1に示すように、補強フレームの4つの角部14において、それぞれ互いに垂直に交わる一対の縦壁部12,13は、厚さ方向に直線状に延びる隙間15を形成するように立設されている。左右縦壁部12の上下端部から隙間15に(上下外側に)向けて左右延長折曲部16が延び、上下縦壁部13の左右端部から隙間15に(左右外側に)向けて上下延長折曲部17が延びている。左右延長折曲部16が平板部11の厚さ方向の下側(携帯電話機1の裏側)に、上下延長折曲部17が厚さ方向上側となるように互いに異なる高さに配置されている。そして、左右延長折曲部16の先端は、上下縦壁部13を上下外側から覆うように垂直に折り曲げられ、上下延長折曲部17の先端は、左右縦壁部12を左右外側から覆うように垂直に折り曲げられている。
【0022】
そして、第1の筐体3は、図6に示す手順で製造される。
【0023】
まず、ステップS01において、例えば角部14が図7に示すような形状となるように、SUS304等のステンレス鋼板から補強フレーム10となる部分を切り出す。
【0024】
次いで、ステップS02において、箱曲げ加工を行い、二対の縦壁部12,13を立設させる。このとき、一対の縦壁部12,13間に隙間15が形成される。
【0025】
次いで、ステップS03において、各角部14において延長折曲部16,17の折り曲げ加工を行う。
【0026】
最後に、このようにして成形された補強フレーム10を円形貫通孔11aを利用して射出成形型に位置決めし、インサート成形を行う。これにより、補強フレーム10がインサート成形された第1の筐体3が完成する。延長折曲部16,17は、樹脂で完全に覆われているので、外観がよくなり、延長折曲部16,17に他の部品が引っ掛かることもない。
【0027】
次いで、補強フレーム10のねじり剛性を調べるためにねじり解析による強度解析を行った。実施例として上記補強フレーム10を用い、比較例として図8に示す絞り加工で成形した補強フレーム110を用いた。比較例では、角部114において、一対の縦壁部112,113が隙間なく連続している。
【0028】
解析条件は、補強フレーム10の材料をSUS304とし、ヤング率が145674MPa、ポアソン比が0.3とし、図9に示す治具50に補強フレーム10又は110を嵌めて長手方向中心軸51を中心に徐々に大きなねじりトルクを加えていき、ねじれ角αの移り変わりを比較調査した。治具50の角部50aは、切り欠いて角部14,114への影響をなくしている。その解析結果を図10に示す。
【0029】
図10に示すように、特にねじりトルクが30N・cmを超えると、比較例の補強フレーム110のねじり角α2と実施例の補強フレーム10のねじり角α1との差が大きく広がっている(α2>α1)。このグラフを見てもわかるように、従来の絞り加工の補強フレーム110よりも、本実施形態の補強フレーム10の方がねじり剛性が高いことがわかった。長手方向中心軸51を中心にねじられたとき、左右縦壁部12が左右外側へ広がろうとしても、上下延長折曲部17が、その広がりを防止するので、捩り剛性が向上していることがわかる。
【0030】
このように、本実施形態の補強フレーム10では、各角部14において、左右縦壁部12と上下縦壁部13とが互いに隙間15を空けて立設されているので、隙間15なしに絞り加工する比較例のように左右縦壁部12及び上下縦壁部13の折り曲げ加工において角部14に撓みが生じることはない。そして、左右縦壁部12及び上下縦壁部13の端部からそれぞれ平板部11の厚さ方向に異なる高さに隙間15に向けてそれぞれ左右延長折曲部16、上下延長折曲部17を延ばし、左右延長折曲部16が上下縦壁部13を覆い、左右延長折曲部16が上下縦壁部13を覆うように垂直に折り曲げることにより、左右縦壁部12から延びる左右延長折曲部16が上下縦壁部13が外側へ倒れようとするのを防ぎ、上下縦壁部13から延びる上下延長折曲部17が左右縦壁部12が外側へ倒れようとするのを防ぐので、捩り剛性が向上する。
【0031】
したがって、本実施形態にかかる携帯電話機1によると、補強フレーム10の撓みを減少させると共に、捩り剛性を高めることにより、落下時に補強フレーム10に嵌め込んだ表示ディスプレイ2等の割れ、破壊に対する強度向上を図ることができる。
【0032】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0033】
すなわち、上記実施形態では、携帯端末は、スライド式の携帯電話機1としたが、折畳み式や第1の筐体と第2の筐体とが一体の携帯電話機としてもよく、また、表示ディスプレイを有するものであれば、PHS(Personal Handy-phone System )、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン、パソコン、モバイルツール、電子辞書、電卓、ゲーム機等であってもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、補強フレーム10は、ステンレス製としたが、折り曲げ加工可能な金属であればよく、アルミニウム合金等でもよい。
【0035】
さらに、上記実施形態では、左右延長折曲部16が平板部11の厚さ方向の下側に、上下延長折曲部17が厚さ方向上側となるように配置したが、上下反対としてもよい。
【0036】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 携帯電話機(携帯端末)
2 表示ディスプレイ
3 第1の筐体
10 補強フレーム
11 平板部
12 左右縦壁部
13 上下縦壁部
14 角部
15 隙間
16 左右延長折曲部
17 上下延長折曲部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示ディスプレイ及び該表示ディスプレイを背面側から補強する補強フレームを備えた携帯端末において、
上記補強フレームは、
矩形板状の平板部と、
該平板部の外周に垂直に立設された対向する二対の縦壁部とを備え、
4つの角部において、それぞれ互いに垂直に交わる一対の上記縦壁部は、互いに隙間を開けて立設され、各縦壁部の端部から上記隙間に向けて延びると共に、それぞれ上記平板部の厚さ方向に異なる高さに配置され、他方側の縦壁部を覆うように垂直に折り曲げられる延長折曲部を有する
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末において、
上記二対の縦壁部は、上記平板部の長手方向に沿う一対の左右縦壁部と、該平板部の幅方向に沿う一対の上下縦壁部よりなり、
上記延長折曲部は、上記左右縦壁部から延びる左右延長折曲部と、上記上下縦壁部から延びる上下延長折曲部とからなり、
上記上下延長折曲部は、上記左右延長折曲部よりも上記平板部から厚さ方向で高い位置にある
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯端末において、
上記補強フレームは、上記携帯端末の筐体を形成する樹脂と共にインサート成形されている
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項1】
表示ディスプレイ及び該表示ディスプレイを背面側から補強する補強フレームを備えた携帯端末において、
上記補強フレームは、
矩形板状の平板部と、
該平板部の外周に垂直に立設された対向する二対の縦壁部とを備え、
4つの角部において、それぞれ互いに垂直に交わる一対の上記縦壁部は、互いに隙間を開けて立設され、各縦壁部の端部から上記隙間に向けて延びると共に、それぞれ上記平板部の厚さ方向に異なる高さに配置され、他方側の縦壁部を覆うように垂直に折り曲げられる延長折曲部を有する
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末において、
上記二対の縦壁部は、上記平板部の長手方向に沿う一対の左右縦壁部と、該平板部の幅方向に沿う一対の上下縦壁部よりなり、
上記延長折曲部は、上記左右縦壁部から延びる左右延長折曲部と、上記上下縦壁部から延びる上下延長折曲部とからなり、
上記上下延長折曲部は、上記左右延長折曲部よりも上記平板部から厚さ方向で高い位置にある
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯端末において、
上記補強フレームは、上記携帯端末の筐体を形成する樹脂と共にインサート成形されている
ことを特徴とする携帯端末。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−31114(P2013−31114A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167334(P2011−167334)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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