説明

携帯電子機器及びその制御方法

【課題】ユーザの指示動作に忠実に従いつつ、ユーザの不注意や不慣れによって生じ得るセンサ素子の誤接触を回避して、ユーザに煩わしさを感じさせることのない快適な操作性を与える携帯電子機器及びその方法を提供する。
【解決手段】制御部110は、各種情報をキー入力するキー操作部KEY及び接触を検知するセンサ部120からの信号に基づいて各種処理を実行させ、キー操作部KEYによる入力処理が行われる期間のセンサ部120による検知を無効にするとともに、センサ部120による検知中にキー操作部KEYが操作される期間のセンサ部120による検知を無効にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種情報をキー入力するキー入力部と、接触を検知する検知部と、検知部及びキー入力部からの信号に基づいて各種処理を実行させる制御部とを具える携帯電子機器及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電子機器の操作入力部として様々なインターフェイスや構成が開発されており、例えば、携帯電子機器に回転ダイヤル式入力デバイスを設け、表示部上に表示させたカーソルを回転ダイヤル式入力デバイスの回転量に応じて移動させる技術がある(例えば、特許文献1)。しかしながら、このような従来技術では、物理的・機械的な回転を伴う「回転ダイヤル」を用いているため、機械的な磨耗などによって誤動作や故障などが発生し易く、操作入力部のメンテナンスが必要であったり、耐用期間が短いという不都合がある。
【0003】
かかる不都合を解消するために、物理的・機械的な回転を伴わない操作入力部としてセンサ素子を利用する技術が提案されている(例えば、特許文献2,3)。この提案技術は、複数のセンサ素子を円環状に配して、個々のセンサ素子からの接触検出を監視し、連続的な接触検出を検出した場合は、その接触検出箇所の移動に応じて、表示位置の移動指示が生じたと判定するものである。
【特許文献1】特開2003-280792号公報
【特許文献2】特開2005-522797号公報
【特許文献3】特開2004-311196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小型で筐体外面の実装面積が狭い携帯電子機器に、操作性とデザイン性を損なうことなくセンサ素子と表示部とを当該筐体外面に搭載させることが所望されている。その場合、センサ素子も必然的に小型なものとなり、ユーザの意図する位置のセンサ素子を正しく触ることができず、表示部に表示されたカーソルや操作対象領域が思わぬ方向へ移動してしまう。例えば、センサ素子上で移動を指示するユーザの指が少しでも行き過ぎて意図しない指示動作となるセンサ素子にタッチしてしまった場合などには、ユーザの意図するものとは異なる表示部の動作となる。このことも、ユーザにストレスを感じさせる要因となり得る。特に、ユーザが当該携帯電子機器を使い慣れないうちは顕著である。従って、ユーザの指示動作に忠実に従いつつ、ユーザの不注意や不慣れによって生じ得るセンサ素子の誤接触を回避・無効とするような技法が求められている。
【0005】
本発明の目的は、ユーザの指示動作には適切に対応しながら、ユーザが意図せずに行いうる操作(すなわち、誤った指示動作)を回避・無効とし、ユーザに煩わしさを感じさせることのない快適な操作性を与える携帯電子機器及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による請求項1に係る携帯電子機器は、
各種情報をキー入力するキー入力部と、
接触を検知する検知部と、
該検知部及び前記キー入力部からの信号に基づいて各種処理を実行させる制御部とを具える携帯電子機器であって、
前記制御部は、前記キー入力部による入力処理が行われる期間中の前記検知部による検知を無効にすることを特徴とする。
【0007】
本発明による請求項2に係る携帯電子機器は、
各種情報をキー入力するキー入力部と、
接触を検知する検知部と、
該検知部及び前記キー入力部からの信号に基づいて各種処理を実行させる制御部とを具える携帯電子機器であって、
前記制御部は、前記検知部による検知中における、前記キー入力部が操作される期間の前記検知部による検知を無効にすることを特徴とする。
【0008】
本発明による請求項3に係る携帯電子機器は、
前記制御部は、
前記キー入力部が操作される以前の前記検知部の検知結果に基づく処理を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明による請求項4に係る携帯電子機器は、
前記検知部による検知が行われている情報又は前記検知部による検知が行われていない情報を格納する格納部を更に具え、
該格納部が、前記検知部による検知が行われている情報を格納する場合、前記制御部は、前記キー入力部が操作されると前記検知部による検知を無効にすることを特徴とする
【0010】
本発明による請求項5に係る携帯電子機器は、
前記キー入力部が前記検知部に隣接することを特徴とする。
【0011】
本発明による請求項6に係る携帯電子機器の制御方法は、
各種情報をキー入力するキー入力部と、
接触を検知する検知部とを具える携帯電子機器の制御方法であって、
前記キー入力部の操作期間中における前記検知部による接触の検知を無効にすることを特徴とする。
【0012】
本発明による請求項7に係る携帯電子機器の制御方法は、
各種情報をキー入力するキー入力部と、
接触を検知する検知部とを具える携帯電子機器の制御方法であって、
前記検知部による接触の検知中に前記キー入力部からのキー入力操作が行われると、当該キー入力操作期間における前記接触の検知は無効にすることを特徴とする。
【0013】
本発明による請求項8に係る携帯電子機器の制御方法は、
前記キー入力操作が行われる以前の前記検知部における検知結果を有効として、当該検知結果に基づく処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユーザの指示動作に忠実に従いつつ、ユーザの不注意や不慣れによって生じ得るセンサ素子の誤接触を回避して、ユーザに煩わしさを感じさせることのない快適な操作性を与える携帯電子機器及びその制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明による携帯電子機器及びその制御方法の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施例の携帯電話端末の概要を示すブロック図である。図に示した携帯電話端末100は、制御部110、センサ部120、表示部130、記憶部(フラッシュメモリなど)140、情報処理部150、電話機能部160、キー操作部KEY、スピーカSP及び図示しないCDMA通信網に接続して通信を行う通信部COMを具える。さらに、センサ部120は複数のセンサ素子(例えば、その検知部を機器筐体の外面に設けてあり、指などの物体の接触・近接を検出する接触センサ)を含んだセンサ素子群を、用途に応じてn個、すなわち第1のセンサ素子群G1、第2のセンサ素子群G2及び第nのセンサ素子群G3を含み、記憶部140は保存領域142、外部データ保存領域144から構成されている。制御部110及び情報処理部150は、CPUなどの演算手段及びソフトウェアモジュールなどから構成させることが好適である。なお、後に説明するシリアルインターフェース部S1、シリアルインターフェース部S1を通じて制御部110に接続されるRFIDモジュールRFID、赤外線通信部、カメラ220、ライト230、マイクロホンMIC、ラジオモジュールRM、電源PS、電源コントローラPSCOM等が、制御部110に接続されるが、ここでは簡略化のために省略する。
【0017】
図1のブロック図における各ブロックの機能を簡単に説明する。制御部110は、センサ部120によりユーザの指などの物体の接触を検出し、記憶部140の保存領域142に検出した情報を格納し、情報処理機能部150により格納した情報の処理を制御する。そして、処理結果に応じた情報を表示部130に表示させる。さらに制御部110は、通常の通話機能のための電話機能部160、キー操作部KEY、及びスピーカSPを制御する。なお、表示部130は、サブ表示部ELDと、図示しないメイン表示部(携帯電話端末100が閉状態で隠れるとともに開状態で露出する位置に設けられた表示部)とを有する。
【0018】
図2は、センサ素子を筐体に実装した本実施例の携帯電話端末100の斜視図である。図2(a)は携帯電話端末100の外観を示す斜視図である。携帯電話端末100は、タッチセンサ部210(概観上、センサ部130すなわちセンサ素子G1,G2,・・・を覆う。)、カメラ220、及びライト230を具える。携帯電話端末100は、図2に示すような閉状態の他に、ヒンジ部を回動・スライドさせて開状態を形成することができ、タッチセンサ部210は、閉状態においても操作可能な位置に設けられている。図2(b)は、本実施例によるタッチセンサの動作の説明のために、センサ素子とサブ表示部ELD周辺のみの配置を表示した本実施例の携帯電話端末100の斜視図である。図のように、センサ素子R1〜R4及びL1〜L4が、サブ表示部ELDの周囲に沿って並べて配置されている。センサ素子R1〜R4、L1〜L4は、それぞれ第1のセンサ素子群、第2のセンサ素子群を構成している。第1のセンサ素子群と第2のセンサ素子群は、離間部SP1、SP2を隔てて並べられている。本実施例ではサブ表示部ELDに有機ELディスプレイを用いてあるが、例えば液晶表示ディスプレイ等を用いることもできる。
【0019】
図2の携帯電話端末100において、サブ表示部ELDは携帯電話端末100の用途に応じた情報を表示する。例えば、携帯電話端末100を音楽プレーヤーとして用いる場合、サブ表示部ELDには演奏できる曲目が表示される。曲名及びアーティスト名の組で1つの項目、即ち、「選択候補項目」となる。ユーザは、操作入力部としてタッチセンサ部210を操作してセンサ素子R1〜R4,L1〜L4の静電容量を変化させて、サブ表示部ELDに表示された項目や操作対象領域を移動し、曲目の選択を行う。このとき、図2のようにサブ表示部ELDの周囲にセンサ素子を並べる構成とすれば、小型な携帯電子機器の外部筐体における実装部分を大きく占有せずに済み、かつ、ユーザはサブ表示部ELDの表示を見ながらセンサ素子を操作することができる。
【0020】
図3は、本実施例の携帯電話端末100に実装した表示部周囲の構成を示す分解斜視図である。わかり易くするため、各部材を、構成する順に分離して示している。図に示すように、有機EL素子からなる表示部ELDの周囲に沿ってドーナツ状のパネルPNLが配されている。パネルPNLは、下部に設けるセンサ素子の感度に影響を与えないように十分に薄くすることが好適である。パネルPNLの下部には、人体の指の接触を検知できる静電容量型の8個のセンサ素子L1−L4、R1−R4をほぼ環状に配置してある。左側の4つのセンサ素子L1−L4で第1のセンサ素子群、右側の4つのセンサ素子R1−R4で第2のセンサ素子群をそれぞれ構成している。各センサ素子群内の隣接するセンサ素子の間には、隣接するセンサ素子同士で接触検出機能に干渉しないように、クリアランス(隙間)を設けて配置してある。なお、干渉しないタイプのセンサ素子を用いる場合にはこのクリアランスは不要である。第1のセンサ素子群の一端に位置するセンサ素子L4と、第2のセンサ素子群の一端に位置するセンサ素子R1との間には、前記クリアランスより大きいクリアランス(例えば、2倍以上の長さ)である離間部SP1を設ける。第1のセンサ素子群の他端に位置するセンサ素子L1と、第2のセンサ素子群の他端に位置するセンサ素子R4との間にも、離間部SP1と同様に離間部SP2を設ける。このような離間部SP1、SP2によって、第1のセンサ素子群と第2のセンサ素子群とが別個に機能させる際に、互いに干渉するのを防止することができる。
【0021】
タクトスイッチSW1及びSW2が、センサ素子の下部であって、センサL2とL3との間のクリアランス、及びR2とR3との間のクリアランスにそれぞれこのタクトスイッチの中心が位置するように配置されている。このタクトスイッチを押下げることによって、表示部に表示された項目の選択が実行される。選択が実行されると、例えば、サブ表示部ELD又はセンサ素子の後ろ側に設置されたバックライト(図示せず)が点灯し、ユーザに選択が実行されたこと、すなわちタクトスイッチが押下げられたことを示す。さらに、音声通話又はメールの着信等のユーザに通知すべき事象が発生した場合にも、このサブ表示部ELDの点灯表示がなされる。
【0022】
図4は、上述した本実施例の詳細な機能ブロック図である。図に示すように、図4に示す各種ソフトウェアは、記憶部140に記憶されるプログラムに基づき、記憶部140上にワークエリアを設けた上で、制御部110が実行することにより動作する。携帯電話端末の諸機能は、ソフトウェアブロックとハードウェアブロックとに分かれる。ソフトウェアブロックは、フラグ記憶部FLGを持つベースアプリBA、サブ表示部表示アプリAP1、ロックセキュリティアプリAP2、その他アプリAP3、及びラジオアプリAP4から構成される。ソフトウェアブロックは、さらに、赤外線通信アプリAPIR及びRFIDアプリAPRFも含む。これらの各種アプリ(アプリケーションソフトウェア)がハードウェアブロックの各種ハードウェアを制御するときに、赤外線通信ドライバIRD、RFIDドライバRFD、オーディオドライバAUD、ラジオドライバRD、及びプロトコルPRをドライバとして使用する。例えば、オーディオドライバAUD、ラジオドライバRD、及びプロトコルPRは、それぞれ、マイクロホンMIC1、スピーカSP、通信部COM、及びラジオモジュールRMを制御する。ソフトウェアブロックは、さらに、ハードウェアの操作状態を監視・検出するキースキャンポートドライバKSPも含み、タッチセンサドライバ関連検出、キー検出、折り畳み式やスライド式などの携帯電話端末の開閉を検出する開閉検出、イヤホン着脱検出などを行う。
【0023】
ハードウェアブロックは、ダイヤルキーを含む各種ボタンなどを含むキー操作部KEY、ヒンジ部の動作状況などに基づき開閉を検出する開閉検出デバイスOCD、機器本体付属のマイクロホンMIC、イヤホンEAP、スピーカSP、通信部COM、ラジオモジュールRM、シリアルインターフェース部SI、及び切替制御部SWCONを具える。切替制御部SWCONは、ソフトウェアブロックの該当ブロックからの指示に従って、赤外線通信部IR、RFIDモジュール(無線識別タグ)RFID、タッチセンサモジュールTSM(センサ部120と、発振回路などのセンサ部120を駆動する上で必要な部品一式をモジュール化したもの)のうちのいずれか1つを選択して当該信号をシリアルインターフェース部SIが拾い上げるように選択対象ハードウェア(IR、RFID、TSM)を切り替える。電源PSは、電源コントローラPSCONを介して選択対象ハードウェア(IR、RFID、TSM)に電力を供給する。なお、小型で筐体外面の実装面積が狭い携帯電話端末100においては、キー操作部KEYがタッチセンサモジュールTSMに隣接するのが好ましい。
【0024】
図5は、本実施例の携帯電話端末100のタッチセンサ機能のより詳細な構成を示すブロック図である。図に示した携帯電話端末100は、タッチセンサベースドライバブロックTDB、タッチセンサベースアプリブロックTSBA、デバイス層DL、割込ハンドラIH、キューQUE、OSタイマーCLK、各種アプリAP1〜AP3を具える。ここでタッチセンサベースアプリブロックTSBAは、ベースアプリBA及びタッチセンサドライバ上位アプリケーションプログラムインターフェースAPIを具え、タッチセンサドライバブロックTDBは、タッチセンサドライバTSD及び結果通知部NTFを具える。また、デバイス層DLは、切替制御部SWCON、切替部SW、シリアルインターフェース部SI、赤外線通信部IR、RFID及びタッチセンサモジュールTSMを具え、割込ハンドラIHは、シリアル割込み監視部SIMON及び確認部CNFを具える。
【0025】
次に、各ブロックの機能を図を参照に説明する。タッチセンサベースアプリブロックTSBAにおいて、ベースアプリBAと、タッチセンサドライバ上位アプリケーションプログラムインターフェースAPIとの間では、タッチセンサを起動するか否かのやり取りが行なわれる。ベースアプリBAは、サブ表示部用のアプリケーションであるサブ表示部表示アプリAP1、セキュリティ保護用に携帯電話端末100にロックをかけるアプリケーションであるロックセキュリティアプリAP2、その他のアプリケーションAP3のベースとなるアプリケーションであり、ベースアプリBAに前記各アプリからタッチセンサの起動が要求された場合に、タッチセンサドライバ上位のアプリケーションプログラムインターフェースAPIにタッチセンサの起動を要求する。なおサブ表示部とは、各図で示すサブ表示部ELDであって、本実施例における携帯電話端末100においてセンサ素子により囲まれた表示部のことを指す。
【0026】
起動の要求を受け、タッチセンサ上位アプリケーションプログラムインターフェースAPIは、ベースアプリBA内のアプリケーションの起動を管理するブロック(図示せず)に、タッチセンサの起動が可能か否かの確認を行う。すなわち、キー操作部KEYによる入力処理、アプリケーションの選択が実行されていることを示すサブ表示部ELDの点灯、サブ表示部ELDの消灯、又はFMラジオその他の携帯電話端末に付属するアプリケーション等の、予めタッチセンサの起動が不可能と設定されたアプリケーションの起動を示すフラグの有無を確認する。その結果、タッチセンサの起動が可能と判断された場合、タッチセンサ上位アプリケーションプログラムインターフェースAPIはタッチセンサドライバTSDにタッチセンサモジュールの起動を要求する。すなわち、実質的には電源コントローラPSCOMを通じた電源PSからタッチセンサモジュールTSMへの電源供給を開始する。それに対して、タッチセンサの起動が不可能と判断された場合、タッチセンサ上位アプリケーションプログラムインターフェースAPIはタッチセンサドライバTSDにタッチセンサモジュールの起動を要求せず、タッチセンサモジュールTSMによる検知、すなわち、後に説明するタッチセンサのセンシング結果を無効にする。これによって、タッチセンサの誤作動が生じることがなくなり、タッチセンサのセンシング結果が有効になった後の出力データを次の接触の移動方向の起点として設定するので、それ以降のデータを全て正常に処理することができる。
【0027】
起動が要求されると、タッチセンサドライバTSDはデバイス層DL内のシリアルインターフェース部SIに要求して、シリアルインターフェース部SIにおけるタッチセンサドライバTSDとのポートを開くように制御する。
【0028】
その後、タッチセンサドライバTSDは、タッチセンサのセンシング結果の情報を有する信号(以降、接触信号と記す)を、タッチセンサモジュールTSMが有する内部クロックによる20msの周期で、シリアルインターフェース部SIに出力されるように制御する。
【0029】
前記接触信号は、既に説明した各センサ素子R1〜R4及びL1〜L4の8つのセンサ素子それぞれに対応した8ビット信号で出力されている。すなわち、各センサ素子が接触を検知すると、この接触を検知したセンサ素子に対応するビットに、接触検知を表す「フラグ:1」が立っている信号であって、これらビット列により接触信号が形成される。すなわち、接触信号には、「どのセンサ素子」が「接触/非接触のいずれか」を示す情報が含まれる。
【0030】
割込ハンドラIHにおけるシリアル割込み監視部SIMONは、シリアルインターフェース部SIに出力された接触信号を取り出す。ここで確認部CNFが、シリアルインターフェース部SIにおいて予め設定された条件に従い、取り出した接触信号のTrue/Falseの確認を行い、True(真)な信号のデータのみをキューQUEに入れる(信号のTrue/Falseの種別については後に説明する。)。また、シリアル割込み監視部SIMONは、タクトスイッチの押下の発生などのタッチセンサ起動中のシリアルインターフェース部SIの他の割込み事象の監視も行う。
【0031】
なお、監視部SIMONは、検出した接触が最初の接触であった場合には「プレス」を意味する信号を接触信号の前にキューQUEに入れる(キューイングする)。その後、オペレーションシステムの有するOSタイマーCLKによるクロック45ms周期で接触信号の更新を行い、所定回数接触を検出しなかった場合には「リリース」を意味する信号をキューQUEに入れる。このことにより、接触開始からリリースまでのセンサ素子間での接触検出の移動を監視することができるようになる。なお、「最初の接触」とは、キューQUEにデータのない状態、又は、直近の入力データが「リリース」である場合に「フラグ:1」を有する信号が発生する事象を指す。これらの処理により、タッチセンサドライバTSDは、「プレス」から「リリース」の区間のセンサ素子の検出状態を知ることができる。
【0032】
同時に、監視部SIMONは、タッチセンサから出力される接触信号がFalseとなる条件を満たす信号であった場合に、「リリース」を意味する信号を擬似的に生成してキューQUEに入れる。ここでFalse(偽)となる条件としては、「タッチセンサ起動中にキー押下が発生した場合」、「非連続な2つのセンサ素子で接触を検出した場合」、「タッチセンサ起動中に割込みが生じた場合(例えば、メール着信等の通知でサブ表示部ELDの点灯/消灯状態が変更された場合)」、又は「複数のセンサ素子をまたぐ接触を検出した場合」などが設定される。これによって、タッチセンサの誤作動が生じることがなくなり、タッチセンサのセンシング結果が有効になった後の出力データを次の接触の移動方向の起点として設定するので、それ以降のデータを全て正常に処理することができる。なお、本実施例の携帯電話端末では、サブ表示部ELDが消灯の場合はリリースを意味する信号をキューQUEに積んではいない。この場合はタッチセンサの電源OFFとしている。また、本実施例の携帯電話端末では、三つのタッチセンサのセンサ素子の同時接触については有効としている。さらに、本実施例の携帯電話端末では、後述するように、キー押下中においては、シリアルインターフェース部SIから出力されたタッチセンサモジュールTSMの出力を、リリースを意味する信号に修正する。すなわち、例えば、タッチセンサによる検知中にキーが押下された場合にシリアルインターフェース部SIから出力されたタッチセンサモジュールTSMの出力を、リリースを意味する信号に修正したり、キー押下中にタッチセンサによる検知がなされた場合に、シリアルインターフェース部SIから出力されたタッチセンサモジュールTSMの出力を、リリースを意味する信号に修正する。
【0033】
すなわち、監視部SIMONは、例えば、タッチセンサ起動中にキー押下が発生した場合には、リリースを意味する信号をキューQUEに入れる。
【0034】
タッチセンサドライバTSDは、45ms周期でキューQUEから接触信号を読み出し、読み出した接触信号によって、接触を検知した素子を判定する。タッチセンサドライバTSDは、キューQUEから順次に読み出した接触信号により判定した接触の変化、及び、検知した素子との位置関係を考慮して、「接触スタートの素子」、「接触の移動方向(右/左回り)の検出」、及び「プレスからリリースまでに移動した素子の数(すなわち移動距離)」の判定を行う。タッチセンサドライバTSDは、判定された結果を結果通知部NTFに書き込むとともに、ベースアプリBAに結果を更新するように通知する。
【0035】
接触の移動方向及び移動距離の判定は、隣接するセンサ素子の検出及び各センサ素子の検出の組合せによって行うが、これには種々の手法(判定ルール)を適用することができる。例えば、ある1つのセンサ素子(例えばR2)から隣接するセンサ素子(この例の場合、R2及びR3)へと接触が遷移すると、その方向に、1素子分(サブ表示部における1項目分)の移動とすると判定する。
【0036】
既に説明したように、結果の更新がタッチセンサドライバTSDによってベースアプリBAに通知されると、ベースアプリBAは結果通知部NTFを確認し、この結果通知部NTFに通知された情報の内容を、さらに上位のアプリケーションであってタッチセンサ結果を要するアプリケーション(サブ表示部におけるメニュー画面表示のための表示部表示アプリAP1、及びロック制御のためのロックセキュリティアプリAP2など)に通知する。
【0037】
図6は、本実施例の動作シーケンス図であり、図7は、タッチセンサドライバの出力データのキューイング処理のフローチャートである。図6に示すように、タッチセンサモジュールTSMが接触状態を検出したタイミングで、タッチセンサモジュールTSMは、シリアル割込み監視部SIMONに出力データを通知する。
【0038】
確認部CNFは、図7に示す処理によりキー状態を参照し、キーリリースの場合にはタッチセンサモジュールTSMからの出力データをそのままキューイングし、キー押下中の場合にはシリアルインターフェース部SIからの出力データをリリースに修正してからキューイングする。
【0039】
タッチセンサドライバTSDの処理部(図示せず)は、キューQUEをポーリングし、出力データが存在する場合にはキューQUEから出力データを取り出す。タッチセンサドライバTSDからの出力データをキューQUEから取り出したタッチセンサドライバTSDの処理部は、キューQUEから取り出した出力データを解析し、タッチセンサドライバ上位APIに通知する情報に変換する。制御部110は、キー操作部KEYが操作される以前のセンサ部120の検査結果に基づく処理を行う。
【0040】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。例えば、実施例においては、タッチセンサとして静電容量式のものを用いて説明したが、この方式に限定されるものではない。例えば、複数の薄膜電極同士の当接の検出による電流の変動計測などで接触を検出する薄膜抵抗方式などのタッチセンサも存在するが、このような方式のタッチセンサを用いても本発明は実現可能である。また、例えば、実施例では、円環状に設けたセンサ素子レイアウトで説明したが、センサ群が三つ以上の場合、各センサ素子群が一列に並べられた場合、センサ群の間にスイッチを設けた場合、コ字状に配置されるセンサ素子群を表示部を挟んで対向配置させた場合等にも本発明を適用することができる。また、センサ素子群は左右の配置の実施例で説明したが、上下2群で構成してもよい。さらに、実施例では、携帯電話端末を挙げて説明してあるが、電話以外の携帯無線端末、PDA(パーソナルデジタルアシスタンス)、携帯ゲーム機、携帯オーディオプレイヤー、携帯ビデオプレイヤー、携帯電子辞書、携帯電子書籍ビューワーなどの携帯電子機器に幅広く本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施例の携帯電話端末の概要を示すブロック図である。
【図2】本実施例の携帯電話端末の斜視図である。
【図3】本実施例の携帯電話端末に実装した表示部周囲の構成を示す分解斜視図である。
【図4】本実施例の詳細な機能ブロック図である。
【図5】本実施例の携帯電話端末のタッチセンサ機能のより詳細な構成を示すブロック図である。
【図6】本実施例の動作シーケンス図である。
【図7】タッチセンサドライバの出力データのキューイング処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
100 携帯電話端末
110 制御部
120 センサ部
122,123,124,125,126 センサ素子群
130 表示部
140 記憶部
142 保存領域
144 外部データ保存領域
150 情報処理機能部
160 電話機能部
170 入力部キーパネル
180 拡声装置
210 タッチセンサ
220 カメラ
230 ライト
AP1,AP2,AP3,AP4 アプリケーション
APRF RFIDアプリ
API アプリケーションプログラムインターフェース
APIR 赤外線通信アプリ
AUD オーディオドライバ
BA ベースアプリ
CLK OSタイマー
CNF 確認部
COM 通信部
DL デバイス層
EAP イヤホン
ELD サブ表示部
FLG フラグ記憶部
G1,G2,G3 センサ素子群
IH 割込ハンドラ
IR 赤外線通信部
IRD 赤外線通信ドライバ
KEY キー操作部
KSP キースキャンポートドライバ
L1,L2,L3,L4,R1,R2,R3,R4 センサ素子
MIC マイクロホン
OCD 開閉検出デバイス(磁気)
PNL パネル
PR プロトコル
PS 電源
PSCON 電源コントローラ
QUE キュー
RD ラジオドライバ
RFD RFIDドライバ
RFID RFIDモジュール
RM ラジオモジュール
SI シリアルインターフェース部
SIMON シリアル割込み監視部
SP スピーカ
SP1、SP2 離間部
SW 切替部
SW1,SW2,SW3,SW4 タクトスイッチ
SWCON 切替制御部
TSB タッチセンサドライバブロック
TSM タッチセンサモジュール
TSBA タッチセンサベースアプリブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種情報をキー入力するキー入力部と、
接触を検知する検知部と、
該検知部及び前記キー入力部からの信号に基づいて各種処理を実行させる制御部とを具える携帯電子機器であって、
前記制御部は、前記キー入力部による入力処理が行われる期間中の前記検知部による検知を無効にすることを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
各種情報をキー入力するキー入力部と、
接触を検知する検知部と、
該検知部及び前記キー入力部からの信号に基づいて各種処理を実行させる制御部とを具える携帯電子機器であって、
前記制御部は、前記検知部による検知中における、前記キー入力部が操作される期間の前記検知部による検知を無効にすることを特徴とする携帯電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、
前記キー入力部が操作される以前の前記検知部の検知結果に基づく処理を行うことを特徴とする請求項2記載の携帯電子機器。
【請求項4】
前記検知部による検知が行われている情報又は前記検知部による検知が行われていない情報を格納する格納部を更に具え、
該格納部が、前記検知部による検知が行われている情報を格納する場合、前記制御部は、前記キー入力部が操作されると前記検知部による検知を無効にすることを特徴とする請求項2又は3記載の携帯電子機器。
【請求項5】
前記キー入力部が前記検知部に隣接することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の携帯電子機器。
【請求項6】
各種情報をキー入力するキー入力部と、
接触を検知する検知部とを具える携帯電子機器の制御方法であって、
前記キー入力部の操作期間中における前記検知部による接触の検知を無効にすることを特徴とする携帯電子機器の制御方法。
【請求項7】
各種情報をキー入力するキー入力部と、
接触を検知する検知部とを具える携帯電子機器の制御方法であって、
前記検知部による接触の検知中に前記キー入力部からのキー入力操作が行われると、当該キー入力操作期間における前記接触の検知は無効にすることを特徴とする携帯電子機器の制御方法。
【請求項8】
前記キー入力操作が行われる以前の前記検知部における検知結果を有効として、当該検知結果に基づく処理を行うことを特徴とする請求項7記載の携帯電子機器の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−52586(P2008−52586A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229543(P2006−229543)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】