説明

携帯電話端末及び制御装置

【課題】電波を利用することなく動作モードをリモート制御可能な携帯電話端末、及び携帯電話端末の動作モードをリモート制御する制御装置を提供する。
【解決手段】電波を発着信する携帯電話端末において、可聴周波数帯より高い周波数の音波を集音可能な集音部と、前記集音部で集音された音波から特定周波数の超音波信号を検出する制御信号検出部と、前記制御信号検出部により検出された特定周波数の超音波信号に基づいて当該携帯電話端末の動作モードを切り換える制御部と、を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話端末及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末が著しく普及しているが、その一方で、利用者のマナーが問題となっている。例えば、携帯電話端末から発される着信音や利用者の通話音は周囲の人に不快感を与えるため、映画館や電車等の公共の場においては、ポスターやアナウンスにより携帯電話端末の電源をオフ或いはマナーモードに設定するよう注意喚起がなされている。
また、携帯電話端末が発着信する電波は、電子機器や医療用機器に影響を及ぼす虞があり、時として生死に関わる問題を引き起こすこともある。そこで、電車やバスでは、ペースメーカ等の医療用機器を装着した人に配慮して、優先席付近では電源をオフするよう注意喚起がなされている。また、飛行機や病院内等においても、携帯電話端末の電源をオフするよう注意喚起がなされている。
【0003】
ところで、携帯電話端末においては、通話時だけでなく、位置登録(携帯電話端末が自分の居場所を携帯電話網に申告する処理)やハンドオーバー(移動中に基地局を切り換える処理)等で、非通話時でも電波が発信されているが、このことは一般的には知られていない。そして、携帯電話端末の電源をオフしたりマナーモードに設定したりする行為は利用者に委ねられるため、ポスターやアナウンスにより注意喚起しても、操作が面倒である上、実際に携帯電話端末で通話していないから関係ないという意識が働くこともあり、徹底させることは難しい。
【0004】
そこで、携帯電話端末の動作モードをリモート制御するシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の技術は、携帯電話端末が発着信する電波を利用して、携帯電話端末に制御コードを送信することにより、携帯電話端末の動作を制限するものである。
また、妨害電波を発信することにより、基地局からの電波を携帯電話端末において受信不能とする装置もある。
【特許文献1】2005−229229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術によれば、携帯電話端末の動作を強制的に制限することができるが、このようなシステムに用いられる電波は微弱ではないと考えられるため、設置するには、例えば、電波法で規定する認可が必要となる。仮に、無認可で設置が行われると法的に問題となる。
また、電波を利用して携帯電話端末の動作を制御するため、電波の利用自体を禁止されている場所(優先席付近、飛行機内、病院内)において適用することはできない。
【0006】
本発明は、電波を利用することなく動作モードをリモート制御可能な携帯電話端末、及び携帯電話端末の動作モードをリモート制御する制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、電波を発着信する携帯電話端末であって、
可聴周波数帯より高い周波数の音波を集音可能な集音部と、
前記集音部で集音された音波から特定周波数の超音波信号を検出する制御信号検出部と、
前記制御信号検出部により検出された特定周波数の超音波信号に基づいて、当該携帯電話端末の動作モードを切り換える制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の携帯電話端末において、
前記制御信号検出部は、1又は2以上の異なる特定周波数の超音波信号を検出可能に構成され
前記制御部は、前記制御信号検出部により検出された超音波信号の特定周波数に基づいて前記動作モードを切り換えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の携帯電話端末において、
前記制御信号検出部は、1又は2以上の異なる特定周波数の超音波信号を検出可能に構成され
前記制御部は、前記制御信号検出部により同時に2以上の特定周波数の超音波信号が検出された場合に、これらの組合せに基づいて前記動作モードを切り換えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の携帯電話端末において、
前記制御信号検出部は、検出した特定周波数の超音波信号を復調して制御信号を抽出可能に構成され、
前記制御部は、前記制御信号検出部により抽出された制御信号に基づいて前記動作モードを切り換えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の携帯電話端末において、
前記動作モードに対応する案内データを記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記動作モードを切り換えたときに、前記記憶部に記憶されている前記案内データの中から切り換えた動作モードに対応する案内データを選択し、この案内データに基づく案内を出力部から出力させることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の携帯電話端末において、
前記制御信号には案内データが含まれ、
前記制御部は、前記案内データに基づく案内を出力部から出力させることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の携帯電話端末において、前記制御部は、前記動作モードを、携帯電話端末の着信音を鳴らさないマナーモード、又は、携帯電話端末の発着信を禁止する発着信禁止モードの何れかに切り換えることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の携帯電話端末において、前記制御部は、動作モードが前記発着信禁止モードとなっている場合に、特定のキー操作信号が入力されることに基づいて、携帯電話端末の発信を許可することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の携帯電話端末に、特定周波数の超音波を送信することにより、携帯電話端末の動作モードをリモート制御することを特徴とする制御装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る携帯電話端末及び制御装置によれば、携帯電話端末の動作モードをリモート制御できるので、例えば、映画館や電車等の携帯電話端末の利用を制限したい場所において有効である。
また、電波ではなく超音波により携帯電話端末の動作モードをリモート制御するので、電波の利用自体を禁止されている場所(例えば、優先席付近、飛行機内、病院内)においても適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る携帯電話端末の内部構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、携帯電話端末10は、制御信号検出用マイク101、送話用マイク102、制御信号検出用アンプ103、送話用アンプ104、制御信号検出用フィルタ105、送話用フィルタ106、制御信号検出部107、音声処理部108、制御部109、高周波部111、メモリ112、表示部113、キー入力部114、着信用音源IC115、着信音用フィルタ116、受話用フィルタ117、着信音用アンプ118、受話用アンプ119、着信音用スピーカ120、受話用スピーカ121、を備えて構成される。
【0018】
制御信号検出用マイク101は、可聴周波数帯より高い周波数の音波(以下、超音波と称する)を集音可能なマイクであり、集音した音波を電気信号(音波信号)に変換して制御信号検出用アンプ103に出力する。
制御信号検出用アンプ103は、制御信号検出用マイク101からの音波信号を増幅して、制御信号検出用フィルタ105に出力する。また、AGC(Automatic Gain Control回路により、制御信号検出用アンプ103は、制御信号検出部107からの帰還信号に基づいて利得を自動的に制御される。
制御信号検出用フィルタ105は、増幅された音波信号から不要な周波数帯域の信号を除去して、特定周波数の超音波信号のみを抽出して制御信号検出部107に出力する。制御信号検出用フィルタ105は、例えば、必要な範囲の周波数のみを通し、他の周波数は通さない(減衰させる)バンドパスフィルタで構成される。
【0019】
制御信号検出部107は、レベル検出回路107aを備え、制御信号検出用フィルタ105から出力された特定周波数の超音波信号の信号レベルを検出する。そして、特定周波数の超音波信号の信号レベルが閾値以上であると判定した場合に、動作モードを切り換えるための制御信号を制御部109に出力する。制御部109は、この制御信号に基づいて携帯電話端末10の動作モードを切り換える。
【0020】
送話用マイク102は、利用者が発話した音声を集音するマイクであり、集音した音声を電気信号(音声信号)に変換して送話用アンプ103に出力する。
送話用アンプ104は、送話用マイク102からの音声信号を増幅して、送話用フィルタ106に出力する。
送話用フィルタ106は、送話用アンプ104で増幅された音声信号から不要な周波数帯域の信号を除去して、可聴周波数帯の音声信号のみを音声処理部108に出力する。送話用フィルタ106は、例えば、遮断周波数より高い周波数の帯域を通さない(減衰させる)ローパスフィルタで構成される。可聴周波数帯を20〜20000Hzとした場合は、例えば、20000Hzが遮断周波数として設定される。
音声処理部108は、送話用フィルタ106から出力された音声信号を符号化する。また、後述する高周波部111において受信された電波から復調された音声信号を復号化する。
【0021】
制御部109は、CPU109a、ROM109b、RAM109cを備える。CPU109aは、RAM109cを作業領域として、ROM109bに記憶された制御プラグラムを実行することにより、携帯電話端末10の各部を集中制御する。
例えば、CPU109aは、ROM109bに格納されているモード設定プログラムを実行することにより、動作モードを切り換えるための制御信号が入力されたときに、この制御信号に基づいて携帯電話端末10の動作モードを切り換える。
また、他の携帯電話端末と通信して相手先と送受話するための通信処理や送受話処理(例えば、信号変換処理)等を行う。
【0022】
高周波部111は、送信回路111a、受信回路111b、アンテナ切換回路111c、を備えて構成される。
送信回路111aは、送話用マイク102で集音された音声に基づく音声信号を、電波に変調して送信するための処理を行う。変調された電波はアンテナANTを介して相手先に送信され、相手先において発話される。
受信回路111bは、アンテナANTで受信された電波を復調するための処理を行う。電波から復調された音声信号は、音声処理部108において信号処理等がなされ、受話用スピーカ121から発話される。
アンテナ切換回路111cは、アンテナANTを介して電波を送受信する際の切り換えを行う。
【0023】
メモリ112は、例えば、不揮発メモリで構成され、表示部113に出力する画像のデータ等を記憶する。
表示部113は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)で構成され、所定の表示を利用者に提供する。
キー入力部114は、ダイヤルキー等の複数の操作キーを備えて構成される。利用者によってキー入力部が操作されると、操作キーに対応する制御信号が制御部109に出力され、制御部109ではこの制御信号に従って処理が行われる。
【0024】
着信用音源IC115は、例えば、複数の着信音データを保有し、非通話状態(待機状態)において相手先からの電波を受信したとき(着信時)に、着信音用スピーカ120から所定の着信音を出力させる。また、着信音用音源IC115は、制御部109によって出力される状態制御信号(着信音停止信号)を受けると、高周波部111において電波を受信しても着信音の出力処理を行わない(鳴動させない)。いわゆるマナーモードとなる。
【0025】
着信音用フィルタ116は、着信音用音源IC115から出力された着信音信号から不要な周波数帯域の信号(ノイズ)を除去する。着信音用フィルタ116は、例えば、遮断周波数より高い周波数の帯域を通さない(減衰させる)ローパスフィルタで構成される。
着信音用アンプ118は、着信音用フィルタ116からの着信音信号を増幅して、着信音用スピーカ120に出力する。また、着信音用アンプ118は、制御部109からの制御信号に従って利得を調整され、音量が調整される。
着信音用スピーカ120は、着信音用アンプ118からの着信音信号を音波に変換して着信音を出力する。
【0026】
受話用フィルタ117は、音声処理部108から出力された音声信号から不要な周波数帯域の信号(ノイズ)を除去する。受話用フィルタ117は、例えば、遮断周波数より高い周波数の帯域を通さない(減衰させる)ローパスフィルタで構成される。
受話用アンプ119は、受話用フィルタ117からの音声信号を増幅して、受話用スピーカ121に出力する。
受話用スピーカ121は、受話用アンプ119からの音声信号を音波に変換して音声を出力する。
【0027】
携帯電話端末10において、制御部109は、動作モードを切り換える処理を行う。通常は、利用者がキー入力部114の操作キーを操作することに伴い制御信号が出力されるので、この制御信号に対応する動作モードが設定されることとなる。
ここで、動作モードには、電波の発着信は可能であるが着信時に着信音を鳴動させないマナーモード、電波の発着信を禁止する発着信禁止モード、電波の発着信が可能で着信時に着信音を鳴動させる通常モード等がある。
【0028】
さらに、本実施形態では、制御部109は、制御信号検出部107において特定周波数の超音波信号が検出され、動作モードを切り換えるための制御信号が出力されたときに、この制御信号に基づいて動作モードを切り換えるようにしている。
上記特定周波数の超音波信号は、例えば、電車や飛行機、映画館等の公共の場に設置された制御装置から送信される。
【0029】
図2は、携帯電話端末10の動作モードをリモート制御するための制御装置20の構成を簡略化して示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置20は、制御部(周波数切換部)201、信号生成部202、アンプ203、スピーカ204、を備えて構成される。
制御部201は、スピーカ204から出力させる超音波の周波数を設定する。
信号生成部202は、制御部201により設定された周波数の超音波信号を生成する。
アンプ203は、信号生成部202で生成された超音波信号を増幅する。
スピーカ204は、増幅された超音波信号を音波に変換して出力する。
【0030】
制御装置20の利用者(例えば、鉄道会社等)は、送信する超音波信号の周波数を適宜設定し、特定周波数の超音波を出力させることで、この超音波信号を受信した携帯電話端末10を所望の動作モードとすることができる。
【0031】
上述したように、本実施形態の携帯電話端末10は、可聴周波数帯より高い周波数の音波を集音可能な制御信号検出用マイク(集音部)101と、集音部101で集音された音波から特定周波数の超音波信号を検出する制御信号検出部107と、制御信号検出部107により検出された特定周波数の超音波信号に基づいて当該携帯電話端末の動作モードを切り換える制御部109と、を備える。
これにより、携帯電話端末10の動作モードをリモート制御できるので、例えば、公共の場など携帯電話端末の利用を制限したい場所において非常に有効である。
また、電波を利用しないので電波法に規定される認可を受けることもなく、飛行機や病院等、電波の使用を禁止されている場所においても適用することができる。
また、携帯電話端末10の利用者が自ら意識して動作モードを設定する操作を行わなくても、特定の場所内に入れば携帯電話端末10は望ましい動作モードに自動的に切り換わることとなる。
【0032】
図1に示す携帯電話端末の構成例においては、制御信号検出用フィルタ103と制御信号検出部107(レベル検出回路107a)をそれぞれ一段しか備えていないため、特定周波数の超音波信号を検出したときに切り換えられる動作モードは一つ(例えば、マナーモード又は発着信禁止モードの何れか)となる。
例えば、制御信号検出用フィルタ103を複数段設け、それに対応してレベル検出回路を設けることにより、制御信号検出部から複数の制御信号を出力できるようにすれば、複数の動作モードから所望の動作モードを選択して設定することができる。
また例えば、制御装置20において超音波信号に制御信号を予め変調して送信するようにすれば、携帯電話端末10において制御信号を復調して解析することにより、複数の動作モードから所望の動作モードを選択して設定することができる。
【0033】
図3は、制御信号検出用フィルタ及び制御信号検出部の他の構成例について示す説明図である。
図3では、制御信号検出用フィルタ105は、第1特定周波数f1の超音波信号を抽出するバンドバスフィルタ105aと、第2特定周波数f2の超音波信号を抽出するバンドパスフィルタ105bと、で構成される。そして、制御信号検出部107には、バンドパスフィルタ105a、105bのそれぞれに対応して、レベル検出回路107a、107bが設けられている。すなわち、制御信号検出部107は、2以上の異なる特定周波数の超音波信号を検出可能に構成されている。
【0034】
制御信号検出部107は、レベル検出回路107aで第1特定周波数f1の超音波信号の信号レベルが閾値以上であると判定した場合に、マナーモードに設定するための制御信号を出力する。また、レベル検出回路107bで第2特定周波数f2の超音波信号の信号レベルが閾値以上であると判定した場合に、発着信禁止モードに設定するための制御信号を出力する。
そして、制御部109は、制御信号検出部107から出力された制御信号に基づいて、動作モードをマナーモードと発着信モードの何れかに切り換える。すなわち、検出された超音波信号の特定周波数(例えば、f1又はf2)に基づいて動作モードを切り換えることとなる。
【0035】
このように、図3に示す例では、制御信号検出部107により検出された超音波信号の特定周波数に基づいて動作モードを切り換えることができるので、制御装置20において発信する超音波の周波数を適宜設定することで、携帯電話端末を所望の動作モードとすることができる。
例えば、制御装置20から特定周波数f1の超音波信号を送信すれば、これを受信した携帯電話端末10をマナーモードにすることができる。また、制御装置20から特定周波数f2の超音波信号を送信すれば、これを受信した携帯電話端末10を発着信禁止モードにすることができる。
【0036】
図4は、制御信号検出用フィルタ及び制御信号検出部の他の構成例について示す説明図である。
図4では、制御信号検出用フィルタ105は、第1特定周波数f1の超音波信号を抽出するバンドバスフィルタ105aと、第2特定周波数f2の超音波信号を抽出するバンドパスフィルタ105bと、第3特定周波数f3の超音波信号を抽出するバンドパスフィルタ105cで構成される。そして、制御信号検出部107には、バンドパスフィルタ105a、105b、105cのそれぞれに対応して、レベル検出回路107a、107b、107cが設けられている。すなわち、制御信号検出部107は、2以上の異なる特定周波数の超音波信号を検出可能に構成されている。
さらに、制御信号検出部107は、レベル検出回路107aの出力信号とレベル検出回路107bの出力信号を入力として論理積を演算する論理回路L1と、レベル検出回路107bの出力信号とレベル検出回路107cの出力信号を入力として論理積を演算する論理回路L2を備える。
【0037】
制御信号検出部107は、論理回路L1の出力が真(レベル検出回路107aで第1特定周波数f1の超音波信号の信号レベルが閾値以上、かつ、レベル検出回路107bで第2特定周波数f2の超音波信号の信号レベルが閾値以上)となった場合に、マナーモードに設定するための制御信号を出力する。また、論理回路L2の出力が真(レベル検出回路107bで第2特定周波数f2の超音波信号の信号レベルが閾値以上、かつ、レベル検出回路107cで第3特定周波数f3の超音波信号の信号レベルが閾値以上)となった場合に、発着信禁止モードに設定するための制御信号を出力する。
そして、制御部109は、制御信号検出部107から出力された制御信号に基づいて、動作モードをマナーモードと発着信モードの何れかに切り換える。すなわち、同時に検出された超音波信号の特定周波数(例えば、f1、f2、又はf3)の組合せに基づいて動作モードを切り換えることとなる。
【0038】
このように、図4に示す例では、制御信号検出部107により検出された超音波信号の特定周波数の組合せに基づいて動作モードを切り換えることができるので、制御装置20において発信する超音波の周波数を適宜設定することで、携帯電話端末を所望の動作モードとすることができる。
例えば、制御装置20から特定周波数f1の超音波信号と特定周波数f2の超音波信号を送信すれば、これらを受信した携帯電話端末10をマナーモードにすることができる。また、制御装置20から特定周波数f2の超音波信号と特定周波数f3の超音波信号を送信すれば、これらを受信した携帯電話端末10を発着信禁止モードにすることができる。
このように、何れかの特定周波数の超音波信号を受信しただけでは動作モードは切り換わらない。これにより、携帯電話端末10において偶然に特定周波数の超音波信号が受信され、無意味に動作モードが切り換わってしまうのを防止することができる。
【0039】
図5は、制御信号検出用フィルタ及び制御信号検出部の他の構成例について示す説明図である。
図5では、制御信号検出用フィルタ105は、第1特定周波数f1の超音波信号を抽出するバンドバスフィルタ105aで構成される。制御信号検出部107は、制御信号検出用アンプ104からの出力信号から変調されている制御信号を取り出す検波回路107d、取り出された制御信号を復号化するデコーダ107e、を備える。すなわち、制御信号検出部107は、検出した特定周波数の超音波信号を復調して制御信号を抽出可能に構成されている。なお、変調方式及び検波方式については、特に制限されない。
制御信号検出部107は、デコーダ107eによって復号化された制御信号を制御部109に出力する。そして、制御部109は、制御信号検出部107から出力された制御信号に基づいて、動作モードを切り換える。
【0040】
このように、図5に示す例では、制御装置20において、携帯電話端末10の動作モードを制御する制御信号を超音波信号に変調して送信することで、携帯電話端末を所望の動作モードとすることができる。
例えば、制御装置20からマナーモードに設定するための制御信号を変調した特定周波数f1の超音波信号を送信すれば、これを受信した携帯電話端末10をマナーモードにすることができる。また、制御装置20から発着信禁止モードに設定するための制御信号を変調した特定周波数f1の超音波信号を送信すれば、これを受信した携帯電話端末10を発着信禁止モードにすることができる。
これにより、携帯電話端末10において偶然に特定周波数の超音波信号が受信され、無意味に動作モードが切り換わってしまうのを確実に防止することができる。
【0041】
図6は、携帯電話端末10におけるモード設定処理の一例について示すフローチャートである。このモード設定処理は、携帯電話端末10において、CPU109aがROM109b内のモード設定プログラムを実行することにより実現される。なお、図6では、制御信号検出部107からマナーモード用の制御信号又は発着信禁止モード用の制御信号が出力される場合について示している。
【0042】
ステップS101では、高周波部111の動作状態に基づいて通信中であるかを判定する。そして、通信中でないと判定すると、ステップS102に移行する。
ステップS102では、制御信号検出部107から動作モードを切り換えるための制御信号が入力されたか判定する。そして、制御信号が入力されたと判定した場合はステップS103に移行し、制御信号が入力されていないと判定した場合はステップS101に移行する。
【0043】
ステップS103では、入力された制御信号がマナーモード用の制御信号であるか判定する。そして、マナーモード用の制御信号であると判定した場合は、ステップS104に移行し、動作モードをマナーモードに設定する。マナーモードに設定されると、状態制御信号により、着信用音源IC115や着信音用アンプ118の動作は優先的に停止される。一方、マナーモード用の制御信号でないと判定した場合は、発着信禁止モード用の制御信号となるので、ステップS105に移行し、動作モードを発着信禁止モードに設定する。発着信禁止モードに設定されると、高周波部111の動作は優先的に停止され、発着信不能となる。
なお、ここでは、ハードウェア的に回路動作を停止させることにより各動作モードを実現しているが、ソフトウェア的に動作を停止させるようにしてもよい。
【0044】
ステップS106では、制御信号検出部107から制御信号が入力されているか判定する。そして、制御信号が入力されていないと判定した場合は、動作モードを制限する場所(制御装置20が設置されている場所)から離れたことになるので、ステップS107に移行して通常モードに設定する。一方、制御信号入力されていると判定した場合は、未だ動作モードを制限する場所に居ることとなるので、ステップS103に移行して、動作モードは制限されたままとなる。
【0045】
図7は、制御装置20を設置した電車における携帯電話端末10のリモート制御の具体例について示す説明図である。例えば、制御装置20のスピーカ204は、車両の天井に設置される。
【0046】
図7に示すように、一般席S付近にはスピーカ204b、204c、204d、204e、204fが設置されており、これらのスピーカ204a等からはマナーモードにするための超音波信号(例えば、特定周波数f1の超音波信号)が送信される。また、優先席PS付近にはスピーカ204aが設置されており、このスピーカ204aからは発着信禁止モードにするための超音波信号(例えば、特定周波数f2の超音波信号)が送信される。
【0047】
したがって、携帯電話端末10において図6に示すモード設定処理が実行されると、一般席S付近に乗車している利用者の携帯電話端末10bはマナーモードに切り換えられ、優先席PS付近に乗車している利用者の携帯電話端末10aは発着信禁止モードに切り換えられる。また、携帯電話端末10の利用者が、例えば、優先席PS付近から一般席S付近に移動すると動作モードは発着信禁止モードからマナーモードに切り換えられることとなる。
【0048】
図8は、携帯電話端末10におけるモード設定処理の他の一例について示すフローチャートである。図6に示すモード設定処理と比較して、ステップS206、ステップS208の処理が追加されている点が異なる。図8において、ステップS206、ステップS208以外の処理は、図6に示すモード設定処理と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
すなわち、図8に示すモード設定処理では、携帯電話端末10において動作モードが切り換わる(ステップS204、S205)と、切り換わった動作モードに対応する案内メッセージが表示部113に表示される(ステップS206)。表示部11に表示される案内メッセージのデータは、例えば、メモリ112に記憶されている。
これにより、利用者は、自分の携帯電話端末10の動作モードが切り換わったことを容易に知得できるので、例えば、モード設定処理によりマナーモードに設定され着信音が鳴らなくなった場合でも、装置の故障を疑うことはない。
【0050】
また、制御信号検出部107から動作モードを切り換えるための制御信号が入力されている場合(ステップS207で“YES”)でも、モード解除のためのキー操作がなされると、通常モードに設定する(ステップS208)。例えば、パスワードをキー操作により入力することで、発着信禁止状態を解除できるようにする。
これにより、利用者は、緊急時など周辺環境に関係なく送受信することを必要とする場合には発着信可能とすることができるので、モード設定処理により携帯電話端末のメリットが著しく損なわれることはない。
なお、マナーモードでは発着信することができるので、ステップS208においてモード解除のためのキー操作がなされても通常モードに切り換わらないようにしてもよい。
【0051】
本実施形態に係る携帯電話端末10によれば、劇場、電車、バス、その他の公共の場所において、利用者がいちいち発着信禁止モードにしたり、マナーモードに設定したりしなくても、公共の場を提供する者(制御装置20)が所望する動作モードとすることができる。
また、携帯電話端末の動作モードを制御するのに、電波ではなく超音波を用いるので、ペースメーカや飛行機の計測器等、他の電子機器への影響はない。したがって、電波の使用が禁止されている場所において適用できる。また、非可聴周波数帯の超音波を用いるので、出力を上げても利用者を不快にさせることはなく、人への影響もほぼ皆無である。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0053】
例えば、図9に示すように、図1における送話用マイク102及び送話用アンプ104に、制御信号検出用マイク101及び制御信号検出用マイク103を兼用させるようにしてもよい。この場合、広帯域マイクを用いることで実現可能である。小型化が重要視される携帯電話端末においては、スペース面でも非常に有利となる。
【0054】
また、図1では、制御信号検出用フィルタ105にバンドパスフィルタを用いているが、遮断周波数より低い周波数の帯域を通さない高域通過フィルタを用いた構成としてもよい。可聴周波数帯を20〜20000Hzとした場合は、例えば、20000Hzよりも高い周波数が遮断周波数として設定される。この場合、超音波信号が検出されると動作モードが予め設定された動作モード(例えば、発着信禁止モード)に切り換えられることとなる。
【0055】
上記実施形態では、制御信号検出用フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を設けて特定周波数の超音波を検出するようにしているが、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)等のデジタル信号処理により特定周波数の超音波信号を検出するようにしてもよい。
【0056】
また、携帯電話端末において、マナーモードや発着信禁止モードだけでなく、電源オフや発信のみ禁止モード等、その他の動作モードに制御可能とすることもできる。
【0057】
図8に示すモード設定処理において、ステップS206で表示させる案内データは、例えば、メモリ112に記憶されているものとしたが、制御信号検出部107を図5に示す構成とした場合は、制御信号が案内データを含むようにしてもよい。この場合、デコーダ107eにおいて案内データは分離抽出される。
【0058】
また、本発明を応用することで、超音波信号を利用して携帯電話端末に様々な情報を提供することも可能となる。例えば、制御信号検出部107を図5に示す構成とすれば、超音波信号に次の停車駅や到着時間、広告等の案内メッセージを変調させることができるので、容易に実現できる。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】携帯電話端末の内部構成の一例を示すブロック図である。
【図2】制御装置の構成を簡略化して示すブロック図である。
【図3】制御信号検出用フィルタ及び制御信号検出部の他の構成例について示す説明図である。
【図4】制御信号検出用フィルタ及び制御信号検出部の他の構成例について示す説明図である。
【図5】制御信号検出用フィルタ及び制御信号検出部の他の構成例について示す説明図である。
【図6】携帯電話端末におけるモード設定処理の一例について示すフローチャートである。
【図7】制御装置を設置した電車における携帯電話端末のリモート制御の具体例について示す説明図である。
【図8】携帯電話端末におけるモード設定処理の他の一例について示すフローチャートである。
【図9】携帯電話端末の内部構成の他の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
10 携帯電話端末
101 制御信号検出用マイク(集音部)
103 制御信号検出用アンプ(増幅部)
105 制御信号検出用フィルタ
107 制御信号検出部
109 制御部
111 高周波部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を発着信する携帯電話端末であって、
可聴周波数帯より高い周波数の音波を集音可能な集音部と、
前記集音部で集音された音波から特定周波数の超音波信号を検出する制御信号検出部と、
前記制御信号検出部により検出された特定周波数の超音波信号に基づいて、当該携帯電話端末の動作モードを切り換える制御部と、
を備えることを特徴とする携帯電話端末。
【請求項2】
前記制御信号検出部は、1又は2以上の異なる特定周波数の超音波信号を検出可能に構成され
前記制御部は、前記制御信号検出部により検出された超音波信号の特定周波数に基づいて前記動作モードを切り換えることを特徴とする請求項1に記載の携帯電話端末。
【請求項3】
前記制御信号検出部は、1又は2以上の異なる特定周波数の超音波信号を検出可能に構成され
前記制御部は、前記制御信号検出部により同時に2以上の特定周波数の超音波信号が検出された場合に、これらの組合せに基づいて前記動作モードを切り換えることを特徴とする請求項1に記載の携帯電話端末。
【請求項4】
前記制御信号検出部は、検出した特定周波数の超音波信号を復調して制御信号を抽出可能に構成され、
前記制御部は、前記制御信号検出部により抽出された制御信号に基づいて前記動作モードを切り換えることを特徴とする請求項1に記載の携帯電話端末。
【請求項5】
前記動作モードに対応する案内データを記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記動作モードを切り換えたときに、前記記憶部に記憶されている前記案内データの中から切り換えた動作モードに対応する案内データを選択し、この案内データに基づく案内を出力部から出力させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の携帯電話端末。
【請求項6】
前記制御信号には案内データが含まれ、
前記制御部は、前記案内データに基づく案内を出力部から出力させることを特徴とする請求項4に記載の携帯電話端末。
【請求項7】
前記制御部は、前記動作モードを、携帯電話端末の着信音を鳴らさないマナーモード、又は、携帯電話端末の発着信を禁止する発着信禁止モードの何れかに切り換えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の携帯電話端末。
【請求項8】
前記制御部は、動作モードが前記発着信禁止モードとなっている場合に、特定のキー操作信号が入力されることに基づいて、携帯電話端末の発信を許可することを特徴とする請求項7に記載の携帯電話端末。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の携帯電話端末に、特定周波数の超音波を送信することにより、携帯電話端末の動作モードをリモート制御することを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−159488(P2009−159488A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337573(P2007−337573)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】