摂食障害関連遺伝子及び摂食障害発症の危険度を判定する方法
【課題】 遺伝子多型を検出することにより、摂食障害の発症の危険度を判定する方法 の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、ゲノムワイドに設定したマイクロサテライトマーカーを用いて関連分析を行い関連の認められる領域を狭め、さらにその領域において特に強い関連を示すSNPマーカーを設定し、当該SNPマーカーおよび特に強い関連を示した前記マイクロサテライトマーカーについて連鎖不平衡を解析しこれらの多型の連鎖不平衡を解析することで、摂食障害感受性候補領域および摂食障害感受性遺伝子を同定する。
【解決手段】 本発明は、ゲノムワイドに設定したマイクロサテライトマーカーを用いて関連分析を行い関連の認められる領域を狭め、さらにその領域において特に強い関連を示すSNPマーカーを設定し、当該SNPマーカーおよび特に強い関連を示した前記マイクロサテライトマーカーについて連鎖不平衡を解析しこれらの多型の連鎖不平衡を解析することで、摂食障害感受性候補領域および摂食障害感受性遺伝子を同定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摂食障害に関連する遺伝子多型を特定し、当該遺伝子多型を検出することにより摂食障害の発症の危険度を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摂食障害(eating disorder)は診断基準により、神経性食欲不振症(拒食症;anorexia nervosa、以下ANと略す)と神経性大食症(過食症;bulimia nervosa、以下BNと略す)、いずれにも分類不能のもの(eating disorder not otherwise specified)の大きく3つのグループに分類される。いずれの群も1990年代後半より、若い女性を中心に発症率が急激に増加してきている。若い女性の有病率は、拒食症では約0.5〜1%、過食症では約1〜3%と言われ、また特に拒食症では、患者は回復と再発の周期を繰り返し、死亡率も他の精神疾患と比べても平均6%と非常に高い。この重大な有病率や死亡率からも、摂食障害の病因・病態の解明および有効な予防法・治療法の確立が早急に検討されるべきである。
これまで摂食障害の主な原因は母子関係にあるとされており、遺伝要因についてはほとんど考慮されていなかったが、近年の疫学的研究により遺伝要因が摂食障害の発症に深く関わっていることが示唆されており、拒食症患者の一親等の家族では、拒食症や気分障害を発症する危険性が高いことや双生児研究における一卵性双生児の一致率が52〜56%と二卵性双生児の一致率5〜11%より有意に高いことが、遺伝要因との関係を裏付けている。
【0003】
また、摂食障害は多因子疾患で、複数の遺伝子変異と複数の環境因子が共存したときに発症すると考えられている。個々の疾患関連遺伝子変異は、それ単独では発症に至らないが、複数の特定の遺伝子多型が組み合わさり、更に環境因子が加わった場合に初めて摂食障害としての表現型を示すものと推察される。従来、このような弱い効果の遺伝子変異の場合には、罹患者を2人以上もつ家系を多数集めて、マイクロサテライトマーカーによる連鎖解析(ノンパラメトリック連鎖解析)をゲノムワイドに行うことで候補遺伝子座を同定していくのが有効とされてきたが、未だ摂食障害ではゲノムワイドに家系解析を行ってきた例が極めて少なく、報告としてはBouchardらのグループによる1報とKayeらのグループにおける2報のみである(非特許文献1〜3)。Bouchardらのグループでは、194組の家系サンプルにおいてBMI(body mass index)を指標とした肥満にもとづき、第7番(7p15.3)および第15番(15q25−q26)染色体上に連鎖を認めている。7p15.3領域に連鎖が認められた候補遺伝子はNeuropeptide Y(NPY)とGrowth hormone−releasing hormone(GHRH)受容体の2つで、これらは摂食行動に関与する多くの制御因子の1つであり、ともに摂食行動を促進させる働きが知られている。15q25−q26領域ではインシュリン様成長因子1受容体(IGF1R)遺伝子の5’側非翻訳領域に存在するCAリピート上にLOD値=3.56の連鎖を認めている。
【0004】
またKayeらのグループでは、196組の拒食症の家系サンプルから第1番(1p33−36および1q31)、第2番、そして第13番染色体上に有意な連鎖を見出している。特に1p33−36領域においては3.45という非常に高いmultipoint NPLスコアから、後に候補遺伝子としてセロトニン1D受容体(HTR1D)遺伝子とオピオイドδ受容体(OPRD1)遺伝子に関するSNP解析が行われた。その統計学的な証明とともにセロトニンとオピオイドの神経伝達に関わる特性も含め、摂食障害との関連が強く示唆されている(非特許文献4)。これまでの摂食障害感受性遺伝子の解析においては、機能面から疾患に関与すると推定される遺伝子の多型性を検出し、それに基づいた患者‐対照群における相関解析、いわゆる候補遺伝子解析が主として行われてきたために、実際にはセロトニンとオピオイドに代表されるような神経伝達物質系や神経成長因子に関与するノルエピネフリン輸送体(NET)遺伝子(16q12.2)やエストロゲン受容体2(ESR2)遺伝子(14q)などの一部の染色体領域に報告が限られていた(非特許文献5〜7、特許文献1)。
【0005】
【非特許文献1】Griceら,Am J Hum Genet.2002;70:787−92.
【非特許文献2】Chagnonら,Metabolism.2000 Feb;49(2):203−7.
【非特許文献3】Devlinら,Hum Mol Genet.2002;11(6):689−96.
【非特許文献4】Bergenら,Mol Psychiatry.2003 Apr;8(4):397−406.
【非特許文献5】Urwinら,Mol Psychiatry.2002;7(6):652−7.
【非特許文献6】Urwinら,Eur J Hum Genet.2003 Sep 24;11(12):945−50.
【非特許文献7】Eastwoodら, Mol Psychiatry. 2002 ;7(1):86−9.
【特許文献1】WO2003/012143号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記事情に鑑み、より有効な摂食障害の治療及び予防法の開発に資するべく、ゲノムワイドな多型解析を精力的におこなった結果、ゲノム上の11の特定領域において、摂食障害感受性マーカー、及び摂食障害感受性遺伝子、を同定することに成功した。
よって、本発明は、特定のマーカ近傍に存在する遺伝子多型を検出することにより、摂食障害の発症の危険度を判定する方法の提供を目的とする。また、本発明は、摂食障害感受性遺伝子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これまでに、ヒトゲノムの全塩基配列が決定され、ゲノムの多型性情報の蓄積にもとづく遺伝的マーカーの利用によって、ゲノム全体にわたって高解像度かつ排他的に感受性遺伝子の同定が可能となった。そこで、本疾患感受性遺伝子の探索にあたっては、プール化DNA法を導入し、多型性情報に基づき全ゲノムにわったって設定された約23,500の多型マイクロサテライトマーカーを利用して、初めてのゲノムワイドなケース・コントロール型遺伝的相関解析を行うことを試みた。更に同定された摂食障害感受性候補マーカーの近傍領域に座上する遺伝子の機能・発現パターンなどを考慮し、脳神経系機能を持つことが知られている既知の遺伝子が含まれる候補領域を中心にSNP高密度マッピングを行うことで摂食障害感受性領域・遺伝子の絞込みを行った。
【0008】
すなわち、本発明は、0106G06,1105D12,1603G04,0105G07,0117H09,0512E09,1109D02,1202F03,1207B03,1802B06,及び9901B09で表されるマイクロサテライトが、摂食障害の発症と有意な相関を示すことを明らかにし、当該マイクロサテライトのいずれかの前後400kbに存在する遺伝子多型(特に一塩基多型)と摂食障害との相関を解析した結果、請求項2に掲げた一塩基多型の1以上を検出すること、又は2以上の遺伝子多型の組合せからなるハプロタイプを検出することにより、摂食障害の発症危険度を判定することができることを見出した。
従って、当該多型部分を含むDNA鎖は、摂食障害発症の診断のためのマーカー遺伝子として用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る判定方法により、摂食障害の危険度を事前に予測することができる。
【0010】
さらに、本発明において同定された摂食障害感受性遺伝子の詳細な機能解析により、摂食障害に対する新たな治療方法、治療薬の開発を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における摂食感受性領域及び摂食障害感受性遺伝子は、マイクロサテライトマーカー及びSNPsマーカーを用いた遺伝子マッピングによって同定を行った。一般に、遺伝子マッピングを行なう場合の遺伝子多型マーカーとしては、SNPs(single nucleotide polymoruphisms)マーカーとマイクロサテライトマーカーが知られている。マイクロサテライトマーカーは、対立遺伝子数が多いため目的の領域又は遺伝子からある程度離れた位置に設定されたマーカーであっても相関を示す特徴があるため、ゲノムワイドな分析において検索領域の絞込みを行なう上で極めて有効である。一方、SNPsマーカーは、ある程度絞り込まれた領域内において関連遺伝子を詳細に特定する際に有効なマーカーである。本発明における摂食障害感受性領域及び摂食障害感受性遺伝子は、マイクロサテライトマーカーおよびSNPsマーカーの両方を使用することで特定することができた。
【0012】
マイクロサテライトを用いた遺伝子マッピングの一般的な方法に関し、以下に簡単に説明する。
遺伝子多型とは、対象遺伝子座に関する対立遺伝子の種類が2種類以上存在し、主要な対立遺伝子の頻度が99%以下であることを意味する。また遺伝子座とはゲノム上の領域であればどの領域であってもよく、遺伝子が発現している領域に限定されない。マイクロサテライトとは、2塩基から6塩基が繰り返した配列のことを意味し、この繰り返しの回数は個人間で異なる場合があり、繰り返しのばらつきがSTR(Short Tandem Repeat)と呼ばれる多型を形成している。この繰り返し数がマイクロサテライト多型を決定している。典型的なマイクロサテライトはCAリピートである。
【0013】
まず、比較的多型性に富むマイクロサテライトマーカーをゲノムワイドに適当な密度で、例えば、50kb〜150kb、好ましくは、80kb〜120kb、より好ましくは、90〜110kbに1個の割合で設定することができる。マイクロサテライトマーカーは対立遺伝子数(アレル数)が多いほどヘテロ接合度が高く、解析における情報量が増大する。各マイクロサテライト座におけるアリル頻度の分布およびハーディ−ワインベルグ平衡からの偏差に関し、統計解析を実施して相関解析を行なうことで、強い相関を示すマイクロサテライトマーカーを検索することができる。関連性の強いマイクロサテライトマーカーの近傍に、より高密度にマーカーを設定し、さらに関連分析を行なうことで摂食障害感受性領域及び摂食障害感受性遺伝子のマッピングをより正確に行なうことができる。
【0014】
マイクロサテライトの多型検出には、例えば、マイクロサテライトマーカー領域を増幅し得るようなPCR用プライマーセットを使用することができる。PCRを用いた多型検出法としては、RFLP(restriction fragment length polymorphism)法の他にも、SSCP(single strand conformation polymorphism)法、SSOP(sequence specific oligonucleotide probe)法、RNアーゼプロテクション法、RDA(representational difference analysis)法、RAPD(random amplified polymorphic DNA)法、AFLP(amplified fragment length polymorphism)法などを用いることができる。
【0015】
マイクロサテライトマーカーによる遺伝子マッピングによって摂食障害感受性領域及び摂食障害感受性遺伝子が存在すると思われる候補領域をある程度狭めた後に、適当な間隔でSNPマーカーを設定し、さらに関連分析を進める。基本的には、摂食障害と相関するマイクロサテライトマーカーを中心とする約400kb程度を解析対象とし、その領域にほぼ等間隔にSNPが配置されるように、SNPを50個程度選択する。ここで、適切なSNPを選択するにあたり、種々のSNPデータベースよりその情報を入手することができる。選択したSNPのタイピングを行い、各検体のアレルタイプを決定し、得られたデータに基づいて、各SNPについてのケース・コントロール相関解析を行い、摂食障害又は特定の診断分類群との関連性を決定することができる。さらに、連鎖不平衡解析、Expectation−Maximization法を用いてハプロタイプを推定することにより、摂食障害又は特定の診断分類群と相関を示すハプロタイプブロックを同定することができる。
【0016】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
1.方法
1−1.摂食障害検体の収集
血液サンプルを用いて遺伝子解析を実施するにあたり、社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム倫理審査委員会ならびに国立国際医療センター・倫理審査委員会、国立精神神経センター・倫理審査委員会において審査を受け、研究実施の承認を受けた上で研究開発を行った。
これまでに収集されたサンプルは、多数の弧発例および23組の罹患同胞対サンプルを合わせて、拒食症(AN)399例および過食症(BN)136例の合計535例となった。近年の摂食障害における診断基準の明確な細分化により、これらの症例はさらに分類され、拒食症399例はそれぞれ摂食制限型(AN restricting type、以下AN−Rと略す)261例、排出型(AN with purging type、以下AN−Pと略す)23例、また無茶食いを伴う排出型(AN with binge eating / purging type、以下AN−B/Pと略す)115例となった。同様に過食症136例についても、拒食症既往歴のあるグループ(BN with AN)と既往歴のないグループ(BN without AN)として、それぞれ45例および91例に大別した。23組の罹患同胞対サンプル(表1)については、診断基準をもとに分類された摂食制限型(AN−R)のProbandのみを弧発例と合わせて、今回の解析に供試することとした。
また今回のプール化DNA法に対照群として供試するため、比較的平均年齢の低い女性集団が必要であったことから、平均34.5歳の女性集団のサンプル180例(90例+90例)が一次・二次スクリーニング用に遺伝子タイピング自己免疫疾患部門より提供された。
【0018】
【表1】
【0019】
1−2.DNAの抽出・定量とプール化DNAの作製
遺伝子タイピングに使用するゲノムDNAは、国立国際医療センター研究所において収集された全ての各末梢血サンプルより、QIAamp DNA Blood Midi Kit(QIAGEN)あるいはQIAamp DNA Blood Mini Kit(QIAGEN)を用いてDNA抽出および精製を行った。DNA抽出の際、最終の溶出ステップにおいては、続くPCR反応時の増幅効率への影響を考慮し、通常の10分の1濃度のEDTAを含むTE Buffer(10mM Tris−HCl,0.1mM EDTA;pH 8.0)を使用した。
抽出されたDNAは摂食障害部門に送付され、まず分光光度計によって、紫外線波長260nmの吸収率からおおよその濃度を測定し、各サンプルの収量を確認した。またさらに、DNAの分解がないこととRNAの混入がないこともアガロースゲル電気泳動によって確認した。さらに拒食症の中のAN−Rグループの125例については、PicoGreen蛍光試薬(Molecular Probe)と蛍光プレートリーダーGENios(TECAN)あるいはMTP−100F(コロナ電気)を用いて、既知濃度のλファージDNAにおける検量線を作成の上、サンプル中のニ本鎖DNAを高感度かつ特異的に定量した。AN−Rサンプル中、比較的収量の多かった90サンプルを一次スクリーニング用のプール化DNA作製に使用した。また、健常者集団90例についてもDNA抽出後、PicoGreen蛍光試薬により正確な定量を行い、プール化DNAの作製に供試した。患者90例、健常者90例共に、DNA濃度の決定には各サンプルについて最低3回以上の定量を行い、それぞれの測定結果をもとに平均値と標準偏差および変動係数(coefficient of variation)を求め、変動係数が5%以下となる場合のみの平均値をDNA濃度として採用した。DNA濃度から算出された1サンプル当たり8μg分(30,000反応分)の各DNAをそれぞれ等量ずつ混合し、患者群、健常者群の2種類のプール化DNA(8ng/μl)を作製した。二次スクリーニング用のプール化DNAも後に同要領で作製した。
【0020】
1−3.プール化DNA精度確認
作製されたプール化DNAの精度を調べるため、発明者らが所有する他疾患用マイクロサテライトマーカーを指標に、患者および健常者のプール化DNAと各90例の個別検体に対してそれぞれタイピングを行い、プール化DNAを用いた場合と個別検体を用いた場合の各アレル頻度を比較し、プール化DNAでのタイピング結果が、個別検体での結果を反映しているかどうかを2 x 2および2 x n分割表でのχ2検定を行うことにより確認した。
【0021】
1−4.マイクロサテライトマーカーを用いたプール化DNA及び個別検体のタイピング
プール化DNA法の導入により、タイピングに使用するマイクロサテライトマーカー(全23,465マーカー)は、ゲノムワイドに約100kbに1個の間隔で設定・配置されたものを使用した。これらの各マーカーのプライマーペアは、Forwardプライマーの5’末端側が6−FAMによって蛍光標識されたものである。
PCR反応に使用するDNA合成酵素は、数種のマーカーにおいて、従来のAmpliTaq DNA polymerase(Applied Biosystems)と新規のAmpliTaq Gold DNA Polymerase(Applied Biosystems)でのタイピング結果を比較検討し、増幅バンドの明瞭さと得られるシグナル値の高さから、後者のAmpliTaq Gold DNA Polymeraseを使用することとした。
PCR反応溶液は、添付の10xBufferの2μlに最終濃度1.5mMとなるようにMgCl2を添加し、2mMdNTP Mixを2.5μl、ForwardプライマーおよびReverseプライマーを各2pmol、AmpliTaq Gold DNA Polymerase 0.5unitと24ngのプール化DNAをテンプレートに用いて、総量20μl系で調整した。またPCR反応条件は、96℃,15分間の変性に続き、57℃,1分、72℃,1分ののち、96℃,45秒、57℃,45秒、72℃,1分のサイクルを40回繰り返した。
【0022】
PCR反応終了後、増幅産物をそれぞれの増幅効率に応じ、10mMTris−HCl (pH 8.0)を用いて40倍あるいは80倍に希釈し、さらにHiDi Formamide(Applied Biosystems)およびGeneScan 500 LIZ Size Standard(Applied Biosystems)と混合したものを96℃,5分間の熱変性後、Applied Biosystems 3730 DNA Analyzer(Applied Biosystems)にて電気泳動を行った。
個別検体における電気泳動の結果は、ABI PRISM GeneMapper Software Version 3.0(Applied Biosystems)にて解析を行うことで、それぞれのマーカーにおける各アレルのピークおよびサイズを同定し、患者および健常者におけるアレル数ならびアレル毎の所有人数を求めた。それに対しプール化DNAを用いた場合は、同ソフトウェアにて増幅効率や波形パターンの確認を行った後、解析工程でのAnalysis Methodに関する設定値を一部変更し、サイジングのみを行った。このデータをFsa2Fsb3730ソフトウェア(遺伝子タイピング自己免疫疾患部門にて開発)において情報変換を行うことで、従来のABI PRISM 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems)での解析に用いるPickPeak Version 1.11ソフトウェア(遺伝子タイピング自己免疫疾患部門にて開発)でのアレルの同定作業および各ピークのシグナル値の取得が可能となった。
【0023】
1−5.統計計算
個別検体を使用した場合は、遺伝子タイピングの結果として得られた患者および健常者におけるアレル毎の所有人数と総サンプルのアレル数から、各マーカーについてのアレル頻度を算出した。
プール化DNAにおいては、アレルの同定と同時に得られたアレルピーク毎のシグナル値より総和を求め、各シグナル値を総シグナル値で除することで、各マーカーについて患者集団および健常者集団内での推定アレル頻度を求めた。
プール化DNAの精度確認においては、上記の個別検体でのアレル頻度とプール化DNAにおけるアレル頻度に対して、2 x 2および2 x n分割表を作成しχ2検定を行った。
各マーカーにおける遺伝的相関解析にあたっては、上記のプール化DNAの推定アレル頻度に総アレル数の180を乗算することによって、各アレル毎の患者集団および健常者集団内での所有人数を求め、これに対して2 x 2および2 x n分割表を作成しχ2検定ならびにFisherの直接確率検定を行った。これらの遺伝的相関解析における検定には、UNIX(登録商標)機とcreate Matrix Version 1.0、check created Data Version 1.1、AStat format To File Version 1.2およびAstat2 Version 2.0.2の4つのソフトウェアを導入し、解析の高速化を図った。
【0024】
1−6.SNPの選択とタイピング
マイクロサテライトマーカーによるゲノムワイドな遺伝的相関解析で同定された摂食障害感受性候補マーカーのうち、近傍に既知の脳神経関連遺伝子(群)が存在するものを優先的にSNP高密度マッピングによる感受性領域・遺伝子の絞込みの解析対象とした。
基本的には疾患と相関するマイクロサテライトマーカーを中心とする約400kb程度を解析対象とし、その領域になるべくSNPが均等間隔に配置されるように50個程度を選択した。解析対象の400kb内に存在する既知の脳神経関連遺伝子についてはより高密度にSNPを選択した。SNPは、NCBI dbSNP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)およびJSNP Database(http://snp.ims.u−tokyo.ac.jp/index_ja.html)より入手した情報をもとに選択し、特に後者から日本人集団での多型性およびアレル頻度情報が入手できたものは優先的に選択した。
【0025】
摂食障害患者456例(AN−R 218例,AN−BP 95例,AN−P 18例, BN 125例)とコントロール872例をSNPタイピングの解析対象とした。各検体のDNA濃度はPicoGreen定量法で測定し、5ngのGenomiphi増幅DNAを一反応に用いた。複数のSNPプローブでテストタイピングを行い本解析に先駆けて各検体の増幅効率を確認し効率の悪いものは除外するなどしてタイピング成功率の向上に努めた(その結果、概ね99%以上のタイピング成功率を維持できた)。
SNPタイピングに用いる鋳型DNAはGenomiPhi DNA Amplification Kit(Amersham Biosciences)による増幅DNAを使用した。予備実験でPicogreen定量済みの検体DNA 10ngから4μg相当(200ng/μl)の増幅DNAが得られる条件を確立し、その条件での増幅DNAと増幅前の検体DNAとで比較SNPタイピングを行い、増幅DNAの使用によるタイピング成功率の低下やタイピング結果の相違がないことを確認した。そこで確立した条件で全摂食障害患者検体を増幅し、5ng相当の増幅DNAを一反応に用いた。各検体の1 ng/μl溶液を含むマスタープレートを作製し、Biomek FX(Beckman Coulter社)で96穴PCRプレートに5ng/wellを自動分注した。分注済みプレートは一晩室温で放置し風乾した。乾燥DNA入りプレートは使用時まで−20℃で保存した。プローブミックスとABsolute Q−PCR Mix(ABgene)を含む反応液5μlを加え、PCR反応(95℃ 10分の後, 95℃ 10秒と60℃ 1分を35−40 サイクル)をABI GeneAmp 9700 PCR systemで行った。ABI PRISM 7900 HT DetectorでTqaManプローブ蛍光強度(VIC, FAM)を検出し、プレート毎に個々の検体のアレルタイプを決定した。
【0026】
1−7.SNP相関解析
一候補領域の全てのSNPタイピングデータをExcelで集計し、患者群およびコントロール群でのアレル・遺伝子型頻度をカウントした。コントロール集団でのマイナーアレル頻度が5%以下のSNP、およびコントロール集団でのHardy−Weinberg平衡検定値がP<0.05示すSNPは次に述べる単一SNPについてのケース・コントロール相関解析の対象外とした。
摂食障害全体あるいは特定の診断分類群(AN,AN−R,BN)と相関を示すSNPを同定するために、各SNPについてのケース・コントロール相関解析(χ2検定ならびにFisher直接確立検定)を、摂食障害患者456例(AN−R 218例,AN−BP 95例,AN−P 18例,BN 125例)対コントロール872例、AN 331例対コントロール872例、AN−R 218例対コントロール872例、およびBN 125例対コントロール872例で行った。
更に、摂食障害全体あるいは特定の診断分類群と相関を示すハプロタイプブロックを検索するために、連鎖不平衡解析、Expectation−Maximization法を用いたハプロタイプ推定、ハプロタイプを考慮したケースコントロール相関解析を行った。ハプロタイプブロックの構築にはGabriel法(Gabrielら, Science. 2002 296(5576):2225−2229)を採用した。ハプロタイプブロック解析で同定されたブロック情報をもとに、ブロック単位でのハプロタイプを考慮したケース・コントロール相関解析を行い、その検定結果(χ2値)の有意性をPermutation法(反復回数1000あるいは10000)で評価した。これらのハプロタイプ推定を伴う統計解析には主にSNP解析用統合ソフトウェアSNP Alyze(ダイナコム社)を用いた。
【0027】
2.結果
2−1.摂食障害検体DNAサンプルの濃度定量
プール化DNA法において集団でのアレル頻度推定を高い精度で行うためには、プールする個々のDNAサンプルの濃度を正確に測定することが肝要である。そこで、摂食障害検体および対照として用いる健常人検体のDNA濃度測定にはPicoGreen定量法を採用した。
抽出DNAをアガロースゲル電気泳動によりDNAの分解とRNAの混入がないことを確認し、PicoGreen蛍光試薬(Molecular Probe)と蛍光プレートリーダーGENios(TECAN)あるいはMTP−100F(コロナ電気)を用いて定量を行った。既知濃度のλファージDNAにおける検量線を作成の上、サンプル中に混在する一本鎖DNAやタンパク質などの夾雑物の影響を受けることなく、二本鎖DNAを高感度かつ特異的に定量した。
【0028】
2−2.AN−R検体を用いたプール化DNAの作製および精度確認
サンプル集団内の遺伝的異質性は、疾患感受性領域の絞込みにおいて、その検出力を低下させ第1種あるいは第2種のエラーを増加させる危険性がある。近年のE−TDT(extended transmission disequilibrium test)による家系解析からも、Cannabinoid受容体遺伝子(CNR1)のAATリピートにおいて、摂食制限型(AN−R)の患者と無茶食いを伴う排出型(AN−B/P)の患者間での伝達allele数の違いが報告されている。そこで、一次・二次スクリーニングでプール化DNA法に使用する検体は広義の摂食障害検体ではなく、拒食症の中でも特に摂食制限型(AN−R)のサンプルのみを限定して使用した。
一次スクリーニングのためプール化DNAを例に、その作製ならびに精度確認の方法を述べる。DNA回収量が16μg以上のAN−R 90例をプール化DNAの作製に供した。1反応あたりのプール化DNAの使用量を減少させてもPCR反応および波形パターンに影響のないことを確認した上で、使用量を通常量の48ngから24ngに半減させ、各サンプルあたりのDNA混合量を8μg(30,000反応分)に抑えた。 健常者サンプル90例についても同量の各8μgを混合し、対照となるプール化DNAを作製した。
【0029】
次に本解析に先立ち、プール化DNAの精度確認を行った。当研究グループが所有する他疾患のゲノム解析用マイクロサテライトマーカーシリーズの内、遺伝子タイピングにおける波形判別が容易かつ明瞭で、多数のアレルが存在するマーカー数種を選抜し、患者および健常者のプール化DNAに対するPCR反応と同時に、各々のプール化DNAの作製時に混合した90例の個別検体に対してPCR反応を行った。PCR反応終了後、Applied Biosystems 3730 DNA Analyzer(Applied Biosystems)にて電気泳動をし、得られたRaw DataをABI PRISM GeneMapper Software Version 3.0(Applied Biosystems)で解析することにより、アレルの同定および各アレルのピークシグナル値の取得を行った。プール化DNAにおけるタイピングデータが個別検体での結果を忠実に反映しているかを調べるため、それぞれ個別検体のアレル情報から患者集団内と健常者集団内でのアレル頻度を集計・算出し、プール化DNAタイピングでのアレル頻度との2 x nのχ2検定を行い、その統計量を求めた。その結果、患者、健常者共に、個別検体とプール化DNAの間で0.86〜0.99と非常に高いP値を示し、プール化DNAでのタイピングデータが個別検体のデータを反映している極めて質の高いプール化DNAを調整できたことを確認した(表2)。
【0030】
【表2】
【0031】
2−3.ABI 3730 DNAアナライザにおける高速タイピングシステムの構築
本研究においては、電気泳動の条件を従来のプール化DNA法のABI PRISM 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems)からApplied Biosystems 3730 DNA Analyzer(Applied Biosystems)に変更することで、タイピング系のハイスループット化を図った。
Applied Biosystems 3730 DNA AnalyzerはABI PRISM 3700 DNA Analyzerに比べ、単位時間当たりのPlate処理枚数が多いのみならず、より微量な反応産物でより高感度に蛍光標識物の検出ができ、また機械の構造上の違いから故障の発生率が極端に少なく、メンテナンスも容易であるという利点がある。検出感度の点では、従来の方法のままApplied Biosystems 3730 DNA Analyzerで電気泳動を行うと一部のピークが飽和してしまい、プール化DNAのタイピングによって得られたアレル頻度が個別検体でのアレル頻度を反映しなくなってしまうため、電気泳動に用いる反応産物の希釈率を上げ、40倍あるいは80倍と2段階に設定することにより各ピークのシグナル値を10,000未満に下げて、この問題を解消した。
【0032】
Applied Biosystems 3730 DNA Analyzer で得られた結果は、ABI PRISM GeneMapper Software Version 3.0(Applied Biosystems)上で増幅効率・波形パターンを確認し、アレルのサイズを決定を行った。Fsa2Fsb3730ソフトウェア(遺伝子タイピング自己免疫疾患部門にて開発)にてファイル形式変換を行った後に、各マーカーについてのアレル同定およびシグナル値の獲得をプール化DNA解析用ソフトウェアPickPeak Version 1.11で行った。
【0033】
2−4.UNIX(登録商標)機および新規ソフトウェア導入による統計処理の高速化
プール化DNA法に用いる全23,465マーカーついての遺伝的相関解析にあたり、UNIX(登録商標)機と次に述べる4つの新規ソフトウェアを用いた。
PickPeak Version 1.11ソフトウェアによる解析によって出力されたマーカー毎のアレルのログ情報をcreate Matrix Version 1.0ソフトウェアとcheck created Data Version 1.1ソフトウェアにより、修正を加えながら整列化させ、各アレルピークのシグナル値を確定した。次いでAStat format To File Version 1.2ソフトウェアにより、各アレルピークのシグナル値と総アレル集計シグナル値の比率から、各マーカーについて患者集団および健常者集団内での推定アレル頻度(%)を求め、このプール化DNAの推定アレル頻度(%)に総アレル数(180)を乗算し、各アレル毎の患者集団および健常者集団内での推定所有人数を求めた。これに対してAstat2 Version 2.0.2ソフトウェアを用いて2 x 2および2 x n分割表を作成し、χ2検定ならびにFisherの直接確立検定を行った。これらのUNIX(登録商標)機での解析・検定システムの導入により、95マイクロサテライトマーカー単位の統計計算が可能となり、有意差検定における統計処理の高速化が実現した。
【0034】
2−5.23,465個のマイクロサテライトマーカーとプール化DNA法を用いた全ゲノム相関解析による摂食障害感受性候補座位の同定
拒食症制限型(AN−R)とコントロール群のプール化DNAを用いた一次・二次スクリーニング、個別タイピングによる三次スクリーニング、および確認タイピングにより、効率的な疾患感受性候補領域の同定を行ったので、以下にその詳細を述べる(図2参照)。各段階で、患者集団および健常者集団における各アレル頻度の解析と2 x 2、2 x n分割表を用いたχ2検定ならびにFisherの直接確立検定による有意差の検定を行った。
【0035】
2−5−1.有意水準P<0.05での段階的スクリーニング(図2の経路1参照)
(1)一次スクリーニング:AN−R 90例とコントロール90例のプール化DNAタイピング
上記2−2.の要領で作製したプール化DNAを23,465個のマイクロサテライトマーカーでタイピングし、各マーカーについて推定アレル頻度を決定し有意差検定を行った。1414個(23,465個のうちの6.03%)のマイクロサテライトマーカーにおいて、一つまたは複数のアレルでの有意差(P<0.05)が認められた(表3)。これらのマイクロサテライトマーカーを2次スクリーニングの解析対象とした。
【0036】
【表3】
【0037】
(2)二次スクリーニング:一次スクリーニングとは独立なAN−R90例とコントロール90例のプール化DNAタイピング
新たなプール化DNAを作製し段階的なタイピングを行うことで、解析の際に統計的な閾値について特別な補正を入れることなく偽陽性を効果的に減少させることが期待されるため、一次スクリーニングとは独立なAN−R90例とコントロール90例のプール化DNAを二次スクリーニングに用いた。
一次スクリーニングで有意差(P<0.05)が認められた1414個のマイクロサテライトマーカーに関して二次スクリーニングを行った。273個(1414個のうちの19.31%)のマイクロサテライトマーカーにおいて、一つまたは複数のアレルでの有意差(P<0.05)が認められた(表4)。
この273個のマイクロサテライトマーカーについて、有意差を示すアレルは、(i)その推定アレル頻度のAN−R群とコントロール群間での大小関係が一次・二次スクリーニングで一致しているか、(ii) Majorアレルであるか、の二つの条件について個別に検討した。これらの条件を満たす145個のマイクロサテライトマーカーを選抜し、三次スクリーニングの解析対象とした(図2)。
【0038】
【表4】
【0039】
(3)三次スクリーニング:一次・二次スクリーニングとは独立なAN 140例とコントロール161例に対する個別タイピング
二次スクリーニングで選抜した145個のマイクロサテライトマーカーについて、一次・二次スクリーニングとは独立なAN140例(AN−R 32例、AN−P 32例、AN−BP 89例)とコントロール161例に対して個別タイピングを行った。各マーカーのAN群・コントロール群でのアレル頻度を確定し有意差検定を行った結果、40個(145個のうちの27.59%)が少なくとも一つのアレルでP<0.05を示した(表5)。
この40個のマイクロサテライトマーカーについて、三次スクリーニングで有意差(P<0.05)を示したアレルが、(i)患者群(AN−R群あるいはAN群)とコントロール群の間でのアレル頻度の大小関係にプール化DNAタイピング(一次・二次スクリーニング)と個別タイピング(三次スクリーニング)で一貫性を示すか、(ii) Majorアレルであるか、などの条件を検討し、8個のマイクロサテライトマーカーを選抜した。この8個を確認個別タイピングの解析対象とした。
【0040】
【表5】
【0041】
(4)確認個別タイピング:AN 320例とコントロール341例(一次・二次・三次スクリーニングで使用した全ての患者群およびコントロール群検体)を対象とした個別タイピング
三次スクリーニングで選抜した8個のマイクロサテライトマーカーについて、一次・二次・三次スクリーニングで使用した全ての患者検体(320例)およびコントロール検体(341例)に対して個別タイピングを行った(患者群の内訳は、AN−R 212例、AN−P 32例、AN−BP 89例)。各マーカーの患者・コントロール群でのアレル頻度を確定し有意差検定を行った結果、3個のマイクロサテライトマーカーが少なくとも一つのアレルで疾患との相関(P<0.05)を示した(表6)。よって、これら3個のマイクロサテライトマーカーを摂食障害感受性候補マーカーとみなした。これら3マーカーは一次・二次・三次スクリーニングおよび確認個別タイピングで一貫して少なくとも一つのアレルがP<0.05を示したマーカーである。
【0042】
2−5−2.タイプ2エラー等を考慮した摂食障害感受性候補マーカーの更なる抽出
(図2の経路2および3参照)
二次スクリーニングでの有意差検定で0.05≦P<0.1を示すマーカーから、有意差を示すアレルが(i)その推定アレル頻度のAN−R群とコントロール群間での大小関係が一次・二次スクリーニングで一致しているか、(ii)Majorアレルであるか、を基準として13個のマイクロサテライトマーカーを選抜した。これらに対し上記(3)と同じ要領で三次スクリーニングを行った。一次・二次スクリーニングで有意差を示したアレルの推定アレル頻度のAN−R群とコントロール群間での大小関係が、三次スクリーニング(AN群対コントロール群)でも一致しているかを指標に13個のうち4個のマーカーを選抜し、それらを上記(4)と同じ要領の確認個別タイピングの対象とした。その結果、4マーカーとも少なくとも一つのアレルで疾患との相関(P<0.05)を示した(表6)。これら4個のマイクロサテライトマーカーも摂食障害感受性候補マーカーとみなした(図2の経路2参照)。
さらに、一次・二次スクリーニングでは有意水準P<0.05で残ったが、三次スクリーニングでは0.05≦Pを示した105個のマイクロサテライトマーカーについて、一次・二次スクリーニングで有意差を示したアレルの推定アレル頻度のAN−R群とコントロール群間での大小関係が、三次スクリーニング(AN群対コントロール群)でも一致しているかを指標に4個のマーカーを選抜し、それらを確認個別タイピングの対象とした。その結果、4マーカーとも少なくとも一つのアレルで疾患との相関(P<0.05)を示した(表6)。これら4個のマイクロサテライトマーカーも摂食障害感受性候補マーカーとみなした(図2の経路3参照)。
【0043】
【表6】
【0044】
2−5−3.11個の摂食障害(拒食症)感受性マーカー
以上のようにして、確認個別タイピング(AN 320例・コントロール341例)において摂食障害(拒食症)と相関(P<0.05)を示す11個のマイクロサテライトマーカーを同定した(図3)。11個のマーカーについて確認個別タイピングでのP値および近傍遺伝子情報(遺伝子数ならびに脳神経関連遺伝子の有無)を表6にまとめた。
【0045】
2−6.4つの摂食障害候補感受性領域に対するSNP高密度マッピングと統計解析
マイクロサテライトマーカーによる全ゲノム相関解析により同定された11箇所の摂食障害候補感受性領域のうち、(1)神経細胞接着関連分子をコードするCNTN5遺伝子領域(11q22)、(2)神経伝達物質放出制御分子をコードするSYT12遺伝子領域(11q13)、(3)神経細胞膜貫通分子をコードするNET01遺伝子領域(18q22)、(4)CAMT1、PER3、PARK7などの脳関連遺伝子クラスター(1p36)、(5)CDH18遺伝子近傍領域、(6)IQカルモジュリン−結合モチーフ遺伝子領域、(7)TNRC9遺伝子を含む領域、(8)NR5A及びZNF281遺伝子を含む領域に着目した。具体的には、MS11a(1105D12), MS1b(0105G07), MS11b(1109D02), MS18a(1802B06)、MS1a(0106G06),MS5a(0512E09),MS16a(1603G04)及びMS1c(0117H09)の8つのマイクロサテライトを含む領域をSNP高密度マッピングの解析対象とした結果を以下に示す。なお、残りの3つのマイクロサテライト(1202B03、1207B03及び9901B09)についても同様の手法によりマッピングできる。いずれの領域についても摂食障害(拒食症)と相関を示したマイクロサテライトマーカーの両隣のマイクロサテライトマーカーは相関を示さなかったことから、基本的には相関を示したマイクロサテライトマーカーを中心とする400kb程度の範囲をSNP高密度マッピングの解析対象とした。各領域から選択したSNPについて、摂食障害(ED)患者456例(AN−R 218例, AN−BP 95例, AN−P 18例, BN 125例)とコントロール872例をタイピングし、相関解析を行った。コントロール集団でのマイナーアレル頻度(MAF)が5%以下、またはコントロール集団でのHardy−Weinberg平衡(HWE)検定でP<0.05を示すSNPはケース・コントロール相関解析の対象外とした。
【0046】
2−6−1.MS11a(1105D12)(11q22上)
マイクロサテライトマーカー1105D12は、CNTN5遺伝子の第8イントロンに位置し(図4)、この遺伝子は神経細胞接着分子contactin 5をコードする。1105D12を中心とする440kbの範囲から選んだ66個のSNPについてタイピングを行い、合計で11個のSNPを相関解析の対象外とした(5個は多型性が無く、4個がMAF<5%、2個がHWE P−value<0.05)。残った55個の各SNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、アレル頻度についての検定では、コントロール(872例)対ED(456例)で3SNP、対AN(331例)で3SNP、対AN−R(218例)で7SNPが疾患との相関(P<0.05)を示した(図6)。これら相関を示したものはいずれもイントロニックSNPだった。対AN−Rで相関を示した7SNPのうちのひとつであるSNP#26はMS1105D12よりおよそ33kb離れていた。また対AN−Rで相関を示したSNP#30−34が位置する領域内にMS1105D12が含まれていた。ハプロタイプブロック解析により8個のブロックを同定し(図5および6)、各ブロック毎にハプロタイプを考慮したケース・コントロール相関解析を行ったところ、SNP#31−34からなるBlock4(サイズは約14.3 kbで#31がtag SNP)のA−T−A−CハプロタイプがAN−Rとの相関を示した(Permutation P=0.0131)(図7)。
SNP#26は、イントロニックSNPだがエキソン8から218bpの距離に位置し、対ED、対AN、対AN−Rのいずれでも相関を示した。また、AN−Rとの相関を示したBlock4内のSNP#33と#34の間にエキソン9が位置している。従って、エキソン8および9を含む領域内の既知SNPおよびAN−R検体を用いた配列決定を行うことで同定されるかもしれない新規SNPを対象とした更なるSNPタイピング情報を取得し、ケース・コントロール相関解析を実施することで、この領域とAN−Rとの相関について更なる評価が可能となる。
【0047】
2−6−2.MS1b (0105G07)(1p36上)
マイクロサテライトマーカー0105G07を中心とする約400kbの領域には、脳組織で非常に強く発現しているCAMTA1(calmodulin−binding transcription activator 1)遺伝子、サーカディアンリズムに関与するPER3遺伝子、パーキンソン病の原因遺伝子の一つであるPARK7遺伝子など、複数の脳神経系遺伝子が含まれている(図8)。0105G07を中心とする344kbから選んだ76個のSNPについてタイピングを行い、合計で28個のSNPを相関解析の対象外とした(22個は多型性が無く、2個はプローブ合成不可、2個がMAF<5%、2個がHWE P−value<0.05)。残った48個の各SNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、アレル頻度についての検定で、コントロール(872)対ED(456)で1SNP、対AN(331)で2SNP、対AN−R(218)で15 SNPが疾患との相関(P<0.05)を示した(図9および10)。ハプロタイプブロック解析により9個のブロックを同定し(図9、11及び12)、各ブロック毎にハプロタイプを考慮したケースコントロール相関解析を行ったところ、Block3(SNP#14−16)のA−T−Cハプロタイプ(Permutation P=0.0296)、Block4(SNP#17−20)のG−C−G−Gハプロタイプ(Permutation P=0.0274)、Block8(SNP#35−39)のT−C−A−C−Tハプロタイプ(Permutation P=0.0269)、 Block9(SNP#40−48)のC−C−A−C−T−C−C−A−Aハプロタイプ(Permutation P=0.0112)がAN−Rとの相関を示した(図11および12)。Block3を形成する3つのSNPはPER3遺伝子のイントロンに位置し、Block4を形成する4つのSNPのうち、#17と#19はPER3のイントロンに、#20はPER3とUTS2のインタージェニック領域に位置し、#18はPER3のエキソン17に位置するミスセンスSNPであった。Block8を形成する5個のSNPはTNFRSF9遺伝子のイントロンあるいは5’上流に位置した。またBlock9を形成する9個のSNPのうちの一つ#40はPARK7遺伝子の5’UTRに位置し、ほかはイントロニックあるいはインタージェニックSNPであった。
【0048】
単一SNPに対するケース・コントロール相関解析で最も低いP−value(対AN−RでP=0.0046)を示したSNP#34は、マイクロサテライトマーカー0105G07のごく近傍に位置した。Block3とBlock4のおよびBlock8とBlock9のブロック間連鎖不平衡係数(D’値)は0.9779と0.8879で、Block3−4とBlock8−9はそれぞれ一つのより大きなブロックとみなすことができる。Block3−4領域はPER3遺伝子のほぼ全体を含み、Block8−9はTNFRSF9 (Tumor necrosis factor receptor superfamily member 9 precursor)、PARK7、MIG−6 (mitogen−inducible gene 6)遺伝子を含む。統計遺伝学的にはハプロタイプブロックのBlock3−4およびBlock8−9内の遺伝子が摂食障害(拒食症)感受性遺伝子の候補となるが、遺伝子機能を考慮するとPER3とPARK7が有力な候補と考えられる。これら二つの遺伝子を主な対象とした更なるSNPタイピングとケース・コントロール相関解析が待たれる。SNP#18はPER3のexon 17に位置するmissense SNPであるが、それ単独ではED、AN.AN−Rと相関を示さず、SNP#17−20のハプロタイプでみた時にAN−Rとの相関が検出された。然るにSNP#18は摂食障害感受性を規定する機能SNPではなく、そのハプロタイプブロック内で疾患感受性を規定する機能SNPを探索することが必要である。Block9のSNP#40はそれ単独でもAN−Rとの相関を示し、PARK7のエキソン1の約20bp上流に位置する。従って、SNP#40がPARK7の転写レベル調節に関与しているかどうかは興味深い点である。
【0049】
2−6−3.MS11b (1109D02)(11q13上)
マイクロサテライトマーカー1109D02を中心とする約400kbには神経伝達物質放出に関与することが知られているSYT12(synaptotagmin XII)遺伝子が含まれている(図13)。1109D02を中心とする441kbの範囲から選んだ34個のSNPについてタイピングを行い、合計で14個のSNPを相関解析の対象外とした(8個は多型性が無く、1個はSNPプローブ合成不可、5個がMAF<5%)。残った20個の各SNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、アレル頻度についての検定で、コントロール(872)対ED(456)で1 SNP、対AN(331)で2SNP、対AN−R(218)で2SNPが疾患との相関(P<0.05)を示した(図14および15)。対ANおよび対AN−Rで相関を示したSNP#11および#12は、両方ともSYT12遺伝子のイントロンに位置し、ハプロタイプブロック(Block3、図14および16)を形成していた。このブロックはハプロタイプを考慮したケース・コントロール相関解析ではA−Tハプロタイプが相関を示した(Permutation P=0.0245)。
神経伝達物質放出に関与する膜タンパクをコードするSYT12遺伝子内に位置するSNPが対ANおよび対AN−Rで相関を示したことは興味深い。SYT12の拒食症への関与をより明確にするために、この遺伝子領域に対する高密度SNPマッピングの実施が待たれる。
【0050】
2−6−4.MS18a(1802B06)(18q22上)
マイクロサテライトマーカー1802B06を中心とする約400kbにはhypothetical proteinをコードするLOC400655のみが含まれるが(図17)、1802B06よりセントロメア側に約270kb離れた位置に神経伝達物質の放出に関与する膜タンパクをコードするNETO1(neuropilin− and tolloid−like protein 1)遺伝子が存在した。そこで、1802B06を中心にNETO1を含む約1030kbの領域より、38個のSNPを選択した(うち23個はNETO1遺伝子座位より選択)。SNPタイピングの結果、合計で12個のSNPを相関解析の対象外とした(5個は多型を示さないかSNPプローブ合成不可、4個がMAF<5%、3個がHWE P−value<0.05)。残った26個の各SNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、アレル頻度についての検定でコントロール対ED(456)、対AN(331)、あるいは対AN−R(218)で相関を示すNETO1遺伝子座由来のSNPは無かった(図18および19)。しかしながら、1802B06からセントロメア側に約40kb離れた(NETO1遺伝子からは230kb上流)SNP#19,20が対ED、対AN、対AN−Rで相関を示した。これらのSNPはハプロタイプブロックを形成しており(Block4、図18および20)、ハプロタイプを考慮したケース・コントロール相関解析ではA−Tハプロタイプが対ED,対AN,対AN−Rで相関を示した(Permutation P=0.008(ED),0.0041(AN),0.0108(AN−R))。
【0051】
対ED、対AN、対AN−Rで相関を示したSNP#19,20は、マイクロサテライトマーカー1802B06の比較的近傍(約40kb)に位置している。先に述べた領域を含む4領域全てについて、摂食障害(拒食症)感受性マーカーとして同定されたマイクロサテライトマーカーの近傍SNP(あるいはSNP群)で拒食症(特にAN−R)との相関が認められた。この結果は、既に複数の論文で報告されているように、マイクロサテライトマーカーの連鎖不平衡ブロック長は100kb程度(引用文献19参照)であることをよく反映していると考えられる。SNP#19,20はNETO1遺伝子からは230kbも離れており、両者を関連付けるようなエビデンスは今のところない。しかしながら、例えばSNP#19,20が含まれるハプロタイプブロック内にNETO1の組織特異的エンハンサーエレメントなどが存在し遺伝子発現調節に関与しているような可能性も考えられる。
【0052】
2−6−5.MS1a(0106G06)(1q41上)
マイクロサテライトマーカー0106G06を中心とする約400kbにはLOC128153及びUBBP2という2つの既知の遺伝子が含まれる(図21)。SNPタイピングの結果、30個のSNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、SNP#19−22、23−25及び30が対ANで相関を示した(図23及び24)。これらのSNPはハプロタイプブロックを形成しており(Block4及び5;図25)、Block4についてはG−C−T−A−C−C−G、Block5についてはT−G−A−T−Gのハプロタイプが対ED,対AN,対AN−Rで相関を示した。
【0053】
2−6−6.MS5a(0512E09)(5p15上)
マイクロサテライトマーカー0512E09を中心とする約400kbにはカドヘリン18(CDH18)という既知の遺伝子が含まれる(図22)。SNPタイピングの結果、27個のSNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、SNP#11対AN(AN−Rではない)で相関を示し、SNP#14、15が対BNで相関を示した(図23及び26)。これらのSNPはハプロタイプブロックを形成していたが(図27及び28)、ハプロブロックと疾患との間に相関はみられなかった。
【0054】
2−6−7.MS16a(1603G04)(16q12上)
マイクロサテライトマーカー1603G04を中心とする約400kbにはLOC388277、LOC283854及びTNRC9という3つの既知の遺伝子が含まれる(図29)。SNPタイピングの結果、33個のSNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、SNP#4、10、11、14、18−21、23−25が対AN(又はAN−R)で相関を示した(図31及び32)。これらのSNPはハプロタイプブロックを形成しており(図33のBlock4及び図34のBlock5)、Block4についてはC−T−G−Aのハプロタイプが対AN−Rで相関を示し、Block5についてはG−Gのハプロタイプが対ED,対AN,対AN−Rで相関を示した。
【0055】
2−6−8.MS1c(0117H09)(1q32上)
マイクロサテライトマーカー0117H09を中心とする約400kbにはNR5A、LOC339521、LOC391150及びZNF281という4つの既知の遺伝子が含まれる(図30)。SNPタイピングの結果、46個のSNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、SNP#7、33、37−38、41−43が対AN(又はAN−R)で相関を示した(図31及び35)。これらのSNPはハプロタイプブロックを形成しており(図36のBlock1及び図37のBlock8)、Block1についてはG−G−T−G−C−G−Aのハプロタイプが、Block8についてはT−G−G−T−T−T−T−T−Tのハプロタイプが対AN−Rで相関を示した。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】MS11a(1105D12)領域、MS1b(0105G07)領域、MS11b(1109D02)領域及びMS18a(1802B06)領域において摂食障害と関連性を示したSNPのSNP名、dbSNP、ABIアッセイID、JSNP IDおよびCelera RefSNP IDを示す表である。
【図2】摂食障害(拒食症)感受性マーカーの同定手順を示す説明図である。
【図3】11個の摂食障害(拒食症)感受性マーカーの染色体上の位置を示す図である。
【図4】マイクロサテライトマーカー1105D12の染色体上の位置を示す図である。
【図5】MS11a(1105D12)領域における、ハプロブロック解析によって同定されたハプロブロックの位置を示す図である。
【図6】MS11a(1105D12)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図7】MS11a(1105D12)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図8】マイクロサテライトマーカー0105G07の染色体上の位置を示す図である。
【図9】MS1b(0105G07)領域における、ハプロブロック解析によって同定されたハプロブロックの位置を示す図である。
【図10】MS1b(0105G07)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図11】MS1b(0105G07)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図12】MS1b(0105G07)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図13】マイクロサテライトマーカー1109D02の染色体上の位置を示す図である。
【図14】MS11b(1109D02)領域における、ハプロブロック解析によって同定されたハプロブロックの位置を示す図である。
【図15】MS11b(1109D02)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図16】MS11b(1109D02)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図17】マイクロサテライトマーカー1802B06の染色体上の位置を示す図である。
【図18】MS18a(1802B06)領域における、ハプロブロック解析によって同定されたハプロブロックの位置を示す図である。
【図19】MS18a(1802B06)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図20】MS18a(1802B06)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図21】マイクロサテライトマーカー0106G06の染色体上の位置を示す図である。
【図22】マイクロサテライトマーカー0512E09の染色体上の位置を示す図である。
【図23】MS1a(0106G06)領域及びMS5a(0512E09)領域における、ハプロブロック解析によって同定されたハプロブロックの位置を示す図である。
【図24】MS1a(0106G06)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図25】MS1a(0106G06)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図26】MS5a(0512E09)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図27】MS5a(0512E09)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図28】MS5a(0512E09)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図29】マイクロサテライトマーカー1603G04の染色体上の位置を示す図である。
【図30】マイクロサテライトマーカー0117H09の染色体上の位置を示す図である。
【図31】MS16a(1603G04)領域及びMS1c(0117H09)領域における、ハプロブロック解析によって同定されたハプロブロックの位置を示す図である。
【図32】MS16a(1603G04)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図33】MS16a(1603G04)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図34】MS16a(1603G04)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図35】MS1c(0117H09)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図36】MS1c(0117H09)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図37】MS1c(0117H09)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、摂食障害に関連する遺伝子多型を特定し、当該遺伝子多型を検出することにより摂食障害の発症の危険度を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摂食障害(eating disorder)は診断基準により、神経性食欲不振症(拒食症;anorexia nervosa、以下ANと略す)と神経性大食症(過食症;bulimia nervosa、以下BNと略す)、いずれにも分類不能のもの(eating disorder not otherwise specified)の大きく3つのグループに分類される。いずれの群も1990年代後半より、若い女性を中心に発症率が急激に増加してきている。若い女性の有病率は、拒食症では約0.5〜1%、過食症では約1〜3%と言われ、また特に拒食症では、患者は回復と再発の周期を繰り返し、死亡率も他の精神疾患と比べても平均6%と非常に高い。この重大な有病率や死亡率からも、摂食障害の病因・病態の解明および有効な予防法・治療法の確立が早急に検討されるべきである。
これまで摂食障害の主な原因は母子関係にあるとされており、遺伝要因についてはほとんど考慮されていなかったが、近年の疫学的研究により遺伝要因が摂食障害の発症に深く関わっていることが示唆されており、拒食症患者の一親等の家族では、拒食症や気分障害を発症する危険性が高いことや双生児研究における一卵性双生児の一致率が52〜56%と二卵性双生児の一致率5〜11%より有意に高いことが、遺伝要因との関係を裏付けている。
【0003】
また、摂食障害は多因子疾患で、複数の遺伝子変異と複数の環境因子が共存したときに発症すると考えられている。個々の疾患関連遺伝子変異は、それ単独では発症に至らないが、複数の特定の遺伝子多型が組み合わさり、更に環境因子が加わった場合に初めて摂食障害としての表現型を示すものと推察される。従来、このような弱い効果の遺伝子変異の場合には、罹患者を2人以上もつ家系を多数集めて、マイクロサテライトマーカーによる連鎖解析(ノンパラメトリック連鎖解析)をゲノムワイドに行うことで候補遺伝子座を同定していくのが有効とされてきたが、未だ摂食障害ではゲノムワイドに家系解析を行ってきた例が極めて少なく、報告としてはBouchardらのグループによる1報とKayeらのグループにおける2報のみである(非特許文献1〜3)。Bouchardらのグループでは、194組の家系サンプルにおいてBMI(body mass index)を指標とした肥満にもとづき、第7番(7p15.3)および第15番(15q25−q26)染色体上に連鎖を認めている。7p15.3領域に連鎖が認められた候補遺伝子はNeuropeptide Y(NPY)とGrowth hormone−releasing hormone(GHRH)受容体の2つで、これらは摂食行動に関与する多くの制御因子の1つであり、ともに摂食行動を促進させる働きが知られている。15q25−q26領域ではインシュリン様成長因子1受容体(IGF1R)遺伝子の5’側非翻訳領域に存在するCAリピート上にLOD値=3.56の連鎖を認めている。
【0004】
またKayeらのグループでは、196組の拒食症の家系サンプルから第1番(1p33−36および1q31)、第2番、そして第13番染色体上に有意な連鎖を見出している。特に1p33−36領域においては3.45という非常に高いmultipoint NPLスコアから、後に候補遺伝子としてセロトニン1D受容体(HTR1D)遺伝子とオピオイドδ受容体(OPRD1)遺伝子に関するSNP解析が行われた。その統計学的な証明とともにセロトニンとオピオイドの神経伝達に関わる特性も含め、摂食障害との関連が強く示唆されている(非特許文献4)。これまでの摂食障害感受性遺伝子の解析においては、機能面から疾患に関与すると推定される遺伝子の多型性を検出し、それに基づいた患者‐対照群における相関解析、いわゆる候補遺伝子解析が主として行われてきたために、実際にはセロトニンとオピオイドに代表されるような神経伝達物質系や神経成長因子に関与するノルエピネフリン輸送体(NET)遺伝子(16q12.2)やエストロゲン受容体2(ESR2)遺伝子(14q)などの一部の染色体領域に報告が限られていた(非特許文献5〜7、特許文献1)。
【0005】
【非特許文献1】Griceら,Am J Hum Genet.2002;70:787−92.
【非特許文献2】Chagnonら,Metabolism.2000 Feb;49(2):203−7.
【非特許文献3】Devlinら,Hum Mol Genet.2002;11(6):689−96.
【非特許文献4】Bergenら,Mol Psychiatry.2003 Apr;8(4):397−406.
【非特許文献5】Urwinら,Mol Psychiatry.2002;7(6):652−7.
【非特許文献6】Urwinら,Eur J Hum Genet.2003 Sep 24;11(12):945−50.
【非特許文献7】Eastwoodら, Mol Psychiatry. 2002 ;7(1):86−9.
【特許文献1】WO2003/012143号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記事情に鑑み、より有効な摂食障害の治療及び予防法の開発に資するべく、ゲノムワイドな多型解析を精力的におこなった結果、ゲノム上の11の特定領域において、摂食障害感受性マーカー、及び摂食障害感受性遺伝子、を同定することに成功した。
よって、本発明は、特定のマーカ近傍に存在する遺伝子多型を検出することにより、摂食障害の発症の危険度を判定する方法の提供を目的とする。また、本発明は、摂食障害感受性遺伝子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これまでに、ヒトゲノムの全塩基配列が決定され、ゲノムの多型性情報の蓄積にもとづく遺伝的マーカーの利用によって、ゲノム全体にわたって高解像度かつ排他的に感受性遺伝子の同定が可能となった。そこで、本疾患感受性遺伝子の探索にあたっては、プール化DNA法を導入し、多型性情報に基づき全ゲノムにわったって設定された約23,500の多型マイクロサテライトマーカーを利用して、初めてのゲノムワイドなケース・コントロール型遺伝的相関解析を行うことを試みた。更に同定された摂食障害感受性候補マーカーの近傍領域に座上する遺伝子の機能・発現パターンなどを考慮し、脳神経系機能を持つことが知られている既知の遺伝子が含まれる候補領域を中心にSNP高密度マッピングを行うことで摂食障害感受性領域・遺伝子の絞込みを行った。
【0008】
すなわち、本発明は、0106G06,1105D12,1603G04,0105G07,0117H09,0512E09,1109D02,1202F03,1207B03,1802B06,及び9901B09で表されるマイクロサテライトが、摂食障害の発症と有意な相関を示すことを明らかにし、当該マイクロサテライトのいずれかの前後400kbに存在する遺伝子多型(特に一塩基多型)と摂食障害との相関を解析した結果、請求項2に掲げた一塩基多型の1以上を検出すること、又は2以上の遺伝子多型の組合せからなるハプロタイプを検出することにより、摂食障害の発症危険度を判定することができることを見出した。
従って、当該多型部分を含むDNA鎖は、摂食障害発症の診断のためのマーカー遺伝子として用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る判定方法により、摂食障害の危険度を事前に予測することができる。
【0010】
さらに、本発明において同定された摂食障害感受性遺伝子の詳細な機能解析により、摂食障害に対する新たな治療方法、治療薬の開発を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における摂食感受性領域及び摂食障害感受性遺伝子は、マイクロサテライトマーカー及びSNPsマーカーを用いた遺伝子マッピングによって同定を行った。一般に、遺伝子マッピングを行なう場合の遺伝子多型マーカーとしては、SNPs(single nucleotide polymoruphisms)マーカーとマイクロサテライトマーカーが知られている。マイクロサテライトマーカーは、対立遺伝子数が多いため目的の領域又は遺伝子からある程度離れた位置に設定されたマーカーであっても相関を示す特徴があるため、ゲノムワイドな分析において検索領域の絞込みを行なう上で極めて有効である。一方、SNPsマーカーは、ある程度絞り込まれた領域内において関連遺伝子を詳細に特定する際に有効なマーカーである。本発明における摂食障害感受性領域及び摂食障害感受性遺伝子は、マイクロサテライトマーカーおよびSNPsマーカーの両方を使用することで特定することができた。
【0012】
マイクロサテライトを用いた遺伝子マッピングの一般的な方法に関し、以下に簡単に説明する。
遺伝子多型とは、対象遺伝子座に関する対立遺伝子の種類が2種類以上存在し、主要な対立遺伝子の頻度が99%以下であることを意味する。また遺伝子座とはゲノム上の領域であればどの領域であってもよく、遺伝子が発現している領域に限定されない。マイクロサテライトとは、2塩基から6塩基が繰り返した配列のことを意味し、この繰り返しの回数は個人間で異なる場合があり、繰り返しのばらつきがSTR(Short Tandem Repeat)と呼ばれる多型を形成している。この繰り返し数がマイクロサテライト多型を決定している。典型的なマイクロサテライトはCAリピートである。
【0013】
まず、比較的多型性に富むマイクロサテライトマーカーをゲノムワイドに適当な密度で、例えば、50kb〜150kb、好ましくは、80kb〜120kb、より好ましくは、90〜110kbに1個の割合で設定することができる。マイクロサテライトマーカーは対立遺伝子数(アレル数)が多いほどヘテロ接合度が高く、解析における情報量が増大する。各マイクロサテライト座におけるアリル頻度の分布およびハーディ−ワインベルグ平衡からの偏差に関し、統計解析を実施して相関解析を行なうことで、強い相関を示すマイクロサテライトマーカーを検索することができる。関連性の強いマイクロサテライトマーカーの近傍に、より高密度にマーカーを設定し、さらに関連分析を行なうことで摂食障害感受性領域及び摂食障害感受性遺伝子のマッピングをより正確に行なうことができる。
【0014】
マイクロサテライトの多型検出には、例えば、マイクロサテライトマーカー領域を増幅し得るようなPCR用プライマーセットを使用することができる。PCRを用いた多型検出法としては、RFLP(restriction fragment length polymorphism)法の他にも、SSCP(single strand conformation polymorphism)法、SSOP(sequence specific oligonucleotide probe)法、RNアーゼプロテクション法、RDA(representational difference analysis)法、RAPD(random amplified polymorphic DNA)法、AFLP(amplified fragment length polymorphism)法などを用いることができる。
【0015】
マイクロサテライトマーカーによる遺伝子マッピングによって摂食障害感受性領域及び摂食障害感受性遺伝子が存在すると思われる候補領域をある程度狭めた後に、適当な間隔でSNPマーカーを設定し、さらに関連分析を進める。基本的には、摂食障害と相関するマイクロサテライトマーカーを中心とする約400kb程度を解析対象とし、その領域にほぼ等間隔にSNPが配置されるように、SNPを50個程度選択する。ここで、適切なSNPを選択するにあたり、種々のSNPデータベースよりその情報を入手することができる。選択したSNPのタイピングを行い、各検体のアレルタイプを決定し、得られたデータに基づいて、各SNPについてのケース・コントロール相関解析を行い、摂食障害又は特定の診断分類群との関連性を決定することができる。さらに、連鎖不平衡解析、Expectation−Maximization法を用いてハプロタイプを推定することにより、摂食障害又は特定の診断分類群と相関を示すハプロタイプブロックを同定することができる。
【0016】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
1.方法
1−1.摂食障害検体の収集
血液サンプルを用いて遺伝子解析を実施するにあたり、社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム倫理審査委員会ならびに国立国際医療センター・倫理審査委員会、国立精神神経センター・倫理審査委員会において審査を受け、研究実施の承認を受けた上で研究開発を行った。
これまでに収集されたサンプルは、多数の弧発例および23組の罹患同胞対サンプルを合わせて、拒食症(AN)399例および過食症(BN)136例の合計535例となった。近年の摂食障害における診断基準の明確な細分化により、これらの症例はさらに分類され、拒食症399例はそれぞれ摂食制限型(AN restricting type、以下AN−Rと略す)261例、排出型(AN with purging type、以下AN−Pと略す)23例、また無茶食いを伴う排出型(AN with binge eating / purging type、以下AN−B/Pと略す)115例となった。同様に過食症136例についても、拒食症既往歴のあるグループ(BN with AN)と既往歴のないグループ(BN without AN)として、それぞれ45例および91例に大別した。23組の罹患同胞対サンプル(表1)については、診断基準をもとに分類された摂食制限型(AN−R)のProbandのみを弧発例と合わせて、今回の解析に供試することとした。
また今回のプール化DNA法に対照群として供試するため、比較的平均年齢の低い女性集団が必要であったことから、平均34.5歳の女性集団のサンプル180例(90例+90例)が一次・二次スクリーニング用に遺伝子タイピング自己免疫疾患部門より提供された。
【0018】
【表1】
【0019】
1−2.DNAの抽出・定量とプール化DNAの作製
遺伝子タイピングに使用するゲノムDNAは、国立国際医療センター研究所において収集された全ての各末梢血サンプルより、QIAamp DNA Blood Midi Kit(QIAGEN)あるいはQIAamp DNA Blood Mini Kit(QIAGEN)を用いてDNA抽出および精製を行った。DNA抽出の際、最終の溶出ステップにおいては、続くPCR反応時の増幅効率への影響を考慮し、通常の10分の1濃度のEDTAを含むTE Buffer(10mM Tris−HCl,0.1mM EDTA;pH 8.0)を使用した。
抽出されたDNAは摂食障害部門に送付され、まず分光光度計によって、紫外線波長260nmの吸収率からおおよその濃度を測定し、各サンプルの収量を確認した。またさらに、DNAの分解がないこととRNAの混入がないこともアガロースゲル電気泳動によって確認した。さらに拒食症の中のAN−Rグループの125例については、PicoGreen蛍光試薬(Molecular Probe)と蛍光プレートリーダーGENios(TECAN)あるいはMTP−100F(コロナ電気)を用いて、既知濃度のλファージDNAにおける検量線を作成の上、サンプル中のニ本鎖DNAを高感度かつ特異的に定量した。AN−Rサンプル中、比較的収量の多かった90サンプルを一次スクリーニング用のプール化DNA作製に使用した。また、健常者集団90例についてもDNA抽出後、PicoGreen蛍光試薬により正確な定量を行い、プール化DNAの作製に供試した。患者90例、健常者90例共に、DNA濃度の決定には各サンプルについて最低3回以上の定量を行い、それぞれの測定結果をもとに平均値と標準偏差および変動係数(coefficient of variation)を求め、変動係数が5%以下となる場合のみの平均値をDNA濃度として採用した。DNA濃度から算出された1サンプル当たり8μg分(30,000反応分)の各DNAをそれぞれ等量ずつ混合し、患者群、健常者群の2種類のプール化DNA(8ng/μl)を作製した。二次スクリーニング用のプール化DNAも後に同要領で作製した。
【0020】
1−3.プール化DNA精度確認
作製されたプール化DNAの精度を調べるため、発明者らが所有する他疾患用マイクロサテライトマーカーを指標に、患者および健常者のプール化DNAと各90例の個別検体に対してそれぞれタイピングを行い、プール化DNAを用いた場合と個別検体を用いた場合の各アレル頻度を比較し、プール化DNAでのタイピング結果が、個別検体での結果を反映しているかどうかを2 x 2および2 x n分割表でのχ2検定を行うことにより確認した。
【0021】
1−4.マイクロサテライトマーカーを用いたプール化DNA及び個別検体のタイピング
プール化DNA法の導入により、タイピングに使用するマイクロサテライトマーカー(全23,465マーカー)は、ゲノムワイドに約100kbに1個の間隔で設定・配置されたものを使用した。これらの各マーカーのプライマーペアは、Forwardプライマーの5’末端側が6−FAMによって蛍光標識されたものである。
PCR反応に使用するDNA合成酵素は、数種のマーカーにおいて、従来のAmpliTaq DNA polymerase(Applied Biosystems)と新規のAmpliTaq Gold DNA Polymerase(Applied Biosystems)でのタイピング結果を比較検討し、増幅バンドの明瞭さと得られるシグナル値の高さから、後者のAmpliTaq Gold DNA Polymeraseを使用することとした。
PCR反応溶液は、添付の10xBufferの2μlに最終濃度1.5mMとなるようにMgCl2を添加し、2mMdNTP Mixを2.5μl、ForwardプライマーおよびReverseプライマーを各2pmol、AmpliTaq Gold DNA Polymerase 0.5unitと24ngのプール化DNAをテンプレートに用いて、総量20μl系で調整した。またPCR反応条件は、96℃,15分間の変性に続き、57℃,1分、72℃,1分ののち、96℃,45秒、57℃,45秒、72℃,1分のサイクルを40回繰り返した。
【0022】
PCR反応終了後、増幅産物をそれぞれの増幅効率に応じ、10mMTris−HCl (pH 8.0)を用いて40倍あるいは80倍に希釈し、さらにHiDi Formamide(Applied Biosystems)およびGeneScan 500 LIZ Size Standard(Applied Biosystems)と混合したものを96℃,5分間の熱変性後、Applied Biosystems 3730 DNA Analyzer(Applied Biosystems)にて電気泳動を行った。
個別検体における電気泳動の結果は、ABI PRISM GeneMapper Software Version 3.0(Applied Biosystems)にて解析を行うことで、それぞれのマーカーにおける各アレルのピークおよびサイズを同定し、患者および健常者におけるアレル数ならびアレル毎の所有人数を求めた。それに対しプール化DNAを用いた場合は、同ソフトウェアにて増幅効率や波形パターンの確認を行った後、解析工程でのAnalysis Methodに関する設定値を一部変更し、サイジングのみを行った。このデータをFsa2Fsb3730ソフトウェア(遺伝子タイピング自己免疫疾患部門にて開発)において情報変換を行うことで、従来のABI PRISM 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems)での解析に用いるPickPeak Version 1.11ソフトウェア(遺伝子タイピング自己免疫疾患部門にて開発)でのアレルの同定作業および各ピークのシグナル値の取得が可能となった。
【0023】
1−5.統計計算
個別検体を使用した場合は、遺伝子タイピングの結果として得られた患者および健常者におけるアレル毎の所有人数と総サンプルのアレル数から、各マーカーについてのアレル頻度を算出した。
プール化DNAにおいては、アレルの同定と同時に得られたアレルピーク毎のシグナル値より総和を求め、各シグナル値を総シグナル値で除することで、各マーカーについて患者集団および健常者集団内での推定アレル頻度を求めた。
プール化DNAの精度確認においては、上記の個別検体でのアレル頻度とプール化DNAにおけるアレル頻度に対して、2 x 2および2 x n分割表を作成しχ2検定を行った。
各マーカーにおける遺伝的相関解析にあたっては、上記のプール化DNAの推定アレル頻度に総アレル数の180を乗算することによって、各アレル毎の患者集団および健常者集団内での所有人数を求め、これに対して2 x 2および2 x n分割表を作成しχ2検定ならびにFisherの直接確率検定を行った。これらの遺伝的相関解析における検定には、UNIX(登録商標)機とcreate Matrix Version 1.0、check created Data Version 1.1、AStat format To File Version 1.2およびAstat2 Version 2.0.2の4つのソフトウェアを導入し、解析の高速化を図った。
【0024】
1−6.SNPの選択とタイピング
マイクロサテライトマーカーによるゲノムワイドな遺伝的相関解析で同定された摂食障害感受性候補マーカーのうち、近傍に既知の脳神経関連遺伝子(群)が存在するものを優先的にSNP高密度マッピングによる感受性領域・遺伝子の絞込みの解析対象とした。
基本的には疾患と相関するマイクロサテライトマーカーを中心とする約400kb程度を解析対象とし、その領域になるべくSNPが均等間隔に配置されるように50個程度を選択した。解析対象の400kb内に存在する既知の脳神経関連遺伝子についてはより高密度にSNPを選択した。SNPは、NCBI dbSNP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)およびJSNP Database(http://snp.ims.u−tokyo.ac.jp/index_ja.html)より入手した情報をもとに選択し、特に後者から日本人集団での多型性およびアレル頻度情報が入手できたものは優先的に選択した。
【0025】
摂食障害患者456例(AN−R 218例,AN−BP 95例,AN−P 18例, BN 125例)とコントロール872例をSNPタイピングの解析対象とした。各検体のDNA濃度はPicoGreen定量法で測定し、5ngのGenomiphi増幅DNAを一反応に用いた。複数のSNPプローブでテストタイピングを行い本解析に先駆けて各検体の増幅効率を確認し効率の悪いものは除外するなどしてタイピング成功率の向上に努めた(その結果、概ね99%以上のタイピング成功率を維持できた)。
SNPタイピングに用いる鋳型DNAはGenomiPhi DNA Amplification Kit(Amersham Biosciences)による増幅DNAを使用した。予備実験でPicogreen定量済みの検体DNA 10ngから4μg相当(200ng/μl)の増幅DNAが得られる条件を確立し、その条件での増幅DNAと増幅前の検体DNAとで比較SNPタイピングを行い、増幅DNAの使用によるタイピング成功率の低下やタイピング結果の相違がないことを確認した。そこで確立した条件で全摂食障害患者検体を増幅し、5ng相当の増幅DNAを一反応に用いた。各検体の1 ng/μl溶液を含むマスタープレートを作製し、Biomek FX(Beckman Coulter社)で96穴PCRプレートに5ng/wellを自動分注した。分注済みプレートは一晩室温で放置し風乾した。乾燥DNA入りプレートは使用時まで−20℃で保存した。プローブミックスとABsolute Q−PCR Mix(ABgene)を含む反応液5μlを加え、PCR反応(95℃ 10分の後, 95℃ 10秒と60℃ 1分を35−40 サイクル)をABI GeneAmp 9700 PCR systemで行った。ABI PRISM 7900 HT DetectorでTqaManプローブ蛍光強度(VIC, FAM)を検出し、プレート毎に個々の検体のアレルタイプを決定した。
【0026】
1−7.SNP相関解析
一候補領域の全てのSNPタイピングデータをExcelで集計し、患者群およびコントロール群でのアレル・遺伝子型頻度をカウントした。コントロール集団でのマイナーアレル頻度が5%以下のSNP、およびコントロール集団でのHardy−Weinberg平衡検定値がP<0.05示すSNPは次に述べる単一SNPについてのケース・コントロール相関解析の対象外とした。
摂食障害全体あるいは特定の診断分類群(AN,AN−R,BN)と相関を示すSNPを同定するために、各SNPについてのケース・コントロール相関解析(χ2検定ならびにFisher直接確立検定)を、摂食障害患者456例(AN−R 218例,AN−BP 95例,AN−P 18例,BN 125例)対コントロール872例、AN 331例対コントロール872例、AN−R 218例対コントロール872例、およびBN 125例対コントロール872例で行った。
更に、摂食障害全体あるいは特定の診断分類群と相関を示すハプロタイプブロックを検索するために、連鎖不平衡解析、Expectation−Maximization法を用いたハプロタイプ推定、ハプロタイプを考慮したケースコントロール相関解析を行った。ハプロタイプブロックの構築にはGabriel法(Gabrielら, Science. 2002 296(5576):2225−2229)を採用した。ハプロタイプブロック解析で同定されたブロック情報をもとに、ブロック単位でのハプロタイプを考慮したケース・コントロール相関解析を行い、その検定結果(χ2値)の有意性をPermutation法(反復回数1000あるいは10000)で評価した。これらのハプロタイプ推定を伴う統計解析には主にSNP解析用統合ソフトウェアSNP Alyze(ダイナコム社)を用いた。
【0027】
2.結果
2−1.摂食障害検体DNAサンプルの濃度定量
プール化DNA法において集団でのアレル頻度推定を高い精度で行うためには、プールする個々のDNAサンプルの濃度を正確に測定することが肝要である。そこで、摂食障害検体および対照として用いる健常人検体のDNA濃度測定にはPicoGreen定量法を採用した。
抽出DNAをアガロースゲル電気泳動によりDNAの分解とRNAの混入がないことを確認し、PicoGreen蛍光試薬(Molecular Probe)と蛍光プレートリーダーGENios(TECAN)あるいはMTP−100F(コロナ電気)を用いて定量を行った。既知濃度のλファージDNAにおける検量線を作成の上、サンプル中に混在する一本鎖DNAやタンパク質などの夾雑物の影響を受けることなく、二本鎖DNAを高感度かつ特異的に定量した。
【0028】
2−2.AN−R検体を用いたプール化DNAの作製および精度確認
サンプル集団内の遺伝的異質性は、疾患感受性領域の絞込みにおいて、その検出力を低下させ第1種あるいは第2種のエラーを増加させる危険性がある。近年のE−TDT(extended transmission disequilibrium test)による家系解析からも、Cannabinoid受容体遺伝子(CNR1)のAATリピートにおいて、摂食制限型(AN−R)の患者と無茶食いを伴う排出型(AN−B/P)の患者間での伝達allele数の違いが報告されている。そこで、一次・二次スクリーニングでプール化DNA法に使用する検体は広義の摂食障害検体ではなく、拒食症の中でも特に摂食制限型(AN−R)のサンプルのみを限定して使用した。
一次スクリーニングのためプール化DNAを例に、その作製ならびに精度確認の方法を述べる。DNA回収量が16μg以上のAN−R 90例をプール化DNAの作製に供した。1反応あたりのプール化DNAの使用量を減少させてもPCR反応および波形パターンに影響のないことを確認した上で、使用量を通常量の48ngから24ngに半減させ、各サンプルあたりのDNA混合量を8μg(30,000反応分)に抑えた。 健常者サンプル90例についても同量の各8μgを混合し、対照となるプール化DNAを作製した。
【0029】
次に本解析に先立ち、プール化DNAの精度確認を行った。当研究グループが所有する他疾患のゲノム解析用マイクロサテライトマーカーシリーズの内、遺伝子タイピングにおける波形判別が容易かつ明瞭で、多数のアレルが存在するマーカー数種を選抜し、患者および健常者のプール化DNAに対するPCR反応と同時に、各々のプール化DNAの作製時に混合した90例の個別検体に対してPCR反応を行った。PCR反応終了後、Applied Biosystems 3730 DNA Analyzer(Applied Biosystems)にて電気泳動をし、得られたRaw DataをABI PRISM GeneMapper Software Version 3.0(Applied Biosystems)で解析することにより、アレルの同定および各アレルのピークシグナル値の取得を行った。プール化DNAにおけるタイピングデータが個別検体での結果を忠実に反映しているかを調べるため、それぞれ個別検体のアレル情報から患者集団内と健常者集団内でのアレル頻度を集計・算出し、プール化DNAタイピングでのアレル頻度との2 x nのχ2検定を行い、その統計量を求めた。その結果、患者、健常者共に、個別検体とプール化DNAの間で0.86〜0.99と非常に高いP値を示し、プール化DNAでのタイピングデータが個別検体のデータを反映している極めて質の高いプール化DNAを調整できたことを確認した(表2)。
【0030】
【表2】
【0031】
2−3.ABI 3730 DNAアナライザにおける高速タイピングシステムの構築
本研究においては、電気泳動の条件を従来のプール化DNA法のABI PRISM 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems)からApplied Biosystems 3730 DNA Analyzer(Applied Biosystems)に変更することで、タイピング系のハイスループット化を図った。
Applied Biosystems 3730 DNA AnalyzerはABI PRISM 3700 DNA Analyzerに比べ、単位時間当たりのPlate処理枚数が多いのみならず、より微量な反応産物でより高感度に蛍光標識物の検出ができ、また機械の構造上の違いから故障の発生率が極端に少なく、メンテナンスも容易であるという利点がある。検出感度の点では、従来の方法のままApplied Biosystems 3730 DNA Analyzerで電気泳動を行うと一部のピークが飽和してしまい、プール化DNAのタイピングによって得られたアレル頻度が個別検体でのアレル頻度を反映しなくなってしまうため、電気泳動に用いる反応産物の希釈率を上げ、40倍あるいは80倍と2段階に設定することにより各ピークのシグナル値を10,000未満に下げて、この問題を解消した。
【0032】
Applied Biosystems 3730 DNA Analyzer で得られた結果は、ABI PRISM GeneMapper Software Version 3.0(Applied Biosystems)上で増幅効率・波形パターンを確認し、アレルのサイズを決定を行った。Fsa2Fsb3730ソフトウェア(遺伝子タイピング自己免疫疾患部門にて開発)にてファイル形式変換を行った後に、各マーカーについてのアレル同定およびシグナル値の獲得をプール化DNA解析用ソフトウェアPickPeak Version 1.11で行った。
【0033】
2−4.UNIX(登録商標)機および新規ソフトウェア導入による統計処理の高速化
プール化DNA法に用いる全23,465マーカーついての遺伝的相関解析にあたり、UNIX(登録商標)機と次に述べる4つの新規ソフトウェアを用いた。
PickPeak Version 1.11ソフトウェアによる解析によって出力されたマーカー毎のアレルのログ情報をcreate Matrix Version 1.0ソフトウェアとcheck created Data Version 1.1ソフトウェアにより、修正を加えながら整列化させ、各アレルピークのシグナル値を確定した。次いでAStat format To File Version 1.2ソフトウェアにより、各アレルピークのシグナル値と総アレル集計シグナル値の比率から、各マーカーについて患者集団および健常者集団内での推定アレル頻度(%)を求め、このプール化DNAの推定アレル頻度(%)に総アレル数(180)を乗算し、各アレル毎の患者集団および健常者集団内での推定所有人数を求めた。これに対してAstat2 Version 2.0.2ソフトウェアを用いて2 x 2および2 x n分割表を作成し、χ2検定ならびにFisherの直接確立検定を行った。これらのUNIX(登録商標)機での解析・検定システムの導入により、95マイクロサテライトマーカー単位の統計計算が可能となり、有意差検定における統計処理の高速化が実現した。
【0034】
2−5.23,465個のマイクロサテライトマーカーとプール化DNA法を用いた全ゲノム相関解析による摂食障害感受性候補座位の同定
拒食症制限型(AN−R)とコントロール群のプール化DNAを用いた一次・二次スクリーニング、個別タイピングによる三次スクリーニング、および確認タイピングにより、効率的な疾患感受性候補領域の同定を行ったので、以下にその詳細を述べる(図2参照)。各段階で、患者集団および健常者集団における各アレル頻度の解析と2 x 2、2 x n分割表を用いたχ2検定ならびにFisherの直接確立検定による有意差の検定を行った。
【0035】
2−5−1.有意水準P<0.05での段階的スクリーニング(図2の経路1参照)
(1)一次スクリーニング:AN−R 90例とコントロール90例のプール化DNAタイピング
上記2−2.の要領で作製したプール化DNAを23,465個のマイクロサテライトマーカーでタイピングし、各マーカーについて推定アレル頻度を決定し有意差検定を行った。1414個(23,465個のうちの6.03%)のマイクロサテライトマーカーにおいて、一つまたは複数のアレルでの有意差(P<0.05)が認められた(表3)。これらのマイクロサテライトマーカーを2次スクリーニングの解析対象とした。
【0036】
【表3】
【0037】
(2)二次スクリーニング:一次スクリーニングとは独立なAN−R90例とコントロール90例のプール化DNAタイピング
新たなプール化DNAを作製し段階的なタイピングを行うことで、解析の際に統計的な閾値について特別な補正を入れることなく偽陽性を効果的に減少させることが期待されるため、一次スクリーニングとは独立なAN−R90例とコントロール90例のプール化DNAを二次スクリーニングに用いた。
一次スクリーニングで有意差(P<0.05)が認められた1414個のマイクロサテライトマーカーに関して二次スクリーニングを行った。273個(1414個のうちの19.31%)のマイクロサテライトマーカーにおいて、一つまたは複数のアレルでの有意差(P<0.05)が認められた(表4)。
この273個のマイクロサテライトマーカーについて、有意差を示すアレルは、(i)その推定アレル頻度のAN−R群とコントロール群間での大小関係が一次・二次スクリーニングで一致しているか、(ii) Majorアレルであるか、の二つの条件について個別に検討した。これらの条件を満たす145個のマイクロサテライトマーカーを選抜し、三次スクリーニングの解析対象とした(図2)。
【0038】
【表4】
【0039】
(3)三次スクリーニング:一次・二次スクリーニングとは独立なAN 140例とコントロール161例に対する個別タイピング
二次スクリーニングで選抜した145個のマイクロサテライトマーカーについて、一次・二次スクリーニングとは独立なAN140例(AN−R 32例、AN−P 32例、AN−BP 89例)とコントロール161例に対して個別タイピングを行った。各マーカーのAN群・コントロール群でのアレル頻度を確定し有意差検定を行った結果、40個(145個のうちの27.59%)が少なくとも一つのアレルでP<0.05を示した(表5)。
この40個のマイクロサテライトマーカーについて、三次スクリーニングで有意差(P<0.05)を示したアレルが、(i)患者群(AN−R群あるいはAN群)とコントロール群の間でのアレル頻度の大小関係にプール化DNAタイピング(一次・二次スクリーニング)と個別タイピング(三次スクリーニング)で一貫性を示すか、(ii) Majorアレルであるか、などの条件を検討し、8個のマイクロサテライトマーカーを選抜した。この8個を確認個別タイピングの解析対象とした。
【0040】
【表5】
【0041】
(4)確認個別タイピング:AN 320例とコントロール341例(一次・二次・三次スクリーニングで使用した全ての患者群およびコントロール群検体)を対象とした個別タイピング
三次スクリーニングで選抜した8個のマイクロサテライトマーカーについて、一次・二次・三次スクリーニングで使用した全ての患者検体(320例)およびコントロール検体(341例)に対して個別タイピングを行った(患者群の内訳は、AN−R 212例、AN−P 32例、AN−BP 89例)。各マーカーの患者・コントロール群でのアレル頻度を確定し有意差検定を行った結果、3個のマイクロサテライトマーカーが少なくとも一つのアレルで疾患との相関(P<0.05)を示した(表6)。よって、これら3個のマイクロサテライトマーカーを摂食障害感受性候補マーカーとみなした。これら3マーカーは一次・二次・三次スクリーニングおよび確認個別タイピングで一貫して少なくとも一つのアレルがP<0.05を示したマーカーである。
【0042】
2−5−2.タイプ2エラー等を考慮した摂食障害感受性候補マーカーの更なる抽出
(図2の経路2および3参照)
二次スクリーニングでの有意差検定で0.05≦P<0.1を示すマーカーから、有意差を示すアレルが(i)その推定アレル頻度のAN−R群とコントロール群間での大小関係が一次・二次スクリーニングで一致しているか、(ii)Majorアレルであるか、を基準として13個のマイクロサテライトマーカーを選抜した。これらに対し上記(3)と同じ要領で三次スクリーニングを行った。一次・二次スクリーニングで有意差を示したアレルの推定アレル頻度のAN−R群とコントロール群間での大小関係が、三次スクリーニング(AN群対コントロール群)でも一致しているかを指標に13個のうち4個のマーカーを選抜し、それらを上記(4)と同じ要領の確認個別タイピングの対象とした。その結果、4マーカーとも少なくとも一つのアレルで疾患との相関(P<0.05)を示した(表6)。これら4個のマイクロサテライトマーカーも摂食障害感受性候補マーカーとみなした(図2の経路2参照)。
さらに、一次・二次スクリーニングでは有意水準P<0.05で残ったが、三次スクリーニングでは0.05≦Pを示した105個のマイクロサテライトマーカーについて、一次・二次スクリーニングで有意差を示したアレルの推定アレル頻度のAN−R群とコントロール群間での大小関係が、三次スクリーニング(AN群対コントロール群)でも一致しているかを指標に4個のマーカーを選抜し、それらを確認個別タイピングの対象とした。その結果、4マーカーとも少なくとも一つのアレルで疾患との相関(P<0.05)を示した(表6)。これら4個のマイクロサテライトマーカーも摂食障害感受性候補マーカーとみなした(図2の経路3参照)。
【0043】
【表6】
【0044】
2−5−3.11個の摂食障害(拒食症)感受性マーカー
以上のようにして、確認個別タイピング(AN 320例・コントロール341例)において摂食障害(拒食症)と相関(P<0.05)を示す11個のマイクロサテライトマーカーを同定した(図3)。11個のマーカーについて確認個別タイピングでのP値および近傍遺伝子情報(遺伝子数ならびに脳神経関連遺伝子の有無)を表6にまとめた。
【0045】
2−6.4つの摂食障害候補感受性領域に対するSNP高密度マッピングと統計解析
マイクロサテライトマーカーによる全ゲノム相関解析により同定された11箇所の摂食障害候補感受性領域のうち、(1)神経細胞接着関連分子をコードするCNTN5遺伝子領域(11q22)、(2)神経伝達物質放出制御分子をコードするSYT12遺伝子領域(11q13)、(3)神経細胞膜貫通分子をコードするNET01遺伝子領域(18q22)、(4)CAMT1、PER3、PARK7などの脳関連遺伝子クラスター(1p36)、(5)CDH18遺伝子近傍領域、(6)IQカルモジュリン−結合モチーフ遺伝子領域、(7)TNRC9遺伝子を含む領域、(8)NR5A及びZNF281遺伝子を含む領域に着目した。具体的には、MS11a(1105D12), MS1b(0105G07), MS11b(1109D02), MS18a(1802B06)、MS1a(0106G06),MS5a(0512E09),MS16a(1603G04)及びMS1c(0117H09)の8つのマイクロサテライトを含む領域をSNP高密度マッピングの解析対象とした結果を以下に示す。なお、残りの3つのマイクロサテライト(1202B03、1207B03及び9901B09)についても同様の手法によりマッピングできる。いずれの領域についても摂食障害(拒食症)と相関を示したマイクロサテライトマーカーの両隣のマイクロサテライトマーカーは相関を示さなかったことから、基本的には相関を示したマイクロサテライトマーカーを中心とする400kb程度の範囲をSNP高密度マッピングの解析対象とした。各領域から選択したSNPについて、摂食障害(ED)患者456例(AN−R 218例, AN−BP 95例, AN−P 18例, BN 125例)とコントロール872例をタイピングし、相関解析を行った。コントロール集団でのマイナーアレル頻度(MAF)が5%以下、またはコントロール集団でのHardy−Weinberg平衡(HWE)検定でP<0.05を示すSNPはケース・コントロール相関解析の対象外とした。
【0046】
2−6−1.MS11a(1105D12)(11q22上)
マイクロサテライトマーカー1105D12は、CNTN5遺伝子の第8イントロンに位置し(図4)、この遺伝子は神経細胞接着分子contactin 5をコードする。1105D12を中心とする440kbの範囲から選んだ66個のSNPについてタイピングを行い、合計で11個のSNPを相関解析の対象外とした(5個は多型性が無く、4個がMAF<5%、2個がHWE P−value<0.05)。残った55個の各SNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、アレル頻度についての検定では、コントロール(872例)対ED(456例)で3SNP、対AN(331例)で3SNP、対AN−R(218例)で7SNPが疾患との相関(P<0.05)を示した(図6)。これら相関を示したものはいずれもイントロニックSNPだった。対AN−Rで相関を示した7SNPのうちのひとつであるSNP#26はMS1105D12よりおよそ33kb離れていた。また対AN−Rで相関を示したSNP#30−34が位置する領域内にMS1105D12が含まれていた。ハプロタイプブロック解析により8個のブロックを同定し(図5および6)、各ブロック毎にハプロタイプを考慮したケース・コントロール相関解析を行ったところ、SNP#31−34からなるBlock4(サイズは約14.3 kbで#31がtag SNP)のA−T−A−CハプロタイプがAN−Rとの相関を示した(Permutation P=0.0131)(図7)。
SNP#26は、イントロニックSNPだがエキソン8から218bpの距離に位置し、対ED、対AN、対AN−Rのいずれでも相関を示した。また、AN−Rとの相関を示したBlock4内のSNP#33と#34の間にエキソン9が位置している。従って、エキソン8および9を含む領域内の既知SNPおよびAN−R検体を用いた配列決定を行うことで同定されるかもしれない新規SNPを対象とした更なるSNPタイピング情報を取得し、ケース・コントロール相関解析を実施することで、この領域とAN−Rとの相関について更なる評価が可能となる。
【0047】
2−6−2.MS1b (0105G07)(1p36上)
マイクロサテライトマーカー0105G07を中心とする約400kbの領域には、脳組織で非常に強く発現しているCAMTA1(calmodulin−binding transcription activator 1)遺伝子、サーカディアンリズムに関与するPER3遺伝子、パーキンソン病の原因遺伝子の一つであるPARK7遺伝子など、複数の脳神経系遺伝子が含まれている(図8)。0105G07を中心とする344kbから選んだ76個のSNPについてタイピングを行い、合計で28個のSNPを相関解析の対象外とした(22個は多型性が無く、2個はプローブ合成不可、2個がMAF<5%、2個がHWE P−value<0.05)。残った48個の各SNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、アレル頻度についての検定で、コントロール(872)対ED(456)で1SNP、対AN(331)で2SNP、対AN−R(218)で15 SNPが疾患との相関(P<0.05)を示した(図9および10)。ハプロタイプブロック解析により9個のブロックを同定し(図9、11及び12)、各ブロック毎にハプロタイプを考慮したケースコントロール相関解析を行ったところ、Block3(SNP#14−16)のA−T−Cハプロタイプ(Permutation P=0.0296)、Block4(SNP#17−20)のG−C−G−Gハプロタイプ(Permutation P=0.0274)、Block8(SNP#35−39)のT−C−A−C−Tハプロタイプ(Permutation P=0.0269)、 Block9(SNP#40−48)のC−C−A−C−T−C−C−A−Aハプロタイプ(Permutation P=0.0112)がAN−Rとの相関を示した(図11および12)。Block3を形成する3つのSNPはPER3遺伝子のイントロンに位置し、Block4を形成する4つのSNPのうち、#17と#19はPER3のイントロンに、#20はPER3とUTS2のインタージェニック領域に位置し、#18はPER3のエキソン17に位置するミスセンスSNPであった。Block8を形成する5個のSNPはTNFRSF9遺伝子のイントロンあるいは5’上流に位置した。またBlock9を形成する9個のSNPのうちの一つ#40はPARK7遺伝子の5’UTRに位置し、ほかはイントロニックあるいはインタージェニックSNPであった。
【0048】
単一SNPに対するケース・コントロール相関解析で最も低いP−value(対AN−RでP=0.0046)を示したSNP#34は、マイクロサテライトマーカー0105G07のごく近傍に位置した。Block3とBlock4のおよびBlock8とBlock9のブロック間連鎖不平衡係数(D’値)は0.9779と0.8879で、Block3−4とBlock8−9はそれぞれ一つのより大きなブロックとみなすことができる。Block3−4領域はPER3遺伝子のほぼ全体を含み、Block8−9はTNFRSF9 (Tumor necrosis factor receptor superfamily member 9 precursor)、PARK7、MIG−6 (mitogen−inducible gene 6)遺伝子を含む。統計遺伝学的にはハプロタイプブロックのBlock3−4およびBlock8−9内の遺伝子が摂食障害(拒食症)感受性遺伝子の候補となるが、遺伝子機能を考慮するとPER3とPARK7が有力な候補と考えられる。これら二つの遺伝子を主な対象とした更なるSNPタイピングとケース・コントロール相関解析が待たれる。SNP#18はPER3のexon 17に位置するmissense SNPであるが、それ単独ではED、AN.AN−Rと相関を示さず、SNP#17−20のハプロタイプでみた時にAN−Rとの相関が検出された。然るにSNP#18は摂食障害感受性を規定する機能SNPではなく、そのハプロタイプブロック内で疾患感受性を規定する機能SNPを探索することが必要である。Block9のSNP#40はそれ単独でもAN−Rとの相関を示し、PARK7のエキソン1の約20bp上流に位置する。従って、SNP#40がPARK7の転写レベル調節に関与しているかどうかは興味深い点である。
【0049】
2−6−3.MS11b (1109D02)(11q13上)
マイクロサテライトマーカー1109D02を中心とする約400kbには神経伝達物質放出に関与することが知られているSYT12(synaptotagmin XII)遺伝子が含まれている(図13)。1109D02を中心とする441kbの範囲から選んだ34個のSNPについてタイピングを行い、合計で14個のSNPを相関解析の対象外とした(8個は多型性が無く、1個はSNPプローブ合成不可、5個がMAF<5%)。残った20個の各SNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、アレル頻度についての検定で、コントロール(872)対ED(456)で1 SNP、対AN(331)で2SNP、対AN−R(218)で2SNPが疾患との相関(P<0.05)を示した(図14および15)。対ANおよび対AN−Rで相関を示したSNP#11および#12は、両方ともSYT12遺伝子のイントロンに位置し、ハプロタイプブロック(Block3、図14および16)を形成していた。このブロックはハプロタイプを考慮したケース・コントロール相関解析ではA−Tハプロタイプが相関を示した(Permutation P=0.0245)。
神経伝達物質放出に関与する膜タンパクをコードするSYT12遺伝子内に位置するSNPが対ANおよび対AN−Rで相関を示したことは興味深い。SYT12の拒食症への関与をより明確にするために、この遺伝子領域に対する高密度SNPマッピングの実施が待たれる。
【0050】
2−6−4.MS18a(1802B06)(18q22上)
マイクロサテライトマーカー1802B06を中心とする約400kbにはhypothetical proteinをコードするLOC400655のみが含まれるが(図17)、1802B06よりセントロメア側に約270kb離れた位置に神経伝達物質の放出に関与する膜タンパクをコードするNETO1(neuropilin− and tolloid−like protein 1)遺伝子が存在した。そこで、1802B06を中心にNETO1を含む約1030kbの領域より、38個のSNPを選択した(うち23個はNETO1遺伝子座位より選択)。SNPタイピングの結果、合計で12個のSNPを相関解析の対象外とした(5個は多型を示さないかSNPプローブ合成不可、4個がMAF<5%、3個がHWE P−value<0.05)。残った26個の各SNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、アレル頻度についての検定でコントロール対ED(456)、対AN(331)、あるいは対AN−R(218)で相関を示すNETO1遺伝子座由来のSNPは無かった(図18および19)。しかしながら、1802B06からセントロメア側に約40kb離れた(NETO1遺伝子からは230kb上流)SNP#19,20が対ED、対AN、対AN−Rで相関を示した。これらのSNPはハプロタイプブロックを形成しており(Block4、図18および20)、ハプロタイプを考慮したケース・コントロール相関解析ではA−Tハプロタイプが対ED,対AN,対AN−Rで相関を示した(Permutation P=0.008(ED),0.0041(AN),0.0108(AN−R))。
【0051】
対ED、対AN、対AN−Rで相関を示したSNP#19,20は、マイクロサテライトマーカー1802B06の比較的近傍(約40kb)に位置している。先に述べた領域を含む4領域全てについて、摂食障害(拒食症)感受性マーカーとして同定されたマイクロサテライトマーカーの近傍SNP(あるいはSNP群)で拒食症(特にAN−R)との相関が認められた。この結果は、既に複数の論文で報告されているように、マイクロサテライトマーカーの連鎖不平衡ブロック長は100kb程度(引用文献19参照)であることをよく反映していると考えられる。SNP#19,20はNETO1遺伝子からは230kbも離れており、両者を関連付けるようなエビデンスは今のところない。しかしながら、例えばSNP#19,20が含まれるハプロタイプブロック内にNETO1の組織特異的エンハンサーエレメントなどが存在し遺伝子発現調節に関与しているような可能性も考えられる。
【0052】
2−6−5.MS1a(0106G06)(1q41上)
マイクロサテライトマーカー0106G06を中心とする約400kbにはLOC128153及びUBBP2という2つの既知の遺伝子が含まれる(図21)。SNPタイピングの結果、30個のSNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、SNP#19−22、23−25及び30が対ANで相関を示した(図23及び24)。これらのSNPはハプロタイプブロックを形成しており(Block4及び5;図25)、Block4についてはG−C−T−A−C−C−G、Block5についてはT−G−A−T−Gのハプロタイプが対ED,対AN,対AN−Rで相関を示した。
【0053】
2−6−6.MS5a(0512E09)(5p15上)
マイクロサテライトマーカー0512E09を中心とする約400kbにはカドヘリン18(CDH18)という既知の遺伝子が含まれる(図22)。SNPタイピングの結果、27個のSNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、SNP#11対AN(AN−Rではない)で相関を示し、SNP#14、15が対BNで相関を示した(図23及び26)。これらのSNPはハプロタイプブロックを形成していたが(図27及び28)、ハプロブロックと疾患との間に相関はみられなかった。
【0054】
2−6−7.MS16a(1603G04)(16q12上)
マイクロサテライトマーカー1603G04を中心とする約400kbにはLOC388277、LOC283854及びTNRC9という3つの既知の遺伝子が含まれる(図29)。SNPタイピングの結果、33個のSNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、SNP#4、10、11、14、18−21、23−25が対AN(又はAN−R)で相関を示した(図31及び32)。これらのSNPはハプロタイプブロックを形成しており(図33のBlock4及び図34のBlock5)、Block4についてはC−T−G−Aのハプロタイプが対AN−Rで相関を示し、Block5についてはG−Gのハプロタイプが対ED,対AN,対AN−Rで相関を示した。
【0055】
2−6−8.MS1c(0117H09)(1q32上)
マイクロサテライトマーカー0117H09を中心とする約400kbにはNR5A、LOC339521、LOC391150及びZNF281という4つの既知の遺伝子が含まれる(図30)。SNPタイピングの結果、46個のSNPについてケース・コントロール相関解析を行ったところ、SNP#7、33、37−38、41−43が対AN(又はAN−R)で相関を示した(図31及び35)。これらのSNPはハプロタイプブロックを形成しており(図36のBlock1及び図37のBlock8)、Block1についてはG−G−T−G−C−G−Aのハプロタイプが、Block8についてはT−G−G−T−T−T−T−T−Tのハプロタイプが対AN−Rで相関を示した。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】MS11a(1105D12)領域、MS1b(0105G07)領域、MS11b(1109D02)領域及びMS18a(1802B06)領域において摂食障害と関連性を示したSNPのSNP名、dbSNP、ABIアッセイID、JSNP IDおよびCelera RefSNP IDを示す表である。
【図2】摂食障害(拒食症)感受性マーカーの同定手順を示す説明図である。
【図3】11個の摂食障害(拒食症)感受性マーカーの染色体上の位置を示す図である。
【図4】マイクロサテライトマーカー1105D12の染色体上の位置を示す図である。
【図5】MS11a(1105D12)領域における、ハプロブロック解析によって同定されたハプロブロックの位置を示す図である。
【図6】MS11a(1105D12)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図7】MS11a(1105D12)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図8】マイクロサテライトマーカー0105G07の染色体上の位置を示す図である。
【図9】MS1b(0105G07)領域における、ハプロブロック解析によって同定されたハプロブロックの位置を示す図である。
【図10】MS1b(0105G07)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図11】MS1b(0105G07)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図12】MS1b(0105G07)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図13】マイクロサテライトマーカー1109D02の染色体上の位置を示す図である。
【図14】MS11b(1109D02)領域における、ハプロブロック解析によって同定されたハプロブロックの位置を示す図である。
【図15】MS11b(1109D02)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図16】MS11b(1109D02)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図17】マイクロサテライトマーカー1802B06の染色体上の位置を示す図である。
【図18】MS18a(1802B06)領域における、ハプロブロック解析によって同定されたハプロブロックの位置を示す図である。
【図19】MS18a(1802B06)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図20】MS18a(1802B06)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図21】マイクロサテライトマーカー0106G06の染色体上の位置を示す図である。
【図22】マイクロサテライトマーカー0512E09の染色体上の位置を示す図である。
【図23】MS1a(0106G06)領域及びMS5a(0512E09)領域における、ハプロブロック解析によって同定されたハプロブロックの位置を示す図である。
【図24】MS1a(0106G06)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図25】MS1a(0106G06)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図26】MS5a(0512E09)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図27】MS5a(0512E09)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図28】MS5a(0512E09)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図29】マイクロサテライトマーカー1603G04の染色体上の位置を示す図である。
【図30】マイクロサテライトマーカー0117H09の染色体上の位置を示す図である。
【図31】MS16a(1603G04)領域及びMS1c(0117H09)領域における、ハプロブロック解析によって同定されたハプロブロックの位置を示す図である。
【図32】MS16a(1603G04)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図33】MS16a(1603G04)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図34】MS16a(1603G04)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図35】MS1c(0117H09)領域のSNP相関解析を行った結果を示す表である。
【図36】MS1c(0117H09)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【図37】MS1c(0117H09)領域における、ハプロブロック解析を行った結果を示す図表である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者からDNAサンプルを採集し、当該サンプルの染色体DNAにおいて、0106G06,1105D12,1603G04,0105G07,0117H09,0512E09,1109D02,1202F03,1207B03,1802B06,又は9901B09で表されるマイクロサテライトのいずれかの前後400kbに存在する1以上の遺伝子多型を検出すること、又は2以上の遺伝子多型の組合せからなるハプロタイプを検出することにより、該染色体DNAが由来する被検者の摂食障害の発症危険度を判定する方法。
【請求項2】
前記遺伝子多型が一塩基多型であり、CNTN5−U01,CNTN5−0008,CNTN5−0012+,CNTN5−0013,CNTN5−0022,CNTN5−0023,CNTN5−0026,CNTN5−0026+,CNTN5−0027,CNTN5−0027−,CNTN5−0028,1p36−0011+,1p36−0018,1p36−0019,1p36−0020,1p36−0023,1p36−0029,1p36−0029+,1p36−0035,1p36−0036,1p36−0040,1p36−0051,1p36−0052,1p36−0053,1p36−0055,1p36−0056,1p36−0057,1p36−0058,1p36−0059,1p36−0060,1p36−0061,1p36−0063,1p36−0068,1p36−0069,1p36−0070,1p36−0071,11−0010,11−0016+,11−0018,NETO1−0018,NETO1−0023,NETO1−0027,NETO1−0028,1q41−0024,1q41−0025,1q41−0027,1q41−0028,1q41−0029,1q41−0030,1q41−0031,1q41−0032,1q41−0033,1q41−0034,1q41−0035,1q41−0036,1q41−0037,1q41−0038,16−0005,16−0011,16−0014,16−0017,16−0023,16−0024,16−0026,16−0027,16−0030,16−0032,16−0033,1q32−0001,1q32−0002,1q32−0003,1q32−0004,1q32−0005,1q32−0006,1q32−0007,1q32−0041,1q32−0045,1q32−0046,1q32−0050,1q32−0051,1q32−0052,05−0025,16−0005,05−0029,05−0031で表される一塩基多型からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一塩基多型が、CNTN5−U01,CNTN5−0022,CNTN5−0023,CNTN5−0026,CNTN5−0026+,CNTN5−0027−,CNTN5−0027,CNTN5−0028,1p36−0011+,1p36−0018,1p36−0036,1p36−0040,1p36−0051,1p36−0052,1p36−0056,1p36−0058,1p36−0059,1p36−0060,1p36−0061,1p36−0063,1p36−0068,1p36−0069,1p36−0070,11−0016+,11−0018,NETO1−0027,NETO1−0028,1q41−0027,1q41−0028,1q41−0029,1q41−0032,1q41−0033,1q41−0034,1q41−0038,16−0005,16−0011,16−0014,16−0017,16−0023,16−0024,16−0026,16−0027,16−0030,16−0032,16−0033,1q32−0007,1q32−0041,1q32−0045,1q32−0046,1q32−0050,1q32−0051,1q32−0052,05−0025で表される一塩基多型からなる群から選択されるものであり、前記摂食障害が、神経性食欲不振症であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記一塩基多型が、CNTN5−U01,CNTN5−0022,CNTN5−0026,CNTN5−0026+,CNTN5−0027−,CNTN5−0027,CNTN5−0028,1p36−0011+,1p36−0018,1p36−0036,1p36−0040,1p36−0051,1p36−0052,1p36−0056,1p36−0058,1p36−0059,1p36−0060,1p36−0061,1p36−0063,1p36−0068,1p36−0069,1p36−0070,11−0016+,11−0018,NETO1−0027,NETO1−0028,1q41−0027,1q41−0029,1q41−0033,1q41−0034,1q41−0038,16−0005,16−0011,16−0014,16−0023,16−0024,16−0026,16−0027,16−0030,16−0032,1q32−0041,1q32−0042,1q32−0043,1q32−0044,1q32−0045,1q32−0046,1q32−0047,1q320048,1q32−0050,1q32−0051,1q32−0052で表される一塩基多型からなる群から選択されるものであり、前記摂食障害が、神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記一塩基多型が、CNTN5−0008,CNTN5−0012+,CNTN5−0013,NETO1−0018,NETO1−0023,16−0005,05−0029,05−0031で表される一塩基多型からなる群から選択されるものであり、前記摂食障害が、神経性大食症であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、CNTN5−0026+,CNTN5−0027−,CNTN5−0027,CNTN5−0028の組合せであり、そのハプロタイプが、A−T−A−Cであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1p36−0018,1p36−0019,1p36−0020の組合せであり、そのハプロタイプが、A−T−Cであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1p36−0023,1p36−0029,1p36−0029+,1p36−0035の組合せであり、そのハプロタイプが、G−C−G−Gであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1p36−0052,1p36−0053,1p36−0055,1p36−0056,1p36−0057の組合せであり、そのハプロタイプが、T−C−A−C−Tであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1p36−0058,1p36−0059,1p36−0060,1p36−0061,1p36−0063,1p36−0068,1p36−0069,1p36−0070,1p36−0071の組合せであり、そのハプロタイプが、C−C−A−C−T−C−C−A−Aであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、11−0016+,11−0018の組合せであり、そのハプロタイプが、A−Tであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、NETO1−0027,NETO1−0028の組合せであり、そのハプロタイプが、T−Aであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1q32−0001,1q32−0002,1q32−0003,1q32−0004,1q32−0005,1q32−0006,1q32−0007の組合せであり、そのハプロタイプが、A−A−C−C−T−A−Gであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1q32−0041,1q32−0042,1q32−0043,1q32−0044,1q32−0045,1q32−0046,1q32−0047,1q320048,1q32−0050の組合せであり、そのハプロタイプが、T−G−G−T−T−T−T−T−Tであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1q41−0024,1q41−0025,1q41−0027,1q41−0028,1q41−0029,1q41−0030,1q41−0031の組合せであり、そのハプロタイプが、G−C−T−A−C−C−Gであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症(制限型を含む)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1q41−0034,1q41−0035,1q41−0036,1q41−0037,1q41−0038の組合せであり、そのハプロタイプが、T−G−A−T−Gであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症(制限型を含む)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、16−0023,16−0024,16−0026,16−0027の組合せであり、そのハプロタイプが、T−A−A−Tであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、16−0030,16−0032の組合せであり、そのハプロタイプが、G−Gであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症(制限型を含む)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項19】
ヒト染色体DNAにおける、0106G06,1105D12,1603G04,0105G07,0117H09,0512E09,1109D02,1202F03,1207B03,1802B06,又は9901B09で表されるマイクロサテライトのいずれかの前後400kbに存在する遺伝子多型を1以上含有する領域の塩基は配列と同一又は実質的に同一な塩基配列を有するポリヌクレオチドからなる、摂食障害の診断用マーカー遺伝子。
【請求項20】
前記遺伝子多型が一塩基多型であり、CNTN5−U01,CNTN5−0008,CNTN5−0012+,CNTN5−0013,CNTN5−0022,CNTN5−0023,CNTN5−0026,CNTN5−0026+,CNTN5−0027,CNTN5−0027−,CNTN5−0028,1p36−0011+,1p36−0018,1p36−0019,1p36−0020,1p36−0023,1p36−0029,1p36−0029+,1p36−0035,1p36−0036,1p36−0040,1p36−0051,1p36−0052,1p36−0053,1p36−0055,1p36−0056,1p36−0057,1p36−0058,1p36−0059,1p36−0060,1p36−0061,1p36−0063,1p36−0068,1p36−0069,1p36−0070,1p36−0071,11−0010,11−0016+,11−0018,NETO1−0018,NETO1−0023,NETO1−0027,NETO1−0028,1q41−0024,1q41−0025,1q41−0027,1q41−0028,1q41−0029,1q41−0030,1q41−0031,1q41−0032,1q41−0033,1q41−0034,1q41−0035,1q41−0036,1q41−0037,1q41−0038,16−0005,16−0011,16−0014,16−0017,16−0023,16−0024,16−0026,16−0027,16−0030,16−0032,16−0033,1q32−0001,1q32−0002,1q32−0003,1q32−0004,1q32−0005,1q32−0006,1q32−0007,1q32−0041,1q32−0045,1q32−0046,1q32−0050,1q32−0051,1q32−0052,05−0025,16−0005,05−0029,05−0031で表される一塩基多型からなる群から選択される請求項19に記載のマーカー遺伝子。
【請求項1】
被験者からDNAサンプルを採集し、当該サンプルの染色体DNAにおいて、0106G06,1105D12,1603G04,0105G07,0117H09,0512E09,1109D02,1202F03,1207B03,1802B06,又は9901B09で表されるマイクロサテライトのいずれかの前後400kbに存在する1以上の遺伝子多型を検出すること、又は2以上の遺伝子多型の組合せからなるハプロタイプを検出することにより、該染色体DNAが由来する被検者の摂食障害の発症危険度を判定する方法。
【請求項2】
前記遺伝子多型が一塩基多型であり、CNTN5−U01,CNTN5−0008,CNTN5−0012+,CNTN5−0013,CNTN5−0022,CNTN5−0023,CNTN5−0026,CNTN5−0026+,CNTN5−0027,CNTN5−0027−,CNTN5−0028,1p36−0011+,1p36−0018,1p36−0019,1p36−0020,1p36−0023,1p36−0029,1p36−0029+,1p36−0035,1p36−0036,1p36−0040,1p36−0051,1p36−0052,1p36−0053,1p36−0055,1p36−0056,1p36−0057,1p36−0058,1p36−0059,1p36−0060,1p36−0061,1p36−0063,1p36−0068,1p36−0069,1p36−0070,1p36−0071,11−0010,11−0016+,11−0018,NETO1−0018,NETO1−0023,NETO1−0027,NETO1−0028,1q41−0024,1q41−0025,1q41−0027,1q41−0028,1q41−0029,1q41−0030,1q41−0031,1q41−0032,1q41−0033,1q41−0034,1q41−0035,1q41−0036,1q41−0037,1q41−0038,16−0005,16−0011,16−0014,16−0017,16−0023,16−0024,16−0026,16−0027,16−0030,16−0032,16−0033,1q32−0001,1q32−0002,1q32−0003,1q32−0004,1q32−0005,1q32−0006,1q32−0007,1q32−0041,1q32−0045,1q32−0046,1q32−0050,1q32−0051,1q32−0052,05−0025,16−0005,05−0029,05−0031で表される一塩基多型からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一塩基多型が、CNTN5−U01,CNTN5−0022,CNTN5−0023,CNTN5−0026,CNTN5−0026+,CNTN5−0027−,CNTN5−0027,CNTN5−0028,1p36−0011+,1p36−0018,1p36−0036,1p36−0040,1p36−0051,1p36−0052,1p36−0056,1p36−0058,1p36−0059,1p36−0060,1p36−0061,1p36−0063,1p36−0068,1p36−0069,1p36−0070,11−0016+,11−0018,NETO1−0027,NETO1−0028,1q41−0027,1q41−0028,1q41−0029,1q41−0032,1q41−0033,1q41−0034,1q41−0038,16−0005,16−0011,16−0014,16−0017,16−0023,16−0024,16−0026,16−0027,16−0030,16−0032,16−0033,1q32−0007,1q32−0041,1q32−0045,1q32−0046,1q32−0050,1q32−0051,1q32−0052,05−0025で表される一塩基多型からなる群から選択されるものであり、前記摂食障害が、神経性食欲不振症であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記一塩基多型が、CNTN5−U01,CNTN5−0022,CNTN5−0026,CNTN5−0026+,CNTN5−0027−,CNTN5−0027,CNTN5−0028,1p36−0011+,1p36−0018,1p36−0036,1p36−0040,1p36−0051,1p36−0052,1p36−0056,1p36−0058,1p36−0059,1p36−0060,1p36−0061,1p36−0063,1p36−0068,1p36−0069,1p36−0070,11−0016+,11−0018,NETO1−0027,NETO1−0028,1q41−0027,1q41−0029,1q41−0033,1q41−0034,1q41−0038,16−0005,16−0011,16−0014,16−0023,16−0024,16−0026,16−0027,16−0030,16−0032,1q32−0041,1q32−0042,1q32−0043,1q32−0044,1q32−0045,1q32−0046,1q32−0047,1q320048,1q32−0050,1q32−0051,1q32−0052で表される一塩基多型からなる群から選択されるものであり、前記摂食障害が、神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記一塩基多型が、CNTN5−0008,CNTN5−0012+,CNTN5−0013,NETO1−0018,NETO1−0023,16−0005,05−0029,05−0031で表される一塩基多型からなる群から選択されるものであり、前記摂食障害が、神経性大食症であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、CNTN5−0026+,CNTN5−0027−,CNTN5−0027,CNTN5−0028の組合せであり、そのハプロタイプが、A−T−A−Cであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1p36−0018,1p36−0019,1p36−0020の組合せであり、そのハプロタイプが、A−T−Cであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1p36−0023,1p36−0029,1p36−0029+,1p36−0035の組合せであり、そのハプロタイプが、G−C−G−Gであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1p36−0052,1p36−0053,1p36−0055,1p36−0056,1p36−0057の組合せであり、そのハプロタイプが、T−C−A−C−Tであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1p36−0058,1p36−0059,1p36−0060,1p36−0061,1p36−0063,1p36−0068,1p36−0069,1p36−0070,1p36−0071の組合せであり、そのハプロタイプが、C−C−A−C−T−C−C−A−Aであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、11−0016+,11−0018の組合せであり、そのハプロタイプが、A−Tであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、NETO1−0027,NETO1−0028の組合せであり、そのハプロタイプが、T−Aであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1q32−0001,1q32−0002,1q32−0003,1q32−0004,1q32−0005,1q32−0006,1q32−0007の組合せであり、そのハプロタイプが、A−A−C−C−T−A−Gであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1q32−0041,1q32−0042,1q32−0043,1q32−0044,1q32−0045,1q32−0046,1q32−0047,1q320048,1q32−0050の組合せであり、そのハプロタイプが、T−G−G−T−T−T−T−T−Tであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1q41−0024,1q41−0025,1q41−0027,1q41−0028,1q41−0029,1q41−0030,1q41−0031の組合せであり、そのハプロタイプが、G−C−T−A−C−C−Gであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症(制限型を含む)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、1q41−0034,1q41−0035,1q41−0036,1q41−0037,1q41−0038の組合せであり、そのハプロタイプが、T−G−A−T−Gであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症(制限型を含む)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、16−0023,16−0024,16−0026,16−0027の組合せであり、そのハプロタイプが、T−A−A−Tであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症の制限型であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記一塩基多型の2以上の組合せが、16−0030,16−0032の組合せであり、そのハプロタイプが、G−Gであって、前記摂食障害が神経性食欲不振症(制限型を含む)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項19】
ヒト染色体DNAにおける、0106G06,1105D12,1603G04,0105G07,0117H09,0512E09,1109D02,1202F03,1207B03,1802B06,又は9901B09で表されるマイクロサテライトのいずれかの前後400kbに存在する遺伝子多型を1以上含有する領域の塩基は配列と同一又は実質的に同一な塩基配列を有するポリヌクレオチドからなる、摂食障害の診断用マーカー遺伝子。
【請求項20】
前記遺伝子多型が一塩基多型であり、CNTN5−U01,CNTN5−0008,CNTN5−0012+,CNTN5−0013,CNTN5−0022,CNTN5−0023,CNTN5−0026,CNTN5−0026+,CNTN5−0027,CNTN5−0027−,CNTN5−0028,1p36−0011+,1p36−0018,1p36−0019,1p36−0020,1p36−0023,1p36−0029,1p36−0029+,1p36−0035,1p36−0036,1p36−0040,1p36−0051,1p36−0052,1p36−0053,1p36−0055,1p36−0056,1p36−0057,1p36−0058,1p36−0059,1p36−0060,1p36−0061,1p36−0063,1p36−0068,1p36−0069,1p36−0070,1p36−0071,11−0010,11−0016+,11−0018,NETO1−0018,NETO1−0023,NETO1−0027,NETO1−0028,1q41−0024,1q41−0025,1q41−0027,1q41−0028,1q41−0029,1q41−0030,1q41−0031,1q41−0032,1q41−0033,1q41−0034,1q41−0035,1q41−0036,1q41−0037,1q41−0038,16−0005,16−0011,16−0014,16−0017,16−0023,16−0024,16−0026,16−0027,16−0030,16−0032,16−0033,1q32−0001,1q32−0002,1q32−0003,1q32−0004,1q32−0005,1q32−0006,1q32−0007,1q32−0041,1q32−0045,1q32−0046,1q32−0050,1q32−0051,1q32−0052,05−0025,16−0005,05−0029,05−0031で表される一塩基多型からなる群から選択される請求項19に記載のマーカー遺伝子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2008−48730(P2008−48730A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191852(P2007−191852)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、経済産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構「遺伝子多様性モデル解析事業」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、経済産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構「遺伝子多様性モデル解析事業」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]