説明

摩擦クラッチの冷却装置

【課題】クラッチハウジング内に導入した外気(冷却空気)がクラッチディスクに向けて的確に導かれるように構成した摩擦クラッチの冷却装置を提供すること。
【解決手段】摩擦クラッチは、クラッチハウジング11内にてインプットシャフト12の外周に配置されてレリーズベアリング13を外周にて軸方向に移動可能に支持する筒状のリテーナ14を備えている。摩擦クラッチの冷却装置においては、リテーナ14のエンジン側端部開口をクラッチディスク23のハブ部に臨ませるとともに、リテーナ14のトランスミッション側部位に外気導入路14aが設けられている。また、クラッチハウジング11に、外気導入路14aに連通する外気導入口14が設けられるとともに、クラッチハウジング11内に連通する空気導出口11bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦クラッチの冷却装置に係り、特に、エンジンとトランスミッション間に介装されてエンジンとトランスミッション間での動力伝達を断続する摩擦クラッチの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦クラッチの冷却装置は、クラッチハウジング内の温度上昇を抑えて、クラッチディスクの早期摩耗を防止するために設けられており、例えば、下記特許文献1に記載されている。下記特許文献1に記載されている摩擦クラッチの冷却装置では、当該摩擦クラッチの一構成部材であるレリーズフォーク(クラッチハウジングの外部から内部に挿通される部材)に空気流路(レリーズフォークの外端部から内端部に空気を導く通路)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−119527号公報
【発明の概要】
【0004】
上記特許文献1に記載されている摩擦クラッチの冷却装置では、レリーズフォークに設けた空気流路を通してクラッチハウジング内に外気(冷却空気)を導入することができて、クラッチハウジング内を冷却することができる。しかし、クラッチハウジング内では、レリーズフォークの配設位置よりエンジン側にて、クラッチディスクがフライホイールとプレッシャプレート間に配置され、しかも、プレッシャプレートとレリーズフォーク間には、クラッチバネ(例えば、ダイアフラムスプリング)、クラッチカバー、レリーズベアリング等が配置されている。このため、レリーズフォークの空気流路を通してクラッチハウジング内に導入した外気(冷却空気)は、クラッチバネ(例えば、ダイアフラムスプリング)、クラッチカバー、レリーズベアリング等によってクラッチディスクへの流れを阻害されて、クラッチディスクに向けて的確に導かれないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、クラッチハウジング内に導入した外気(冷却空気)がクラッチディスクに向けて的確に導かれるように構成した摩擦クラッチの冷却装置を提供することを目的としている。
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明では、クラッチハウジング内にてインプットシャフトの外周に配置されてレリーズベアリングを外周にて軸方向に移動可能に支持する筒状のリテーナを備えている摩擦クラッチにおいて、前記リテーナのエンジン側端部開口をクラッチディスクのハブ部に臨ませるとともに、前記リテーナのトランスミッション側部位に外気導入路を設け、前記クラッチハウジングに、前記外気導入路に連通する外気導入口を設けるとともに、前記クラッチハウジング内に連通する空気導出口を設けて、摩擦クラッチの冷却装置を構成した。
【0007】
本発明による摩擦クラッチの冷却装置では、クラッチハウジングに設けた外気導入口と、リテーナのトランスミッション側部位に設けた外気導入路と、リテーナの内筒部を通して、リテーナのエンジン側端部開口からクラッチディスクのハブ部に外気(冷却空気)を導くことが可能である。また、クラッチディスクのハブ部からクラッチディスクの外周部に向けて流れてクラッチハウジング内に流れる空気(冷却後の空気)をクラッチハウジングの空気導出口を通してクラッチハウジング外に排出することが可能である。
【0008】
ところで、本発明による摩擦クラッチの冷却装置においては、リテーナのエンジン側端部開口からクラッチディスクのハブ部に外気(冷却空気)をダイレクトに導くことが可能であるため、外気(冷却空気)をクラッチディスクに向けて的確に(当該摩擦クラッチの構成部材によって空気流れを阻害されることなく)導くことが可能であり、クラッチディスクを的確に冷却することが可能である。
【0009】
また、本発明による摩擦クラッチの冷却装置においては、摩擦クラッチにおける各構成部材の回転(遠心力)により、クラッチディスクのハブ部から外周部に向けて流れる空気流をポンプ無しで形成することが可能であるため、クラッチディスクを効率よく冷却することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による摩擦クラッチの冷却装置の一実施形態を概略的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明による摩擦クラッチの冷却装置を概略的に示したものであり、この摩擦クラッチは、クラッチハウジング11内にてインプットシャフト12の外周に配置されてレリーズベアリング13を外周にて軸方向に移動可能に支持する筒状のリテーナ14を備えている。インプットシャフト12は、トランスミッションTMの入力軸である。レリーズベアリング13は、レリーズフォーク(図示省略)によってエンジンEG側に押動されるものであり、ベアリングハブ15(リテーナ14の外周に軸方向へ摺動可能に組付けられている)に組付けられている。
【0012】
また、この摩擦クラッチでは、エンジンEGのクランクシャフト16に一体的に組付けられるフライホイール17にクラッチカバー18が一体的に組付けられている。また、クラッチカバー18に、プレッシャプレート21が一体回転可能かつ軸方向に移動可能に組付けられるとともに、クラッチバネ(ダイアフラムスプリング)22が傾動可能(反転可能)に組付けられている。また、インプットシャフト12に、クラッチディスク23がトルク伝達可能(一体回転可能)に組付けられている。
【0013】
ところで、この実施形態においては、リテーナ14のエンジンEG側端部開口をクラッチディスク23のハブ部(内周部)に臨ませる(近接して配置させる)とともに、リテーナ14のトランスミッションTM側部位(レリーズベアリング13およびベアリングハブ15の軸方向移動範囲よりトランスミッションTM側の部位)に外気導入路14aが設けられている。また、クラッチハウジング11に、外気導入路14aに連通する外気導入口11aが設けられるとともに、クラッチハウジング11内に連通する空気導出口11bが設けられている。これにより、摩擦クラッチの冷却装置が構成されている。
【0014】
外気導入路14aは、内端にてリテーナ14の内筒部14b内に連通し、外端にて外気導入口11aに連通している。外気導入口11aは、クラッチハウジング11の下方に設けられている。空気導出口11bは、クラッチディスク23の径外方部位で、クラッチハウジング11の下方に設けられている。なお、外気導入口11aと空気導出口11bには、防塵・防水機能を有し通気性を有するフィルタ(図示省略)を設けることが望ましい。
【0015】
上記のように構成したこの実施形態においては、白抜きの矢印で示したように、クラッチハウジング11に設けた外気導入口11aと、リテーナ14のトランスミッション側部位に設けた外気導入路14aと、リテーナ14の内筒部14bを通して、リテーナ14のエンジンEG側端部開口からクラッチディスク23のハブ部(内周部)に外気(冷却空気)を導くことが可能である。また、クラッチディスク23のハブ部(内周部)からクラッチディスク23の外周部に向けて流れて、クラッチカバー18の外周部位に設けられている通孔(図示省略)を通してクラッチハウジング11内に流れる空気(冷却後の空気)をクラッチハウジング11に設けた空気導出口11bを通してクラッチハウジング11外に排出することが可能である。
【0016】
ところで、この実施形態においては、リテーナ14のエンジンEG側端部開口からクラッチディスク23のハブ部に外気(冷却空気)をダイレクトに導くことが可能であるため、外気(冷却空気)をクラッチディスク23に向けて的確に(当該摩擦クラッチの構成部材によって空気流れを阻害されることなく)導くことが可能であり、クラッチディスク23を的確に冷却することが可能である。
【0017】
また、この実施形態においては、当該摩擦クラッチにおける各構成部材(クラッチディスク23、プレッシャプレート21、クラッチカバー18等)の回転(遠心力)により、クラッチディスク23のハブ部から外周部に向けて流れる空気流をポンプ無しで形成することが可能であるため、クラッチディスク23を効率よく冷却することが可能である。
【0018】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、クラッチバネ22としてダイアフラムスプリングを採用して実施したが、クラッチバネとして圧縮コイルスプリングを採用して実施することも可能である。
【0019】
また、上記実施形態では、クラッチハウジング11に設けた外気導入口11aと、リテーナ14のトランスミッションTM側部位に設けた外気導入路14aとを直接連通させるように構成して実施したが、外気導入口(11a)と外気導入路(14a)とをパイプやチューブ等の管体を介して連通させるように構成して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0020】
11…クラッチハウジング、11a…外気導入口、11b…空気導出口、12…インプットシャフト、13…レリーズベアリング、14…リテーナ、14a…外気導入路、14b…内筒部、15…ベアリングハブ、16…クランクシャフト、17…フライホイール、18…クラッチカバー、21…プレッシャプレート、22…クラッチバネ(ダイアフラムスプリング)、23…クラッチディスク、EG…エンジン、TM…トランスミッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチハウジング内にてインプットシャフトの外周に配置されてレリーズベアリングを外周にて軸方向に移動可能に支持する筒状のリテーナを備えている摩擦クラッチにおいて、
前記リテーナのエンジン側端部開口をクラッチディスクのハブ部に臨ませるとともに、前記リテーナのトランスミッション側部位に外気導入路を設け、前記クラッチハウジングに、前記外気導入路に連通する外気導入口を設けるとともに、前記クラッチハウジング内に連通する空気導出口を設けて構成した摩擦クラッチの冷却装置。

【図1】
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