説明

摩擦帯電濾材およびその製造方法

【課題】本発明は、主にガス中の粉塵やミストを高い効率で捕集し、かつ使用後の廃棄性に優れる環境負荷の少ない帯電濾材、及びそれを用いた気体浄化用フィルターを提供する。
【解決手段】少なくとも二種類の合成繊維を摩擦帯電させる帯電濾材において、濾材に付着する繊維油剤が0.1wt%未満、且つ、無機イオン量が0.5mg/g未満である濾材を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にガス中の粉塵やミストを高い効率で捕集し、かつ使用後の廃棄性に優れる環境負荷の少ない帯電濾材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的長寿命の静電荷が付与された誘電材料を帯電濾材と称し、一般に気体浄化用フィルター等の分離材料、マスク等の衛生材料、マイクロフォン等の電子材料に利用されている。
【0003】
かかる帯電濾材は、気体浄化用等の分野でその静電気により通常の繊維材料では除去しにくいサブミクロンサイズやナノサイズの微細塵を高効率で除去する事ができるという特徴を有するため、多くの検討がなされている。具体的には濾材を通る流体の流れに対する抵抗は小さくする、長期にわたって性能が保持される等の研究がなされており、例えばポリオレフィン繊維とハロゲン置換ポリオレフィン繊維との混繊によって形成されている粉塵の捕集効率が高く低圧力損失の、短繊維からなる空気濾材が開示されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、かかる濾材は、含有するハロゲン置換合成高分子材料により焼却処分時にダイオキシンを発生する恐れがあり、廃棄時に環境負担を少なくし、安全性が求められる近年の要請に応え難い。
【0004】
二種類以上の繊維からなり、繊維に油剤の付着が無い帯電濾材が開示されている(例えば特許文献2参照)。確かに油剤を減少させることにより帯電性能を向上させることは可能であるが、短繊維においてはウェブを形成する等の加工において油剤の付着が必須で、これを完全に除去することは難しい。
【0005】
また、帯電性能を向上させるため、素材を選択し、ポリエステル繊維とポリオレフィン繊維が混繊され、ポリプロピレン繊維の繊度はポリエステル繊維の繊度より大きく、かつ少なくとも1.5倍以上である濾材が開示されている(例えば特許文献3参照)。しかしながら、素材を限定して帯電性能を向上させる場合、繊維の組み合わせが限定されるために自由度が少なくなり、用途に応じた素材の選択ができず、市場の要請(例えば柔軟性、耐久性、耐光性等)に柔軟に対応することができない。
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第246811号明細書
【特許文献2】特開平8−290026号公報
【特許文献3】特表2003−512147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたもので、優れた粉塵の捕集効率を発揮し、低圧力損失かつ長寿命の帯電濾材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、遂に本発明を完成するに至った。即ち本発明は以下の通りである。
1.少なくとも二種類の合成繊維を摩擦帯電させる帯電濾材において、濾材に付着する繊維油剤が0.1wt%未満、且つ、無機イオン量が0.5mg/g未満であることを特徴とする摩擦帯電濾材。
2.前記合成繊維がポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維であることを特徴とする上記1に記載の摩擦帯電濾材。
3.前記合成繊維が短繊維からなることを特徴とする上記1又は2のいずれかに記載の摩擦帯電濾材。
4.一種類の繊維が重量比で少なくとも20%以上含まれていることを特徴とする上記1乃至3のいずれかに記載の摩擦帯電濾材。
5.摩擦帯電時の絶対湿度が15mg/m以下であることを特徴とする上記1及至4のいずれかに記載の摩擦帯電濾材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、優れた粉塵の捕集効率を発揮し、低圧力損失かつ長寿命の帯電濾材を供給することができ、更に多様な素材に対応できるという有利な効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。
一般に短繊維は加工性を良好にする為に潤滑剤や帯電防止剤など各種の油剤が塗布されているが、繊維上に油剤が付着したままでは繊維同士を摩擦させても十分に帯電することが困難となる。したがって摩擦帯電工程の前に繊維から油剤を除去しておくことが有効である。洗浄の方法としては、水、温水、アルコール等の溶剤を用いる方法、更にノニオン系の洗浄剤等を併用する手段がある。油剤除去の程度に関しては、JIS L−1015化学ステープル試験方法に記載されているメタノール抽出方法で測定して0.1wt%未満が好ましい。0.1wt%以上であれば帯電に影響を及ぼす可能性があり好ましくない。
【0011】
濾材に付着する無機イオンは、繊維油剤の洗浄不足による脂肪酸塩などが由来である。また、その他の由来としては、洗浄工程で使用する工業用水などがある。取水される場所により工業用水には様々なイオン類が含まれている。軟水器を通した場合には、カルシウムイオンやマグネシウムイオンは除去されるが、ナトリウムイオンが水中に放出されることになる。殺菌用の次亜塩素酸ナトリウムの添加によっても無機イオン量が増加する。これらのイオン類の総計は濾材1g当り0.5mg未満にするのが好ましい。0.5g/g以上であれば、帯電に影響を及ぼす可能性があり、好ましくない。
【0012】
本発明の摩擦帯電濾材に用いる合成繊維は、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維が用いられる。具体的には、ポリアミド系繊維は、ナイロン、アラミド等が挙げられる。ポリエステル系繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、芳香族ポリエステルが挙げられる。アクリル系繊維は、ポリアクリルニトリルが挙げられる。ポリオレフィン系繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。このような単一繊維やポリプロピレンとポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレン等の複合繊維でも同様の効果が得られる。好ましくは、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン等である。
【0013】
本発明の摩擦帯電濾材は、一種類の繊維が重量比で少なくとも20%以上含まれていることが好ましい。例えば、二種類の場合は混合比率が質量比として20:80〜80:20であり、好ましくは40:60〜60:40である。かかる範囲であれば、有効に荷電することができるからである。
【0014】
本発明の摩擦帯電濾材の製造方法や形態は特に限定されないが、短繊維からなる混繊濾材が好ましい。短繊維はニードルパンチ法等により繊維同士を摩擦させるとき、高い運動性を示し、また二種以上の素材の混合が十分になされるため、摩擦帯電において特に有効だからである。
【0015】
本発明によって用いられる合成繊維の径は、3〜30μmとするのが好ましく、より好ましくは5〜25μmである。かかる範囲であれれば、低圧力損失であって、且つ十分な粉塵保持量を確保できるからである。
【0016】
繊維の断面は円形、三角形、矩形、異形など種々の形状のものを使用出来る。また、その繊維長はシート化の方法にもよるが10〜100mmが好ましく、30〜80mmであると更に好ましい。かかる範囲であれば、カーディングによるウェブが均一となるからである。
【0017】
合成繊維を混合してシート化する手段としては特に限定しないが、それらの繊維を混繊してカーディングによりウェブを作製し、それらをニードルパンチやウォーターパンチ等の手段で繊維を交絡させるのが好ましい。得られた濾材の目付は5〜1000g/mが好ましく、10〜500g/mが更に好ましい。かかる範囲であれば、実用上要求される濾材の圧力損失と微細塵の除去効率や粉塵保持量を満足することができるからである。
【0018】
本発明に用いられる摩擦帯電濾材の帯電方法は、カーディングやニードルパンチ等を使用した濾材化工程で繊維同士を摩擦する方法、濾材化した後に機械、手、ブラシ等で摩擦を施す方法等がある。二種類以上の繊維が十分に摩擦できる方法であれば、摩擦帯電することができる。
【0019】
本発明の帯電濾材の使用方法については特に限定しないが、本発明を用いた気体浄化用フィルターは、上記帯電濾材をプリーツ状や波状に成形してあることが望ましい。なお、その際には帯電濾材単独ではなく、不織布、ネット、脱臭剤を含むシート等の材料を、強度、加工性の向上、除塵能力の増強、脱臭や難燃や抗菌などの機能を付与させる目的で積層することも可能である。積層の方法としては単に重ねる以外に、接着剤を用いる方法、ウォーターパンチ時に基材として敷く方法、そしてニードパンチ等により交絡させる方法などが好ましく用いられる。
【0020】
本発明の摩擦帯電濾材は、少なくとも二種類の合成繊維を摩擦帯電させる時、絶対湿度を15g/m以下とすることが好ましい。摩擦帯電濾材の素材としては、水分率が小さい素材が適していることが知られていたが、摩擦帯電時の水分に関する環境について特にコントロールされたものはなかった。しかし、摩擦帯電時の環境を特に絶対湿度15g/m以下とすることにより、極めて高い摩擦特性を付与することができることを本願発明者らが見出した。摩擦帯電の機構自体が明らかにされておらず、何故、摩擦帯電時の絶対湿度を15g/m以下とすることにより摩擦帯電特性が向上するかについても明らかではないが、摩擦帯電は、摩擦によってある繊維の電子が他の繊維に移り、電荷バランスが変動することが原因であると考えられるところ、空気中に含まれる水蒸気はこの電荷バランスの変動を抑制する働きがあるためであると推測できる。
【0021】
本発明の製造方法における摩擦帯電時の絶対湿度の下限は特に限定されないが、コストと摩擦帯電性能のバランスの観点から1g/m以上であることが好ましい。より好ましい絶対湿度の範囲は2〜13g/m、更に好ましくは4〜8g/mである。
【実施例】
【0022】
以下本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定するものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変形することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0023】
(濾過特性の評価)
圧力損失(PD)は、帯電濾材試料をダクト内に設置し、濾材通過線速度が10cm/秒になるようにコントロールし、濾材上流、下流の静圧差を圧力計で読み取り求めた。また粒子捕集効率E(%)は、面に垂直方向に大気塵を含む空気を線速10cm/秒で通過させ、上流側と下流側の空気をサンプリングし、パーティクルカウンターを用い0.3〜0.5μmの粒径の粒子数をカウントし、下記の数1を用いて帯電濾材100g/m当たりの性能を示す値として算出した。
【0024】
【数1】

【0025】
圧力損失PD(mmAq)と粒子捕集効率E(%)を用いて、数2より濾材品質係数QFを算出した。
【0026】
【数2】

【0027】
(摩擦帯電濾材の油剤量)
摩擦帯電濾材の油剤量に関しては、JIS L−1015化学ステープル試験方法に記載されているメタノール抽出方法で測定した。
【0028】
(摩擦帯電濾材の無機イオン量)
濾材を計量し、計量した純水中で濾材を揉んで付着物を抽出した。この水をイオンクロマトグラフィーで分析し、水中の各イオンの濃度から濾材1g当りに付着していた無機イオン量を算出した。
【0029】
(絶対湿度)
絶対湿度d(kg/m)とは湿潤空気の単位体積中にある水蒸気の質量である。単位として、g/mも用いる。絶対湿度に関しては、JIS Z−8806湿度−測定方法に記載されている以下の式から算出した。
【0030】
【数3】

【0031】
水蒸気圧(Pa):e
水のモル質量:M=18.0×10−3kg/mol
気体定数:R=8.31J・K−1・mol−1
湿潤空気の温度(K):T
【0032】
(実施例1)
ナイロン繊維(2.2dtex×51mm)50重量%と、ポリプロピレン繊維(2.2dtex×51mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.05wt%であった。無機イオン量は0.1mg/gであった。
【0033】
(実施例2)
ナイロン繊維(2.2dtex×51mm)50重量%と、難燃性ポリエステル繊維(1.7dtex×44mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.05wt%であった。無機イオン量は0.13mg/gであった。
【0034】
(実施例3)
ナイロン繊維(2.2dtex×51mm)50重量%と、ポリエステル繊維(2.2dtex×51mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.07wt%であった。無機イオン量は0.11mg/gであった。
【0035】
(実施例4)
ナイロン繊維(2.2dtex×51mm)50重量%と、アクリル繊維(1.7dtex×51mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.06wt%であった。無機イオン量は0.15mg/gであった。
【0036】
(実施例5)
アクリル繊維(1.7dtex×51mm)50重量%と、ポリプロピレン繊維(2.2dtex×51mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.07wt%であった。無機イオン量は0.14mg/gであった。
【0037】
(実施例6)
アクリル繊維(1.7dtex×51mm)50重量%と、難燃性ポリエステル繊維(1.7dtex×44mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.05wt%であった。無機イオン量は0.15mg/gであった。
【0038】
(実施例7)
アクリル繊維(1.7dtex×51mm)50重量%と、ポリエステル繊維(2.2dtex×51mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.06wt%であった。無機イオン量は0.11mg/gであった。
【0039】
(実施例8)
ポリエステル繊維(2.2dtex×51mm)50重量%と、ポリプロピレン繊維(2.2dtex×51mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.07wt%であった。無機イオン量は0.13mg/gであった。
【0040】
(実施例9)
難燃性ポリエステル繊維(1.7dtex×44mm)50重量%と、ポリプロピレン繊維(2.2dtex×51mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.06wt%であった。無機イオン量は0.11mg/gであった。
【0041】
(実施例10)
難燃性ポリエステル繊維(3.3dtex×44mm)50重量%と、ポリプロピレン繊維(2.2dtex×51mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.05wt%であった。無機イオン量は0.12mg/gであった。
【0042】
(実施例11)
難燃性ポリエステル繊維(1.7dtex×44mm)50重量%と、ポリプロピレン繊維(3.3dtex×51mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.05wt%であった。無機イオン量は0.1mg/gであった。
【0043】
(実施例12)
難燃性ポリエステル繊維(3.3dtex×44mm)50重量%と、ポリプロピレン繊維(3.3dtex×51mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.05wt%であった。無機イオン量は0.14mg/gであった。
【0044】
(実施例13)
難燃性ポリエステル繊維(1.7dtex×44mm)50重量%と、ポリプロピレン繊維(5.6dtex×64mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.07wt%であった。無機イオン量は0.12mg/gであった。
【0045】
(実施例14)
難燃性ポリエステル繊維(3.3dtex×44mm)50重量%と、ポリプロピレン繊維(5.6dtex×64mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.05wt%であった。無機イオン量は0.11mg/gであった。
【0046】
(比較例1)
ナイロン繊維(2.2dtex×51mm)をカードにかけてウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.05wt%であった。無機イオン量は0.13mg/gであった。
【0047】
(比較例2)
ポリプロピレン繊維(2.2dtex×51mm)をカードにかけてウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.05wt%であった。無機イオン量は0.1mg/gであった。
【0048】
(比較例3)
難燃性ポリエステル繊維(1.7dtex×44mm)50重量%と、ポリプロピレン繊維(2.2d×51mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.2wt%であった。無機イオン量は0.6mg/gであった。
【0049】
(比較例4)
アクリル繊維(1.7dtex×44mm)50重量%と、ポリプロピレン繊維(2.2dtex×51mm)50重量%を混繊し、カードでウェブを形成した後、ウォーターパンチで濾材を作製した。乾燥後、この濾材をニードルパンチにより摩擦帯電させた。摩擦帯電時の絶対湿度は6g/mで行った。得られた摩擦帯電濾材の油剤量は0.08wt%であった。無機イオン量は0.6mg/gであった。
【0050】
上述した摩擦帯電濾材について、先に説明した方法により0.3〜0.5μmの粒子の捕集性能、圧力損失、QFの測定を実施した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1〜14は任意の繊維の組み合わせによって短繊維を不織布化し、濾材に付着する油剤量が0.1wt%未満、且つ、無機イオン量が0.5mg/g未満で、低絶対湿度下で荷電すれば高性能の濾材を作製できることを示すものである。
【0053】
比較例1、2は単一繊維からなる濾材を、油剤量が0.1wt%未満、且つ、無機イオン量が0.5mg/g未満で、低絶対湿度下で摩擦帯電させたものである。混繊させたものよりも性能は劣るものである。
【0054】
比較例3、4は濾材に付着した油剤量または無機イオン量が多い場合に荷電させたものである。付着した油剤および無機イオンが濾材の性能に与える影響が大きいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上述べたように、本発明における帯電濾材及び空気清浄化用フィルターは特に空気清浄機や空調設備での使用条件において優れた性能を発揮することが可能であると同時に環境負荷も小さく、多様な素材に対応することが可能であり、本発明の産業上の利用性は大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二種類の合成繊維を摩擦帯電させる帯電濾材において、濾材に付着する繊維油剤が0.1wt%未満、且つ、無機イオン量が0.5mg/g未満であることを特徴とする摩擦帯電濾材。
【請求項2】
前記合成繊維がポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維であることを特徴とする請求項1に記載の摩擦帯電濾材。
【請求項3】
前記合成繊維が短繊維からなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の摩擦帯電濾材。
【請求項4】
一種類の繊維が重量比で少なくとも20%以上含まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の摩擦帯電濾材。
【請求項5】
摩擦帯電時の絶対湿度が15mg/m以下であることを特徴とする請求項1及至4のいずれかに記載の摩擦帯電濾材の製造方法。


【公開番号】特開2008−86964(P2008−86964A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273600(P2006−273600)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】