説明

摩擦特性が改善された水和アルカリ金属ホウ酸塩含有潤滑油組成物

【課題】摩擦及び摩耗性能が改善された潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】特にポリサルファイドの比率を制御したときに摩擦及び摩耗性能が改善された潤滑油組成物であって、主要量の潤滑粘度の油;少なくとも一種のアルカリ金属ホウ酸塩;サルファイドの混合物からなり、二炭化水素テトラサルファイド又はそれ以上のポリサルファイドを少なくとも30%有する少なくとも一種の二炭化水素ポリサルファイド成分;三炭化水素亜リン酸エステルからなる少なくとも一種の非酸性リン成分;少なくとも一種の二炭化水素ジチオリン酸エステル;および二炭化水素亜リン酸エステル成分からなるリン成分を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には潤滑剤に関するものであり、特には自動車ギヤ用潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
分散状のアルカリ金属ホウ酸塩を潤滑油配合物に使用することはよく知られている。各種の特許文献には、アルカリ金属ホウ酸塩と硫黄化合物および特定のリン化合物との組合せが教示されている。例えば、特許文献1及び2およびそれらに引用されている特許文献を参照されたい。これらの先行配合物は、ホウ酸塩の固体分散物を使用しない他の市販潤滑剤に比べて、保存寿命が短いと云う問題点がある。特許文献3には、この欠点が非酸性リン化合物の注意深い使用により克服できるかについて教示されている。また、特許文献3には、潤滑油組成物中のテトラサルファイド:トリサルファイド:ジサルファイドの比のバランスを考慮することにより、耐荷重能を維持、改善できるかについても教示されている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第4717490号明細書
【特許文献2】米国特許第4472288号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第US2006/0252656号明細書、2005年5月4日出願
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ギヤ油添加剤パッケージ、潤滑油組成物、ギヤ油添加剤パッケージの製造方法、および潤滑油組成物の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の成分の混合物が分散(通常は少量で分散)している潤滑粘度の油を含む潤滑油組成物を提供するものである:(a)水和アルカリ金属ホウ酸塩成分、(b)約64.5質量%未満の二炭化水素トリサルファイドと、約5.5質量%より多い二炭化水素ジサルファイドと、少なくとも約30.0質量%の二炭化水素テトラサルファイド又はそれ以上のポリサルファイドとを含む混合物からなる二炭化水素ポリサルファイド成分、(c)三炭化水素亜リン酸エステル成分からなり、かつそのうちの少なくとも90質量%が式:(RO)3P(ただし、Rは炭素原子数4〜24の炭化水素基である)を有する非酸性リン成分、および(d)二炭化水素ジチオリン酸エステル誘導体。なお、任意に、二炭化水素亜リン酸水素エステル成分であって、そのうちの少なくとも90質量%が式:(RO)2POH(ただし、Rは炭素原子数4〜24の炭化水素基である)を有する亜リン酸エステル成分も、潤滑油組成物に使用することができる。
【発明の効果】
【0006】
ポリサルファイドの比率を本発明に従って調整することにより、耐摩耗性能の改善を維持しながら同時に最適な摩擦性能を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、ギヤ油添加剤パッケージ、潤滑油組成物、ギヤ油添加剤パッケージの製造方法、および潤滑油組成物の製造方法に関する。
【0008】
[添加剤パッケージ]
本発明のギヤ油添加剤パッケージは、油溶性の添加剤組成物である。ギヤ油添加剤パッケージはギヤ用潤滑油に使用することができる。本発明の添加剤パッケージは、(1)少なくとも一種の水和アルカリ金属ホウ酸塩成分、(2)約64.5質量%未満の二炭化水素トリサルファイドと、約5.5質量%より多い二炭化水素ジサルファイドと、少なくとも約30.0質量%の二炭化水素テトラサルファイド又はそれ以上のポリサルファイドとを含む混合物からなる少なくとも一種の二炭化水素ポリサルファイド成分、(3)三炭化水素亜リン酸エステル成分からなり、かつそのうちの少なくとも90質量%が式:(RO)3P(ただし、Rは炭素原子数4〜24の炭化水素基である)を有する少なくとも一種の非酸性リン成分、および(4)少なくとも一種の二炭化水素ジチオリン酸エステルを含んでいる。「非酸性」は、成分中に含まれるリンを指していて、リンに結合した酸性又は非酸性の炭化水素基を限定しようとするものではない。この基本混合物を、基油、ジアルキル亜リン酸エステル、消泡剤、粘度調整剤、金属不活性化剤、並びに任意に清浄剤、分散剤および酸化防止剤と一緒にして、完全な潤滑油配合物を調製することができる。
【0009】
[水和アルカリ金属ホウ酸塩]
本発明の潤滑油組成物に用いられる第一の添加剤成分は、粒状の水和アルカリ金属ホウ酸塩である。粒状の水和アルカリ金属ホウ酸塩は、当該分野ではよく知られていて、市販されてもいる。好適なホウ酸塩および製造方法が開示された代表的な特許文献としては次のものが挙げられる:米国特許第3313727号、第3819521号、第3853772号、第3907601号、第3997454号、第4089790号及び第6534450号の各明細書。
【0010】
水和アルカリ金属ホウ酸塩は、下記式で表すことができる。

2O・mB23・nH2

[式中、Mは原子番号が11〜19の範囲にあるアルカリ金属、例えばナトリウムまたはカリウムであり、mは2.5〜4.5の数(整数でも分数であってもよい)であり、そしてnは1.0〜4.8の数である。好ましいのは水和ホウ酸カリウムであり、特には、カリウム対ホウ素の比が約1:2.75乃至1:3.25の水和三ホウ酸カリウム微粒子である。水和ホウ酸塩粒子の平均粒径は一般に1ミクロン未満である。]
【0011】
[二炭化水素ポリサルファイド]
本発明に用いられる二炭化水素ポリサルファイド成分は、約64.5質量%未満、好ましくは約60.0質量%以下の二炭化水素トリサルファイド、約5.5質量%より多い、好ましくは約6.0質量%より多い二炭化水素ジサルファイド、および少なくとも約30.0質量%、好ましくは少なくとも40質量%の二炭化水素テトラサルファイド又はそれ以上のポリサルファイドを含む混合物からなる。二炭化水素ポリサルファイド混合物は、主として二炭化水素テトラサルファイド又はそれ以上のポリサルファイドを含んでいることが好ましい。「ポリサルファイド」には、本明細書で使用するとき、少量の二炭化水素モノサルファイドが含まれていてもよく、これらはモノサルファイド又はサルファイドとも呼ばれる。一般にモノサルファイドは、存在する全硫黄含有化合物のうちの約1質量%未満という比較的少量で存在する。通常はモノサルファイドは、約0.3質量%乃至約0.4質量%の範囲の量で存在する。好ましくはモノサルファイドは約0.4質量%未満であり、より好ましくは約0.3質量%未満である。
【0012】
「炭化水素基」としては、炭化水素基、並びに実質的に炭化水素の基が挙げられる。「実質的に炭化水素」とは、置換基の主たる炭化水素性質を実質的に変えることのないヘテロ原子置換基を含む基を言う。炭化水素基の限定しない例としては次のものが挙げられる:(1)炭化水素置換基、すなわち脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)及び脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル等)置換基、芳香族、脂肪族及び脂環置換芳香族置換基、また環が分子の別の部分により終結した環状置換基も含まれる(すなわち、例えば表示した任意の2個の置換基が一緒になって脂環式基を形成していてもよい)、(2)置換炭化水素置換基、すなわち置換基の主たる炭化水素性質を実質的に変えることのない非炭化水素基であって、例えばハロ(特には、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシなどの基が挙げられる非炭化水素基を含むような置換基、(3)ヘテロ原子置換基、すなわち、それ以外は炭素原子からなる環又は鎖内に炭素以外の原子を含む置換基(例えば、アルコキシまたはアルキルチオ)。好適なヘテロ原子としては例えば硫黄、酸素、窒素が挙げられ、そしてピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルで例示されるような1個以上のヘテロ原子を含む置換基である。
【0013】
一般に、炭化水素基には炭素原子10個毎に、約2個以下、好ましくは1個以下のヘテロ原子置換基が存在する。通常は炭化水素基中にヘテロ原子置換基は無く、その場合に炭化水素基は炭化水素である。好ましいのはアルキル基であり、より好ましくは炭化水素基は第三級ブチルである。
【0014】
有機ポリサルファイドは、米国特許第6489721号、第6642187号及び第6689723号の各明細書に記載されているようにして製造することができ、それらも参照内容として本明細書の記載とする。
【0015】
[非酸性リン化合物]
本発明の潤滑油組成物には、少なくとも二種類の非酸性リン成分も用いられる。少なくとも二種類の非酸性リン成分は、本発明によれば、前に定義したように非酸性であり、より好ましくは二種類のリン化合物、三炭化水素亜リン酸エステルとリン酸誘導体、すなわち二炭化水素ジチオリン酸エステルとからなる。
【0016】
酸性のリン化合物は、本明細書で使用するとき、リン原子に直接結合した水素原子、またはリン原子にヘテロ原子が結合し、そのヘテロ原子に結合した水素原子を含む化合物を意味する。非酸性のリン化合物は、本明細書で使用するとき、三炭化水素亜リン酸エステルまたはジチオリン酸エステル誘導体が、カルボン酸基のような酸基は含みうるが、リン原子に直接結合した水素原子またはリン原子にヘテロ原子が結合し、そのヘテロ原子に結合した水素原子は含まないことを意味する。よって、−P−Hや−P−O−H、−P−S−Hを持つ化合物は酸性とみなされるが、一方米国特許第5922657号明細書に記載されているようなジチオリン酸エステルは、本明細書で使用するとき、たとえカルボン酸官能基を持っていても非酸性とみなされることになる。
【0017】
酸性リン酸化合物は、米国特許第4575431号明細書(サレンタイン)に記載されているようなリン化合物を基本とすることができ、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。アミノリン化合物が用いられるなら、アミノリン化合物はジチオリン酸エステルアミン(すなわち、ジチオリン酸エステルのアミン塩)であることが好ましい。本発明の潤滑剤に使用できる代表的なジチオリン酸エステルは、当該分野ではよく知られている。これらのジチオリン酸エステルは、2個の炭化水素基と1個の水素官能性基を含むものであり、従って酸性であり、本発明の組成物に使用するには中和しなければならない。本発明に使用できる炭化水素基は、炭素原子数3〜8の脂肪族アルキル基であることが好ましい。
【0018】
代表的な二炭化水素ジチオリン酸エステルとしては、ジ−2−エチル−1−ヘキシルジチオリン酸水素エステル、ジイソオクチルジチオリン酸水素エステル、ジプロピルジチオリン酸水素エステル、およびジ−4−メチル−2−ペンチルジチオリン酸水素エステルを挙げることができる。
【0019】
好ましいジチオリン酸エステルは、ジヘキシルジチオリン酸水素エステル、ジブチルジチオリン酸水素エステル、およびジ−n−ヘキシルジチオリン酸水素エステルである。
【0020】
本発明に使用するには、酸性リン酸エステルを、米国特許第4575431号明細書(サレンタイン)に開示されているように、アルキルアミンとの反応により完全に中和する。中和は少なくとも80%完了でなければならない。最良の結果では、中和は85%乃至100%の範囲にあるべきであり、ここで100%中和とは、酸性水素原子各々と1個のアルキルアミンとの反応を意味する。
【0021】
アミン部は一般にはアルキルアミンから誘導される。アミンアルキル基は、炭素原子10〜30個、好ましくは炭素原子12〜18個の長さである。代表的なアミンとしては、ペンタデシルアミン、オクタデシルアミン、およびセチルアミン等が挙げられる。最も好ましいのはオレイルアミンである。ジチオリン酸エステルと無硫黄リン酸エステルとの混合物を使用するときは、ジチオリン酸エステルと無硫黄リン酸エステルとのモル比は、70:30乃至30:70の範囲にあるべきであり、好ましくは55:45乃至45:55、最も好ましくは1:1である。置換リン酸二水素エステルと二置換リン酸水素エステルとのモル比は、30:70乃至55:45の範囲にあるべきであり、好ましくは35:65乃至50:50、最も好ましくは45:55である。
【0022】
好ましい非酸性リン酸誘導体は、米国特許第5992657号明細書(カメンツィン、外)に記載されているようなジチオリン酸エステルである。二炭化水素エステル基は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)製のイルガルーベ(Irgalube)353で代表されるようなアルキルであることが好ましい。
【0023】
また、本発明のリン化合物としては、非酸性である三炭化水素亜リン酸エステルも挙げることができる。本発明に使用できる三炭化水素亜リン酸エステルとしては、(RO)3P(ただし、Rは、炭素原子数約4〜24、より好ましくは炭素原子数約8〜18、最も好ましくは炭素原子数約10〜14の炭化水素基である)が挙げられる。炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素基はアルキルであることが好ましい。より好ましくは、トリアルキル亜リン酸エステルは、構造:(RO)3P(ただし、Rは上に定義した通りである)を少なくとも90質量%含んでいる。代表的なトリアルキル亜リン酸エステルとしては、これらに限定されるものではないが、トリブチル亜リン酸エステル、トリヘキシル亜リン酸エステル、トリオクチル亜リン酸エステル、トリデシル亜リン酸エステル、トリラウリル亜リン酸エステル、およびトリオレイル亜リン酸エステルを挙げることができる。特に好ましいトリアルキル亜リン酸エステルはトリラウリル亜リン酸エステルであり、例えば市販されているローディア・インコーポレーテッド・ホスホラス・アンド・パフォーマンス・デリバティブス(Rhodia Incorporated Phosphorus and Performance Derivatives)製のデュラホス(Duraphos)TLPや、ドーバー・ケミカル・コーポレーション(Dover Chemical Corporation)製のドーバーホス(Doverphos)53がある。そのようなトリアルキル亜リン酸エステルは、不純物としてジアルキル亜リン酸エステルを少量、場合によっては5質量%ぐらい多く含んでいてもよい。好ましいのは、炭素原子数約10〜20の炭化水素基を含む亜リン酸エステルの混合物である。これら混合物は通常、動物又は天然植物原料から誘導される。代表的な炭化水素基混合物は普通、ヤシ、牛脂、トール油および大豆油として知られている。
【0024】
任意に、三炭化水素亜リン酸エステルに加えて二炭化水素亜リン酸エステルを本発明の組成物に添加することができる。本発明で使用できる二炭化水素亜リン酸エステルとしては、(RO)2POH(ただし、Rは前に定義した通りである)が挙げられる。特に好ましい二炭化水素亜リン酸エステルはジアルキル亜リン酸エステルである。より好ましくはジアルキル亜リン酸エステルはジオレイル亜リン酸水素エステルであり、例えば市販されているローディア・インコーポレーテッド・ホスホラス・アンド・パフォーマンス・デリバティブス製のデュラホス(Duraphos)AP−240Lがある。そのようなジアルキル亜リン酸エステルは、不純物を少量、場合によっては6質量%ぐらい多く含んでいてもよい。好ましいのは、炭素原子数約10〜20の炭化水素基を含む亜リン酸エステルの混合物である。
【0025】
[ポリアルキレン・コオリゴマー]
任意に、ポリアルキレン・コオリゴマーを本発明において用いることができる。好ましいポリアルキレン・コオリゴマーは、エチレンと極性基を持たないオレフィンとのコオリゴマーである。特に好ましいポリアルキレンは、ミツイ・ケミカルズ(米国)・インコーポレーテッド(Mitsui Chemicals(U.S.A.) Incorporated、ニューヨーク州ニューヨーク)から販売されている合成油のルカント(Lucant、商標)シリーズ、またはエクソンモービル・ケミカル・カンパニー(ExxonMobil Chemical Company)から販売されている合成油のスペクトラシン・ウルトラ(SpectraSyn Ultra、商標)シリーズである。これらシリーズの代表的な油は、動粘度(ASTM D445、100℃)が10乃至2000cStである。好ましい油は粘度が100から2000cStの間にあるものである。
【0026】
[潤滑油組成物]
水和アルカリ金属ホウ酸塩と二炭化水素ポリサルファイドと非酸性リン成分は一般に、自動車の車軸や変速機および固定式の工業用ギヤ・ドライブにあるギヤおよび他の構成部分を充分に潤滑にできる基油に添加される。一般に本発明の潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の油と少量のギヤ油添加剤パッケージを含有している。
【0027】
本発明の一態様は、(1)三ホウ酸ナトリウム、(2)第三級ブチルポリサルファイド、(3)トリラウリル亜リン酸エステル、および(4)ジアルキルジチオリン酸エステルからなる組合せを、主要量の潤滑粘度の油に含有してなる。任意に、ポリアルキレン・コオリゴマーも潤滑油組成物に添加される。
【0028】
用いられる基油は、各種の潤滑粘度の油のいずれであってもよい。そのような組成物に使用される潤滑粘度の基油は、鉱油であっても合成油であってもよい。粘度が少なくとも40℃で2.5cStで、流動点が20℃未満、好ましくは0℃以下である基油が望ましい。基油は合成原料からでも天然原料からでも誘導することができる。本発明に基油として使用される鉱油としては例えば、通常潤滑油組成物に使用されるパラフィン系、ナフテン系及びその他の油を挙げることができる。合成油としては例えば、所望の粘度を有する炭化水素合成油と合成エステルの両方およびそれらの混合物を挙げることができる。炭化水素合成油としては例えば、エチレンの重合により合成された油、ポリアルファオレフィン又はPAO油、またはフィッシャー・トロプシュ法におけるような一酸化炭素ガスと水素ガスを用いる炭化水素合成法により合成された油(すなわち、フィッシャー・トロプシュ油)を挙げることができる。本発明において使用できるフィッシャー・トロプシュ油の例としては、これらに限定されるものではないが、米国特許出願公開第US2006/0289337号、第US2006/0276355号、第US2004/0079078号及び米国特許第6080301号、第6090989号、第6165949号の各明細書に記載されているものが挙げられ、それらも参照内容として本明細書の記載とする。本発明の方法に用いることができる別のフィッシャー・トロプシュ油としては、出願係属中の米国特許出願第11/613883号及び第11/400570号明細書に記載されているような油が挙げられ、それらも参照内容として本明細書の記載とする。使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用なものはC6〜C12アルファオレフィンの水素化液体オリゴマー、例えば1−デセン三量体である。同様に、適正な粘度のアルキルベンゼン、例えばジドデシルベンゼンも使用することができる。使用できる合成エステルとしては、モノカルボン酸およびポリカルボン酸とモノヒドロキシアルカノールおよびポリオールとのエステルが挙げられる。代表的な例としては、ジドデシルアジペート、ペンタエリトリトールテトラカプロエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、およびジラウリルセバケート等がある。モノ及びジカルボン酸とモノ及びジヒドロキシアルカノールとの混合物から合成された複合エステルも使用することができる。鉱油と合成油のブレンドも使用できる。
【0029】
従って、基油は、精製パラフィン型基油、精製ナフテン系基油、または潤滑粘度の合成炭化水素又は非炭化水素油であってよい。また、基油は鉱油と合成油の混合物であってもよい。
【0030】
さらに、潤滑油組成物でよく知られている他の添加剤を本発明の添加剤組成物に添加して、調合油を仕上げることができる。
【0031】
水和アルカリ金属ホウ酸塩成分は一般に、潤滑油組成物の0.1乃至20.0質量%を占め、好ましくは0.5乃至15.0質量%、より好ましくは1.0乃至9.0質量%を占める。二炭化水素ポリサルファイド成分は、潤滑油組成物の0.1乃至10.0質量%を占め、好ましくは0.2乃至4.0質量%、より好ましくは0.25乃至3.0質量%を占める。三炭化水素亜リン酸エステル成分は、潤滑油組成物の0.01乃至15.0質量%を占め、好ましくは0.05乃至5.0質量%、より好ましくは0.20乃至1.5質量%を占める。二炭化水素ジチオリン酸エステル成分は、潤滑油組成物の0.03乃至3.0質量%を占め、好ましくは0.07乃至1.5質量%、より好ましくは0.15乃至0.9質量%を占める。二炭化水素亜リン酸エステルを任意に潤滑油組成物に添加する場合には、一般に潤滑油組成物の0.01乃至10.0質量%を占め、好ましくは0.05乃至5.0質量%、より好ましくは0.1乃至1.0質量%を占める。
【0032】
任意に、ポリアルキレン・コオリゴマーを潤滑油組成物に用いてもよい。潤滑油組成物は、ポリアルキレン誘導体を約0.1乃至10質量%含有していることが好ましい。より好ましくは、潤滑油組成物はポリアルキレン誘導体を約1乃至7質量%含有している。最も好ましくは、潤滑油組成物はポリアルキレン誘導体を約2乃至5質量%含有している。
【0033】
上述した潤滑油組成物は、潤滑基油に添加剤パッケージを添加することにより製造することができる。一般に、潤滑油組成物は添加剤パッケージを1.0乃至50.0質量%含有し、好ましくは潤滑油組成物は添加剤パッケージを1乃至10.0質量%含有し、そしてより好ましくは潤滑油組成物は添加剤パッケージを3.0乃至8.0質量%含有している。
【0034】
[その他の添加剤]
本発明の潤滑油にはその他種々の添加剤が存在することができる。これら添加剤としては、酸化防止剤、粘度指数向上剤、分散剤、さび止め添加剤、消泡剤、腐食防止剤、別の耐摩耗性添加剤、抗乳化剤、摩擦緩和剤、流動点降下剤、およびその他公知の各種の添加剤を挙げることができる。好ましい分散剤としては、公知のコハク酸イミドおよびエトキシル化アルキルフェノール及びアルコール類が挙げられる。特に好ましい追加の添加剤は、油溶性のコハク酸イミド、油溶性のアルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、および二炭化水素亜リン酸水素エステルである。
【0035】
以下の添加剤成分は、本発明に好ましく用いることができる成分の幾つかの例である。本発明を説明するためにこれら添加剤の例を記すが、これらは本発明を限定しようとするものではない。
【0036】
1)金属清浄剤
硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート、ホウ酸化スルホネート、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート、アルカノール酸の金属塩、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩、およびそれらの化学的及び物理的混合物。
【0037】
2)酸化防止剤
酸化防止剤は、鉱油がサービス中に劣化する傾向を低減するものであり、金属表面のスラッジ及びワニス状堆積物のような酸化生成物および粘度の増加が劣化の証拠となる。本発明に使用できる酸化防止剤の例としては、これらに限定されるものではないが、フェノール型(フェノール系)酸化防止剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−5−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−1−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−10−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)を挙げることができる。ジフェニルアミン型酸化防止剤としては、これらに限定されるものではないが、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、およびアルキル化−アルファ−ナフチルアミンを挙げることができる。その他の型の酸化防止剤としては、金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、および15−メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)が挙げられる。
【0038】
3)耐摩耗性添加剤
その名称が意味するように、これら添加剤は可動金属部分の摩耗を低減する。そのような添加剤の例としては、これらに限定されるものでないが、リン酸エステル、カルバメート、エステル、およびモリブデン錯体を挙げることができる。
【0039】
4)さび止め添加剤(さび止め剤)
a)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
b)その他の化合物:ステアリン酸および他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0040】
5)抗乳化剤
アルキルフェノールとエチレンオキシドの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0041】
6)極圧耐摩耗剤(EP/AW剤)
ジアルキル−1−ジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキルおよびアリール型)、ジフェニルサルファイド、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛、中和リン酸エステル、ジチオリン酸エステル、および無硫黄リン酸エステル。
【0042】
7)摩擦緩和剤
脂肪アルコール、脂肪酸、アミン、ホウ酸化エステル、他のエステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、およびホスホン酸エステル。
【0043】
8)多機能添加剤
硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノリンジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン−モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物。
【0044】
9)粘度指数向上剤
ポリメタクリレート型重合体、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水和スチレン−イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散型粘度指数向上剤。
【0045】
10)流動点降下剤
ポリメチルメタクリレート。
【0046】
11)消泡剤
アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシリコーン重合体。
【0047】
12)金属不活性化剤
ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、メルカプトベンゾチアゾール、およびメルカプトベンズイミダゾール。
【0048】
13)分散剤
アルケニルコハク酸イミド、他の有機化合物で変性したアルケニルコハク酸イミド、エチレンカーボネートまたはホウ酸による後処理で変性したアルケニルコハク酸イミド、ペンタエリトリトール、フェネート−サリチレート及びそれらの後処理類似物、アルカリ金属又は混合アルカリ金属、アルカリ土類金属のホウ酸塩、水和アルカリ金属ホウ酸塩の分散物、アルカリ土類金属ホウ酸塩の分散物、およびポリアミド無灰分散剤等、またはそのような分散剤の混合物。
【実施例】
【0049】
以下の実施例は、本発明を説明するものであって、前出の特許請求の範囲に含まれる内容よりほかには決して本発明を限定しようとするものではない。
【0050】
[自動車用ギヤ油の実施例]
第1表に示す添加剤濃縮物パッケージは、任意の従来法によりブレンドすることができる。代表的な粘度(100℃で8.0〜18.0cSt)グレードの自動車用ギヤ潤滑剤を、第2表に示す少なくとも一種の基材油と任意の従来法によりブレンドして、所望の粘度範囲に達することができる。特定のポリサルファイドの混合物を本発明に従って選んで、ジ、トリ、テトラ及びそれ以上のポリサルファイドを所望の比率で達成する。市販のポリサルファイド(例えば、シェブロンフィリップス・ケミカル・カンパニー(ChevronPhillips Chemical Company)製のTBPS344、TBPS34、TBPS454及びジアルキルジサルファイド)の混合物を使用して、ポリサルファイドの比率(すなわち、相対濃度)を本発明に従って調整して、耐摩耗性能の改善を維持しながら同時に最適な摩擦性能を達成することができる。
【0051】
【表1】

【0052】
第 2 表:代表的なギヤ潤滑剤ブレンド
────────────────────
成分 質量%
────────────────────
鉱油又は合成基材油 80〜77
粘度指数向上剤 9
第1表のパッケージ 6〜9
摩擦緩和剤 4
流動点降下剤 1
────────────────────
全質量% 100.00
────────────────────
【0053】
潤滑油の摩擦特性は摩擦緩和剤の添加で改善することができるものの、改善の程度には限度がある。摩擦緩和剤を過剰に添加すると、酸化安定性の低下などの有害な副作用を招くことがある。第3表は、摩擦緩和剤を過剰に添加することによる酸化性能への影響を示す。CEC L−48−A−95標準法により、潤滑剤を明示した時間の長さだけ加熱したのち粘度のパーセント増加を測定することで、酸化性能を測定する。パーセント粘度増加は低いほど良い。
【0054】
第 3 表
──────────────────────────────────
実施例1を用いた潤滑油
限度 摩擦緩和剤 摩擦緩和剤
無し 0.5%
──────────────────────────────────
酸化試験、
CEC L−48−A−95
(160℃/192時間) 最大
粘度%増加(100℃) 50% 45 95
──────────────────────────────────
【0055】
手動及び自動変速機両方のギヤシフトにおいて、摩擦性能は非常に重要である。摩擦が小さ過ぎると、シフトに先立ってギヤの同期を遂行するために摩擦板に過剰な圧力を加えなければならない。摩擦が大き過ぎると、シフトを終えたのち摩擦板が滑らかに離れず、変速機の円滑な作動が得られない。
【0056】
ギヤシフトを終えたのち変速機の摩擦板を引き離すのに要するトルクの量を測定することにより、摩擦を測定することができる。つまり、この種のトルクは引離しトルクと呼ばれていて、ニュートン・メートルの力として測定される。
【0057】
具体的には、電気エンジンとギヤ減速により低い回転速度で駆動するギヤコーンを用いることによって、引離しトルクを測定する。制御圧縮空気を含んだ空気圧シリンダが、同期したカラーをある軸方向の力を持ったギヤコーンに押し付ける。その間にトルクを測定する。この方法により静及び動摩擦係数の測定が可能になる。加えた力を解放したのち、閉鎖させた同期枠(collar)を引き離すためのトルクを求めるが、これは引離しトルクとしても知られている。
【0058】
如何なる新しいギヤセットでも、通常は滑らかなシフトが起こる前に約25ギヤシフトサイクルの初期慣らし運転期間があり、平均引離しトルクを測定することができる。25サイクル(新規)後の理想的な引離しトルクは10Nmより小さい。100シフトサイクルにわたる所望の平均引離しトルク値がほぼ2.0Nmであることに加えて、慣らし運転期間後引離しトルクが比較的一定であることも重要である。これは、引離しトルク曲線の勾配を時間をかけて調べることにより評価することができる。曲線が平らで勾配がほぼゼロであることが望ましい。勾配が負であるなら、引離しトルクは次第に小さくなる。勾配が正であるなら、引離しトルクは大きくなる。いずれの状況も許容できない、というのは運転者にとって自動車変速機の感覚が変わるからである。
【0059】
本発明の実施例では、上述した摩擦要求基準を満たし、かつ最適な耐摩耗性能を生じる潤滑油組成物を、如何にして潤滑油添加剤パッケージの成分の適切なバランスにより達成できるかについて明らかにする。第4表は、第1表に示した潤滑油添加剤パッケージを用いて第2表に示したようにして製造した潤滑油について、慣らし後の平均引離しトルクを示す。
【0060】
【表2】

【0061】
油1は、実施例1の添加剤パッケージを用いて製造していて、アルカリ金属ホウ酸塩、テトラ、トリ及びジサルファイドを明示した比率で含むポリサルファイド、ジアルキルジチオリン酸エステル、およびトリアルキル亜リン酸エステルを含有している。この特定の成分組合せは、全ての摩擦要求条件を満たし、そして所望の最終的な摩擦特性を達成するのに特別な摩擦緩和剤は最少量しか必要としない。油2は、実施例2の添加剤パッケージを用いて製造していて、似通ったブレンドであるがトリアルキル亜リン酸エステルとジアルキルジチオリン酸エステル成分が欠けている。得られた油は引離しトルクが許容できないほど低い。油3は、実施例3の添加剤パッケージを用いて製造していて、本発明の重要な成分であるポリサルファイドが欠けている。引離しトルクが極めて低いだけではなく、トルクが変化し続けて負の勾配に至り、これも許容できない。油4は、実施例4の添加剤パッケージを用いて製造していて、油4のポリサルファイドが特許請求の範囲に明示したような所望の比率のテトラ、トリ及びジサルファイドから構成されていないこと以外は、油1の基本成分全てを有している。これは、許容できないほど高い引離しトルクを招く。
【0062】
上記の効果は、第1〜5図にもっとはっきりと見ることができ、図は油1〜5について各サイクルで測定した実際の引離しトルクを示している。望ましくない負の勾配に至る引離しトルクの変化が容易に分かる。第1図は、勾配が平らでかつ許容可能な引離しトルクを示すグラフである。第2図は、勾配が負で引離しトルクが許容範囲から徐々に遠ざかることを示すグラフである。第3図は、勾配は平らであるが引離しトルクが低過ぎることを示すグラフである。第4図は、引離しトルクが所望のトルクである2.0Nmに完全には達しない、望ましくない負の勾配を示すグラフである。第5図は、これも勾配が負である代表的な市販油を示すグラフである。
【0063】
変速機の滑らかなシフトには摩擦性能が重要であるが、同時に潤滑油はギヤを保護するために許容可能な耐摩耗性能も有していなければならない。本発明に記載した好ましい潤滑油は、耐摩耗性能の改善も示す。第5表に、このことを示す。FZG狭ギヤ段階試験A10/16、6R/120を使用して、ギヤに次第に大きな荷重(段階)を掛けたときの歯の外観の変化を測定して、耐摩耗性能を評価することができる。よって、荷重段階が高い結果ほど性能が良いことを反映している。第5表で、トリアルキル亜リン酸エステルと、テトラ、トリ及びジサルファイドの比率が最適なポリサルファイドとを用いた添加剤パッケージ1から製造した油1は、本発明の重要成分が欠けているその他の油よりも改善された耐摩耗性能を示している。
【0064】
第 5 表
──────────────────────────────────
油1 油2 油3 油4 市販油
──────────────────────────────────
FZG合格段階 10 9 9 8 9
──────────────────────────────────
【0065】
第1表に記載した添加剤濃縮物は、本発明の実施例では自動車用ギヤ油を製造するのに使用したが、工業用油及びグリースを製造するのにも同様に使用することができる。
【0066】
[工業用油の実施例]
第1表の実施例1−4に記載した潤滑油添加剤濃縮物を使用して、任意の従来法により第6表に示すように工業用ギヤ油をブレンドして、任意の所望のISO粘度範囲に達することができる。
【0067】
第 6 表:工業用ギヤ潤滑剤ブレンド
────────────────────
成分 質量%
────────────────────
鉱油又は合成基材油 97
第1表のパッケージ 2.75
抗乳化剤 0.25
────────────────────
【0068】
本明細書に記載した教示および裏付けとなる実施例に照らして、本発明については多数の変形が可能である。従って、前出の特許請求の範囲内で、本明細書に具体的に記載したり、例示したものとは異なって本発明を実施できることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1〜5図は、本発明の組成物および比較のための潤滑油組成物の引離しトルク対ギヤシフトサイクルのグラフであって、第1図は、勾配が平らでかつ許容可能な引離しトルクを示すグラフである。
【図2】第2図は、勾配が負で引離しトルクが許容範囲から徐々に遠ざかることを示すグラフである。
【図3】第3図は、勾配は平らであるが引離しトルクが低過ぎることを示すグラフである。
【図4】第4図は、引離しトルクが所望のトルクである2.0Nmに完全には達しない、望ましくない負の勾配を示すグラフである。
【図5】第5図は、これも勾配が負である代表的な市販油を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分の混合物が分散している潤滑粘度の油を含む潤滑油組成物:
(a)少なくとも一種の水和アルカリ金属ホウ酸塩成分、
(b)約64.5質量%未満の二炭化水素トリサルファイドと、約5.5質量%より多い二炭化水素ジサルファイドと、少なくとも約30.0質量%の二炭化水素テトラサルファイド又はそれ以上のポリサルファイドとを含む混合物からなる少なくとも一種の二炭化水素ポリサルファイド成分、
(c)三炭化水素亜リン酸エステル成分を含み、かつそのうちの少なくとも90質量%が式:(RO)3P、ただし、Rは炭素原子数4〜24の炭化水素基である、を有する少なくとも一種の非酸性リン成分、および
(d)少なくとも一種の二炭化水素ジチオリン酸エステル。
【請求項2】
該潤滑油組成物が二炭化水素亜リン酸水素エステルも含み、そしてそのうちの少なくとも90質量%が式:(RO)2POH、ただし、Rは炭素原子数4〜24の炭化水素基である、を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該潤滑油組成物が下記の成分を含む請求項1に記載の組成物:
(a)0.1乃至20.0質量%のアルカリ金属ホウ酸塩、
(b)0.1乃至10.0質量%の二炭化水素ポリサルファイド成分、
(c)0.01乃至15.0質量%の非酸性リン成分、および
(d)0.03乃至3.0質量%の二炭化水素ジチオリン酸エステル。
【請求項4】
該アルカリ金属ホウ酸塩が三ホウ酸カリウム又はナトリウムである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
該三炭化水素亜リン酸エステルがC10〜C20トリアルキル亜リン酸エステルの混合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
該二炭化水素ジチオリン酸エステルがジチオリン酸エステルのアミン塩である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
下記の成分の混合物を含むギヤ油添加剤パッケージ:
(a)水和アルカリ金属ホウ酸塩成分、
(b)約64.5質量%未満の二炭化水素トリサルファイドと、約5.5質量%より多い二炭化水素ジサルファイドと、少なくとも約30.0質量%の二炭化水素テトラサルファイド又はそれ以上のポリサルファイドとを含む混合物からなる二炭化水素ポリサルファイド成分、
(c)三炭化水素亜リン酸エステル成分を含み、かつそのうちの少なくとも90質量%が式:(RO)3P、ただし、Rは炭素原子数4〜24の炭化水素基である、を有する非酸性リン成分、および
(d)少なくとも一種の二炭化水素ジチオリン酸エステル。
【請求項8】
下記の成分の混合物を含むギヤ油添加剤パッケージ:
(a)水和アルカリ金属ホウ酸塩成分、
(b)70.0質量%未満の二炭化水素トリサルファイドと、5.5質量%より多い二炭化水素ジサルファイドと、少なくとも30.0質量%の二炭化水素テトラサルファイド又はそれ以上のポリサルファイドとを含む混合物からなる二炭化水素ポリサルファイド成分、
(c)三炭化水素亜リン酸エステル成分からなり、かつそのうちの少なくとも90質量%が式:(RO)3P、ただし、Rは炭素原子数4〜24の炭化水素基である、を有する非酸性リン成分、
(d)少なくとも一種の二炭化水素ジチオリン酸エステル、および
(e)二炭化水素亜リン酸エステル成分からなり、かつそのうちの少なくとも90質量%が式:(RO)2POH、ただし、Rは炭素原子数4〜24のアルキルである、を有するリン成分。
【請求項9】
主要量の潤滑油、および少量ではあるが潤滑油組成物の耐荷重及び摩擦特性を改善するのに有効な量の請求項7に記載のギヤ油添加剤パッケージを含む潤滑油組成物。
【請求項10】
主要量の潤滑油、および少量ではあるが潤滑油組成物の耐荷重及び摩擦特性を改善するのに有効な量の請求項8に記載のギヤ油添加剤パッケージを含む潤滑油組成物。
【請求項11】
組成物が、主要量の潤滑粘度の油、および約1.0乃至約10.0質量%の請求項7又は8に記載の該ギヤ油添加剤パッケージを含む潤滑油組成物。
【請求項12】
該ホウ酸塩が三ホウ酸カリウム又はナトリウムである請求項7または8に記載のギヤ油添加剤パッケージ。
【請求項13】
該二炭化水素ジチオリン酸エステルがジチオリン酸エステルのアミン塩である請求項7または8に記載のギヤ油添加剤パッケージ。
【請求項14】
主要量の潤滑粘度の油が、I種、II種、III種、IV種またはフィッシャー・トロプシュ基油からなる群より選ばれる請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
ポリアルケン・コオリゴマーを含む請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
約1〜20質量%のポリアルケン・コオリゴマーを含む請求項15に記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
主要量の潤滑粘度の油に下記の成分を混合することを含む潤滑油組成物の製造方法:
(a)少なくとも一種の水和アルカリ金属ホウ酸塩成分、
(b)約64.5質量%未満の二炭化水素トリサルファイドと、約5.5質量%より多い二炭化水素ジサルファイドと、少なくとも約30.0質量%の二炭化水素テトラサルファイド又はそれ以上のポリサルファイドとを含む混合物からなる少なくとも一種の二炭化水素ポリサルファイド成分、
(c)三炭化水素亜リン酸エステル成分からなり、かつそのうちの少なくとも90質量%が式:(RO)3P、ただし、Rは炭素原子数4〜24の炭化水素基である、を有する少なくとも一種の非酸性リン成分、および
(d)少なくとも一種の二炭化水素ジチオリン酸エステル。
【請求項18】
下記の成分を混合することを含むギヤ油添加剤パッケージの製造方法:
(a)少なくとも一種の水和アルカリ金属ホウ酸塩成分、
(b)約64.5質量%未満の二炭化水素トリサルファイドと、約5.5質量%より多い二炭化水素ジサルファイドと、少なくとも約30.0質量%の二炭化水素テトラサルファイド又はそれ以上のポリサルファイドとを含む混合物からなる少なくとも一種の二炭化水素ポリサルファイド成分、
(c)三炭化水素亜リン酸エステル成分からなり、かつそのうちの少なくとも90質量%が式:(RO)3P、ただし、Rは炭素原子数4〜24の炭化水素基である、を有する少なくとも一種の非酸性リン成分、および
(d)少なくとも一種の二炭化水素ジチオリン酸エステル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−274276(P2008−274276A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114307(P2008−114307)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(506297245)シェブロン・ユー.エス.エー.インク. (3)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】