説明

摩擦駆動搬送装置

【課題】中間に水平方向折曲関節部28を備えた摩擦駆動用ロードバー5とこのロードバー5を支持する複数のトロリー3aを有する搬送用走行体1を、前記ロードバー5を介して突き押し駆動できるようにした摩擦駆動搬送装置において、突き押し駆動を円滑且つ確実に行えるようにする。
【解決手段】搬送用走行体1のロードバー5の折曲関節部28又はその近傍位置に、垂直軸心(垂直軸20)の周りに自転可能なガイドローラー29a,29bが併設され、走行経路中の突き押し駆動区間には、前記ロードバー5の折曲関節部28が横方向に揺動するのを、前記ガイドローラー29a,29bを介して阻止するガイドレール32a,32bが配設された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として被搬送物を吊り下げて搬送するトロリーコンベヤとして実施されるもので、複数のトロリーとこれらトロリーを連結する摩擦駆動用ロードバーとから成る搬送用走行体を利用する摩擦駆動搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の摩擦駆動搬送装置は、自動車ボディーなどの大型長尺物を吊り下げ搬送する手段として利用されるもので、特許文献1に記載されるように、搬送用走行体とこれに吊り下げられた被搬送物支持部(ハンガー)とから成り、搬送用走行体は、走行方向に直列配置された例えば4つのトロリーと、これらトロリーで吊り下げられ且つ各トロリーの回転垂直軸心と同心の折曲関節部を介して連結された複数本のロードバー単体で構成されたロードバーを備え、走行経路側には、前記ロードバーの側面に圧接して回転駆動される摩擦駆動輪を備えた摩擦駆動手段が配設されたものである。而して、特許文献1に記載のものは、前記摩擦駆動手段で駆動される搬送用走行体により、当該搬送用走行体より下手側の複数台の各搬送用走行体を、各搬送用走行体のロードバーを利用して突き押し駆動する突き押し駆動方式と、ロードバーの前後両端に設けられた連結手段を介して連結された後ろ側搬送用走行体を前記摩擦駆動手段で駆動される前側搬送用走行体により牽引する牽引駆動方式とが併用できるように構成されているが、牽引駆動方式に比較して突き押し駆動方式は、ロードバーの前後両端の連結手段が不要になると共に、当該連結手段の係脱操作のための手段やその制御が不要で、設備コストを大幅に削減できる。
【特許文献1】特開2004−25904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1には解決策が講じられていないが、従来のロードバーをそのまま突き押し駆動に利用すると、仮にロードバーを構成する各ロードバー単体自体の長さ方向の座屈強度が十分確保されていたとしても、トロリー位置には、水平曲線経路部での走行を可能にするための垂直軸心周りの折曲回転を許す折曲関節部が併設され、しかも特にトロリーでロードバーを吊り下げるタイプのものでは、トロリーの上側に配置されたロードバーを各トロリーで支える台車方式のコンベヤと比較して、トロリー自体がガイドレールに対して垂直姿勢を確実に保持できるように係合するものではなく、各トロリーは、左右横方向には比較的大きく揺動できる程度の遊びをガイドレールとの間に有するものであるから、突き押し駆動によりロードバーに長さ方向の圧縮外力が作用したときに、トロリーの揺動を伴って当該ロードバーが前記折曲関節部の位置で水平横方向に屈曲する可能性が考えられ、円滑且つ確実な突き押し駆動が期待できない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る摩擦駆動搬送装置を提供することを目的とするものであって、請求項1に記載の摩擦駆動搬送装置は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、搬送用走行体1とこれに支持された被搬送物支持部(ハンガー6)とから成り、搬送用走行体1は、走行方向に直列配置された少なくとも3つのトロリー3a〜4bと、これらトロリー3a〜4bで支持され且つ水平方向の折曲を許す折曲関節部28を介して連結された複数本のロードバー単体8a〜9bで構成されたロードバー5を備え、走行経路側には、前記ロードバー5の側面5aに圧接して回転駆動される摩擦駆動輪14,40を備えた摩擦駆動手段13,36が配設され、この摩擦駆動手段13,36で推進される搬送用走行体1が、各搬送用走行体1のロードバー5を介して直前の搬送用走行体1を突き押し駆動するように構成された摩擦駆動搬送装置であって、前記ロードバー5の折曲関節部28又はその近傍位置には、垂直軸心(垂直軸20,24)の周りに自転可能なガイドローラー29a,29bが併設され、走行経路中の突き押し駆動区間には、前記ロードバー5の折曲関節部28が横方向に揺動するのを、前記ガイドローラー29a,29bを介して阻止するガイドレール32a,32bが配設された構成となっている。
【0005】
上記構成の本発明を実施するについて、具体的には請求項2に記載のように、前記ガイドローラー29a,29bは、折曲関節部28の回転垂直軸心(垂直軸20,24)の周りに自転可能に軸支するのが望ましいし、請求項3に記載のように、前記ガイドローラー29a,29bは、ロードバー5を挟むように上下一対配設することができる。
【0006】
又、上記請求項2や3に記載の構成を採用する場合、具体的には請求項4に記載のように、前記トロリーとして、被搬送物支持部を支持する前後一対のロードトロリー3a,3bと前後両端フリートロリー4a,4bを設け、前記ロードバー5は、4つのトロリー3a〜4b間を連結する3本の中間ロードバー単体8a〜8cと、前後両端フリートロリー4a,4bから前後に突出する前後両端ロードバー単体9a,9bから構成し、このロードバー5の前記折曲関節部28は、4つの各トロリー3a〜4bから突出する垂直軸20,24の周りに折曲可能に構成し、前記ガイドローラー29a,29bは、ロードバー5を挟む上下両側で前記垂直軸20,24に自転可能に支承させ、各前後両端ロードバー単体9a,9bは、前後両端フリートロリー4a,4bから突出する前記垂直軸24を介してこれら前後両端フリートロリー4a,4bに固定させることができる。
【0007】
更に、請求項5に記載のように、走行経路中の突き押し駆動区間で直線経路部には、前記ガイドレール32a,32bは、前記ガイドローラー29a,29bを左右両側から挟むように左右一対並設することができるし、請求項6に記載のように、走行経路中の突き押し駆動区間で水平曲線経路部35には、その経路部の曲がりの外側にのみ前記ガイドレール32aを配設することができる。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の本発明に係る摩擦駆動搬送装置によれば、後ろ側の搬送用走行体のロードバーの前端で突き押しされる搬送用走行体のロードバーが、トロリーの左右横方向の揺動を伴って折曲関節部の位置で左右横方向に屈曲するのを、当該折曲関節部又はその近傍位置に設けられたガイドローラーと走行経路側のガイドレールとの当接により確実に阻止させることができ、摩擦駆動用のロードバーを利用しての突き押し駆動を円滑且つ確実に行わせることができる。換言すれば、本発明の構成の採用により、従来のロードバー牽引タイプの摩擦駆動搬送装置と比較して大幅なコストダウンが可能な、摩擦駆動用のロードバーを利用する突き押し駆動方式の摩擦駆動搬送装置の実用化が可能となるに至ったのである。
【0009】
尚、請求項2に記載の構成によれば、折曲関節部と離れた位置でロードバーにガイドローラーを軸支する場合と比較して、折曲関節部を構成する垂直支軸を利用して前記ガイドローラーを軸支することもでき、部品点数を減らして安価に実施することができると共に、ロードバーが折曲関節部の位置で左右横方向に屈曲するのを効果的に防止することができる。又、請求項3に記載の構成によれば、トロリーを垂直姿勢に保持して、ロードバーが折曲関節部の位置で左右横方向に屈曲するのを更に効果的に防止することができる。
【0010】
又、請求項4に記載の構成によれば、請求項2や3に記載の構成を採用した時の効果を同時に得ることができると共に、前後両端ロードバー単体の前後両端フリートロリーからの突出長さを十分短くすることにより、比較的曲率半径の小さな水平曲線経路部においても各搬送用走行体のロードバーを介して確実に突き押し駆動することができる。
【0011】
更に、請求項5に記載の構成によれば、走行経路中の突き押し駆動区間での直線経路部において、各搬送用走行体のロードバーを利用した突き押し駆動を円滑且つ確実に行わせることができ、請求項6に記載の構成によれば、走行経路中の突き押し駆動区間での水平曲線経路部において、各搬送用走行体のロードバーを利用した突き押し駆動を円滑且つ確実に行わせることができ、しかもロードバー側のガイドローラーに当接するガイドレールは、水平曲線経路部の曲がりの外側にのみ配設するので、設備コストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の具体的実施例を添付図に基づいて説明すると、図1〜図3において、1は搬送用走行体であって、床上所定高さに水平に架設されたガイドレール2に走行可能に係合する4つのトロリー、即ち、中間の前後一対のロードトロリー3a,3bと前後両端のフリートロリー4a,4b、これら4つのトロリー3a〜4bに吊り下げられたロードバー5、及び被搬送物支持具としてのハンガー6から構成されている。ロードバー5は、4つの各トロリー3a〜4b間を連結する3本の中間ロードバー単体8a〜8cと、前後両端のフリートロリー4a,4bに結合されてこれら前後両端のフリートロリー4a,4bから前後に少し突出する短い前後両端ロードバー単体9a,9bから構成されている。
【0013】
ガイドレール2で構成されるハンガーの走行経路には、その長さ方向適当間隔おきの位置で床面上に門形フレーム10が据え付けられ、この門形フレーム10の上端レール吊り下げフレーム部11の中央下側に前記ガイドレール2が固定されて吊り下げられている。門形フレーム10として、水平のレール吊り下げフレーム部11の両端を支持する左右一対の支柱フレーム部12a,12bが下広がりに傾斜する台形状のものを例示しているが、左右一対の支柱フレーム部12a,12bが平行で垂直な倒立コ形のものであっても良いし、全体が曲線状のアーチ形のものであっても良い。又、各門形フレーム10は、ガイドレール2以外の連結フレームで互いに連結することができるし、当該連結フレームには、必要に応じて保守点検用の作業者搭乗可能な架台を付設することができる。
【0014】
ガイドレール2には、適当間隔おきに摩擦駆動手段13が併設される。この摩擦駆動手段13は従来周知のもので、ロードバー5の左右両垂直側面5a,5b(図6参照)の内、一方の側面5aに圧接する摩擦駆動輪14と、反対側の側面5bに当接するバックアップローラー15、及び摩擦駆動輪14を回転駆動するモーター16から成るもので、バックアップローラー15は、ガイドレール2に固定されたフレーム17に定位置で自転のみ可能に垂直支軸で軸支されているが、垂直な出力軸に摩擦駆動輪14が取り付けられたモーター16は、ロードバー5の側面5aに対して水平遠近方向移動自在に前記フレーム17に支持されると共に、スプリングによりロードバー5の側面5aに圧接する方向に付勢されている。
【0015】
以下、詳細に説明すると、前後一対のロードトロリー3a,3bは、図4、図5、及び図7に示すように、H形鋼利用のガイドレール2の中央垂直板部2aの下側辺から左右両側に張り出す左右一対の下側水平レール部2b上を転動する左右一対の主ホイール18と、この主ホイール18の前後両側で中央垂直板部2aを挟む左右一対前後2組の垂直軸ローラー19とを備えたもので、ガイドレール2の中央真下位置において、垂直下方に突出する垂直軸20が止めピン21により固着突設されている。前後両端のフリートロリー4a,4bは、図4、図5、及び図8に示すように、ガイドレール2の前記左右一対の下側水平レール部2bを上下両側から挟む上下一対の水平軸ローラー22a,22bが前後左右4箇所に設けられると共に、ガイドレール2の前記中央垂直板部2aを挟む左右一対前後2組の垂直軸ローラー23を備えたもので、ロードトロリー3a,3bと同様に、ガイドレール2の中央真下位置において、垂直下方に突出する垂直軸24が止めピン25により固着突設されている。
【0016】
ロードバー5の3本の中間ロードバー単体8a〜8cの内、ロードトロリー3a,3bと前後両端のフリートロリー4a,4bとを連結する中間ロードバー単体8b,8cには、その両端近傍位置に、水平支軸26の周りに上下垂直方向に折曲自在な上下方向折曲関節部27が設けられている。そして、各中間ロードバー単体8a〜8cと前後両端ロードバー単体9a,9bのロードバー長さ方向に隣接する端部どうしは、各トロリー3a〜4bから垂直下向きに突出している垂直軸20,24の周りに左右水平方向に折曲自在な水平方向折曲関節部28を介して互いに連結し、短い前後両端ロードバー単体9a,9bのみ、前後両端のフリートロリー4a,4bから垂直下向きに突出している垂直軸24にキー止めされて、当該前後両端ロードバー単体9a,9bと一体化されている。
【0017】
各トロリー3a〜4bから垂直下向きに突出している垂直軸20,24は、ロードバー5の水平方向折曲関節部28を構成するだけではなく、当該ロードバー5を上下から挟む上下一対の振れ止め用ガイドローラー29a,29bを、各垂直軸20,24の周りに自転可能に支持している。又、前後一対のロードトロリー3a,3bから垂直下向きに突出している垂直軸20は、図7にも示すように、ロードバー5の下側に位置する前記振れ止め用ガイドローラー29bよりも長く下方に延出し、この垂直軸20の下端延出部20aに、当該垂直軸20の周りに回転可能にハンガー吊り下げ用ブラケット30が支持され、これら前後一対のハンガー吊り下げ用ブラケット30に前記ハンガー6の上部フレーム7が、ハンガーの走行方向と平行な前後方向水平支軸31を介して左右上下方向に揺動自在に吊り下げられている。
【0018】
以上のように構成された搬送用走行体1によれば、各トロリー3a〜4bは、主ホイール18及び上側水平軸ローラー22aによってガイドレール2の下側水平レール部2bに吊り下げられると共に、左右一対前後2組の垂直軸ローラー19,23によってガイドレール2の中央垂直板部2aと平行な向きに規制されており、更に前後一対のロードトロリー3a,3bは、吊り下げているハンガー6を含む荷重によりガイドレールの下側水平レール部2bに対する浮き上がりが防止され、前後両端のフリートロリー4a,4bは、下側水平軸ローラー22bによりガイドレールの下側水平レール部2bに対する浮き上がりが防止されている。勿論、前後一対のロードトロリー3a,3bにも、ガイドレールの下側水平レール部2bの下側に当接してこれらトロリー3a,3bの浮き上がりを防止する水平軸ローラーを設けても良い。
【0019】
又、各トロリー3a〜4bに吊り下げられて当該トロリー3a〜4bを連結するロードバー5には、上下方向折曲関節部27が上記のような位置に配設されているので、この搬送用走行体1の走行経路、即ち、ガイドレール2に上り下りの勾配経路部が存在している場合、各トロリー3a〜4bは、ロードバー5が備える上下方向折曲関節部27での水平支軸26の周りの上下方向の折曲運動を伴って、当該ガイドレール2の上り下りの勾配経路部に沿って走行することができる。又、ロードバー5には、水平方向折曲関節部28が上記のような位置に配設されているので、この搬送用走行体1の走行経路、即ち、ガイドレール2に水平曲線経路部が存在している場合、各トロリー3a〜4bは、ロードバー5が備える水平方向折曲関節部28での垂直軸20の周りの水平方向の折曲運動を伴って、当該ガイドレール2の水平曲線経路部に沿って走行することができる。
【0020】
尚、搬送用走行体1が水平曲線経路部に沿って走行するとき、そのロードバー5の前後両端ロードバー単体9a,9bは、上記のように前後両端のフリートロリー4a,4bと一体化されているので、水平曲線経路部の中心線に対し当該フリートロリー4a,4bの垂直軸24の軸心を通る接線方向に向きが規制され、しかもこれら前後両端ロードバー単体9a,9bは、フリートロリー4a,4bからの前後方向の突出長さが非常に短いので、これら前後両端ロードバー単体9a,9bの先端面(ロードバー5の前後両端面)は、水平曲線経路部の中心線から外側に外れてしまうことはない。換言すれば、このような状態になるように、前後両端ロードバー単体9a,9bは、フリートロリー4a,4bからの前後方向の突出長さ、先端面の幅、水平曲線経路部の曲率半径が設定されている。
【0021】
而して、各搬送用走行体1は、摩擦駆動手段13の位置を通過するとき、当該摩擦駆動手段13の摩擦駆動輪14がロードバー5の側面5aに圧接するので、このとき当該摩擦駆動輪14をモーター16により所定の方向に所定速度で回転駆動すれば、当該搬送用走行体1が摩擦駆動輪14によって所定の方向に所定速度で推進される。従って、ロードバー5の全長と同じか又は少し短い間隔で摩擦駆動手段13を搬送用走行体1の走行経路に配設すれば、各搬送用走行体1は停止することなく所定速度で走行することができる。又、本発明では、搬送用走行体1の走行経路中に突き押し駆動区間が設定される。この突き押し駆動区間には、その入り口側と出口側とに前記摩擦駆動手段13が配設されるが、従来周知のように、出口側の摩擦駆動手段13は、入り口側の摩擦駆動手段13における送り速度(摩擦駆動輪14の周速度)よりも若干送り速度が遅くなるように設定されて、出口側の摩擦駆動手段13により突き押し駆動区間から送り出される搬送用走行体1に制動力が作用するように設定される。即ち、出口側の摩擦駆動手段13は制動機能付きのものとなる。
【0022】
上記構成の突き押し駆動区間によれば、入り口側の摩擦駆動手段13により突き押し駆動区間内に送り込まれた搬送用走行体1は、入り口側の摩擦駆動手段13の摩擦駆動輪14からロードバー5の後端が外れた位置で停止するが、後続の搬送用走行体1が入り口側の摩擦駆動手段13で突き押し駆動区間内に送り込まれることにより、当該後続の搬送用走行体1のロードバー5の前端(前端ロードバー単体9aの前端)が、停止している前記搬送用走行体1のロードバー5の後端(後端ロードバー単体9bの後端)を突き押しすることになる。以下、この作用の繰り返しにより、突き押し駆動区間内には所要台数の搬送用走行体1がそれぞれのロードバー5の前後両端が互いに当接した数珠つなぎ状態になり、入り口側の摩擦駆動手段13で突き押し駆動区間内に送り込まれる最後尾の搬送用走行体1により、突き押し駆動区間内の数珠つなぎ状態にある全ての搬送用走行体1が突き押し駆動されることになる。
【0023】
本発明によれば、上記の突き押し駆動区間内には、図4、及び図6〜図8に示すように、ロードバー5の各水平方向折曲関節部28において、ロードバー5を上下から挟むように併設されている上下一対の振れ止め用ガイドローラー29a,29bを左右両側から挟む左右一対の振れ止め用ガイドレール32a,32bを配設し、ロードバー5の各水平方向折曲関節部28の回転軸心となる垂直軸20,24を、突き押し駆動区間における走行経路の中心線上で垂直姿勢に規制保持させ、突き押し駆動によってロードバー5に作用する長さ方向(走行方向)の圧縮力により、当該ロードバー5が水平方向折曲関節部28の位置で、トロリー3a〜4bの左右横方向の揺動を伴って左右横方向に屈曲するのを防止している。この左右一対の振れ止め用ガイドレール32a,32bは、図4〜図8に示すように、ガイドレール2の長さ方向適当間隔おきの位置で当該ガイドレール2に跨がって固定される馬蹄形の支持板33に、当該各支持板33に対応して左右一対の振れ止め用ガイドレール32a,32bの外側に固着された取付け部材34を取り付けることにより、ガイドレール2の下側所定位置に配設することができる。
【0024】
尚、図9に示すように、上記の突き押し駆動区間内に水平曲線経路部35が設けられる場合がある。この突き押し駆動区間内の水平曲線経路部35にも、左右一対の振れ止め用ガイドレール32a,32bを配設することができるが、実際には、この突き押し駆動区間内の水平曲線経路部35において突き押し駆動される各搬送用走行体1のロードバー5の各水平方向折曲関節部28には、当該水平曲線経路部35の円弧中心のある側とは反対の外側向きの屈折力が作用するだけであるから、図示のように、水平曲線経路部35の外側にのみ振れ止め用ガイドレール32aを配設すれば良い。
【0025】
又、図6に示すように、ロードバー5の前後両端面、即ち、前後両端ロードバー単体9a,9bの先端面は、平面視において適当な曲率で突出する円弧形に形成することにより、突き押し駆動区間内の直線経路部での突き押し駆動に際して、前後両端ロードバー単体9a,9bの先端面の幅方向の中心位置で突き押し駆動させることができ、図9に示す突き押し駆動区間内の水平曲線経路部35での突き押し駆動に際しては、前後両端ロードバー単体9a,9bの先端面の幅方向の端より中心位置に寄った位置で突き押し駆動させることができ、前後両端ロードバー単体9a,9bに水平方向の無理な曲げ力を作用させないで突き押し駆動を円滑良好に行わせることができる。
【0026】
上記の突き押し駆動区間の特に入り口側に設けられる摩擦駆動手段には、当該突き押し駆動区間の全長、即ち、突き押し駆動される搬送用走行体1の台数に応じて、大きな摩擦駆動力が要求される。従って、図1〜図3に示される従来周知の摩擦駆動手段13ではなく、大きな摩擦駆動力で搬送用走行体1を摩擦駆動できる摩擦駆動手段、例えば図10〜図12に示す摩擦駆動手段36を利用することが望ましい。
【0027】
上記摩擦駆動手段36は、ガイドレール2の左右両側に配置された左右一対の駆動ユニット37A,37Bと、両駆動ユニット37A,37Bに対して共通の付勢手段38から構成されている。両駆動ユニット37A,37Bは、ガイドレール2の上に取り付けられた共通フレーム39に左右対称に支持されたもので、それぞれロードバー5の左右両側面5a,5bに圧接する摩擦駆動輪40と、これら各摩擦駆動輪40を垂直下向きに突出する出力軸に取り付けられたモーター41とを備えている。各駆動ユニット37A,37Bのモーター41は、前記共通フレーム39に、ガイドレール2の左右両側でそれぞれ垂直支軸42により左右水平方向に揺動自在に軸支された揺動体43に支持されている。この揺動体43は、前記垂直支軸42により左右水平方向に揺動自在に軸支された上側揺動板44と、この上側揺動板44の下側に前後一対の支柱材45a,45bを介して支持された下側揺動板46とから構成されたもので、前記モーター41は下側揺動板46の上側に支持され、当該下側揺動板46の下側に前記摩擦駆動輪40が配置されている。前記揺動体43の上側揺動板44の遊端側は、前記共通フレーム39に並列軸支された各2つの水平軸ローラー47に支持され、揺動体43、延いては摩擦駆動輪40を備えたモーター41が垂直姿勢を保って円滑に水平揺動できるようになっている。共通の付勢手段38は、1本の流体圧シリンダーユニット48から成り、当該流体圧シリンダーユニット48のシリンダー本体48aは、一方の駆動ユニット37Aの揺動体43の遊端側に上向きに突設された支持ブラケット49に垂直支軸50により連結され、当該流体圧シリンダーユニット48のピストンロッド48bは、他方の駆動ユニット37Bの揺動体43の遊端側に上向きに突設された支持ブラケット51に垂直支軸52により連結されている。
【0028】
従って、流体圧シリンダーユニット48のシリンダー本体48aにピストンロッド48bを収縮させる方向に流体圧を供給することにより、両駆動ユニット37A,37Bのモーター41及び摩擦駆動輪40を、揺動体43を介して垂直支軸42の周りで互いに接近する方向に水平に揺動させ、両駆動ユニット37A,37Bの摩擦駆動輪40を搬送用走行体1のローラーレールの左右両側面5a,5bに同時に圧接させることができるので、両駆動ユニット37A,37Bのモーター41を稼働させて各摩擦駆動輪40を回転駆動させることにより、ロードバー5を介して搬送用走行体1を強力に推進させることができる。更に大きな摩擦駆動力を要するときは、上記構成の摩擦駆動手段36を2台又は複数台、走行経路方向に直列配置することができる。この場合、共通フレーム39を走行経路方向に延長させて駆動ユニット37A,37Bを1つの共通フレーム39に複数組、走行経路方向に直列状に配設することも可能である。
【0029】
尚、図2及び図3に示すように、この実施形態における搬送用走行体1は、ハンガー6をロードトロリー3a,3bで吊り下げるタイプのものであるから、当該ハンガー6の上部フレーム7にハンガー揺れ止め用ガイドローラーユニット53を設けると共に、ハンガー6で支持される被搬送物に対する作業区間など、搬送される被搬送物(ハンガー6)が左右横方向に揺れるのを防止する区間には、前記振れ止め用ガイドローラーユニット53に係合するハンガー揺れ止め用ガイドレール54を、ガイドレール2を支持する門形フレーム10を利用して架設することができる。
【0030】
尚、上記実施形態では、4つのトロリー3a〜4bを使用し、中間の前後一対のロードトロリー3a,3bで被搬送物支持具であるハンガー6を吊り下げるように構成したが、搬送用走行体6を吊り下げる前後一対のロードトロリー3a,3bの何れか一方にのみフリートロリーをロードバーにより連結し、3つのトロリーで搬送用走行体を構成することもできる。又、被搬送物の搬送方向の長さが短い場合、被搬送物支持具(ハンガー6)は1つのロードトロリーに吊り下げ、この1つのロードトロリーにロードバーを介して連結される少なくとも1つのフリートロリーを設けて、少なくとも2つのトロリーで搬送用走行体を構成することも可能である。何れの場合も、ハンガー6で支持する被搬送物が、搬送用走行体1の突き押し駆動の際に互いに衝突しないように、フリートロリーとロードトロリーとの間のロードバーの長さを設定すれば良い。勿論、この3つ又は2つのトロリーで搬送用走行体1を構成する場合も、ロードバーの前後両端には、前後両端に位置するトロリーから前後に少し突出する短い前後両端ロードバー単体9a,9bを、上記実施形態の要領で連結することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】走行経路中の搬送用走行体と摩擦駆動手段を示す側面図である。
【図2】同上の平面図である。
【図3】同上の背面図である。
【図4】A−B線とA’−B’線とでつながる搬送用走行体を示す側面図である。
【図5】A−B線とA’−B’線とでつながる搬送用走行体を示す平面図である。
【図6】A−B線とA’−B’線とでつながる搬送用走行体のロードバーを示す平面図である。
【図7】走行経路中の搬送用走行体のロードトロリー位置での縦断正面図である。
【図8】走行経路中の搬送用走行体のフリートロリー位置での縦断正面図である。
【図9】水平曲線経路部で突き押し駆動状態にある搬送用走行体のロードバーの状態を示す平面図である。
【図10】摩擦駆動手段の一例を示す平面図である。
【図11】同上摩擦駆動手段を示す縦断正面図である。
【図12】同上摩擦駆動手段を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 搬送用走行体
2 ガイドレール
3a,3b ロードトロリー
4a,4b フリートロリー
5 ロードバー
6 ハンガー(被搬送物支持具)
8a〜8c 中間ロードバー単体
9a,9b 前後両端ロードバー単体
10 門形フレーム
13,36 摩擦駆動手段
14,40 摩擦駆動輪
15 バックアップローラー
16,41 モーター
18 ロードトロリーの主ホイール
19 ロードトロリーの垂直軸ローラー
20 ロードトロリーの垂直軸
22a,22b フリートロリーの水平軸ローラー
23 フリートロリーの垂直軸ローラー
24 フリートロリーの垂直軸
27 上下方向折曲関節部
28 水平方向折曲関節部
29a,29b 振れ止め用ガイドローラー
30 ハンガー吊り下げ用ブラケット
32a,32b 振れ止め用ガイドレール
35 水平曲線経路部
37A,37B 駆動ユニット
38 付勢手段
43 揺動体
48 流体圧シリンダーユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用走行体とこれに支持された被搬送物支持部とから成り、搬送用走行体は、走行方向に直列配置された少なくとも3つのトロリーと、これらトロリーで支持され且つ水平方向の折曲を許す折曲関節部を介して連結された複数本のロードバー単体で構成されたロードバーを備え、走行経路側には、前記ロードバーの側面に圧接して回転駆動される摩擦駆動輪を備えた摩擦駆動手段が配設され、この摩擦駆動手段で推進される搬送用走行体が、各搬送用走行体のロードバーを介して直前の搬送用走行体を突き押し駆動するように構成された摩擦駆動搬送装置であって、前記ロードバーの折曲関節部又はその近傍位置には、垂直軸心の周りに自転可能なガイドローラーが併設され、走行経路中の突き押し駆動区間には、前記ロードバーの折曲関節部が横方向に揺動するのを、前記ガイドローラーを介して阻止するガイドレールが配設されている、摩擦駆動搬送装置。
【請求項2】
前記ガイドローラーは、折曲関節部の回転垂直軸心の周りに自転可能に軸支されている、請求項1に記載の摩擦駆動搬送装置。
【請求項3】
前記ガイドローラーは、ロードバーを挟むように上下一対配設されている、請求項1又は2に記載の摩擦駆動搬送装置。
【請求項4】
前記トロリーとして、被搬送物支持部を支持する前後一対のロードトロリーと前後両端フリートロリーが設けられ、前記ロードバーは、4つのトロリー間を連結する3本の中間ロードバー単体と、前後両端フリートロリーから前後に突出する前後両端ロードバー単体から構成され、このロードバーの前記折曲関節部は、4つの各トロリーから突出する垂直軸の周りに折曲可能に構成され、前記ガイドローラーは、ロードバーを挟む上下両側で前記垂直軸に自転可能に支承され、各前後両端ロードバー単体は、前後両端フリートロリーから突出する前記垂直軸を介してこれら前後両端フリートロリーに固定されている、請求項2又は3に記載の摩擦駆動搬送装置。
【請求項5】
走行経路中の突き押し駆動区間で直線経路部には、前記ガイドレールは、前記ガイドローラーを左右両側から挟むように左右一対並設されている、請求項1〜4の何れか1項に記載の摩擦駆動搬送装置。
【請求項6】
走行経路中の突き押し駆動区間で水平曲線経路部には、その経路部の曲がりの外側にのみ前記ガイドレールが配設されている、請求項1〜5の何れか1項に記載の摩擦駆動搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−184407(P2009−184407A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23748(P2008−23748)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】