説明

摩耗粉除去機能付きのスリップリング

【課題】摩耗粉を除去して電極リング間の絶縁抵抗の劣化を防止し、摩耗粉の発生量を人がモニタ可能なスリップリングを提供する。
【解決手段】外筒体と、この外筒体内に設けられ、それぞれ絶縁体14を介して外筒体の軸方向に積層配置された複数段の電極リング12、13から成り、この軸周りに回転駆動される電極リング部4と、この電極リング部4に圧接保持された導電性のブラシ5と、電極リング部4の胴部外周部の近傍に吸い込み口6,9を有し、このブラシ5と電極リング部4との摺動によって発生する摩耗粉をこれら吸い込み口6,9より吸引して除去する摩耗粉吸引除去手段と、を備え、この摩耗粉吸引除去手段は、電極リング部4が回転を開始したときに吸引動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリップリング内部で発生する金属摩耗粉を除去するために付加された摩耗粉除去機能付きのスリップリングに関する。
【背景技術】
【0002】
回転体を有し、この回転体と固定部側との間で電力の中継や信号の伝達を行う回転体駆動装置にはスリップリングが用いられている。例えばアンテナ指向装置は、ベース部と、このベース部に対して縦軸周り回転自在に設けられたアンテナ台と、このアンテナ台に俯仰自在に設けられたアンテナ部と、このアンテナ台を縦軸周りに回転駆動する駆動部とを有し、これらのベース部とアンテナ台との間にスリップリングが用いられている。
【0003】
図4はスリップリングを含むアンテナ指向装置の一部を示す図である。スリップリング50の上面は回転体としてのアンテナ台51の底面に固定されており、アンテナ台51が回転駆動されることにより、スリップリング50は縦軸周りに回転する。スリップリング50は、プラス電源ライン52及びマイナス電源ライン53を介して、ブレーカなどを有する電源入力側回路54に接続されており、この電源入力側回路54へは電源55から電力が供給されている。スリップリング50は、プラス電源ライン56及びマイナス電源ライン57を介して電源出力側回路58にも接続されており、この電源出力側回路58には負荷59が接続されている。これにより、電源55の電力はスリップリング50を介して中継されて負荷59にて消費される。
【0004】
図5はスリップリング50の内部構造の一例を示す図であり、同図にはスリップリング外筒が取り去られた状態のスリップリング50の正面図が示されている。1枚のプラス電極リング60と1枚のマイナス電極リング61との間に絶縁用のインシュレータ62を設け、複数のプラス電極リング60及び複数のマイナス電極リング61が軸方向に積層配置されている。これらのプラス電極リング60、インシュレータ62及びマイナス電極リング61によって多層円筒形状の電源段リング63が構成されている。
【0005】
この電源段リング63の外周面の外方には、それぞれこの電源段リング63を挟んでその直径方向に対向配置され、いずれもが複数の端子部64を有する1対のブラシホルダ65、66が設けられている。ブラシホルダ65、66はいずれも、導電性の複数のブラシ67を、これらのブラシ67が電源段リング63に圧接されるようにして保持している。
【0006】
図4及び図5に示すように、アンテナ台51の回転とともに電源段リング63も回転し、プラス電極リング60胴部外周面及びブラシ67の接触と、マイナス電極リング61胴部外周面及びブラシ67の接触とによって金属摩耗粉が発生する。各ブラシ67と、プラス電極リング60及びマイナス電極リング61とが溶着し、各リング胴部の外周表面が荒れることによってスパークが誘起されるといった問題が発生しやすい。
【0007】
金属摩耗粉が発生するメカニズムについて述べる。プラス電極リング60及びマイナス電極リング61はいずれも金属基体の表面に金属メッキが施されて成る。各ブラシ67は、金属とカーボンとが混合された成分を含有しこの成分が固められて形成されている。電源段リング63の慣らし回転が十分に行われた場合、各ブラシ67のリング接触部分に固体潤滑層が形成されるが、この慣らし回転が十分でない場合、この固体潤滑層は形成されない。この場合、リング胴部外周面の表面が荒れてしまい、この外周面にブラシ67の成分が金属摩耗粉68となって付着する。
【0008】
スパークが発生するメカニズムについて述べる。電源段リング63のリング胴部の外周面のいずれかの位置に金属摩耗粉68が付着して塊となってしまう。この塊に接触したいずれかのブラシ67がバウンドする。バウンドによりこのブラシ67及び電源段リング63の間に電界が誘起されて、これらのブラシ67及び電源段リング63間にスパークが発生する。
【0009】
スパークが発生すると、プラス電極リング60に付着した金属摩耗粉68のカーボン成分が高熱により燃焼し煤69になる。この煤69は、インシュレータ62及びマイナス電極リング61間の隙間に浸透してマイナス電極リング61に到達する。マイナス電極リング61に金属摩耗粉68が付着した場合も、煤69がインシュレータ62及びプラス電極リング60間の隙間を通ってプラス電極リング60に到達する。このためプラス電極リング60とマイナス電極リング61との間に短絡が生じ、または、煤69の到達によって隣接リング間で絶縁抵抗の劣化を招く。これはスリップリング50の寿命を短くする要因となる。スリップリング50はスリップリング外筒によって包囲された状態で使用されるものであり、このスリップリング外筒によって電源段リング63及びブラシ67は密封されている。金属摩耗粉68が電源段リング63にどの程度付着し、溜まっているかといったことを外部から人が確認することはできない。
【0010】
そこで、従来、金属摩耗粉を除去する機構をスリップリングに設ける例が提案されている。例えば特許文献1や特許文献2には、スリップリング内部で発生した摩耗粉を除去する手段を設けたX線CT装置が開示されている。特許文献1に記載のX線CT装置は、スリップリングに近接配置されて気体吸い込み口を形成する外部ケースと、この外部ケース内に設けられて気体吹き出し口を形成する内部ケースと、内部ケースに気体を送り込む送風手段と、外部ケースから気体を吸引する吸引手段と、気体吸い込み口から吸引された気体内の磨耗粉を集塵する集塵手段とを備えている。特許文献2に記載のX線CT装置は、導電性ブラシと回転体との接触位置近傍に、摩耗粉を除去する集塵手段を設けたものである。また、2つの導電環を1組として軸方向に同軸状に設けたスリップリングも知られている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−257021号公報
【特許文献2】特開平5−076525号公報
【特許文献3】特開平4−371141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、アンテナ指向装置などの回転体駆動装置は長期間稼働させる必要があり、金属摩耗粉68が生じてもスリップリング50の動作を停止させずに、長時間連続してスリップリング50を回転させて装置の運転を継続することが求められる。スリップリング50は定期的なメンテナンスを要する。このメンテナンス作業を行うためには、スリップリング50を分解し、清掃し、組立てを行う必要がある。これらの分解、清掃及び組立てが行われた後、再度、装置全体の性能試験及び動作試験が行われる。これらの一連のメンテナンス作業を、回転体駆動装置全体の運用を停止せずに実施する必要がある。
【0012】
電源段リング63の回転によって金属摩耗粉68は様々な方向に飛散するため、ブラシ67や、ブラシホルダ65、66の内側の電源段リング63に向く部位あるいはスリップリング外筒の内壁面などに金属摩耗粉が付着してその付着した箇所に金属摩耗粉が溜まり始める。スリップリング50内部での金属摩耗粉の付着状態は変化するものであり、メンテナンスの時期は一定とは限らない。このメンテナンスのタイミングを作業者が知ることは困難である。
【0013】
特許文献2には、X線CT装置がタンクに摩耗粉の量を検出するセンサを設け、この摩耗粉の量から導電性ブラシの摩耗度を推測するようにし、センサとして、タンク内に回収された摩耗粉の重量を測定するもの、タンク内に積載される摩耗粉の積載量を計測するものを設ける例が開示されている。センサをスリップリングに設ける手法では、粉量の検知精度が保証されたスリップリングを作成すること、及びこの検知精度を維持した状態でスリップリングを使用し続けることが困難である。
【0014】
上述した従来技術ではメンテナンスのタイミングを知ることができず、適当な時期を見計らってメンテナンスを行うといった使用法をとることができない。
【0015】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、摩耗粉を除去して電極リング間の絶縁抵抗の劣化を防止することが可能な摩耗粉除去機能付きのスリップリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題を解決するため、本発明の一態様によれば、外筒体と、この外筒体内に設けられ、それぞれ絶縁体を介して前記外筒体の軸方向に積層配置された複数段の電極リングから成り、この軸周りに回転駆動される電極リング部と、この電極リング部に圧接保持された導電性のブラシと、このブラシと前記電極リング部との摺動により発生する摩耗粉を吸引して除去する摩耗粉吸引除去手段と、を備え、この摩耗粉吸引除去手段は、前記電極リング部が回転を開始したときに吸引動作を行うことを特徴とする摩耗粉除去機能付きのスリップリングが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電極リング部の胴部外周部に付着した摩耗粉を、この外周部全周に亘って除去することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る摩耗粉除去機能付きのスリップリングについて図1乃至図3を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0019】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る摩耗粉除去機能付きのスリップリングは、アンテナ指向装置などの回転体駆動装置に組み込まれている。このアンテナ指向装置は、車両や固定台に固着されたベース部と、このベース部に縦軸周り回転自在に設けられたアンテナ台と、このアンテナ台に俯仰自在に設けられたアンテナ部と、アンテナ台を縦軸周りに駆動する駆動部と、アンテナ部との間で送受信信号を授受する信号送受信部と、これらに電力を供給する電源とを有する。本実施形態に係る摩耗粉除去機能付きのスリップリングは、これらのベース部とアンテナ台との間に組み入れられて用いられている。このスリップリングは、固定部側のベース部と、回転体であるアンテナ部との間において電力及び信号を伝達しつつ、アンテナ台の連続回転を実現するようにしている。以下、スリップリング1が伝達可能な電力及び信号のうち電力の伝達機能について説明する。
【0020】
図1は本実施形態に係る摩耗粉除去機能付きのスリップリングの正面図である。図2は図1のスリップリングの上面図である。図1には図2中矢印方向から見た構造が示されている。これらの図にはスリップリング1のスリップリング外筒が取り去られた状態の構造例が示されている。
【0021】
このスリップリング1は、支柱2と、この支柱2の側外周部に配置された内筒3と、縦軸周りに回転駆動される中空状の電源段リング(電極リング部)4と、それぞれがこの電源段リング4の導電部位に接触しこの電源段リング4と電気的に結合する複数のブラシ5と、電源段リング4の胴部外周面近傍に開口する4つの摩耗粉吸引口6、及び摩耗粉排出口7を有するダクト8と、電源段リング4の胴部外周面近傍に開口する4つの摩耗粉吸引口9、及び摩耗粉排出口10を有するダクト11とを備えている。
【0022】
これらの支柱2、内筒3及び電源段リング4は同軸状に配設されている。支柱2及び内筒3は内筒3の内周面が支柱2の外周面に対して摺動可能にされた状態で内外互いに嵌挿されており、内筒3及び電源段リング4は電源段リング4の内周面が内筒3の外周面に対して摺動可能にされた状態で内外互いに嵌挿されている。
【0023】
電源段リング4は、それぞれリング状のプラス電極である複数のプラス電極リング12と、それぞれリング状のマイナス電極である複数のマイナス電極リング13と、それぞれが1枚のプラス電極リング12及び1枚のマイナス電極リング13の間に設けられて、これらのプラス電極リング12及びマイナス電極リング13間の絶縁を行う複数のインシュレータ14とを備えている。
【0024】
これらプラス電極リング12及びマイナス電極リング13は金属基体から成り、各リング表面は銀メッキされている。各インシュレータ14は例えば合成樹脂から成り、樹脂モールドによって、これらのプラス電極リング12及びマイナス電極リング13が積層状に保持されている。合成樹脂体は、内筒3の外周面を覆うとともにこの合成樹脂体がプラス電極リング12及びマイナス電極リング13間に露出するようにして成形されている。すなわち、電源段リング4は、合成樹脂体が内筒3の外周面にリング状に取り付けられた形状の絶縁体構造を有する。
【0025】
各ブラシ5は、各プラス電極リング12及び各マイナス電極リング13に電力を供給するチップ部材であり、金属とカーボンとが混合された成分を含有しこの成分が固められて形成されている。これらのブラシ5はそれぞれ断面形状が矩形である例えば3つの平板が軸方向に並設されて構成されている。
【0026】
また、1枚のプラス電極リング12胴部の外周面を底部とし、この外周面と、このプラス電極リング12の上に位置するインシュレータ14の下面部と、このプラス電極リング12の下に位置するインシュレータ14の上面部とによって、リング全周方向に沿った溝部が形成されている。マイナス電極リング13も、マイナス電極リング13の外周面と、このマイナス電極リング13の上に位置するインシュレータ14の下面部と、このマイナス電極リング13の下に位置するインシュレータ14の上面部とによって、ブラシ5用の溝部が形成されている。各ブラシ5はこれらの溝部に所定の圧接力で接触するように固定されている。
【0027】
ダクト8はプラス電極リング用ダクトであり、プラス電極リング12に付着した金属摩耗粉を吸引する。ダクト11はマイナス電極リング用ダクトであり、マイナス電極リング13に付着した金属摩耗粉を吸引する。各プラス電極リング12により形成される溝部にはダクト8の各摩耗粉吸引口6が開口している。これらの摩耗粉吸引口6はプラス電極リング12に付着した金属摩耗粉を吸引するための吸い込み口であり、各端面が例えば外周接線方向を向くようにして配置されている。各マイナス電極リング13により形成される溝部にはダクト11の各摩耗粉吸引口9が開口している。これらの摩耗粉吸引口9はマイナス電極リング13に付着した金属摩耗粉を吸引するための吸い込み口であり、各端面が例えば外周接線方向を向くようにして配置されている。
【0028】
電源段リング4の上端及び下端にはそれぞれ径方向外方に張り出した形状を有する上側フランジ15及び下側フランジ16が設けられている。上側フランジ15の大径部上面は図示しないアンテナ台の底面に固定されており、このアンテナ台が回転駆動されると、電源段リング4は回転体としてのアンテナ台と一体になって縦軸周りに回転するようになっている。
【0029】
更にスリップリング1は、2つの上部吸気口17及びフィルタ付きの下部排気口18を有し、ダクト8及び11を介して捕捉された金属摩耗粉を集塵するためのガラス窓付きケース19と、この下部排出口18に連通されて空気を吸引する吸引機20と、それぞれ電源段リング4を挟んでこの電源段リング4の直径方向に対向配置され複数の端子部21を有する1対のブラシホルダ22、23とを備えている。
【0030】
ダクト8は電源段リング4の胴部外周面に沿って、摩耗粉吸引口6からガラス窓付きケース19の上部吸気口17まで延在している。ダクト8の摩耗粉排出口7はこのガラス窓付きケース19内に連通しており、吸引された金属摩耗粉をガラス窓付きケース19に誘導する。ダクト11は電源段リング4の胴部外周面に沿って、摩耗粉吸引口6からガラス窓付きケース19の別の上部吸気口17まで延在している。ダクト11の摩耗粉排出口10も吸引された金属摩耗粉をガラス窓付きケース19に誘導する。
【0031】
このガラス窓付きケース19は、ガラスなどの透明な材料からなる窓が設けられたケースである。定期点検時にスリップリング1からスリップリング外筒が取り外された場合、作業者が金属摩耗粉の堆積状態を目視により確認出来るようにされている。このガラス窓付きケース19には、取っ手24が取り付けられている。ガラス窓付きケース19に金属摩耗粉が堆積した場合、作業者が取っ手24に手をかけて、このガラス窓付きケース19を引き抜いて交換できるようになっている。
【0032】
吸引機20はモータと、このモータによって回転駆動されるブロアファンとを有する。この吸引機20はモータ付きの強力な掃除機のような構造を有するといえる。
【0033】
また、この吸引機20、ガラス窓付きケース19及びダクト8、11によって摩耗粉除去手段が構成される。
【0034】
ブラシホルダ22、23は絶縁材料から成り、それぞれ図示しないフレームに取り付けられている。これらのブラシホルダ22、23に設けられた各端子部21には、図示しない電源ラインが接続される。電源入力側回路からの電力は、電源段リング4の停止時及び回転時において、ブラシホルダ22、電源段リング4、及びブラシホルダ23をそれぞれ介して、電源出力側回路へ伝達されるようにされている。
【0035】
また、上側フランジ15大径部の周壁と、外筒の内壁との間の環状隙間はシール部材によってシールされ、下側フランジ16大径部の周壁と、外筒の内壁との間の環状隙間もシール部材によってシールされる。電源段リング4、ダクト8、11、ブラシ5、及びブラシホルダ22、23は、スリップリング外筒によって密封収容されるようになっている。
【0036】
このような構成のスリップリング1を含むアンテナ指向装置が電源段リング4の回転を停止させている状態で、アンテナ指向装置の制御手段が、スリップリング1の動作をオンにする旨の指令を受けたことを、ボタン操作等によって検知すると、この制御手段は駆動部に対して縦軸周りの回転駆動の指令信号を出力するとともに、吸引機20のモータへと通電する。駆動部により電源段リング4はゆっくりと縦軸周りに回転を開始し、予め設定された回転量だけ回転する。
【0037】
モータがブロアファンを回転駆動すると、ガラス窓付きケース19内の空間は負圧にされる。この負圧によりダクト8、11内の空気と金属摩耗粉とが吸引され、フィルタ付きの下部排気口18において金属摩耗粉が取り除かれて、空気が吸引機20から排気される。金属摩耗粉はガラス窓付きケース19内に分離されて集塵される。
【0038】
制御手段は、決められた回転量だけ電源段リング4が回転したことを、タイマ等によって検知可能にされており、この制御手段がこの回転量分の回転を検知すると、この制御手段はモータへの通電を停止する。これにより、全てのリング胴部の外周面に付着した金属摩耗粉は、このリング胴部の全周に亘って吸引される。
【0039】
電源段リング4の回転速度が増加した後、スリップリング1は、電源入力側回路を介して電源の電力を、電源出力側回路へ中継する。この電力はこの電源出力側回路に接続された負荷によって消費される。この状態でスリップリング1は一定時間連続して動作をオンにされ続ける。
【0040】
また、例えばアンテナ部を用いた対象の方位を特定する操作が休止された場合、アンテナ指向装置はその動作をオフにされて電源段リング4は回転を停止する。この間に発生した金属摩耗粉は、このアンテナ指向装置が再度運転を開始された際、アンテナ台が回転をし始めるときに吸引されて、吸引された金属摩耗粉はガラス窓付きケース19内に集められる。一定期間毎に作業者がスリップリング1内を確認し、このガラス窓付きケース19の金属摩耗粉の堆積量を目視することによって、メンテナンスの要否が判定できるようになる。
【0041】
このスリップリング1では、アンテナ台の回転速度が決められた回転速度に達する前に、金属摩耗粉が吸引されるため、アーク発生が抑制される。電源段リング4が低速度で回転している最中に金属摩耗粉が吸い取られるため、電源段リング4の外周面の全周に亘って付着した金属摩耗粉を確実に除去することができるようになる。また、全周に亘って金属摩耗粉が除去されるため、電気溶着に起因する塊の発生を抑制でき、この塊にブラシ5が接触することによって生じるブラシ5のバウンドの発生が抑えられるようになる。これによって、ブラシ5及び電源段リング4間におけるスパークの発生も抑制される。
【0042】
また、各プラス電極リング12に付着した金属摩耗粉は正に帯電されており、摩耗粉吸引口6から吸引された正に帯電した金属摩耗粉は、プラス電極リング12用のダクト8を通って、ガラス窓付きケース19に集積される。各マイナス電極リング13に付着した金属摩耗粉は負に帯電されており、摩耗粉吸引口9から吸引された負に帯電した金属摩耗粉は、マイナス電極リング13用のダクト11を通って、ガラス窓付きケース19に集積される。これにより、プラス電極リング12及びマイナス電極リング13の全てのリング胴部の外周面に付着した金属摩耗粉はガラス窓付きケース19内に集塵される。
【0043】
仮にスリップリングが2つのダクト8、11を設ける代わりに1つのダクトのみを設けている場合、正に帯電した金属摩耗粉と負に帯電した金属摩耗粉とが互いに引き合って、これらは電気的に結合した後、このダクトの内壁に付着する。この場合、金属摩耗粉の吸引を十分行うことが出来なくなる可能性がある。これに対して、スリップリング1はプラス電極用とマイナス電極用とに分離してダクト8、11を設けており、正に帯電された金属摩耗粉と負に帯電された金属摩耗粉とを別個に吸引するため、2つのダクト8、11の内壁に金属摩耗粉が付着しにくくなり、金属摩耗粉を集められるようになる。
【0044】
また、ガラス窓付きケース19の定期点検を実施することによって、このガラス窓付きケース19内に金属摩耗粉が堆積した場合、ケースごと交換することができるため、メンテナンス作業がし易い。
【0045】
電源段リング4及びブラシ5は密封されており、発生した金属摩耗粉はスリップリング内部で飛散する。金属摩耗粉を除去する機能を持たないスリップリングでは、電極リング等の導電体に付着し、スパークなどを引き起こす。本実施形態に係る摩耗粉除去機能付きのスリップリングによれば、アンテナ台などの回転体が回転し始めに、金属摩耗粉を吸引する機構が設けられたことにより、金属摩耗粉の電極リングへの付着と、金属摩耗粉のリング周辺の導電体への付着との双方を防止することが出来るようになる。
【0046】
また、電源段リング4の回転が停止しているときに吸引機20を動作させて金属摩耗粉を吸引する場合、溝部の全周のうちの各摩耗粉吸引口6、8の近傍に位置する部分に付着した金属摩耗粉しか除去することができないが、このスリップリング1では、吸引機20が、電源段リング4の停止状態から回転し始めに除去するため、溝底の全周に付着した金属摩耗粉を除去することができるようになる。これにより、電源系の短絡の発生を防止でき、故障要因を取り除くことができる。また、金属摩耗粉を除去できるため、スリップリング1の高信頼性及び長寿命化を図ることが出来るようになる。
【0047】
また、スリップリング1では、金属摩耗粉が吸引により除去されるため、金属摩耗粉による悪影響を受けずに、装置の信頼性が向上する。金属摩耗粉がスリップリング外筒から、スリップリング内部へ侵入した場合でも、電源段リング4が回転し始めに金属摩耗粉が吸引されるため、スパーク発生の要因の一つとして考えられる金属摩耗粉の発生が抑制される。スパークにより、金属摩耗粉が炭化して煤が発生するといったことが起きにくくなる。各電極リングの内側に煤が付着することが抑制されて、これらリング内側への煤の付着によって生じる電極リング間の絶縁抵抗の劣化を防ぐことができる。
【0048】
このようにして、本実施形態に係る摩耗粉除去機能付きのスリップリングによれば、電極リングの胴部の外周部に付着した金属摩耗粉を、この外周部全周に亘って除去することができ、電極リング間の絶縁性の劣化を防止でき、また、金属摩耗粉が集塵された量をモニタすることができるようになる。
【0049】
このスリップリング1では、ガラス付き窓ケース19内に回収された金属摩耗粉の量を計測するセンサ類などの手段を別途設けずに、装置価格を抑えたまま、金属摩耗粉の堆積量を把握するといったことが容易に行えるようになる。目視によってメンテナンスの要否を知ることができるようになるため、スリップリング1のメンテナンスを行うための適当な時期を見計らって作業をすることができるようになる。
【0050】
(第2の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るスリップリング1では、金属摩耗粉を吸引する吸引機20が、モータとブロアファンとから構成された掃除機構造を有する。吸引機20には、吸引機20の吸引動作を制御する吸引駆動制御部が接続されている。吸引機20の駆動を制御する吸引駆動制御部は電源段リング4が回転したことを検知すると、このモータを回転させ始めて吸引機20は吸引動作を開始する。
【0051】
吸引駆動制御部は、電源段リング4の決められた回転量を、タイマをカウントすること等によって検知する。検知後、吸引駆動制御部は、モータへの通電を停止し吸引動作を終了させる。吸引動作は、電源段リング4の回転が開始してから一定期間のみ行われる。第1の実施形態に係るスリップリング1では、以下の(1)、(2)が課題として残されている。
【0052】
(1)電源段リング4に付着している金属摩耗粉は、電源段リング4が回転を開始した時に吸引されるが、回転が停止した場合、金属摩耗粉は付着したままとなっている。動作の停止後次にスリップリング1の運用が開始されない限り、スリップリング1は、金属摩耗粉が電源段リング4に固着した状態にされたままである。
(2)スリップリング1は、摩耗粉吸引口6、9により金属摩耗粉を吸い取って摩耗粉排出口7、10へ導いているが、電極段リング4に付着した金属摩耗粉が吸引されずに、リング胴部外周面に残積する可能性がある。
【0053】
本発明の第2の実施形態に係る摩耗粉除去機能付きのスリップリングは、上記の摩耗粉吸引除去手段に摩耗粉を吸引させるための吸引駆動制御機能を有する。この吸引駆動制御機能について図3を参照して説明する。
【0054】
図3は本実施形態に係る摩耗粉除去機能付きのスリップリングの正面図である。図3に示す符号のうち上述した要素と同じ要素を有するものはそれらと同じ要素を表す。本実施形態に係るスリップリングもアンテナ指向装置などの回転体駆動装置に組み込まれて用いられる。
【0055】
スリップリング25は、電源段リング4、それぞれこの電源段リング4の導電部位に接触する複数のブラシ5、ダクト8、11、ガラス窓付きケース19、吸引機20、1対のブラシホルダ22、23を備える。吸引機20は、モータ26と、このモータ26のシャフトに取り付けられたブロアファン27とを有する。ブロアファン27は、モータ26が駆動された時に、空気が下方に吸引されるような傾斜を持つ羽根角度を有する。
【0056】
更にスリップリング25は、吸引機20内のモータ26を回転させるための吸引機モータ電源28と、制御端子29を有しこの制御端子29へ入力される制御信号の論理値に応じて吸引機モータ電源28からの電源をモータ26へ供給する/供給しないを切り替える吸引機電源リレー回路30と、支柱2を回転させるモータ31の回転速度を検出する回転速度センサ32(回転状態検出手段)と、回転速度センサ32から出力されるスリップリング回転モニタ信号に基づき電源段リング4の回転加速度を検出するスリップリング回転加速度検出部33と、検出された回転加速度に基づいて吸引機電源リレー回路30の制御端子29に吸引機モータ電源制御信号を出力する吸引駆動制御部34とを備える。吸引機モータ電源制御信号とは、吸引機20のモータ26を回転させるモータ用電源をオン/オフさせるための制御信号である。
【0057】
吸引機モータ電源28は、モータ26へ電力を供給する。吸引機電源リレー回路30はスイッチングを行う回路である。吸引機電源リレー回路30は、吸引機20のモータ26の駆動をオン/オフ制御する。吸引機電源リレー回路30は、スリップリング回転加速度検出部33から動作オンを指令されると、スイッチを閉じて、吸引機モータ電源28とモータ26とを短絡する。吸引機電源リレー回路30は、スリップリング回転加速度検出部33から動作オフを指令されると、スイッチを開き、吸引機モータ電源28とモータ26とを切り離す。
【0058】
支柱2には、モータ31の図示しないシャフトから回転駆動力が作用する。回転速度センサ32には例えば回転速度計が用いられる。回転速度センサ32はモータ31のモータ速度値を、スリップリング回転モニタ信号として出力する。即ち回転速度センサ32は、モータ速度値を電源段リング4の回転状態として検出しスリップリング回転モニタ信号を出力する。
【0059】
スリップリング回転加速度検出部33は回転速度センサ32から入力されるモータ速度値について一定期間毎に微分値を演算する回路である。スリップリング回転加速度検出部33は、所定時間におけるモータ速度値の変化量を演算することにより、電源段リング4の回転加速度を検出する。スリップリング回転加速度検出部33が、電源段リング4の回転開始時と回転停止時とにおいて一定期間吸引機モータを回転させる信号を生成することにより、電源段リング4に付着した金属摩耗粉が除去されるようになっている。
【0060】
吸引駆動制御部34は、スリップリング回転加速度検出部33により演算されたモータ速度値の変化量に基づき吸引機20の動作を制御する。吸引駆動制御部34は予め決めておいた閾値を保持しており、この閾値と、回転状態の変化量であるモータ速度値の変化量とを比較し、モータ31の回転速度の上昇及び下降の度合いを検知するようにしている。吸引駆動制御部34の機能はCPU、ROM及びRAMにより実現される。
【0061】
また、本実施形態に係るスリップリング25は、ダクト8の4つの摩耗粉吸引口6と、ダクト11の4つの摩耗粉吸引口9とのそれぞれに、多数本の植毛体35が植設されている。これらの植毛体35の先端部は電源段リング4の胴部外周部に接触しており、電源段リング4が回転するときに、溝底の全周に付着した摩耗粉が払い取られるようにされている。払い取られた摩耗粉は溝部からリング外周面の外方へ巻き上げられ、各吸引口6、9から吸引されるようになっている。植毛体35は、あたかも電気掃除機の吸込みホースの先端に取り付けられた吸込み端部に設けられる吸込み開口周りのソフトブラシと同じ機能を発揮する。
【0062】
このような構成の本実施形態に係るスリップリング25が停止している状態において、アンテナ指向装置の制御手段は駆動部を構成するモータ31に対して回転駆動の指令信号を出力するとともに、吸引駆動制御部34へ動作指令を通知する。吸引駆動制御部34は吸引機20のモータ26へと通電する。電源段リング4は縦軸周りの回転を開始する。スリップリング回転加速度検出部33は、スリップリング回転モニタ信号からモータ回転加速度を演算して出力する。吸引駆動制御部34は、この加速度の値を常時モニタし続ける。
【0063】
吸引駆動制御部34は、加速度値が閾値以上である場合、モータ31のシャフトが停止した状態から回転を始めたことを検知する。吸引駆動制御部34は、吸引機電源リレー回路30に吸引機モータ電源制御信号を出力する。従って、電源段リング4が回転を開始する際、吸引機20は吸引動作を行う。
【0064】
また、モータ速度が一定速度に近づくと、加速度値は小さくなる。吸引駆動制御部34は加速度値が小さくなったことを検出した場合、吸引機電源リレー回路30に対する吸引機モータ電源制御信号の出力を停止する。これにより、吸引機20の動作は停止する。スリップリング25はこの状態で数日間といった期間連続して運用される。
【0065】
また、スリップリング25の運用が停止される場合、アンテナ指向装置の制御手段からの指令により吸引駆動制御部34はモータ31に対して回転停止の指令信号を出力する。電源段リング4の回転速度は徐々に小さくなる。スリップリング回転加速度検出部33は、スリップリング回転モニタ信号から加速度を演算出力しており、吸引駆動制御部34は出力された加速度値と閾値とを比較し続けている。加速度値が閾値よりも小さくなったことを吸引駆動制御部34が検出すると、吸引駆動制御部34は、吸引機電源リレー回路30に対して吸引機モータ電源制御信号を出力する。これにより、吸引駆動制御部34は、電源段リング4が回転を停止する際、吸引機20に吸引動作を行わせる。
【0066】
このようにして、スリップリング25では、吸引機20が行う吸引動作は、電源段リング4の回転が開始してから一定期間行われるとともに、電源段リング4の回転が停止するときにも行われる。本実施形態に係るスリップリング25によれば、現在のスリップリング25の稼動が終了した後、次にスリップリング25の運用が開始される前に、電源段リング4に付着した摩耗粉が除去される。摩耗粉は電源段リング63に固着した状態のまま放置されることがなくなる。
【0067】
第1の実施形態の例では、スリップリング1の運用が止められた後、この運用が再開されるまで例えば1月あるいは2月もの期間が空くことがある。摩耗粉を吸引除去する動作をスリップリング1が回転し始める時だけ行われる場合、運用の停止後、回転中に発生した摩耗粉がスリップリング1内でそのままの状態に放置される。1月又は2月経過すると、摩耗粉は電源段リング4内部に浸透する可能性がある。本実施形態に係るスリップリング25によれば、劣化を防止することができる。
【0068】
また、ダクト8、11の各吸引口6、9に多数の植毛体35が設けられているため、これらの吸引口6、9にリング外周面の清掃機能を持たせることができるようになる。これにより、電源段リング4に付着した金属摩耗粉を吸引する効果を向上させることができる。リング胴部外周面に摩耗粉が残積する可能性が払拭される。吸引機20を動作させることだけでは吸い取りが十分でない場合があっても、電気掃除機のソフトブラシのように、植毛体35が摩耗粉と接触して接触した摩耗粉を吸い込むため吸引効果が上がる。これにより、運用停止後、スリップリング25の運用期間が空いたとしても、リング外周面上にしみや、摩耗粉の付着、外周面上の肌荒れあるいは、摩耗粉の科学的結合の発生を抑えることができるようになる。
【0069】
また、植毛体35の植毛材には耐熱材を用いることができる。このようにすれば、電源段リング4にスパークが発生し、電源段リング4と導電性のブラシ5との接触部位が数千°Cもの高温になった場合でも金属摩耗粉を吸引除去する機能を維持することができる。
【0070】
なお、第2の実施形態のスリップリング25では、電源段リング4の回転状態の量としてモータ回転速度が用いられたが、スリップリング25は、電源段リング4の回転位置を回転状態の量としてモータ回転速度と併用してもよい。例えば電源段リング4の外方に回転位置のセンサとしてのエンコーダを設け、このエンコーダからのデジタル的なモータ回転信号を吸引駆動制御部34へ入力されるようにして回転状態を検知するようにもできる。エンコーダは、モータ31のシャフトの回転を検出し、このシャフトの回転位置あるいは回転量に応じた信号を出力するものである。エンコーダには、光学式、機械式、磁気式のもの等を用いることができる。
【0071】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記の第1の実施形態及び第2の実施形態では、摩耗粉吸引除去手段を構成するフィルタは下部排気口18と一体的に設けられていたが、このフィルタはダクト8、11の吸引口からガラス窓付きケース19へと至る吸引経路の途中の箇所に設けることができる。
【0072】
上記の各実施形態では、ダクト8の各摩耗粉吸引口6と、ダクト11の各摩耗粉吸引口9とは、いずれもこれらの端面が周方向を向くようにして配置されていたが、本発明は、これらの摩耗粉吸引口6、9の端面を、リング胴部の外周面に向けたり、あるいはこの外周面に対して傾斜させて構成されてもよい。ダクト8及び電源段リング3間の距離と、ダクト11及び電源段リング3間の距離と、ダクト8及びダクト11間の間隔とはいずれも、プラス電極リング12胴部の厚さ、マイナス電極リング13胴部の厚さ、及びこれらプラス電極リング12、マイナス電極リング13の直径に応じて種々変更可能である。
【0073】
また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る摩耗粉除去機能付きのスリップリングの正面図である。
【図2】図1のスリップリングの上面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る摩耗粉除去機能付きのスリップリングの正面図である。
【図4】スリップリングを含むアンテナ指向装置の一部を示す図である。
【図5】従来のスリップリングの内部構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1,25…スリップリング、2…支柱、3…内筒、4…電源段リング(電極リング部)、5…ブラシ、6,9…摩耗粉吸引口(吸引口、吸い込み口)、7,10…摩耗粉排出口(排出口)、8,11…ダクト、12…プラス電極リング(電極リング)、13…マイナス電極リング(電極リング)、14…インシュレータ(絶縁体)、15…上側フランジ、16…下側フランジ、17…上部吸気口(吸気口)、18…下部排気口(排気口)、19…ガラス窓付きケース(ケース)、20…吸引機、21…端子部、22,23…ブラシホルダ、24…取っ手、26,31…モータ、27…ブロアファン、28…吸引機モータ電源、29…制御端子、30…吸引機電源リレー回路、32…回転速度センサ(回転状態検出手段)、33…スリップリング回転加速度検出部、34…吸引駆動制御部、35…植毛体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒体と、
この外筒体内に設けられ、それぞれ絶縁体を介して前記外筒体の軸方向に積層配置された複数段の電極リングから成り、この軸周りに回転駆動される電極リング部と、
この電極リング部に圧接保持された導電性のブラシと、
前記電極リング部の胴部外周部の近傍に吸い込み口を有し、このブラシと前記電極リング部との摺動によって発生する摩耗粉をこの吸い込み口より吸引して除去する摩耗粉吸引除去手段と、を備え、
この摩耗粉吸引除去手段は、前記電極リング部が回転を開始したときに吸引動作を行うことを特徴とする摩耗粉除去機能付きのスリップリング。
【請求項2】
前記摩耗粉吸引除去手段は、
吸気口及び排気口を有する窓付きのケースと、
このケースの前記排気口に連通し、空気を吸引する吸引機と、
前記電極リング部の胴部外周面の近傍に開口する吸引口及び前記ケースの吸気口に連通する排出口を有し、この吸引口から吸引された前記摩耗粉をこの排出口へ導くダクトと、
このダクトの前記吸引口から前記ケースへ至る吸引経路の途中に設けられたフィルタと、
を有することを特徴とする請求項1記載の摩耗粉除去機能付きのスリップリング。
【請求項3】
前記電極リング部はプラス電極リング及びマイナス電極リングから成り、前記ダクトが複数設けられて、第1のダクトはこのプラス電極リングに付着し正に帯電した摩耗粉を吸引し、第2のダクトはこのマイナス電極リングに付着し負に帯電した摩耗粉を吸引することを特徴とする請求項2記載の摩耗粉除去機能付きのスリップリング。
【請求項4】
前記電極リング部の回転状態を検出し回転状態信号を出力する回転状態検出手段と、
この回転状態信号の変化量に基づき前記吸引機の動作を制御する吸引駆動制御部とを更に備え、
この吸引駆動制御部は、前記電極リング部が回転を開始する際、前記吸引機に吸引動作を行わせることを特徴とする請求項2記載の摩耗粉除去機能付きのスリップリング。
【請求項5】
前記電極リング部の回転状態を検出し回転状態信号を出力する回転状態検出手段と、
この回転状態信号の変化量に基づき前記吸引機の動作を制御する吸引駆動制御部とを更に備え、
この吸引駆動制御部は、前記電極リング部が回転を停止する際、前記吸引機に吸引動作を行わせることを特徴とする請求項2記載の摩耗粉除去機能付きのスリップリング。
【請求項6】
前記摩耗粉吸引除去手段の前記吸い込み口には、それぞれの先端部が前記電極リング部の胴部外周部に接触するように植設された複数本の植毛体が設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の摩耗粉除去機能付きのスリップリング。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−10121(P2010−10121A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307590(P2008−307590)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】