説明

撚線機

【課題】撚線製造工程に2次加工工程を直結しうる撚線機を提供する。
【解決手段】撚線機は、クレードル(1)に装着せられた素線供給ボビン(2)と、クレードル(1)の周囲を回転せしめられる弓形フライヤ(3)と、弓形フライヤ(3)の一端が第1フライヤ取付部材(4)を介して取り付けられた第1中空水平主軸(5)と、7本の素線(W1)に1度目の撚を与えて1度撚線(W2)となす第1撚付与兼ガイドローラ(8)と、弓形フライヤ(3)の他端が第2フライヤ取付部材(6)を介して取り付けられた第2中空水平主軸(7)と、第1中空水平主軸(5)に取り付けた第1撚付与兼ガイドローラ(8)と、第2中空水平主軸(7)に取り付けられかつ1度撚線(W2)に2度目の撚を与えて所定の撚線(T1)となすた第2撚付与兼ガイドローラ(9)と、第2中空水平主軸(7)の前方に配置せられたキャプスタン(a)と、素線張力調整装置(10)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚線機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撚線を製造する工程と、撚線に2次加工を施す工程とは、全く別工程であった。すなわち、撚線機としては、たとえば下記特許文献1に開示せられているような2度撚集合機が用いられるが、製造された撚線は、いったん巻き取りドラムに巻き取られる。そして、この巻き取りドラムが2次加工を行う装置まで運ばれ、今度はこの巻き取りドラムが供給ドラムとなされ、撚線に前記装置により2次加工が施されて巻き取りリールに巻き取られていた。
【特許文献1】特開2002−348038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
2次加工を行う前に撚線をいったん巻き取りドラムに巻き取るということは、全体の製造工程を煩雑にするばかりではなく、巻き取りドラムを2次加工装置まで運ぶのに人手を必要とした。
【0004】
また、複数の素線を撚り合わせて撚線を製造するさい、素線供給ボビンから繰り出される素線に付与する張力は、使用される素線の太さに対応していなければならない。すなわち、素線の太さが太くなればなる程素線に付与せられる張力を大きくする必要がある。また、素線供給ボビンから繰り出される素線の張り具合や撚状態を目視して素線に付与する張力値を適切な値に変更したい場合がある。
【0005】
本発明の目的は、上記のような問題を解消するために、撚線の製造工程に2次加工工程を直結することができる撚線機を提供するにある。
【0006】
本発明の他の目的は、撚線機の稼働開始時に、素線に付与する張力をその素線の太さに対応して適切な値に定めることができ、また、稼働中に素線に付与する張力値を適切な値に変更することができる撚線機を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明による撚線機は、クレードルに着脱自在に装着せられた複数の素線を供給する素線供給ボビンと、素線供給ボビンを回転せしめるインバータ制御の可変速モータと、クレードルの周囲を回転せしめられる弓形フライヤと、弓形フライヤの一端が第1フライヤ取付部材を介して取り付けられかつ周壁に横長孔を有する第1中空水平主軸と、弓形フライヤの他端が第2フライヤ取付部材を介して取り付けられかつ周壁に横長孔を有する第2中空水平主軸と、一部が横長孔より中空部内にはめ入れられて第1中空水平主軸に取り付けられ複数の素線を中空部および横長孔を通して弓形フライヤに案内するとともに弓形フライヤの回転にともなって複数の素線に1度目の撚を与える第1撚付与兼ガイドローラと、一部が横長孔より中空部内にはめ入れられて第2中空水平主軸に取り付けられ1度撚線を横長孔および中空部を通して第2中空水平主軸の前方に配置せられたキヤプスタンに案内するとともに弓形フライヤの回転にともなって1度撚線に2度目の撚を与える第2撚付与兼ガイドローラと、素線供給ボビンから繰り出される素線の張力を調整する素線張力調整装置を備えているものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の撚線機において、素線張力調整装置が、素線供給ボビンから繰り出される素線の張力を調整する張力調整ダンサーローラーと、ダンサーローラー取付部材に設けられかつ片方の縁が長さ方向に傾斜している傾斜面となされている板状移動片と、移動片の傾斜面の基準位置に対向状にのぞませられた傾斜面との間の間隙変化検出手段と、ダンサーローラーをこれに掛け渡された素線の張力に逆らう方向に付勢するばねとよりなり、間隙変化検出手段は、間隙の変化に応じて電圧が変化し、電圧変化信号によりモータの回転速度を制御するようになされており、基準位置が移動片の傾斜面のうちの素線に付与せられる張力値に対応する位置であるものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2記載の撚線機において、操作盤の内部に、線太さに比例するように決められたばねの縮み量に対応する張力値と、間隙変化検出手段より発する電圧値との関係が記憶せしめられており、稼働開始時に、使用する素線の設定張力値を操作盤により入力すると、キャプスタンが低速で回転し、素線の掛けられたダンサーローラーがばねに抗して移動することにより、素線に張力が生じて張力値が次第に増加し、入力された設定張力値位置でダンサーローラーが停止してキャプスタンと素線供給ボビンとが同時に回転し、設定張力値の下に素線供給ボビンからの素線の繰り出しが開始せられるようになされており、前記ダンサーローラー停止時において、間隙変化検出手段が移動片の傾斜面に対向状にのぞむ傾斜面のその位置が、基準位置となされるものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3記載の撚線機において、稼働中に張力値を変更したい場合、変更張力値を操作盤により入力すると、入力された変更張力値と設定張力値との差が+か−かに応じて素線供給ボビンの回転速度が遅くなるようにまたは速くなるように変更され、素線の掛けられたダンサーローラーがばね力に抗する方向およびばねにより付勢せられている方向のいずれか一方に移動し、張力値が増または減に変更され、変更張力位置でダンサーローラーが停止し、元の速度でキャプスタンと素線供給ボビンとが回転し、変更張力値の下に素線供給ボビンからの素線の繰り出しが継続せられるようになされており、前記ダンサーローラーの移動後において、間隙変化検出手段が移動片の傾斜面に対向状にのぞむ傾斜面のその位置が、基準位置となされるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明による撚線機によれば、撚線の製造工程に2次加工工程を直結することができるので、撚線を製造し、さらに撚線に2次加工を施す場合、全体の工程を簡素化しうるとともに省人化しうる利点がある。
【0012】
また、請求項2の発明による撚線機によれば、稼働中に、素線の所定張力値に変動が生じた場合、自動的に正しい張力値に調整せられる。
【0013】
また、請求項3の発明による撚線機によれば、稼働開始時に、素線に付与する張力値をその素線の太さに対応して適切な値に定めることができる。
【0014】
さらに、請求項4の発明による撚線機によれば、稼働中に、素線に付与する張力値を適切な値に変更することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0016】
なお、以下、「前」とは図1、図2、図4〜図7および図11の左側を、「後」とは同図の右側を、「左」とは図2、図5〜7の上側を、「右」とは同図の下側を、「内」とは装置の中心線側を、「外」とはその反対側をそれぞれいうものとする。
【0017】
図1〜図5、図9および図10は、撚線機(A)を示すものである。同図の撚線機(A)は、2度撚集合機であって、クレードル(1)に着脱自在に装着せられた並列状の7本の銅の素線(W1)を供給する素線供給ボビン(2)と、クレードル(1)の周囲を回転せしめられる弓形フライヤ(3)と、弓形フライヤ(3)の一端が第1フライヤ取り付け部材(4)を介して取り付けられかつ周壁に横長孔を有する第1中空水平主軸(5)と、弓形フライヤ(3)の他端が第2フライヤ取り付け部材(6)を介して取り付けられかつ周壁に横長孔を有する第2中空水平主軸(7)と、一部が横長孔より中空部内にはめ入れられて第1中空水平主軸(5)に取り付けられ7本の素線(W1)を中空部および横長孔を通して弓形フライヤ(3)に案内するとともに、弓形フライヤ(3)の回転にともなって7本の素線(W1)に1度目の撚を与えて1度撚線(W2)となす第1撚付与兼ガイドローラ(8)と、一部が横長孔より中空部内にはめ入れられて第2中空水平主軸(7)に取り付けられ1度撚線(W2)を横長孔および中空部を通して第2中空水平主軸(7)の前方に配置せられたキヤプスタン(a)(図11参照)に案内するとともに弓形フライヤ(3)の回転にともなって1度撚線(W2)に2度目の撚を与えて所定の撚線(T1)となす第2撚付与兼ガイドローラ(9)と、素線供給ボビン(2)から繰り出される素線(W1)の張力を調整する素線張力調整装置(10)とを備えているものである。
【0018】
図1〜図3に示されているように、素線供給ボビン(2)は、クレードル(1)の左右側枠の下端に渡し止められた水平板(52)の下面に取り付けられたインバータ制御のブレーキ付き可変速モータ(11)により伝動手段を介して駆動せられる。伝動手段は、モータ(11)の出力軸(12)に取り付けられた第1プーリ(13)と、クレードル(1)の左右側枠に回転自在に渡し止められている軸(14)の左寄りに取り付けられた第2プーリ(15)と、第1プーリ(13)と第2プーリ(15)に掛け渡された第1べルト(16)と、同軸(14)の右寄りに取り付けられた第3プーリ(17)と、クレードル(1)の左右側枠に貫通状に固定せられた雌ねじ筒(18)の内方突出端部にベアリングを介して取り付けられたタイミングプーリ(20)と、第3プーリ(17)からタイミングプーリ(20)に掛け渡された第2べルト(21)と、外面にタイミングプーリ(20)にあけられた連結孔(22)に浅く差し込まれている連結ピン(23)および内面中央に素線供給ボビン(2)の中心孔の開口端に差し込まれるピントル(24)を有する回転部材(25)よりなる。素線供給ボビン(2)は、クレードル(1)に着脱自在であり、ボビン着脱装置により着脱せられる。ボビン着脱装置は、クレードル(1)の左右側枠に、両端部が左右側枠から突出するように回転自在に渡し止められかつ右端に着脱自在なラチエットハンドル嵌め止め用六角部(26)を有する軸(27)の両端に取り付けられた第1スプロケットホイール(28)と、雌ねじ筒(18)にねじ込まれている雄ねじ筒(29)の外端部に取り付けられた第2スプロケットホイール(30)と、第1スプロケットホイール(28)と第2スプロケットホイール(30)とに掛け渡されたエンドレスチエーン(31)と、雄ねじ筒(29)にベアリングを介して挿入せられかつ内端が回転部材(25)に連結せられた中心軸(32)よりなる。右側の雌ねじ筒(18)および雄ねじ筒(29)は、左側の雌ねじ筒(18)および雄ねじ筒(29)とねじ方向が逆となされている。素線供給ボビン(2)をクレードル(1)に装着するさい、第1スプロケットホイール(28)と第2スプロケットホイール(30)とは、図2の鎖線位置にある。軸(27)の六角部(26)にラチエットハンドルを嵌め、軸(27)を手動回転すると、
左右の雄ねじ筒(29)は、上記スプロケット・チエーン伝動手段を介して回転しながら内方へねじ送られる。その結果、回転部材(25)も内方へ前進し、素線供給ボビン(2)の中心孔の開口端にピントル(24)が差し込まれる。回転部材(25)の前進限において、これに設けられたキャリヤピン(図示略)が素線供給ボビン(2)のフランジ外面にあけられた孔(図示略)にはまり込み、素線供給ボビン(2)がクレードル(1)に装着せられる。キャリヤピンは、回転部材(25)の内面偏心位置に半径方向にのびるように設けられた長孔に回転部材(25)の内面と面一に嵌め込まれかつばねにより素線供給ボビン(2)側に付勢せられた揺動片(図示略)に設けられており、ねじ送りによる回転部材(25)の最後の回転のさい、揺動片が外側に傾斜しフランジ外面を滑動していたキャリヤピンがフランジの孔位置にくると、ばね力により孔に自動的に嵌め込まれる。これにより、タイミングプーリ(20)に伝達せられるモータ(11)の回転駆動力は、タイミングプーリ(20)から連結ピン(23)を介して回転部材(25)に、そして回転部材(25)からキャリヤピンを介して素線供給ボビン(2)に伝達せられる。軸(27)を逆転すると、素線供給ボビン(2)の中心孔の開口端からピントル(24)が抜け、素線供給ボビン(2)はクレードル(1)から離脱する。このさい連結ピン(23)はタイミングプーリ(20)の連結孔(22)に深く差し込まれ、回転部材(25)の外方への後退に支障がないようになされている。また、第1スプロケットホイール(28)は、第2スプロケットホイール(30)の左右方向の移動に合わせて左右方向に移動しうるように、軸(27)にキー止めされている。
【0019】
素線張力調整装置(10)の詳細は、図3〜図5に示されている。素線張力調整装置(10)は、素線供給ボビン(2)から繰り出される素線(W1)の張力を調整する張力調整ダンサーローラーと(34)、ダンサーローラー取付部材(35)に設けられかつ片方すなわち左方の側縁が前から後にかけて内方に傾斜した傾斜面(36)となされている、平面からみて前後方向に長いほぼ長方形の板状移動片(37)と、移動片(37)の傾斜面(36)のあらかじめ定められた基準位置に対向状にのぞませられた傾斜面(36)との間の間隙変化検出手段(38)と、ダンサーローラー(34)をこれに掛け渡された素線(W1)の張力に逆らう方向に付勢するばね(39)とよりなる。図4および図5において、ダンサーローラー(34)の実線位置は、撚線機(A)の非稼働時における素線(W1)に張力が加わっていない後退限を、鎖線位置は、撚線機(A)の稼働時において素線(W1)に張力が最大に加わった前進限をそれぞれ示す。撚線機(A)の稼働時において、移動片(37)と一体のダンサーローラー(34)は、常態で実線位置と鎖線位置の中間所定位置にあり、これに対応する間隙変化検出手段(38)と傾斜面(36)との間隙(S)が基準間隙となされる。間隙変化検出手段(38)と傾斜面(36)との間隙(S)が基準間隙より大きくなるということは、素線(W1)の張力が大きすぎて線伸びや断線が発生することを意味するので、モータ(11)の回転をより速くする必要があり、逆に、間隙(S)が基準間隙より小さくなるということは、素線(W1)の張力が小さすぎ、撚があまくなることを意味するので、モータ(11)の回転をより遅くする必要がある。間隙変化検出手段(38)は、間隙(S)の変化に応じて電圧が変化し、電圧変化信号によりモータ(11)の回転速度を制御するようになされている。なお、第1中空主軸(5)に引き込まれる素線(W1)の線速度は、常に一定である。
【0020】
ダンサーローラー(34)の前方には、間隔をおいてダンサーローラー(34)と対をなし、これとの間に素線(W1)が掛け渡される固定ローラー(40)が配置されている。両ローラー(34)(40)の軸は左方にのびている。ダンサーローラー(34)は、2つのV溝を有し、固定ローラー(40)は、3つのV溝を有している。ダンサーローラー取付部材(35)は、右側面からみてH形で、巾広の水平部にローラー軸が取り付けられており、前後の垂直部の上下両端に方形ブロック状左方突出部(35a)(35b)が設けられている。前側の上下左方突出部(35a)の間には、前面が上下左方突出部(35a)の前面と面一の垂直壁(35c)がこれらに連なって設けられており、移動片(37)は、前後下左方突出部(35a)(35b)の下面に固着されている。ダンサーローラー取付部材(35)の前方には、これと並んで右側面からみて縦長方形で上下端に方形ブロック状左方突出部(41a)を有する固定ローラー取付部材(41)が配置されている。ダンサーローラー取付部材(35)の前後上端左方突出部(35a)(35b)と固定ローラー取付部材(41)の上端左方突出部(41a)とに上ガイドバー(42)が、ダンサーローラー取付部材(35)の前後下端左方突出部(35a)(35b)と固定ローラー取付部材(41)の下端左方突出部(41a)とに下ガイドバー(43)がそれぞれ貫通せしめられ、両ガイドバー(42)(43)の前端は、クレードル(1)の左側枠の上端に右方突出状に設けられている台板(43)上に固定された右側面からみてL形の前支持板(44)の上端と同中程に、両ガイドバー(42)(43)の後端は、前支持板(44)と所定間隔をおいてこれと対向状に台板(43)上に固定された右側面からみて逆L形の後支持板(45)の上端と中程に、それぞれ止められている。後支持板(45)の下半には、移動片(37)の通過用右向き凹所(46)が設けられている。ばね(39)は、コイルばねであって、両ガイドバー(42)(43)の中間に配された心棒(47)に嵌められており、心棒(47)の前端は、前支持板(44)にあけられた孔(48)を貫通しかつ前支持板(44)の孔を塞ぐように前支持板(44)の前面に固着せられたばね前端受け止め板(49)に止められ、心棒(47)の後端は、ダンサーローラー取付部
材(35)の垂直壁(35c)にあけられた孔(50)を貫通して後支持板(45)に止められている。ばね(39)の後端は、ダンサーローラー取付部材(35)の垂直壁(35c)に受けられている。間隙変化検出手段(38)は、台板(43)上に固定された正面からみてL形の取付部材(51)の上端に取り付けられている。後支持板(45)の後面には、上端右側に第1ガイドローラ(52)を有する縦長板状取付部材(53)の屈曲垂直下端部(53a)が固着されている(図5では省略)。第1ガイドローラ(52)は、ダンサーローラー(34)の斜め後上方に位置しかつ内側に傾斜しており、素線供給ボビン(2)から繰り出された7本の素線(W1)がこれに掛け渡され、第1ガイドローラ(52)の前下方にある固定ローラー(40)の左側の溝に案内するものである。7本の素線(W1)は、固定ローラー(40)の左側の溝からダンサーローラー(34)の左側の溝を巡って固定ローラー(40)の真中の溝、ついでダンサーローラー(34)の右側の溝を巡って固定ローラー(40)の右側の溝に至り、後下方の後述する第2ガイドローラに案内される。なお、ダンサーローラー(34)は、2つのV溝を、固定ローラー(40)は、3つのV溝をそれぞれ有しているおり、7本の素線(W1)が固定ローラー(40)とダンサーローラー(34)に2回掛け巡らされているが、1回だけ掛け巡らしてもよい。ただ2回より1回の方が素線(W1)に対する張力の加わり具合が敏感に反応する。要するに、素線(W1)の太さと本数とにより、前記掛け巡らせ回数は適宜決定される。また、場合によっては、固定ローラー(40)はなくてもよい。この場合、第1ガイドローラ(52)は、ダンサーローラー(34)の前上方に位置せしめられる。
【0021】
図1および図2に示されているように、ダンサーローラー(34)の下方において、クレードル(1)の左右側枠の上端に横桟(54)が渡しとめられている。横桟(54)の長さの中程上面には、前横長方形ブロック(55)が固着されており、これに左右平行に後方水平突出棒(56)が設けられ、両平突出棒(56)が後横長方形ブロック(57)の前後方向にあけられた左右の貫通孔に貫通せられ、後横長方形ブロック(57)が両平突出棒(56)に前後位置調節自在に固定されている。第1中空水平主軸(5)の前端開口部には、撚口(58)が設けられている。後横長方形ブロック(57)には、円形の目板(59)の脚(60)が立てられている。目板(59)には、図10に示されているように、1本の素線用中心ガイド孔(61)があけられており、これは、撚口(58)の前方延長線上にある。目板(59)の前側には、1本の素線(W1)の周囲に撚り合わされる6本の素線(W1)を、中心ガイド孔(61)を中心として描かれる同一円周上に等間隔になるように分散せしめる6つの分散用ガイドホイール(62)が放射状に配置せられており、各ガイドホイール(62)の後部が目板(59)に放射状に設けられた切り欠き(63)にのぞんでいる。
【0022】
図1、図3および図9に示されているように、ダンサーローラー(34)と固定ローラー(40)の間において、台板(43)右端に正面からみて倒L形の取付板(64)が垂下状に固着されており、取付板(64)の右側下部に固定ローラー(40)から下方にのびた7本の素線(W1)を下側から巡らせる第2ガイドローラ(65)が、取付板(64)の右側上部に第2ガイドローラ(65)からの7本の素線(W1)を目板(59)に案内する第3ガイドローラ(66)がそれぞれ取り付けられている。第2ガイドローラ(65)は、図9に示されているように、1本の素線(W1)が入れられるV溝付き中央ローラ(65a)およびそれぞれ3本の素線(W1)が入れられるV溝付き左右ローラ(65b)の3枚重ねよりなり、中央ローラ(65a)は、取付板(64)から右側にのびた回転自在な軸(67)にキー(68)で止られてこれと一体的に回転するようになされ,左右ローラ(65b)は、同じ軸(67)にベアリング(69)を介してこれとは別個に回転するようになされている。軸(67)には、取付板(64)の左側に設けられたれた制動手段であるパーマヒストルクコントローラ(70)が関与せしめられており、キャプスタン(a)で引っ張られる撚線(T1)の中心線となる1本の素線(W1)に張力が付与せしめられるようになっている。第3ガイドローラ(65)には、3つのV溝が設けられており、真中の溝に1本の素線(W1)が入れられて目板(59)の中心ガイド孔(61)に案内せられ、両側の溝にそれぞれ3本の素線(W1)が入れられて6つの分散用ガイドホイール(62)に案内せられる。
【0023】
上記撚線機において、図8の上半に示されているように、操作盤(図示略)の内部に、線太さに比例するように決められたばねの縮み量に対応する張力値と、間隙変化検出手段より発する電圧値との関係が記憶せしめられており、稼働開始時に、使用する素線の設定張力値を操作盤により入力すると、キャプスタン(a)が低速で回転し、素線(W1)の掛けられたダンサーローラー(34)がばね(39)のばね力に抗して移動することにより、素線(W1)に張力が生じて張力値が次第に増加し、入力された設定張力値位置でダンサーローラー(34)が停止してキャプスタン(a)と素線供給ボビン(2)とが同時に回転し、設定張力値の下に素線供給ボビン(2)からの素線(W1)の繰り出しが開始せられるようになされている。前記ダンサーローラー(34)の停止時において、間隙変化検出手段(38)が移動片(37)の傾斜面(36)に対向状にのぞむ傾斜面(36)のその位置が、基準位置となされる
ダンサーローラー(34)が図5の位置から前方に移動することにより、ばね(39)が圧縮される程ばね力が大きくなり、それだけ素線(W1)の張力値が大きくなる。いま仮に、操作盤の内部に記憶せしめられているのが、太さの異なる2本の素線に対応する適切な2つの張力値であるとする。そして、細い方の素線の設定張力値を操作盤により入力すると、操作盤に入力された設定張力値が表示され、図6に示されているように、ダンサーローラー(34)が前方に移動し、細い方の素線の設定張力値に対応する位置で停止する。この位置は、間隙変化検出手段(38)が移動片(37)の傾斜面(36)に対向状にのぞむ傾斜面(36)のその位置であり、これが細い方の素線の基準位置(イ)となされる。太い方の素線の設定張力値を操作盤により入力すると、操作盤に入力された設定張力値が表示される。この場合は、図7に示されているように、ダンサーローラー(34)がさらに前方に移動し、太い方の素線の設定張力値に対応する位置で停止する。この位置は、間隙変化検出手段(38)が移動片(37)の傾斜面(36)に対向状にのぞむ傾斜面(36)のその位置であり、これが太い方の素線の基準位置(ロ)となされる。細い方の素線の場合における間隙変化検出手段(38)と基準位置(イ)との間隙(S1)より太い方の素線の場合における間隙変化検出手段(38)と基準位置(ロ)との間隙(S2)の方が大きい。
【0024】
なお、移動片(37)の前後の向きを上記実施形態と逆にし、左方の側縁を前から後にかけて外方に傾斜した傾斜面とすることができる。上記実施形態では、間隙(S)の増大に伴って間隙変化検出手段(38)より発する電圧値が大きくなれば、張力値が大きくなる関係にあったが、傾斜方向を逆にした場合、間隙(S)の減少に伴って間隙変化検出手段(38)より発する電圧値が小さくなれば、張力値が大きくなるような関係を操作盤内部に記憶させておけばよい。
【0025】
上記撚線機において、図8の下半に示されているように、稼働中に張力値を変更したい場合、変更張力値を操作盤により入力すると、入力された変更張力値と設定張力値との差が+か−かに応じて素線(W1)の掛けられたダンサーローラー(34)がばね力に抗する方向(前方)およびばね(39)により付勢せられている方向(後方)のいずれか一方に移動し、張力値が増または減に変更され、入力された変更張力位置でダンサーローラー(34)が停止し、元の速度でキャプスタン(a)と素線供給ボビン(2)とが回転し、変更張力値の下に素線供給ボビン(2)からの素線(W1)の繰り出しが継続せられるようになされている。前記ダンサーローラー(34)の移動後において、間隙変化検出手段(34)が移動片(37)の傾斜面(36)に対向状にのぞむ傾斜面(36)のその位置が、張力値変更後の基準位置となされる。
【0026】
図11は、本発明の撚線機に合成樹脂押出成形機を組み合わせ、本発明の撚線機により製造された撚線に合成樹脂を被覆し、合成樹脂被覆撚線を製造する工程を示す全体の概略説明ブロック図で、同図に示されているように、キャプスタン(a)を前側に備え複数の素線を撚り合わせて撚線となす撚線機(A)で製造された撚線(T1)が、撚線機(A)から引き続き合成樹脂押出成形機(B)に供給せられて撚線(T1)に合成樹脂が被覆せられ、合成樹脂が被覆された撚線(T2)(図12参照)が合成樹脂押出成形機(B)の前側に配置せられた巻き取りリール(C)により巻き取られるようになされているものである。撚線機(A)のキャプスタン(a)と合成樹脂成形押出機(B)との間には、貯線装置(D)が介在されている。キャプスタン(a)は、前後2つのドラムからなり、撚線(T1)を撚線機(A)の本体から引き出すとともに、ガイドローラ(図示略)を介して合成樹脂押出成形機(B)の方に送るようになっている。貯線装置(D)は、撚線機(A)のキャプスタン(a)から送り出される撚線(T1)と引き続き合成樹脂成形押出機(B)に引き込まれる線撚(T1)との線速度差を吸収するために、撚線機(A)のキャプスタン(a)と合成樹脂成形押出機(B)との間に撚線(T1)をいったん貯える装置である。
【0027】
本発明の撚線機によれば、撚線機(A)の本体内に素線供給ボビン(2)があり、素線供給ボビン(2)から繰り出された素線(W1)を弓形フライヤ(3)の回転により2度撚せられて撚線(T1)となし、これを撚線機(A)の前側にあるキャプスタン(a)により撚線機(A)の本体から引き出すものであるから、撚線(T1)に引き続いてなんらかの2次加工を施したい場合は、上記合成樹脂成形押出機(B)に限らず、他の2次加工用装置を撚線機(A)に組み合わせればよい。他の2次加工用装置の具体例としては、アルミニウム管外被装置、テープ巻機および編組機等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】撚線機の右側面図である。
【図2】撚線機の一部を切り欠いた平面図である。
【図3】図1のIII―III線矢視図である。
【図4】素線張力調整装置の拡大右側面図である。
【図5】素線張力調整装置の拡大平面図である。
【図6】細い方の素線の設定張力値を操作盤により入力した場合における素線張力調整装置の拡大平面図である。
【図7】太い方の素線の設定張力値を操作盤により入力した場合における素線張力調整装置の拡大平面図である。
【図8】稼働開始時に、使用する素線の設定張力値を操作盤により入力したさい素線が設定張力値になるまでの作動順序、さらに、稼働中に張力値を変更したい場合、変更張力値を操作盤により入力したさい素線が変更張力値になるまでの作動順序を示すフローチャートである。
【図9】第2および第3ガイドローラ部分の拡大背面図で、第2ガイドローラのみ垂直断面が示されている。
【図10】目板部分の拡大背面図である。
【図11】本発明の撚線機に合成樹脂押出機を組み合わせた状態を示す概略説明ブロック図である。
【図12】合成樹脂被覆撚線の拡大斜視断面図である。
【符号の説明】
【0029】
A 撚線機
a キャプスタン
W1 素線
W2 1度撚線
T1 撚線
1 クレードル
2 素線供給ボビン
3 弓形フライヤ
4 第1フライヤ取付部材
5 弓形フライヤ
6 第2フライヤ取付部材
7 第2中空水平主軸
8 第1撚付与兼ガイドローラ
9 第2撚付与兼ガイドローラ
10 素線張力調整装置
34 ダンサーローラ
35 ダンサーローラ取付部材
36 移動片の傾斜面
37 移動片
38 間隙変化検出手段
39 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレードルに着脱自在に装着せられた複数の素線を供給する素線供給ボビンと、素線供給ボビンを回転せしめるインバータ制御の可変速モータと、クレードルの周囲を回転せしめられる弓形フライヤと、弓形フライヤの一端が第1フライヤ取付部材を介して取り付けられかつ周壁に横長孔を有する第1中空水平主軸と、弓形フライヤの他端が第2フライヤ取付部材を介して取り付けられかつ周壁に横長孔を有する第2中空水平主軸と、一部が横長孔より中空部内にはめ入れられて第1中空水平主軸に取り付けられ複数の素線を中空部および横長孔を通して弓形フライヤに案内するとともに弓形フライヤの回転にともなって複数の素線に1度目の撚を与える第1撚付与兼ガイドローラと、一部が横長孔より中空部内にはめ入れられて第2中空水平主軸に取り付けられ1度撚線を横長孔および中空部を通して第2中空水平主軸の前方に配置せられたキヤプスタンに案内するとともに弓形フライヤの回転にともなって1度撚線に2度目の撚を与える第2撚付与兼ガイドローラと、素線供給ボビンから繰り出される素線の張力を調整する素線張力調整装置を備えている撚線機。
【請求項2】
素線張力調整装置が、素線供給ボビンから繰り出される素線の張力を調整する張力調整ダンサーローラーと、ダンサーローラー取付部材に設けられかつ片方の縁が長さ方向に傾斜している傾斜面となされている板状移動片と、移動片の傾斜面の基準位置に対向状にのぞませられた傾斜面との間の間隙変化検出手段と、ダンサーローラーをこれに掛け渡された素線の張力に逆らう方向に付勢するばねとよりなり、間隙変化検出手段は、間隙の変化に応じて電圧が変化し、電圧変化信号によりモータの回転速度を制御するようになされており、基準位置が移動片の傾斜面のうちの素線に付与せられる張力値に対応する位置である請求項1記載の撚線機。
【請求項3】
操作盤の内部に、線太さに比例するように決められたばねの縮み量に対応する張力値と、間隙変化検出手段より発する電圧値との関係が記憶せしめられており、稼働開始時に、使用する素線の設定張力値を操作盤により入力すると、キャプスタンが低速で回転し、素線の掛けられたダンサーローラーがばねに抗して移動することにより、素線に張力が生じて張力値が次第に増加し、入力された設定張力値位置でダンサーローラーが停止してキャプスタンと素線供給ボビンとが同時に回転し、設定張力値の下に素線供給ボビンからの素線の繰り出しが開始せられるようになされており、前記ダンサーローラー停止時において、間隙変化検出手段が移動片の傾斜面に対向状にのぞむ傾斜面のその位置が、基準位置となされる請求項2記載の撚線機。
【請求項4】
稼働中に張力値を変更したい場合、変更張力値を操作盤により入力すると、入力された変更張力値と設定張力値との差が+か−かに応じて素線供給ボビンの回転速度が遅くなるようにまたは速くなるように変更され、素線の掛けられたダンサーローラーがばね力に抗する方向およびばねにより付勢せられている方向のいずれか一方に移動し、張力値が増または減に変更され、変更張力位置でダンサーローラーが停止し、元の速度でキャプスタンと素線供給ボビンとが回転し、変更張力値の下に素線供給ボビンからの素線の繰り出しが継続せられるようになされており、前記ダンサーローラーの移動後において、間隙変化検出手段が移動片の傾斜面に対向状にのぞむ傾斜面のその位置が、基準位置となされる請求項3記載の撚線機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−118090(P2006−118090A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306924(P2004−306924)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000253237)濱名鐵工株式会社 (2)
【出願人】(504392289)株式会社西田電機製作所 (1)
【Fターム(参考)】