説明

撥水処理剤および撥水処理方法

【課題】従来の技術ではなし得なかったレベルの転落角性能を有する撥水処理剤および撥水処理方法を提供すること。
【解決手段】アルキルクロロシランおよび溶剤を配合して、撥水処理剤を得る。この撥水処理剤によれば、簡便な方法で、基材に、良好な耐摩耗性を確保しながら、高い接触角および低い転落角を同時に付与することができる。また、基材に、均一な撥水性の薄膜を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水処理剤および撥水処理方法、詳しくは、基材の撥水処理に用いられる撥水処理剤および撥水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス用撥水処理剤として、例えば、ジメチルシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)を含有する撥水処理剤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、フッ素シラン(CF(CFCHCHSi(OCHなど)を含有する撥水処理剤が提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【0004】
また、アルキルアルコキシシラン(ヘキシルトリメトキシシランなど)を含有する撥水処理剤が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭50−15473号公報
【特許文献2】特開2001−26464号公報
【特許文献3】特開2003−34553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1に記載のジメチルシリコーンオイルを含有する撥水処理剤は、転落角が比較的優れる一方、耐久性が低いという不具合がある。
【0007】
また、特許文献2に記載のフッ素シランを含有する撥水処理剤は、耐久性が優れる一方、転落角が良好でないという不具合がある。
【0008】
さらに、特許文献3に記載のアルキルアルコキシシランを含有する撥水処理剤は、上記したジメチルシリコーンオイルを含有する撥水処理剤と比較して耐久性に優れる一方、転落角が良好でないという不具合がある。
【0009】
ガラス用撥水処理剤には、転落角性能が優れていること(つまり、ガラスに対して水滴が動き始める時の角度、つまり、転落角が低いこと)が重要であり、これが、撥水性に大きな影響を与える。
【0010】
本発明の目的は、従来の技術ではなし得なかったレベルの転落角性能を有する撥水処理剤および撥水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、転落角性能に優れた撥水処理剤を開発するため、鋭意研究を重ねた結果、アルキルクロロシランを用いることにより、上記した目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の撥水処理剤は、アルキルクロロシランおよび溶剤を含有することを特徴としている。
【0013】
また、本発明の撥水処理剤では、前記アルキルクロロシランは、下記一般式(1)で示されることが好適である。
【0014】
4−(m+n)SiRCl (1)
(一般式(1)中、Rは炭素数6〜18のアルキル基を示し、Rは、水素原子、メチルまたはエチルを示す。また、mは0〜2の整数を示し、nは1〜3の整数を示し、mおよびnは、(m+n)≦3の数値範囲を示す。)
また、本発明の撥水処理剤では、前記一般式(1)中、Rは炭素数8〜12のアルキル基を示し、mは0であり、nは3であることが好適である。
【0015】
また、本発明の撥水処理剤では、前記溶剤が、炭化水素系溶剤および/またはエステル系溶剤であることが好適である。
【0016】
また、本発明の撥水処理方法は、上記した撥水処理剤を、基材に塗布し、前記基材を拭き上げる工程と、前記基材を洗浄する工程とを備えていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の撥水処理方法では、前記基材が、ガラスからなることが好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の撥水処理剤および撥水処理方法によれば、簡便な方法で、基材に、良好な耐摩耗性を確保しながら、高い接触角および低い転落角を同時に付与できる。また、基材に、均一な撥水性の薄膜を形成することができる。
【0019】
そのため、本発明の撥水処理剤および撥水処理方法によれば、長期にわたり接触角および転落角などの撥水性を発揮する薄膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の撥水処理剤は、アルキルクロロシランおよび溶剤を含んでいる。
【0021】
本発明において、アルキルクロロシランは、撥水性の薄膜(塗膜)を形成する撥水成分であって、例えば、下記一般式(1)で示されるオルガノクロロシランが挙げられる。
【0022】
4−(m+n)SiRCl (1)
(一般式(1)中、Rは炭素数6〜18のアルキル基を示し、Rは、水素原子、メチルまたはエチルを示す。また、mは0〜2の整数を示し、nは1〜3の整数を示し、mおよびnは、(m+n)≦3の数値範囲を示す。)
一般式(1)において、Rは、例えば、長鎖アルキル基であって、その炭素数は、例えば、6〜18、好ましくは、8〜12である。Rとしては、例えば、ヘキシル、へプチル、オクチル、2−エチルへキシル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルなどの直鎖または分岐鎖の炭素数6〜18のアルキル基である。好ましくは、アルキルクロロシランとして、直鎖の炭素数8〜12のアルキル基が挙げられる。
【0023】
一般式(1)において、mは、好ましくは、0または2、さらに好ましくは、0である。
【0024】
また、一般式(1)において、nは、好ましくは、1または3、さらに好ましくは、3である。
【0025】
これにより、4−(m+n)は、例えば、1〜3の整数を示し、好ましくは、1である。
【0026】
アルキルクロロシランとしては、例えば、トリクロロシラン類、ジクロロシラン類、モノクロロシラン類などが挙げられる。
【0027】
トリクロロシラン類としては、例えば、モノ長鎖アルキル−トリクロロシランなどが挙げられる。
【0028】
ジクロロシラン類としては、例えば、ジ長鎖アルキル−ジクロロシラン、モノ長鎖アルキル−ジクロロシラン、モノ長鎖アルキルモノメチル−ジクロロシラン、モノ長鎖アルキルモノエチル−ジクロロシランなどが挙げられる。
【0029】
モノクロロシラン類としては、例えば、トリ長鎖アルキル−モノクロロシラン、ジ長鎖アルキル−モノクロロシラン、ジ長鎖アルキルモノメチル−モノクロロシラン、ジ長鎖アルキルモノエチル−モノクロロシラン、モノ長鎖アルキル−モノクロロシラン、モノ長鎖アルキルモノメチル−モノクロロシラン、モノ長鎖アルキルモノエチル−モノクロロシラン、モノ長鎖アルキルジメチル−モノクロロシラン、モノ長鎖アルキルジエチル−モノクロロシランなどが挙げられる。
【0030】
より具体的には、アルキルクロロシランとしては、例えば、トリクロロシラン類(具体的には、モノ長鎖アルキル−トリクロロシラン)では、ヘキシルトリクロロシラン、へプチルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、2−エチルへキシルトリクロロシラン、イソオクチルトリクロロシラン、ノニルトリクロロシラン、イソノニルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、イソデシルトリクロロシラン、ウンデシルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、トリデシルトリクロロシラン、テトラデシルトリクロロシラン、ペンタデシルトリクロロシラン、ヘキサデシルトリクロロシラン、ヘプタデシルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラントリクロロシランなどが挙げられる。
【0031】
また、ジクロロシラン類としては、ジ長鎖アルキル−ジクロロシランでは、例えば、ジオクチルジクロロシラン、ジデシルジクロロシラン、ジドデシルジクロロシランなどが挙げられ、モノ長鎖アルキル−ジクロロシランでは、例えば、オクチルジクロロシラン、デシルジクロロシラン、ドデシルジクロロシランなどが挙げられ、モノ長鎖アルキルモノメチル−ジクロロシランでは、例えば、オクチルメチルジクロロシラン、デシルメチルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシランなどが挙げられ、モノ長鎖アルキルモノエチル−ジクロロシランでは、例えば、オクチルエチルジクロロシラン、デシルエチルジクロロシラン、ドデシルエチルジクロロシランなどが挙げられる。
【0032】
また、モノクロロシラン類としては、トリ長鎖アルキル−モノクロロシランでは、例えば、トリデシルモノクロロシランなどが挙げられ、ジ長鎖アルキル−モノクロロシランでは、例えば、ジデシルモノクロロシランなどが挙げられ、ジ長鎖アルキルモノメチル−モノクロロシランでは、例えば、ジデシルメチルモノクロロシランなどが挙げられ、ジ長鎖アルキルモノエチル−モノクロロシランでは、例えば、ジデシルエチルモノクロロシランなどが挙げられ、モノ長鎖アルキル−モノクロロシランでは、例えば、デシルモノクロロシランなどが挙げられ、モノ長鎖アルキルモノメチル−モノクロロシランでは、例えば、デシルメチルモノクロロシランなどが挙げられ、モノ長鎖アルキルモノエチル−モノクロロシランでは、例えば、デシルエチルモノクロロシランなどが挙げられ、モノ長鎖アルキルジメチル−モノクロロシランでは、例えば、デシルジメチルモノクロロシランなどが挙げられ、モノ長鎖アルキルジエチル−モノクロロシランでは、例えば、デシルジエチルモノクロロシランなどが挙げられる。
【0033】
これら、アルキルクロロシランのうち、好ましくは、トリクロロシラン類が挙げられ、さらに好ましくは、モノ長鎖アルキル−トリクロロシランが挙げられる。
【0034】
これらアルキルクロロシランは、単独使用または併用することができる。
【0035】
溶剤は、アルキルクロロシランを溶解または分散させることができ、揮発性を有するものである。
【0036】
このような溶剤の沸点は、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下、通常、40℃以上、例えば、60℃以上である。溶剤の沸点が上記範囲を超える場合には、塗布から拭き上げまでの間に、溶剤が十分に揮発できず、アルキルクロロシランの反応が十分に進行しない場合がある。また、良好な撥水性を基材に付与できない場合がある。
【0037】
このような溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤や、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤などの炭化水素系溶剤、例えば、ミネラルスピリットなどの石油系溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶剤、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)などのグリコール系溶剤、例えば、揮発性ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン系溶剤などが挙げられる。好ましくは、炭化水素系溶剤やエステル系溶剤が挙げられる。炭化水素系溶剤やエステル系溶剤であれば、長期にわたって保存した撥水処理剤を用いて基材に優れた撥水性を付与できる場合がある。
【0038】
これら溶剤は、単独使用または併用することができる。
【0039】
溶剤の配合割合は、撥水処理剤の用途および目的により適宜選択され、例えば、アルキルクロロシラン100重量部に対して、例えば、100〜1000000重量部、好ましくは、1000〜100000重量部である。
【0040】
また、撥水処理剤には、通常添加される、例えば、粘度調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防錆剤、香料、着色剤などの添加剤を適宜配合することができる。
【0041】
そして、本発明の撥水処理剤は、アルキルクロロシランおよび溶剤、さらには、必要により添加剤を配合して、これらを均一に混合して、アルキルクロロシランを溶剤に分散または溶解させることにより、調製することができる。
【0042】
そして、上記した本発明の撥水処理剤を用いる基材を撥水処理する、本発明の撥水処理方法では、上記により得られる本発明の撥水処理剤を基材に塗布して拭き上げ、その後、基材を洗浄する。
【0043】
基材としては、水に濡れたときに撥水性が要求されるものであれば特に限定されず、例えば、雨水のかかる屋外で用いられる部材、例えば、建造物の壁、窓(窓ガラス)、屋根、自動車のサイドミラー、路上のカーブミラーなどのミラー、自動車のフロントガラスなどが挙げられる。好ましくは、ガラスから形成される、ミラーやガラス板(窓ガラス、フロントガラスなど)が挙げられる。基材がガラスから形成されるミラーやガラス板である場合には、撥水処理剤のアルキルクロロシランと良好に反応して、撥水性および耐久性を向上させることができる場合がある。
【0044】
撥水処理剤を基材に塗布するには、例えば、撥水処理剤をティッシュペーパーやスポンジなどの吸収材料に含浸させて、その吸収材料で、基材を擦る。なお、刷毛塗り、スプレーコーティングなどを用いることもできる
基材の表面を拭き上げるには、例えば、撥水処理剤の基材への塗布後に、清浄なタオルなどの布で、余剰の撥水処理剤を拭き取る。
【0045】
その後、拭き上げられた基材を洗浄する。
【0046】
基材を洗浄するには、特に限定されず、例えば、基材に、界面活性剤および水を含む洗浄液または水が溜められた容器(バケツ)から洗浄液または水をかけて、基材を洗い流す方法、洗浄液または水を含浸させた吸収材料で基材を擦る方法、または、洗浄液または水を管(ホースなど)からそのまま噴射する方法、さらには、洗浄液または水をシャワー状や霧状で連続的に噴霧(シャワーリング)する方法などが用いられる。あるいは、洗浄液または水を用いることなく、基材を乾拭きし、その後、濡れタオルで拭き取る(水拭き)方法を用いることもできる。
【0047】
そして、本発明の撥水処理剤は、アルキルクロロシランおよび溶剤を含有しており、この撥水処理剤を用いる撥水処理方法では、この撥水処理剤を、基材に塗布し、基材を拭き上げ、次いで、基材を洗浄する。そのため、加熱する工程を要しないため、簡便な方法で、基材に優れた撥水性を付与することができる。また、基材に、高い接触角および低い転落角を同時に付与することができる。
【0048】
しかも、基材の表面に形成される撥水性の薄膜は、良好な耐摩耗性を確保して、長期にわたり接触角および転落角などを発揮することができる。
【0049】
なお、本発明の撥水処理剤を用いて基材を処理する方法は、上記した撥水処理方法、つまり、撥水処理剤を基材に塗布して拭き上げる工程と、基材を洗浄する工程とを備える方法に限定されない。本発明の撥水処理剤を用いて基材を処理する方法としては、例えば、本発明の撥水処理剤を基材に塗布して拭き上げる工程のみを備えていてもよい。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これら実施例および比較例に何ら限定されるものではない。
【0051】
(撥水処理)
実施例1
デシルトリクロロシラン(C1021SiCl)3部およびイソオクタン(沸点99℃)97部を配合して、均一に混合することにより、撥水処理剤を調製した。
【0052】
次いで、撥水処理剤を、ティッシュペーパーに含浸させ、次いで、このティッシュペーパーで、ガラス板(サイズ70×150mm)を擦ってガラス板の表面に撥水処理剤を塗布した。続いて、5分経過後に、清浄なタオルでガラス板の表面を拭き上げた。
【0053】
その後、ガラス板を、常温で30分放置した。その後、5%トリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム水溶液10gを含浸させたスポンジでガラス板の表面を洗浄し、次いで、水1000gで濯ぐことにより、ガラス板を撥水処理した。
【0054】
実施例2
実施例1と同様の処方により、撥水処理剤を調製した。
【0055】
次いで、ガラス板の表面に撥水処理剤を塗布し、続いて、5分経過後に、清浄なタオルでガラス板の表面を拭き上げた。
【0056】
その後、ガラス板を、常温で30分放置した。その後、ガラス板の表面を、水を含浸させたスポンジで洗浄することにより、ガラス板を撥水処理した。
【0057】
実施例3
イソオクタン97部に代えて、酢酸エチル97部を用いた以外は、実施例2と同様の処方により撥水処理剤を調製し、実施例2と同様にして、ガラス板を撥水処理した。
【0058】
実施例4
実施例1と同様の処方により、撥水処理剤を調製した。
【0059】
次いで、撥水処理剤を、ティッシュペーパーに含浸させ、次いで、このティッシュペーパーで、ガラス板(サイズ70×150mm)を擦ってガラス板の表面に撥水処理剤を塗布した。続いて、5分経過後に、清浄なタオルでガラス板の表面を拭き上げた。
【0060】
これにより、ガラス板を撥水処理した。
【0061】
比較例1
デシルトリクロロシラン(C1021SiCl)3部に代えて、デシルトリメトキシシラン(C1021Si(OCH)3部を用い、イソオクタン97部に代えて、イソプロピルアルコール97部を用い、さらに、塩酸2部を加えた以外は、実施例1と同様の処方により撥水処理剤を調製し、実施例1と同様にして、ガラス板を撥水処理した。
【0062】
比較例2
比較例1と同様の処方により、撥水処理剤を調製した。
【0063】
次いで、撥水処理剤を、ティッシュペーパーに含浸させ、次いで、このティッシュペーパーで、ガラス板(サイズ70×150mm)を擦ってガラス板の表面に撥水処理剤を塗布した。続いて、5分経過後に、清浄なタオルでガラス板の表面を拭き上げた。
【0064】
これにより、ガラス板を撥水処理した。
【0065】
比較例3
デシルトリメトキシシラン(C1021Si(OCH)3部に代えて、フッ素シラン(フルオロアルキルクロロシラン:CF(CFCHCHSiCl)3部を用い、イソオクタン97部に代えてフッ素系溶剤(THINNERS S−100、信越化学社製)97部を用いた以外は、比較例2と同様の処方により撥水処理剤を調製し、比較例2と同様にして、ガラス板を撥水処理した。
【0066】
比較例4
デシルトリメトキシシラン(C1021Si(OCH)3部に代えて、ジメチルシリコーン(KF−96、信越化学社製)10部を用い、イソオクタン97部に代えて、イソプロピルアルコール89部を用い、塩酸2部に代えて、硫酸1部を用いた以外は、比較例2と同様の処方により撥水処理剤を調製し、比較例2と同様にして、ガラス板を撥水処理した。
【0067】
比較例5
デシルトリメトキシシラン(C1021Si(OCH)3部に代えて、フッ素シラン(フルオロアルキルアルコキシシラン:CF(CFCHCHSi(OCH)3部を用い、イソプロピルアルコール97部に代えて、イソプロピルアルコール89部を用いた以外は、比較例2と同様の処方により撥水処理剤を調製し、比較例2と同様にして、ガラス板を撥水処理した。
【0068】
(ガラス板の評価)
各実施例および各比較例で撥水処理したガラス板を以下の各測定により評価した。その結果を表1に示す。
1) 接触角
ガラス板を接触角計(型番FTA125、FTA社製)にセットした後、水滴4μLの接触角を測定した。
2) 転落角
ガラス板を接触角計(型番FTA125、FTA社製)にセットした後、水滴30μLが動き始めた時の角度、すなわち、転落角を測定した。
3) 耐磨耗性
液体コンパウンド(セラミックコンパウンド配合品、商品名:油膜ねこそぎクリーナー、ソフト99コーポレーション(株)製)10gをスポンジ(サイズ60mm×130mm、厚み30mm)に含ませ、これを13g/cmの荷重をかけながら、50往復擦った。その後、摺擦後のガラス板を接触角計(型番FTA125、FTA社製)にセットした後、水滴4μLの接触角を測定することにより、耐摩耗性を評価した。
4) ガラス板の視認性(薄膜の均一性)
ガラス板に太陽光および蛍光灯の光をガラス板に照射し、ガラス板からの反射光を、ガラス板に対して90度、60度および20度の角度からの目視によって、観察した。
【0069】
○:太陽光および蛍光灯の光において、ガラス板に対して90度の角度で観察したところ、ガラス板からの反射光がなく、ガラス板が透明であることを確認し、視認性が良好であることをそれぞれ確認した。また、ガラス板に対して60度および20度の角度で観察した場合においても、同様であった。
【0070】
△:太陽光および蛍光灯の光において、ガラス板に対して90度の観察でガラス板を観察したところ、ガラス板からの乱反射(ギラツキ)をわずかに確認し、視認性がわずかに低いことをそれぞれ確認した。また、ガラス板に対して60度および20度の角度で観察した場合においても、同様であった。
【0071】
×:太陽光および蛍光灯の光において、ガラス板に対して90度の観察したところ、ガラス板からの反射光(ギラツキ)を確認し、視認性が著しく低いことをそれぞれ確認した。また、ガラス板に対して60度および20度の角度で観察した場合においても、同様であった。
【0072】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルクロロシランおよび溶剤を含有することを特徴とする、撥水処理剤。
【請求項2】
前記アルキルクロロシランは、下記一般式(1)で示されることを特徴とする、請求項1に記載の撥水処理剤。
4−(m+n)SiRCl (1)
(一般式(1)中、Rは炭素数6〜18のアルキル基を示し、Rは、水素原子、メチルまたはエチルを示す。また、mは0〜2の整数を示し、nは1〜3の整数を示し、mおよびnは、(m+n)≦3の数値範囲を示す。)
【請求項3】
前記一般式(1)中、Rは炭素数8〜12のアルキル基を示し、mは0であり、nは3であることを特徴とする、請求項2に記載の撥水処理剤。
【請求項4】
前記溶剤が、炭化水素系溶剤および/またはエステル系溶剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の撥水処理剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の撥水処理剤を、基材に塗布し、前記基材を拭き上げる工程と、
前記基材を洗浄する工程と
を備えていることを特徴とする、撥水処理方法。
【請求項6】
前記基材が、ガラスからなることを特徴とする、請求項5に記載の撥水処理方法。

【公開番号】特開2010−159338(P2010−159338A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1811(P2009−1811)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000227331)株式会社ソフト99コーポレーション (84)
【Fターム(参考)】