説明

撥水性布帛

【課題】耐久性に優れた撥水性ナイロン11繊維布帛を提供する。
【解決手段】ナイロン11繊維を主体とする布帛に、フッ素系化合物及び架橋剤を含有する溶液を接触処理し、次いで熱処理を行なう撥水性布帛の製造方法であって、前記接触処理前又は前記接触処理と同時に、前記布帛に浸透剤を接触処理することにより、磨耗耐久性試験後の布帛のJISL1092(スプレー法)による撥水度が4級以上である撥水性布帛を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性に優れた撥水性能を有するナイロン11繊維布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン繊維からなる布帛は、一般に柔軟性や染色性に優れており、汎用素材として衣料分野、産業資材分野等に幅広く用いられている。しかしながら、近年、地球環境汚染の問題が深刻になってきており、石油由来のナイロン繊維であるナイロン6やナイロン66は、徐々に敬遠される傾向にある。
【0003】
一方、消費者ニーズの多様化から、さらなる付加価値を求めたナイロン繊維の研究も進められており、中でも、ナイロン11繊維は、ナイロン6繊維やナイロン66繊維に比べ密度が小さく、耐摩耗性、耐化学薬品性、耐屈曲疲労性などにも優れることから、燃料チューブやシューソールなどの産業資材用途への採用が進んでいる。
【0004】
ナイロン11繊維は、ヒマ(トウゴマ)の種子から抽出されたヒマシ油から得た11ーアミノウンデカン酸を原料として重縮合反応により得られるものであるため、いわゆる、植物を原料とするバイオマスである。このため、ナイロン11繊維を用いた素材は、上記環境意識の向上と合わせて、注目を浴びてきている。
【0005】
従来から、各種繊維製品の撥水加工として、最終仕上げ工程にて、フッ素系撥水剤やシリコーン系撥水剤を各種繊維製品に含浸後、乾燥熱処理工程により固定化を行う方法が一般的に行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、ナイロン11繊維からなる布帛に上記の従来の撥水加工処理を行なっても、撥水性能の洗濯耐久性や摩耗耐久性が十分に発揮されないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−137382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐久性に優れた撥水性ナイロン11繊維布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、吸水性の低いナイロン11繊維からなる布帛に対し、浸透剤を介して撥水加工を行うことにより、布帛に優れた撥水耐久性を付与できるという事実を見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)布帛100質量部に対して、フッ素系化合物0.1〜3質量部及び架橋剤0.01〜0.5質量部を含有する皮膜にて被覆されているナイロン11繊維を主体とする布帛であって、磨耗耐久性試験後の布帛のJIS L1092(スプレー法)による撥水度が4級以上であることを特徴とする撥水性布帛。
(2)ナイロン11繊維を主体とする布帛に、フッ素系化合物及び架橋剤を含有する溶液を接触処理し、次いで熱処理を行なう撥水性布帛の製造方法であって、前記接触処理前又は前記接触処理と同時に、前記布帛に浸透剤を接触処理することを特徴とする(1)記載の撥水性布帛の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐久性に優れた撥水性布帛を提供することができる。本発明の撥水性布帛は、耐久撥水性が必要とされるウィンドブレーカー、スキーウェア、フィッシングウェア、マウンテンウェア等のスポーツ衣料に好適に使用できる。さらに、スポーツ衣料以外のコート、ブルゾン等のカジュアル衣料に利用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明におけるナイロン11繊維とは、11−アミノウンデカン酸を主たる単量体として重縮合されたナイロン11を主たる成分とする繊維をいう。11−アミノウンデカン酸は、ヒマ(トウゴマ)の種子から抽出されたひまし油を元に生成されるものであるから、得られるナイロン11は植物由来成分を主たる原料とするポリマーであるといえる。
【0013】
ナイロン11繊維には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、ε−カプロラクタムやヘキサメチレンジアンモニウムアジペートといった他のポリアミド形成単量体を共重合成分として含有させてもよく、また、ナイロン6やナイロン66など他のポリアミドがブレンドされていてもよい。
【0014】
また、ナイロン11繊維には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、可塑剤、難燃剤、艶消剤、無機充填剤、補強剤、耐熱剤、着色剤、顔料などの各種添加剤を含有させてもよい。
【0015】
本発明におけるナイロン11繊維を主体とする布帛としては、ナイロン11を溶融紡糸法により繊維形状にした繊維を50%以上用いた織物、編物、不織布などが挙げられる。
【0016】
本発明におけるフッ素系化合物とは、化学構造中にポリフルオロアルキル基(以下、Rf基と略す)を含むフッ素系化合物をいい、ポリフルオロアルキル基とはアルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換された基をいう。Rf基の炭素数は2〜20が好ましく、特に6〜16が好ましい。Rf基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよく、直鎖構造が特に好ましい。分岐構造である場合には、分岐部分がRf基の末端部分に存在し、かつ、炭素数1〜4程度の短鎖であるのが好ましい。なかでもRf基は、アルキル基の水素原子がすべてフッ素原子に置換された基(すなわちパーフルオロアルキル基)が好ましい。
【0017】
フッ素系化合物は、Rf又はパーフルオロアルキル基を含有する重合体と重合可能な他の重合性単量体を公知ないしは周知の重合方法によって重合した共重合体を用いることができる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、塩化ビニル等のビニル系化合物との共重合体の形で用いても良く、アクリル系化合物、酢酸ビニル化合物、メラミン系化合物などをブレンドしたものでも用いることができる。
【0018】
中でも、環境汚染防止の観点から、フッ素系化合物中にパーフルオロオクタン酸が残留或いは経時的に生成し難いものを用いるのが好ましい。かかるフッ素系化合物としては、側鎖に炭素数1〜6パーフルオロアルキル基を有するアクリレート化合物を原料とした重合体が挙げられる。該フッ素系化合物は、通常、水溶性のエマルションの形態でフッ素系撥水撥油剤として市販されており、例えば、旭硝子株式会社製「アサヒガードAG−E500D(商品名)」「アサヒガードAG−E061(商品名)」、「アサヒガードAG−E092(商品名)」、「アサヒガードAG−E081(商品名)」、ダイキン工業株式会社製「ユニダインTG−5521(商品名)」、「ユニダインTG−5601(商品名)」などが挙げられる。
【0019】
フッ素系化合物の付着量は、布帛100質量部に対して0.1〜3質量部であり、0.3〜2.5質量部が好ましい。0.1質量部未満であると十分な撥水性能が得られず、3質量部を超えるとナイロン11繊維布帛の風合いが硬くなり好ましくない。
【0020】
本発明における架橋剤としては、架橋性を有するポリマーであれば特に限定されないが、例えば、イソシアネート基、トリアジン基、エポキシ基、シラノール基、メチロール基、オキサゾリン基などの架橋性官能基を含有する化合物が挙げられる。イソシアネート系化合物としては、加工する樹脂溶液のポットライフ及び加工安定性の観点から、イソシアネート基をアセトオキシム、フェノール、カプロラクタム等でブロックした熱解離タイプのブロックイソシアネート化合物が好ましく、具体的には、明成化学工業株式会社製「メイカネートFM−1(商品名)」、「メイカネートTP−10(商品名)」、「メイカネートWEB(商品名)」が挙げられる。また、トリアジン系化合物としては、DIC株式会社製「ベッカミンM−3(商品名)」などが挙げられる。
【0021】
架橋剤の付着量は、布帛100質量部に対して、0.01〜0.5質量部であり、0.05〜0.45質量部が好ましい。0.01質量部未満では、得られる布帛の撥水耐久性向上への寄与が少なく、0.5重量部を超えると得られる布帛の風合いや堅牢度に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0022】
本発明の撥水度は、本発明の撥水性布帛に対して、JIS L1018のA法(引張荷重、押圧荷重共に22.3N)にて500回の磨耗を行った後に、JIS L1092(スプレー法)にて求めた撥水性能をいう。
【0023】
本発明の撥水性布帛においては、前述の磨耗耐久性試験後の布帛の撥水度が、4級以上が必要であり、5級以上が好ましい。
【0024】
本発明の撥水性布帛において、磨耗耐久性試験後の布帛の撥水度が4級以上となる理由は明らかではないが、後述するように、ナイロン11繊維を主体とする布帛にフッ素系化合物及び架橋剤を含有する溶液を接触処理する撥水性布帛の製造方法において、前記接触処理前又は前記接触処理と同時に前記布帛に浸透剤を接触処理することにより、吸水性の低いナイロン11繊維の濡れ性が顕著に向上することでフッ素系化合物の布帛への浸透性が向上し、さらに浸透したフッ素系化合物を架橋剤にて固定化することにより、磨耗耐久性試験後の布帛の撥水度が、従来方法に比べ顕著に向上するものと推定される。
【0025】
本発明における50洗後の洗濯耐久性とは、JIS L−0217(103法)に準じた洗濯を連続で50回行った後、60℃で20分間のタンブラー乾燥をした後の撥水性能をJIS L1092(スプレー法)にて評価したものである。
【0026】
本発明の撥水性布帛においては、50洗後の布帛の撥水度(洗濯耐久性)が、3級以上が必要であり、4級以上が好ましく、5級がいっそう好ましい。
【0027】
本発明の撥水性布帛においては、50洗後の布帛の撥水度(洗濯耐久性)においても、従来方法による撥水処理に比べて顕著に性能が向上するものである。
【0028】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法としては、ナイロン11繊維を主体とする布帛に、フッ素系化合物及び架橋剤を含有する溶液を接触処理し、次いで熱処理を行なう撥水性布帛の製造方法であって、前記接触処理前又は前記接触処理と同時に、前記布帛に浸透剤を接触処理することにより行なうことができる。
【0029】
本発明における浸透剤とは、ナイロン11繊維へのフッ素系化合物の浸透性が向上するものであれば特に限定されないが、例えば、界面活性剤、有機溶剤が好ましい。界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のノニオン性界面活性剤、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩等のカチオン性界面活性剤、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、スルホン酸型の1−ドデカスルホン酸ナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンN−オキシド、オレイルジメチルアミンN−オキシド等の両性界面活性剤等が挙げられる。有機溶剤としては、低級アルコールが好ましく、例えば、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、グリセリンが挙げられる。
【0030】
本発明の製造方法においては、ナイロン11繊維を主体とする布帛に、フッ素系化合物及び架橋剤を含有する溶液を接触処理する前又は接触処理と同時に、前記布帛に浸透剤を接触処理することが必要である。
まず、ナイロン11繊維を主体とする布帛に、フッ素系化合物及び架橋剤を含有する溶液を接触処理する前に、前記布帛に浸透剤を接触処理する方法について説明する。
【0031】
浸透剤を接触処理する方法としては、浸漬法、パディング法、コーティング法、グラビアコーティング法、スプレー法等の公知の手段を採用しうる。具体的には、例えば、ナイロン11繊維を含む布帛を浸透剤に浸漬するなどにより接触処理した後に、マングルにて絞り、後述するフッ素系化合物及び架橋剤を含む溶液で処理を行なうか又はナイロン11繊維を含む布帛を、フッ素系化合物、架橋剤及び浸透剤を含む溶液で接触処理を行なうことができる。
【0032】
接触処理する際の浸透剤の濃度は、浸透剤として界面活性剤を用いた場合、0.05〜8g/lが好ましく、0.1〜5g/lがより好ましい。0.05g/lより少ないと浸透効果に乏しい場合があり、8g/lより多いと浸透性は良くなるが、逆に撥水性を低下させる場合がある。
有機溶剤を用いた場合、10〜150g/lが好ましく、50〜120g/lがより好ましい。10g/lより少ないと浸透効果に乏しく、150g/lより多いと浸透性は良くなるが、撥水剤の種類によっては液安定性に難点を生じやすくなる上に、作業環境や排水等の面からも好ましくない。
【0033】
該浸透剤を事前に接触処理する時間としては、接触処理する際の布帛温度、湿度などの条件などにより適宜選択されるが、例えば、1秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましく、5分以上がさらに好ましく、1時間以上がいっそう好ましい。
【0034】
該接触処理後に、撥水処理を行なう方法としては、布帛100質量部に対してフッ素系化合物が0.1〜3質量部及び架橋剤が0.01〜0.5質量部となるように調整された撥水処理樹脂溶液を該ナイロン11繊維を含む布帛に接触処理することにより行なうことができる。この場合、前記浸透剤を事前に接触処理する方法と同様の方法にて撥水処理を行なうことができる。
【0035】
フッ素系化合物及び架橋剤を接触処理し、布帛100質量部に対してフッ素系化合物が0.1〜3質量部及び架橋剤が0.01〜0.5質量部となるようにするための撥水処理溶液に必要なフッ素化合物及び架橋剤濃度は、該接触処理時のピックアップ率などの条件により適宜選択される。例えば、フッ素化合物濃度としては、0.05〜100g/lが好ましく、0.5〜50g/lがより好ましく、5〜50g/lがいっそう好ましい。架橋剤濃度としては、0.01〜10g/lが好ましく、0.05〜5g/lがより好ましく、0.1〜5g/lがいっそう好ましい。
【0036】
パディング法においては、上記撥水処理溶液に布帛を浸漬後マングルで絞り、所定の付与量に調整した後、架橋剤の反応温度以上で熱処理を行なうことにより、撥水加工が施された布帛を得ることができる。この場合、該熱処理温度は架橋剤により適宜選択されるが、例えば、100〜200℃が好ましく、150〜180℃がより好ましい。熱処理時間は、0.01〜30分が好ましく、0.1〜20分がより好ましく、0.5〜5分がいっそう好ましい。
【0037】
グラビアコーティング法においては、高メッシュのグラビアロールを用いて片面のみに該フッ素系化合物及び架橋剤を含む撥水処理溶液を付着させ、その後、前述の方法にて熱処理を行うことにより、片面を主体とする撥水加工が施された布帛を得ることができる。
【0038】
なお、該フッ素系化合物及び架橋剤を含む撥水処理溶液を接触処理した後、該熱処理を行なう前に、該布帛の収縮防止の観点から、20℃〜150℃、好ましくは80〜150℃の温度範囲で乾燥を行なうことが好ましい。
【0039】
本発明の製造方法においては、ナイロン11繊維を主体とする布帛にフッ素系化合物及び架橋剤を含有する溶液を接触処理する前に、該浸透剤を接触処理するほうが、フッ素系化合物の布帛への浸透性がより向上するため、得られる撥水性布帛の撥水耐久性が向上し好ましい。
【0040】
次に、浸透剤の事前の接触処理をせずに、ナイロン11繊維を主体とする布帛に、そのまま、フッ素系化合物、架橋剤及び浸透剤を含有する撥水処理溶液を接触処理する方法について、以下に説明する。
【0041】
浸透剤の事前の接触処理をせずに、ナイロン11繊維を主体とする布帛に、フッ素系化合物、架橋剤及び浸透剤を含有する撥水処理溶液を接触処理する際のフッ素化合物、架橋剤及び浸透剤の濃度は、該接触処理時のピックアップ率などの条件により適宜選択され、 具体的には、前述の浸透剤の事前の接触処理後の撥水処理条件を同様に用いることができる。さらに、本発明の製造方法において、浸透剤の事前の接触処理をせずに、フッ素系化合物、架橋剤及び浸透剤を含有するフッ素処理樹脂溶液を接触処理する以降の方法は、前記浸透剤を一旦接触処理する方法と同様の方法を用いることができる。これによりフッ素系化合物及び架橋剤を含有する樹脂溶液の布帛内部への浸透性が向上し、均一な耐久性に優れた撥水性樹脂皮膜が得られる。
【実施例】
【0042】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
【0043】
<評価方法>
実施例における布帛の性能の測定、評価は、次の方法で行った。
(1)撥水度;JIS L1092、スプレー法
【0044】
(2)洗濯耐久性;JIS L0217(103法)に準じた洗濯を連続で50回行 い、60℃で20分間のタンブラー乾燥後の撥水度を、(1)の方法にて評価した。
【0045】
(3)磨耗耐久性;JIS L1018、A法(引張荷重、押圧荷重共に22.3N) にて500回の磨耗を行った後の撥水度を、(1)の方法にて評価した。
【0046】
(4)風合い
10人のパネラーにより撥水性布帛の手触りを調べ、以下の3種の評価のうち最も 該当する評価を風合いの評価とした。
○:風合いが優れていた。
△:風合いが普通であった。
×:風合いが劣っていた。
【0047】
(5)外観
10人のパネラーにより、以下の指標により、撥水性布帛の表面外観を評価し、最 も該当する評価を外観の評価とした。
○:撥水性布帛の表面に色むらが見られず、外観が優れていた。
△:撥水性布帛の表面に色むらが少し見られ、外観が普通であった。
×:撥水性布帛の表面に色むらが見られ、外観が劣っていた。
【0048】
実施例1
経糸及び緯糸にナイロン11マルチフィラメント78dtex/68fを用いて、経糸密度115本/2.54cm、緯糸密度95本/2.54cmの平織を製織し、常法により染色加工(染料;日本化薬株式会社製、「Kayanol Blue NR(商品名)」1%omf)を行い、本実施例用の織物を得た。
続いて、上記織物を用いて、まず処方1の浸透剤水溶液にてパディング(ピックアップ率50%)を行い、引続き湿潤状態のまま処方2の撥水剤水溶液にてパディング(ピックアップ率40%)を行い、110℃で2分間の乾燥後、160℃で1分間の熱処理を行い、撥水性布帛を得た。なお、浸透剤単独での接触処理時間は10秒であった。
<処方1>
浸透剤 アクチノールR−100(松本油脂製薬製、ポリオキシエチレンアルキルエー テル) 1g/l
水 999g/l
<処方2>
フッ素系化合物 アサヒガードAG−E500D(旭硝子製、フッ素系化合物30%含 有フッ素系撥水剤エマルジョン) 80g/l(フッ素化合物として24g/l)
架橋剤 メイカネートFM−1(明成化学工業製、ブロックイソシアネート) 10g/l
水 910g/l
【0049】
実施例2
実施例1の織物を用い、下記処方3の撥水処理液にてパディング(ピックアップ率40%)を行った後、110℃で2分間の乾燥後、160℃で1分間の熱処理を行い、撥水性布帛を得た。
<処方3>
フッ素系化合物 アサヒガードAG−E500D(旭硝子製、フッ素化合物30%含有 のフッ素系撥水剤エマルジョン) 80g/l(フッ素化合物として24g/l)
架橋剤 メイカネートFM−1(明成化学工業株式会社製、ブロックイソシアネート) 10g/l
浸透剤 イソプロピルアルコール 80g/l
水 830g/l
【0050】
実施例3〜6
フッ素系化合物、浸透剤の量を表1のように変更した以外は、実施例2と同様にして撥水性布帛を得た。
【0051】
実施例7
実施例1の織物を用い、処方3を処方4に代える以外は、実施例2と同様にして、撥水性布帛を得た。
<処方4>
フッ素系化合物 アサヒガードAG−E500D(旭硝子製、フッ素系化合物30%含 有フッ素系撥水剤エマルジョン) 80g/l(フッ素化合物として24g/l)
架橋剤 メイカネートFM−1(明成化学工業株式会社製、ブロックイソシアネート) 10g/l
浸透剤 アクチノールR−100(松本油脂製薬製、ポリオキシエチレンアルキルエー テル) 2g/l
水 908g/l
【0052】
実施例8
浸透剤の量を表1のように変更した以外は、実施例2と同様にして撥水性布帛を得た。
【0053】
比較例1
実施例1の織物を用い、処方1の前処理を行なわなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の撥水性布帛を得た。
【0054】
比較例2
実施例1の織物を用い、処方3のアサヒガードAG−E500D量を80g/lから300g/l(フッ素化合物量として90g/l)、水量を830g/lから610g/lに変更した以外は、実施例2と同様にして、比較例2の撥水性布帛を得た。
【0055】
比較例3
実施例1の織物を用い、処方3のメイカネートFM−1量を10g/lから35g/l、水量を830g/lから805g/lに変更した以外は、実施例2と同様にして比較例3の撥水性布帛を得た。
【0056】
実施例1〜8、比較例1〜3の撥水性布帛の性能を測定、評価した結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1より明らかなように、実施例1〜8の撥水性布帛は、撥水性布帛表面の被膜に含有されているフッ素系化合物及び架橋剤量が本願発明の範囲を満たすため、撥水性能、洗濯、摩耗に対する撥水耐久性に優れており、風合い及び外観も損なわれていないものであった。一方、比較例1の撥水性布帛は、浸透剤を用いなかったため、初期の撥水性能は優れるものの、洗濯、摩耗に対する撥水耐久性が不十分であり、外観も劣ったものであった。比較例2の撥水性布帛は、フッ素系化合物の量が過多であったため、洗濯、摩耗に対する撥水耐久性が不十分であり、風合いも硬く衣料品として不適合なものであった。比較例3の撥水性布帛は、架橋剤の量が過多であったため、洗濯、摩耗に対する撥水耐久性が不十分であり、風合いも硬く衣料品として不適合なものであった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛100質量部に対して、フッ素系化合物0.1〜3質量部及び架橋剤0.01〜0.5質量部を含有する皮膜にて被覆されているナイロン11繊維を主体とする布帛であって、磨耗耐久性試験後の布帛のJIS L1092(スプレー法)による撥水度が4級以上であることを特徴とする撥水性布帛。
【請求項2】
ナイロン11繊維を主体とする布帛に、フッ素系化合物及び架橋剤を含有する溶液を接触処理し、次いで熱処理を行なう撥水性布帛の製造方法であって、前記接触処理前又は前記接触処理と同時に、布帛に浸透剤を接触処理することを特徴とする請求項1記載の撥水性布帛の製造方法。

【公開番号】特開2012−72525(P2012−72525A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219157(P2010−219157)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(592197315)ユニチカトレーディング株式会社 (84)
【Fターム(参考)】