説明

撮像システム

【課題】視野の制限を招くことなく周辺構造物との外観上の差異が生じることを抑制して撮像装置を設けることのできる撮像システムを提供する。
【解決手段】被写体像を形成する撮像光学系20および撮像光学系20により結像される被写体像の取得のための撮像素子31を有する撮像装置11を、構造体(C)に設置して構成される撮像システム10である。構造体の構造外表面19と等しい系統の外観色であって透光性を有するカバー12を備え、カバー12は、撮像光学系20と被写体との間であって、撮像装置11を覆いつつ構造外表面19に連続する平面を形成して構造体に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載カメラや監視カメラ等として用いられる撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像用のレンズ等の光学素子を有する撮影光学系と、それにより結像された被社写体像の取得のための撮像素子と、を有する撮像装置が知られている。このような撮像装置では、例えば、車両における運転者の視認を支援する車載カメラや、ATM(Automated Teller Machine)に搭載する監視カメラ等としての撮像システムに広く適用することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。このように車載カメラとして適用する場合、車両としての意匠性の確保や撮像装置の保護の観点から、ナンバープレートの上部であって、トランクやハッチの表面に設けた凹部に撮像装置を配置している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した撮像システムでは、ナンバープレートの上部のトランクやハッチに設けた凹部に撮像装置を設置していることから、ナンバープレートおよびトランク(またはハッチ)やその設置箇所の周辺構造物により、視野が制限されてしまう虞がある。このような視野の制限は、車載カメラ(監視カメラであっても同様である)の性質上、無いことが望ましい。
【0004】
また、上述した撮像システムでは、ナンバープレートの上部のトランクやハッチに設けた凹部に撮像装置を設置していても、撮像装置やその設置箇所が直接視認できてしまうことから、周辺構造物との外観上の差異が際立ってしまう。このような撮像装置およびその設置箇所の視認や周辺構造物との差異は、車両としての意匠性の向上の観点から無いことが望ましい。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、視野の制限を招くことなく周辺構造物との外観上の差異が生じることを抑制して撮像装置を設けることのできる撮像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の撮像システムは、被写体像を形成する撮像光学系および該撮像光学系により結像される被写体像の取得のための撮像素子を有する撮像装置を、構造体に設置して構成される撮像システムであって、前記構造体の構造外表面と等しい系統の外観色であって透光性を有するカバーを備え、該カバーは、前記撮像光学系と被写体との間であって、前記撮像装置を覆いつつ前記構造外表面に連続する平面を形成して前記構造体に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の撮像システムでは、視野の制限を招くことなく周辺構造物との外観上の差異が生じることを抑制して撮像装置を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願発明に係る撮像システム10を車載カメラシステムとして用いて構成した後方視認支援機構80を説明するための説明図である。
【図2】撮像システム10が有する撮像装置11の概略的な構成を説明するための前側から見た説明図である。
【図3】撮像装置11の概略的な構成を説明するための後側から見た説明図である。
【図4】図2のI−I線に沿って得られた撮像装置11の模式的な断面図である。
【図5】車両Cに撮像システム10が設けられた様子を示す説明図である。
【図6】車両Cに撮像システム10が設けられた様子を示す説明図であり、理解容易のためにカバー12および設置空間18を図5に示すII−II線で得られた断面で示し、その他を側面図で示している。
【図7】撮像システム10の撮像装置11の電子回路40のシステム構成の概要を示すブロック図である。
【図8】AGC回路43の増幅量(ゲイン)が基本設定とされた撮像素子31から出力される出力信号をRGBに対応する受光素子部31b毎に分けて(RGB画素データ)示すグラフであり、縦軸が最大強度を1とする出力信号の強度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図9】カバー12の透過特性を示すグラフであり、縦軸が最大を1とする透過した光(電磁波)強度の比(カバー12の透過率)を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図10】自然光下で白色の物体を被写体とした際のカバー12を経て取得した被写体像に対する撮像素子31から出力される出力信号をRGBに対応する受光素子部31b毎に分けて(RGB画素データ)示すグラフであり、縦軸が最大出力を1とする出力信号の強度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図11】AGC回路43における増幅量(ゲイン)の設定補正値を示すグラフであり、縦軸が設定補正値を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図12】AGC回路43がカバー12の透過特性に対応する増幅量(ゲイン)に設定された撮像素子31からの、自然光下で白色の物体を被写体としてカバー12を経て取得した被写体像としての出力信号の強度をRGBに分けて示すグラフであり、縦軸が最大強度を1とする出力信号の強度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図13】AGC回路43における増幅量(ゲイン)の他の例の設定補正値を示すグラフであり、縦軸が設定補正値を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【図14】実施例2の撮像システム10Bの撮像装置11Bの電子回路40Bのシステム構成の概要を示す図7と同様のブロック図である。
【図15】実施例3の撮像システム10Cのシステム構成の概要を示すブロック図である。
【図16】撮像システム10Dの構成の概要を示す説明図である。
【図17】バンドパスフィルタ61の透過特性を示すグラフであり、縦軸が最大を1とする透過した光(電磁波)強度の比(バンドパスフィルタ61の透過率)を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願発明に係る撮像システムの各実施例について図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0010】
先ず、本願発明に係る実施例1の撮像システムの概念について説明する。図1は、本願発明に係る撮像システム10を車載カメラシステムとして用いて構成した後方視認支援機構80を説明するための説明図である。図2は、撮像システム10が有する撮像装置11の概略的な構成を説明するための前側から見た説明図であり、図3は、撮像装置11の概略的な構成を説明するための後側から見た説明図である。図4は、図2のI−I線に沿って得られた撮像装置11の模式的な断面図である。
【0011】
撮像システム10は、図1に示すように、基本的に、撮像装置11と透光性を有するカバー12とを備え、設置対象としての構造体(図示の例では車両C)に設けられる。撮像装置11は、撮影光軸OA上の所定の範囲の画像を取得する。カバー12は、撮像装置11の撮影光軸OA上で構造体における設置箇所の表面(後述する構造外表面19(図5等参照))に設けられる。この撮像装置11およびカバー12の詳細な構成に関しては後に詳細に説明する。
【0012】
撮像システム10は、実施例1では、設置対象とする構造体を車両Cとして、その車両Cにおける車載カメラシステムを構成する。この撮像システム10は、乗員特に運転手による車両後方の視認の支援のための後方視認支援機構80を構成する。この後方視認支援機構80では、撮像システム10の撮像装置11が、車両Cの後端位置でその車両Cの後方斜め下側へ向けて設けられており、車両Cの後方斜め下側の領域を画像中心とする広角な範囲を撮影対象としている。
【0013】
後方視認支援機構80は、撮像システム10に接続された制御装置81と、その制御装置81を介して撮像システム10と接続されたモニタ82と、を有する。この後方視認支援機構80では、制御装置81が撮像システム10から出力された電気信号(画像データ)に基づいて、車両後方の画像をモニタ82に表示させる。制御装置81は、図示は略すが、車両Cの変速ギア(図示せず)がバック(リバース)へと切り換えられたときや、車両後方の画像を表示する旨の信号が入力されたときに、撮像システム10で取得された車両後方の画像をモニタ82に表示させる。モニタ82は、車両Cの車室内において、乗員特に運転手による視認を容易とする位置に設けられた表示部である。このモニタ82は、図示は略すがナビゲーションシステムの表示部としての機能を兼用するものであってもよい。このため、乗員特に運転手は、車両Cの後方確認が必要なときに、モニタ82の画像により車両Cの後方を容易に認識することができるので、後方視認支援機構80は、車両後方の視認の支援をすることができる。
【0014】
次に、本発明に係る撮像システム10の撮像装置11の概略的な構成を、図2から図4を用いて説明する。撮像装置11は、筐体13の内方に、撮像光学系20と電子回路ユニット30と、が収容されて大略構成されている。なお、以下では、撮像光学系20の撮影光軸OAに沿う方向で見て、撮像装置11から被写体に向かう側(矢印OAが指し示す方向)を前方と言い、その反対側を後方と言う。また、撮影光軸OAを通りかつ当該撮影光軸OAに直交する方向(撮影光軸OAからの放射方向)を径方向と言う。
【0015】
この筐体13は、実施例1では、撮像光学系20を支持する前側ケース14と、電子回路ユニット30を収容する後側ケース15と、を有する。この前側ケース14は、筐体13の前側部分(前側筐体部)を構成しており、前側(一端側)の端面で撮像光学系20の対物レンズ(この例では後述するレンズ21a)の撮影光軸OAに直交する方向(径方向)で見た周囲を取り囲んでいる。
【0016】
前側ケース14には、図4に示すように、撮像光学系20を収容するための保持孔14aと、その前部で径寸法が広げられた箇所(後述する大内径部14d)において撮影光軸OAを取り巻く封止用環状溝14bと、前端面において保持孔14aを取り巻く取付溝14cと、が設けられている。その保持孔14aは、撮影光軸OAを軸線とする段付き円柱状の貫通孔であり、撮像光学系20の後述する光学素子群21を適切な位置および姿勢で保持することが可能とされている。保持孔14aは、前側(被写体側)から、後述する光学素子群21としてのレンズ21aを受け入れることが可能な大内径部14dと、そこと隣接し大内径部14dよりも小さな内径寸法の中内径部14eと、そこと隣接し中内径部14eよりも小さな内径寸法の小内径部14fと、を有する。この保持孔14aでは、大内径部14dと中内径部14eとの径寸法の差により、撮影光軸OA方向に直交する直交面14gが形成されている。
【0017】
この直交面14gには、上述した封止用環状溝14bが設けられている。この封止用環状溝14bは、後述する封止部材24を配置するための凹所であり、中内径部14eを取り巻く環状を呈している。保持孔14a(大内径部14d)を取り巻く取付溝14cは、内周面にネジ山が設けられており、後述する抜止部材23の後端部23bを受け入れつつそのネジ山との噛み合いが可能とされている。また、保持孔14aでは、小内径部14fの後側(後述する撮像素子31側)すなわち前側ケース14の後端(他端)に、後述するように保持する光学素子群21(そのレンズ21f)の脱落を防止するための内縁突起部14hが設けられている。この内縁突起部14hは、小内径部14fの後側の端部において径方向の内側へと突出して形成された環状を呈し、小内径部14fの内径寸法よりも小さな径寸法の穴を形成している。
【0018】
加えて、前側ケース14には、後側ケース15に対向される後端面に、4つの支持壁部14i(図4では、3つのみ図示)と、各支持壁部14iを取り巻く固定用環状溝14jと、が設けられている。4つの支持壁部14iは、径方向で見た内縁突起部14hの外方において撮影光軸OAを取り巻くように径方向で互いに直交する線上で対を為しており、後述する第1基板32を支持する箇所となる。また、固定用環状溝14jは、前側ケース14の後端面において4つの支持壁部14iを取り囲むように設けられた環状の溝であり、後述するシールドケース34(その本体板金部35)の基端部35aの受け入れが可能とされている。
【0019】
この前側ケース14の後端に取り付けられる後側ケース15は、筐体13の後側部分(後側筐体部)を構成する。この後側ケース15は、一端開放の箱形状を呈し、後端側となる奥壁部15aと、そこから開放端側へと突出する筒状の周壁部15bと、を有する。この後側ケース15は、開放端からの電子回路ユニット30の挿入が可能とされ、かつ前側ケース14に取り付けられた状態の電子回路ユニット30を収容可能な大きさ寸法(深さ寸法)とされている。このため、後側ケース15では、撮影光軸OA方向が電子回路ユニット30の挿入方向となる。後側ケース15には、図3および図4に示すように、奥壁部15aの外壁面(後側ケース15の後端面)に、筐体13すなわち撮像装置11を所望の場所に取り付けるための2つの取付突起15cが設けられている。この両取付突起15cは、ネジ穴が設けられたボス部とされている(図3参照)。
【0020】
また、後側ケース15には、電子回路ユニット30(後述する電子回路40(図7参照))へと電力を供給したり、電子回路ユニット30の後述する撮像素子31で取得した画像データを伝送したりするための接続コード16が設けられている。この接続コード16は、後側ケース15に対して、外部との封止性能を有した状態での電子回路ユニット30への接続が可能とされている。このため、接続コード16は、電子回路ユニット30を筐体13の外方へと接続する接続部として機能する。接続コード16は、実施例1では、後側ケース15側となる一端にコネクタ部16aが設けられており、このコネクタ部16aが封止部材としてのOリング16bを介在させて、図示を略すネジ部材により後側ケース15の後端面に固定されている。その他、封止性能を有する構成としては、後側ケース15に接続穴(図示せず)を設け、そこに接続コード16を挿入するとともに周囲を防水用接着剤で充填することや、接続コード16(その被覆部材)を後側ケース15と一体的に形成することがあげられる。
【0021】
このような構成の後側ケース15は、弾性材料から為るOリングや平パッキン等で形成した封止部材17を介在させた状態で、前端面を前側ケース14の後端面に付き合わしてネジ止め等で結合されることにより、互いの結合箇所における防水機能や防塵機能(以下、封止性能という)を有し、撮像光学系20および電子回路ユニット30を収容する収容部材としての筐体13を形成する。
【0022】
その筐体13に収容される撮像光学系20は、画像取得のために任意の位置に結像させるものであり、図4に示すように、少なくとも1つ以上の光学素子を有し、撮像装置11(撮像光学系20)において求められる光学性能に応じて適宜構成される。撮像光学系20は、実施例1では、複数の光学素子から為る光学素子群21が間隔環22とともに前側ケース14の保持孔14aに収容されて構成されている。
【0023】
その間隔環22は、光学素子群21を保持孔14a内に組み付ける際に、その光学素子群21の各光学素子における互いの対向面間の撮影光軸OA方向での間隔を所定の値に規定する。間隔環22は、撮影光軸OAを軸線とする段付きの筒状を呈し、保持孔14aの内方に挿入可能な大きさ寸法とされている。また、間隔環22では、光学素子群21のうちの所定の光学素子の収容を可能とする内径寸法とされている。間隔環22は、実施例1では、保持孔14aにおける中内径部14eへの挿入が可能であるとともに小内径部14fへと挿入することのできない大きさ寸法とされ、所定の光学素子として後述するレンズ21bおよびレンズ21cを収容することのできる内径寸法とされている。
【0024】
間隔環22では、後側(後述する撮像素子31側)すなわち後端側(他端側)に、内縁突起22aと絞り22bとが設けられている。その内縁突起22aは、間隔環22(その内方)に挿入された光学素子群21のうちの所定の光学素子(実施例1では後述するレンズ21c)の脱落を防止する。絞り22bは、光学素子群21(撮像光学系20)における有効径(有効光束径)を規定する。この間隔環22は、光学素子群21とともに前側ケース14の保持孔14aに収容される。
【0025】
その光学素子群21は、実施例1では、被写体(物体)側から順に、レンズ21a、レンズ21b、レンズ21c、レンズ21d、レンズ21eおよびレンズ21fを有する。光学素子群21では、レンズ21d、レンズ21eおよびレンズ21fが保持孔14aの小内径部14fに収容され、レンズ21bおよびレンズ21cが保持孔14aの中内径部14e内で間隔環22に収容され、レンズ21aが保持孔14aの大内径部14dに収容される。このため、光学素子群21では、レンズ21cとレンズ21dとの間に間隔環22の絞り22bが配されている。その間隔環22は、レンズ21a、レンズ21b、レンズ21cおよびレンズ21dにおける互いの対向面間の撮影光軸OA方向の間隔を所定の値に保持する。この光学素子群21では、レンズ21aが最も被写体(物体)側に位置する対物レンズとなる。また、保持孔14a(前側ケース14)は、撮像光学系20としての光学素子群21を保持する鏡筒として機能する。なお、この明細書では、撮像光学系20における光学的な軸線、すなわち光学素子群21(保持孔14a)の中心軸位置となる各レンズ21a〜21f(絞り22bを含む)の回転対称軸を、撮像光学系20すなわち撮像装置11の撮影光軸OAとする。
【0026】
その保持孔14aに挿入された光学素子群21は、抜止部材23により、大内径部14d側の開口から脱落することが防止される。この抜止部材23は、対物レンズとなるレンズ21aの外周面を取り巻くことが可能な大きさ寸法とされた円筒状を呈し、前端部23a(被写体側の端部)がレンズ21aの表面(前面)の周縁部(有効径の外側位置)に外方(前側)から接触可能な径寸法とされている。また、抜止部材23は、前側ケース14の取付溝14cへの挿入が可能とされた後端部23bにネジ山が設けられており、取付溝14cのネジ山に噛み合わせることが可能とされている。この抜止部材23は、保持孔14aに間隔環22とともに光学素子群21が適切に挿入され、かつ封止用環状溝14bに環状の封止部材24が配置された状態において、後端部23bのネジ山が取付溝14cのネジ山に噛み合わされることにより、レンズ21aを裏面側(後側ケース15側(像面側))へと押圧しつつ当該レンズ21aを覆うように前側ケース14に取り付けられる。その封止用環状溝14bに設けられる封止部材24は、弾性材料で形成されており、実施例1ではOリングとされている。
【0027】
これにより、レンズ21aの裏面と封止用環状溝14bとの間に配置された封止部材24が適切に圧縮される。このため、撮像光学系20では、適切に圧縮された封止部材24により、レンズ21aの周囲から保持孔14aへの水や塵埃等の侵入が防止されており、十分な封止性能を有している。このように、撮像光学系20では、前側ケース14(保持孔14a)により封止的に光学素子群21(その対物レンズとなるレンズ21a)が保持され、所望の光学性能を有している。このとき、間隔環22は、抜止部材23により固定されたレンズ21aと、前側ケース14の保持孔14a(その中内径部14eと小内径部14fとの段差)と、により、その保持孔14a内に固定されている。この撮像光学系20の光学素子群21の結像位置に、電子回路ユニット30(後述する撮像素子31)が配置される。
【0028】
電子回路ユニット30は、撮像素子31、第1基板32、第2基板33およびシールドケース34を有する。その撮像素子31は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を用いて構成された固体撮像素子であり、撮像光学系20(光学素子群21)を通して受光面31a上に結像された被写体像を各受光素子部31b(図7参照)からの電気信号(各画素データ)に変換して出力する。この撮像素子31は、可視領域および赤外領域(の波長)の光に対する感度を有する設定とされている。また、撮像素子31には、図示は略すが複数の受光素子部31bに対応してベイヤー配列の色フィルタが設けられており、出力する電気信号(各画素データ)がベイヤー配列のRGB画素データとなる。撮像素子31から出力された電気信号は、後述する電子回路40により、被写体像に対応したデジタル画像データに生成されて出力される。撮像素子31は、撮像光学系20(光学素子群21)として設定された光学性能を効率よく発揮させるべく、その撮像光学系20(光学素子群21)により形成された被写体像が、実質的な受光領域を形成する受光面31a上の適切な位置に存在するように、撮像光学系20(その保持のための保持孔14a)に対する位置が設定されて第1基板32に設けられている。
【0029】
その第1基板32は、明確な図示は略すが全体に矩形の板状を呈し、被写体側すなわち撮像光学系20側となる前面に撮像素子31が実装されるとともに、後面にコンデンサや抵抗等の電子部品32aが実装されている。この第1基板32は、図示を略す固定用部材を介して、前側ケース14の4つの支持壁部14iの後端面に撮影光軸OAに略直交して固定される。第1基板32の後面には、コネクタ部材32bが設けられている。この第1基板32の後側(後側ケース15の後端側)に、第2基板33が設けられている。
【0030】
第2基板33は、明確な図示は略すが全体に矩形の板状を呈し、被写体側すなわち撮像光学系20側となる前面にコンデンサや抵抗等の電子部品33aおよびコネクタ部材33bが実装されるとともに、後面にコンデンサや抵抗等の電子部品33cが実装されている。この第2基板33は、第1基板32の後側(後側ケース15の後端側)で、当該第1基板32と並列に設けられており、コネクタ部材33bがコネクタ部材32bに接続されることにより、第1基板32と電気的に接続されている。また、第2基板33では、後面にコネクタ部材33dが実装されている。このコネクタ部材33dは、コネクタ部16aを介して後側ケース15の後端面に固定される接続コード16と第2基板33との電気的な接続を可能とするものである。
【0031】
この第1基板32および第2基板33では、それぞれに設けられた電子部品32a、33aおよび33cにより所定の電子回路40(図7参照)を構成している。この電子回路40は、撮像素子31における動作の制御や、撮像素子31から出力された電気信号に基づく被写体像に対応したデジタル画像データの生成等を行い、そのデジタル画像データを所定の信号に変換して接続コード16へと出力する。この電子回路40の構成については後に説明する。このため、電子回路ユニット30は、撮像素子31で取得した画像を、ビデオ信号として出力することができる。このように、2層の基板32、33を設ける構成としているのは、要求される性能を満たしつつ撮像装置11の小型化を図るためである。このことから、電子回路40の構成のための基板は、1層のみの構造であってもよく、多層設けるものであってもよく、実装する各電子部品の数や大きさ形状等を勘案して適宜設定すればよい。この撮影光軸OA方向に並列されて電気的に接続された2つの基板32、33を取り囲むように、シールドケース34が設けられている。
【0032】
シールドケース34は、電子回路40(図7参照)から周囲へと電磁波が放出されることや、周辺から電子回路40への電磁波の影響を防止するための電磁シールドを構成する。このシールドケース34は、導電性を有する材料で形成され、かつ電子回路40における基準電位もしくはグランドレベルに電気的に接続される。シールドケース34は、金属材料から形成され、実施例1では、アルミニウムで形成されている。このシールドケース34は、本体板金部35とリア板金部36とを備える。
【0033】
本体板金部35は、アルミニウムからなる薄板状の部材が折り曲げられて形成されており、明確な図示は略すが撮影光軸OAに直交する方向で見た断面が略矩形状を呈する筒状とされている。その本体板金部35は、撮影光軸OAを取り巻く方向で電子回路ユニット30を取り囲むことを可能としつつ、後側ケース15の周壁部15b内に嵌め入れることが可能な形状および大きさ寸法とされている。このため、本体板金部35は、電子回路ユニット30における撮影光軸OAに平行な外周面を形成している。この本体板金部35には、前側ケース14への取付箇所となる基端部35aを構成する4つの壁部分の各々に押圧片35b(図4には、2つのみ図示)が設けられている。各押圧片35bは、基端部35aが前側ケース14の4つの支持壁部14i(図4では、3つのみ図示)を取り囲みつつ固定用環状溝14j内に挿入されると、その固定用環状溝14jの一方の内壁面を押圧する(図4参照)。これにより、本体板金部35は、前側ケース14に取り付けられる。
【0034】
この本体板金部35は、明確な図示は略すが、第2基板33において径方向に突出して設けられた突起部を受け入れる支持部を有し、内方に収容した第2基板33との固定が可能とされている。また、本体板金部35は、図示は略すが、内方に収容した第2基板33の各電子部品が形成する所定の電子回路40(図7参照)における回路基準電位に電気的に接続される。本体板金部35は、実施例1では、第2基板33に設けられた電子回路40の回路基準電位との接続線(図示せず)に電気的に接続されている。
【0035】
リア板金部36は、アルミニウムからなる薄板状の部材から形成されており、図示は略すが撮影光軸OAに直交する方向で見て略矩形状を呈する板状とされている。このリア板金部36は、奥壁部15a(その内壁面)と平行とされて後側ケース15に固定される。リア板金部36には、複数の接続突起部36a(図4では、2つのみ図示)と受入穴部36bとが設けられている。各接続突起部36aは、本体板金部35とリア板金部36との接触箇所を構成するものであり、リア板金部36の一部が前側(第2基板33側)へと突出されて形成されている。この各接続突起部36aは、後述するように組みつけられた状態において本体板金部35の後端部35cが押し当てられる。受入穴部36bは、第2基板33に実装されたコネクタ部材33dを通すことを許容する。
【0036】
このように、撮像装置11では、収容部材としての筐体13に、撮像光学系20および電子回路ユニット30が収容されて形成されている。その筐体13の内方には、本体板金部35と、その後端部35cが各接続突起部36aに押し当てられたリア板金部36と、により、電子回路ユニット30を取り囲みつつその電子回路40(図7参照)における回路基準電位に電気的に接続された電磁シールドが形成されている。この撮像装置11は、上述したように、カバー12とともに車両Cの後部に設けられて撮像システム10を構成する。
【0037】
そのカバー12は、図5および図6に示すように、撮像システム10が設置される構造体としての車両Cに設けられた撮像装置11の設置のための設置空間18を覆って設けられる。その設置空間18は、車両Cの後端位置の表面(構造外表面19)を開口しており、撮像装置11を収容することが可能な大きさ寸法とされている。設置空間18は、撮像装置11(その撮像光学系20)における視野を制限することのないように、大きさ寸法および形状、特に構造外表面19での開口寸法が設定されている。この視野を制限するとは、視野に設置空間18や構造外表面19の一部が入りこむことにより、実質的に取得することのできる視野を狭める、すなわち撮影対象として設定される車両Cの後方斜め下側の領域の全範囲の取得ができなくなることをいう。この設置空間18には、後側ケース15の両取付突起15c(図3等参照)に噛み合わされるネジ部材(図示せず)により、撮像装置11が取り付けられて収容されている。その撮像装置11は、上述したように、設置空間18から車両Cの後方斜め下側の領域を画像中心とする広角な範囲を撮影対象とすべく、角度および位置が設定されている(図1参照)。この設置空間18(その開口)を取り囲む周辺位置すなわち構造外表面19(車両Cの後端位置の表面)は、実施例1では、自然光(白色光)の元で見て緑色とされている。
【0038】
カバー12は、設置空間18の開口を塞ぎつつそのカバー表面12aで構造外表面19に連続する平面を形成して車両Cに設けられている(図6参照)。このため、設置空間18に収容された撮像装置11は、構造外表面19と同一平面を形成するカバー12により覆われている。そのカバー12は、自然光(白色光)の元で外方から見た色(外観色)が構造外表面19と同じ系統の色とされている。ここでいう系統とは、自然光(白色光)の元で外方から見た際の設置対象としての構造体の構造外表面19との色合いの差異を低減する観点から、色(色彩)の様相で分類して示すものであり、いわゆる色相を大まかに区分して設定している。この系統は、実施例1では、白および黒を除くものとして、紫、青、緑、黄色、赤、の5つの系統に区分している。この各系統は、光(電磁波)における波長帯域で表すと、紫(380−450nm)、青(450−495nm)、緑(495−570nm)、黄色(570−620nm)、赤(620−750nm)としている。このため、カバー12(撮像システム10)は、白および黒を除く構造体の構造外表面19に対して、色合いの差異を低減することが可能とされている。
【0039】
なお、この系統を定義している色と波長の関係は、計測機等で計測することができる狭い範囲の単色光の波長を示した代表的な色と波長の関係を意味している。ここで、国際照明委員会(CIE)が定めている色度図(人間の目の感じ方で色を表す)で上記系統を定義してしまうと、複数の波長が交じり合った結果、波長スペクトルが異なっていても同じ色に感じられる場合があり、その組み合わせは無限となってしまうので、人の感じ方としての色の表現では扱うことが困難である。このため、実施例1では、色を波長として捕らえて、上記したように系統を定義している。この系統においては、各区分の境界における厳密な数値(波長)に重きをおくものではなく、人が見ておおよそこの色と感じる程度の分類であればよく、上記した波長帯域で表す区分に限定されるものではない。
【0040】
このカバー12は、赤外領域および可視領域の全域の光(電磁波)の透過を許す透光性を有し、自然光(白色光)を透過させた透過光の色(白色面上で透過光が照射された箇所の色)を外観色と略等しくする(少なくとも上記した系統が等しい)材料から形成されている。すなわち、カバー12は、外方から見た場合と自然光(白色光)を通して見た場合とで、色(その上記した系統)が等しく感じるものとされている。これは、次のことが考えられる。カバー12(その材料)では、物としての見た目の色において、表面で反射された光と、透過性を有することにより内方を経て表面から外方へと出射する光と、の影響が大きいものと考えられる。ここで、表面ではさまざまな光が反射されることから、前者では、見た目の色が定まらない。これに対して後者は、カバー12(その材料)の表面から内方へと入射した後に、裏面から外方へと出射することなく当該裏面で反射されて、表面から外方へと出射するものであることから、透過光と同様の特性を有する。このため、カバー12(その材料)では、物としての見た目の色が、当該カバー12を透過する光の色として見えるものと考えられる。また、カバー12(その材料)では、設定された外観色を形成すべく特定の波長帯域の光を吸収し、かつ赤外領域および可視領域の全域の光(電磁波)の透過を許す作用があるものと考えられる。換言すると、カバー12(その材料)では、設定された外観色を形成する光(電磁波)の波長帯域を外観波長帯域とすると、その外観波長帯域以外の残余波長帯域の光を吸収し、残余波長帯域に対する補色が外観色(外観波長帯域)とされている。
【0041】
カバー12は、実施例1では、ガラス材料やポリカーボネイドやアクリル等の透明な材料に、外観色の色素を含有させることにより、形成されている。カバー12は、実施例1では、上述したように構造外表面19が緑色であることから、外観色が緑とされている。
【0042】
このカバー12では、構造外表面19に連続するカバー表面12aが水や塵埃等の付着をし難くする防汚対策が施されており、実施例1では、カバー表面12aにシリカ(SiO)の防汚膜を設けている(コーティング)。この防汚膜は、極めて薄いものとすることができることから、カバー12を経て撮像装置11に入射する光の光路に殆ど影響を与えることがない。
【0043】
この撮像システム10では、カバー12を透過した光を撮像装置11で取得することとなる。このことから、撮像システム10では、撮像装置11における電子回路40(図7参照)を次のように構成している。その電子回路40の概略的な構成を図7に示す。この図7は、撮像システム10(撮像装置11)の電子回路ユニット30に形成された電子回路40の構成を説明するための説明図である。
【0044】
電子回路40は、図7に示すように、撮像素子31に加えて、信号処理回路41と制御部42とを有する。電子回路40では、制御部42が撮像素子31および信号処理回路41に対して必要な制御信号を与えることにより、それらの動作をパイプライン的に制御する。また、制御部42は、図示は略すが、撮像素子31や信号処理回路41(各電子部品32a、33aおよび33c)を駆動させるべく、それらに接続コード16から供給された電力を供給する電源回路としても機能する。
【0045】
その撮像素子31には、AGC回路43が設けられている。そのAGC回路43は、アナログ利得制御部であり、撮像素子31においてRGBに対応する各受光素子部31bから出力されたアナログ信号の画像信号(ベイヤー配列のRGB画素データ)を所定の値に増幅して、信号処理回路41(その後述するA/D変換器44)へ出力する。すなわち、撮像素子31は、実施例1では、RGBに対応する各受光素子部31bからの出力信号(RGB画素データ)の増幅量(ゲイン)を調整するゲイン調整機能を有する。このAGC回路43における増幅量(ゲイン)の設定については、後に説明する。
【0046】
その信号処理回路41は、A/D変換器44と画像生成部45と出力変換部46とを有する。A/D変換器44は、AGC回路43で増幅されて撮像素子31から出力されたアナログ信号としてのベイヤー配列のRGB画素データをデジタル信号に変換し、それを画像生成部45へ出力する。
【0047】
画像生成部45は、デジタル信号に変換されたベイヤー配列のRGB画素データが入力されると、このRGB画素データに基づいて、RGB各色独立に全座標位置の色成分画素データを線形補完によって生成し、この生成した画素データに適宜補正(収差補正やMTF補正や歪曲収差補正やガンマ補正等)を施した後、その各画素データに基づき画像データを生成する。画像生成部45は、生成した画像データを出力変換部46へ出力する。
【0048】
出力変換部46は、入力された画像データを所定の信号に変換する。この所定の信号としては、例えば、VGA(Video Graphics Array)に対応するビデオ信号や、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)に対応するビデオ信号があげられる。出力変換部46すなわち信号処理回路41は、所定の信号に変換した画像データを接続コード16(図4参照)へと出力する。
【0049】
次に、撮像素子31のAGC回路43における増幅量(ゲイン)の設定について、図8から図12を用いて説明する。図8は、AGC回路43の増幅量(ゲイン)が基本設定とされた撮像素子31から出力される出力信号をRGBに対応する受光素子部31b毎に分けて(RGB画素データ)示すグラフであり、縦軸が最大強度を1とする出力信号の強度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。図9は、カバー12の透過特性を示すグラフであり、縦軸が最大を1とする透過した光(電磁波)強度の比(カバー12の透過率)を示し、横軸が波長(nm)を示している。図10は、自然光下で白色の物体を被写体とした際のカバー12を経て取得した被写体像に対する撮像素子31から出力される出力信号をRGBに対応する受光素子部31b毎に分けて(RGB画素データ)示すグラフであり、縦軸が最大出力を1とする出力信号の強度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。図11は、AGC回路43における増幅量(ゲイン)の設定補正値を示すグラフであり、縦軸が設定補正値を示し、横軸が波長(nm)を示している。図12は、AGC回路43がカバー12の透過特性に対応する増幅量(ゲイン)に設定された撮像素子31からの、自然光下で白色の物体を被写体としてカバー12を経て取得した被写体像としての出力信号の強度をRGBに分けて示すグラフであり、縦軸が最大強度を1とする出力信号の強度の比率を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【0050】
撮像素子31(その各受光素子部31b)は、上述したように、可視領域および赤外領域(の波長)の光に対する感度を有し、ベイヤー配列の色フィルタが設けられて構成されている。これに対し、AGC回路43は、基本的には、自然光(白色光)下で白色の物体を被写体とした際、被写体像が白くなるように、RGBに対応する各受光素子部31bに対する増幅量(ゲイン)が設定されている。これを基本設定とする。この基本設定は、撮像装置11における特性(主に撮像光学系20の透過特性)を考慮して設定されている。このため、撮像装置11では、自然光(白色光)下の白色の物体に対して、撮像素子31から出力される出力信号において、図8に示すように、RGBに対応する受光素子部31b毎の出力信号(RGB画素データ)の強度が互いに等しくなる。
【0051】
ここで、撮像システム10では、カバー12を透過した光を撮像装置11で取得することから、取得した被写体像(それに基づく画像)では、カバー12における透過特性の影響を受けることとなる。ここで、カバー12において、少なくとも可視領域での透過特性に偏りがない場合、AGC回路43(撮像素子31)における増幅量(ゲイン)の設定は、上述した基本設定(図8参照)とする。また、カバー12において、少なくとも可視領域での透過特性に偏りがある場合、その偏りに応じてAGC回路43(撮像素子31)における増幅量(ゲイン)を設定する。なお、ここで言う透過特性に偏りがあるとは、人間の目で見て、被写体と出力された画像(被写体像)とで、差異を生じさせることをいう。この差異は、実施例1では、自然光(または白色光)下で白色の物体を被写体として行う。
【0052】
ここで、カバー12は、実施例1では、上述したように、外観色(外観波長帯域)が構造外表面19(図5等参照)と同じ系統である緑色とされているとともに、透過させた透過光の色が外観色と等しくなるものとされている。このため、カバー12では、透過特性に偏りがあるものとされており、図9のグラフで示す透過特性とされている。すなわち、カバー12では、外観波長帯域(特に、560nmから580nmの波長帯域)における透過率(外観透過率)が、他の波長帯域である残余波長帯域における透過率(残余透過率)に対して局所的に高くなっており(略2倍)、自然光(白色光)を透過させると全体に緑がかった透過光となり緑色の影を形成する。このように、カバー12は、外観色を形成する外観波長帯域の外観透過率に対して、それ以外の残余波長帯域の残余透過率が低い一定の値となる透過特性とされている。
【0053】
このため、撮像システム10では、AGC回路43(撮像素子31)を上述した基本設定の増幅量(ゲイン)(図8参照)とすると、自然光(白色光)下の白色の物体に対して、撮像素子31からの出力信号は、図10に示すように、RGBに対応する受光素子部31b毎の出力信号(RGB画素データ)において、Gに対応する受光素子部31bからの出力信号(G画素データ)の強度が受光素子部31bからの出力信号(RB画素データ)の強度に比較して大きく(略2倍)なる。
【0054】
このことから、実施例1のAGC回路43(撮像素子31)では、カバー12の透過特性に偏りに応じて増幅量(ゲイン)を設定するために、基本設定の増幅量(ゲイン)に、図11に示す設定補正値を乗算したものを、増幅量(ゲイン)として設定する。この設定補正値は、カバー12の透過特性の逆数を、最大値を1として示す特性線である。換言すると、設定補正値は、カバー12の透過特性の偏りにおける高い透過率の領域の増幅量(ゲイン)を相対的に低減するものである。このように、撮像システム10では、撮像素子31のAGC回路43を基本設定に上述した設定補正値(図11参照)を乗算した増幅量(ゲイン)としていることから、自然光(白色光)下の白色の物体に対して、図12に示すように、RGBに対応する受光素子部31b毎の出力信号(RGB画素データ)の強度を互いに等しくすることができる。すなわち、撮像システム10は、自然光(白色光)下の白色の物体に対して、白色の画像(画像データ)を生成する。このため、実施例1の撮像システム10では、撮像素子31におけるAGC回路43が、被写体像において、外観波長帯域の光により形成される成分であるGに対応する受光素子部31bからの出力信号(G画素データ)と、残余波長帯域の光により形成される成分であるRBに対応する受光素子部31bからの出力信号(RB画素データ)と、における強度の差を打ち消す補正機構として機能する。
【0055】
このように、撮像システム10では、設置対象とする構造物としての車両Cの構造外表面19において、そこと等しい系統の外観色のカバー12を存在させるものであることから、設置箇所と構造外表面19との差異を抑制することができる。このため、車両Cの意匠性の向上の妨げとなることを防止することができる。
【0056】
また、撮像システム10では、カバー12の外観色を、色相を大まかに区分して設定したいずれかの系統とするものであることから、簡易な構成で外方から見た際の構造外表面19との色合いの差異を低減することができる。これは、設置対象としての構造体の構造外表面19と完全に一致する色とすることに比較して、色相を大まかに区分して設定した系統を等しくすることは、遥かに容易であることによる。
【0057】
さらに、撮像システム10では、カバー12の外観色における系統として、紫、青、緑、黄色、赤、の5つの系統を設定していることから、白および黒を除くあらゆる色(光(電磁波)における可視領域にあるあらゆる色)に対応させることができる。
【0058】
撮像システム10では、構造外表面19と等しい系統の外観色のカバー12で撮像装置11を覆うものであることから、一見しただけでは撮像装置11を視認することを困難なものとすることができるので、車両Cの意匠性の向上の妨げとなることを防止することができる。
【0059】
撮像システム10では、構造外表面19と等しい系統の外観色のカバー12で、撮像装置11が設置される設置空間18を覆うものであることから、一見しただけでは設置空間18を視認することを困難なものとすることができるので、車両Cの意匠性の向上の妨げとなることを防止することができる。
【0060】
撮像システム10では、カバー12のカバー表面12aを、設置対象とする構造物としての車両Cの構造外表面19に連続させて、カバー12が設けられていることから、構造外表面19すなわち車両Cにおけるカバー12の存在をより目立たなくすることができる。このため、車両Cの意匠性の向上の妨げとなることを防止することができる。
【0061】
撮像システム10では、カバー12で覆うことで設置空間18の視認を困難なものとしていることから、撮像装置11(その撮像光学系20)における視野を制限することをなくす観点で設置空間18を設定することができるので、車両Cの意匠性の向上の妨げとなることなく、撮影対象として設定される車両Cの後方斜め下側の領域の全範囲を取得することができる。これは、トランクやハッチの表面に設けた凹部に撮像装置を配置する構成の場合、撮像装置を目立たなくするために凹部およびトランクやハッチで隠すように配置する必要があることによる。
【0062】
撮像システム10では、設置対象とする構造物としての車両Cに設けた設置空間18に撮像装置11を設置するとともに、その設置空間18(その開口)を覆ってカバー12を設けるものであることから、視野の制限を無くしつつ撮像装置11を保護する状態で車両Cに設けることができる。
【0063】
撮像システム10では、設置対象とする構造物としての車両Cに設けた設置空間18に撮像装置11を設置するとともに、その設置空間18(その開口)を覆ってカバー12を設けるものであることから、車両C(その構造外表面19)から突出する箇所を構成することがないので、車両Cにおける安全性の向上の妨げとなることを防止することができる。
【0064】
撮像システム10では、設置対象とする構造物としての車両Cに設けた設置空間18に撮像装置11を設置するとともに、その設置空間18(その開口)を覆ってカバー12を設けるものであることから、構造物(車両C)において凹凸のない場所であっても配置することができるので、視野の確保を容易なものとしつつ配置の自由度を向上させることができる。これは、従来では、撮像装置を目立たなくするために、車両Cの凹凸を利用することが多く見られることによる。
【0065】
撮像システム10では、カバー12が可視領域の全域の光(電磁波)の透過を許す透光性を有するものとされていることから、撮像装置11でカラー画像を取得する(適切なRGB画素データを生成する)ことができる。
【0066】
撮像システム10では、カバー12が、外観色を形成する外観波長帯域の外観透過率に対して、それ以外の残余波長帯域の残余透過率が低い一定の値となる透過特性とされていることから、透光性を有する一般的な材料で当該カバー12を形成することができる。これは、透光性を有する材料では、自然光(白色光)を透過させた透過光の色が外観色と等しくなるものが一般的であることによる。
【0067】
撮像システム10では、補正機構(実施例1ではAGC回路43)により、カバー12を設けることに起因する、被写体像における外観波長帯域の光により形成される成分であるGに対応する受光素子部31bからの出力信号(G画素データ)と、残余波長帯域の光により形成される成分であるRBに対応する受光素子部31bからの出力信号(RB画素データ)と、における強度の差、を打ち消していることから、車両Cの意匠性の向上の妨げとなることなく、撮影対象として設定される車両Cの後方斜め下側の領域のカラー画像を適切に取得することができる。
【0068】
撮像システム10では、補正機構として、ゲイン調整機能を有する撮像素子31におけるAGC回路43を利用し、その増幅量(ゲイン)の設定値を変更するだけであるので、簡易な構成とすることができる。
【0069】
撮像システム10では、補正機構としてのAGC回路43の増幅量(ゲイン)を、カバー12の透過特性に偏りに応じて設定していることから、撮影対象として設定される車両Cの後方斜め下側の領域のカラー画像をより適切に取得することができる。特に、実施例1では、最大値を1とするカバー12の透過特性の逆数を示す特性線である設定補正値を基本設定値に乗算することにより、AGC回路43の増幅量(ゲイン)を設定していることから、カバー12の影響をより効果的に打ち消すことができ、カラー画像をより適切に取得することができる。
【0070】
撮像システム10では、補正機構としてのAGC回路43の増幅量(ゲイン)が、撮像装置11における特性(主に撮像光学系20の透過特性)を考慮して設定されていることから、撮影対象として設定される車両Cの後方斜め下側の領域のカラー画像をより適切に取得することができる。
【0071】
撮像システム10では、カバー12が、外観色を形成する外観波長帯域の外観透過率に対して、それ以外の残余波長帯域の残余透過率が低い一定の値となる透過特性とされていることから、外観波長帯域と残余波長帯域との相対的な強度を一律に調整するだけでカバー12を設けることに起因する色成分の強度の差を打ち消すことができる。
【0072】
撮像システム10では、補正機構として、ゲイン調整機能を有する撮像素子31におけるAGC回路43を利用していることから、撮像素子31から出力される出力信号(実施例1では、アナログ信号としてのベイヤー配列のRGB画素データ)においてカバー12の透過特性の偏りの影響がないものとされている(補正が為されている)ので、信号処理回路41における処理の負担を軽減することができる。
【0073】
撮像システム10では、カバー12が赤外領域および可視領域の全域の光(電磁波)の透過を許す透光性を有するものとされていることから、例えば夜間のような暗い雰囲気下であっても撮像装置11で画像を取得することができる。
【0074】
撮像システム10では、カバー12のカバー表面12aに防汚対策が施されていることから、水や塵埃等の付着をし難くすることができるので、より適切に撮影対象として設定される車両Cの後方斜め下側の領域の画像を取得することができる。
【0075】
撮像システム10では、構造体の意匠性の向上の妨げとなることなく、撮影対象として設定される領域の全範囲を取得することができるので、構造体として車両Cを適用した車載カメラシステムとして用いるのに好適である。
【0076】
撮像システム10を車載カメラシステムとして用いる後方視認支援機構80では、車両Cの意匠性の向上の妨げとなることなく、撮影対象として設定される車両Cの後方斜め下側の領域の全範囲を取得することができ、乗員による車両後方の視認をより適切に支援することができる。
【0077】
したがって、本発明に係る撮像システム10では、視野の制限を招くことなく周辺構造物との外観上の差異が生じることを抑制して撮像装置11を設けることができる。
【0078】
なお、上記した実施例1では、補正機構としてのAGC回路43の増幅量(ゲイン)を、カバー12の透過特性の偏りにおける高い透過率の領域の増幅量(ゲイン)を相対的に低減させる設定としていたが、図13に示すように、設定補正値を、カバー12の透過特性の逆数を示す特性線とし、カバー12の透過特性の偏りにおいて、低い透過率の領域の増幅量(ゲイン)を相対的に増大するものとしてもよく、上記した実施例1に限定されるものではない。
【実施例2】
【0079】
次に、実施例2の撮像システム10Bについて、図14を用いて説明する。この実施例2の撮像システム10Bは、カバー12の透過特性の影響を打ち消す補正機構の構成が、実施例1の撮像システム10とは異なる一例である。この実施例2の撮像システム10B(後方視認支援機構80)は、基本的な構成は上記した実施例1の撮像システム10(後方視認支援機構80)と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図14は、撮像システム10Bの撮像装置11Bの電子回路40Bのシステム構成の概要を示す図7と同様のブロック図である。
【0080】
実施例2の撮像システム10Bでは、図14に示すように、撮像素子31BにAGC回路43が設けられていない。すなわち、実施例2の撮像素子31Bでは、RGBに対応する各受光素子部31bからの出力信号(RGB画素データ)の増幅量(ゲイン)を調整するゲイン調整機能を有していない。これに伴って、電子回路40Bの信号処理回路41Bでは、AGC回路43Bが設けられるとともに、画像生成部45と出力変換部46との間に出力比調整部47が設けられている。そのAGC回路43Bは、実施例1のAGC回路43と同様の機能を有する。また、出力比調整部47は、被写体像において、外観波長帯域の光により形成される成分であるGに対応する受光素子部31bからの出力信号(G画素データ)と、残余波長帯域の光により形成される成分であるRBに対応する受光素子部31bからの出力信号(RB画素データ)と、における強度の差を打ち消す補正機構を構成するものである。このため、実施例2の電子回路40Bでは、AGC回路43BのRGBに対応する各受光素子部31bに対する増幅量(ゲイン)が基本設定とされている。
【0081】
出力比調整部47は、画像生成部45により生成された画像データ(カラーの画像データ(画像信号))が入力されると、先ずRの画像データとGの画像データとBの画像データとに分解する。その後、最大値を1とするカバー12の透過特性の逆数を示す特性線である設定補正値を、RGBの各画像データの出力値に乗算する。実施例2では、カバー12は、実施例1と同様に、外観色が構造外表面19(図5等参照)と同じ系統である緑色とされているとともに透過させた透過光の色が外観色と等しくなるものとされて、図9に示すように偏りがある透過特性とされている。このため、出力比調整部47では、上述した設定補正値を、カバー12の透過特性に偏りに応じて、外観波長帯域(特に、560nmから580nmの波長帯域)が他の波長帯域である残余波長帯域よりも局所的に低くされたものとする(図11参照)。出力比調整部47は、この設定補正値をRGBの各画像データの出力値に乗算した後、その乗算した各画像データからカラーの画像データを生成し、その画像データを出力変換部46へと出力する。
【0082】
このため、電子回路40B(信号処理回路41B)では、画像生成部45により生成された画像データは、カバー12の透過特性に応じた偏りが生じており、実施例2では全体に緑がかったものとされている。その偏りのある画像データは、出力比調整部47で偏りのない適切な画像データとされた後に、出力変換部46へと出力される。このため、実施例2の撮像システム10Bでは、自然光(白色光)下の白色の物体に対して、白色の画像(画像データ)を生成する。
【0083】
実施例2の撮像システム10Bでは、基本的に実施例1の撮像システム10と同様の構成であることから、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0084】
それに加えて、実施例2の撮像システム10Bでは、補正機構として、電子回路40Bに出力比調整部47を設けるだけであるので、簡易な構成とすることができる。
【0085】
また、撮像システム10Bでは、補正機構としての出力比調整部47におけるRGBの各画像データの出力値の補正する設定補正値を、カバー12の透過特性に偏りに応じて設定していることから、カバー12の影響を効果的に打ち消すことができ、カラー画像をより適切に取得することができる。
【0086】
さらに、撮像システム10Bでは、電子回路40BのAGC回路43Bの増幅量(ゲイン)が、撮像装置11Bにおける特性(主に撮像光学系20の透過特性)を考慮した基本設定とされており、そのAGC回路43Bを経たRGBの各画像データの出力値を補正機構としての出力比調整部47で補正することから、撮影対象として設定される車両Cの後方斜め下側の領域のカラー画像をより適切に取得することができる。
【0087】
撮像システム10Bでは、ゲイン調整機能を有していない撮像素子31Bを有する撮像装置11Bであっても、カバー12の影響を効果的に打ち消すことができ、カラー画像をより適切に取得することができる。
【0088】
したがって、実施例2の撮像システム10Bでは、視野の制限を招くことなく周辺構造物との外観上の差異が生じることを抑制して撮像装置11Bを設けることができる。
【0089】
なお、上記した実施例2では、補正機構としての出力比調整部47の設定補正値を、カバー12の透過特性の偏りにおける高い透過率の領域の画像データの出力値を相対的に低減させる設定としていたが、設定補正値を、カバー12の透過特性の逆数を示す特性線とし、カバー12の透過特性の偏りにおいて、低い透過率の領域の画像データの出力値を相対的に増大するもの(図13参照)としてもよく、上記した実施例2に限定されるものではない。
【0090】
また、上記した実施例2では、補正機構として信号処理回路41Bに出力比調整部47を設けるものとしていたが、信号処理回路41BのAGC回路43Bの増幅量(ゲイン)を実施例1の信号処理回路41と同様に設定することで補正機構として機能させるものであってもよく、上記した実施例2に限定されるものではない。
【0091】
さらに、上記した実施例2では、信号処理回路41BにAGC回路43Bが設けられていたが、出力比調整部47においてカバー12の透過特性の偏りの影響がないものとしている(補正が為されている)ので、AGC回路43Bは設けられていなくてもよく、上記した実施例2に限定されるものではない。なお、AGC回路43Bを設けない場合、出力比調整部47における設定補正値を、より適切にカラー画像を取得すべく撮像装置11Bにおける特性(主に撮像光学系20の透過特性)を考慮して設定することが望ましい。
【0092】
上記した実施例2では、撮像装置11Bの撮像素子31Bがゲイン調整機能を有していないものとされていたが、ゲイン調整機能を有する撮像素子を用いてもよく、上記した実施例2に限定されるものではない。
【実施例3】
【0093】
次に、実施例3の撮像システム10Cについて、図15を用いて説明する。この実施例3の撮像システム10Cは、カバー12の透過特性の影響を打ち消す補正機構の構成が、実施例1の撮像システム10および実施例2の撮像システム10Bとは異なる一例である。この実施例3の撮像システム10C(後方視認支援機構80)は、基本的な構成は上記した実施例1の撮像システム10(後方視認支援機構80)と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図15は、撮像システム10Cのシステム構成の概要を示すブロック図である。
【0094】
実施例3の撮像システム10Cは、図15に示すように、撮像装置11Cおよびカバー12に加えて、画像処理機構50を備える。その撮像装置11Cには、実施例2の撮像素子31Bが搭載されている。これに伴って、撮像システム10Cでは、撮像装置11Cの電子回路40Cの信号処理回路41Cが、AGC回路43BおよびA/D変換器44を有する構成とされている。すなわち、信号処理回路41Cは、撮像素子31Bから入力されるアナログ信号の画像信号(ベイヤー配列のRGB画素データ)をAGC回路43Bで所定の値に増幅し、その増幅されたアナログ信号をA/D変換器44でベイヤー配列のRGB画素データをデジタル信号に変換して、画像処理機構50へと出力する。この実施例3のAGC回路43Bでは、RGBに対応する各受光素子部31bに対する増幅量(ゲイン)が基本設定とされている。
【0095】
画像処理機構50は、撮像装置11Cの信号処理回路41C(電子回路40C)から出力されるデジタル信号(RGB画素データ)に基づいて、カバー12の透過特性に偏りの影響を打ち消した画像データを生成して、その画像データを出力するものである。画像処理機構50は、実施例3では、画像生成部51と出力比調整部52と出力変換部53とを有する。この画像生成部51は、実施例1の画像生成部45(図7参照)と同様であり、デジタル信号に変換されたベイヤー配列のRGB画素データが入力されると、このRGB画素データに基づいて、RGB各色独立に全座標位置の色成分画素データを線形補完によって生成し、この生成した画素データに適宜補正を施した後、各画素データに基づき画像データを生成する。画像生成部51は、生成した画像データを出力比調整部52へ出力する。
【0096】
その出力比調整部52は、実施例2の出力比調整部47(図14参照)と同様であり、画像データ(カラーの画像データ(画像信号))が入力されると、Rの画像データとGの画像データとBの画像データとに分解し、そのRGBの各画像データの出力値に最大値を1とするカバー12の透過特性の逆数を示す特性線である設定補正値を乗算し、その乗算後の各画像データからカラーの画像データを生成する。その設定補正値は、実施例2と同様に、カバー12の透過特性に偏りに応じて、外観波長帯域(特に、560nmから580nmの波長帯域)が他の波長帯域である残余波長帯域よりも局所的に低くされたものとする(図11参照)。このため、出力比調整部52は、被写体像において、外観波長帯域の光により形成される成分であるGに対応する受光素子部31bからの出力信号(G画素データ)と、残余波長帯域の光により形成される成分であるRBに対応する受光素子部31bからの出力信号(RB画素データ)と、における強度の差を打ち消す補正機構として機能する。この出力比調整部52は、生成した画像データを出力変換部53へ出力する。
【0097】
その出力変換部53は、実施例1の出力変換部46(図7参照)と同様であり、入力された画像データを所定の信号に変換して出力する。
【0098】
このため、画像処理機構50では、撮像装置11Cの信号処理回路41C(電子回路40C)から出力されるデジタル信号(RGB画素データ)に基づいて画像生成部51で生成した画像データが、カバー12の透過特性に応じた偏りが生じており、実施例3では全体に緑がかったものとされている。その偏りのある画像データは、出力比調整部52で偏りのない適切な画像データとされた後に、出力変換部53へと出力される。このため、実施例3の撮像システム10Cでは、自然光(白色光)下で白色の物体を、カバー12を介して撮像装置11Cで取得すると、その撮像装置11Cからの出力信号を取得した画像処理機構50(出力比調整部52)がカバー12に起因する色成分の強度を調整し、白色の画像(画像データ)を生成する。
【0099】
実施例3の撮像システム10Cでは、基本的に実施例1の撮像システム10と同様の構成であることから、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0100】
それに加えて、実施例3の撮像システム10Cでは、補正機構として、撮像装置11C(信号処理回路41C(電子回路40C))から出力されるデジタル信号(RGB画素データ(出力信号))に基づいて画像データを生成する画像処理機構50に、出力比調整部52を設けるだけであるので、簡易な構成とすることができる。
【0101】
また、撮像システム10Cでは、補正機構としての出力比調整部52におけるRGBの各画像データの出力値の補正する設定補正値を、カバー12の透過特性に偏りに応じて設定していることから、カバー12の影響を効果的に打ち消すことができ、カラー画像をより適切に取得することができる。
【0102】
さらに、撮像システム10Cでは、撮像装置11Cの信号処理回路41C(電子回路40C)のAGC回路43Bの増幅量(ゲイン)が、撮像装置11Cにおける特性(主に撮像光学系20の透過特性)を考慮した基本設定とされており、そのAGC回路43Bを経たRGBの各画像データの出力値を補正機構としての画像処理機構50の出力比調整部52で補正することから、撮影対象として設定される車両Cの後方斜め下側の領域のカラー画像をより適切に取得することができる。
【0103】
撮像システム10Cでは、ゲイン調整機能を有していない撮像素子31Bを有する撮像装置11Cであっても、カバー12の影響を効果的に打ち消すことができ、カラー画像をより適切に取得することができる。
【0104】
撮像システム10Cでは、撮像装置11Cとは別に画像処理機構50が設けられていることから、撮像装置11Cをより小型なものとすることができる。このため、構造体(実施例3では車両C)の任意の位置への取り付けを容易なものとすることができ、構造体の意匠性の向上により貢献することができる。
【0105】
したがって、実施例3の撮像システム10Cでは、視野の制限を招くことなく周辺構造物との外観上の差異が生じることを抑制して撮像装置11Cを設けることができる。
【0106】
なお、上記した実施例3では、補正機構としての出力比調整部52の設定補正値を、カバー12の透過特性の偏りにおける高い透過率の領域の画像データの出力値を相対的に低減させる設定としていたが、設定補正値を、カバー12の透過特性の逆数を示す特性線とし、カバー12の透過特性の偏りにおいて、低い透過率の領域の画像データの出力値を相対的に増大するもの(図13参照)としてもよく、上記した実施例3に限定されるものではない。
【0107】
また、上記した実施例3では、信号処理回路41CにAGC回路43Bが設けられていたが、画像処理機構50の出力比調整部52においてカバー12の透過特性の偏りの影響がないものとしている(補正が為されている)ので、AGC回路43Bは設けられていなくてもよく、上記した実施例3に限定されるものではない。なお、AGC回路43Bを設けない場合、出力比調整部52における設定補正値を、より適切にカラー画像を取得すべく撮像装置11Cにおける特性(主に撮像光学系20の透過特性)を考慮して設定することが望ましい。
【0108】
上記した実施例3では、撮像装置11Cの撮像素子31Bがゲイン調整機能を有していないものとされていたが、ゲイン調整機能を有する撮像素子を用いてもよく、上記した実施例2に限定されるものではない。
【実施例4】
【0109】
次に、実施例4の撮像システム10Dについて、図16および図17を用いて説明する。この実施例4の撮像システム10Dは、カバー12の透過特性の影響を打ち消す補正機構の構成が、実施例1の撮像システム10、実施例2の撮像システム10Bおよび実施例3の撮像システム10Cとは異なる一例である。この実施例4の撮像システム10D(後方視認支援機構80)は、基本的な構成は上記した実施例1の撮像システム10(後方視認支援機構80)と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図16は、撮像システム10Dの構成の概要を示す説明図である。図17は、バンドパスフィルタ61の透過特性を示すグラフであり、縦軸が最大を1とする透過した光(電磁波)強度の比(バンドパスフィルタ61の透過率)を示し、横軸が波長(nm)を示している。
【0110】
実施例4の撮像システム10Dは、図16に示すように、撮像装置11およびカバー12に加えて、バンドパスフィルタ61を備える。これに伴って、撮像システム10Dでは、撮像装置11の撮像素子31のAGC回路43が、RGBに対応する各受光素子部31bに対する増幅量(ゲイン)が基本設定とされている。
【0111】
バンドパスフィルタ61は、カバー12と撮像装置11との間において、撮影光軸OA上に設けられている。すなわち、撮像システム10Dでは、カバー12を透過してバンドパスフィルタ61を透過した光を撮像装置11で取得する。そのバンドパスフィルタ61は、赤外領域および可視領域の全域の光(電磁波)の透過を許しつつ、波長に対する透過率をカバー12の透過特性に偏りの影響を打ち消すための設定とされている。バンドパスフィルタ61は、実施例4では、図17に示すように、波長に対する透過率がカバー12の透過特性の逆数を示す特性線とされており、外観波長帯域(特に、560nmから580nmの波長帯域)が他の波長帯域である残余波長帯域よりも局所的に低く(略半分)されている。このバンドパスフィルタ61は、カバー12の透過特性の偏りにおける高い透過率の領域の光(電磁波)を相対的に低減する。このため、バンドパスフィルタ61は、被写体像において、外観波長帯域の光により形成される成分と、残余波長帯域の光により形成される成分と、における強度の差を打ち消す補正機構として機能する。
【0112】
これにより、撮像装置11では、カバー12とバンドパスフィルタ61とを透過することにより、そのカバー12の透過特性の偏りを打ち消した光(電磁波)を取得することができる。すなわち、撮像システム10Dは、自然光(白色光)下の白色の物体に対して、白色の画像(画像データ)を生成する。
【0113】
実施例4の撮像システム10Dでは、基本的に実施例1の撮像システム10と同様の構成であることから、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0114】
それに加えて、実施例4の撮像システム10Dでは、補正機構として、カバー12と撮像装置11との間にバンドパスフィルタ61を設けるだけであるので、簡易な構成とすることができる。
【0115】
また、撮像システム10Dでは、補正機構としてのバンドパスフィルタ61における透過率特性をカバー12の透過特性に偏りに応じて設定していることから、カバー12の影響を効果的に打ち消すことができ、カラー画像をより適切に取得することができる。
【0116】
さらに、撮像システム10Dでは、撮像装置11の撮像素子31のAGC回路43の増幅量(ゲイン)が、撮像装置11における特性(主に撮像光学系20(図4等参照)の透過特性)を考慮した基本設定とされており、その撮像装置11でカバー12とバンドパスフィルタ61とを透過することでそのカバー12の透過特性の偏りを打ち消した光(電磁波)を取得することから、撮影対象として設定される車両Cの後方斜め下側の領域のカラー画像をより適切に取得することができる。
【0117】
したがって、実施例4の撮像システム10Dでは、視野の制限を招くことなく周辺構造物との外観上の差異が生じることを抑制して撮像装置11を設けることができる。
【0118】
なお、上記した実施例4では、補正機構としてのバンドパスフィルタ61をカバー12と撮像装置11との間に設けていたが、カバー12と撮像装置11における撮像素子31(図4等参照)との間に設けられていれば、例えば、撮像装置11の光学素子群21(撮像光学系20)における各レンズ21a〜21f(図4参照)のいずれかの間に設けられていてもよく、光学素子群21(撮像光学系20)と撮像素子31との間に設けられていてもよく、実施例4の構成に限定されるものではない。
【0119】
また、上記した実施例4では、撮像装置11にゲイン調整機能を有する撮像素子31を用いていたが、バンドパスフィルタ61においてカバー12の透過特性の偏りの影響がないものとしている(補正が為されている)ので、ゲイン調整機能を有していない撮像素子を用いてもよく、上記した実施例4に限定されるものではない。
【0120】
なお、上記した各実施例では、本発明に係る撮像システムの一例としての撮像システム10、10B、10C、10Dについて説明したが、被写体像を形成する撮像光学系および該撮像光学系により結像される被写体像の取得のための撮像素子を有する撮像装置を、構造体に設置して構成される撮像システムであって、前記構造体の構造外表面と等しい系統の外観色であって透光性を有するカバーを備え、該カバーは、前記撮像光学系と被写体との間であって、前記撮像装置を覆いつつ前記構造外表面に連続する平面を形成して前記構造体に設けられる撮像システムであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0121】
また、上記した各実施例では、カバー12の外観色における系統として、紫、青、緑、黄色、赤、の5つの系統を設定していたが、自然光(白色光)の元で外方から見た際の構造外表面19との色合いの差異を低減する観点から色(色彩)の様相で分類して示すべく色相を大まかに区分して設定するものであれば、区分けの色や区分数は適宜設定すればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0122】
さらに、上記した各実施例では、カバー12は、ガラス材料やポリカーボネイドやアクリル等の透明な材料に外観色の色素を含有させて形成されていたが、外方から見た場合と自然光(白色光)を通して見た場合とで色(系統)を等しくするものであれば、例えば、上記した透明な材料に外観色であって透明な薄膜を蒸着させて形成してもよく、上記した透明な材料に外観色であって透明なフィルタやセロファンを貼り付けるものであってもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0123】
上記した各実施例では、カバー12の外観色が緑色とされていたが、設置対象とする構造体の構造外表面と等しい系統の外観色であればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0124】
上記した各実施例では、撮像装置11、11B、11Cが赤外領域(の波長)の光(電磁波)に対する感度を有する設定とされていたが、可視領域(の波長)の光(電磁波)に対する感度を有するものであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0125】
上記した各実施例では、カバー12が赤外領域(の波長)の全域の光(電磁波)の透過を許すものとされていたが、撮像装置(11、11B、11C)が感度を有する波長帯域の光(電磁波)の透過を許すものであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0126】
上記した各実施例では、カバー12のカバー表面12aにシリカ(SiO)の防汚膜を設けていたが、水や塵埃等の付着をし難くする防汚対策として施されるものであれば、親水作用を利用するものであっても、撥水作用を利用するものであってもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0127】
上記した各実施例では、撮像装置11、11B、11Cが上述した構成とされていたが、撮像光学系とその撮像光学系により結像された被写体像を取得する撮像素子とを有する撮像装置であって、設置対象としての構造体に設置するものであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0128】
上記した各実施例では、撮像システム10、10B、10C、10Dは、設置対象とする構造体として車両Cを選定し、その車両Cにおける後方視認支援機構80を構成すべく車載カメラシステムとして用いるものとされていたが、例えば、車両における事故の状況を記録するためのドライブレコーダーとしての車載カメラシステムや、ATMに搭載する監視カメラシステム等として広く適用することができ、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0129】
上記した各実施例では、ゲインを調整や画像調整した後に出力変換部(46、53)でRGB信号をNTSCやPAL信号に変換していたが、ゲイン調整や画像調整を行っていないRGB信号を出力変換部にてRGB信号をNTSCやPAL信号に変換し、その変換された信号に対して色の画像調整を行う構成であってもよい。このような構成であっても、各実施例と同じ結果を得ることができる。
【0130】
上記した各実施例では、図8、図10、図12において、波長の上限を800nm程度としているが、夜間での感度を上げるためにセンサー(撮像素子31)の長波長側の感度を上げる(取得可能な波長帯域の上限を高くする)構成としてもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。このような構成とする場合、センサー(撮像素子31)での感度設定に応じて、カバー12の波長に対する透過特性を設定することが望ましい。
【0131】
以上、本発明の撮像システムを各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この各実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0132】
10、10B、10C、10D 撮像システム
11、11B、11C 撮像装置
12 カバー
12a カバー表面
19 構造外表面
20 撮像光学系
31 撮像素子
43 (補正機構の一例としての)AGC回路
47 (補正機構の一例としての)出力比調整部
52 (補正機構の一例としての)出力比調整部
61 (補正機構の一例としての)バンドパスフィルタ
OA 撮影光軸
C 車両
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【特許文献1】特開2007−223342号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を形成する撮像光学系および該撮像光学系により結像される被写体像の取得のための撮像素子を有する撮像装置を、構造体に設置して構成される撮像システムであって、
前記構造体の構造外表面と等しい系統の外観色であって透光性を有するカバーを備え、
該カバーは、前記撮像光学系と被写体との間であって、前記撮像装置を覆いつつ前記構造外表面に連続する平面を形成して前記構造体に設けられることを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記カバーは、前記撮像素子が感度を有する波長帯域の光の透過を許すことを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記カバーは、前記外観色を形成する外観波長帯域の光の外観透過率に対して、前記外観波長帯域以外の残余波長帯域の光の残余透過率が低い値であることを特徴とする請求項2に記載の撮像システム。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像システムであって、
さらに、前記被写体像のうち、前記外観波長帯域の光により形成される成分と、前記残余波長帯域の光により形成される成分と、における強度の差を打ち消す補正機構を備えることを特徴とする撮像システム。
【請求項5】
前記補正機構は、前記撮像素子から色成分毎に出力される出力信号の強度を調整することを特徴とする請求項4に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記撮像装置は、前記撮像素子から出力される出力信号に基づいて画像データを生成する画像生成部を有し、
前記補正機構は、前記画像生成部が生成した前記画像データにおける色成分毎の画像信号の強度を調整することを特徴とする請求項4に記載の撮像システム。
【請求項7】
請求項4に記載の撮像システムであって、
さらに、前記撮像装置からの出力信号が入力され、該出力信号に基づいて画像データを生成する画像生成部を備え、
前記補正機構は、前記画像生成部が生成した前記画像データにおける色成分毎の画像信号の強度を調整することを特徴とする撮像システム。
【請求項8】
前記補正機構は、前記カバーと前記撮像素子との間に設けられ、前記外観透過率と前記残余透過率との差を打ち消すバンドパスフィルタであることを特徴とする請求項4に記載の撮像システム。
【請求項9】
前記補正機構は、前記外観透過率と前記残余透過率と前記撮像光学系の透過率とに基づいて、前記撮像素子が感度を有する波長帯域の全域に渡って等しい強度とすることを特徴とする請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の撮像システム。
【請求項10】
前記撮像素子は、可視領域と赤外線域とに感度を有することを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の撮像システム。
【請求項11】
前記カバーは、前記構造外表面に連続するカバー表面に防汚膜が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の撮像システム。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の撮像システムを用いることを特徴とする車載カメラシステム。
【請求項13】
請求項12に記載の車載カメラシステムが搭載されていることを特徴とする車両。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−115701(P2013−115701A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261749(P2011−261749)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】