説明

撮像光学系及び撮像装置

【課題】 小型化及び高画質化を図る。
【解決手段】 光路上に少なくとも1枚のレンズ2が配置され、フィルム状の樹脂材料によって形成された第1の赤外線吸収フィルター3と赤外線吸収作用を有する多層膜4とフィルム状の樹脂材料によって形成された第2の赤外線吸収フィルター5とが前記光路上において物体側から像側へ順に配置され、多層膜が分光特性の調整機能と反射特性を有するようにした。
また、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの透過率や反射率に関する所定の条件式を満足するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像光学系及び撮像装置に関する。詳しくは、撮像素子に入射する光の分光特性を光路内に配置された第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターによって調整し高画質化等を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像装置の高画質化と小型化の要求が高まっている。この要求に応えるために、撮像装置に用いられる固体撮像素子として、高密度CCD(Charge Coupled Device)や高密度CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)を用いた上で、撮像光学系を小型化する等の手段が提案されている。
【0003】
上記のような固体撮像素子を用いた撮像装置において、高画質化を図るために撮像光学系の高解像度化を実現している技術が多く知られている。
【0004】
ところが、高画質化を実現するためには、高解像度化とは別の手段として、画像や映像の良好な色再現性を確保することも非常に重要である。
【0005】
撮像装置には、一般に、レンズ等とともに撮像光学系を構成する赤外線吸収フィルター等の光学フィルターが光路上に配置されている(例えば、特許文献1参照)。従って、理想的な色再現性を実現するためには、赤外線吸収フィルター等の光学フィルターの分光特性の適正な調整を行う必要がある。
【0006】
また、撮像光学系やレンズユニットの小型化に伴い、レンズユニットを構成する光学部材や撮像光学系を構成する多層膜等の各部材で光が反射して迷光となり、撮像素子に迷光が入射されることにより色再現性の低下を生じ易くなっている。
【0007】
従って、高画質化と小型化の両立を図るためには、上記した迷光の発生を抑制して撮像素子に入射される迷光を低減することが重要である。
【0008】
【特許文献1】特開2006−220873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、従来においては、小型化を図り迷光の発生を抑制して高画質化を実現することが十分に行われていなかった。
【0010】
そこで、本発明撮像光学系及び撮像装置は、上記した問題点を克服し、小型化及び高画質化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
撮像光学系は、上記した課題を解決するために、光路上に少なくとも1枚のレンズが配置され、フィルム状の樹脂材料によって形成された第1の赤外線吸収フィルターと赤外線吸収作用を有する多層膜とフィルム状の樹脂材料によって形成された第2の赤外線吸収フィルターとが前記光路上において物体側から像側へ順に配置され、前記多層膜が分光特性の調整機能と反射特性を有し、以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにしたものである。
(1)0.84<R1/R2<1.2
(2)0.8<λ1/λ2<1.25
(3)T2/T1<1.0
(4)T3/T4<0.05
但し、
R1:第1の赤外線吸収フィルターを物体側から透過して多層膜で反射し第1の赤外線吸収フィルターを像側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
R2:第2の赤外線吸収フィルターを像側から透過して多層膜で反射し第2の赤外線吸収フィルターを物体側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
λ1:第1の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
λ2:第2の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
T1:第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T2:多層膜における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T3:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700nmの光の透過率
T4:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長540nmの光の透過率
とする。
【0012】
従って、撮像光学系にあっては、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターによって画像及び映像の生成に有害な光の成分が吸収されて有害な光の成分の撮像素子への入射が低減される。
【0013】
上記した撮像光学系においては、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)0.85<λ5/λ6
但し、
λ5:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長450nm以下の光の透過率が80%になる波長の値
λ6:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長450nm以下の光の透過率が20%になる波長の値
とする。
【0014】
条件式(5)を満足することにより、紫外線吸収作用により短波長側の有害な反射光の発生が抑制される。
【0015】
上記した撮像光学系においては、前記第1の赤外線吸収フィルターと前記第2の赤外線吸収フィルターの光軸方向における厚みをそれぞれ10μm以上120μm以下とすることが望ましい。
【0016】
第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの光軸方向における厚みをそれぞれ10μm以上120μm以下とすることにより、光路の短縮化及び第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの配置スペースの低減が図られる。
【0017】
上記した撮像光学系においては、前記多層膜をガラス基板上に形成することが望ましい。
【0018】
多層膜をガラス基板上に形成することにより、多層膜の線膨張係数とガラス基板の線膨張係数の差が小さい。
【0019】
上記した撮像光学系においては、前記多層膜を前記第1の赤外線吸収フィルター上又は前記第2の赤外線吸収フィルター上に形成することが望ましい。
【0020】
多層膜を第1の赤外線吸収フィルター上又は第2の赤外線吸収フィルター上に形成することにより、多層膜を形成するためのガラス基板が不要となる。
【0021】
上記した撮像光学系においては、前記第1の赤外線吸収フィルターと前記多層膜の間又は前記多層膜と前記第2の赤外線吸収フィルターの間の少なくとも一方に空気層を形成することが望ましい。
【0022】
第1の赤外線吸収フィルターと多層膜の間又は多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの間の少なくとも一方に空気層を形成することにより、第1の赤外線吸収フィルター又は第2の赤外線吸収フィルターの膨張又は収縮が抑制される。
【0023】
上記した撮像光学系においては、前記第1の赤外線吸収フィルターと前記多層膜と前記第2の赤外線吸収フィルターを光軸方向において密着させることが望ましい。
【0024】
第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターを光軸方向において密着させることにより、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜の間及び多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの間に空気層が存在しなくなる。
【0025】
上記した撮像光学系においては、前記第1の赤外線吸収フィルターと前記多層膜と前記第2の赤外線吸収フィルターを前記光路上における最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置することが望ましい。
【0026】
第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターを光路上における最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置することにより、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの面精度により発生する収差の画質への影響が低減される。
【0027】
上記した撮像光学系においては、前記第1の赤外線吸収フィルターと前記第2の赤外線吸収フィルターの基材を環状オレフィン系樹脂により形成することが望ましい。
【0028】
第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの基材を環状オレフィン系樹脂により形成することにより、第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターが環状オレフィン系樹脂の特性を有する。
【0029】
上記した撮像光学系においては、前記第1の赤外線吸収フィルターと前記第2の赤外線吸収フィルターの基材に赤外線吸収作用を有する着色剤を含有させ、前記着色剤として少なくとも一種類の有機系色素を用いることが望ましい。
【0030】
第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの基材に赤外線吸収作用を有する着色剤を含有させ、着色剤として少なくとも一種類の有機系色素を用いることにより、着色剤への無機系色素の使用量を低減することが可能となる。
【0031】
撮像装置は、上記した課題を解決するために、撮像光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子を備え、前記撮像光学系が、光路上に少なくとも1枚のレンズが配置され、フィルム状の樹脂材料によって形成された第1の赤外線吸収フィルターと赤外線吸収作用を有する多層膜とフィルム状の樹脂材料によって形成された第2の赤外線吸収フィルターとが前記光路上において物体側から像側へ順に配置され、前記多層膜が分光特性の調整機能と反射特性を有し、以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにしたものである。
(1)0.84<R1/R2<1.2
(2)0.8<λ1/λ2<1.25
(3)T2/T1<1.0
(4)T3/T4<0.05
但し、
R1:第1の赤外線吸収フィルターを物体側から透過して多層膜で反射し第1の赤外線吸収フィルターを像側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
R2:第2の赤外線吸収フィルターを像側から透過して多層膜で反射し第2の赤外線吸収フィルターを物体側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
λ1:第1の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
λ2:第2の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
T1:第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T2:多層膜における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T3:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700nmの光の透過率
T4:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長540nmの光の透過率
とする。
【0032】
従って、撮像光学系にあっては、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターによって画像及び映像の生成に有害な光の成分が吸収されて有害な光の成分の撮像素子への入射が低減される。
【発明の効果】
【0033】
本発明撮像光学系は、光路上に少なくとも1枚のレンズが配置され、フィルム状の樹脂材料によって形成された第1の赤外線吸収フィルターと赤外線吸収作用を有する多層膜とフィルム状の樹脂材料によって形成された第2の赤外線吸収フィルターとが前記光路上において物体側から像側へ順に配置され、前記多層膜が分光特性の調整機能と反射特性を有し、以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにしている。
(1)0.84<R1/R2<1.2
(2)0.8<λ1/λ2<1.25
(3)T2/T1<1.0
(4)T3/T4<0.05
但し、
R1:第1の赤外線吸収フィルターを物体側から透過して多層膜で反射し第1の赤外線吸収フィルターを像側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
R2:第2の赤外線吸収フィルターを像側から透過して多層膜で反射し第2の赤外線吸収フィルターを物体側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
λ1:第1の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
λ2:第2の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
T1:第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T2:多層膜における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T3:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700nmの光の透過率
T4:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長540nmの光の透過率
とする。
【0034】
従って、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターによって画像及び映像の生成に有害な光の成分が吸収されて有害な光の成分の撮像素子への入射が低減され、小型化及び高画質化を図ることができる。
【0035】
請求項2に記載した発明にあっては、以下の条件式(5)を満足するようにしている。
(5)0.85<λ5/λ6
但し、
λ5:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長450nm以下の光の透過率が80%になる波長の値
λ6:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長450nm以下の光の透過率が20%になる波長の値
とする。
【0036】
従って、紫外線吸収作用により短波長側の有害な反射光の発生を抑制することが可能となり、高画質化を図ることができる。
【0037】
請求項3に記載した発明にあっては、前記第1の赤外線吸収フィルターと前記第2の赤外線吸収フィルターの光軸方向における厚みをそれぞれ10μm以上120μm以下としている。
【0038】
従って、撮像光学系の小型化を図ることができる。
【0039】
請求項4に記載した発明にあっては、前記多層膜をガラス基板上に形成している。
【0040】
従って、多層膜の線膨張係数に対してガラス基板の線膨張係数が近いため、撮像光学系が備えられる撮像装置の使用時における温度に起因する多層膜の破損等を防止することができる。
【0041】
請求項5に記載した発明にあっては、前記多層膜を前記第1の赤外線吸収フィルター上又は前記第2の赤外線吸収フィルター上に形成している。
【0042】
従って、多層膜を形成するためのガラス基板が不要となり、小型化を図ることができる。
【0043】
請求項6に記載した発明にあっては、前記第1の赤外線吸収フィルターと前記多層膜の間又は前記多層膜と前記第2の赤外線吸収フィルターの間の少なくとも一方に空気層を形成している。
【0044】
従って、第1の赤外線吸収フィルター又は第2の赤外線吸収フィルター自体の線膨張係数による劣化を抑制することができる。
【0045】
請求項7に記載した発明にあっては、前記第1の赤外線吸収フィルターと前記多層膜と前記第2の赤外線吸収フィルターを光軸方向において密着させている。 従って、一層の小型化を図ることができる。
【0046】
請求項8に記載した発明にあっては、前記第1の赤外線吸収フィルターと前記多層膜と前記第2の赤外線吸収フィルターを前記光路上における最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置している。
【0047】
従って、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの面精度により発生する収差の画質への影響が低減され、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターを保持する構造の成形精度の高精度化を必要としなくなる。
【0048】
請求項9に記載した発明にあっては、前記第1の赤外線吸収フィルターと前記第2の赤外線吸収フィルターの基材を環状オレフィン系樹脂により形成している。
【0049】
従って、高い透過率と撮像光学系の使用時における温度に対する適正な線膨張係数と低い複屈折性能を有することが可能となる
請求項10に記載した発明にあっては、前記第1の赤外線吸収フィルターと前記第2の赤外線吸収フィルターの基材に赤外線吸収作用を有する着色剤を含有させ、前記着色剤として少なくとも一種類の有機系色素を用いている。
【0050】
従って、無機系色素の使用量を低減することが可能となり、粒子の大きさによるフレアの発生等の画質の劣化を抑制することができる。
【0051】
本発明撮像装置は、撮像光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子を備え、前記撮像光学系が、光路上に少なくとも1枚のレンズが配置され、フィルム状の樹脂材料によって形成された第1の赤外線吸収フィルターと赤外線吸収作用を有する多層膜とフィルム状の樹脂材料によって形成された第2の赤外線吸収フィルターとが前記光路上において物体側から像側へ順に配置され、前記多層膜が分光特性の調整機能と反射特性を有し、以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにしている。
(1)0.84<R1/R2<1.2
(2)0.8<λ1/λ2<1.25
(3)T2/T1<1.0
(4)T3/T4<0.05
但し、
R1:第1の赤外線吸収フィルターを物体側から透過して多層膜で反射し第1の赤外線吸収フィルターを像側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
R2:第2の赤外線吸収フィルターを像側から透過して多層膜で反射し第2の赤外線吸収フィルターを物体側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
λ1:第1の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
λ2:第2の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
T1:第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T2:多層膜における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T3:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700nmの光の透過率
T4:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長540nmの光の透過率
とする。
【0052】
従って、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターによって画像及び映像の生成に有害な光の成分が吸収されて有害な光の成分の撮像素子への入射が低減され、小型化及び高画質化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下に、本発明撮像光学系及び撮像装置を実施するための最良の形態について説明する。
【0054】
[本発明の概念]
以下に、本発明の概念について説明する(図1及び図2参照)。
【0055】
撮像光学系1は光路上に配置された複数のレンズ2、2、・・・と第1の赤外線吸収フィルター3と多層膜4と第2の赤外線吸収フィルター5とを有している(図1参照)。
【0056】
光路上の最も像側にはCCDやCMOS等の撮像素子6が配置されている。
【0057】
レンズ2、2、・・・は単体又は複数の集合によって複数のレンズ群を構成している。
【0058】
第1の赤外線吸収フィルター3と多層膜4と第2の赤外線吸収フィルター5は、例えば、レンズ2、2、・・・の像側において、物体側から像側へ順に配置されている。第1の赤外線吸収フィルター3と第2の赤外線吸収フィルター5はフィルム状の樹脂材料によって形成されている。多層膜4は赤外線吸収作用を有し、分光特性の調整機能と反射特性をも有している。
【0059】
上記のような構成において、被写体7で反射された光束S0が撮像光学系1に入射されると、入射された光束S0はレンズ2、2、・・・を透過されて第1の赤外線吸収フィルター3に入射され該第1の赤外線吸収フィルター3を透過されて透過光束S1として多層膜4へ向かう。光束S0が第1の赤外線吸収フィルター3を透過されるときには、光束S0に含まれる画像及び映像の生成に有害な光の成分の少なくとも一部が第1の赤外線吸収フィルター3によって吸収される。
【0060】
第1の赤外線吸収フィルター3を透過された透過光束S1は多層膜4に入射され、該多層膜4を透過される透過光束S2と多層膜4で反射される反射光束S3とに分離される。透過光束S1が多層膜4を透過されるときには、透過光束S1に含まれる画像及び映像の生成に有害な光の成分の少なくとも一部が多層膜4によって吸収される。
【0061】
透過光束S2は第2の赤外線吸収フィルター5に入射され該第2の赤外線吸収フィルター5を透過されて透過光束S4として撮像素子6に入射される。透過光束S2が第2の赤外線吸収フィルター5を透過されるときには、透過光束S2に含まれる画像及び映像の生成に有害な光の成分の少なくとも一部が第2の赤外線吸収フィルター5によって吸収される。
【0062】
多層膜4で反射された反射光束S3は再び第1の赤外線吸収フィルター3に入射され該第1の赤外線吸収フィルター3を透過されて透過光束S5としてレンズ2、2、・・・側へ向かう。反射光束S3が第1の赤外線吸収フィルター3を透過されるときには、反射光束S3に含まれる画像及び映像の生成に有害な光の成分の少なくとも一部が第1の赤外線吸収フィルター3によって吸収される。
【0063】
透過光束5はレンズ2、2、・・・で反射され反射光束S6として再び第1の赤外線吸収フィルター3に入射される。反射光束S6が第1の赤外線吸収フィルター3を透過されるときには、反射光束S6に含まれる画像及び映像の生成に有害な光の成分の少なくとも一部が第1の赤外線吸収フィルター3によって吸収される。
【0064】
第1の赤外線吸収フィルター3を透過された透過光束S7は再び多層膜4へ向かい、上記と同様にして、透過と反射が行われ、画像及び映像の生成に有害な光の成分が第1の赤外線吸収フィルター3、多層膜4又は第2の赤外線吸収フィルター5によって吸収される。
【0065】
一方、第2の赤外線吸収フィルター5を透過されて撮像素子6に入射された透過光束S4においても、一部が撮像素子6で反射されて反射光束S8として第2の赤外線吸収フィルター5へ向かう(図2参照)。
【0066】
撮像素子6で反射された反射光束S8は再び第2の赤外線吸収フィルター5に入射され該第2の赤外線吸収フィルター5を透過されて透過光束S9として多層膜4へ向かう。反射光束S8が第2の赤外線吸収フィルター5を透過されるときには、反射光束S8に含まれる画像及び映像の生成に有害な光の成分の少なくとも一部が第2の赤外線吸収フィルター5によって吸収される。
【0067】
透過光束S9は多層膜4を透過される透過光束S10と多層膜4で反射される反射光束S11とに分離される。透過光束S9が多層膜4を透過されるときには、透過光束S9に含まれる画像及び映像の生成に有害な光の成分の少なくとも一部が多層膜4によって吸収される。
【0068】
透過光束S10は上記した反射光束S3と同様に第1の赤外線吸収フィルター3へ向かう。
【0069】
反射光束S11は再び第2の赤外線吸収フィルター5に入射され該第2の赤外線吸収フィルター5を透過されて透過光束S12として撮像素子6へ向かう。反射光束S11が第2の赤外線吸収フィルター5を透過されるときには、反射光束S11に含まれる画像及び映像の生成に有害な光の成分の少なくとも一部が第2の赤外線吸収フィルター5によって吸収される。
【0070】
撮像素子6へ向かった透過光束S12は、上記と同様にして、入射と反射が行われ、画像及び映像の生成に有害な光の成分が第1の赤外線吸収フィルター3、多層膜4又は第2の赤外線吸収フィルター5によって吸収される。
【0071】
本発明は、上記のように、第1の赤外線吸収フィルター3、多層膜4及び第2の赤外線吸収フィルター5によって画像及び映像の生成に有害な光の成分を吸収するように構成されている。本発明は、このとき画像及び映像の生成に必要な光の成分が第1の赤外線吸収フィルター3、多層膜4及び第2の赤外線吸収フィルター5によって吸収されることなく撮像素子6に入射されるように分光特性の調整の最適化を図るようにしている。
【0072】
[赤外線吸収フィルター等の構成例]
以下に、第1の赤外線吸収フィルター3、多層膜4及び第2の赤外線吸収フィルター5の構成例について説明する(図3乃至図6参照)。
【0073】
第1の赤外線吸収フィルター3及び第2の赤外線吸収フィルター5はそれぞれフィルム状の樹脂材料によって形成されている。
【0074】
多層膜4は、例えば、Ti、Si、Nb、Ta、La等の酸化金属によって形成され所定の機能を有する多数の機能層が積層されて構成されている。尚、図3乃至図6には、多層膜4については機能層を簡略化して図示し、以下には、赤外線吸収層と紫外線吸収層のみを機能層の例として示す。
【0075】
図3に、第1の赤外線吸収フィルター3、多層膜4及び第2の赤外線吸収フィルター5の第1の構成例を示す。
【0076】
多層膜4はガラス基板8の一方の面8aに機能層として赤外線吸収層9と紫外線吸収層10が積層されて形成されている。尚、一方の面8aは物体側を向く面であってもよく、像側を向く面であってもよい。また、赤外線吸収層9と紫外線吸収層10は何れが物体側と像側に形成されていてもよい。
【0077】
第1の赤外線吸収フィルター3と多層膜4の間には第1の空気層11が形成され、多層膜4と第2の赤外線吸収フィルター5の間には第2の空気層12が形成されている。
【0078】
図4に、第1の赤外線吸収フィルター3、多層膜4及び第2の赤外線吸収フィルター5の第2の構成例を示す。
【0079】
多層膜4はガラス基板8の一方の面8aと他方の面8bに機能層として赤外線吸収層9と紫外線吸収層10がそれぞれ形成されている。尚、赤外線吸収層9と紫外線吸収層10はそれぞれ他方の面8bと一方の面8aに形成されていてもよい。
【0080】
第1の赤外線吸収フィルター3と多層膜4の間には第1の空気層11が形成され、多層膜4と第2の赤外線吸収フィルター5の間には第2の空気層12が形成されている。
【0081】
上記した第1の構成例及び第2の構成例のように、多層膜4をガラス基板8上に形成することにより、多層膜4を構成する機能層の線膨張係数に対して基板(ガラス基板8)の線膨張係数を近付けることが可能となる。従って、撮像光学系1が備えられる撮像装置の使用時における温度に起因する多層膜4の破損等を防止することができる。
【0082】
図5に、第1の赤外線吸収フィルター3、多層膜4及び第2の赤外線吸収フィルター5の第3の構成例を示す。
【0083】
多層膜4は第1の赤外線吸収フィルター3の一方の面(像側の面)3aに赤外線吸収層9と紫外線吸収層10が積層されて形成されている。尚、多層膜4は第2の赤外線吸収フィルター5の第1の赤外線吸収フィルター3に対向する側の面(物体側の面)に赤外線吸収層9と紫外線吸収層10が積層されて形成されていてもよい。また、赤外線吸収層9と紫外線吸収層10は何れが物体側と像側に形成されていてもよい。
【0084】
多層膜4と第2の赤外線吸収フィルター5の間には空気層13が形成されている。尚、多層膜4が第2の赤外線吸収フィルター5の第1の赤外線吸収フィルター3に対向する側の面に積層されて形成されている場合には、第1の赤外線吸収フィルター3と多層膜4の間に空気層13が形成される。
【0085】
尚、第1の赤外線吸収フィルター3、多層膜4及び第2の赤外線吸収フィルター5の第1の構成例乃至第3の構成例において、空気層11、12、13の厚み(光軸方向における距離)は必要に応じて変更することが可能である。
【0086】
上記した第3の構成例のように、多層膜4を第1の赤外線吸収フィルター3上又は第2の赤外線吸収フィルター5上に形成することにより、ガラス基板8が不要となり、小型化を図ることができる。
【0087】
また、上記した第1の構成例乃至第3の構成例のように、第1の赤外線吸収フィルター3と多層膜4の間又は多層膜4と第2の赤外線吸収フィルター5の間の少なくとも一方に空気層11、12、13を形成することにより、第1の赤外線吸収フィルター3又は第2の赤外線吸収フィルター5自体の線膨張係数による劣化を抑制することができる。
【0088】
図6に、第1の赤外線吸収フィルター3、多層膜4及び第2の赤外線吸収フィルター5の第4の構成例を示す。
【0089】
多層膜4は第1の赤外線吸収フィルター3と第2の赤外線吸収フィルター5の間に密着された状態で赤外線吸収層9と紫外線吸収層10が積層されて形成されている。従って、空気層は第1の赤外線吸収フィルター3と多層膜4の間にも多層膜4と第2の赤外線吸収フィルター5の間にも存在しない。
【0090】
上記した第4の構成例のように、第1の赤外線吸収フィルター3と多層膜4と第2の赤外線吸収フィルター5を光軸方向において密着させることにより、一層の小型化を図ることができる。
【0091】
[撮像光学系の構成]
本発明撮像光学系は、光路上に少なくとも1枚のレンズが配置され、フィルム状の樹脂材料によって形成された第1の赤外線吸収フィルターと赤外線吸収作用を有する多層膜とフィルム状の樹脂材料によって形成された第2の赤外線吸収フィルターとが光路上において物体側から像側へ順に配置され、多層膜が分光特性の調整機能と反射特性を有している。
【0092】
このように撮像光学系を構成することにより、上記したように、第1の赤外線吸収フィルター、多層膜及び第2の赤外線吸収フィルターによって画像及び映像の生成に有害な光の成分が吸収され、撮像素子に画像及び映像の生成に必要な光の成分が入射される。
【0093】
本発明撮像光学系は、以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにされている。
(1)0.84<R1/R2<1.2
(2)0.8<λ1/λ2<1.25
(3)T2/T1<1.0
(4)T3/T4<0.05
但し、
R1:第1の赤外線吸収フィルターを物体側から透過して多層膜で反射し第1の赤外線吸収フィルターを像側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
R2:第2の赤外線吸収フィルターを像側から透過して多層膜で反射し第2の赤外線吸収フィルターを物体側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
λ1:第1の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
λ2:第2の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
T1:第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T2:多層膜における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T3:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700nmの光の透過率
T4:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長540nmの光の透過率
とする。
【0094】
条件式(1)は、多層膜の両面における反射率のバランスを規定する式である。また、条件式(2)は第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの吸収率のバランスを規定する式である。
【0095】
条件式(1)又は条件式(2)の何れかの上限を超えると、多層膜で第1の赤外線吸収フィルター側に反射した光のうち波長680乃至780nm付近の有害な近赤外光の光量が増えてしまう。
【0096】
逆に、条件式(1)又は条件式(2)の何れかの下限を超えると、多層膜で第2の赤外線吸収フィルター側に反射した光のうち波長680乃至780nm付近の有害な近赤外光の光量が増えてしまう。
【0097】
このように条件式(1)又は条件式(2)の何れかの上限又は下限を超えることにより、多層膜の物体側と像側における有害な近赤外光の光量のバランスが崩れ、迷光が強調されて画質の劣化が生じてしまう。
【0098】
従って、撮像光学系が条件式(1)及び条件式(2)を満足することにより、多層膜の物体側と像側における有害な近赤外光の光量のバランスが均衡し、画質の向上を図ることができる。
【0099】
条件式(3)は、波長700nm乃至725nmの光の第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの合成における平均透過率と多層膜の平均透過率との関係を規定する式である。尚、第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの合成における光の平均透過率とは、第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの双方を透過したときの光の平均透過率である。
【0100】
条件式(3)の上限を超えると、多層膜で反射される波長700nm乃至725nmの有害な光を第1の赤外線吸収フィルターで吸収することが困難となり、撮像素子に入射する有害な光の光量を低減することができなくなる。
【0101】
従って、撮像光学系が条件式(3)を満足することにより、多層膜で反射される波長700nm乃至725nmの有害な光の第1の赤外線吸収フィルターでの吸収量を増加させることができ、撮像素子に入射する有害な光を低減することができる。
【0102】
条件式(4)は、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における透過率に関する式である。尚、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における光の透過率とは、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの全てを透過したときの光の透過率である。
【0103】
条件式(4)の上限をT4の値が低くなることにより超えると、波長540nm乃至700nmの必要な光量を十分に確保することが困難となってしまう。
【0104】
一方、条件式(4)の上限をT3の値が高くなることにより超えると、有害な近赤外光の光量が増えて迷光が強調され画質が劣化してしまう。このとき撮像素子の信号処理による調整等によって画質の劣化を補正しようとすると、目視では認識できない赤外領域の光が強調されてしまい、最適な色再現性を確保することが困難となってしまう。
【0105】
従って、撮像光学系が条件式(4)を満足することにより、波長540nm乃至700nmの必要な光量を十分に確保することができると共に有害な近赤外光の光量を低減することができ、高画質化を図ることができる。
【0106】
以上に記載した通り、本発明撮像光学系にあっては、第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの間に分光特性の調整機能を有する多層膜を配置し、条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにされている。
【0107】
従って、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターによって画像及び映像の生成に有害な光の成分が吸収されて有害な光の成分の撮像素子への入射が低減され、高画質化を図ることができる。
【0108】
また、画像及び映像の生成に有害な光の成分は第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの物体側及び像側に配置される部品によって分光特性や輝度が異なる。
【0109】
従って、これらの部品による有害な光の成分の分光特性や輝度に応じて第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの分光特性を定めることにより、分光特性の最適化を図ることが可能となる。
【0110】
さらに、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターは合成における特性として波長400nm乃至1200nmに吸収特性と反射特性を有しているため、撮像素子に入射する光の分光強度バランス、例えば、青色領域、緑色領域、赤色領域の光強度バランスを最適に調整することが可能となる。
【0111】
従って、画像及び映像のホワイトバランス調整や色再現を良好に行うことが可能となる上、過度な電気的色調整を行うことによる色ノイズの発生も除去することが可能となり、画像及び映像における色調整を最適化する透過光特性を確保することが可能となる。
【0112】
尚、撮像光学系及びこれを備えた撮像装置の小型化を図ろうとしたときには、入射光線の透過率(反射率)が所定の波長領域で急激に変化したり、撮像素子に入射する迷光が増加し易くなる。
【0113】
しかしながら、このような小型化を図ったときにおいても、条件式(1)乃至条件式(4)を満足するように撮像光学系を構成することにより、迷光の増加を効果的に抑制することができると共に画像及び映像の色再現性の向上をも図ることが可能となるため、画質の大幅な向上を図ることができる。
【0114】
本発明の一実施形態による撮像光学系にあっては、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)0.85<λ5/λ6
但し、
λ5:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長450nm以下の光の透過率が80%になる波長の値
λ6:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長450nm以下の光の透過率が20%になる波長の値
とする。
【0115】
条件式(5)は、多層膜の短波長側の分光波形の傾斜角度を規定する式である。
【0116】
条件式(5)の下限を超えると、短波長側における反射率が高くなるため、有害な反射光が増え画質の劣化を生じてしまう。
【0117】
従って、撮像光学系が条件式(5)を満足することにより、紫外線吸収作用により短波長側の有害な反射光の発生を抑制することが可能となり、高画質化を図ることができる。
【0118】
本発明の一実施形態による撮像光学系にあっては、第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの光軸方向における厚みをそれぞれ10μm以上120μm以下とすることが望ましい。
【0119】
第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの光軸方向における厚みをそれぞれ10μm以上120μm以下とすることにより、撮像光学系の小型化を図ることが可能となる。特に、低照度撮影時に赤外線吸収作用を有する光学フィルターを出し入れするような撮像光学系においては、軽量化による可動部の重量を低減することが可能となる。
【0120】
また、第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの厚みをそれぞれ10μm以上にすることにより、第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターを平面の状態で安定して保持することができる。
【0121】
本発明の一実施形態による撮像光学系にあっては、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターを光路上における最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置することが望ましい。
【0122】
第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターを最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置することにより、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの面精度により発生する収差の画質への影響を低減することが可能となる。従って、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターを保持する構造の成形精度の高精度化を必要としなくなる。
【0123】
本発明の一実施形態による撮像光学系にあっては、第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの基材を環状オレフィン系樹脂により形成することが望ましい。
【0124】
第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの基材を環状オレフィン系樹脂により形成することにより、高い透過率と撮像光学系の使用時における温度に対する適正な線膨張係数と低い複屈折性能を有することが可能となる。
【0125】
本発明の一実施形態による撮像光学系にあっては、第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの基材に赤外線吸収作用を有する着色剤を含有させ、該着色剤として少なくとも一種類の有機系色素を用いることが望ましい。
【0126】
着色剤として少なくとも一種類の有機系色素を用いることにより、無機系色素の使用量を低減することが可能となり、粒子の大きさによるフレアの発生等の画質の劣化を抑制することができる。
【0127】
[撮像光学系の数値実施例]
以下に、本発明撮像光学系の具体的な実施の形態について、表及び図面を参照して説明する。
【0128】
表1に、第1の実施の形態、第2の実施の形態及び第3の実施の形態に係る撮像光学系A、撮像光学系B及び撮像光学系Cにおける上記条件式(1)乃至条件式(5)の各値を示す。
【0129】
【表1】

【0130】
表1から明らかなように、撮像光学系A、撮像光学系B及び撮像光学系Cは何れも条件式(1)乃至条件式(5)を満足するようにされている。
【0131】
図7乃至図10は、撮像光学系Aにおける分光透過特性を示すグラフ図である。図7は第1の赤外線吸収フィルターの透過率を示し、図8は第2の赤外線吸収フィルターの透過率を示し、図9は多層膜の透過率を示し、図10は第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における透過率を示している。
【0132】
撮像光学系Aにあっては、図7及び図8に示す第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの近赤外領域における透過率がこれより短波長側の透過率に比して低くされており、近赤外領域における光の良好な吸収作用を有している。また、図9に示す多層膜の透過率において波長650nm乃至700nmの領域の透過率が急激に変化し、図10に示す合成の透過率において波長550nm乃至700nmの領域の透過率が緩やかに変化している。
【0133】
従って、画像及び映像の生成に有害な近赤外領域の光の成分が吸収されて有害な光の成分の撮像素子への入射が低減されると共に画像及び映像の生成に必要な光の成分が撮像素子に入射され、高画質化を図ることができる。
【0134】
図11乃至図14は、撮像光学系Bにおける分光透過特性を示すグラフ図である。図11は第1の赤外線吸収フィルターの透過率を示し、図12は第2の赤外線吸収フィルターの透過率を示し、図13は多層膜の透過率を示し、図14は第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における透過率を示している。
【0135】
撮像光学系Bにあっては、図11及び図12に示す第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの近赤外領域における透過率がこれより短波長側の透過率に比して低くされており、近赤外領域における光の良好な吸収作用を有している。また、図13に示す多層膜の透過率において波長650nm乃至700nmの領域の透過率が急激に変化し、図14に示す合成の透過率において波長550nm乃至700nmの領域の透過率が緩やかに変化している。
【0136】
従って、画像及び映像の生成に有害な近赤外領域の光の成分が吸収されて有害な光の成分の撮像素子への入射が低減されると共に画像及び映像の生成に必要な光の成分が撮像素子に入射され、高画質化を図ることができる。
【0137】
図15乃至図18は、撮像光学系Cにおける分光透過特性を示すグラフ図である。図15は第1の赤外線吸収フィルターの透過率を示し、図16は第2の赤外線吸収フィルターの透過率を示し、図17は多層膜の透過率を示し、図18は第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における透過率を示している。
【0138】
撮像光学系Cにあっては、図15及び図16に示す第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの近赤外領域における透過率がこれより短波長側の透過率に比して低くされており、近赤外領域における光の良好な吸収作用を有している。また、図17に示す多層膜の透過率において波長650nm乃至700nmの領域の透過率が急激に変化し、図18に示す合成の透過率において波長550nm乃至700nmの領域の透過率が緩やかに変化している。
【0139】
従って、画像及び映像の生成に有害な近赤外領域の光の成分が吸収されて有害な光の成分の撮像素子への入射が低減されると共に画像及び映像の生成に必要な光の成分が撮像素子に入射され、高画質化を図ることができる。
【0140】
[撮像装置の構成]
以下に、本発明撮像装置について説明する。
【0141】
本発明撮像装置は、撮像光学系と該撮像光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えている。
【0142】
本発明撮像装置は、撮像光学系が、光路上に少なくとも1枚のレンズが配置され、フィルム状の樹脂材料によって形成された第1の赤外線吸収フィルターと赤外線吸収作用を有する多層膜とフィルム状の樹脂材料によって形成された第2の赤外線吸収フィルターとが光路上において物体側から像側へ順に配置され、多層膜が分光特性の調整機能と反射特性を有している。
【0143】
このように撮像装置を構成することにより、上記したように、第1の赤外線吸収フィルター、多層膜及び第2の赤外線吸収フィルターによって画像及び映像の生成に有害な光の成分が吸収され、撮像素子に画像及び映像の生成に必要な光の成分が入射される。
【0144】
本発明撮像装置は、撮像光学系が、以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにされている。
(1)0.84<R1/R2<1.2
(2)0.8<λ1/λ2<1.25
(3)T2/T1<1.0
(4)T3/T4<0.05
但し、
R1:第1の赤外線吸収フィルターを物体側から透過して多層膜で反射し第1の赤外線吸収フィルターを像側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
R2:第2の赤外線吸収フィルターを像側から透過して多層膜で反射し第2の赤外線吸収フィルターを物体側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
λ1:第1の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
λ2:第2の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
T1:第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T2:多層膜における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T3:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700nmの光の透過率
T4:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長540nmの光の透過率
とする。
【0145】
条件式(1)は、多層膜の両面における反射率のバランスを規定する式である。また、条件式(2)は第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの吸収率のバランスを規定する式である。
【0146】
条件式(1)又は条件式(2)の何れかの上限を超えると、多層膜で第1の赤外線吸収フィルター側に反射した光のうち波長680乃至780nm付近の有害な近赤外光の光量が増えてしまう。
【0147】
逆に、条件式(1)又は条件式(2)の何れかの下限を超えると、多層膜で第2の赤外線吸収フィルター側に反射した光のうち波長680乃至780nm付近の有害な近赤外光の光量が増えてしまう。
【0148】
このように条件式(1)又は条件式(2)の何れかの上限又は下限を超えることにより、多層膜の物体側と像側における有害な近赤外光の光量のバランスが崩れ、迷光が強調されて画質の劣化が生じてしまう。
【0149】
従って、撮像装置は、撮像光学系が条件式(1)及び条件式(2)を満足することにより、多層膜の物体側と像側における有害な近赤外光の光量のバランスが均衡し、画質の向上を図ることができる。
【0150】
条件式(3)は、波長700nm乃至725nmの光の第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの合成における平均透過率と多層膜の平均透過率との関係を規定する式である。尚、第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの合成における光の平均透過率とは、第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの双方を透過したときの光の平均透過率である。
【0151】
条件式(3)の上限を超えると、多層膜で反射される波長700nm乃至725nmの有害な光を第1の赤外線吸収フィルターで吸収することが困難となり、撮像素子に入射する有害な光の光量を低減することができなくなる。
【0152】
従って、撮像装置は、撮像光学系が条件式(3)を満足することにより、多層膜で反射される波長700nm乃至725nmの有害な光の第1の赤外線吸収フィルターでの吸収量を増加させることができ、撮像素子に入射する有害な光を低減することができる。
【0153】
条件式(4)は、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における透過率に関する式である。尚、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における光の透過率とは、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの全てを透過したときの光の透過率である。
【0154】
条件式(4)の上限をT4の値が低くなることにより超えると、波長540nm乃至700nmの必要な光量を十分に確保することが困難となってしまう。
【0155】
一方、条件式(4)の上限をT3の値が高くなることにより超えると、有害な近赤外光の光量が増えて迷光が強調され画質が劣化してしまう。このとき撮像素子の信号処理による調整等によって画質の劣化を補正しようとすると、目視では認識できない赤外領域の光が強調されてしまい、最適な色再現性を確保することが困難となってしまう。
【0156】
従って、撮像装置は、撮像光学系が条件式(4)を満足することにより、波長540nm乃至700nmの必要な光量を十分に確保することができると共に有害な近赤外光の光量を低減することができ、高画質化を図ることができる。
【0157】
以上に記載した通り、本発明撮像装置にあっては、撮像光学系が、第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの間に分光特性の調整機能を有する多層膜を配置し、条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにされている。
【0158】
従って、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターによって画像及び映像の生成に有害な光の成分が吸収されて有害な光の成分の撮像素子への入射が低減され、高画質化を図ることができる。
【0159】
また、画像及び映像の生成に有害な光の成分は第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの物体側及び像側に配置される部品によって分光特性や輝度が異なる。
【0160】
従って、これらの部品による有害な光の成分の分光特性や輝度に応じて第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの分光特性を定めることにより、分光特性の最適化を図ることが可能となる。
【0161】
さらに、第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターは合成における特性として波長400nm乃至1200nmに吸収特性と反射特性を有しているため、撮像素子に入射する光の分光強度バランス、例えば、青色領域、緑色領域、赤色領域の光強度バランスを最適に調整することが可能となる。
【0162】
従って、画像及び映像のホワイトバランス調整や色再現を良好に行うことが可能となる上、過度な電気的色調整を行うことによる色ノイズの発生も除去することが可能となり、画像及び映像における色調整を最適化する透過光特性を確保することが可能となる。
【0163】
尚、撮像光学系及びこれを備えた撮像装置の小型化を図ろうとしたときには、入射光線の透過率(反射率)が所定の波長領域で急激に変化したり、撮像素子に入射する迷光が増加し易くなる。
【0164】
しかしながら、このような小型化を図ったときにおいても、条件式(1)乃至条件式(4)を満足するように撮像装置及び撮像光学系を構成することにより、迷光の増加を効果的に抑制することができると共に画像及び映像の色再現性の向上をも図ることが可能となるため、画質の大幅な向上を図ることができる。
【0165】
[撮像装置の一実施形態]
図19に、本発明撮像装置の一実施形態によるデジタルスチルカメラのブロック図を示す。
【0166】
撮像装置(デジタルスチルカメラ)100は、撮像機能を担うカメラブロック10と、撮影された画像信号のアナログ−デジタル変換等の信号処理を行うカメラ信号処理部20と、画像信号の記録再生処理を行う画像処理部30とを有している。また、撮像装置100は、撮影された画像等を表示するLCD(Liquid Crystal Display)40と、メモリーカード1000への画像信号の書込及び読出を行うR/W(リーダ/ライタ)50と、撮像装置の全体を制御するCPU(Central Processing Unit)60とを有している。さらに、撮像装置100は、ユーザーによって所要の操作が行われる各種のスイッチ等から成る入力部70と、カメラブロック10に配置されたレンズの駆動を制御するレンズ駆動制御部80とを備えている。
【0167】
カメラブロック10は、撮像光学系11(本発明が適用される撮像光学系A、B、C)を含む光学系や、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子12等とによって構成されている。
【0168】
カメラ信号処理部20は、撮像素子12からの出力信号に対するデジタル信号への変換、ノイズ除去、画質補正、輝度・色差信号への変換等の各種の信号処理を行う。
【0169】
画像処理部30は、所定の画像データフォーマットに基づく画像信号の圧縮符号化・伸張復号化処理や解像度等のデータ仕様の変換処理等を行う。
【0170】
LCD40はユーザーの入力部70に対する操作状態や撮影した画像等の各種のデータを表示する機能を有している。
【0171】
R/W50は、画像処理部30によって符号化された画像データのメモリーカード1000への書込及びメモリーカード1000に記録された画像データの読出を行う。
【0172】
CPU60は、撮像装置100に設けられた各回路ブロックを制御する制御処理部として機能し、入力部70からの指示入力信号等に基づいて各回路ブロックを制御する。
【0173】
入力部70は、例えば、シャッター操作を行うためのシャッターレリーズボタンや、動作モードを選択するための選択スイッチ等によって構成され、ユーザーによる操作に応じた指示入力信号をCPU60に対して出力する。
【0174】
レンズ駆動制御部80は、CPU60からの制御信号に基づいて撮像光学系11の各レンズを駆動する図示しないモータ等を制御する。
【0175】
メモリーカード1000は、例えば、R/W50に接続されたスロットに対して着脱可能な半導体メモリーである。
【0176】
以下に、撮像装置100における動作を説明する。
【0177】
撮影の待機状態では、CPU60による制御の下で、カメラブロック10において撮影された画像信号が、カメラ信号処理部20を介してLCD40に出力され、カメラスルー画像として表示される。また、入力部70からのズーミングのための指示入力信号が入力されると、CPU60がレンズ駆動制御部80に制御信号を出力し、レンズ駆動制御部80の制御に基づいて撮像光学系11の所定のレンズが移動される。
【0178】
入力部70からの指示入力信号によりカメラブロック10の図示しないシャッターが動作されると、撮影された画像信号がカメラ信号処理部20から画像処理部30に出力されて圧縮符号化処理され、所定のデータフォーマットのデジタルデータに変換される。変換されたデータはR/W50に出力され、メモリーカード1000に書き込まれる。
【0179】
尚、フォーカシングは、例えば、入力部50のシャッターレリーズボタンが半押しされた場合や記録(撮影)のために全押しされた場合等に、CPU60からの制御信号に基づいてレンズ駆動制御部80が撮像光学系11の所定のレンズを移動させることにより行われる。
【0180】
メモリーカード1000に記録された画像データを再生する場合には、入力部70に対する操作に応じて、R/W50によってメモリーカード1000から所定の画像データが読み出され、画像処理部30によって伸張復号化処理が行われた後、再生画像信号がLCD40に出力されて再生画像が表示される。
【0181】
尚、上記した実施の形態においては、撮像装置をデジタルスチルカメラに適用した例を示したが、撮像装置の適用範囲はデジタルスチルカメラに限られることはなく、デジタルビデオカメラ、カメラが組み込まれた携帯電話、カメラが組み込まれたPDA(Personal Digital Assistant)等のデジタル入出力機器のカメラ部等として広く適用することができる。
【0182】
上記した各実施の形態において示した各部の形状及び数値は、何れも本発明を実施するための具体化のほんの一例に過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】図2と共に本発明撮像光学系の概念を説明するためのものであり、本図は、撮像光学系全体の光路を示す概念図である。
【図2】撮像素子で反射された光の経路を示す概念図である。
【図3】図4乃至図6と共に第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの構成例を示すものであり、本図は、第1の構成例を示す模式図である。
【図4】第2の構成例を示す模式図である。
【図5】第3の構成例を示す模式図である。
【図6】第4の構成例を示す模式図である。
【図7】図8乃至図10と共に第1の実施の形態に係る撮像光学系の分光透過特性を示すものであり、本図は、第1の赤外線吸収フィルターの透過率を示すグラフ図である。
【図8】第2の赤外線吸収フィルターの透過率を示すグラフ図である。
【図9】多層膜の透過率を示すグラフ図である。
【図10】第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における透過率を示すグラフ図である。
【図11】図12乃至図14と共に第2の実施の形態に係る撮像光学系の分光透過特性を示すものであり、本図は、第1の赤外線吸収フィルターの透過率を示すグラフ図である。
【図12】第2の赤外線吸収フィルターの透過率を示すグラフ図である。
【図13】多層膜の透過率を示すグラフ図である。
【図14】第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における透過率を示すグラフ図である。
【図15】図16乃至図18と共に第3の実施の形態に係る撮像光学系の分光透過特性を示すものであり、本図は、第1の赤外線吸収フィルターの透過率を示すグラフ図である。
【図16】第2の赤外線吸収フィルターの透過率を示すグラフ図である。
【図17】多層膜の透過率を示すグラフ図である。
【図18】第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における透過率を示すグラフ図である。
【図19】本発明撮像装置の一実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0184】
1…撮像光学系、2…レンズ、3…第1の赤外線吸収フィルター、4…多層膜、5…第2の赤外線吸収フィルター、6…撮像素子、8…ガラス基板、11…第1の空気層、12…第2の空気層、13…空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路上に少なくとも1枚のレンズが配置され、
フィルム状の樹脂材料によって形成された第1の赤外線吸収フィルターと赤外線吸収作用を有する多層膜とフィルム状の樹脂材料によって形成された第2の赤外線吸収フィルターとが前記光路上において物体側から像側へ順に配置され、
前記多層膜が分光特性の調整機能と反射特性を有し、
以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにした
撮像光学系。
(1)0.84<R1/R2<1.2
(2)0.8<λ1/λ2<1.25
(3)T2/T1<1.0
(4)T3/T4<0.05
但し、
R1:第1の赤外線吸収フィルターを物体側から透過して多層膜で反射し第1の赤外線吸収フィルターを像側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
R2:第2の赤外線吸収フィルターを像側から透過して多層膜で反射し第2の赤外線吸収フィルターを物体側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
λ1:第1の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
λ2:第2の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
T1:第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T2:多層膜における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T3:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700nmの光の透過率
T4:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長540nmの光の透過率
とする。
【請求項2】
以下の条件式(5)を満足するようにした
請求項1に記載の撮像光学系。
(5)0.85<λ5/λ6
但し、
λ5:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長450nm以下の光の透過率が80%になる波長の値
λ6:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長450nm以下の光の透過率が20%になる波長の値
とする。
【請求項3】
前記第1の赤外線吸収フィルターと前記第2の赤外線吸収フィルターの光軸方向における厚みをそれぞれ10μm以上120μm以下とした
請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項4】
前記多層膜をガラス基板上に形成した
請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項5】
前記多層膜を前記第1の赤外線吸収フィルター上又は前記第2の赤外線吸収フィルター上に形成した
請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項6】
前記第1の赤外線吸収フィルターと前記多層膜の間又は前記多層膜と前記第2の赤外線吸収フィルターの間の少なくとも一方に空気層を形成した
請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項7】
前記第1の赤外線吸収フィルターと前記多層膜と前記第2の赤外線吸収フィルターを光軸方向において密着させた
請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項8】
前記第1の赤外線吸収フィルターと前記多層膜と前記第2の赤外線吸収フィルターを前記光路上における最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置した
請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項9】
前記第1の赤外線吸収フィルターと前記第2の赤外線吸収フィルターの基材を環状オレフィン系樹脂により形成した
請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項10】
前記第1の赤外線吸収フィルターと前記第2の赤外線吸収フィルターの基材に赤外線吸収作用を有する着色剤を含有させ、
前記着色剤として少なくとも一種類の有機系色素を用いた
請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項11】
撮像光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子を備え、
前記撮像光学系が、
光路上に少なくとも1枚のレンズが配置され、
フィルム状の樹脂材料によって形成された第1の赤外線吸収フィルターと赤外線吸収作用を有する多層膜とフィルム状の樹脂材料によって形成された第2の赤外線吸収フィルターとが前記光路上において物体側から像側へ順に配置され、
前記多層膜が分光特性の調整作用と反射特性を有し、
以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにした
撮像装置。
(1)0.84<R1/R2<1.2
(2)0.8<λ1/λ2<1.25
(3)T2/T1<1.0
(4)T3/T4<0.05
但し、
R1:第1の赤外線吸収フィルターを物体側から透過して多層膜で反射し第1の赤外線吸収フィルターを像側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
R2:第2の赤外線吸収フィルターを像側から透過して多層膜で反射し第2の赤外線吸収フィルターを物体側から透過する光の波長680乃至780nmにおける多層膜の平均反射率
λ1:第1の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
λ2:第2の赤外線吸収フィルターにおける波長550nm以上の光の透過率が70%になる波長の値
T1:第1の赤外線吸収フィルターと第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T2:多層膜における波長700乃至725nmの光の平均透過率
T3:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長700nmの光の透過率
T4:第1の赤外線吸収フィルターと多層膜と第2の赤外線吸収フィルターの合成における波長540nmの光の透過率
とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−75984(P2011−75984A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229577(P2009−229577)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】