説明

撮像式工具測定装置および撮像式工具測定における刃先進入検出方法

【課題】自動化に即応した高精度、高信頼性の撮像式工具測定装置およびその刃先進入検出方法を提供する。
【解決手段】工作機械の主軸に装着した工具Tを撮像する撮像素子16を有する撮像部と、撮像素子16からの撮像信号を画像処理する信号処理・制御部13とを有する撮像式工具測定装置において、前記撮像素子16とは別に、前記撮像部の視野内への前記工具Tの刃先の進入を検出する刃先進入検出部100を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像式工具測定装置に関し、特にNCフライス盤やマシニングセンタ等のNC工作機械で精密加工を行うために主軸に装着された工具を、撮像部を用いて、工具の刃先位置の測定、工具の長さ、径等の形状、寸法の測定、刃先の観察等を行う、撮像式工具測定装置および撮像式工具測定における刃先進入検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、工作機械の分野では高度な加工精度が要求され、こうした要求に対応して加工精度の向上を目指し、主軸に装着された工具の主軸に対する位置ずれや、回転に伴う発熱による主軸の伸びを測定するようにしたNC工作機械が提案されている。
【0003】
このようなNC工作機械において、高速回転中の工具の刃先位置の変動を正確に捉えるために、撮像素子(例えばCCD)を使用した撮像装置が提案されている(特許文献1参照)。
この特許文献1に係る撮像装置では、撮像対象を照明する光源装置と、受光面に結像した像を電気信号に変換する撮像素子と、撮像対象の像を撮像素子の受光面に結像させる光学手段と、光源装置を保持するとともに撮像素子と光学手段とを収容するハウジングとを備えている。このような装置の光学手段では、入射側反射鏡と、入射側反射鏡の後段に配置された対物レンズと、撮像レンズと、撮像レンズの後段に配置された出射側反射鏡とから構成されている。
【0004】
また、ハウジングは、互いに異なる方向から撮像対象へ向けられそれぞれ光が入射する2個の入射口を有し、光学手段は、入射した光の一部を透過させ一部を反射させる半透鏡素子(ハーフミラー)と、それぞれ1個の入射口から入射した光をハーフミラーに互いに異なる方向から入射させる2個の導光路とを含み、撮像素子とハーフミラーとは、一方の導光路を通過してハーフミラーを透過した光と、他方の導光路を通過してハーフミラーに反射された光とがともに撮像素子に入射する位置関係で配置されているとしている。
【0005】
かかる撮像装置において、入射側反射鏡に入射した光は、出射側反射鏡から入射時に対して逆向きに出射する。入射側反射鏡より撮像対象側と出射側反射鏡より撮像素子側とで光が互いに逆向きとなるから、1方向に長い形状とはならずコンパクト化が可能となるとしている。
【0006】
また、上述のような構成であるので、1個の撮像素子で、撮像対象を2方向から撮像することができる。従って、撮像素子を2個設ける場合に比べて製造コストの低減や、小型化が可能となる、としている。
【0007】
また、現在製品化されている工具測定装置の中には、手動、自動測定可能とされるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−49489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に係る撮像装置を用いて、主軸に装着される工具を撮像して、画像処理を行い、工具の刃先の位置測定、刃先の観察を行うようにする場合、視野内への刃先の進入の判断に関しては逐次、フレーム信号毎処理を行うことから、処理が遅くなり、刃先の進入検出ができずにSKIP信号を出力できない(SKIPが遅い)場合もあり、工具Tの先端がワークに衝突する虞がある。SKIP信号とは、刃先の進入動作指令を中断させる信号のことであり、SKIP信号が出力されると、刃先を進入させる送り軸の動きが停止する。
また、これらの測定は画像信号に基づくことから、視野の汚れ、照明輝度等、撮像環境に左右されやすく、この結果、自動測定が阻害され、手動調整が必要となる場合も多い。
【0010】
本発明は、以上のような課題を克服するために提案されたものであって、撮像式工具測定装置において、自動化に即応した高精度、且つ高信頼性の測定を実行できる撮像式工具測定装置および撮像式工具測定における刃先進入検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明では、工作機械の主軸に装着した工具を撮像する撮像部と、該撮像部からの撮像信号を画像処理する信号処理・制御部とを有する撮像式工具測定装置において、信号処理・制御部とは別に、撮像部の視野内への工具の刃先の進入を検出する刃先進入検出部を具備することを特徴とする。
【0012】
刃先進入検出部によって、信号処理・制御部とは別に、画像処理することなく、撮像部の視野内への工具の刃先の進入を検出することができるので、迅速な検出が可能となり、SKIP信号を確実に生成することができ、自動化に即応した高精度、高信頼性の測定に寄与することができる。
【0013】
請求項2記載の発明では、信号処理・制御部は、撮像部からの撮像信号、または撮像信号を画像処理した信号に基づいて撮像環境・条件を把握し、該撮像環境・条件にかかる信号を基に、撮像条件を判断し、調整指令を導出する撮像条件判断・調整指令手段と、撮像条件判断・調整指令手段からの調整指令信号により、撮像部の撮像要素の撮像条件を調整する調整手段と、を具備する。
【0014】
これにより、撮像部によらずに、すなわち画像処理によらずに、刃先進入検出部によって視野内に刃先が進入したことを迅速に検出することができる他、撮像部からの撮像信号、または前記撮像信号を画像処理した信号に基づいて、撮像環境・条件を把握することができる。
次いで、撮像環境・条件にかかる信号から、撮像条件判断・調整指令手段により撮像の適正条件を決定して調整指令信号を導出し、かかる調整指令信号により、撮像条件(例えば照明手段、主軸制御手段、シャッター制御手段)を調節する調節信号を出力し、好適に撮像環境・条件を調整することができる。
【0015】
請求項3記載の発明では、刃先進入検出部は、撮像される画像を結像前に光学経路から分離するビームスプリッタと、画像を線状に変換させ、刃先進入を検知するラインセンサと、を具備する。
【0016】
これにより、工具に照射された光線が、ビームスプリッタにより結像前に光学経路から分離してラインセンサに照射されると、工具の形状がラインセンサ上に投影されて、影の部位と照射される部位とに明確に区分けされ、かかる状態に応じて、ラインセンサには電気信号が生起され、これにより、工具の刃先の進入を検出することができる。
【0017】
請求項4記載の発明では、刃先進入検出部は、撮像される画像を結像前に光学経路から分離するビームスプリッタと、画像を点状に絞り込み、刃先進入を検知するフォトトランジスタと、を具備する。
【0018】
これにより、工具に照射された光線が、ビームスプリッタにより結像前に光学経路から分離してフォトトランジスタに点状に照射されると、工具の進入、未進入をオンオフ信号として取り出すことができ、工具の刃先の進入を迅速に検出することができる。
【0019】
また、請求項5記載の発明のように、刃先進入検出部は、撮像部の視野内へ工具が進入するのを検出するレーザー検出手段であっても、さらに、請求項6記載の発明のように、刃先進入検出部は、撮像部の視野内へ工具が進入するのを検出する近接センサであっても可能である。
【0020】
これにより、工具の撮像光によらない検出手段によっても、迅速に工具の刃先進入を捉えることができる。
【0021】
請求項7記載の発明では、工作機械の主軸に装着した工具の撮像信号を画像処理によって工具の刃先位置の測定、刃先の観察を行うに当たり、撮像信号の画像処理とは別に撮像視野内への工具の刃先進入を検出し、刃先進入動作を停止することを特徴とする。
【0022】
これにより、撮像信号の画像処理とは別に撮像視野内への工具の刃先進入を検出し、刃先進入動作を停止するので、迅速な検出が可能であり、工具がワークに衝突する事態を避けることができる。
【0023】
請求項8記載の発明では、工具の刃先進入を検出するに当たり、撮像される画像を結像前に光学経路から分離し、画像を線状に変換して、変換後の画像に基づき、工具の刃先進入を検出する。
【0024】
これにより、画像処理することなく、撮像される画像を結像前に光学経路から分離し、画像を線状に変換して、変換後の画像に基づき、工具の刃先進入を検出することができるので、迅速な検出が可能となり、SKIP信号を確実に生成することができる。
【0025】
さらに請求項9記載の発明では、工具の刃先進入を検出するに当たり、撮像される画像を結像前に光学経路から分離し、画像を点状に変換して、変換後の画像に基づき、工具の刃先進入を検出する。
【0026】
これにより、画像処理することなく、撮像される画像を結像前に光学経路から分離し、画像を点状に変換して、変換後の画像に基づき、工具の刃先進入を検出することができるので、迅速な検出が可能となり、SKIP信号を確実に生成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、刃先進入検出部によって、撮像部からの撮像信号を画像処理する信号処理・制御部とは別に、画像処理することなく、撮像部の視野内への工具の刃先の進入を検出することができるので、迅速な検出が可能となり、SKIP信号を確実に生成して進入動作中の工具の送り動作を停止することができ、工具と工具測定装置との衝突等の危険がない。従って、自動化に即応した高精度、且つ高信頼性の測定に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる撮像式工具測定装置を、工作機械の加工部に組み込んだところを示す、模式的な要部側面図である。
【図2】図1に示す撮像式工具測定装置のシステム構成の一例を示す、ブロック図である。
【図3】図1に示す撮像式工具測定装置において、刃先進入検出部の具体的な第1の方式を示す、模式的なブロック構成図である。
【図4】図1に示す撮像式工具測定装置において、刃先進入検出部の具体的な第2の方式を示す、模式的なブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明にかかる撮像式工具測定装置および撮像式工具測定における刃先進入検出方法について、システム構成の具体的な一例を挙げ、詳細に説明する。
図1に、本発明にかかる撮像式工具測定装置10を、NCフライス盤やマシニングセンタ等のNC工作機械1の加工領域の一隅に組み込んだところを示す。
NC工作機械1は、ベース2上にXY軸方向に縦横移動可能なテーブル3と、テーブル3に直交するZ軸方向にコラム4上に、昇降可能に主軸5が配置されている。かかる主軸5には、工具Tが装着されている。そして、かかる工具Tを挟んで、工具Tを撮像対象として撮像を行って、工具寸法測定等を行う、撮像式工具測定装置10が搭載されている。
【0030】
図2に、撮像式工具測定装置10のシステム構成図を示す。なお、このNC工作機械は、数値制御により工具Tを装着した主軸5とワーク(図示省略)を固定したテーブル3との間で、相対移動を行わせ、ワークを加工するものである。
【0031】
この撮像式工具測定装置10は、かかるNC工作機械1のテーブル3に搭載されたハウジング11に撮像部12が組み込まれ、 撮像部12による画像信号を所定の信号処理を施して、後述する判断、演算を行い、各種処理信号、指令信号を発する信号処理・制御部13に画像データを送出する構成としている。
撮像式工具測定装置10は、主軸5に装着された工具Tに対し、撮像部12による画像信号を取得し、該画像信号に対し、信号処理・制御部13において、所定の信号処理を施して、後述する判断、演算を行い、各種処理信号、指令信号を発して、撮像環境を決定する種々の構成手段に対応する調整指令信号をそれぞれ送出し、撮像環境を調整するようにしている。なお、撮像環境とは、ここでは、主軸に装着される工具を撮像して、画像処理を行い、工具の刃先の位置測定、刃先の観察等を行う際に影響を及ぼす、主軸5の回転数、撮像部での視野の汚れ、照明輝度等をいうものとする。
【0032】
撮像部12は、撮像対象である工具Tを照明する光源Lと、コンデンサーレンズ14を介して平行光線として工具Tを通過した光線を、撮像レンズ群15を通過させると共に、受光面に結像した像を電気信号に変換する撮像素子16とを備え、撮像素子16により取得された電気信号をデジタルデータに変換して後述する信号処理・制御部13に送出するA/D変換器17を備えている。
工具Tは、ドリル、ボールエンドミル、フラットエンドミル等様々な形状のものを想定している。
撮像レンズ群15は、工具Tを通過した光線を、撮像レンズ群15を通過させることで、後述する撮像素子16に全体が結像されるように光束を調整するためのもので、光軸を一致させるように配置した、それぞれ所定倍率の凸レンズ、凹レンズ等の組合せで構成される。
撮像素子16は、二次元のCCDイメージセンサであり、入射した画像に係る光信号から電気信号を生起するもので、アナログ信号として取り出される。
そして、以上のような撮像部12において、撮像レンズ群15から撮像素子16に至る光路中において、結像光線を1/2は光路に沿って透過させて、撮像素子16に入射させる一方、残余の結像光線は、光路に直交方向に偏光させて工具Tの刃先侵入を検出するためのビームスプリッタ18(以下、ハーフミラー18)が介設されている。
【0033】
次に、信号処理・制御部13について、全体構成を概説的に説明する。
信号処理・制御部13は、撮像素子16が取得した電気信号をA/D変換器17により変換してなるデジタルデータを取り込んで、周知の前処理を行う画像前処理部20を具備する。すなわち画像前処理部20では、シェーディング補正、ノイズリダクション、ホワイトバランス、輪郭補正、コントラスト調整を行い、画像表示手段21に逐次出力して、リアルタイムに画像を表示したり、コントラスト判定を行ったり、画像の記憶制御により画像を逐次、フレームメモリ22に書き込んだりしている。
【0034】
画像前処理部20は、コントラスト調整後の画像信号の電圧値と適正コントラスト値記憶手段23(基準電圧値)との比較によってコントラスト判定(濃淡度合い)を行い、詳細は後述するが撮像環境・条件の検出信号として撮像条件判断・調整指令手段24に出力するようになっている。
そして、フレームメモリ22に書き込まれたデータは、順次、視野汚れ検出部25と工具測定・演算部26とに送られ、様々な要因に起因する視野の汚れを検出したり、高速回転する工具Tの測定を行い、測定結果を出力するようにしている。
【0035】
主軸の回転と各軸方向の移動によって加工を行うワーク周囲の雰囲気は、加工に伴って飛散する切削油のミストや切り粉が充満したりして、周壁に付着したり、光学系の表面に付着して、汚れが生じ、高精度、高信頼性の測定の妨げとなるため、視野汚れ検出部25では、その汚れ度合いを把握して、補正値を導出して工具測定・演算部26に送出する。すなわち、視野汚れ検出部25では、フレームメモリ22からのデータにより、視野画像を取得する視野画像取得手段と、取得された画像を記憶する視野画像記憶手段と、視野画像記憶手段から視野汚れ画像を抽出する、視野汚れ画像抽出手段と、視野汚れ画像を記憶する視野汚れ画像記憶手段とを具備する。なお、視野画像取得手段と視野汚れ画像抽出手段とは、視野汚れ検出制御手段の制御指令により、それぞれ取得動作、画像抽出動作を実行する。
【0036】
工具測定・演算部26は、フレームメモリ22からのデータと、視野汚れ検出部25の視野汚れ画像記憶手段のデータを読み出して、視野汚れ画像を除去する視野汚れ画像除去手段を備え、視野汚れ画像除去手段を経て得られたデータから、工具Tの輪郭を抽出するステップと、形状を認識するステップとを順次実行し、刃先位置演算、工具径演算、高回転の工具の振れを導出する振れ演算を実行し、測定結果として出力するようにしている。
【0037】
撮像条件判断・調整指令手段24は、画像前処理部20が行ったコントラスト判定の結果を、撮像環境・条件を示す信号として取り込み、撮像条件を判断して調節指令を出力する。また、他の撮像環境・条件を検出すると共に、現在の撮像動作時における各状況を把握するために、撮像条件判断・調整指令手段24は、撮像部12の撮像環境を決定する各構成要素から、以下のような処理によって撮像環境・条件の信号を取り込み、撮像条件を判断して調節指令を出力する。
【0038】
撮像部12の撮像環境を決定する要素として、工具を装着した主軸(図示省略)の回転数がある。すなわち、工具Tの回転数により撮像される工具Tの画像信号が変動し、それに伴って撮像環境としての照明輝度の度合いに影響を与えるからである。
主軸は、主軸制御手段27により、回転制御がなされるが、この主軸制御手段27から、主軸回転数検出手段28により主軸の回転数を検出して、撮像環境・条件の検出信号として撮像条件判断・調整指令手段24に取り込む。
【0039】
また、撮像部12の撮像環境を決定する要素としてエッジの鮮明度がある。信号処理・制御部13は、フレームメモリ22からのデータ、すなわち工具Tの画像信号からエッジの鮮明度(例えば工具Tの輪郭の画像データ階調度)を判定して、撮像環境・条件の検出信号として撮像条件判断・調整指令手段24に取り込むようにしている。
【0040】
さらに、撮像部12の撮像環境を決定する要素として露光度合いがある。すなわち、信号処理・制御部13は、撮像素子16が取得した電気信号をA/D変換器17により変換してなるデジタルデータから、露光検出を行い、適正露光値記憶手段29を基に、露光判定を行い、撮像環境・条件の信号として撮像条件判断・調整指令手段24に取り込むようにしている。
【0041】
そして、撮像条件判断・調整指令手段24では、以上のような撮像環境・条件にかかる信号を基に、適宜、撮像部12が高精度な工具Tの画像データが得られる所望の撮像環境にあるのかどうかを判断し、そのような撮像環境にない場合は、所望の撮像環境に補正するように、撮像部12の撮像環境を決定する要素に調整指令を発し、撮像条件の調整動作を行わせているのである。
【0042】
例えば、撮像部12の撮像環境を決定する要素としての光源Lに対しては、所定の照明調節手段30(調光回路)を制御して輝度を調節する。
また、工具Tを装着した主軸5に対しては、主軸制御手段27に回転数を変える調節指令信号を与えて、主軸5の回転数の増減を行う。この主軸5の回転数は加工条件によって適正値が決められているが、何らかのタイミングでうまく撮像できないとき、加工に悪影響を与えない範囲で主軸5の回転数を微調整するものである。
そして、撮像素子16により取得された電気信号をデジタルデータに変換する、A/D変換器17に対しては、シャッター制御手段31に調節指令を送出することにより、サンプリング周波数を調節してフレームレートを変える。さらには、絞り制御手段32に調節指令信号を与えることで、デジタルデータの変換範囲を変える。
その他、テーブル上の測定対象である工具Tの位置が撮像範囲からずれているような場合に、測定対象の位置変更手段33に対し、測定装置10を載置したテーブル3をXY方向に移動調節するように調節指令信号を送出する。
さらには、ワークを固定するテーブル3、ワークなどに加工によって発生する切り粉や切削油等が付着していたり、加工周囲雰囲気に切削油のミストなどが浮遊しているような場合に、高圧エアーをワーク周囲に噴射するようにエアーブロー制御手段34に、制御指令信号を送出する。
【0043】
以上のように構成された撮像式工具測定装置10において、撮像部12において、撮像レンズ群15から撮像素子16に至る光路中には、本発明にかかる、刃先進入検出部100を構成するハーフミラー18が介設され、結像光線の1/2を光路に直交方向に偏光させてSKIP信号検出手段に導くようにしている。
図3に刃先進入検出部100の一例を示す。
刃先進入検出部100は、撮像される工具Tの画像を、撮像素子16に結像する前に光学経路から分離するハーフミラー18と、画像を線状に線形変換するシリンダレンズ101と、シリンダレンズ101からの線状に変換された画像信号を、線状の電気信号に変換するラインセンサ102とを具備する。
シリンダレンズ101は、方形の画像光を、例えば工具Tの軸方向、または工具Tの軸に直交する方向の線状の画像信号に変換することができる。
ラインセンサ102は、一次元のCCDイメージセンサであり、縦横線状に複数のCCD素子を配列したものである。
【0044】
工具Tが画像取得範囲に入っていくことにより、工具Tの軸方向に配列したラインセンサ102にあっては、軸方向の濃淡の画像信号として捉えることができ、工具Tの軸に直交する方向に配列したラインセンサ102にあっては、軸方向と直交する濃淡の画像信号として捉えることができる。
このようなラインセンサ102からの画像信号に基づき、工具の有無検出手段103は、例えば電圧値で撮像部12の視野内への工具Tの進入の有無を検出することができる。 工具Tの有無検出手段103が工具Tの進入を検出すると、SKIP信号生成手段104がSKIP信号を発生してCNC工作機械動作制御部に出力して、工作機械の工具進入動作を停止させる設定である。
【0045】
以上のような刃先進入検出部100によれば、撮像素子16とは別に、画像処理することなく、撮像部12の視野内への工具Tの刃先の進入を検出することができるので、迅速な検出が可能となり、SKIP信号を確実に生成することができ、自動化に即応した高精度、且つ高信頼性の測定に寄与することができる。
【0046】
刃先進入検出部100は、図4に示す構成も可能である。
ここでの刃先進入手段100は、撮像される画像を結像前に光学経路からハーフミラー18により分離された画像を、絞り部材105を通過させてスポット状に絞り込み、集光レンズ106を通してさらに点状に集光させて、フォトトランジスタ107に入射させるようにしている。 フォトトランジスタ107は、点状の入射光が一定以上の光の強さになったか否かを感知することでオンオフし、工具の有無検出手段103に送出して、フォトトランジスタ107のオンオフ信号により、工具Tの進入の有無を捉えることができ、SKIP信号生成手段104によりSKIP信号を発生させ、SKIP信号をCNC工作機械動作制御部に出力して、工作機械の工具進入動作を停止させることができる。
【0047】
以上の刃先進入検出部100では、撮像レンズ群15から撮像素子16に至る光路中に介設されたハーフミラー18により、結像光線の1/2を光路に直交方向に偏光させて刃先の進入検出を行っているが、勿論、刃先進入検出手段は、ハーフミラー18を用いずとも、加工部における視野に、非接触型検出手段である、レーザー検出手段、あるいは近接センサを配設して、工具が進入するのを検知することもできる。
このような非接触型検出手段を用いれば、一層、直接的、且つ迅速に工具の刃先進入を捉えて、SKIP信号生成手段104によりSKIP信号を発生させ、SKIP信号をCNC工作機械動作制御部に出力して、工作機械の工具進入動作を停止させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 NC工作機械
2 ベース
3 テーブル
4 コラム
5 主軸
10 撮像式工具測定装置
11 ハウジング
12 撮像部
13 信号処理・制御部
14 コンデンサーレンズ
15 撮像レンズ群
16 撮像素子
17 A/D変換器
18 ハーフミラー
20 画像前処理部
21 画像表示手段
22 フレームメモリ
23 適正コントラスト値記憶手段
24 撮像条件判断・調整指令手段
25 視野汚れ検出部
26 工具測定・演算部
27 主軸制御手段
28 主軸回転数検出手段
29 適正露光値記憶手段
30 照明調節手段
31 シャッター制御手段
32 絞り制御手段
33 測定対象の位置変更手段
34 エアーブロー制御手段
100 刃先進入検出部
101 シリンダレンズ
102 ラインセンサ
103 工具の有無検出手段
104 SKIP信号生成手段
105 絞り部材
106 集光レンズ
107 フォトトランジスタ
T 工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の主軸に装着した工具を撮像する撮像部と、該撮像部からの撮像信号を画像処理する信号処理・制御部とを有する撮像式工具測定装置において、
前記信号処理・制御部とは別に、前記撮像部の視野内への前記工具の刃先の進入を検出する刃先進入検出部を具備することを特徴とする撮像式工具測定装置。
【請求項2】
前記信号処理・制御部は、前記撮像部からの撮像信号、または前記撮像信号を画像処理した信号に基づいて撮像環境・条件を把握し、該撮像環境・条件にかかる信号を基に、撮像条件を判断し、調整指令を導出する撮像条件判断・調整指令手段と、前記撮像条件判断・調整指令手段からの調整指令信号により、前記撮像部の撮像要素の撮像条件を調整する調整手段と、を具備する請求項1記載の撮像式工具測定装置。
【請求項3】
前記刃先進入検出部は、撮像される画像を結像前に光学経路から分離するビームスプリッタと、画像を線状に変換させ、刃先進入を検知するラインセンサと、を具備する請求項1記載の撮像式工具測定装置。
【請求項4】
前記刃先進入検出部は、撮像される画像を結像前に光学経路から分離するビームスプリッタと、画像を点状に絞り込み、刃先進入を検知するフォトトランジスタと、を具備する請求項1記載の撮像式工具測定装置。
【請求項5】
前記刃先進入検出部は、前記撮像部の視野内へ工具が進入するのを検出するレーザー検出手段である請求項1記載の撮像式工具測定装置。
【請求項6】
前記刃先進入検出部は、前記撮像部の視野内へ工具が進入するのを検出する近接センサである請求項1記載の撮像式工具測定装置。
【請求項7】
工作機械の主軸に装着した工具の撮像信号を画像処理によって工具の刃先位置の測定、刃先の観察を行うに当たり、前記撮像信号の画像処理とは別に撮像視野内への前記工具の刃先進入を検出し、刃先進入動作を停止することを特徴とする撮像式工具測定における刃先進入検出方法。
【請求項8】
前記工具の刃先進入を検出するに当たり、撮像される画像を結像前に光学経路から分離し、画像を線状に変換して、変換後の画像に基づき、前記工具の刃先進入を検出する請求項7記載の撮像式工具測定における刃先進入検出方法。
【請求項9】
前記工具の刃先進入を検出するに当たり、撮像される画像を結像前に光学経路から分離し、画像を点状に変換して、変換後の画像に基づき、前記工具の刃先進入を検出する請求項7記載の撮像式工具測定における刃先進入検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−86350(P2012−86350A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237762(P2010−237762)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000154990)株式会社牧野フライス製作所 (116)
【Fターム(参考)】