説明

撮像装置、および撮像装置制御方法、並びにプログラム

【課題】1つの撮影画像に基づいて動被写体領域も静止被写体領域についても高品質な広ダイナミックレンジ画像を生成する装置および方法を提供する。
【解決手段】撮像部からの入力画像情報に基づいて動被写体領域判別を実行して動被写体検出マップを生成し、生成した動被写体検出マップを利用して動被写体検出画素領域に対しては複数の異なる露光時間を周期的に配置したパターンからなる露光パターンを設定する。静止被写体領域に対しては被写体輝度に応じた露光時間設定を行う。このような露光時間制御に基づいて撮影した画像に対して、動被写体領域については複数の異なる露光時間の設定画素の画素値を利用した画素値合成処理により画素値を算出し、静止被写体領域については露光時間に応じたゲインの乗算によって画素値を算出して出力画像を生成する。この処理により解像度劣化を最小限に抑えつつ全領域に跨り広ダイナミックレンジ画像の取得が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置、および撮像装置制御方法、並びにプログラムに関する。特に、ダイナミックレンジの広い画像を生成する撮像装置、および撮像装置制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラやデジタルスチルカメラなどに用いられるCCDイメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサのような固体撮像素子は入射光量に応じた電荷を蓄積し、蓄積した電荷に対応する電気信号を出力する光電変換を行う。しかし、光電変換素子における電荷蓄積量には上限があり、一定以上の光量を受けると蓄積電荷量が飽和レベルに達してしまい、一定以上の明るさの被写体領域は飽和した輝度レベルに設定されるいわゆる白とびが発生してしまう。
【0003】
このような現象を防止するため、外光の変化等に応じて、光電変換素子における電荷蓄積期間を制御して露光時間を調整し、感度を最適値に制御するといった処理が行なわれる。例えば、明るい被写体に対しては、シャッタを高速に切ることで露光時間を短縮し光電変換素子における電荷蓄積期間を短くして蓄積電荷量が飽和レベルに達する以前に電気信号を出力させる。このような処理により被写体に応じた階調を正確に再現した画像の出力が可能となる。
【0004】
しかし、明るいところと暗いところが混在するような被写体の撮影においては、シャッタを高速に切ると、暗い部分で十分な露光時間がとれないためにS/Nが劣化し画質が落ちることになる。このように明るいところと暗いところが混在する被写体の撮影画像において、明るい部分、暗い部分の輝度レベルを正確に再現するためには、イメージセンサ上での入射光が少ない画素では長い露光時間として高いS/Nを実現し、入射光が多い画素では飽和を回避する処理が必要となる。
【0005】
このような処理を実現する手法として、連続的に露光時間の異なる複数の画像を撮影して合成する手法が知られている。すなわち、長時間露光画像と短時間露光画像を連続的に個別に撮影し、暗い画像領域については長時間露光画像を利用し、長時間露光画像では白とびとなってしまうような明るい画像領域では短時間露光画像を利用する合成処理によって、1つの画像を生成する手法である。このように、複数の異なる露光画像を合成することで、白とびのないダイナミックレンジの広い画像、すなわち広ダイナミックレンジ画像(HDR画像)を得ることができる。
【0006】
例えば特許文献1(特開2008−99158号公報)は、複数の異なる露光量の画像を合成して広いダイナミックレンジの画像を得る構成を開示している。図1を参照して、この処理について説明する。撮像デバイスは、例えば、動画撮影においては、ビデオレート(30−60fps)内に2つの異なる露光時間の画像データを出力する。また、静止画撮影においても、2つの異なる露光時間の画像データを生成して出力する。図1は、撮像デバイスが生成する2つの異なる露光時間を持つ画像(長時間露光画像と、短時間露光画像)の特性について説明する図である。横軸は時間(t)であり、縦軸は固体撮像素子の1つの画素に対応する光電変換素子を構成する受光フォトダイオード(PD)における蓄積電荷量(e)である。
【0007】
例えば、受光フォトダイオード(PD)の受光量が多い、すなわち明るい被写体に対応する場合、図1に示す高輝度領域11に示すように、時間経過に伴う電荷蓄積量は急激に上昇する。一方、受光フォトダイオード(PD)の受光量が少ない、すなわち暗い被写体に対応する場合、図1に示す低輝度領域12に示すように、時間経過に伴う電荷蓄積量は緩やかに上昇する。
【0008】
時間t0〜t3が長時間露光画像を取得するための露光時間TLに相当する。この長時間の露光時間TLとしても低輝度領域12に示すラインは、時間t3において電荷蓄積量は飽和レベルに達することなく(非飽和点Py)、この電荷蓄積量(Sa)に基づいて得られる電気信号を利用して決定する画素の階調レベルにより、正確な階調表現を得ることができる。
【0009】
しかし、高輝度領域11に示すラインは、時間t3に至る以前に、すでに電荷蓄積量は飽和レベル(飽和点Px)に達することが明らかである。従って、このような高輝度領域11は、長時間露光画像からは飽和レベルの電気信号に対応する画素値しか得られず、結果として白とび画素になってしまう。
【0010】
そこで、このような高輝度領域11では、時間t3に至る前の時間、例えば図に示す時間t1(電荷掃き出し開始点P1)において、一旦、受光フォトダイオード(PD)の蓄積電荷を掃き出す。電荷掃き出しは、受光フォトダイオード(PD)に蓄積された全ての電荷ではなく、フォトダイオード(PD)において制御される中間電圧保持レベルまでとする。この電荷掃き出し処理の後、再度、露光時間TS(t2〜t3)とした短時間露光を実行する。すなわち、図に示す短時間露光開始点P2〜短時間露光終了点P3までの期間の短時間露光を行なう。この短時間露光によって電荷蓄積量(Sb)が得られ、この電荷蓄積量(Sb)に基づいて得られる電気信号に基づいて、画素の階調レベルを決定する。
【0011】
なお、低輝度領域12における長時間露光によって得られる電荷蓄積量(Sa)に基づく電気信号と、高輝度領域251における短時間露光によって得られる電荷蓄積量(Sb)に基づく電気信号とに基づいて画素値を決定する際は、同一時間露光を行なった場合の推定電荷蓄積量またはその推定電荷蓄積量に対応する電気信号出力値を算出して、算出した結果に基づいて画素値レベルを決定する。
【0012】
このように、短時間露光画像と長時間露光画像を組み合わせることで、白とびのないダイナミックレンジの広い画像を得ることができる。
【0013】
この他、広ダイナミックレンジ画像を撮像する撮像装置として、事前の撮像情報に基づき画素単位で露光制御をする方法、そして空間的に露出を変化させながら合成を行う方法などが知られている。
【0014】
例えば、特許文献2(特開2001−358989号公報)や、特許文献3(特開2010−136205号公報)は、予備撮像した画像の輝度情報から露光制御情報を記録し、次の撮像条件にパラメータとして入れることで、露光を制御し、高解像を維持したまま広ダイナミックレンジ撮像を実現する構成を開示している。
【0015】
しかし、図1を参照して説明した複数の撮影画像を利用する方法や、上記の事前の撮像情報に基づいて露光を制御する処理を行う構成では、動く被写体がある場合に、画素値の変動が発生する。従って、図1を参照して説明した複数の撮影画像を利用する方法では、合成画像の生成時に誤った画素値が設定されてしまう。
【0016】
また、予備撮像した画像の輝度情報に基づいて露光制御を行う方法では、事前に画素単位で設定している露光制御情報が誤った情報となり、最適な制御が実現できなくなる。
たとえば暗→明と変化した画素では露光量が予想より多すぎるために飽和、明→暗と変化した画素では露光量が予想より少なすぎるためS/Nの低下、という問題が発生する。
【0017】
また、特許文献4(特開2010−110004号公報)は、センサ上に複数の異なる感度センサを設け、固定パターン上に配置し、低露出と高露出をそれぞれの画素で補間することで、広ダイナミックレンジを実現している。
【0018】
この方法では、画素ごとに時間によらず露出が固定なので、動被写体の影響を受けにくい。ただしセンサ上に固定パターンで低感度と高感度のセンサを配置するために従来のRGBセンサと比較してサンプリング感覚が広くなり、解像度が低下する問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−99158号公報
【特許文献2】特開2001−358989号公報
【特許文献3】特開2010−136205号公報
【特許文献4】特開2010−110004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本開示は、例えば、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、動被写体による画質低下を抑制したダイナミックレンジの広い画像を生成する撮像装置、および撮像装置制御方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本開示の第1の側面は、
撮像部と、
前記撮像部に対して画素領域単位の異なる露光時間制御を行う露光制御部と、
前記撮像部の出力画像に対する信号処理を実行して出力画像を生成する出力画像生成部を有し、
前記露光制御部は、
撮像部の撮影画像の動被写体領域識別情報を有する動被写体検出マップを生成する動被写体検出部と、
前記動被写体検出マップを参照して動被写体領域に複数の異なる露光時間を周期的に施した露光パターンを持つ露光制御マップを生成し、生成した露光制御マップに基づいて前記撮像部に対して画素領域単位の露光制御信号を出力する適正露光値算出部を有し、
前記出力画像生成部は、
前記動被写体領域から得られる複数の異なる露光時間に設定された複数画素の複数の画素値情報を合成して出力画素値を算出する撮像装置にある。
【0022】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記適正露光値算出部は、前記動被写体検出マップを参照して、静止被写体領域には、被写体輝度に応じた露光時間を設定した露光制御マップを生成し、生成した露光制御マップに基づいて前記撮像部に対して画素領域単位の露光制御信号を出力する。
【0023】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記適正露光値算出部は、動被写体領域に設定する露光パターンを、同一の露光時間が隣接画素に設定されない露光パターンとした露光制御マップを生成する。
【0024】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記出力画像生成部は、前記動被写体領域から得られる複数の異なる露光時間に設定された複数画素の複数の画素値情報を合成して、前記撮像部の出力する各画素単位の画素値より広いダイナミックレンジを持つ出力画素値を算出する動被写体画素用信号処理部を有する。
【0025】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記出力画像生成部は、画素単位で露光時間が短い画素に対しては大きなゲインを乗じ、露光時間が長い画素に対しては小さなゲインを乗じて出力画素値を算出する処理を行う静止画素用信号処理部を有する。
【0026】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記撮像装置は、前記撮像部の出力画像を縮小する縮小画像生成部を有し、前記露光制御部は、前記縮小画像生成部の生成した縮小画像を入力して、縮小画像に基づいて露光制御情報を生成する。
【0027】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記撮像装置は、前記撮像部の出力画像を記憶する記憶部を有し、前記動被写体検出部は、前記撮像部の出力する現在画像と、前記記憶部に格納された過去画像を利用して前記動被写体検出マップを生成する。
【0028】
さらに、本開示の第2の側面は、
撮像装置において実行する撮像装置制御方法であり、
撮像部が画像撮影を行う撮像ステップと、
露光制御部が、前記撮像部に対して画素領域単位の異なる露光時間制御を行う露光制御ステップと、
出力画像生成部が、前記撮像部の出力画像に対する信号処理を実行して出力画像を生成する出力画像生成ステップを実行し、
前記露光制御ステップは、
撮像部の撮影画像の動被写体領域識別情報を有する動被写体検出マップを生成する動被写体検出ステップと、
前記動被写体検出マップを参照して動被写体領域に複数の異なる露光時間を周期的に施した露光パターンを持つ露光制御マップを生成し、生成した露光制御マップに基づいて前記撮像部に対して画素領域単位の露光制御信号を出力する適正露光値算出ステップを含み、
前記出力画像生成ステップは、
前記動被写体領域から得られる複数の異なる露光時間に設定された複数画素の複数の画素値情報を合成して出力画素値を算出するステップを含む撮像装置制御方法にある。
【0029】
さらに、本開示の第3の側面は、
撮像装置において撮像装置制御処理を実行させるプログラムであり、
撮像部に画像撮影を行わせる撮像ステップと、
露光制御部に、前記撮像部に対して画素領域単位の異なる露光時間制御を行わせる露光制御ステップと、
出力画像生成部に、前記撮像部の出力画像に対する信号処理を実行して出力画像を生成する出力画像生成ステップを実行させ、
前記露光制御ステップにおいては、
撮像部の撮影画像の動被写体領域識別情報を有する動被写体検出マップを生成する動被写体検出ステップと、
前記動被写体検出マップを参照して動被写体領域に複数の異なる露光時間を周期的に施した露光パターンを持つ露光制御マップを生成し、生成した露光制御マップに基づいて前記撮像部に対して画素領域単位の露光制御信号を出力する適正露光値算出ステップを実行させ、
前記出力画像生成ステップにおいては、
前記動被写体領域から得られる複数の異なる露光時間に設定された複数画素の複数の画素値情報を合成して出力画素値を算出させるプログラムにある。
【0030】
なお、本開示に係るプログラムは、例えば、様々なプログラム・コードを実行可能な情報処理装置やコンピュータ・システムに対して、コンピュータ可読な形式で提供する記憶媒体、通信媒体によって提供可能なプログラムである。このようなプログラムをコンピュータ可読な形式で提供することにより、情報処理装置やコンピュータ・システム上でプログラムに応じた処理が実現される。
【0031】
本開示の目的、特徴や利点は、後述する本開示の実施例や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0032】
本開示の一実施例の構成によれば、撮像部からの入力画像情報に基づいて動被写体領域の判別を実行して動被写体検出マップを生成し、生成した動被写体検出マップを利用して、動被写体検出画素領域に対しては複数の異なる露光時間を周期的に配置したパターンからなる露光パターンを設定する。静止被写体領域に対しては被写体輝度に応じた露光時間設定を行う。
このような露光時間制御に基づいて撮影した画像に対して、動被写体領域については複数の異なる露光時間の設定画素の画素値を利用した画素値合成処理により広ダイナミックレンジの画素値を算出し、静止被写体領域については露光時間に応じたゲインの乗算によって広ダイナミックレンジの画素値を算出して出力画像を生成する。この処理により解像度劣化を最小限に抑えつつ全領域に跨り広ダイナミックレンジ画像の取得が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】複数の異なる露光量の画像を合成して広いダイナミックレンジの画像を得る処理について説明する図である。
【図2】本開示の撮像装置の構成例を示す図である。
【図3】本開示の撮像装置における露光制御部の構成例について説明する図である。
【図4】本開示の撮像装置における出力画像生成部の構成例について説明する図である。
【図5】光量Lに従い撮像部の出力する画素値が変化する様子を関数q(L)として示した図である。
【図6】光量Lと露光時間tに従い撮像部の出力する画素値が変化する様子を関数q(L,t)として示した図である。
【図7】動被写体画素における露光制御パターンであり、空間において周期的に値が変化するような固定パターンの例を示す図である。
【図8】本開示の撮像装置における露光制御例について説明する図である。
【図9】N種類の露光時間を保持する同チャネルの近傍の画素値の和の算出処理について説明する図である。
【図10】N種類の露光時間を保持する同チャネルの近傍の画素値の和qsum(L)を、出力画素値としての補正画素値Q(L)に変換する処理について説明する図である。
【図11】入射光量Lと補正画素値Q(L)との対応について説明する図である。
【図12】動被写体検出部141において実行する動被写体検出の流れを説明する図である。
【図13】動被写体検出部141において実行する動被写体検出の流れを説明する図である。
【図14】動被写体検出部141において実行する動被写体検出処理の具体例について説明する図である。
【図15】動きベクトル方向への距離:l(エル)と、動きベクトル方向の検出値をβ(l)との対応関係について説明する図である。
【図16】動きベクトル(中心(x,y),動き(u,v))と動きベクトルに対する座標k(xk,yk)の法線ベクトル方向の距離mkの関係について説明する図である。
【図17】動きベクトル方向への距離がl(エル)のときの、法線ベクトル方向への距離:mと、検出値α(m,l)との関係について説明する図である。
【図18】実施例2の撮像装置の構成例について説明する図である。
【図19】実施例2の撮像装置の動被写体検出部の実行する動被写体検出の流れを説明する図である。
【図20】実施例3の撮像装置の構成例について説明する図である。
【図21】実施例3の撮像装置の露光制御部621の構成と処理について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、本開示の撮像装置、および撮像装置制御方法、並びにプログラムについて説明する。説明は以下の項目順に行う。
1.撮像装置の第1実施例の構成と処理について
2.撮像装置の第2実施例の構成と処理について
3.撮像装置の第3実施例の構成と処理について
4.撮像装置の第4実施例の構成と処理について
5.本開示の構成のまとめ
【0035】
[1.撮像装置の第1実施例の構成と処理について]
まず、本開示の撮像装置の第1実施例について説明する。
図2は、本開示の実施例1に係る撮像装置の構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る撮像装置は、撮像部101、画像信号処理手段としてのDSP(Digital Signal Processor)102、記憶部103を有する。
DSP102は、露光制御部121、出力画像生成部122を有する。
【0036】
なお、撮像装置は、図2に示す構成の他、各構成部の制御を実行する制御部、具体的にはプログラム実行機能を持つCPU等を備えた制御部や、制御部において実行するプログラム等を格納したメモリ(記憶部)、さらに、ユーザによって操作されるシャッター等の操作部、画像の出力を行うLCD等からなる表示部等、カメラとしての機能を実行するための構成要素を備えている。
【0037】
撮像部101は、入射光を入力とし、光電変換された画像を出力とする。光学レンズや例えばCMOSイメージセンサなどによって構成される。
露光制御部121は撮像部101の露光時間の制御を行う。本開示の撮像装置は、画素単位または画素領域単位で露光時間制御を行う。
露光制御部121は、図3に示すように、動被写体検出部132、適正露光値算出部131を有する。
【0038】
図2、図3に示すように、撮像部101から得られる最新の撮影画像である現在画像は、露光制御部121に出力されるとともに記憶部103に格納される。
露光制御部121は、撮像部101から最新の入力画像である現在画像を入力し、さらに、記憶部103に保存された現在画像より前のタイミングの入力画像である過去画像と、露光制御マップ(MAP)を入力し、更新された露光制御マップと動被写体検出マップ(MAP)を出力する。
【0039】
なお。露光制御マップは、撮像部の撮像デバイスの画素単位の最適な露光時間を設定したマップである。
動被写体検出マップは、撮像部101からの入力画像から検出される動被写体領域と静止被写体領域とを画素単位で識別可能としたマップである。
【0040】
これらの露光制御マップと動被写体検出マップは、撮影される画像フレーム単位、あるいは予め設定した複数フレーム単位で、随時更新される。
動被写体検出部132は、撮像部101から得られる入力画像である現在画像と、記憶部103に保存された過去画像を比較して動被写体領域を判定して、動被写体検出マップを更新し、記憶部103に格納するとともに、適正露出値算出部131に出力する。
【0041】
適正露出値算出部131は、撮像部101から得られる入力画像である現在画像を入力し、記憶部103から、過去フレームに基づいて生成した露光制御マップを取得し、さらに、動被写体検出部132から更新された動被写体検出マップを入力して、露光制御マップの更新を実行する。この更新された露光制御マップに基づいて撮像部の撮像素子の画素単位の露光時間制御を行う。
また、更新された露光制御マップは記憶部103に格納する。
【0042】
詳細については後述するが、露光制御マップは、動被写体検出マップに基づいて、静止被写体が撮影されていると判定された静止被写体撮影画素領域については、被写体明るさに応じて露光時間を設定したものとして作成される。
一方、動被写体検出マップに基づいて、動被写体の撮影された動被写体撮影画素領域であると判定された領域については、あらかじめ設定された複数の異なる露光時間の組み合わせからなる露光パターンを設定したマップとして作成される。
この露光制御マップの具体的構成例については、後段で説明する。
【0043】
露光制御部121は、更新した露光制御マップに基づいて、撮像部101に設けられた撮像デバイスの構成画素または画素領域単位の露光制御を行う。露光制御部121において更新された露光制御マップと動被写体検出マップは、記憶部103に保存し、その後の撮影フレームの露光制御に利用される。
【0044】
画像出力部122は、図4に示すように、動被写体用信号処理部141、静止画素用信号処理部142と、出力選択部143、および信号処理部144を有する。
画像出力部122は、撮像部101から得られる現在画像と、記憶部102に保存された露光制御マップと動被写体検出マップを入力とし、最終的に結果として得られる画像を出力する。
【0045】
動被写体用信号処理部141は、撮像部101から得られる現在画像に対して、あらかじめ既定された動被写体に適した信号処理を実行する。
静止画素用信号処理部142は、撮像部101から得られる現在画像に対して、あらかじめ既定された静止被写体に適した信号処理を実行する。
なお、これらの信号処理に際しては、現在画像に適用された露光制御情報を適用し、各画素単位の露光時間を考慮した信号処理を行う。
【0046】
出力選択部143は、動被写体用信号処理部141と静止画素用信号処理部142とから、各々の信号処理結果を入力して、さらに、記憶部103から動被写体検出マップを入力して、入力マップに基づいて、動被写体領域については、動被写体用信号処理部141における信号処理結果を選択し、静止被写体領域については、静止画素用信号処理部142における信号処理結果を選択して中間出力画像を生成し、信号処理部144に出力する。
【0047】
信号処理部144は、ホワイトバランス調整、色補正、ノイズリダクション、階調補正、ガンマ補正、デモザイク処理などの信号処理を実行して、最終的な出力結果としての出力画像105を生成して出力する。
【0048】
次に、本実施例の撮像装置における露光制御部121の構成と処理の詳細について図3を参照して説明する。
入射光が撮像部101で光電変換され、最新の入力画像である現在画像が露光制御部121の適正露光値算出部131と動被写体算出部132に入力される。ある画素における入射光の光量をL、露光時間をt、絞り値をF、感度に依存する定数をkとすると、画素値qは以下の式で表わされる。
【0049】
【数1】

【0050】
ただし、画素値qが飽和画素値qmaxを超えた場合は飽和し、q=qmaxとなる。
光量Lに従い撮像部101の出力する画素値が変化する様子を関数q(L)として示したものが図5である。ある光量(qmaxF/kt)を境に画素値は飽和し、飽和画素値qmaxとなることがわかる。
【0051】
今回の実施例では全て簡単のため露光時間tのみが制御可能である場合について考える。つまり適正露光値算出部では、適正露光時間のみが算出されることになる。露光時間tと光量Lが変化する時の画素値q(L,t)は以下の関数式で表わされる。
【0052】
【数2】

【0053】
図6に示すように、露光時間tが長くなるほど、撮像部101の出力は少ない光量Lで飽和するようになる。
【0054】
図3に示すように、動被写体検出部132には記憶部103に保存されている過去の撮像結果も同時に入力される。動被写体検出部132では、現在画像と過去画像の両信号を用いて、各画素単位で、動被写体領域であるか否かの検出を行い、動被写体検出マップを出力する。この動被写体検出の方法の詳細については後述する。
【0055】
適正露光値算出部131では、動被写体検出部132の生成した動被写体検出マップに従い、2通りの露光時間の設定態様に従って各画素単位の露光時間を決定する。動被写体検出マップで動被写体が検出されなかった画素(静止被写体画素)では、現在画像と露光制御マップを元に適正露光時間を画素ごとに算出する。適正露光の算出は、一般的な自動露光の決定方法に従い行われる。
【0056】
例えば、Nフレーム目のある画素の露光時間を決定する際は、N−1フレーム目の対象画素周辺の画素値に注目し、その画素値の平均が18%のグレーとなるようにする。具体的には、N−1フレームのある画素値の近傍平均値をqN−1、露光時間をtN−1とすると、Nフレーム目における適正露光時間tは以下の式で与えられる。
【0057】
【数3】

【0058】
動被写体検出マップで動被写体が検出された画素(動被写体画素)では、空間において周期的に値が変化するような固定パターンで露光時間を決定する。具体的には、固定パターンは例えば、図7に示すように異なるK種類の露光の画素が空間的に隣接しないように交互に並んでいるものとする。
図7に示す設定は、K=4とした例であり、t1が最も長い露光時間であり、t4が最も短い露光時間とし、各露光時間の関係が以下の設定、すなわち、
t1>t2>t3>t4
これら4つの異なる露光時間を各画素に設定し、同じ露光時間の画素を隣接しないように設定する。
なお、このような固定露光パターンを利用した画像撮影処理の詳細については特許文献4(特開2010−110004号公報)において説明されている。
【0059】
適正露光値算出部131では、このように、動被写体検出部132の生成した動被写体検出マップに従って、
静止被写体領域では、各画素の被写体輝度に応じた露光時間の設定、
動被写体領域では、例えば図7に示す複数の異なる露光時間の組み合わせパターンに従った露光時間の設定、
これらの2通りの露光時間の設定態様に従って、各画素対応の露光時間を設定した露光制御マップを生成または更新する。
【0060】
露光制御部121では、生成または更新した露光制御マップを利用して、撮像部101における露光時間を画素毎に制御する。この一連の流れによって、過去の撮像情報を利用して、適正な露光時間で画素毎に撮像が可能になる。
【0061】
本実施例における露光制御処理では、動被写体検出マップに従って動被写体の撮影領域に対応する画素では、固定パターンの露光パターンを用いる。
具体的な露光時間設定例を図8に示す。
図8は、撮像部101の撮像素子における画素単位の露光時間の設定例を示している。
【0062】
図8中、ta,tb,tc.tdは、静止被写体領域に対応する露光時間を示している。これらの静止被写体画素領域では、被写体輝度に応じた露光時間が設定される。露光時間ta〜tdは、
ta>tb>tc>td
上記のようにtaが最も長い露光時間、tdが最も短い露光時間を示している。
この露光時間は被写体輝度に応じて決定される。
【0063】
一方、太線枠で締め矩形領域が動被写体領域である。
これらの動被写体領域は、先に図7を参照して説明した4種類の露光時間、すなわち、
t1>t2>t3>t4
これら4つの異なる露光時間を、同じ露光時間の画素が隣接しない設定とした周期的な露光パターンが割り付けられる。
【0064】
次に、図2に示す撮像装置におけるDSP102内の出力画像生成部122の構成と処理の詳細について、図4多を参照して説明する。
出力画像生成部122は、図2、図4に示すように、撮像部101から現在画像を入力し、さらに、記憶部103に保存された露光制御マップおよび動被写体検出マップを入力する。
【0065】
図4に示されるように、現在画像と、露光制御マップは動被写体用信号処理部141、および静止画素用信号処理部142それぞれに入力される。
動被写体画素用信号処理部141では、例えば、先に図7を参照して説明した固定露光パターンで撮像されたと仮定される画素を、画素毎に近傍の露光時間の異なる画素と合成し、広ダイナミックレンジの結果を出力する。
【0066】
ここでは近傍では入射する光量Lはほぼ等しいという前提を置いている。具体的には、N種類の露光時間を保持する同チャネルの近傍の画素値の和、
qsum(L)=q(L,t1)+q(L,t2)+…q(L,tN)
を、露光制御マップの中で最も長い露光時間tmaxにしたとき(レンジが広いとき)の飽和を考慮しない値Q(L)、すなわち、以下に示すQ(L)に変換することで、画素値を圧縮することなく全ての画素において大きい階調で画素値を量子化できる。
【0067】
【数4】

【0068】
なお、上記式において、
qsum(L)は、図9に示すように光量Lに従い以下のような値を取る。
【0069】
【数5】

【0070】
なお、上記式において、
t1>t2>…>tN
である。
tnは露光時間が長い順から並べてn番目(1≦n<N)の露光時間を示す。
【0071】
ここでの問題設定は、N種類の露光時間を保持する同チャネルの近傍の画素値の和qsum(L)を、出力画素値としての補正画素値Q(L)に変換することになる。ここで上式の関数qsum(L)は全ての画素が飽和するまで光量Lに対して単調増加であり、Q(L)も同じく光量Lに対して単調増加であるため、qsum(L)に線形演算を施せば変換できることがわかる。
具体的には、以下の式が成立するように線形変換を行う。
【0072】
【数6】

【0073】
なお、ここで、図10に示すようにqsum(L)が飽和する光量以上のLが入ったときはQ(L)も飽和させる。a,bの値は以下のようになる。
【0074】
【数7】

【0075】
図4に示す出力画像生成部122の動被写体画素用信号処理部141では、このように周辺の画素値の加算を利用して、ダイナミックレンジの拡大を実現するが、前提として、加算処理を実行して有意な情報が得られる程度のある程度の大きさの近傍領域は動被写体画素として検出されなければならない。
従って、例えば静止被写体画素領域の中に1つのみの動被写体画素が存在してもこの加算処理による処理では有効な画素値を算出することは困難となる。
しかし、詳しくは後述するが、動被写体検出部132における動被写体検出処理によって生成する動被写体検出マップでは、ある程度まとまった画素領域で動被写体の検出を行うので、必ず複数画素からなる動被写体画素領域が設定され、このような問題を回避することができる。
【0076】
一方、図4に示す出力画像生成部122の静止画素用信号処理部142は、露光制御マップの値をもとに、各画素で別々の適切なゲインをかける。露光時間が短い場合は大きいゲインを乗じて、露光が長い場合は少ないゲインを乗ずる画素値変換処理により出力画素値を算出する。
【0077】
変換する値は、動被写体用信号処理部141と同様、最も広く量子化できる最長露光時間tmaxの時の画素値Q(L)である。ただし、図11に示すように入射光量Lが動被写体画素用信号処理部での最短露光時間tNでの飽和レベルを超える時は、動被写体画素用信号処理部での飽和画素値と等しく値を変換する。
【0078】
具体的には、得られた光量Lの画素値q(L,t)に対して以下の演算を行い、補正画素値Q(L)を得る。
【0079】
【数8】

【0080】
次に、図4に示す出力画像生成部122の出力選択部143は、動被写体画素用信号処理部141の生成した動被写体画素用信号処理結果、および静止画素用信号処理部142の生成した静止画素用信号処理結果の双方を入力し、各画素単位で動被写体検出マップを参照して出力画素値を選択する。
【0081】
動被写体検出マップにおいて動被写体と判定されている画素では動被写体用信号処理結果、それ以外の画素については静止画用信号処理結果が選択される。
この出力選択部143の出力する中間出力画像は、撮像部101から得られた入力画像よりも高いビット数を持つダイナミックレンジの広い画像であり、この広ダイナミックレンジ画像が後段の信号処理部144に入力される
【0082】
信号処理部144は、一般的なカメラにおいて実行される画像補正処理、すなわちデモザイク、ホワイトバランス、色補正、ノイズリダクション、階調補正、ガンマ補正などが行われ、最終的な出力結果としての出力画像105を生成する。
【0083】
次に、動被写体検出部141において実行する動被写体検出手法について、具体的に説明する。
図12は動被写体検出部141において実行する動被写体検出の流れを説明する図である。
【0084】
動被写体検出部141は、撮像部101においてN−2フレーム画像を撮影したタイミングで、このN−2フレーム画像と、記憶部103に格納済みのN−3フレーム画像を取得してこれらの2つの画像に基づいて動被写体領域の推定を実行する。
【0085】
次に、動被写体検出部141は、撮像部101においてN−1フレーム画像を撮影したタイミングで、このN−1フレーム画像と、記憶部103に格納済みのN−2フレーム画像を取得してこれらの2つの画像に基づいて動被写体領域の推定を実行する。
【0086】
次に、動被写体検出部141は、撮像部101においてNフレーム画像を撮影したタイミングで、このNフレーム画像と、記憶部103に格納済みのN−1フレーム画像を取得してこれらの2つの画像に基づいて動被写体領域の推定を実行する。
このように、動被写体検出部141は、順次、利用画像を新しいものに切り替えて動被写体領域の検出処理を実行する。
【0087】
動被写体検出部141は、Nフレーム目に取得された画像の動被写体領域を、過去の2画像、つまりN−1フレーム目に取得された画像およびN−2番目に取得された画像を用いて推定する。処理の概要について図13を参照して説明する。
【0088】
N−1フレーム画像と、N−2フレーム画像の2枚を入力とし、まず、ステップS11において、N−1フレーム画像の動被写体領域の検出を行う。領域の検出は2画像間の対応画素位置の画素値の差分絶対値を算出し、予め設定した閾値と比較することで行う。
差分絶対値が、予め設定した閾値以上ならば動被写体画素とする。
差分絶対値が、予め設定した閾値未満であれば動被写体画素ではない、すなわち静止被写体画素であると判定する。
【0089】
その後、ステップS12において、N−1フレーム画像において動被写体領域とされた画素において動きベクトルを求める。動きベクトルは勾配法を用いて求める。
さらに、N−1フレーム画像の動被写体領域とされた画素において求めた動きベクトルを元に、ステップS13でNフレーム目の動被写体検出領域を求める。
この算出手順について説明する。
【0090】
ある座標k(xk,yk)での検出値である画素値の差分絶対値をαとしたときに、αが閾値以上なら検出画素(動被写体画素)と判定する。
図14に示されるように、ある動きベクトル(中心(x,y),動き量(u,v))に対する座標k(xk,yk)の動きベクトル方向の距離lk(エルケー)は以下の式で算出される。
【0091】
【数9】

【0092】
また、動きベクトル方向への距離がl(エル)の時の動きベクトル方向の検出値をβ(l)とすると、その値はl(エル)に従い図15のように変化し、以下の式で算出される。
【0093】
【数10】

【0094】
上記式において、
Corβ1〜Corβ3は、変更可能なパラメータであり、変更させることで検出値βの値を変更することが可能である。
【0095】
検出値αは法線ベクトル方向の距離も加味する。つまり動きベクトルの法線方向の距離が近いほど、検出値を高くする。そのために、法線ベクトル方向への距離mを算出する。
図16に示されるように、ある動きベクトル(中心(x,y),動き(u,v))に対する座標k(xk,yk)の法線ベクトル方向の距離mkは以下の式で算出される。
【0096】
【数11】

【0097】
また、動きベクトル方向への距離がl(エル)、法線ベクトル方向への距離がmのとき、検出値α(m,l)は図17のように変化し、以下の式で算出される。
【0098】
【数12】

【0099】
上記式において、Corαoff、Corαwidは変更可能なパラメータであり、変更させることで検出値αの値が変わってくる。
この値αを求められた全ての動きベクトルについて、全座標で算出し、最大値を最終的な検出値αとする。
【0100】
このように動きベクトルそのものをピークとした動きも予測した検出値を設けることである程度まとまった領域で動被写体領域を推定することができる。
検出値αが閾値以上の画素を動被写体画素、それ以外を静止画素として、それぞれ1、0の値を持つ2ビット画像を動被写体検出マップとして出力する。
【0101】
[2.撮像装置の第2実施例の構成と処理について]
上述した実施例、すなわち、図2他を参照して説明した構成では、露光制御部121に対して撮像部101の撮影画像をそのまま入力して露光時間の算出を実行しているが、撮像部101の撮影画像を縮小して縮小画像を露光制御部に入力して、露光制御部が縮小画像に基づく処理を行ってもよい。
この構成に対応する撮像装置の構成図は図18に示す構成となる。
【0102】
図18に示す撮像装置では、入射光が撮像部501で光電変換され、現在画像がDSP502の縮小画像生成部523に入力される。縮小画像生成部523における縮小画像の生成は、例えば輝度信号1チャネルのみに対する処理として実行してよい。
具体的には、例えば縮小した結果同一の画素になる元のRAW画像中の(R,Gb,Gr,B)値の最大値を抽出する処理として行うことが可能である。
【0103】
縮小画像生成部523の生成した縮小画像は記憶部503に保存される。
露光制御部521は、縮小画像生成部523が現在画像に基づいて生成した縮小画像と、記憶部503に保存された過去の縮小画像を入力し、露光制御部521内の動被写体算出部で動被写体の検出が行われる。
【0104】
本実施例における露光制御部521も、先の実施例と同様、図3に示す動被写体検出部と適正露光値算出部を有し、動被写体検出部において動被写体検出マップを生成し、適正露光値算出部において露光制御マップの生成しよりを実行する。この処理に際して、縮小画像が適用されることになり、処理負荷が軽減される。
なお、撮像部101に対する露光制御は、縮小画像に基づいて生成した露光時間の設定情報を元の撮像素子のサイズ(画素数)に復元して行われる。例えば1/4縮小画像に基づいて生成した露光制御マップに設定された縮小画像の1画素対応の露光時間は、元の撮像素子の4画素に対して適用されることになる。
【0105】
図19は、本実施例における縮小画像の生成と、動被写体検出処理のシーケンスを示す図である。
動被写体検出部は、撮像部501においてN−2フレーム画像が撮影されると、縮小画像生成部523において縮小画像を生成し、生成したN−2フレーム縮小画像と、記憶部503に格納済みのN−3フレーム縮小画像を取得してこれらの2つの縮小画像に基づいて動被写体領域の推定を実行する。
【0106】
次に、動被写体検出部は、撮像部101においてN−1フレーム画像が撮影されると、縮小画像生成部523において縮小画像を生成し、生成したN−1フレーム縮小画像と、記憶部503に格納済みのN−2フレーム縮小画像を取得してこれらの2つの縮小画像に基づいて動被写体領域の推定を実行する。
【0107】
さらに、動被写体検出部は、撮像部101においてNフレーム画像が撮影されると、縮小画像生成部523において縮小画像を生成し、生成したNフレーム縮小画像と、記憶部503に格納済みのN−1フレーム縮小画像を取得してこれらの2つの縮小画像に基づいて動被写体領域の推定を実行する。
このように、動被写体検出部は、順次、利用画像を新しい縮小画像に切り替えて動被写体領域の検出処理を実行する。
【0108】
縮小画像を用いることによって動被写体検出の計算量および適正露光時間算出の計算量が削減され、更に露光制御マップおよび動被写体検出マップのサイズも小さくなるので、記憶部に記憶する情報量を抑えることができる。
【0109】
一方、動被写体の検出精度や露光時間の算出精度は落ちてしまう。動被写体を検出できなくなれば、飽和や黒つぶれの問題が再発し、画質の低下が顕著になってしまう。それに起因する副作用を抑えるために、動被写体検出部の検出パラメータを変化させ、検出をしやすくする方法がある。このようにパラメータを変化させると、本当は動被写体ではない領域まで検出されてしまうが、検出漏れは防ぐことができる。検出過剰によって起こる副作用は、該当領域の解像感の低下であるが、小領域での解像感の低下は、飽和や黒つぶれが発生するよりは目立たないことが多い。適正露光時間の算出精度が落ちてしまう問題は顕在してしまうが、極めて小さい近傍領域で適正露光が大きく変わるシーンというものは現実にはあまりなく問題視しなくて良いことが多い。
【0110】
[3.撮像装置の第3実施例の構成と処理について]
次に説明する実施例3は、実施例1,2で用いている記憶部を用いない構成とした例である。本実施例での撮像装置全体の構成は図20に示す構成となる。
なお、縮小画像生成部623は必須ではないが、設けることで、前述の実施例2と同様、処理負荷の低減が実現される。
【0111】
撮像部601で得られた撮像結果である現在画像は、DSP602の露光制御部621と、出力画像生成部622に入力される。なお、この場合の入力画像は縮小画像でも良い。
【0112】
現在画像(縮小画像)が露光制御部621、出力画像生成部622にそれぞれ入力され、露光制御部621には別に1ビットの露光制御のための「制御設定パラメータ」を入力する。このパラメータは、例えばユーザが入力部を介して入力する設定情報に基づいて実行される。
図21に示すようにこの「制御設定パラメータ」は動被写体検出部632に入力される。動被写体検出部632は、設定パラメータに応じて、画像全体を動被写体画素とした動被写体検出マップ、または画像全体を静止画素とした動被写体検出マップを出力する。
【0113】
動被写体検出部632の生成した動被写体検出マップは適正露光値算出部631に渡される。適正露光値算出部631では、画像全体を動被写体画素とした動被写体検出マップ、または画像全体を静止画素とした動被写体検出マップ、それぞれのマップに応じて、先に実施例1で説明した露光時間の設定処理が行われ画素ごとに露光時間を算出する。
【0114】
すなわち、動被写体検出部632の生成した動被写体検出マップが、画像全体を動被写体画素とした動被写体検出マップである場合には、全画素に対して、例えば図7を参照して説明した固定パターンの露光時間設定を施した露光制御マップを生成して露光制御を実行する。
【0115】
一方、動被写体検出部632の生成した動被写体検出マップが、画像全体を静止被写体画素とした動被写体検出マップである場合には、全画素に対して、被写体輝度に応じた露光時間設定を施した露光制御マップを生成して露光制御を実行する。
なお、本構成では、図20に示すように、露光制御部621の出力である露光制御マップと動被写体検出マップは規約部に格納されることなく、直接、出力画像生成部622に渡される。
【0116】
出力画像生成部622は、先の実施例1において図4を参照して説明したと同様の構成を有し、図4を参照して説明したと同様の処理を実行して出力画像を生成する。
本実施例では実施例1,2のように動被写体の検出を行い領域ごとに露光制御の方法を変えることはできなくなるが、記憶装置がいらなくなるというメリットを持つ。
【0117】
[4.撮像装置の第4実施例の構成と処理について]
前述の実施例1では、動被写体検出部の動被写体検出処理における動きベクトル算出処理に際して、勾配法を用いた例を説明したが、勾配法の代わりにブロックマッチング法を適用してもよい。ブロックマッチング法を用いる場合、精度は高くなるが演算量が増加する。
【0118】
[5.本開示の構成のまとめ]
以上、特定の実施例を参照しながら、本開示の実施例について詳解してきた。しかしながら、本開示の要旨を逸脱しない範囲で当業者が実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、限定的に解釈されるべきではない。本開示の要旨を判断するためには、特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0119】
なお、本明細書において開示した技術は、以下のような構成をとることができる。
(1)撮像部と、
前記撮像部に対して画素領域単位の異なる露光時間制御を行う露光制御部と、
前記撮像部の出力画像に対する信号処理を実行して出力画像を生成する出力画像生成部を有し、
前記露光制御部は、
撮像部の撮影画像の動被写体領域識別情報を有する動被写体検出マップを生成する動被写体検出部と、
前記動被写体検出マップを参照して動被写体領域に複数の異なる露光時間を周期的に施した露光パターンを持つ露光制御マップを生成し、生成した露光制御マップに基づいて前記撮像部に対して画素領域単位の露光制御信号を出力する適正露光値算出部を有し、
前記出力画像生成部は、
前記動被写体領域から得られる複数の異なる露光時間に設定された複数画素の複数の画素値情報を合成して出力画素値を算出する撮像装置。
【0120】
(2)前記適正露光値算出部は、前記動被写体検出マップを参照して、静止被写体領域には、被写体輝度に応じた露光時間を設定した露光制御マップを生成し、生成した露光制御マップに基づいて前記撮像部に対して画素領域単位の露光制御信号を出力する前記(1)に記載の撮像装置。
(3)前記適正露光値算出部は、動被写体領域に設定する露光パターンを、同一の露光時間が隣接画素に設定されない露光パターンとした露光制御マップを生成する前記(1)または(2)に記載の撮像装置。
【0121】
(4)前記出力画像生成部は、前記動被写体領域から得られる複数の異なる露光時間に設定された複数画素の複数の画素値情報を合成して、前記撮像部の出力する各画素単位の画素値より広いダイナミックレンジを持つ出力画素値を算出する動被写体画素用信号処理部を有する前記(1)〜(3)いずれかに記載の撮像装置。
(5)前記出力画像生成部は、画素単位で露光時間が短い画素に対しては大きなゲインを乗じ、露光時間が長い画素に対しては小さなゲインを乗じて出力画素値を算出する処理を行う静止画素用信号処理部を有する前記(1)〜(4)いずれかに記載の撮像装置。
【0122】
(6)前記撮像装置は、前記撮像部の出力画像を縮小する縮小画像生成部を有し、前記露光制御部は、前記縮小画像生成部の生成した縮小画像を入力して、縮小画像に基づいて露光制御情報を生成する前記(1)〜(5)いずれかに記載の撮像装置。
(7)前記撮像装置は、前記撮像部の出力画像を記憶する記憶部を有し、前記動被写体検出部は、前記撮像部の出力する現在画像と、前記記憶部に格納された過去画像を利用して前記動被写体検出マップを生成する前記(1)〜(6)いずれかに記載の撮像装置。
【0123】
また、明細書中において説明した一連の処理はハードウェア、またはソフトウェア、あるいは両者の複合構成によって実行することが可能である。ソフトウェアによる処理を実行する場合は、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれたコンピュータ内のメモリにインストールして実行させるか、あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることが可能である。例えば、プログラムは記録媒体に予め記録しておくことができる。記録媒体からコンピュータにインストールする他、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介してプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることができる。
【0124】
なお、明細書に記載された各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。また、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上、説明したように、本開示の一実施例の構成によれば、撮像部からの入力画像情報に基づいて動被写体領域の判別を実行して動被写体検出マップを生成し、生成した動被写体検出マップを利用して、動被写体検出画素領域に対しては複数の異なる露光時間を周期的に配置したパターンからなる露光パターンを設定する。静止被写体領域に対しては被写体輝度に応じた露光時間設定を行う。
このような露光時間制御に基づいて撮影した画像に対して、動被写体領域については複数の異なる露光時間の設定画素の画素値を利用した画素値合成処理により広ダイナミックレンジの画素値を算出し、静止被写体領域については露光時間に応じたゲインの乗算によって広ダイナミックレンジの画素値を算出して出力画像を生成する。この処理により解像度劣化を最小限に抑えつつ全領域に跨り広ダイナミックレンジ画像の取得が実現される。
【符号の説明】
【0126】
11 高輝度領域
12 低輝度領域
101 撮像部
102 DSP
103 記憶部
105 出力画像
121 露光制御部
122 出力画像生成部
131 適正露光値制御部
132 動被写体検出部
141 動被写体画素用信号処理部
142 静止画素用信号処理部
143 出力選択部
144 信号処理部
501 撮像部
502 DSP
503 記憶部
505 出力画像
521 露光制御部
522 出力画像生成部
523 縮小画像生成部
601 撮像部
602 DSP
605 出力画像
621 露光制御部
622 出力画像生成部
623 縮小画像生成部
631 適正露光値算出部
632 動被写体検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部と、
前記撮像部に対して画素領域単位の異なる露光時間制御を行う露光制御部と、
前記撮像部の出力画像に対する信号処理を実行して出力画像を生成する出力画像生成部を有し、
前記露光制御部は、
撮像部の撮影画像の動被写体領域識別情報を有する動被写体検出マップを生成する動被写体検出部と、
前記動被写体検出マップを参照して動被写体領域に複数の異なる露光時間を周期的に施した露光パターンを持つ露光制御マップを生成し、生成した露光制御マップに基づいて前記撮像部に対して画素領域単位の露光制御信号を出力する適正露光値算出部を有し、
前記出力画像生成部は、
前記動被写体領域から得られる複数の異なる露光時間に設定された複数画素の複数の画素値情報を合成して出力画素値を算出する撮像装置。
【請求項2】
前記適正露光値算出部は、
前記動被写体検出マップを参照して、静止被写体領域には、被写体輝度に応じた露光時間を設定した露光制御マップを生成し、生成した露光制御マップに基づいて前記撮像部に対して画素領域単位の露光制御信号を出力する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記適正露光値算出部は、
動被写体領域に設定する露光パターンを、同一の露光時間が隣接画素に設定されない露光パターンとした露光制御マップを生成する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記出力画像生成部は、
前記動被写体領域から得られる複数の異なる露光時間に設定された複数画素の複数の画素値情報を合成して、前記撮像部の出力する各画素単位の画素値より広いダイナミックレンジを持つ出力画素値を算出する動被写体画素用信号処理部を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記出力画像生成部は、
画素単位で露光時間が短い画素に対しては大きなゲインを乗じ、露光時間が長い画素に対しては小さなゲインを乗じて出力画素値を算出する処理を行う静止画素用信号処理部を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記撮像装置は、
前記撮像部の出力画像を縮小する縮小画像生成部を有し、
前記露光制御部は、前記縮小画像生成部の生成した縮小画像を入力して、縮小画像に基づいて露光制御情報を生成する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像装置は、
前記撮像部の出力画像を記憶する記憶部を有し、
前記動被写体検出部は、前記撮像部の出力する現在画像と、前記記憶部に格納された過去画像を利用して前記動被写体検出マップを生成する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像装置において実行する撮像装置制御方法であり、
撮像部が画像撮影を行う撮像ステップと、
露光制御部が、前記撮像部に対して画素領域単位の異なる露光時間制御を行う露光制御ステップと、
出力画像生成部が、前記撮像部の出力画像に対する信号処理を実行して出力画像を生成する出力画像生成ステップを実行し、
前記露光制御ステップは、
撮像部の撮影画像の動被写体領域識別情報を有する動被写体検出マップを生成する動被写体検出ステップと、
前記動被写体検出マップを参照して動被写体領域に複数の異なる露光時間を周期的に施した露光パターンを持つ露光制御マップを生成し、生成した露光制御マップに基づいて前記撮像部に対して画素領域単位の露光制御信号を出力する適正露光値算出ステップを含み、
前記出力画像生成ステップは、
前記動被写体領域から得られる複数の異なる露光時間に設定された複数画素の複数の画素値情報を合成して出力画素値を算出するステップを含む撮像装置制御方法。
【請求項9】
撮像装置において撮像装置制御処理を実行させるプログラムであり、
撮像部に画像撮影を行わせる撮像ステップと、
露光制御部に、前記撮像部に対して画素領域単位の異なる露光時間制御を行わせる露光制御ステップと、
出力画像生成部に、前記撮像部の出力画像に対する信号処理を実行して出力画像を生成する出力画像生成ステップを実行させ、
前記露光制御ステップにおいては、
撮像部の撮影画像の動被写体領域識別情報を有する動被写体検出マップを生成する動被写体検出ステップと、
前記動被写体検出マップを参照して動被写体領域に複数の異なる露光時間を周期的に施した露光パターンを持つ露光制御マップを生成し、生成した露光制御マップに基づいて前記撮像部に対して画素領域単位の露光制御信号を出力する適正露光値算出ステップを実行させ、
前記出力画像生成ステップにおいては、
前記動被写体領域から得られる複数の異なる露光時間に設定された複数画素の複数の画素値情報を合成して出力画素値を算出させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−235332(P2012−235332A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102914(P2011−102914)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】