説明

撮像装置、ぶれ補正方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体

【課題】ぶれ補正時の歪曲収差補正を適切に行うことを可能とする撮像装置、ぶれ補正方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体を提供する。
【解決手段】被写体像を光電変換する撮像部9を駆動して駆動後の位置情報を生成する被ぶれ補正機構7を有する撮像装置1において、光電変換された被写体像を1ライン毎に取得し、取得した被写体像のラインに対応する1ラインまたは複数ラインの位置情報を抽出する。そして、1ラインまたは複数ラインに対応する位置情報に基づいて、被写体像に対して歪曲収差補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体像を光電変換する撮像部を駆動するぶれ補正を行う技術に関し、特に、ぶれ補正時にレンズ等の光学要素部において生じる歪曲収差を補正する撮像装置、ぶれ補正方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、ビデオカメラ等の撮像装置による動画像の撮影において、手ぶれによるぶれを補正する機能が求められるようになってきている。特に、光学的に手ぶれを補正する撮像装置においては、手ぶれ補正を適切に行うための技術の一つとして、歪曲収差補正に関する技術についても知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1においては、透過光の進行方向を任意に変えることができる可変頂角プリズムを有する防振光学系において、可変頂角プリズムがぶれ補正のために頂角を変化させた際に発生する偏心歪曲収差を補正する。
【0004】
具体的には、あるフレームを撮影したときの撮影レンズのズーム位置と、可変頂角プリズムの回動角とをパラメータとして用いることにより、歪曲収差補正量が決定できる点に着目している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−90398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術によれば、1フレームの全てのラインに対して同じ歪曲収差補正量を適用することを前提としている。このため、特許文献1の技術を適用できるのは、固体撮像素子が、1フレームの全てのラインの画素を一度に読み出す構成に限定されてしまうこととなる。
【0007】
すなわち、1フレーム期間内で歪曲収差補正量が変化する場合は考慮されていないため、例えば1ライン毎に画素読み出しを行う固体撮像素子を備える構成をとる場合には、適切に歪曲収差補正量を決定することができない。
本発明は、1ライン毎に画素を読み出す固体撮像素子を備える場合に、ぶれ補正時の歪曲収差補正を適切に行うことを可能とする撮像装置、ぶれ補正方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明の態様のひとつである撮像装置は、被写体像を光電変換する撮像部を駆動して当該駆動後の位置情報を生成する被ぶれ補正機構を有する撮像装置において、前記光電変換された被写体像を1ライン毎に取得し、当該取得した被写体像の当該ラインに対応する1ラインまたは複数ラインの前記位置情報を抽出する処理と、前記1ラインまたは複数ラインに対応する位置情報に基づいて、前記被写体像に対して歪曲収差補正する処理と、を行う補正画像生成部を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の態様のひとつであるぶれ補正方法は、被写体像を光電変換する撮像部を駆動して当該駆動後の位置情報を生成する被ぶれ補正機構を有する撮像装置によるぶれ補正方法であって、前記光電変換された被写体像を1ライン毎に取得する段階と、前記取得した前記被写体像の当該ラインに対応する1ラインまたは複数ラインの前記位置情報を抽出する段階と、前記1ラインまたは複数ラインに対応する位置情報に基づいて、歪曲収差補正値を算出する段階と、前記歪曲収差補正値に基づいて、撮像レンズの歪曲収差を補正する段階と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の態様のひとつである制御プログラムは、被写体像を光電変換する撮像部を駆動して当該駆動後の位置情報を生成する被ぶれ補正機構を有する撮像装置によるぶれ補正方法を演算処理装置に行わせるための制御プログラムであって、前記光電変換された被写体像を1ライン毎に取得する処理と、前記取得した前記被写体像の当該ラインに対応する1ラインまたは複数ラインの前記位置情報を抽出する処理と、前記1ラインまたは複数ラインに対応する位置情報に基づいて、歪曲収差補正値を算出する処理と、前記歪曲収差補正値に基づいて、撮像レンズの歪曲収差を補正する処理と、を前記演算処理装置に行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1ライン毎に画素を読み出す固体撮像素子を備える場合に、ぶれ補正時の歪曲収差補正を適切に行うことを可能とする撮像装置、ぶれ補正方法、制御プログラム、及び制御プログラムを記録する記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る撮像装置の構成図である。
【図2】撮像部及び撮像レンズの位置関係を説明する図である。
【図3】撮像レンズが樽型の歪曲収差を有する場合を示す図である。
【図4】樽型の歪曲収差を収差曲線で表した図である。
【図5】1フレームの全画素について同時に読み出す固体撮像素子が入力した、各フレーム画像におけるライン毎の露光期間を説明する図である。
【図6】1フレーム内の全画素について同時に読み出す固体撮像素子を備えた撮像装置における、歪曲収差補正方法を説明する図である。
【図7】第1の実施形態に係る撮像装置の撮像部が入力した、各フレーム画像におけるライン毎の露光期間を説明する図である。
【図8】第1の実施形態に係る撮像装置が取得するライン毎の位置情報の例を示す図である。
【図9】第1の実施形態に係る撮像装置による歪曲収差補正方法を説明する図である。
【図10】第1の実施形態に係る撮像装置の制御部による歪曲収差の補正処理を示したフローチャートである。
【図11】第2の実施形態に係る撮像装置が取得する位置情報の例を示す図である。
【図12】第2の実施形態に係る撮像装置の制御部による歪曲収差の補正処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る撮像装置の構成図である。図1に示す撮像装置1は、ぶれ検出部2、制御部3、記録媒体4、記憶部5、補正画像生成部6、及び被ぶれ補正機構7を含む。図1においては、本実施形態に係る歪曲収差補正処理に係わる構成を中心に記載している。
【0014】
ぶれ検出部2は、例えばジャイロスコープ等の角加速度センサを用い、撮像装置1の角加速度等の振れを検出し、制御部3に対して、検出したぶれを示すぶれ情報を通知する。
被ぶれ補正機構7は、位置検出部8、撮像部9、撮像レンズ10、及び駆動部11を含み、撮像部9を移動させることによりぶれ補正を行う。
【0015】
被ぶれ補正機構7のうち、撮像レンズ10は、複数のレンズ等を含み、被写体像を結像させる。撮像部9は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を用い、撮像レンズ10により結像された被写体像を光電変換し、得られた信号についてA/D変換を行う。A/D変換により得られたデジタルデータは、図1においては不図示の信号処理部において処理が施され、得られた画像信号は、制御部3に受け渡される。
【0016】
駆動部11は、制御部3からのぶれ補正を行うためのぶれ補正信号にしたがって、撮像部9を駆動して、撮像部9を移動させることによりぶれ補正を行う。
位置検出部8は、例えばホール素子等を用い、駆動部11により駆動された撮像部9の位置情報(X、Y)を検出する。制御部3は、位置検出部8から検出された位置情報(X、Y)を取得する。
【0017】
本実施形態においては、位置検出部8は、フレーム内の各ラインについての位置情報(X、Y)を検出する。位置検出部8が検出する位置情報(X、Y)について、図2を参照して説明する。
【0018】
図2は、撮像部9及び撮像レンズ10の位置関係を説明する図である。ここでは、撮像装置1の光軸横行と一致する向きにz軸をとり、光軸と直交する平面上にx軸及びy軸をとる。
【0019】
本実施形態に係る撮像装置1においては、位置検出部8は、撮像部9の光軸と交差する位置座標を原点O´とした場合におけるx軸及びy軸方向の座標位置(X、Y)を各ラインについて検出する。
【0020】
補正画像生成部6は、ぶれ検出部2において検出したぶれ情報と、被ぶれ補正機構7の位置検出部8が検出した位置情報(X、Y)とに基づいて、被ぶれ補正機構7におけるぶれ補正によって生じる撮像部9の光軸からのずれを考慮して、撮像部9の撮像面に生じる歪曲収差に対する補正を制御部3に実行させる。具体的には、補正画像生成部6は、撮像部9により光電変換された被写体像を1ライン毎に取得し、取得した被写体像のラインに対応する1ラインまたは複数ラインの位置情報(X、Y)を抽出する処理と、1ラインまたは複数ラインに対応する位置情報(X、Y)に基づいて、被写体像に対して歪曲収差補正する処理とを制御部3に実行させる。
【0021】
制御部3は、ぶれ検出部2、被ぶれ補正機構7の各部、補正画像生成部6、及び記憶部5の制御を行う。具体的には、制御部3は、ぶれ検出部2からの情報を取得して、被ぶれ補正機構7の制御を行う。また、制御部3は、被ぶれ補正機構7の位置検出部8が検出した位置情報(X、Y)から撮像部9のずれ量を算出し、算出したずれ量に応じたぶれ補正信号を生成する。制御部3は、生成したぶれ補正信号を駆動部11に通知し、前述のとおり、駆動部11にぶれ補正を行わせる。
【0022】
補正画像生成部6は、例えば制御部3の演算処理装置により実行される、補正画像を生成するまでの一連の処理を行う電子回路、または制御部3の演算処理装置により実行される制御プログラムとする。
【0023】
記憶部5は、図1においては不図示の信号処理部から出力される輝度色差信号を記憶するとともに、記録媒体4に対して、画像等のデータの保存、及び制御プログラムを記憶する。補正画像生成部6が制御プログラムである場合は、当該制御プログラムを記憶部5に予め記憶させることとしてもよい。また、被ぶれ補正機構7においてぶれ補正を行う場合には、制御部3は、補正画像生成部6に基づいて、歪曲収差に対する補正がなされた画像を記憶部5に記憶する。
【0024】
記録媒体4は、たとえば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等であり、画像等のデータを保存する。
【0025】
図1の撮像装置1は、例えば、電源ボタンの押下によって電源が投入されることにより、所定のフレームレートでの動画の撮像を開始し、電源ボタンの再度の押下等によって電源が切られることにより、動画の撮像を終了する。動画の撮像中は、撮像部9から順次フレーム(あるいはフィールド)画像が出力される。制御部3は、記録媒体4から読み出した制御プログラムを実行することにより、あるいは、制御部3の演算処理装置により実行される電子回路により、各フレーム(あるいはフィールド)画像に対し、補正画像生成部6による補正画像を生成する。以下においては、補正画像生成部6は、制御部3の演算処理装置により実行される制御プログラムで構成した場合とする。
【0026】
なお、このような補正画像の生成処理を実行するタイミングは、動画の記録中には限らない。撮像装置1において、ぶれ補正処理が「オン(ぶれ補正処理を実行)」と設定されている下で動画の撮像を行う場合には、制御部3は、記録媒体4から読み出した制御プログラムを実行することにより、あるいは、制御部3の演算処理装置により実行される電子回路により、各フレーム画像等に対し、補正画像生成部6による補正画像の生成を行う。
【0027】
次に、撮像部9を駆動させてぶれ補正を行う場合における歪曲収差の補正について、図3及び図4を参照して説明する。
図3は、撮像レンズ10が樽型の歪曲収差31を有する場合を示す図であり、図4は、図3の樽型の歪曲収差31を収差曲線で表した図である。図4においては、図3に示す樽型の歪曲収差31を収差曲線で表している。図4の縦軸は、撮像レンズ10の歪曲収差Dであり、横軸は、歪曲収差がないとした場合における光軸中心からの距離Lを表す。
【0028】
ここで、縦軸の歪曲収差については、以下の(1)式により表される。
D=(L−L)/L・・・(1)
(1)式中のLについては、歪曲収差の影響を受けた場合における光軸中心からの距離を表す。(1)式を変形して歪曲収差がない場合の光軸からの距離Lについて解くと、以下の(2)式を得る。
=L/(1+D)・・・(2)
したがって、(2)式により、Lに対応するLを求めることにより、図3に示す歪曲収差31を持つ被写体像に対して歪曲収差の補正をすることができる。
【0029】
なお、(2)式から歪曲収差の補正量を求めることができるのは、撮像レンズ10の光軸と交差する原点Oと、前述の撮像部9の原点O´とが一致している場合である。実際に画素毎に対応するLを求めるためには、前述の撮像部9の位置情報(X、Y)を考慮しなければならない。
【0030】
そこで、撮像部9の位置情報(X、Y)に基づき歪曲収差の補正量を求める方法について、具体的に説明する。
歪曲収差の補正量を求める方法について説明するに当たり、まず、CCD(Charge Coupled Device)等のように、1フレームの全画素について同時に読み出す固体撮像素子を備える撮像装置において、歪曲収差の補正を行う方法について、図5及び図6を参照して説明する。
【0031】
図5は、固体撮像素子が入力した各フレーム画像におけるライン毎の露光期間を説明する図である。ここで、1フレームのライン数はNとする。
CCD等の固体撮像素子は、垂直同期信号及び水平同期信号にしたがって、1フレームの全画素を同時に読み出す。図5に示す例では、1つのフレーム画像の全てのライン(ライン1〜ラインN)の画素を同時に読み出す。読み出した順にフレーム画像(1)、フレーム画像(2)、…とする。
【0032】
図6は、1フレーム内の全画素について同時に読み出す固体撮像素子を備えた撮像装置における、歪曲収差補正方法を説明する図である。ここでは、簡単のため、撮像部9がy軸方向にのみ移動する場合を例に説明する。
【0033】
図6(a)においては、固体撮像素子の実際の位置32(図6(a)においては実線で表す)と、固体撮像素子と撮像レンズとの間で前述の原点O及び原点O´を結ぶ直線と光軸との間にずれがない場合の固体撮像装置の位置33(図6(a)においては二点鎖線で表す)とを示す。ぶれ補正を行う前の段階であるフェーズ1においては、位置32は、位置33に対してy軸方向にずれている。そこで、実際の位置32及び位置33のずれ量よりぶれ補正を行って、固体撮像素子をy軸方向へ移動させると、歪曲収差31が現れる。なお、固体撮像素子が取得したフレーム画像は、固体撮像素子の実際の位置32内の灰色で示す領域がこれに相当し、図6においては、以降のフェーズにおいても同様の方法で表すこととする。
【0034】
固体撮像素子の実際の位置32を示す位置情報(X、Y)が、(2)式におけるLに相当する。そこで、フェーズ2においては、Lに相当する位置情報(X、Y)を(2)式に代入することにより、(2)式のL、すなわち歪曲収差の補正値を算出する。図6(b)の補正値61が、算出した歪曲収差の補正値に相当する。
【0035】
フェーズ3においては、フェーズ2において求めた補正値61によりフレーム画像を補正する。図6(c)には、歪曲補正処理を施した画像を示す。
このように、CCD等のように1フレーム内の全画素について同時に読み出しを行う固体撮像素子を備える撮像装置においては、図6に示す方法によって、ぶれ補正により生じる歪曲収差を補正することができる。しかし、本実施形態に係る撮像装置1のように、撮像部9が、例えばCMOS等の、1ライン毎に画素を読み出す固体撮像素子からなる場合には、1ライン毎に歪曲収差補正量が変化するため、同様の方法では、歪曲収差を適切に補正することができない。次に、本実施形態に係る撮像装置1による歪曲収差補正方法について、図7〜図9を参照して説明する。
【0036】
図7は、本実施形態に係る撮像装置1の撮像部9が入力した、各フレーム画像におけるライン毎の露光期間を説明する図である。
図7に示すように、本実施形態に係る撮像装置1の撮像部9では、ライン毎に露光期間がずれている。このため、図1の制御部3は、位置検出部8から1ラインまたは複数ラインに対応する位置情報(X、Y)を露光期間に応じて取得して、歪曲収差の補正値を算出する。
【0037】
図7に示す例では、説明の簡単のため、1フレームの画像を露光期間のタイミングに応じて、上から順に領域A1、領域A2及び領域A3の3つの領域に分割する。領域A1〜A3のライン数はいずれもNであり、図7においては、それぞれライン1〜Nとしている。
【0038】
以下においては、領域A1〜A3のそれぞれの領域内においてはラインの露光期間は同じであるとして、本実施形態に係るぶれ補正処理において歪曲収差を補正する方法について説明する。
【0039】
図8は、本実施形態に係る撮像装置1が取得するライン毎の位置情報の例を示す図である。図8の縦軸は、時間を表し、横軸は、水平方向(x軸方向)の位置を表す。
図8に示す「水平方向位置情報」の中心とは、撮像部9の原点O´及び撮像レンズ10の原点Oを結ぶ直線と、光軸との間にずれがない場合における撮像部9のx軸方向に関する中心である。領域Aiのラインnの中心については、「Oi(An)(但し、iは1〜Nの整数、nは1〜3の整数)」と表す。また、領域Aiのラインnについての位置情報については、「Xi(An)」と表す。図8においては、位置情報(X、Y)のうち、x軸方向に関する位置情報のみを示している。
【0040】
図8に示すように、本実施形態に係る撮像装置1の位置検出部8は、各ラインの位置情報Xi(An)を、フレーム内の上のライン(ライン1)から順に取得していく。
図9は、本実施形態に係る撮像装置1による歪曲収差補正方法を説明する図である。図9(a)〜図9(j)においては、撮像部9が取得したフレーム画像のうち、各フェーズで処理対象となる領域を網掛けで示す。また、説明の簡単のため、ここでは、図6と同様に、撮像部9がy軸方向にのみ移動する場合、すなわち、位置32が位置33に対してy軸方向にずれている場合を例示する。
【0041】
制御部3は、露光期間を同じくする領域A1〜A3毎に位置検出部8から位置情報(X、Y)を取得して歪曲収差の補正値61を算出する。図9(a)〜図9(c)は、領域A1についてのフェーズ1〜フェーズ3の状態をそれぞれ示しており、各フェーズにおいて実行される処理は、図6と同様である。但し、フェーズ3においては、領域A1についての歪曲補正処理を施した画像I(A1)を得る。同様に、図9(d)〜図9(f)は、領域A2についてのフェーズ1〜フェーズ3の状態をそれぞれ表し、図9(g)〜図9(i)は、領域A3についてのフェーズ1〜フェーズ3の状態をそれぞれ表している。図9(d)においては、位置32と位置33が重なる場合、すなわち、撮像部9の位置にずれがない場合を示す。
【0042】
フェーズ3の処理まで実行すると、領域A1〜A3のそれぞれについて部分画像I(A1)〜I(A3)が生成される。制御部3は、領域A1〜A3のそれぞれについて得られた歪曲収差補正を施した画像I(A1)〜I(A3)を合成し、図9(j)に示す画像Iを得る。
【0043】
図7〜図9においては、フレームを3つの領域A1〜A3に分割する場合を例に説明しているが、これに限定されるものではない。
図10は、本実施形態に係る撮像装置1の制御部3による歪曲収差の補正処理を示したフローチャートである。前述したように、本フローチャートでは、撮像装置1の制御部3が記録媒体4から補正画像生成部6における制御プログラムを読み出して実行する場合とする。
【0044】
なお、図10に示す歪曲収差に対する補正処理を実行する前提として、ぶれ補正処理が図10に示す歪曲収差に対する補正処理と並列に実行されていることとする。
まず、制御部3は、ステップS1Aにおいて、位置検出部8から、1ラインまたは複数ラインに対応する位置情報(X、Y)を取得する。ステップS1Aの処理は、図9においては、フェーズ1の位置32を取得する処理に相当する。
【0045】
次に、制御部3は、ステップS2において、ステップS1で取得した位置情報(X、Y)を用いて、1ラインまたは複数ラインに対応する歪曲収差補正値を算出する。ステップS2の処理は、図9においては、フェーズ2の補正値61を算出する処理に相当する。
【0046】
最後に、制御部3は、ステップS3において、ステップS2で算出した歪曲収差補正値を用いて、撮像された被写体像の1ラインまたは複数ラインに対して歪曲収差補正を行う。ステップS3の処理は、図9においては、フェーズ3の各領域に対して歪曲収差補正を行う処理に相当する。
【0047】
図10に示す一連の処理により、各領域についての歪曲収差補正を行った部分画像を得る。これらの部分画像を合成して得られた合成画像を、歪曲収差補正を行った被写体画像として記憶部5に記憶し、処理を終了する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る撮像装置1によれば、撮像部9を駆動して位置情報(X、Y)を生成してぶれ補正を行う際に、1ラインまたは複数ラインに対応する位置情報(X、Y)を位置検出部8から取得する。そして、取得した1ラインまたは複数ラインの位置情報(X、Y)より、撮像部9のずれ量を算出して歪曲収差の補正量を求めて歪曲収差補正を行う。これにより、フレーム内の画素をライン毎に読み出す構成の撮像部9を備える撮像装置1であっても、ぶれ補正時の歪曲収差補正を適切に行うことが可能となる。
<第2の実施形態>
【0049】
前述の実施形態においては、制御部3は、位置検出部8から1ラインまたは複数ラインに対応する位置情報(X、Y)を取得して、歪曲収差補正を行っている。これに対して、本実施形態に係る撮像装置1においては、ぶれ補正処理において取得する位置情報(X、Y)を利用して歪曲収差補正を行う点で異なる。
【0050】
以下に、第1の実施形態と異なる点を中心に、本実施形態に係る撮像装置1によるぶれ補正時の歪曲収差補正方法について説明する。
なお、本実施形態に係る撮像装置1の構成は、図1に示す第1の実施形態に係る撮像装置と同様である。但し、本実施形態においては、位置検出部8は、所定のタイミングで実行されるぶれ補正処理において、複数のラインの位置情報(X、Y)を取得する。
【0051】
図11は、本実施形態に係る撮像装置1が取得する位置情報の例を示す図である。図11の縦軸は、時間を表し、横軸は、水平方向(x軸方向)の位置を表す。
図8と同様に、図11の「水平方向位置情報」の中心とは、撮像部9の原点O´及び撮像レンズ10の原点Oを結ぶ直線と、光軸との間にずれがない場合における撮像部9のx軸方向に関する中心である。
【0052】
前述のとおり、本実施形態に係る撮像装置1においては、ぶれ補正処理において位置検出部8が検出した位置情報を取得して、歪曲収差補正に利用する。図8においては、1フレーム内の複数のラインのうち、3つのラインa、b、cに対応する位置情報を取得した場合を例示する。ここでは、x軸方向の位置情報を例に説明している。
【0053】
制御部3は、取得した位置情報Xa、Xb、Xcと、ラインa、b、cとの対応付けを行う。そして、制御部3は、位置情報を取得しなかったライン、すなわち、ラインa、b、c以外のラインと対応する位置情報を、1次補間により算出する。具体的には、位置情報Xa−Xbを結ぶ直線の式を求め、求めた式より、ラインa−b間のラインについての位置情報Xを算出する。ラインb−c間についても同様の方法により位置情報Xを算出する。
【0054】
図11においては、水平(x軸)方向の位置情報Xの補間のみを示しているが、垂直(y軸)方向の位置情報Yの補間についても同様の方法により行うことができる。
1次補間により1フレーム内の各ラインの位置情報を算出すると、ラインごとの露光期間のタイミングに応じて、領域ごとに歪曲収差の補正量を求めて歪曲収差を行い、領域ごとに部分画像を生成する。そして、部分画像を合成することにより、歪曲収差補正を行った被写体画像を得る。なお、本実施形態に係る撮像装置1の撮像部9が入力したフレーム画像におけるライン毎の露光期間については、第1の実施形態と同様であり、図7に示すとおりとする。
【0055】
図12は、本実施形態に係る撮像装置1の制御部3による歪曲収差の補正処理を示したフローチャートである。本フローチャートでは、撮像装置1の制御部3が記録媒体4から補正画像生成部6における制御プログラムを読み出して実行する場合とする。
【0056】
第1の実施形態と同様に、図12に示す歪曲収差に対する補正処理を実行する前提として、ぶれ補正処理が図12に示す歪曲収差に対する補正処理と並列に実行されていることとする。
【0057】
図12においては、図10に示す処理と同様の処理を実行するステップについては、同一のステップ番号を付している。
まず、制御部3は、ステップS1B−1において、ぶれ補正処理実行時に位置検出部8が取得する複数の位置情報(X、Y)を取得する。
【0058】
次に、制御部3は、ステップS1B−2において、位置検出部8から取得した位置情報と対応するラインを選出する。図11に示す例では、ラインa、b、cを選出する。
そして、制御部3は、ステップS1B−3において、選出したライン間に位置するラインについての位置情報を、1次補間により求め、ステップS2へと処理を移行させる。
【0059】
ステップS2以降の処理については、図10に示す処理と同様である。
以上説明したように、本実施形態に係る撮像装置1によれば、ぶれ補正処理を行うときに位置検出部8が検出する位置情報を取得して、取得しなかったラインの位置情報については、1次補間により、歪曲収差補正に必要な位置情報(X、Y)を算出する。歪曲収差補正と並列して実行するぶれ補正処理において用いる位置情報を利用することで、歪曲収差補正処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【0060】
この他にも、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の改良及び変更が可能である。例えば、前述の各実施形態に示された全体構成からいくつかの構成要素を削除してもよく、更には各実施形態の異なる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 撮像装置
2 ぶれ検出部
3 制御部
4 記録媒体
5 記憶部
6 補正画像生成部
7 被ぶれ補正機構
8 位置検出部
9 撮像部
10 撮像レンズ
11 駆動部
31 歪曲収差
32 固体撮像素子の実際の位置
33 撮像レンズと原点位置が一致する場合の固体撮像素子の位置
61 歪曲収差補正値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を光電変換する撮像部を駆動して当該駆動後の位置情報を生成する被ぶれ補正機構を有する撮像装置において、
前記光電変換された被写体像を1ライン毎に取得し、当該取得した被写体像の当該ラインに対応する1ラインまたは複数ラインの前記位置情報を抽出する処理と、前記1ラインまたは複数ラインに対応する位置情報に基づいて、前記被写体像に対して歪曲収差補正する処理と、を行う補正画像生成部
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記位置情報を抽出する処理は、前記被写体像の水平走査方向または垂直走査方向の1ラインである第1のラインと、当該第1のラインから複数ライン離間した1ラインである第2のラインとの間のラインについての前記水平走査方向または前記垂直走査方向の当該位置情報を、1次補間により抽出する処理を含む
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記位置情報を抽出する処理は、ぶれ補正処理において取得する複数の位置情報を取得する処理と、当該取得した複数の位置情報とそれぞれ対応する複数のラインを選出する処理と、当該選出した複数のライン間のラインについての位置情報を、1次補間で求める処理とを含む
ことを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記被写体像に前記歪曲収差補正を行った画像を記憶させる記憶部と
を更に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
被写体像を光電変換する撮像部を駆動して当該駆動後の位置情報を生成する被ぶれ補正機構を有する撮像装置によるぶれ補正方法であって、
前記光電変換された被写体像を1ライン毎に取得する段階と、
前記取得した前記被写体像の当該ラインに対応する1ラインまたは複数ラインの前記位置情報を抽出する段階と、
前記1ラインまたは複数ラインに対応する位置情報に基づいて、歪曲収差補正値を算出する段階と、
前記歪曲収差補正値に基づいて、撮像レンズの歪曲収差を補正する段階と、
を有することを特徴とするぶれ補正方法。
【請求項6】
前記位置情報を抽出する段階は、前記被写体像の水平走査方向または垂直走査方向の1ラインである第1のラインと、当該第1のラインから複数ライン離間した1ラインである第2のラインとの間のラインについての前記水平走査方向または前記垂直走査方向の当該位置情報を、1次補間により抽出する段階を含む
ことを特徴とする請求項5記載のぶれ補正方法。
【請求項7】
前記位置情報を抽出する段階は、ぶれ補正処理において取得する複数の位置情報を取得する段階と、当該取得した複数の位置情報とそれぞれ対応する複数のラインを選出する段階と、当該選出した複数のライン間のラインについての位置情報を、1次補間で求める段階とを含む
ことを特徴とする請求項6記載のぶれ補正方法。
【請求項8】
前記被写体像に前記歪曲収差補正を行った画像を記憶させる段階と
を更に備えることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載のぶれ補正方法。
【請求項9】
被写体像を光電変換する撮像部を駆動して当該駆動後の位置情報を生成する被ぶれ補正機構を有する撮像装置によるぶれ補正方法を演算処理装置に行わせるための制御プログラムであって、
前記光電変換された被写体像を1ライン毎に取得する処理と、
前記取得した前記被写体像の当該ラインに対応する1ラインまたは複数ラインの前記位置情報を抽出する処理と、
前記1ラインまたは複数ラインに対応する位置情報に基づいて、歪曲収差補正値を算出する処理と、
前記歪曲収差補正値に基づいて、撮像レンズの歪曲収差を補正する処理と、
を前記演算処理装置に行わせることを特徴とする制御プログラム。
【請求項10】
前記位置情報を抽出する処理は、前記被写体像の水平走査方向または垂直走査方向の1ラインである第1のラインと、当該第1のラインから複数ライン離間した1ラインである第2のラインとの間のラインについての前記水平走査方向または前記垂直走査方向の当該位置情報を、1次補間により抽出する処理を含む
ことを特徴とする請求項9記載の制御プログラム。
【請求項11】
前記位置情報を抽出する処理は、ぶれ補正処理において取得する複数の位置情報を取得する処理と、当該取得した複数の位置情報とそれぞれ対応する複数のラインを選出する処理と、当該選出した複数のライン間のラインについての位置情報を、1次補間で求める処理とを含む
ことを特徴とする請求項10記載の制御プログラム。
【請求項12】
前記被写体像に前記歪曲収差補正を行った画像を記憶させる処理と
を更に備えることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の制御プログラム。
【請求項13】
請求項9の制御プログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−231262(P2012−231262A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97566(P2011−97566)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】