説明

撮像装置、カメラ本体、電子ズーム倍率の補正方法及びプログラム

【課題】 滑らかなズーム処理を実現すること。
【解決手段】 ズームレンズ4及び焦点距離検出部6を有するレンズユニット2とカメラ本体3とを備える。カメラ本体3は、画像データを生成する撮像素子8と、画像データを記憶する画像記憶部18から読み出す画像データ読み出し部26と、読み出された画像データのフレームごとのズームレンズ4の焦点距離を検出し、焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において焦点距離が変化していない第2の時間とを算出し、第1の時間と第2の時間が経過するまで焦点距離が一定の割合で変化するように画像データのフレームごとの焦点距離の補正量を算出する補正量算出部25と、撮影前に予め設定された電子ズーム倍率を前記焦点距離の補正量に基づいて画像データのフレームごとに補正する画像データ処理部10とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズの交換が可能で動画撮影可能な撮像装置、カメラ本体、電子ズーム倍率の補正方法及びプログラムに関する技術分野である。
【背景技術】
【0002】
ズームレンズを含む交換レンズ等のレンズユニットと該レンズユニットが着脱自在に取付けられるカメラ本体とを備え、動画撮影可能な撮像装置、例えば、デジタル一眼レフカメラが知れている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レンズユニットは、ズームレンズを識別するための識別データが格納されるレンズユニット用ROMと、ズームレンズのズーム位置を示すズーム位置データ(焦点距離データ)を検出してカメラ本体に送信するズーム位置検出回路とを備えている。
【0004】
カメラ本体は、ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換し所定のフレームレートで画像信号を生成するCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子と、撮像素子を所定の動作タイミングで露光させるための指示信号を送出するシステム制御部とを備えている。
【0005】
上記のような撮像装置において、シャッターボタンが押下されると撮影が開始され、システム制御部からの指示信号に基づいてシャッターが開放され、ズームレンズによって形成された光学像が撮像素子によって電気的信号に変換されて画像信号(画像データ)が生成される。撮像素子によって生成された画像信号は、A/D変換部によりアナログからデジタルに変換される。デジタル化された画像信号は、デジタル信号処理部によってホワイトバランス調整、ガンマ補正などの様々な信号処理が施されて画像記憶部に記憶される。再生時には、上記した補正処理後の画像信号に基づく被写体像が液晶ディスプレイに表示される。
【0006】
上記のようなレンズユニットの交換が可能で動画撮影できるデジタル一眼レフカメラ等の撮像装置では、一般に、ズームレンズのズーム操作が手動で行われる。
【0007】
【特許文献1】特開2006−191282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のような撮像装置における動画撮影時に、撮影者のズーム操作によっては焦点距離が一定の割合で変化しない場合がある。例えば、ズーム操作時に回転操作されるズームリングが一定速度で回転されなかったり、ズーム操作中にズームリングの回転を瞬間的に中断したとき等には焦点距離が一定の割合で変化しないこととなる。
【0009】
このように焦点距離が一定の割合で変化しない場合には画像の再生時に表示される画像が不自然となったり、画像ボケが生じてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、上記した問題点を克服し、滑らかなズーム処理を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る撮像装置は、ズームレンズと前記ズームレンズを識別する識別データ記憶部と前記ズームレンズの焦点距離を示す焦点距離データを検出する焦点距離検出部とを有するレンズユニットと、前記レンズユニットが着脱自在に取り付けられるカメラ本体とを備え、前記カメラ本体が、前記ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換し所定のフレームレートで画像データを生成する撮像素子と、生成された前記画像データを記憶する画像記憶部から前記画像データを読み出す画像データ読み出し部と、読み出された前記画像データのフレームごとの前記ズームレンズの焦点距離を検出し、前記焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において前記焦点距離が変化していない第2の時間とを算出し、前記第1の時間と前記第2の時間が経過するまで前記焦点距離が一定の割合で変化するように前記画像データのフレームごとの前記焦点距離の補正量を算出する補正量算出部と、撮影前に予め設定された電子ズーム倍率を前記補正量算出部によって算出された前記焦点距離の補正量に基づいて前記画像データのフレームごとに補正する画像データ処理部とを有するようにしたものである。
【0012】
従って、焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において焦点距離が変化していない第2の時間が経過するまで焦点距離が一定の割合で変化するように算出された補正量に基づいて画像データのフレームごとに電子ズーム倍率が補正される。
【0013】
第1の態様に係る撮像装置においては、前記所定の閾値が前記ズームレンズの種類ごとに異なるように予め設定されることが望ましい。
【0014】
前記所定の閾値が前記ズームレンズの種類ごとに異なるように予め設定されることにより、ズームレンズの種類に応じて異なる電子ズーム倍率の補正が行われる。
【0015】
第1の態様に係る撮像装置においては、前記所定の閾値が前記ズームレンズの光学ズーム倍率が高いほど長くなるように予め設定されることが望ましい。
【0016】
前記所定の閾値が前記ズームレンズの光学ズーム倍率が高いほど長くなるように予め設定されることにより、光学ズーム倍率が高いほど長くなるように電子ズーム倍率の補正が行われる。
【0017】
第1の態様に係る撮像装置においては、前記画像記憶部から画像データが読み出される前に前記ズームレンズの種類に応じた電子ズーム倍率が予め設定されることが望ましい。
【0018】
前記画像記憶部から画像データが読み出される前に前記ズームレンズの種類に応じた電子ズーム倍率が予め設定されることにより、ズームレンズの種類ごとに設定された電子ズーム倍率に前記焦点距離の補正量を反映させて電子ズーム倍率の補正が行われる。
【0019】
本発明の第2の態様に係るカメラ本体は、ズームレンズを含むレンズユニットが着脱自在に取り付けられ、前記ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換し所定のフレームレートで画像データを生成する撮像素子と、生成された前記画像データを記憶する画像記憶部から前記画像データを読み出す画像データ読み出し部と、読み出された前記画像データのフレームごとの前記ズームレンズの焦点距離を検出し、前記焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において前記焦点距離が変化していない第2の時間とを算出し、前記第1の時間と前記第2の時間が経過するまで前記焦点距離が一定の割合で変化するように前記画像データのフレームごとの前記焦点距離の補正量を算出する補正量算出部と、撮影前に予め設定された電子ズーム倍率を前記補正量算出部によって算出された前記焦点距離の補正量に基づいて前記画像データのフレームごとに補正する画像データ処理部とを有するようにしたものである。
【0020】
従って、焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において焦点距離が変化していない第2の時間が経過するまで焦点距離が一定の割合で変化するように算出された補正量に基づいて画像データのフレームごとに電子ズーム倍率が補正される。
【0021】
本発明の第3の態様に係る電子ズーム倍率の補正方法は、撮影前に電子ズーム倍率を設定するステップと、ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換し所定のフレームレートで生成された画像データを画像記憶部に記憶するステップと、前記画像記憶部から前記画像データを読み出すステップと、読み出された前記画像データのフレームごとに前記ズームレンズの焦点距離を検出するステップと、前記焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において前記焦点距離が変化していない第2の時間を算出するステップと、前記第1の時間と前記第2の時間が経過するまで前記検出された焦点距離が一定の割合で変化するように前記画像データのフレームごとの前記焦点距離の補正量を算出するステップと、撮影前に設定された前記電子ズーム倍率を前記焦点距離の補正量に基づいて前記画像データのフレームごとに補正するステップとを有するようにしたものである。
【0022】
従って、焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において焦点距離が変化していない第2の時間が経過するまで焦点距離が一定の割合で変化するように算出された補正量に基づいて画像データのフレームごとに電子ズーム倍率が補正される。
【0023】
本発明の第4の態様に係るプログラムは、コンピュータに、撮影前に電子ズーム倍率を設定するステップと、ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換し所定のフレームレートで生成された画像データを画像記憶部に記憶するステップと、前記画像記憶部から前記画像データを読み出すステップと、読み出された前記画像データのフレームごとに前記ズームレンズの焦点距離を検出するステップと、前記焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において焦点距離が変化していない第2の時間を算出するステップと、前記第1の時間と前記第2の時間が経過するまで前記検出された焦点距離が一定の割合で変化するように前記画像データのフレームごとの焦点距離の補正量を算出するステップと、撮影前に設定された前記電子ズーム倍率を前記焦点距離の補正量に基づいて前記画像データのフレームごとに補正するステップとを有する処理を実行させるようにしたものである。
【0024】
従って、コンピュータに、焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において焦点距離が変化していない第2の時間が経過するまで焦点距離が一定の割合で変化するように算出された補正量に基づいて画像データのフレームごとに電子ズーム倍率を補正する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明撮像装置、カメラ本体、電子ズーム倍率の補正方法及びプログラムにあっては、焦点距離が一定の割合で変化しない時間を焦点距離が一定の割合で変化するように電子ズーム倍率の補正を行っているので、滑らかなズーム処理を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明の実施の形態に係る撮像装置について説明する。
【0027】
撮像装置1は、図1に示すように、レンズユニット2とレンズユニット2が着脱自在に取付けられるカメラ本体3とを備えて構成されている。
【0028】
レンズユニット2は、例えば、カメラ本体3に対して交換可能な交換レンズであり複数のレンズ又はレンズ群によって構成されたズームレンズ4と、ズームレンズ4を識別するための識別データが格納される識別データ記憶部としてのレンズ用ROM5と、ズームレンズ4のズーム位置を示すズーム位置データ(以下、「焦点距離データ」と呼ぶ。)を検出し、焦点距離データをカメラ本体3に送出する焦点距離検出部6と、ズームレンズ4の絞り(図示せず)の絞り位置を検出し、絞り位置を示す絞り位置データをカメラ本体3に送出する絞り位置検出回路(図示せず)を備えて構成されている。
【0029】
カメラ本体3には、レンズユニット2を含む複数の異なる種類のレンズユニットが取付け可能である。カメラ本体3は、シャッター7と、撮像素子8と、AD変換器9と、画像データ処理部10と、タイミングジェネレータ11と、シャッター駆動回路12と、システム制御部13と、シャッターボタン14と、カメラ用ROM15と、画像メモリ16と、液晶モニタ(LCD:Liquid Crystal Display)17を備えて構成されている。
【0030】
以下に、撮影開始から撮影された画像データが液晶モニタ17に表示されるまでの基本的な動作について簡単に説明する。
【0031】
カメラ本体3に設けられたシャッターボタン14が押下されると、システム制御部13からの指示信号に基づいてシャッター駆動回路12が動作され、シャッター7が開放されて撮影が開始される。
【0032】
シャッター7の開放によりさらにカメラ本体3を介して光学像が取り込まれ、同時に、タイミングジェネレータ11によって動作タイミングが制御された撮像素子8が露光され、取り込まれた光学像が撮像素子8によって電気的信号に変換されて被写体像を示す画像信号が生成される。
【0033】
撮像素子8によって生成された画像信号は、A/D変換器9によりアナログからデジタルに変換される。デジタル化された画像信号は、画像データ処理部10を経て画像メモリ16に一時的に記憶される。
【0034】
次に、システム制御部13は、レンズ用ROM5からズームレンズ4の種類を識別するレンズ識別信号を受けて該レンズ識別信号を画像データ処理部10に送出する。画像データ処理部10は、レンズ識別信号を受けてズームレンズ4についてのレンズデータ及び撮像素子データをカメラ用ROM15から読み出すとともに画像メモリ16から画像信号を読み出す。尚、レンズデータは、例えば、ズームレンズ4のシェーディング特性を示したものであり、撮像素子データは、例えば、撮像素子8のシェーディング特性を示したものである。
【0035】
読み出された画像信号は画像データ処理部10によってホワイトバランス調整、ガンマ補正などの様々な補正処理が施されて画像記憶部18に記憶される。画像記憶部18は、例えば、カード型の記憶媒体であり、カメラ本体3に対して着脱可能とされている。尚、画像記憶部18は、例えば、ハードディスク等の記憶装置であってもよく、この場合にはカメラ本体3に内蔵されている。
【0036】
画像データの再生時には、補正処理後の画像信号に基づく被写体像が液晶モニタ17に表示される。
【0037】
次に、本発明に係る撮像装置1の動作について、撮影開始から撮影終了までの撮影処理と、画像記憶部18から画像データを読み出した後の補正処理とに分けて具体的に説明する。
【0038】
まず、撮影開始から撮影終了までの撮影処理について図2を参照して説明する。
【0039】
撮像装置1の電源がオンすると(ステップS101)、オンした時点においてカメラ本体3に取り付けられたレンズユニット2のズームレンズ4の種類がレンズ用ROM5によって識別される(ステップS102)。
【0040】
次に、システム制御部13は、カメラ本体3に取り付けられたレンズユニット2のズームレンズ4に対応する電子ズーム倍率を設定する(ステップS103)。電子ズーム倍率とは、撮像素子8の一部の画像を用いてその画像を拡大する電子ズーム処理におけるその拡大率をいう。
【0041】
尚、カメラ用ROM15にはズームレンズ4の種類ごとに動画撮影時の電子ズーム倍率データが予め記憶され、撮影前の電子ズーム倍率は前記電子ズーム倍率データを参照して自動的に設定される。電子ズーム倍率の具体的な設定方法については後述する。
【0042】
次に、撮影モード(動画モードと静止画モード)として動画モードが選択されると(ステップS104でYes)、液晶モニタ17に上記のように設定された電子ズーム倍率が反映された電子ズーム領域が表示され(ステップS105)、シャッターボタン14が押下されることにより動画撮影が開始される(ステップS106、107)。動画撮影が開始されると、焦点距離検出部6が画像データのフレーム(コマ)ごとに焦点距離データを取得し、その焦点距離データを関連付けた画像データが画像メモリ16に一時的に記憶される。画像メモリ16に一時的に記憶された画像データは画像データ処理部10によって画像メモリ16から読み出され、読み出された画像データは画像データ処理部10を介して画像記憶部18に記憶される。
【0043】
尚、以下の説明では「動画撮影」を単に「撮影」と呼ぶこととする。
【0044】
画像記憶部18に対する焦点距離データの記憶方法としては、例えば、画像情報に撮影情報を埋め込んで記憶するexif(exchangeable image file format)等の記憶フォーマットを用いる方法が知られている。
【0045】
撮影は、シャッターボタン14が再び押下される(ステップS108)ことにより終了する。
【0046】
一方、撮影モードとして静止画モードが選択され(ステップS104でNo)、シャッターボタン14が押下されると静止画撮影が開始され(ステップS109、110)、その後撮影が終了する。
【0047】
次に、画像記憶部18から画像データを読み出してから電子ズーム倍率を補正するまでの処理について図3及び図4を参照して説明する。尚、システム制御部13は、図3に示すように、後述する画像データのフレームごとの焦点距離の補正量を算出する補正量算出部25と撮影処理(図2のステップS101〜S108)で撮影された画像データを画像記憶部18から読み出す画像データ読み出し部26を含んでいる。
【0048】
画像データ読み出し部26は、撮影処理で撮影された画像データを画像記憶部18から読み出す(ステップS201)。
【0049】
次に、補正量算出部25は、画像記憶部18から読み出された画像データのフレームごとのズームレンズ4の焦点距離を検出し、前記焦点距離が変化している時間(以下、「第1の時間」と呼ぶ。)を算出し(ステップS202)、焦点距離が変化しているか否かを判定する(ステップS203)。焦点距離は、例えば、ユーザの撮像装置1に設けられたズームリング4の回転操作に応じて変化する。
【0050】
焦点距離が変化していると判定された場合(ステップS203でYes)には、焦点距離が変化していない時間(以下、「第2の時間」と呼ぶ。)が予め定められた所定の閾値以下の時間であるか否かを判定する(ステップS204)。前記第2の時間が前記所定の閾値以下の時間であると判定された場合(ステップS204でYes)には、その第2の時間を算出する。
【0051】
焦点距離が変化していないと判定された場合(ステップS203でNo)及び前記第2の時間が前記所定の閾値より長い時間であると判定された場合(ステップS204でNo)には、ステップS202の処理に戻る。
【0052】
前記第2の時間が前記所定の閾値以下の時間であると判定された場合には、前記第1の時間と前記第2の時間が経過するまでの前記画像データのフレームごとの焦点距離を算出する(ステップS205)。次いで、前記第1の時間と前記第2の時間が経過するまでの前記焦点距離が一定の割合で変化するように前記画像データのフレームごとの焦点距離の補正量を算出する(ステップS206)。
【0053】
画像データ処理部10は、撮影前に予め設定された電子ズーム倍率を前記焦点距離の補正量に基づいて前記画像データのフレームごとに補正する(ステップS207)。
【0054】
以下に、図4のステップS207における電子ズーム倍率の補正処理について図5〜図7を参照して具体的に説明する。
【0055】
上述したように、カメラ本体3には、撮影前に電子ズーム倍率が前記電子ズーム倍率データに基づいて自動的に設定され、撮影開始時には電子ズーム倍率が反映された状態にある。
【0056】
まず、電子ズーム倍率が反映されているときに液晶モニタ17に設定される電子ズーム表示領域と電子ズーム倍率が反映されていないときに液晶モニタ17に設定される有効画素領域との関係について説明する。
【0057】
液晶モニタ17の電子ズーム表示領域は、図5に示すように、有効画素領域よりも狭い。有効画素領域とは被写体像を表示するための画素がマトリクス状に配置されている領域である。
【0058】
電子ズームによって広角側へ補正する(電子ズーム倍率を低くする)と電子ズーム表示領域は広くなり有効画素領域と電子ズーム表示領域の差は狭まる。望遠側へ補正する(電子ズーム倍率を高くする)と電子ズーム表示領域は狭くなり有効画素領域と電子ズーム領域の差は広がる。
【0059】
従って、電子ズーム表示領域を広角側に補正する場合には、電子ズーム開始前において電子ズーム表示領域を少なくとも有効画素領域より狭くするように所定の電子ズーム倍率を反映させておく必要がある。
【0060】
図6は、例えば、ユーザのズーム操作時においてズーム停止の区間(区間(b))がある場合の時間に対する焦点距離の変化を示した図である。点線は、撮影前に設定した電子ズーム倍率で電子ズームが反映されている状態における電子ズーム補正前の光学ズームの焦点距離の変化を示したグラフである。実線は、後述する方法で算出された焦点距離の補正量に基づいて撮影前に設定した電子ズーム倍率を補正した後の電子ズーム補正後の焦点距離の変化を示したグラフである。
【0061】
区間(a)と区間(c)は焦点距離が変化している第1の時間を示し、区間(b)は焦点距離が変化していない第2の時間を示している。このズーム停止の区間(b)は、撮影者がズーム停止を望んではいないがズームレンズの持ち替え等に起因してズーム停止された区間である。区間(A)は補正前の焦点距離が補正後の焦点距離より大きいときの区間(電子ズーム倍率の広角側への補正の区間)であり、区間(B)は補正前の焦点距離が補正後の焦点距離より小さいときの区間(電子ズーム倍率の望遠側への補正の区間)である。斜線領域は焦点距離の補正量を示しており、斜線領域の中の上向き矢印は電子ズーム倍率の望遠側への補正を意味し、下向き矢印は電子ズーム倍率の広角側への補正を意味する。
【0062】
電子ズーム倍率と焦点距離は比例関係にあり、電子ズーム倍率の広角側への補正は焦点距離を短くするように図6の区間(A)における焦点距離の補正量に基づき補正し、電子ズーム倍率の望遠側への補正は焦点距離を長くするように図6の区間(B)における焦点距離の補正量に基づき補正する。
【0063】
以下に、区間(a)〜区間(c)に分けて電子ズームの広角側及び望遠側への補正について説明する。
【0064】
まず、区間(a)〜区間(c)における焦点距離fを時間tで微分(df/dt)して焦点距離が変化している第1の時間(df/dtが0でないときの時間)と焦点距離が変化していない第2の時間(df/dtが0であるときの時間)を検出する。図6の例では区間(a)と区間(c)の時間が第1の時間として検出され、区間(b)の時間が第2の時間として検出される。
【0065】
焦点距離が変化していない第2の時間が予め定められた所定の閾値以下の時間であれば、第2の時間は焦点距離が変化している時間としてみなされる。これは、上記したように、ズームリングを持ち替えるような一瞬の停止は撮影者がズーム停止することを望んでいない動作だからである。第2の時間が予め定められた所定の閾値より大きい時間であれば後述する電子ズームによる補正は行わない。
【0066】
ところで、例えば、広角ズームレンズと望遠ズームレンズを比較した場合には、ズームリングの径が大きくズームリングとカメラ本体の距離がより長い望遠ズームレンズの方が一瞬のズーム停止を起こし易いので、上記したズームの停止はズームレンズの種類によってその発生頻度が異なる。
【0067】
従って、ズームレンズ4の種類に応じた閾値を予め設定することが必要である。例えば、焦点距離11−18mmの広角ズームレンズでは前記閾値を短く設定し、例えば、焦点距離70−400mmの望遠ズームレンズでは広角ズームレンズに比べて閾値を長くなるように設定する。即ち、電子ズーム倍率が高いズームレンズは電子ズーム倍率が低いズームレンズに比べて前記閾値が長くなるように設定する。
【0068】
次に、df/dtが0でない区間(区間(a)、(c))と上記した所定の閾値以下の時間においてdf/dtが0となっている区間(区間(b))の合計時間が、焦点距離が変化している時間として検出される。
【0069】
次に、区間(a)の始点から区間(c)の終点までにおける焦点距離の変化の割合が一定になるように補正量が算出される。
【0070】
具体的には、区間(a)の始点から区間(c)の終点までの時間に対する焦点距離の割合(区間(a)〜(c)の実線)を算出する。次に、区間(a)〜(c)の点線グラフにおけるフレームごとの焦点距離を算出し、先に算出された実線における焦点距離と破線における焦点距離のフレームごとの比を計算する。このフレームごとの比が焦点距離の補正量となる。
【0071】
上記したように電子ズーム倍率と焦点距離は比例関係にあるので、撮影前に設定された電子ズーム倍率に上記した焦点距離の補正量を画像データのフレームごとに反映させて各フレームの補正後の電子ズーム倍率が算出される。
【0072】
区間(A)の時は補正前の焦点距離が補正後の焦点距離より大きいので焦点距離が広角側に補正される。即ち、区間(A)では撮影前に設定した電子ズーム倍率を下げるように補正される。図7(a)は広角側への補正の様子を電子ズーム領域の変化で表した図である。図7(a)に示すように、電子ズーム倍率を下げることにより電子ズーム領域が広くなる。
【0073】
区間(B)の時は補正前の焦点距離が補正後の焦点距離より小さいので焦点距離が望遠側に補正される。即ち、区間(B)では撮影前に設定した電子ズーム倍率を上げるように補正される。図7(b)は望遠側への補正の様子を電子ズーム領域の変化で表した図である。図7(b)に示すように、電子ズーム倍率を上げることにより電子ズーム領域が狭くなる。
【0074】
尚、上記したように、撮影前の電子ズーム倍率は上記した電子ズーム倍率データを参照して自動的に設定されるが、以下に、その具体的な設定方法について説明する。
【0075】
例えば、焦点距離11−18mmのような広角ズームレンズについては低めの電子ズーム倍率を設定する。これは、例えば、焦点距離11−18mmの広角ズームレンズは焦点距離を変更できる量が少なく、一般に、ズームリングの径も小さいためズーム操作が容易であるので電子ズーム補正量が少なくてもよいからである。また、広角ズームレンズは広角側の画角を撮影するためのものであるので電子ズーム倍率もなるべく低く設定することが好ましいからである。
【0076】
一方、例えば、焦点距離70−400mmのような望遠ズームレンズについては広角ズームレンズよりも高めの電子ズーム倍率を設定する。これは、例えば、焦点距離70−400mmの望遠ズームレンズは焦点距離を変更できる量が多く、一般に、ズームリングの径も大きくズームリングの位置もカメラ本体から離れた位置にあるためズーム操作が困難であり、所望の焦点距離までズームする途中でズームリングの持ち替えが必要となる可能性が高いので、電子ズーム補正量を多めにとることが必要だからである。
【0077】
上記した種類のズームレンズ以外にも焦点距離18−250mmのように広角側から望遠側まで広い範囲で焦点距離を変化できるズームレンズや、焦点距離24−70mmのように広角側と望遠側の中間にあたる焦点距離付近のみをカバーするズームレンズもある。
【0078】
焦点距離18−250mmのズームレンズ及び焦点距離24−70mmのズームレンズにおける電子ズーム倍率の設定方法としては、光学倍率が高いレンズ程、電子ズーム倍率を高く設定する。光学倍率とはズームレンズの望遠側の焦点距離と広角側の焦点距離の比であり、例えば、焦点距離70−400mmでは約5.7倍となる。光学倍率が高いと画角の変化も大きく、多くの補正量が必要となる可能性が高いためである。
【0079】
また、ズームリングの径や、ズームリングのカメラ本体からの距離に応じた電子ズーム倍率の設定を行ってもよい。ズームリングの径に応じた電子ズーム倍率の設定は、径が大きい程、電子ズーム倍率を高くするように行う。また、ズームリングとカメラ本体との距離に応じた電子ズーム倍率の設定は、距離が離れているほど電子ズーム倍率を高くするように行う。
【0080】
これらはいずれも操作性を考慮したものであり、上記した設定にする理由は、ズームリングの径が大きい場合にはズーム操作をする際に持ち替えなど意図しないズーム停止動作が発生する可能性が高くなり、ズームリングのカメラ本体からの距離が離れるほどズーム操作が困難となるため、より広い補正が必要となるからである。
【0081】
以上に説明したように、上記した実施の形態によれば、撮影時において撮影者のズーム操作に起因して焦点距離が一定の割合で変化しない場合が生じても、焦点距離が一定の割合で変化しない時間を焦点距離が変化する時間とみなして全体として焦点距離が一定の割合で変化するように電子ズーム倍率の補正を行っている。従って、画像の再生時に滑らかなズーム処理を実現することができる。
【0082】
次に、電子ズームによる補正の第2の例について図8を参照して説明する。図6の例と光学ズームの変化は同じであるが、本例では焦点距離の変化を一定にするのではなく、焦点距離の変化が急峻な箇所を滑らかにするように補正している。図6の例のように補正するか本例のように補正するかは撮影者が撮影時または再生時に選択できるものとする。
【0083】
次に、電子ズームによる補正の第3の例について図9を参照して説明する。本例は撮影者が意図した焦点距離になるまでズーム操作が広角側と望遠側を往復した場合の例である。このような場合は焦点距離の変化が急峻な期間を電子ズームによって補正する。
【0084】
尚、上記には、撮像装置1がレンズユニット2とカメラ本体3によって構成された例を示したが、本発明においては、カメラ本体3のみを一つの撮像装置として用いることも可能である。
【0085】
従って、この場合には、一つの撮像装置として用いられたカメラ本体3によって上記した電子ズーム倍率の補正機能が発揮される。
【0086】
また、本発明には、上記電子ズーム倍率の補正方法における各ステップをコンピュータに実行させるプログラムも含む。このプログラムは、コンピュータで実行される処理そのものであってもよく、このプログラムがコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されているものであってもよく、また、インターネットを含む通信ネットワークとアクセスすることにより取り込まれるものであってもよい。
【0087】
プログラムを実行する方式としては、コンピュータがアクセスして実行させる方式であってもよく、また、コンピュータのプログラム記憶エリアに読み出して実行させる方式であってもよい。
【0088】
本発明における記憶媒体として、コンピュータで処理が行なわれるために必要なメモリ、例えば、ROM(Read Only Memory)等のプログラムメディアを用いてもよく、また、プログラム読取装置として設けられた外部記憶装置によって読取可能なプログラムメディアを用いてもよい。
【0089】
また、本発明において用いられる記憶媒体は、インターネットを含む通信ネットワークからダウンロードするプログラムを記憶する媒体であってもよい。通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、ダウンロード用のソフトウエアを予め撮像装置に格納しておくか、ダウンロード用のソフトウエアを別の記憶媒体からインストールしてもよい。
【0090】
尚、上記したプログラムメディアには、例えば、磁気テープ等のテープ状記憶媒体、FD(フレキシブルディスク)やHD(ハードディスク)等の磁気ディスク、CD(Compact Disc)やMO(Magneto-Optical Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスク、IC(Integrated Circuit)カード等のカード型の記憶媒体、マスクROMやEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)やEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)やフラッシュROM等の半導体メモリ等の各種のメディアが含まれる。
【0091】
また、上記した各実施の形態は、本発明を好適に実施した形態の一例に過ぎず、本発明は、その主旨を逸脱しない限り、種々変形して実施することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮像装置の構成を示した図である。
【図2】撮影開始から撮影終了までの撮影処理について説明するためのフローチャートを示した図である。
【図3】システム制御部の構成を示した図である。
【図4】画像データを読み出してから電子ズーム倍率を補正するまでの処理について説明するためのフローチャートである。
【図5】電子ズーム表示領域と有効画素領域の関係を示した図である。
【図6】電子ズーム倍率の補正処理について説明するための図である。
【図7】(a)は広角側への補正の様子を電子ズーム領域の変化で表した図であり、(b)は望遠側への補正の様子を電子ズーム領域の変化で表した図である。
【図8】本発明の電子ズーム倍率の補正処理の第2の例を示した図である。
【図9】本発明の電子ズーム倍率の補正処理の第3の例を示した図である。
【符号の説明】
【0093】
1…撮像装置、2…レンズユニット、3…カメラ本体、4…ズームレンズ、5…レンズ用ROM(識別データ記憶部)、6…焦点距離検出部、8…撮像素子、10…画像データ処理部、18…画像記憶部、25…補正量算出部、26…画像データ読み出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズームレンズと前記ズームレンズを識別する識別データ記憶部と前記ズームレンズの焦点距離を示す焦点距離データを検出する焦点距離検出部とを有するレンズユニットと、
前記レンズユニットが着脱自在に取り付けられるカメラ本体とを備え、
前記カメラ本体が、
前記ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換し所定のフレームレートで画像データを生成する撮像素子と、
生成された前記画像データを記憶する画像記憶部から前記画像データを読み出す画像データ読み出し部と、
読み出された前記画像データのフレームごとの前記ズームレンズの焦点距離を検出し、前記焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において前記焦点距離が変化していない第2の時間とを算出し、前記第1の時間と前記第2の時間が経過するまで前記焦点距離が一定の割合で変化するように前記画像データのフレームごとの前記焦点距離の補正量を算出する補正量算出部と、
撮影前に予め設定された電子ズーム倍率を前記補正量算出部によって算出された前記焦点距離の補正量に基づいて前記画像データのフレームごとに補正する画像データ処理部とを有する
撮像装置。
【請求項2】
前記所定の閾値は前記ズームレンズの種類ごとに異なるように予め設定されている
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記所定の閾値は前記ズームレンズの光学ズーム倍率が高いほど長くなるように予め設定されている
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記画像記憶部から画像データが読み出される前に前記ズームレンズの種類に応じた電子ズーム倍率が予め設定されている
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
ズームレンズを含むレンズユニットが着脱自在に取り付けられ、
前記ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換し所定のフレームレートで画像データを生成する撮像素子と、
生成された前記画像データを記憶する画像記憶部から前記画像データを読み出す画像データ読み出し部と、
読み出された前記画像データのフレームごとの前記ズームレンズの焦点距離を検出し、前記焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において前記焦点距離が変化していない第2の時間とを算出し、前記第1の時間と前記第2の時間が経過するまで前記焦点距離が一定の割合で変化するように前記画像データのフレームごとの前記焦点距離の補正量を算出する補正量算出部と、
撮影前に予め設定された電子ズーム倍率を前記補正量算出部によって算出された前記焦点距離の補正量に基づいて前記画像データのフレームごとに補正する画像データ処理部とを有する
カメラ本体。
【請求項6】
撮影前に電子ズーム倍率を設定するステップと、
ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換し所定のフレームレートで生成された画像データを画像記憶部に記憶するステップと、
前記画像記憶部から前記画像データを読み出すステップと、
読み出された前記画像データのフレームごとに前記ズームレンズの焦点距離を検出するステップと、
前記焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において前記焦点距離が変化していない第2の時間とを算出するステップと、
前記第1の時間と前記第2の時間が経過するまで前記検出された焦点距離が一定の割合で変化するように前記画像データのフレームごとの前記焦点距離の補正量を算出するステップと、
撮影前に設定された前記電子ズーム倍率を前記焦点距離の補正量に基づいて前記画像データのフレームごとに補正するステップとを有する
電子ズーム倍率の補正方法。
【請求項7】
コンピュータに、
撮影前に電子ズーム倍率を設定するステップと、
ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換し所定のフレームレートで生成された画像データを画像記憶部に記憶するステップと、
前記画像記憶部から前記画像データを読み出すステップと、
読み出された前記画像データのフレームごとに前記ズームレンズの焦点距離を検出するステップと、
前記焦点距離が変化している第1の時間と所定の閾値以下の時間において前記焦点距離が変化していない第2の時間とを算出するステップと、
前記第1の時間と前記第2の時間が経過するまで前記検出された焦点距離が一定の割合で変化するように前記画像データのフレームごとの前記焦点距離の補正量を算出するステップと、
撮影前に設定された前記電子ズーム倍率を前記焦点距離の補正量に基づいて前記画像データのフレームごとに補正するステップとを有する処理を実行させる
プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−109459(P2011−109459A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262925(P2009−262925)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】