説明

撮像装置、画像処理装置およびプログラム

【課題】 後処理工程のときに飽和領域の抽出を高速かつより正確に行う手段を提供する。
【解決手段】 撮像装置は、カラー画像を撮像するための複数の画素が二次元配列された撮像素子と、飽和領域判定部と、記録処理部とを備える。飽和領域判定部は、画素から出力される画素値が、飽和領域に対応する閾値以上か否かを判定する。記録処理部は、画素値が閾値以上である飽和領域画素の位置を示す付帯データを、カラー画像のデータに対応付けて記憶媒体に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、画像処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置でダイナミックレンジの大きなシーンを撮影すると、被写体の明るい領域で撮像素子の出力が飽和することがあり、この場合には正しい階調情報が得られなくなる。そのため、撮像装置で撮影された画像の画素値を参照して飽和領域を抽出し、飽和領域の各画素で色成分信号を変更する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2006/134923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の手法では、後処理工程において撮影後の画像をコンピュータで処理するたびに、画像から飽和領域を抽出しなければならない。また、飽和領域の抽出精度についても改善の余地があった。
【0005】
上記事情に鑑み、後処理工程のときに飽和領域の抽出を高速かつより正確に行う手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一の態様に係る撮像装置は、カラー画像を撮像するための複数の画素が二次元配列された撮像素子と、飽和領域判定部と、記録処理部とを備える。飽和領域判定部は、画素から出力される画素値が、飽和領域に対応する閾値以上か否かを判定する。記録処理部は、画素値が閾値以上である飽和領域画素の位置を示す付帯データを、カラー画像のデータに対応付けて記憶媒体に記録する。
【0007】
上記の一の態様において、記録処理部は、飽和領域画素に対応する色成分を示す情報を付帯データに含めてもよい。
【0008】
上記の一の態様において、撮像素子は、入射光に応じた画素値を出力する有効画素と、黒レベルの信号を生成する遮光画素とを含んでいてもよい。また、飽和領域判定部は、黒レベルの大きさを考慮して、有効画素の画素値が閾値以上か否かを判定してもよい。
【0009】
上記の一の態様において、記録処理部は、付帯データとカラー画像のデータとを、それぞれ異なる圧縮形式で圧縮してもよい。
【0010】
他の態様に係る画像処理装置は、一の態様に係る撮像装置で生成されたカラー画像のデータおよび付帯データを取得する取得部と、画像処理部とを備える。画像処理部は、付帯データを用いて、カラー画像上の飽和領域画素の位置を特定する。そして、画像処理部は、画素値が飽和領域に属する色成分に応じて、カラー画像の飽和領域画素での色再現を補正する。
【0011】
なお、コンピュータを上記の画像処理装置として動作させるプログラムや、当該プログラムを記憶した記憶媒体や、上記の画像処理装置の動作を方法のカテゴリで表現したものは、いずれも本発明の具体的態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
画素値が閾値以上である飽和領域画素の位置を示す付帯データを、カラー画像のデータに対応付けて記憶媒体に記録する。これにより、後処理工程のときに飽和領域の抽出を高速かつより正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の撮像装置の構成例を示す図
【図2】撮像素子の画素の配置例を示す図
【図3】第1実施形態の撮像装置におけるRAW記録モードでの動作例を示す流れ図
【図4】撮影画像および飽和領域マップの例を模式的に示す図
【図5】第2実施形態の画像処理装置の構成例を示す図
【図6】第2実施形態の画像処理装置の動作例を示す流れ図
【図7】画像のハイライトでの色相変化の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態の説明>
図1は、第1実施形態の撮像装置(電子カメラ)の構成例を示す図である。
【0015】
電子カメラ11は、撮影レンズ12と、撮像素子13と、A/D変換部14と、画像処理エンジン15と、バッファメモリ16と、記録I/F17と、操作部18とを備えている。ここで、A/D変換部14、バッファメモリ16、記録I/F17および操作部18は、それぞれ画像処理エンジン15と接続されている。なお、操作部18は、ユーザの操作(例えば被写体の撮影指示など)を受け付けるスイッチである。
【0016】
撮像素子13は、撮影レンズ12による結像を撮像する撮像デバイスである。撮像素子13の出力は、画像信号のA/D変換を行うA/D変換部14を介して、画像処理エンジン15に入力される。上記の撮像素子13は、順次走査方式の固体撮像素子(例えばCCD)であってもよく、XYアドレス方式の固体撮像素子(例えばCMOS)であってもよい。
【0017】
図2は、撮像素子13の画素の配置例を示す図である。撮像素子13の受光面には、複数の画素(13a、13b)がマトリクス状に二次元配列されている。図2では画素の配列を簡略化して示すが、実際の固体撮像素子の受光面にはさらに多数の画素が配列されることはいうまでもない。
【0018】
撮像素子13の画素は、有効画素13aと遮光画素13bとを含む。有効画素13aは、入射光の明るさに応じて信号電荷を蓄積する画素である。そして、有効画素13aの出力に基づいて撮影画像の画像信号が生成される。また、有効画素13aには、赤色(R)、緑色(Gr,Gb)、青色(B)のカラーフィルタが公知のベイヤ配列に従って配置されている。図2では、有効画素13aにカラーフィルタの色を表記する。撮像素子13の各有効画素13aは、カラーフィルタでの色分解によって各色に対応する画像信号を出力する。これにより、撮像素子13は、撮影時にカラーの画像を取得できる。
【0019】
一方、遮光画素13bは、遮光膜によって表面が覆われた画素である。遮光画素13bは、温度変化等によって受光素子に蓄積される電荷(暗電流成分)を検出する。そして、遮光画素13bの出力に基づいて画像の黒色に相当する黒レベルが決定される。一例として、撮像素子13の受光面において、有効画素13aの周囲のリングピクセル部分に遮光画素13bが形成される。図2の例では、遮光画素13bの領域を破線で囲んで示す。
【0020】
画像処理エンジン15は、電子カメラ11の動作を統括的に制御するプロセッサである。例えば、画像処理エンジン15は、ユーザの撮影指示に応じて画像の撮影を実行する。また、第1実施形態での画像処理エンジン15は、画像処理部21、飽和領域判定部22、記録処理部23を有している。
【0021】
画像処理部21は、A/D変換部14から入力されたRAW画像のデータに対して、黒レベル補正、欠陥画素補正などの信号処置と、デジタル現像処理とを施す回路である。ここで、デジタル現像処理は、RAW画像から写真に相当する現像画像を生成するための画像処理であって、一例として、色補間、ホワイトバランス補正、階調変換、色変換、ガマットマッピングなどの処理が含まれる。
【0022】
飽和領域判定部22は、デジタル現像処理が施される前のRAW画像のデータを記録する撮影モード(RAW記録モード)において、有効画素の画素値が飽和領域に対応する閾値以上か否かを判定する。
【0023】
記録処理部23は、上記のRAW記録モードにおいて、後述の飽和領域画素を示す付帯データを、RAW画像のデータに対応付けて記録する。
【0024】
バッファメモリ16は、各画像のデータを一時的に記憶するメモリであって、例えば揮発性の記憶媒体であるSDRAMで構成される。
【0025】
記録I/F17は、不揮発性の記憶媒体19を接続するためのコネクタを有している。そして、記録I/F17は、コネクタに接続された記憶媒体19に対して画像のデータの書き込み/読み込みを実行する。上記の記憶媒体19は、例えば、ハードディスクや、半導体メモリを内蔵したメモリカードである。なお、図1では記憶媒体19の一例としてメモリカードを図示する。
【0026】
次に、図3を参照しつつ、第1実施形態の撮像装置におけるRAW記録モードでの動作例を説明する。なお、図3の処理は、RAW記録モード下で撮影指示(レリーズ釦の全押し操作)があるときに開始される。
【0027】
ステップ#101:画像処理エンジン15は、撮像素子13を駆動させて被写体の像を撮影する。画像処理エンジン15の制御により、撮像素子13から出力された信号は、A/D変換部14を通過してバッファメモリ16に記録される。これにより、バッファメモリ16には、1画像分のRAW画像のデータが蓄積される。なお、第1実施形態のRAW記録モードでは、RAW画像の画素値の階調を12ビット(0〜4095)とする。
【0028】
ステップ#102:画像処理部21は、RAW画像のデータに対して黒レベル補正を行う。一例として、画像処理部21は、遮光画素の画素値から黒レベルの値を決定し、有効画素の画素値から黒レベルの値を減算すればよい。これにより、有効画素の画素値から暗電流成分が除去される。
【0029】
第1実施形態において、#102のRAW画像は、色補間前の状態であるベイヤ配列構造のモザイク画像である。しかし、画像処理部21は、この段階で色補間処理を行ってもよい。この場合、RAW画像のデータは、各画素がそれぞれRGBの3チャネルの情報を有する形式となる。なお、#102のRAW画像のデータは、欠陥画素補正が施されたデータであってもよい。
【0030】
ステップ#103:記録処理部23は、JPEG2000やDPCMなどの圧縮方式で黒レベル補正後のRAW画像のデータ(#102)を圧縮する。なお、圧縮後のRAW画像のデータは、バッファメモリ16に一時的に記憶される。
【0031】
ステップ#104:一方、飽和領域判定部22は、黒レベル補正後のRAW画像のデータ(#102)に飽和判定を行う。この飽和判定は、RAW画像の各有効画素を判定対象として行われる。
【0032】
#104での飽和領域判定部22は、RAW画像の有効画素の画素値が、飽和領域に対応する閾値以上か否かを判定する。第1実施形態では、飽和領域に対応する閾値は、白トビによって画素の階調が失われるレベルに相当し、黒レベルの大きさを考慮してその値が決定される。一例として、飽和領域判定部22は、画素値の最大値(4095)から黒レベルの値を差し引いて撮影ごとに上記の閾値を設定してもよい。
【0033】
あるいは、飽和領域判定部22は、撮像素子13の特性や各種回路の特性を考慮して、実際の黒レベルの値に拘わらず上記の閾値を予め設定してもよい。一例として、飽和領域判定部22は、画素値の最大値(4095)から想定される黒レベルのマージン(例えば500)を差し引いて、上記の閾値を3595に設定してもよい。このとき、飽和領域判定部22は、撮影条件を考慮して飽和領域に対応する閾値を変更してもよい。例えば、撮影時の露出時間か長くなれば暗電流成分は増加するので、飽和領域判定部22は露出時間の長さに応じて上記の閾値を低減させてもよい。また、撮像感度の下限がISO200相当であるときに撮像感度をISO100相当まで拡張する場合、飽和領域判定部22は黒レベルのマージンを小さくして、有効に使える階調範囲をより広くしてもよい。
【0034】
#104での飽和領域判定部22は、判定対象の画素値が上記の閾値以上であるときには、判定対象の画素を飽和領域画素に指定する。そして、飽和領域判定部22は、飽和領域画素の位置(画素配列での座標)と、飽和領域画素に対応する色成分とをバッファメモリ16に記憶する。これにより、バッファメモリ16には、各色チャネルでの飽和領域画素の位置を示す飽和領域マップが生成される。なお、各々の飽和領域マップは、例えば、飽和領域画素か否かを2進数で示す1ビットの画素配列データで表現される。
【0035】
図4は、撮影画像および飽和領域マップの例を模式的に示す図である。図4(a)は、逆光下で風景を撮影したデジタル現像処理後の画像の例であり、図4(b)〜(d)は、図4(a)に対応するRAW画像でのRGB各チャネルの飽和領域マップの例を示している。なお、図4の飽和領域マップにおいて、飽和領域画素はハッチングで示す。
【0036】
図4の例では、Gチャネルで飽和領域が比較的多く分布し、BチャネルではGチャネルの飽和領域と重なる位置に飽和領域が部分的に存在する。一方、Rチャネルでは飽和領域が全く存在しない。上記のような色ごとの飽和領域の相違は、撮像素子13でのカラーフィルタの感度の違いによって生じる。かかる飽和領域マップを参照することで、或る画素において飽和した色成分を判断することができ、後処理工程のデジタル現像処理において画像の色再現をより自然な状態に近づけることが可能となる。
【0037】
ステップ#105:記録処理部23は、#104で生成した飽和領域マップのデータを圧縮する。飽和領域マップのデータでは、性質上2進数の一方の値が連続することが多い。そのため、記録処理部23は、#103とは異なりランレングス圧縮やJBIGなどの圧縮方式で飽和領域マップのデータを圧縮する。両者の圧縮方式を異ならせることで、RAW画像のデータと飽和領域マップのデータとをそれぞれ効率よく圧縮できる。なお、圧縮後の飽和領域マップのデータは、バッファメモリ16に一時的に記憶される。
【0038】
ステップ#106:記録処理部23は、圧縮されたRAW画像のデータ(#103)と、付帯データである飽和領域マップのデータ(#105)とを対応付けして、RAW画像ファイルを生成する。そして、記録処理部23は、RAW画像ファイルを記憶媒体19に記録する。なお、記録処理部23は、RAW画像ファイルの付帯データとして撮像素子13のカラーフィルタの配列パターンを示す情報や、撮影時の光源判定に基づくホワイトバランスデータなどをさらに付与する。以上で、図3の処理が終了する。
【0039】
なお、RAW記録モードで生成されたRAW画像ファイルは、後述の画像処理装置に読み込まれて撮影後にデジタル現像処理が施される。これにより、後処理工程でRAW画像から写真に相当する現像画像を得ることができる。画像処理装置は、デジタル現像処理を行うときに、RAW画像ファイルの飽和領域マップを用いて、飽和領域画素に応じた色補正を行うことが可能となる。また、第1実施形態では、RAW画像ファイルに飽和領域マップが予め記憶されているため、後処理工程のときに飽和領域の抽出を高速かつより正確に行うことが可能となる。
【0040】
<第2実施形態の説明>
図5は、第2実施形態の画像処理装置の構成例を示す図である。第2実施形態の画像処理装置は、画像処理プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータである。第2実施形態の画像処理装置は、第1実施形態で生成されたRAW画像ファイルに対してデジタル現像処理を施す。
【0041】
図5に示すコンピュータ31は、データ読込部32、記憶装置33、CPU34、メモリ35および入出力I/F36、バス37を有している。データ読込部32、記憶装置33、CPU34、メモリ35および入出力I/F36は、バス37を介して相互に接続されている。さらに、コンピュータ31には、入出力I/F36を介して、入力デバイス38(キーボード、ポインティングデバイスなど)とモニタ39とがそれぞれ接続されている。なお、入出力I/F36は、入力デバイス38からの各種入力を受け付けるとともに、モニタ39に対して表示用のデータを出力する。
【0042】
データ読込部32は、RAW画像ファイルや、プログラムを外部から読み込むときに用いられる。例えば、データ読込部32は、着脱可能な記憶媒体からデータを取得する読込デバイス(光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスクの読込装置など)や、公知の通信規格に準拠して外部の装置と通信を行う通信デバイス(USBインターフェース、LANモジュール、無線LANモジュールなど)である。
【0043】
記憶装置33は、例えば、ハードディスクや、不揮発性の半導体メモリなどの記憶媒体で構成される。この記憶装置33には、画像処理プログラムが記録される。なお、記憶装置33には、データ読込部32から読み込んだRAW画像ファイルや、RAW画像から生成された現像画像のデータを記憶しておくこともできる。
【0044】
CPU34は、コンピュータ31の各部を統括的に制御するプロセッサである。このCPU34は、画像処理プログラムの実行によって、上記の画像処理部21として機能する。
【0045】
メモリ35は、画像処理プログラムでの各種演算結果を一時的に記憶する。このメモリ35は、例えば揮発性のSDRAMである。
【0046】
次に、図6を参照しつつ、第2実施形態の画像処理装置の動作例を説明する。なお、図6の処理は、ユーザによる画像処理プログラムの実行指示に応じて開始される。
【0047】
ステップ#201:CPU34は、デジタル現像処理の対象となるRAW画像ファイル(第1実施形態で生成されたRAW画像ファイル)を、データ読込部32から取得する。#201で取得されたRAW画像ファイルは、CPU34の制御によって、記憶装置33またはメモリ35に記録される。なお、RAW画像ファイルが予め記憶装置33に記憶されている場合には、CPU34は#201の処理を省略してもよい。
【0048】
ステップ#202:画像処理部21は、RAW画像ファイルの付帯データ(飽和領域マップ)を用いて、RAW画像の色チャネルごとに飽和領域画素の位置をそれぞれ特定する。なお、飽和領域マップがベイヤ配列構造のデータである場合、CPU34はカラーフィルタの配列パターンの情報を用いて、RGBの各チャネルの飽和領域マップを生成する。
【0049】
なお、図4に示すように、飽和領域画素の分布は色チャネルごとに相違する。そのため、RAW画像には、全ての色チャネルで飽和が生じていない画素と、1または複数の色チャネルで飽和が生じている画素とが混在しうる。
【0050】
ステップ#203:画像処理部21は、RAW画像ファイルのRAW画像のデータに対して、デジタル現像処理を施す。
【0051】
一例として、画像処理部21は、付帯データのホワイトバランスデータを用いてRAW画像のホワイトバランス補正を行い、その後に必要に応じて色補間処理を行う。
【0052】
そして、画像処理部21は、ホワイトバランス補正後の画像のデータに対して、#202で特定した飽和領域画素のハイライト補正を行う。このとき、画像処理部21は、いずれかの色成分が飽和している飽和領域画素での色再現を、飽和領域に属している色成分の種類に応じて補正する。
【0053】
図7は、画像のハイライトでの色相変化の例を示す図である。図7では、一例として肌色(R>G>B)の領域で明るさが増加するケースを示す。
【0054】
肌色の領域で被写体の明るさが増加すると、最初にR成分が飽和する。さらに被写体の明るさが増加すると画素の色は黄色(図7のY)に近付くように変化する。その後、被写体の明るさが増加するとG成分、B成分の順に飽和して画素の色は白色(図7のW)となる。ここで、注目画素でR成分が飽和している場合、実際の被写体では赤色の強度が非常に大きいにも拘わらず、飽和レベルで赤色が制限されることから、実際の被写体との色相にズレが生じうる。そのため、画像処理部21は、1つの色成分(R)が飽和している飽和領域画素にハイライト補正を行う場合、飽和していない他の2つの色成分(G、B)の画素値の差が小さくなるように補正するとともに、その画素の彩度を低減させて色相ズレを抑制する。
【0055】
また、2つの色成分(例えばR、G)が飽和している飽和領域画素では、2つの色成分の階調が失われているため、2つの色成分(G、B)の画素値の差を小さく補正しても好ましい色再現とならない可能性もある。そのため、2つの色成分(例えばR、G)が飽和している飽和領域画素にハイライト補正を行う場合、画像処理部21は、その画素の彩度を低減させる補正のみを行う。勿論、ハイライト補正に関する説明において、飽和する色成分の組み合わせはあくまで例示にすぎない。
【0056】
その後、画像処理部21は、ハイライト補正後の画像のデータに対して、色変換、階調変換、ガマットマッピングを行い、現像画像を生成する。
【0057】
ステップ#204:CPU34は、現像画像のデータ(#203)を記憶装置33に記録する。このとき、CPU34は現像画像をモニタ39に表示させてもよい。以上で、図6の処理が終了する。
【0058】
第2実施形態の画像処理装置では、RAW画像ファイルに予め記録された飽和領域マップを用いて、飽和領域画素のハイライト補正を行う。上記のハイライト補正では、飽和した色成分に応じて補正の方法を変更するので、実際の被写体と画像との色相ズレを抑制することができ、より見栄えのよい現像画像を得ることができる。
【0059】
<実施形態の補足事項>
(補足事項1)第1実施形態において、撮像装置は黒レベル補正前のRAW画像のデータに飽和判定を行ってもよい。
【0060】
(補足事項2)上記実施形態では、「飽和領域に対応する閾値」を白トビによって画素の階調が失われるレベルに設定したが、これに限定されるものではない。
【0061】
例えば、撮像素子13の出力特性について、入射光に対する画素値の線形性が高輝度側で悪化する場合、入射光に対する画素値の線形性が保たれる範囲の上限で、上記の閾値を設定してもよい。この場合、入射光に対する画素値の線形性が低く、被写体の階調が必ずしも正確に再現されていない領域についても、擬似的に飽和したものとみなしてハイライト補正の対象にすることができる。
【0062】
(補足事項3)第1実施形態において、撮像装置は、撮影モードに連動して所定の色成分の飽和領域マップのみを生成するようにしてもよい。例えば、撮像装置は、夕焼けの撮影に適した撮影モードにおいてRの飽和領域マップのみを生成するようにしてもよい。
【0063】
(補足事項4)第2実施形態では、画像処理装置の各機能をプログラムによってCPU34がソフトウエア的に実現する例を説明した。しかし、本発明では、ASICを用いて画像処理装置の動作をハードウエア的に実現してもかまわない。また、上記の第2実施形態では、画像処理装置の一例としてパーソナルコンピュータを開示したが、第1実施形態の電子カメラ11に画像処理装置を実装してもよい。
【0064】
(補足事項5)上記実施形態では、RAW画像のデータに対して、飽和領域マップを用いて色補正を行う例を説明した。しかし、本発明は、例えば、RAW画像以外の画像データ(JPEG形式の画像のデータなど)にも応用することができる。
【0065】
(補足事項6)上記実施形態では、画像の階調が12ビットで表現されている例を説明したが、他のビットデータ(14ビット、16ビット等)の場合にも本発明を適用することができる。
【0066】
(補足事項7)上記実施形態では、RGBの色分解フィルタを通して撮影された画像の例を説明したが、補色系色分解フィルタを通して撮影された画像にも本発明を適用できる。なお、色分解数は3色に限らず、4色のものであってもよい。
【0067】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物によることも可能である。
【符号の説明】
【0068】
11…電子カメラ、12…撮影レンズ、13…撮像素子、13a…有効画素、13b…遮光画素、14…A/D変換部、15…画像処理エンジン、16…バッファメモリ、17…記録I/F、18…操作部、19…記憶媒体、21…画像処理部、22…飽和領域判定部、23…記録処理部、31…コンピュータ、32…データ読込部、33…記憶装置、34…CPU、35…メモリ、36…入出力I/F、37…バス、38…入力デバイス、39…モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像を撮像するための複数の画素が二次元配列された撮像素子と、
前記画素から出力される画素値が、飽和領域に対応する閾値以上か否かを判定する飽和領域判定部と、
前記画素値が前記閾値以上である飽和領域画素の位置を示す付帯データを、前記カラー画像のデータに対応付けて記憶媒体に記録する記録処理部と、
を備える撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記記録処理部は、前記飽和領域画素に対応する色成分を示す情報を前記付帯データに含める撮像装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、入射光に応じた画素値を出力する有効画素と、黒レベルの信号を生成する遮光画素とを含み、
前記飽和領域判定部は、前記黒レベルの大きさを考慮して、前記有効画素の画素値が前記閾値以上か否かを判定する撮像装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の撮像装置において、
前記記録処理部は、前記付帯データと前記カラー画像のデータとを、それぞれ異なる圧縮形式で圧縮する撮像装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項の撮像装置で生成されたカラー画像のデータおよび付帯データを取得する取得部と、
前記付帯データを用いて、前記カラー画像上の飽和領域画素の位置を特定するとともに、前記飽和領域画素で画素値が飽和領域に属する色成分に応じて、前記カラー画像の前記飽和領域画素での色再現を補正する画像処理部と、
を備える画像処理装置。
【請求項6】
コンピュータに、
請求項1から請求項4のいずれか1項の撮像装置で生成されたカラー画像のデータおよび付帯データを取得する処理と、
前記付帯データを用いて、前記カラー画像上の飽和領域画素の位置を特定するとともに、前記飽和領域画素で画素値が飽和領域に属する色成分に応じて、前記カラー画像の前記飽和領域画素での色再現を補正する処理と、
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−55459(P2013−55459A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191557(P2011−191557)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】