説明

撮像装置の手動型フィルタ切替え機構

【課題】 操作性の向上と軽量化とを同時に達成させるようにした撮像装置の手動型フィルタ切替え機構を提供する。
【解決手段】 この手動型フィルタ切替え機構20では、操作部24をスライドさせることに追従してベルクランク23が回転軸22を中心に揺動する。このとき、ベルクランク23の一端に固定されたフィルタ19を、光軸L上に入れたり光軸Lから出したりすることができる。このように、フィルタ切替え機構20にベルクランク23を利用することで、手動によるフィルタ19のオンオフ操作をスムーズに行うことができ、操作性の向上と軽量化とを同時に達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ、携帯電話などの携帯を前提とした撮像装置に利用される手動型フィルタ切替え機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯型撮像装置として特開平10−333057号公報がある。この公報に記載されたCCDマイクロスコープ(肌観察装置)は、肌荒れの状態を観察する装置であり、鏡筒の先端を肌表面に押し付け、肌で反射した光は結像光学系を通ってCCD素子で撮像される。さらに、このCCDマイクロスコープの照明部は、環状に配列されたLEDの点灯切り替えを可能にし、シミやクスミなどを観察するために偏向フィルタを通る光と、肌表面の荒れなどを観察するために偏向フィルタを通らない光とを作り出している。また、偏光フィルタの有無を達成させるために、特開2001−195688号公報に開示されているように、ソレノイドを利用して偏光フィルタを移動させることができる。
【0003】
【特許文献1】特開平10−333057号公報
【特許文献2】特開平2−206426号公報
【特許文献3】特開2001−195688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の撮像装置において、フィルタの有る無しを選択的に切り替える際、フィルタをソレノイドなどの電動部品で駆動させると、重量が重くなり携帯用として利用し難くなるといった問題点がある。
【0005】
本発明は、特に、操作性の向上と軽量化とを同時に達成させるようにした撮像装置の手動型フィルタ切替え機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る撮像装置の手動型フィルタ切替え機構は、被写体からの反射光を受光して被写体を撮像する撮像素子と、撮像窓と撮像素子との間に配置され、被写体からの反射光を撮像素子に集光させる結像光学部とを備えた撮像装置において、略L字状を有すると共に、回転軸を中心に揺動自在なベルクランクと、ベルクランクの一端に固定されると共に、撮像窓と結像光学部との間の光軸上から退避可能なフィルタと、ベルクランクの他端に支軸を介して連結されてスライド自在な操作部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
この手動型フィルタ切替え機構では、操作部をスライドさせることに追従してベルクランクが回転軸を中心に揺動する。このとき、ベルクランクの一端に固定されたフィルタを、光軸上に入れたり光軸から出したりすることができる。このように、フィルタ切替え機構にベルクランクを利用することで、手動によるフィルタのオンオフ操作をスムーズに行うことができ、操作性の向上と軽量化とを同時に達成することができる。
【0008】
また、ベルクランクの回転軸の中心は、フィルタを通る光軸と略同一平面上に位置すると好適である。この場合、フィルタを、光軸上に入れたり光軸から出したりするにあたって、ベルクランクの移動距離を最小限にすることができるので、フィルタ切替え機構のコンパクト化が容易になる。
【0009】
また、ベルクランクの一端には、回転軸を中心とした円弧状のガイド溝が形成され、ガイド溝内にガイドピンが挿入されていると好適である。このような構成を採用した場合、ベルクランクの揺動を確実に行わせることができ、ベルクランクの移動の制限に寄与するので、フィルタの停止位置精度を向上させることができ、これによって、フィルタ機能を十分に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作性の向上と軽量化とを同時に達成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る撮像装置の手動型フィルタ切替え機構の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、携帯用の撮像装置としては、デジタルカメラ、携帯電話など様々であるが、肌観察装置を一例にとって説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、撮像装置の一例である肌観察装置1は、ハンディタイプであり、取り扱い性に配慮して約20度の角度で折り曲げられた樹脂製の筐体2を有し、この筐体2の内部には、撮像照明ユニットUが設けられ、筐体2の前側下部には、肌など弾性のある被写体Sに密着させるため円錐台形状のキャップ部3が設けられている。このキャップ部3は、ネジによって筐体本体5に固定され、キャップ部3の先端には、円形の撮像窓3aが形成されている。
【0013】
さらに、筐体2の前側上部には、ハンディタイプを考慮してカラーモニター6が設けられており、このモニター6は、動画表示が可能であるが、ボタンB1によって一時静止画をも可能にし、モニター6には撮像結果が表示される。そして、キャップ部3の先端部分を被写体Sに押し当てることで、撮像窓3aを介して肌Sの状態が撮像照明ユニットUにより撮像され、肌の状態はモニター6に写し出される。
【0014】
なお、筐体2の内部には、撮像照明ユニットU及びモニター6を動作させるための回路基板(図示せず)と、回路基板を介して撮像照明ユニットU及びモニター6に電力を供給するためのバッテリーBとが収容されている。このバッテリーBは外部充電が可能であり、これによって、充電式の肌観察装置1を可能にし、携帯性を実現している。
【0015】
この撮像照明ユニットUは、被写体Sに向けて光を照射する照明部10と、被写体Sからの反射光を受光して被写体Sを撮像するCMOSイメージセンサ(撮像素子)11と、照明部10とCMOSイメージセンサ11との間に配置されて、被写体Sからの反射光をCMOSイメージセンサ11に集光させるためのレンズ群をもった結像光学部12と、光軸Lを90度曲げて装置1の薄型化を可能にし且つ携帯性やコンパクト化の促進を図ることができる反射ミラー13と、を一体的に備えている。
【0016】
照明部10は、撮像窓3aに向けて光を出射する複数のLED10aを有し、各LED10aは、照明点灯用回路基板16の中央に形成された開口部16aの周囲で環状に配列されている。さらに、照明部10と撮像窓3aとの間には、固定タイプの第1の偏光フィルタ18が配置され、反射ミラー13と結像光学部12との間には、可動タイプの第2の偏光フィルタ19が配置されている。
【0017】
第1の偏光フィルタ18は、P波(縦波)を偏光するためのフィルタであると共に、照明部10の前方で光軸Lに対して直交するように配置されている。従って、LED10aから出射した光は、第1の偏光フィルタ18を通って被写体Sを照らすことになる。この第1の偏光フィルタ18は、肌表面の乱反射をカットするためのフィルタであり、被写体Sで反射した光は、第1の偏光フィルタ18を通ってCMOSイメージセンサ11で撮像される。
【0018】
また、第2の偏光フィルタ19は、S波(横波)を偏光するためのフィルタであると共に、結像光学部12と反射ミラー13との間で光軸Lに対して直交するように配置されている。この第2の偏光フィルタ19は、肌表面の乱反射をカットするためのフィルタであり、被写体Sで反射した光は、第2の偏光フィルタ19を通ってCMOSイメージセンサ11で撮像される。
【0019】
そして、キメ、毛穴、肌荒れの観察を行う場合、第2の偏光フィルタ18が退避して、第1の偏光フィルタ18のみが撮像に利用され、シミの観察を行う場合、第1及び第2の偏光フィルタ18,19が撮像に利用される。このように、第2の偏光フィルタ19が必要な状況と、第2の偏光フィルタ19が不要な状況があるので、第2の偏光フィルタ19を光軸L上に入れたり光軸Lから出したりする必要がある。
【0020】
そこで、図2〜図4に示すように、この肌観察装置1には、携帯性を考慮したフィルタ切替え機構20が採用され、フィルタ切替え機構20は、筐体2にビス止めされた樹脂製のベース部21に取り付けられている。このフィルタ切替え機構20は、ベース部21に固定された回転軸22を中心に揺動自在な略L字状のベルクランク23を有し、このベルクランク23は、結像光学部12と反射ミラー13との間の光軸Lに対して平行に配置されている。
【0021】
ベルクランク23の撮像素子側端部(一端)には、結像光学部12と反射ミラー13との間の光軸L上から退避可能な第2の偏光フィルタ19が固定されている。この第2の偏光フィルタ19は、ベルクランク23の一端から光軸Lに向けて垂下したフィルタ取付け片23aの開口部23bを塞ぐように固定されている。さらに、ベルクランク23には、手動操作を可能にするためのスライドスイッチ(操作部)24が連結されている。樹脂製のスライドスイッチ24には連結片25が一体成形されており、連結片25の遊端には、連結ピン(支軸)25aが設けられ、この連結ピン25aは、ベルクランク23の他端に設けられた長穴23c内に挿入されている。
【0022】
スライドスイッチ24は、結像光学部12と反射ミラー13との間の光軸Lに対して平行にスライド可能であり、筐体2の側面に設けられた凹部26(図1参照)内を摺動する。さらに、連結片25の首部25bは、筐体2に形成されたガイド穴27内に差し込まれており、これによって、スライドスイッチ24を前後方向に確実にスライドさせることができる。そして、スライドスイッチ24を後退させると、図5に示すように、ベルクランク23が揺動し、第2の偏光フィルタ19を光軸L上から退避させることができる。
【0023】
このような手動型フィルタ切替え機構20にはベルクランク23が利用されているので、手動による第2の偏光フィルタ19のオンオフ操作をスムーズに行うことができ、操作性の向上と軽量化とを同時に達成させることができる。さらに、図3及び図4に示すように、ベルクランク23の回転軸22の中心は、第2の偏光フィルタ19を通る光軸Lと同一平面上に位置している。これによって、第2の偏光フィルタ19を、光軸L上に入れたり光軸Lから出したりするにあたって、ベルクランク23の移動距離を最小限にすることができるので、フィルタ切替え機構20のコンパクト化が容易になる。
【0024】
さらに、ベルクランク23の撮像素子側端部(一端)には、回転軸22を中心とした円弧状のガイド溝30が形成され、このガイド溝30内にはガイドピン31が挿入され、このガイドピン31は、筐体2に固定された樹脂製のベース部21に立設されている。このような構成を採用すると、ベルクランク23の揺動を確実に行わせることができ、ベルクランク23の移動の制限に寄与するので、第2の偏光フィルタ19の停止位置精度を向上させることができ、これによって、フィルタ機能を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る手動型フィルタ切替え機構を適用した撮像装置(肌観察装置)の外観を示す斜視図である。
【図2】肌観察装置の要部を示す断面図である。
【図3】手動型フィルタ切替え機構を示す斜視図である。
【図4】第2の偏光フィルタが光軸上に位置した状態を示す断面図である。
【図5】第2の偏光フィルタが光軸から外れた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1…肌観察装置(撮像装置)、3a…撮像窓、11…CMOSイメージセンサ(撮像素子)、12…結像光学部、19…第2の偏光フィルタ(フィルタ)、20…フィルタ切替え機構、22…回転軸、23…ベルクランク、24…スライドスイッチ(操作部)、24a…連結ピン(支軸)、30…ガイド溝、31…ガイドピン、S…被写体、L…光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの反射光を受光して前記被写体を撮像する撮像素子と、
撮像窓と前記撮像素子との間に配置され、前記被写体からの反射光を前記撮像素子に集光させる結像光学部とを備えた撮像装置において、
略L字状を有すると共に、回転軸を中心に揺動自在なベルクランクと、
前記ベルクランクの一端に固定されると共に、前記撮像窓と前記結像光学部との間の光軸上から退避可能なフィルタと、
前記ベルクランクの他端に支軸を介して連結されてスライド自在な操作部とを備えたことを特徴とする撮像装置の手動型フィルタ切替え機構。
【請求項2】
前記ベルクランクの前記回転軸の中心は、前記フィルタを通る前記光軸と略同一平面上に位置することを特徴とする請求項1記載の撮像装置の手動型フィルタ切替え機構。
【請求項3】
前記ベルクランクの前記一端には、前記回転軸を中心とした円弧状のガイド溝が形成され、前記ガイド溝内にガイドピンが挿入されていることを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置の手動型フィルタ切替え機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−267658(P2006−267658A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86751(P2005−86751)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】