説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】被写体距離に関する情報が得られない場合に適切な本発光量を演算する。
【解決手段】撮像装置から被写体までの距離に関する情報を取得できない場合、複数の測光領域の中から各測光領域に対する重み付け係数を決定する際の基準となる領域を決定するための条件を、プリ発光させたときの複数の測光領域それぞれの測光値に基づいて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置を発光させた撮影が可能な撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラや携帯電話などの撮像装置のフラッシュ撮影時におけるフラッシュ発光制御を最適化するための技術は各種提案されている。特に露光動作に先立ってフラッシュのプリ発光を行い、そのプリ発光による被写体の反射光を複数の測光領域毎に測光して本発光量を決定する方式の提案は多い。これは複数の測光領域の測光結果に基づいて所定のアルゴリズムにより本発光量を決めることで、様々なシーンに対して適切な発光量を決定できるからである。
【0003】
特許文献1においては、安定して適切な露光量が得られるように、以下のような撮像方法を提案している。プリ発光が行われる直前の各測光エリアの測光値P(i)とプリ発光が行われている時の各測光エリアの測光値H(i)との比R(i)を各測光エリア毎に演算する。得られたR(i)の中で最大のものを基準値baseRとして抽出し、基準値baseRに対する各エリアのR(i)の値を比較して各エリアに対する重み付け係数W(i)を決定する。重み付け係数W(i)にしたがって各エリアのプリ発光時の反射光量を重み付け平均して、得られた重み付け平均結果により本発光量を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−275265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、被写体までの撮影距離に応じてプリ発光時の最大反射光量に相当する値LVL0及び最小反射光量に相当する値LVL1を演算する。そして、プリ発光時の反射光分のみの輝度値D(i)がそのLVL0及びLVL1の間にある測光エリアの中でR(i)が最大のものを主被写体エリアと見なして、そのエリアのR(i)を基準値baseRとして抽出する。この手法により通常の多くのシーンで安定した露光量が得られるとともに、同一シーンを少しだけ構図変更して撮影した場合でも露光量の変化が少ない撮像結果が得られる。被写体までの撮影距離情報としては、撮影レンズが距離エンコーダを持つ場合は、その距離エンコーダ情報に基づき入手するが、撮影レンズが距離エンコーダを持たない場合は経験則的に決めた想定距離を用いている。
【0006】
撮影レンズが距離エンコーダを持たない場合、想定距離が主被写体の距離と大きく異なると、主被写体エリアからの反射光量から計算したR(i)がLVL0及びLVL1の間に入らず、撮影時に適切な露光量とならないことがあった。具体的には、想定距離よりも主被写体の距離が近い状態で撮影した場合に、主被写体エリアのR(i)がLVL0よりも大きくなるために、そのエリアの重み付け係数W(i)は小さくされる。そのため、演算される発光装置の本発光量は主被写体に対して過大となり、結果として主被写体は露出オーバーとなってしまうことがあった。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被写体距離に関する情報が得られない場合に適切な本発光量を演算することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる撮像装置は、発光装置を発光させた撮影が可能な撮像装置であって、複数の測光領域を有し、当該複数の測光領域それぞれの測光値を取得する測光手段と、前記撮像装置から被写体までの距離に関する情報を取得する取得手段と、前記複数の測光領域に対する重み付け係数を決定する決定手段と、前記決定手段により決定された重み付け係数にしたがって前記複数の測光領域それぞれの測光値に対して重み付けを行い、前記発光装置の本発光量を演算する演算手段と、を有し、前記決定手段は、前記取得手段により前記情報を取得できない場合、前記複数の測光領域の中から前記重み付け係数を決定する際の基準となる領域を決定するための条件を、前記発光装置をプリ発光させたときの前記複数の測光領域それぞれの測光値に基づいて設定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係わる撮像装置の制御方法は、複数の測光領域を有し、当該複数の測光領域それぞれの測光値を取得する測光手段を備え、発光装置を発光させた撮影が可能な撮像装置の制御方法であって、前記撮像装置から被写体までの距離に関する情報を取得する取得ステップと、前記複数の測光領域に対する重み付け係数を決定する決定ステップと、前記決定ステップで決定された重み付け係数にしたがって前記複数の測光領域それぞれの測光値に対して重み付けを行い、前記発光装置の本発光量を演算する演算ステップと、を有し、前記決定ステップは、取得ステップで前記情報を取得できない場合、前記複数の測光領域の中から前記重み付け係数を決定する際の基準となる領域を決定するための条件を、前記発光装置をプリ発光させたときの前記複数の測光領域それぞれの測光値に基づいて設定することを特徴とする。。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被写体距離に関する情報が得られない場合に適切な本発光量を演算することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態のカメラと撮影レンズ及びフラッシュ装置の構成を示す図。
【図2】焦点検出用センサーの構成を示す図。
【図3】測光用センサーの構成を示す図。
【図4】焦点検出位置の例を示す図。
【図5】カメラと撮影レンズ及びフラッシュ装置の電気回路の構成例を表すブロック図。
【図6】カメラの動作を示すフローチャート。
【図7】カメラの動作を示すフローチャート。
【図8】LVL0の決定用テーブルの説明図。
【図9】W(i)値の決定用テーブルの説明図。
【図10】第2の実施形態におけるカメラの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態である撮像装置としてのカメラにおける主として光学部材やセンサー等の構成を示す図である。図1においてはレンズ交換可能ないわゆる一眼レフタイプのカメラの構成を示している。図1において1はカメラ本体、2は撮影レンズ、3は発光装置としてのフラッシュ装置である。カメラ本体1において10はメカニカルシャッター、11はローパスフィルター、12は例えばCMOSセンサーやCCDといったエリア型の蓄積型光電変換素子からなる撮像素子である。13は半透過性の主ミラー、14は第1の反射ミラーで主ミラー13と第1の反射ミラー14はともに撮影時には上部に跳ね上がる。15は第1の反射ミラー14による撮像素子面と共役な近軸的結像面、16は第2の反射ミラー、17は赤外カットフィルター、18は2つの開口部を有する絞り、19は2次結像レンズ、20は焦点検出用センサー(以下、AFセンサーとする)である。AFセンサー20は例えばCMOSセンサーやCCDといったエリア型の蓄積型光電変換素子からなり、図2に示すように絞り18の2つの開口部に対応して多数分割された一対の受光センサー部20A,20Bから構成されている。また、受光センサー部20A,20Bに加えて、信号蓄積部や信号処理用の周辺回路などが同一チップ上に集積回路として作り込まれる。第1の反射ミラー14からAFセンサー20までの構成は周知の構成であって、撮影画面内の任意の位置での像ずれ方式での焦点検出を可能とするものである。
【0013】
21は拡散性を有するピント板、22はペンタプリズム、23は接眼レンズ、24は第3の反射ミラー、25は集光レンズ、26は被写体の輝度に関する情報を得るための測光用センサー(以下、AEセンサーとする)である。AEセンサー26は例えばシリコンフォトダイオード等の光電変換素子からなり、図3に例示するように格子状に複数分割された受光センサー部を有した構成になっており撮影画面の略全体を視野としている。図3に示すように本実施形態では、受光視野内を7列×5行の35分割としている。35分割された各測光領域はPD1〜PD35と呼ぶこととする。受光センサー部以外に信号増幅部や信号処理用の周辺回路などが同一チップ上に集積回路として作り込まれることは周知である。
【0014】
ピント板21、ペンタプリズム22、接眼レンズ23によってファインダー光学系が構成される。AEセンサー26には主ミラー13によって反射されてピント板21によって拡散された光線のうち光軸外の一部が入射する。
【0015】
図4はAFセンサー20等を有する焦点検出手段による撮影画面内の焦点検出領域と35分割されたAEセンサー26の測光領域との対応位置関係を表した図である。本例では撮影画面内の焦点検出領域をS0からS2までの3点の例とし、焦点検出領域S0はAEセンサー26の測光領域PD18に対応した位置である。さらに、図示のように焦点検出領域S1はAEセンサー26の測光領域PD16に対応した位置であり、焦点検出領域S2はAEセンサー26の測光領域PD20に対応した位置であるものとする。なお、図2ないし4で示したAEセンサー26の測光領域の数や焦点検出領域の数はあくまで例であって、これに限るものではない。
【0016】
図1の説明に戻る。27は撮影レンズ2を取り付けるマウント部、28は撮影レンズ2と情報通信を行うための接点部、29はフラッシュ装置3を取り付けられる接続部である。撮影レンズ2において30a〜30eは撮影レンズ2を構成する各光学レンズ,31は絞り、32はカメラ本体1と情報通信を行うための接点部、33はカメラ本体1に取り付けられるためのマウント部である。
【0017】
フラッシュ装置3において34はキセノン管、35は反射笠、36は集光用のフレネルレンズ、37はキセノン管34の発光量をモニターするためのモニターセンサー、38はカメラ本体1にフラッシュ装置3を取り付けるための取り付け部である。
【0018】
図5は本実施形態におけるカメラ本体1、撮影レンズ2及びフラッシュ装置3の電気回路の構成例を表わすブロック図である。カメラ本体1において41は例えば内部にALU、ROM、RAMやA/Dコンバータ、タイマー、シリアル通信ポート(SPI)等を内蔵したワンチップマイクロコンピュータによる制御部でありカメラ機構等の全体制御を行う。制御部41の具体的な制御フローについては後述する。AFセンサー20及びAEセンサー26は図1等に記載したものと同一である。AFセンサー20及びAEセンサー26の出力信号は、制御部41のA/Dコンバータ入力端子に接続される。
【0019】
42はシャッター駆動部であり制御部41の出力端子に接続されて図1記載のメカニカルシャッター10を駆動する。43は信号処理回路であり制御部41の指示にしたがって撮像素子12を制御して撮像素子12が出力する撮像信号をA/D変換しながら入力して信号処理を行い画像信号を得る。また、得られた画像信号を記録するにあたって、圧縮等の必要な画像処理を行う。44はDRAM等のメモリであり、信号処理回路43が種々の信号処理を行う際のワーク用メモリとして使われたり、後述する表示器47に画像を表示する際のVRAMとして使われたりする。45は第1のモータードライバであり、制御部41の出力端子に接続されて制御され、主ミラー13及び第1の反射ミラー14のアップ・ダウンやメカニカルシャッター10のチャージを行う。47は液晶パネル等で構成されて各種撮影情報や撮像画像を表示する表示器であり、制御部41により点灯制御される。48はレリーズスイッチである。50はフラッシュメモリ又は光ディスク等による記憶部であり撮像された画像信号を記憶する。28は図1に記載した撮影レンズ2との接点部であり、制御部41のシリアル通信ポートの入出力信号が接続される。29は図1に記載したフラッシュ装置を取り付けられる接続部であり、フラッシュ装置3と通信が可能なようにやはり制御部41のシリアル通信ポートの入出力信号が接続される。
【0020】
撮影レンズ2において51は例えば内部にALU、ROM、RAMやタイマー、シリアル通信ポート(SPI)等を内蔵したワンチップマイクロコンピュータによるレンズ制御部である。52は第2のモータードライバでありレンズ制御部51の出力端子に接続されて制御され、焦点調節を行うための第2のモーター53を駆動する。54は第3のモータードライバでありレンズ制御部51の出力端子に接続されて制御され、図1にて記載した絞り31の制御を行うための第3のモーター55を駆動する。56は焦点調節レンズの繰り出し量すなわち被写体距離に関する情報を得るための距離エンコーダーであり、レンズ制御部51の入力端子に接続される。57は撮影レンズ2がズームレンズである場合に撮影時の焦点距離情報を得るためのズームエンコーダーであり、レンズ制御部51の入力端子に接続される。32は図1に記載した接点部であり、レンズ制御部51のシリアル通信ポートの入出力信号が接続される。
【0021】
撮影レンズ2がカメラ本体1に装着されるとそれぞれの接点部28と32とが接続されてレンズ制御部51はカメラ本体の制御部41とのデータ通信が可能となる。カメラ本体の制御部41が焦点検出や露出演算を行うために必要なレンズ固有の光学的な情報や、距離エンコーダー56あるいはズームエンコーダー57に基づいた被写体距離に関する情報または焦点距離情報はレンズ制御部51から制御部41へと出力される。また、カメラ本体の制御部41が焦点検出や露出演算を行った結果求められた焦点調節情報や絞り情報は制御部41からレンズ制御部51へと出力される。そして、レンズ制御部51は焦点調節情報にしたがって第2のモータードライバ52を制御し、絞り情報にしたがって第3のモータードライバ54を制御する。
【0022】
フラッシュ装置3において61は例えば内部にALU、ROM、RAMやA/Dコンバータ、タイマー、シリアル通信ポート(SPI)等を内蔵したワンチップマイクロコンピュータによるフラッシュ制御部である。62はキセノン管34の発光に必要な300V程度の高圧電圧を作りその高圧電圧を充電する機能を有する昇圧部である。キセノン管34及びモニターセンサー37は図1に記載したものと同一である。フラッシュ装置3がカメラ本体1に装着されるとそれぞれの接続部38と29が接続されてフラッシュ制御部61はカメラ本体の制御部41とのデータ通信が可能となる。フラッシュ制御部61はカメラ本体の制御部41からの通信内容にしたがって昇圧部62を制御してキセノン管34の発光開始や発光停止を行うとともに、モニターセンサー37の検出量をカメラ本体の制御部41に対して出力する。
【0023】
続いて図6のフローチャートにしたがってカメラ本体の制御部41の具体的な動作シーケンスについて説明する。不図示の電源スイッチがオンされて制御部41が動作可能となると、図6のS101のステップより実行する。
【0024】
S101では、撮像素子12の露光動作の前に、フラッシュ制御部61に通信して、昇圧部62を動作させてフラッシュの発光に十分となるよう高圧電圧を充電するように指示する。S102では、レンズ制御部51と通信を行ない測距や測光に必要な各種レンズの情報を得る。S103では、AFセンサー20に対して制御信号を出力して、信号蓄積を行う。蓄積が終了するとAFセンサー20に蓄積された信号を読み出しながらA/D変換を行う。さらに読み込まれた各デジタルデータに対してシェーディング等の必要な各種のデータ補正を行う。
【0025】
S104では、焦点検出を行うために必要なレンズ情報等をレンズ制御部51より入力し、これとAFセンサー20から得られているデジタルデータより各焦点検出領域の焦点状態を演算する。さらに焦点を合わせるべき領域をS0〜S2の中から決定する。あらかじめ操作部材などにより指定されている領域があるならばそれにしたがってもよい。決定された領域における焦点状態にしたがって合焦となるためのレンズ移動量を算出し、算出されたレンズ移動量をレンズ制御部51に出力する。これにしたがってレンズ制御部51は焦点調節用レンズを駆動するように第2のモータードライバ52に信号出力して、第2のモーター53を駆動する。これにより撮影レンズは被写体に対して合焦状態となる。焦点調節用レンズを駆動することで距離エンコーダー56の情報が変化するので、各種レンズの情報の更新も行う。
【0026】
S105では、AEセンサー26より35分割された各測光領域PD1〜PD35の信号を読み出しながらA/D変換を行い各測光領域の輝度情報を入力する。さらに必要なレンズ情報等をレンズ制御部51より入力して、入力された各測光領域の輝度情報の補正を行い、各測光領域の輝度情報を得る。
【0027】
S106では、得られた各測光領域の輝度情報より焦点検出部分に対応した測光領域の輝度情報に重み付けをして画面全体の輝度情報を算出する。このようにして算出された画面全体の輝度情報に基づいて撮影に最適な撮像素子12の蓄積時間(すなわちシャッター速度)と絞り値を所定のプログラム線図より決定し表示器47に表示する。シャッター速度又は絞り値の一方が予めプリセットされている場合は、そのプリセット値と組み合わせて最適な露出となる他方の因子を決定する。なお、決定されたシャッター速度と絞り値とのアペックス値に基づく露出値をEVTと呼ぶこととする。
【0028】
EVT=Tv+Av
ここでTvはシャッター速度のアペックス値、Avは絞り値のアペックス値である。
【0029】
S107では、レリーズスイッチ49がオンされるのを待つ。オンされていなければS102に戻る。もしも、レリーズスイッチ49がオンされているとS108のステップへ進む。
【0030】
S108では、AEセンサー26より35分割された各測光領域PD1〜PD35の信号を読み出しながらA/D変換を行い各測光領域の予備発光直前の輝度情報を入力する。各測光領域の予備発光直前の輝度情報をP(i)と呼ぶこととする。続いてフラッシュ制御部61に通信してフラッシュの予備発光を指示する。これによりフラッシュ制御部61はモニターセンサー37の出力信号に基づきキセノン管34が予め定められた予備発光量だけ発光するようにキセノン管34を発光させる。この予備発光が行われている間(予備発光の動作中)の被写体の輝度情報を得るためにAEセンサー26より35分割された各測光領域PD1〜PD35の信号を読み出しながらA/D変換を行い各測光領域の予備発光時輝度情報を入力する。各測光領域の予備発光時輝度情報をH(i)と呼ぶこととする。なお、ここでiは35分割された各測光領域に対応した1〜35のことである。
【0031】
S109では、フラッシュ装置3の本発光量を決定する演算を行う。具体的な演算処理は後に図7のフローチャートにしたがって説明する。
【0032】
S110では、第1のモータードライバ45に制御信号を出力して、第1のモーター46を駆動して主ミラー13及び第1の反射ミラー14を跳ね上げる。続いてS106のステップにて演算された絞り値情報をレンズ制御部51に対して出力する。この情報にしたがってレンズ制御部51は絞り31を駆動するように第3のモータードライバ54に信号出力して、第3のモーター55を駆動する。これにより撮影レンズは絞り込み状態となる。
【0033】
S111では、シャッター駆動部42に対して信号出力を行い、シャッター11を開放状態とする。これにより撮像素子12には撮影レンズ2を介した光束が入射して撮像が可能となる。S106のステップにて演算されたシャッター速度にしたがって撮像素子12の蓄積時間を設定して撮像素子12によって撮像を行うように信号処理回路43に対して指示を出す。またこの撮像タイミングに同期してフラッシュ制御部61に対して発光指示を与える。フラッシュ制御部61は発光指示にしたがって、S109のステップにて演算されたG(Gについては後述する)に対応する発光量となるようにモニターセンサー37の出力信号に基づきキセノン管34を発光させる。これによってフラッシュ装置3の発光を伴った撮像が行われる。撮像が終了するとシャッター駆動部42に対して信号出力を行い、シャッター11を遮光状態とする。これにより撮像素子12に対する撮影レンズ2を介した光束が遮断される。
【0034】
S112では、レンズ制御部51に対して絞り31を開放するように情報出力する。この情報にしたがってレンズ制御部51は絞り31を駆動するように第3のモータードライバ54に信号出力して、第3のモーター55を駆動する。これにより撮影レンズは絞り開放状態となる。さらに、第1のモータードライバに制御信号を出力して、第1のモーター46を駆動して主ミラー13及び第1の反射ミラー14をダウンさせる。
【0035】
S113では、撮像画像情報を撮像素子12からA/D変換しながら読み出して、必要な補正処理や補間処理を行うように信号処理回路43に対して指示を出す。
【0036】
S114では、信号処理回路43に対して指示を出して撮像画像情報に対してホワイトバランス調整を行う。具体的には撮像画像情報において、1画面内を複数分割し、各領域毎の色差信号より被写体の白色領域を抽出する。さらに抽出された領域の信号に基づいて画面全体の赤チャンネル及び青チャンネルのゲイン補正を行いホワイトバランス調整を行う。
【0037】
S115では、ホワイトバランス調整が行われた撮像画像情報を記録ファイルフォーマットに圧縮変換してメモリ44に記憶するように信号処理回路43に対して指示を出す。これで一連の撮影シーケンスが終了する。
【0038】
次に、S109で行うフラッシュ装置3の本発光量を決定する演算処理について図7のフローチャートにしたがって説明する。
【0039】
S151では、AEセンサー26の各測光領域のプリ発光直前の輝度値P(i)(測光値)とプリ発光時の輝度値H(i)(測光値)とから、プリ発光時の反射光分のみの輝度値D(i)(以下、反射光輝度値D(i)とする)を算出する。プリ発光直前の輝度値P(i)とプリ発光時の輝度値H(i)とはそれぞれ圧縮系での値であることより、P(i)とH(i)とのべき乗をとって伸長させてから差分をとり、差分値を対数圧縮することより下式の演算を行う。
【0040】
D(i)=log(2H(i)−2P(i)
ここでiは35分割された各測光領域に対応した1〜35のことである。
【0041】
S152では、AEセンサー26の各測光領域のプリ発光直前の輝度値P(i)とプリ発光時の輝度値H(i)とから、輝度値の比R(i)を演算する。
【0042】
R(i)=H(i)−P(i)
プリ発光直前の輝度値P(i)とプリ発光時の輝度値H(i)とはそれぞれ圧縮系での値であることより、この差分をとることは輝度値の比をとることと等価である。輝度値の比を求める理由は特開2005−275265号公報に記載されているように、35分割されたAEセンサーの各測光領域において輝度値の比の値が一致する領域は被写体までの距離が一致する領域とみなせることによる。
【0043】
S153では、被写体の距離に関する情報から予想される最大反射光量に相当する所定値LVL0及び最小反射光量に相当する所定値LVL1を演算する(第1の演算)。LVL0はS102にてレンズ制御部51から得られる距離エンコーダー56の情報、すなわち被写体距離に関する情報Dとプリ発光時の発光光量に関する情報C2とから、その被写体距離に標準的な反射率の被写体が存在した場合の反射光量を考慮して計算される。LVL0は被写体距離に関する情報D(以下、距離情報Dとする)に基づく被写体距離に標準的な反射率の被写体が存在した場合に想定されるプリ発光時の反射光分のみの輝度値よりも少し高くなるように決める。これは、距離情報Dに基づく被写体距離が実際は多少の誤差を持つことを考慮して、その誤差分程度LVL0を高くしておき、標準的な反射率の被写体におけるプリ発光時の反射光分のみの輝度値がLVL0よりも高くならないようにするためである。
【0044】
LVL0=−log(D)×2+C2
一方、LVL1はLVL0に対してC3を減じて決定される。C3は標準的な反射率の被写体のプリ発光時の反射光分のみの輝度値がLVL1を下回らないように、距離情報Dの誤差などを考慮して決定される。
【0045】
LVL1=LVL0−C3
このように距離情報Dから、通常は被写体のプリ発光時の反射光分のみの輝度値が、上限値をLVL0、下限値をLVL1とした所定範囲内に入る前提で以下の本発光量決定のための演算が行われる。
【0046】
なお、レンズ交換可能な一眼レフタイプのカメラの場合には、装着されたレンズによっては距離エンコーダー56を持っていないために、距離情報Dは得られないといったこともある。その場合の所定範囲の上限値LVL0と下限値LVL1の算出方法を以下に記す。
【0047】
まず、LVL0は撮影レンズの焦点距離情報に基いて図8に示すtable1を参照して決定する。
【0048】
LVL0=table1(f)
例えば、撮影レンズの焦点距離が28mmであれば、0.5mの距離を被写体の存在している距離(想定距離)として、距離情報Dが得られる場合と同様の考え方に基づいて、LVL0を決定する。一般的に、焦点距離が28mmの状態で撮影を行う場合は0.5mよりも近距離の被写体を主被写体にして撮影する頻度は極めて低いと考えられ、ほとんどの場合に実際のプリ発光時の反射光分のみの輝度値としてはLVL0よりも低くなる。以下同様の考え方に基づいて、焦点距離50mmの撮影レンズであれば0.8mの距離を被写体の存在している距離としてLVL0を設定し、図8のtable1は構成されている。なお、本実施形態では、図8に示すように、撮影レンズの焦点距離をある程度のステップで区切ってLVLOの対応付けを行っているが、焦点距離による関数式を用いてLVLOを算出しても構わない。
【0049】
一方、距離情報Dが得られない場合の所定範囲の下限値LVL1は上限値LVL0からC1を減じて算出される。C1は距離情報Dが得られる場合と同様の考え方に基づいて決定される。例えば焦点距離が50mmの状態で撮影を行う場合は6.4mよりも遠距離の被写体を主被写体にして撮影する頻度は極めて低いと考えられる。そのため、LVL0を決定する際の距離0.8mの場合に対して6.4mは被写体からの反射光は6段低くなるので、C1は6とする。
【0050】
LVL1=LVL0−C1
なお、LVL0とLVL1はともに圧縮系での値である。
【0051】
S154では、現在装着されている撮影レンズ2が距離エンコーダー56を持たないタイプかどうかを判別する。これはS102のステップで入手した各種レンズ情報の中に距離情報Dが含まれていたかどうかにより判別される。距離情報Dが無かった場合はS155へ進む。
【0052】
S155では、S151のステップで演算した各測光領域の反射光輝度値D(i)の値のうち値が大きいもの上位n個の平均値を演算する。nの値はAEセンサー26の分割数に対して概ね20%程度以上の面積比率となるように、その値を例えば10と予め決めておく。これは、ガラスや鏡面といった高反射体によるプリ発光の正反射により、反射光輝度値D(i)が限られた一部の測光領域のみ異常に高くなっている状況では、下記のS157のステップで説明する所定値LVL0の再演算を行うのは好ましくないからである。演算された上位n個(所定個数)の平均値をMNRと呼ぶこととする。
【0053】
S156では、演算されたMNRとS153のステップで演算された所定値LVL0との大きさを次式にしたがって比較する。
【0054】
MNR>LVL0+C10
このステップに進んでくる場合は、S154のステップで判定されたように、現在装着されている撮影レンズ2が距離エンコーダー56を持たない場合である。この場合はS153のステップでLVL0の初期値は撮影レンズ2の焦点距離情報に基いて図8に示すtable1を参照して決定されている。
【0055】
ここでC10は経験則的に決める調整値で、例えば所定値LVL0に対して1段を超えてMNRが大きいと判定する場合にC10を1とする。MNRがLVL0+C10よりも大きいと判別されたならばS157へ進む。
【0056】
S157では、MNRの値に基づいて下記の演算式により所定値LVL0を再演算する(第2の演算)。
【0057】
LVL0=MNR×C11+C12
ここで、LVL0+C10よりもMNRが大きいことの意味を説明する。このような状態となるのは、AEセンサー26の測光領域の多くの領域において、焦点距離に基づく想定距離よりも実際の主被写体の距離が近い場合である。すなわち、撮影者が主被写体にかなり近づいて撮影している可能性が高いことを意味する。図8に示すそれぞれの焦点距離に基づく想定距離は、その焦点距離の状態で撮影を行う場合に主被写体が存在する可能性が相対的に高い距離に設定しているため、撮影者の意図によっては想定距離よりも近い距離にいる被写体を主被写体にして撮影する場合もあり得る。
【0058】
このような状態では、S158以下のステップにて本発光量を決めると主被写体を含む測光領域の重み付けが低くなり、適正な発光量とならないため、本ステップでMNRの値に基づいて所定値LVL0を再演算する。このステップで再演算された所定値LVL0はS153のステップで演算された値よりも大きな値となる。ここでC11及びC12は経験則的に決める調整値で、例えばC11の値を1としC12の値を0とすれば、MNRの値と等しい値がLVL0として設定されることになる。
【0059】
S158では、35分割の測光領域の中から反射光輝度値D(i)が所定範囲内(上限値LVL0と下限値LVL1との間)に入っている領域を抽出する。これにより、ガラスや鏡面といった高反射体からの正反射により反射光輝度値D(i)が異常に高くなっている領域や、プリ発光が届かないくらい遠く反射光輝度値D(i)が非常に低くなっている領域が除外されて、主被写体が存在しそうな領域が抽出される。
【0060】
S159では、抽出された測光領域の中で一番近距離にある被写体が主被写体である可能性が高いと判断し、プリ発光直前の輝度値P(i)とプリ発光時の輝度値H(i)との比R(i)が最大値となっている領域を基準領域として選択する。その基準領域におけるR(i)の値を基準値baseRと呼び、基準値baseRとR(i)の値が同一の値を示している領域を主被写体領域とする。
【0061】
S160では、i=1〜35の全ての測光領域において輝度値の比R(i)と基準値baseRとの差RR(i)を算出する。
【0062】
RR(i)=baseR−R(i)
輝度値の比R(i)と基準値baseRとはともに圧縮系での値なのでRR(i)は基準領域のR(i)とその他の領域のR(i)との比を算出していることになる。このRR(i)の値が小さくなる領域というのは、主被写体領域に存在する被写体と略等しい距離の被写体が存在する領域と見なすことができる。一方で、RR(i)の値が正の方向に大きくなる領域というのは、主被写体領域に存在する被写体よりも遠い被写体が存在する領域と見なすことができる。逆に、RR(i)の値が負の方向に大きくなる領域というのは、主被写体領域に存在する被写体よりも近い被写体が存在する領域と見なすことができる。
【0063】
S161では、i=1〜35の全ての測光領域において算出されたRR(i)に応じて重み付け係数W(i)を決定する。具体的には各測光領域のRR(i)の値より図9に示したtable2よりW(i)を求める。
【0064】
W(i)=table2(RR(i))
table2によれば、RR(i)の値が基準値baseRとなった領域に重み付け上の最大値12がW(i)として与えられ、RR(i)の値が基準値baseRと同一またはごく近い値となった領域程W(i)は高い値が与えられる。このような領域は主被写体領域または主被写体と略等しい距離の被写体が存在すると見なしているからである。RR(i)値の絶対値が0から大きくなるにしたがってその領域に与えられる重み付け係数W(i)は徐々に小さくなるが、これは主被写体とは異なる被写体が存在する領域である可能性が高くなるからである。
このように、各測光領域に存在する被写体までの距離に応じて重み付け係数を与えて次ステップ以降による本発光量演算を行うことで、主被写体に対して適正な本発光量を演算することができる。また、撮影毎に画面内での主被写体位置が移動している場合や同一シーンを少しだけ構図を変えて撮影した場合などにおいても、ほぼ同様な本発光量が演算されて1枚毎に異なる本発光量になることを防止できる。
【0065】
S162では、i=1〜35の全ての測光領域の被写体の反射光の重み付け演算を行う。
【0066】
AVE=Σ(D(i)×W(i))/ΣW(i)
この重み付け演算により、主被写体領域及び主被写体領域に存在する被写体と略等しい距離の被写体が存在する領域程重み付けが大きくなった画面全体の反射高輝度値D(i)の平均値AVEが算出される。
【0067】
S163では、S106で決定されているEVTとS162で演算されたAVEから本発光の発光量Gを演算する。
【0068】
G=EVT−AVE
Gはプリ発光時の発光量に対する本発光の相対値となる。
【0069】
Gの値は制御部41からフラッシュ制御部61に通信により送られて、S111のステップにてこれに従った発光量で本発光が行われる。
【0070】
以上のように、装着した撮影レンズから被写体距離に関する情報が得られない場合、複数の測光領域の中から重み付け係数を決定する際の基準となる領域を決定するための条件をプリ発光時の測光結果に基づいて変更している。具体的には、複数の測光領域の中から重み付け係数を決定する際の基準となる領域を抽出する際にプリ発光時の反射光分の輝度値が所定範囲内である領域の中から抽出するが、そのときの所定範囲をプリ発光時の測光結果に基づいて変更している。さらに具体的には、複数の測光領域の中でプリ発光時の反射光分の輝度値が大きい領域の上位n個の輝度値の平均値が前述した所定範囲の上限値に基づく閾値より大きい場合、閾値以下の場合よりも所定範囲の上限値を大きくしている。
【0071】
このようにすることで、装着した撮影レンズから被写体距離に関する情報が得られない場合であっても、主被写体に対して重み付けが大きくなるように複数の測光領域の重み付け係数を適切に決定することができ、適切な本発光量を演算することができる。
【0072】
(第2の実施形態)
第1の実施形態のS109、すなわち図7のフローチャートで説明したフラッシュの本発光量を決定する演算処理については同様な効果を得る実施形態はこれに限るものではない。第2の実施形態として図10のフローチャートにしたがって説明する。なお、第2の実施形態におけるその他の構成及び各種処理は第1の実施形態と同様のため説明は省略する。
【0073】
図10のフローチャートにおいて、S251〜S254のステップは、図7のフローチャートのS151〜S154のステップの処理と同様であるため、説明は省略する。
【0074】
S102のステップで入手した各種レンズ情報の中に距離情報Dが含まれていない場合はS255へ進む。S255では、S251のステップで演算した各測光領域の反射光輝度値D(i)の値がS253のステップで演算した所定値LVL0を超えている領域数をカウントする。カウント数をRMと呼ぶことにする。
【0075】
S256では、カウントされたRMの値が所定値NL0よりも大きいかどうかを判定する。NL0の値はAEセンサー26の分割数に対して概ね20%程度以上の面積比率となるように、その値を例えば10と予め決めておく。これは、ガラスや鏡面といった高反射体によるプリ発光の正反射により、反射光輝度値D(i)が限られた一部の測光領域のみ異常に高くなっている状況では、S257のステップで説明する所定値LVL0の再演算を行うのは好ましくないからである。カウント数RMが所定数NL0よりも大きいと判別されたならばS257へ進む。
【0076】
S257では、S255のステップにて所定値LVL0を超えていると判定された各測領域の反射光輝度値D(i)の値の平均値MRMの値に基づいて下記の演算式により所定値LVL0を再演算する。
【0077】
LVL0=MRM×C13+C14
ここで、所定値LVL0よりも反射光輝度値D(i)の値が大きい測光領域の数が所定数NL0よりも多いことの意味を説明する。このような状態となるのは、AEセンサー26の測光領域の多くの領域において、焦点距離に基づく想定距離よりも実際の主被写体の距離が近い場合である。すなわち、撮影者が主被写体にかなり近づいて撮影している可能性が高いことを意味する。図8に示すそれぞれの焦点距離に基づく想定距離は、その焦点距離の状態で撮影を行う場合に主被写体が存在する可能性が相対的に高い距離に設定しているため、撮影者の意図によっては想定距離よりも近い距離にいる被写体を主被写体にして撮影する場合もあり得る。
【0078】
このような状態では、S258以下のステップにて本発光量を決めると主被写体を含む測光領域の重み付けが低くなり、適正な発光量とならないため、本ステップでMRMの値に基づいて所定値LVL0を再演算する。このステップで再演算された所定値LVL0はS253のステップで演算された値よりも大きな値となる。ここでC13及びC14は経験則的に決める調整値で、例えばC13の値を1としC14の値を0とすれば、MRMの値と等しい値がLVL0として設定されることになる。
【0079】
以下、S258〜S263のステップは、図7のフローチャートのS158〜S163のステップの処理と同様であるため、説明は省略する。
【0080】
以上のように、装着した撮影レンズから被写体距離に関する情報が得られない場合、複数の測光領域の中から重み付け係数を決定する際の基準となる領域を決定するための条件をプリ発光時の測光結果に基づいて変更している。具体的には、複数の測光領域の中から重み付け係数を決定する際の基準となる領域を抽出する際にプリ発光時の反射光分の輝度値が所定範囲内である領域の中から抽出するが、そのときの所定範囲をプリ発光時の測光結果に基づいて変更している。さらに具体的には、複数の測光領域の中でプリ発光時の反射光分の輝度値が所定範囲の上限値を超える領域の数をカウントし、カウント数が所定数より大きい場合、所定数以下の場合よりも所定範囲の上限値を大きくしている。
このようにすることで、装着した撮影レンズから被写体距離に関する情報が得られない場合であっても、主被写体に対して重み付けが大きくなるように複数の測光領域の重み付け係数を適切に決定することができ、適切な本発光量を演算することができる。
なお、上記の2つの実施形態では、複数の測光領域の中から主被写体領域の候補となる領域を抽出する際にプリ発光時の反射光分の輝度値が所定範囲内である領域の中から抽出する構成であるが、反射光分の輝度値が所定値以下の領域を抽出する構成でもよい。その場合、所定範囲の上限値を変更する場合と同様にして、プリ発光時の測光結果に基づいて所定値を初期値から変更すればよい。
【0081】
また、上記の2つの実施形態では、プリ発光時の反射光分の輝度値が所定範囲内である領域の中から抽出する際の所定範囲の上限値を、プリ発光時の測光結果に基づいて変更する構成であるが、所定範囲の下限値も変更する構成であってもよい。例えば、所定範囲の上限値を大きくするのに伴って、上限値の増加分に応じて下限値も大きくする、すなわち、所定範囲全体を値が大きくなる方にシフトさせるようにしてもよい。このようにプリ発光時の測光結果に基づいて所定範囲全体をシフトさせることで、主被写体領域の候補となる領域をより正確に抽出することができる。
【0082】
また、上記の2つの実施形態では、プリ発光直前の輝度値とプリ発光時の輝度値とに基づいてプリ発光時の反射光分の輝度値を算出しているが、プリ発光直前の輝度値の輝度値の代わりにプリ発光終了直後の輝度値を用いても構わない。あるいは、プリ発光直前の輝度値が無視できる程度であれば、プリ発光時の輝度値をプリ発光時の反射光分の輝度値とみなしても構わない。
【0083】
また、上記の2つの実施形態では、主被写体領域の候補となる領域を抽出する際にプリ発光時の反射光分の輝度値が所定範囲内である領域の中から抽出する構成であるが、このような抽出処理以外の処理を行う場合にも本発明を適用できる。例えば、複数の測光領域の中でプリ発光時の反射光分の輝度値が所定範囲内でない領域の重み付けを、プリ発光時の反射光分の輝度値が所定範囲内である領域の重み付けよりも低くする場合に、本発明を適用するようにしてもよい。あるいは、複数の測光領域の中でプリ発光時の反射光分の輝度値が所定範囲内でない領域を本発光量の演算に用いない場合に、本発明を適用するようにしてもよい。
【0084】
また、上記の2つの実施形態では、被写体距離に関する情報を装着した撮影レンズから取得する構成を説明したが、その他の方法で被写体距離に関する情報を取得する構成であっても本発明を適用できる。例えば、撮像した画像から主被写体の存在する領域を検出し、検出された領域の大きさに基づいて主被写体の距離を演算するような構成において、主被写体の存在する領域が検出できない場合に本発明を適用するようにしてもよい。
【0085】
また、上記の2つの実施形態において、カメラの制御部が実行した本発明に関わる処理のうちの少なくとも一部をフラッシュ制御部が実行する構成であっても構わない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光装置を発光させた撮影が可能な撮像装置であって、
複数の測光領域を有し、当該複数の測光領域それぞれの測光値を取得する測光手段と、
前記撮像装置から被写体までの距離に関する情報を取得する取得手段と、
前記複数の測光領域に対する重み付け係数を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された重み付け係数にしたがって前記複数の測光領域それぞれの測光値に対して重み付けを行い、前記発光装置の本発光量を演算する演算手段と、を有し、
前記決定手段は、前記取得手段により前記情報を取得できない場合、前記複数の測光領域の中から前記重み付け係数を決定する際の基準となる領域を決定するための条件を、前記発光装置をプリ発光させたときの前記複数の測光領域それぞれの測光値に基づいて設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記複数の測光領域のうち、前記発光装置をプリ発光させたときの測光値に基づく値が所定値以下の領域の中から前記基準となる領域を決定するものであって、前記発光装置をプリ発光させたときの前記複数の測光領域それぞれの測光値に基づいて前記所定値を変更することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記複数の測光領域の中の、前記所定値よりも前記発光装置をプリ発光させたときの測光値に基づく値のほうが大きい領域の数が所定数より多い場合、当該所定数以下の場合よりも前記所定値を大きくすることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記発光装置をプリ発光させたときの前記複数の測光領域それぞれの測光値に基づく値のうち、大きいほうから所定個数の平均値が前記所定値に基づく閾値よりも大きい場合、当該閾値以下の場合よりも前記所定値を大きくすることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記測光値に基づく値は、前記発光装置をプリ発光させたときの測光値と前記発光装置を発光させていないときの測光値との差分に基づく値であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記所定値の初期値は、前記取得手段により前記情報を取得できる場合、当該情報に基づいて設定され、前記取得手段により前記情報を取得できない場合、前記撮像装置の焦点距離に基づいて設定されることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記取得手段により前記情報を取得できる場合、前記所定値を前記発光装置をプリ発光させたときの前記複数の測光領域それぞれの測光値に基づいて設定しないことを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
複数の測光領域を有し、当該複数の測光領域それぞれの測光値を取得する測光手段を備え、発光装置を発光させた撮影が可能な撮像装置の制御方法であって、
前記撮像装置から被写体までの距離に関する情報を取得する取得ステップと、
前記複数の測光領域に対する重み付け係数を決定する決定ステップと、
前記決定ステップで決定された重み付け係数にしたがって前記複数の測光領域それぞれの測光値に対して重み付けを行い、前記発光装置の本発光量を演算する演算ステップと、を有し、
前記決定ステップは、取得ステップで前記情報を取得できない場合、前記複数の測光領域の中から前記重み付け係数を決定する際の基準となる領域を決定するための条件を、前記発光装置をプリ発光させたときの前記複数の測光領域それぞれの測光値に基づいて設定することを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−155149(P2012−155149A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14385(P2011−14385)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】