説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】動画撮影を行う場合に、照明用のライトの点灯時での動画の品質の低下を防止する。
【解決手段】被写体像を撮像する撮像部103と、撮像部により撮像した動画像を記録するための動画記録部113と、被写体を照明するためのライトの照射を制御するライト制御部106と、ライトが消灯している状態から点灯した直後には、ライトが点灯する前に撮像部に対する露出補正処理を解除するとともに撮像部が安定した後に動画像を記録するように撮像部と動画記録部とを制御する制御部102とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置におけるビデオライトの点灯/消灯制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、夜景など暗いシーンの静止画撮影ではストロボなどの発光装置を発光させることで被写体照度を上げ、背景と被写体両方を撮影することが可能である。ただし、このストロボは照度は高いが閃光発光のため、動画撮影のように常時被写体を照らす必要がある場合は効果的でない。そこで動画撮影において背景と被写体を同時に撮影するために、ビデオライトを点灯させ被写体の照度を上げ撮影する撮像装置がある。例えば、特許文献1には、周辺の明るさを判断し、明るさが一定以下の場合に照明手段を点灯させるとともに照明手段の光量を制御するセンサカメラが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−318673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のカメラのように、周囲の明るさを判断して照明手段の光量を制御するだけでは、ライト点灯による露出変動に伴う輝度の収束状況が記録され動画品質を損なってしまうことがある。例えば、静止画モードからワンボタンで動画記録が可能なカメラにおいて、照明手段の自動制御が動画記録とともに実行される場合に起こり得る。その様子を図4を用いて説明する。静止画モード時には表示部に撮像素子で周期的に撮像された画像、いわゆるライブビュー画像が表示される。このライブビュー画像は、例えば、図4(a)のように周囲が暗い夜景の中に人物が存在するシーンにおいても人物が見えやすいように露出補正した画像が表示される。このような露出補正された状態において動画記録の開始が指示された場合、動画記録の開始に伴って周囲の明るさに対応して照明手段を発光させることになる。しかしながら、このときライブビュー画像を明るくするための露出補正が維持されたままだと、図4(c)のように人物が必要以上に明るくなってしまう。その後、必要以上に明るくなった人物の輝度が適正になるように露出を収束させていくことになるが、このような露出変動は動画記録の開始指示後に生じるため、図4(c)〜(e)は動画としてすべて記録され、動画の品質の低下につながる。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、動画撮影を行う場合に、照明用のライトの点灯時での動画の品質の低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる撮像装置は、被写体像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像した動画像を記録するための動画記録手段と、被写体を照明するための照明装置を制御する照明制御手段と、前記照明装置が消灯している状態から点灯した直後には、前記照明装置が点灯する前に前記撮像手段に対する露出補正処理を解除するとともに前記撮像手段の露出が安定した後に動画像を記録するように前記撮像手段と前記動画記録手段とを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、動画撮影を行う場合に、照明用のライトの点灯時での動画の品質の低下を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係わる撮像装置のブロック図。
【図2】一実施形態の撮像装置の動作を示すフローチャート。
【図3】本発明の一実施形態における効果を示した図。
【図4】従来技術による弊害を示した図。
【図5】ライトの点灯と消灯の動作を示すフローチャート。
【図6】消灯輝度を上げる動作を示した図。
【図7】ライト点灯によるハンチング弊害を示した図。
【図8】本発明の一実施形態におけるハンチング対策効果を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の撮像装置の一実施形態であるデジタルカメラの機能構成を示すブロック図である。
【0010】
操作部101は、本実施形態のデジタルカメラの操作者がデジタルカメラに対して各種の指示を入力するために操作するスイッチやボタンなどにより構成されている。操作部101の中には、シャッタースイッチや、タッチセンサ(表示装置をタッチすることで操作が可能となるもの)も含む。
【0011】
制御部102は、図1に示す各部の動作を制御するものであり、操作部101からの指示に応じて各部を制御する。撮像素子103は、被写体像を撮像するものであり、レンズ108a、露出機構109aを介して入射される光を受け、その光量に応じた信号を出力する。
【0012】
A/D変換部104は、撮像素子103から出力されたアナログ画像信号に対して、サンプリング、ゲイン調整、A/D変換等を行い、デジタル画像信号として出力する。画像処理部105は、A/D変換部104から出力されたデジタル画像信号に対して各種の画像処理を行い、処理済みのデジタル画像信号を出力する。例えば、A/D変換部104から受けたデジタル画像信号を、YUV画像信号に変換して出力する。
【0013】
ライト処理部106は、制御部102より取得した輝度値から被写体を照明するライトの点灯/消灯判断(照射判断)を下し照明制御を行う。また、ライトが点灯状態か消灯状態かを制御部102へと伝える。ライト部107は、LEDなど長時間連続発光が可能な光源(以下、ライトと呼ぶ)を有し、ライト処理部106から指示を受け、ライトを点灯/消灯させる。EF処理部110は、フラッシュ部111の発光量の算出及びフラッシュ部111の発光制御を行う。フラッシュ部111は閃光発光が可能な光源(以下、フラッシュと呼ぶ)を有し、EF処理部110より発光指示を受け、フラッシュを発光させる。
【0014】
AF処理部108は、制御部102からの指示に従ってレンズ108aを駆動させて焦点調節を行う。
【0015】
AE処理部109は、制御部102からの指示に従って露出機構109aを駆動させて露出制御を行う。なお、AE処理部109は、制御部102からの指示に従って、撮像素子のシャッター速度(電荷蓄積時間)やA/D変換部104のゲイン(撮影感度)等も制御して露出制御を行う。
【0016】
表示部115は、液晶や有機ELなどにより表示画面が構成されており、設定露出情報や現在のライブビュー画像などを表示する。フォーマット変換部112は、画像処理部105から出力されたデジタル画像信号(画像データ)のフォーマットをJPEGなどのフォーマットに変換し、画像記録部113に出力するものである。画像記録部113は、フォーマット変換部112から受けたフォーマット変換済みの画像データを、デジタルカメラ内の不図示のメモリや、デジタルカメラに挿入されている外部メモリなどに記録する処理を行う。
【0017】
外部接続部114は、外部機器を接続するためのもので、接続された外部機器に画像データの送信を可能にする。
【0018】
次に、本実施形態のデジタルカメラを用いて撮像を行う場合の動作について、図2及び図3を参照して説明する。
【0019】
<処理の流れ>
デジタルカメラの操作者が、操作部101に含まれている電源スイッチをオンにすると、制御部102はこれを検知し、デジタルカメラを構成する各部に電源を供給する。ここで、図2に示すフローチャートが開始される。デジタルカメラを構成する各部に電源が供給されるとシャッターが開くので、撮像素子103には、レンズ108a、露出機構109aを介して光が入光することになる。すなわち、ライブ画像に露光が行われる(ステップS201)。露光を行い撮像素子に蓄積された電荷を読み出し、A/D変換部104にアナログ画像信号として出力する(ステップS202)。
【0020】
A/D変換部104は、撮像素子103から出力されたアナログ画像信号に対して、サンプリング、ゲイン調整、A/D変換等を行い、デジタル画像信号として出力する。画像処理部105は、A/D変換部104から出力されたデジタル画像信号に対して各種画像処理を行い、処理済みのデジタル画像信号を出力する。またここでは画像解析のためにブロック分割処理を並行して行い、各ブロックにおける色相、彩度、輝度を取得する(ステップS203)。
【0021】
次に、得られた各ブロックの輝度を制御部102へ伝達し、制御部102において、各ブロックの輝度に所定の条件に基づいて決定された重み付けをした加重平均演算を行って画面内の輝度値であるBv値を取得する。そして、制御部102は取得したBv値に基づいて露出制御値を演算する。さらに、図3(a)のように周囲が暗い夜景の中に人物が存在するシーンの場合には、図3(b)のように人物を見えやすくするために、露出制御値を補正する露出補正値の演算も行う(ステップS204)。AE処理部109は、露出補正値を反映した露出制御値に基づいて露出制御を行い、被写体の輝度値を所望の輝度値に収束させる(ステップS205)。このステップS201〜S205は、常時フィードバック処理にて行っている。その後、制御部102は動画ボタンが押下されたか否かを判定する(ステップS206)。
【0022】
この状態で動画ボタンが押された場合、制御部102は、ステップS204で取得したBv値からライトの点灯及び消灯の判断を行う(ステップS207)。なお、ライトの点灯および消灯の判断に関しては後に詳細に述べることとする。
【0023】
ライト点灯と判断された場合、制御部102は、それまで反映させていた露出補正値を反映させないようにAE処理部109に指示する。AE処理部109は、制御部102からの指示を受けて、図3(c)のように露出補正処理を解除して露出制御を行う(ステップS209)。露出補正処理の解除後、制御部102は、ライトを点灯させるようにライト処理部106に指示し、ライト処理部106は制御部102からの指示を受けて、図3(d)のように、ライトを点灯させる(ステップS210)。そして、露出補正処理を解除しライトを点灯させた状態で露光を行い取得された画像データの輝度値に基づいて露出制御を行い、所望の輝度値に収束させる(ステップ211)。
【0024】
このとき、ステップS205において所望の輝度値に収束させる場合と収束速度を異ならせるようにする。ステップS205では、撮影前のライブビュー画像表示中(以下、ライブビュー中とも呼ぶ)に輝度値を収束させており、ライブビュー画像のちらつきが目立たないような収束速度にしている。これは、急激に輝度値を収束させようとするとライブビュー画像間の輝度変化が大きくなるからである。一方、後述するように、ステップS212ではステップS211で輝度値を収束させてから動画記録を開始させる。そのため、ステップS211では、動画ボタンが押下されてから動画記録を開始させるまでの時間を短縮させることを優先して、図3(e)のように輝度値の収束速度をステップS205に比べて速くする。また、動画記録中に露出変動があった場合、静止画モードにおけるライブビュー中と同様にちらつきが目立たないような収束速度にするので、ステップS211における収束速度は動画記録中の収束速度よりも速い。そして、制御部102は、図3(f)のように、輝度値が安定した状態で動画記録を開始させる(ステップS212)。このとき、輝度値が安定した状態か否かは、制御部102が画像データに基づいて判断すればよい。あるいは、ライト点灯直後の輝度値から輝度値が安定するまでに要する時間を想定して設定した時間が経過してから動画記録を開始させてもよい。
【0025】
その後、収束露出にて得られた動画像に対して各種の画像処理を行い、処理済みのデジタル画像信号を出力する。フォーマット変換部112は、画像処理部105から出力されたデジタル画像信号(画像データ)のフォーマットをMPEGなどのフォーマットに変換し、画像記録部113に出力する。画像記録部113は、フォーマット変換された画像データを所定のメモリに記録する処理を行う。
【0026】
次に、ステップS207におけるライト点灯および消灯の判断に関して説明する。図5は、ライトの点灯及び消灯の制御のフローチャートである。
【0027】
図5において、まず画面内の輝度値を表すBv値を取得する(ステップS601)。Bv値の演算はステップS204で行われる。そして、現在ライトが消灯状態か否かを判定し(ステップS602)、消灯状態でかつ取得したBv値がライト点灯Bv値以上の場合はそのまま消灯状態を継続させると判断する(ステップS611)。Bv値がライト点灯Bv値より低い場合、ライトを点灯させると判断する(ステップS604)。ここまでが、ステップS207におけるライトの点灯及び消灯の判断に相当する。
【0028】
以降では、その他の状況におけるライトの点灯及び消灯の判断も含めて説明する。
【0029】
ステップS604の判断に従ってライトを点灯させた後、輝度値の収束を待ち(安定レベルに落ち着くのを待ち)、露出安定後の画像データから収束輝度Bvlを取得する(ステップS605)。
【0030】
この収束輝度Bvlが、デフォルトの消灯Bv値(消灯条件)に対し、そのシーンにおける輝度ばらつきに対するマージンとして設定した値であるConvergeBvTHと比較する(ステップS606)。収束輝度BvlがConvergeBvTH以下である場合(図6(a))には、消灯Bv値をデフォルトのままにする(ステップS610)。一方、収束輝度Bvlが消灯Bv値に切迫すると判断された場合(Bvl>ConvergeBvTH:図6(b))、図6(c)に示すように、消灯Bv値を収束輝度から一定輝度分上げた値に設定する(ステップS607)。ステップS607により消灯Bv値の上げることで消灯Bv値が高くなりすぎた場合、実際に消灯して欲しいシーンで消えなくなることが考えられる。そこで、収束輝度から一定輝度分上げた値であるLight_offBvが上限値であるoffBvUpTHを超えるか否かを判定する(ステップS608)。Light_offBvが上限値であるoffBvUpTHを超える場合は、offBvUpTHをLight_offBvに設定する(ステップS609)。
【0031】
ステップS602においてライトが点灯していると判定された場合、Bv値が消灯Bv値より高いか否かを判定する(ステップS612)。Bv値が消灯Bv値より高くない場合はそのままライトの点灯を継続させると判断する(ステップS615)。Bv値が消灯Bv値より高い場合は、ライトを消灯させるとは判断し、消灯Bv値をデフォルト値に戻す(ステップS614)。
【0032】
これにより、図7に示すように、ライト点灯により被写体が露出オーバーとなり再度消灯してしまうというハンチングを抑えることができ、図8に示すような良好なライト点灯が可能となる。
【0033】
以上のように、静止画モードからワンボタンで動画記録を開始させる際に、動画記録のためにライトを点灯させる場合であっても、ライト点灯による露出変動が安定してから動画記録を開始させるので、動画の品質の低下を防止することができる。
【0034】
また、露出補正処理を解除させてからライトを点灯させるとともに、ライト点灯直後の輝度値の収束速度を静止画モードにおけるライブビュー中の収束速度よりも速くすることで、動画の品質の低下を防止しつつ迅速に動画記録を開始させることができる。
【0035】
また、ライトを消灯状態から点灯状態に切り替えることによる被写体の輝度値の変化に合わせてライトを消灯させると判断する閾値を変更させることによって、ハンチングを防止することができる。
【0036】
なお、上記の実施形態では、静止画モードにおいて動画ボタンが押下された場合について説明したが、ライブビュー中に露出補正を行っていて、その状態から動画撮影を開始する構成であれば、静止画モードに限定されるものではない。
【0037】
また、ライト処理部106及びライト部107は、デジタルカメラに着脱可能な外付けの照明装置であってもよいし、ライト部107の光源をフラッシュ部111の光源として用いる構成であってもよい。
【0038】
また、ライト処理部106やフラッシュ処理部110で実行する処理を制御部102が実行する構成であっても構わない。
【0039】
また、動画記録前のライブビュー中に露出補正を行う場合に、露出補正値ステップS209の処理を省略して、収束速度のみを変更させてもよい。
【0040】
また、動画記録開始直前の輝度値の収束時において、通常よりも収束速度を速くすることで収束時間を短縮することはできるが、通常の速度であっても十分に短い収束時間で収束できるのであれば収束速度を速くしなくても構わない。
【0041】
また、動画記録前のライブビュー中に露出補正を行なっていても、ライトの点灯による露出変動が小さい、すなわちライトを点灯しても被写体の輝度が所定の値よりも高くならない場合は、露出補正処理を解除しなくても構わない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像した動画像を記録するための動画記録手段と、
被写体を照明するための照明装置を制御する照明制御手段と、
前記照明装置が消灯している状態から点灯した直後には、前記照明装置が点灯する前に前記撮像手段に対する露出補正処理を解除するとともに前記撮像手段の露出が安定した後に動画像を記録するように前記撮像手段と前記動画記録手段とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記露出補正処理を解除した状態における前記露出の収束速度を、前記露出補正処理を解除していない状態における前記露出の収束速度よりも速くすることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記照明装置を照射しても被写体の輝度が所定の値よりも高くならない場合に前記露出補正処理を解除しないことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ライトが点灯した後の被写体の収束輝度に基づいて、前記ライトの消灯条件を変更することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
被写体像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像した動画像を記録するための動画記録手段と、
被写体を照明するための照明装置を制御する照明制御手段と、を備えた撮像装置の制御方法であって、
前記照明装置が消灯している状態から点灯した直後には、前記照明装置が点灯する前に前記撮像手段に対する露出補正処理を解除するとともに前記撮像手段の露出が安定した後に動画像を記録するように前記撮像手段と前記動画記録手段とを制御することを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−59011(P2013−59011A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197684(P2011−197684)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】