説明

撮像装置及び撮像方法

【課題】撮像して得た信号からフォーカスの調整状態を簡単かつ良好に検出する。
【解決手段】第1、第2及び第3の色の画素を有する撮像素子で撮像した撮像信号のフォーカス判定領域内の第1、第2及び第3の色の輝度の積分値の各色の比率を、輝度比率算出部115で算出する。そして、算出した輝度の積分値の各色の比率で、撮像信号から得た、フォーカス判定領域内の第1の色の輝度の積分値を正規化部116で正規化する。さらに、その正規化した第1の色の輝度の積分値に対応した案内表示処理を、表示処理部105,117で行う。したがって、撮像した被写体の色がどのような色であっても、安定した輝度の検出状態の表示が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置及び撮像方法に関し、特に撮像時のフォーカス調整の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
放送局用や業務用の撮像装置(ビデオカメラ)においては、制作者の意図を反映したマニュアルフォーカス操作によるフォーカス調整を行うことが多い。このようにマニュアルフォーカス操作を行える撮像装置では、撮影作業者によるフォーカス操作を容易にするために、ビューファインダでフォーカス調整をアシストする表示を行うものがある。例えば、映像信号を構成する輝度信号から高域成分を抽出して輪郭強調信号を生成し、その輪郭強調信号を本線の輝度信号に加算する処理を行っている。このようにすることで、撮像画像中の輪郭を強調した表示が、ビューファインダで行われ、ビューファインダの表示を見た撮影作業者は、輪郭部分のフォーカス調整具合が確認しやすくなる。
【0003】
また、撮像装置で撮像して得た画像のフォーカスの調整状態を、数値やグラフなどで定量的にビューファインダに表示させることで、マニュアルフォーカス調整を行う上でのフォーカスの合焦状態が確認でき、便利である。このようにフォーカスの調整状態を数値などで表示する場合には、例えば、撮像して得た画像の輝度信号の高域成分を検波し、その検波レベルを表示させる。
【0004】
特許文献1には、輪郭部分を協調した画像を、ビューファインダで表示する技術についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−135865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、撮像装置が備える撮像素子は、単板式の場合、画素の色配列をベイヤ配列などの特殊な配列として、高解像度化を図ったものが開発されている。このような特殊な画素配列の撮像素子で撮像して得た撮像信号は、それぞれの色ごとに画素数や配置間隔などが異なる信号であり、各色で同じ条件で輝度成分が検波できない問題がある。したがって、撮像素子が出力する各色の信号の輝度レベルを検波して表示するだけでは、正確なフォーカス調整状態を表示できない問題があった。
【0007】
例えば、ベイヤ配列の撮像素子の場合、緑色の画素は、赤色の画素や青色の画素よりも画素数が多い。このため、各色で同じ条件で輝度成分を検出すると、緑色の物体を撮像したときには、比較的高い輝度成分が検出される。一方、赤色の物体や青色の物体を撮像したときには、緑色の被写体を撮像した場合とフォーカス状態が同じであっても、輝度成分の検出レベルが低くなってしまう。したがって、撮像する被写体の色によって、輝度の検出レベルが変動してしまい、色に依存しない正確なフォーカスの合焦状態の検出は困難であった。従来、色に依存しない正確なフォーカスの合焦状態の検出を行うためには、大規模で複雑な回路が必要であると共に、その大規模な回路を使用した消費電力の大きな処理が必要で、撮像装置として好ましくなかった。
【0008】
なお、ここまでの説明では、マニュアルフォーカス操作によるフォーカス調整時の問題について説明したが、オートフォーカス調整を行う撮像装置で、フォーカスの合焦状態の検出を行う際にも、正確な検出を行うためには、同様の問題があった。
【0009】
本開示の目的は、撮像して得た信号からフォーカスの調整状態を簡単かつ良好に検出できる撮像装置及び撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、第1、第2及び第3の色の画素を有する撮像素子で撮像した撮像信号のフォーカス判定領域内の第1、第2及び第3の色の輝度を個別に積分し、輝度の積分値の各色の比率を算出する処理を行う。そして、撮像信号から得た、フォーカス判定領域内の第1の色の輝度の積分値を、算出した輝度の積分値の各色の比率で正規化する。さらに、その正規化した第1の色の輝度の積分値に対応した案内表示処理を行う。
【0011】
このようにしたことで、ビューファインダなどの画面中に、フォーカス判定領域内の特定の色の輝度の積分値の変動状況が表示される。その表示される積分値が最も高くなるようにフォーカス調整することで、ジャストフォーカス状態が得られる。この場合、特定の色の輝度の積分値を、そのときの輝度の各色の積分値の比率で正規化して、その正規化した積分値を表示に使用しているので、撮像した被写体の色がどのような色であっても、安定した表示が行える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によると、特定の色の輝度の積分値を、そのときの輝度の各色の積分値の比率で正規化した値に基づいて、フォーカス調整状態の表示を行うので、被写体の色に依存しない安定したフォーカス調整状態の表示ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の一実施の形態例による撮像装置の構成を示す図である。
【図2】本開示の一実施の形態例による撮像装置が備える撮像素子の画素配置例を示す説明図である。
【図3】本開示の一実施の形態例による各色成分の輝度レベルの例を示す特性図である。
【図4】本開示の一実施の形態例による表示画面の例を示す説明図である。
【図5】本開示の他の実施の形態例(オートフォーカス調整を行う例)による撮像装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の一実施の形態例を、以下の順序で説明する。
1.撮像装置の構成例(図1)
2.撮像素子の画素配置例(図2)
3.撮像装置での処理と表示の例(図3,図4)
4.オートフォーカスに適用した例(図5)
5.変形例
【0015】
[1.撮像装置の構成例]
本開示の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)の撮像装置の構成を、図1を参照して説明する。
図1は本例の撮像装置の構成を示した図である。
撮像装置100は、撮像素子101aと、その撮像素子101aから撮像信号を読み出す回路からなる撮像部101を備える。撮像装置100には、レンズ201を備えるレンズ装置200が装着される。図1ではレンズ201を1枚のレンズで示してあるが、実際には複数枚(複数群)のレンズで構成される。レンズ装置200は、フォーカス調整を行うためのフォーカスリングを備え、撮影作業者がフォーカスリングを回すことで、フォーカス調整用のレンズの位置が移動し、フォーカスが調整される。
そして、レンズ201を介して撮像面に入射した像光を、撮像部101が備える撮像素子101aで電気的な撮像信号に変換する。
撮像素子101aは、いわゆる単板式と称される1枚の撮像素子であり、その1枚の撮像素子101aの撮像面に、赤色画素と緑色画素と青色画素とが配置してある。撮像素子101aの形式としては、CCDイメージセンサ,CMOSイメージセンサなど各種方式のものが適用可能である。撮像素子101aの画素配列の例については後述する。
【0016】
撮像部101で得た撮像信号を、撮像信号処理部102に供給する。撮像部101が出力する撮像信号は、撮像素子101aから読み出した撮像信号をそのまま出力する、いわゆるRAWデータ(生データ)である。したがって、撮像部101が出力する撮像信号は、赤色画素で得た赤色信号Rと緑色画素で得た緑色信号Gと青色画素で得た青色信号Bとが、撮像素子101aの画素配列に対応して混在した信号である。
なお、撮像装置内の各信号処理系がデジタル化されている場合には、デジタル化されたRAWデータを撮像部101から出力させて、撮像信号処理部102に供給してもよい。
【0017】
撮像信号処理部102は、供給される撮像信号に対して各種処理を施し、適正な撮像信号とする処理を行う。例えばガンマ補正やホワイトバランス調整などの処理を行う。そして、撮像信号処理部102で処理された撮像信号を、画像フォーマット変換部103に供給し、所定フォーマットの画像データに変換する。そして、画像フォーマット変換部103で変換された画像データを、画像信号出力端子104から外部に出力する。
また撮像装置100は、RAWデータ出力端子107を備え、撮像信号処理部102に供給されたRAWデータを、そのままRAWデータ出力端子107から外部に出力させることも可能である。
【0018】
また、画像フォーマット変換部103で、ビューファインダ106で表示するための画像データを得る変換処理を行い、変換された画像データを表示処理部105に供給する。表示処理部105は、供給される画像データを処理してビューファインダ106で表示させる。この場合、後述するフォーカスバー生成部117で生成されたフォーカスバー信号が表示処理部105に供給され、フォーカスバーと称される図形を、ビューファインダ106で表示中の撮像画像に表示する処理が行われる。フォーカスバーの具体的な例については後述する。
【0019】
また、撮像部101が出力する撮像信号(RAWデータ)を、R検波エリア積算部111とG検波エリア積算部112とB検波エリア積算部113とに供給する。
R検波エリア積算部111で、フォーカス検知エリア内の撮像信号に含まれる赤色信号Rの高域の輝度成分を検波し、その検波した輝度値を積分する。G検波エリア積算部112で、フォーカス検知エリア内の撮像信号に含まれる緑色信号Gの高域の輝度成分を検波し、その検波した輝度値を積分する。B検波エリア積算部113で、フォーカス検知エリア内の撮像信号に含まれる青色信号Bの高域の輝度成分を検波し、その検波した輝度値を積分する。なお、後述するように、撮像素子101aの画素配列から決まる輝度成分の帯域が、各色で変動がある場合には、同じ条件となるように処理する。具体的には、後述する図2(a)に示す標準ベイヤ配列の撮像素子101aを使用した場合、G検波エリア積算部112で検波する緑色信号Gは、1画素ごとに間引いた信号とし、他の色の信号R,Bと同じ帯域(画素間隔)の信号とする。
【0020】
R検波エリア積算部111とG検波エリア積算部112とB検波エリア積算部113とでの輝度値の積分は、例えば、撮像部101が撮像する1フレームの撮像信号ごとに、フォーカス検知エリアの信号に対して行う。
フォーカス検知エリアは、撮像装置100の制御部(不図示)により設定される。例えば撮像画面の中央部付近をフォーカス検知エリアとし、そのフォーカス検知エリア内のフォーカス状態を検知する。このフォーカス検知エリアを画面中のどの範囲にするかは、例えばユーザ操作で設定してもよい。
【0021】
それぞれの検波エリア積算部111,112,113で得た積分値を、ピーク最大値選択部114に供給し、最大値となる色の積分値が選択される。そして、ピーク最大値選択部114で選択された色の積分値を、フォーカスバー生成部117に供給する。
【0022】
また、撮像部101が出力する撮像信号を、RGB輝度比率算出部115に供給する。RGB輝度比率算出部115で、フォーカス検知エリア内の撮像信号の赤色信号Rの積分値と、緑色信号Gの積分値と、青色信号Bの積分値とを比較し、各色の積分値の比率を算出する。この比率の算出については、例えば、撮像部101が撮像する1フレームの撮像信号ごとに行う。そして、RGB輝度比率算出部115で算出した比率のデータを、G輝度正規化部116に供給する。
【0023】
また、撮像部101が出力する撮像信号の緑色信号Gを、G輝度正規化部116に供給する。G輝度正規化部116では、フォーカス検知エリア内の緑色信号Gの高域の積分値を算出すると共に、その算出した積分値を、RGB輝度比率算出部115から供給される比率のデータで正規化する。G輝度正規化部116での積分値の算出と正規化処理についても、1フレームごとに行う。
【0024】
次に、G輝度正規化部116での比率のデータに基づいた正規化処理について説明する。比率のデータで、緑色信号Gの積分値が3色の中で最も高い積分値であるときには、G輝度正規化部116で得た緑色信号Gの積分値をそのまま正規化されたデータとする。そして、赤色信号Rの積分値が3色の中で最も高い積分値であるときには、赤色信号Rの積分値と緑色信号Gの積分値との比率に基づいて、緑色信号Gの積分値を正規化する。例えば、赤色信号Rの積分値と緑色信号Gの積分値との比が2:1で、赤成分が緑成分の2倍であるとき、緑色信号Gの積分値を2倍にする正規化を行う。
同様に、青色信号Bの積分値が3色の中で最も高い積分値であるときには、青色信号Bの積分値と緑色信号Gの積分値との比率に基づいて、緑色信号Gの積分値を正規化する。
【0025】
そして、G輝度正規化部116で正規化された緑色信号Gの積分値を、フォーカスバー生成部117に供給する。
フォーカスバー生成部117は、撮像画像のフォーカス状態を示す棒グラフ(バー)を表示させる表示信号を生成させる表示処理を行う。すなわち、フォーカスバー生成部117で、ピーク最大値選択部114で選択された色の積分値と、G輝度正規化部116で正規化された緑色信号Gの積分値とを加算した値に基づいて、棒グラフの長さを設定する。そして、その設定した長さの棒グラフを表示させるための棒グラフ表示信号を生成する。
フォーカスバー生成部117で生成された棒グラフ表示信号を、表示処理部105に供給し、ビューファインダ106に供給する撮像画像の表示信号に、棒グラフ表示信号を重畳し、ビューファインダ106に棒グラフを表示させる。
【0026】
[2.撮像素子の画素配置例]
図2は、撮像部101が備える撮像素子101aの画素配置例を示す。図2において、Rと示した部分が赤色信号Rを得る画素であり、Gと示した部分が緑色信号Gを得る画素であり、Bと示した部分が青色信号Bを得る画素である。図2に示す各画素配列では、図面上の横方向が水平方向であり、縦方向が垂直方向である。
図2(a)は、標準ベイヤ配列の場合の例である。この標準ベイヤ配列の場合、ある1つの水平ラインに、赤色信号Rを得る画素と、緑色信号Gを得る画素とを、1画素ずつ交互に配置する。そして、その水平ラインに隣接した水平ラインに、青色信号Bを得る画素と、緑色信号Gを得る画素とが、1画素ずつ交互に配置する。また、赤色信号Rを得る画素がある水平ラインでの、緑色信号Gを得る画素の配置位置と、青色信号Bを得る画素がある水平ラインでの、緑色信号Gを得る画素の配置位置は、1画素ずつシフトされた状態になっている。
【0027】
したがって、図2(a)に示す標準ベイヤ配列の撮像素子の場合、垂直方向に隣接した2本の水平ラインを単位として見ると、緑色信号Gの画素の最小配置間隔Pgは、画素の配置ピッチと一致する。一方、赤色信号Rの画素の最小配置間隔Prと、青色信号Bの画素の最小配置間隔Pbは、緑色の最小配置間隔Pgの2倍の2画素ピッチとなる。
各色の画素の水平方向の最小配置間隔Pr,Pg,Pbは、撮像信号(RAWデータ)に含まれるそれぞれの色成分の高域成分の帯域を決めることになる。具体的には、緑色信号Gは1画素ピッチで検出した信号となり、赤色信号Rと青色信号Bは2画素ピッチで検出した信号となる。この画素ピッチがそのまま撮像信号の周波数帯域に反映する場合、緑色信号Gは他の色信号R,Bに比べて2倍高い周波数成分を持つ。
【0028】
図2(b)は、ベイヤ配列を変形したダブルベイヤ配列の撮像素子の画素配列の例である。このダブルベイヤ配列の場合には、1水平ラインごとに画素の配置位置を1/2画素ずつシフトさせてある。
ある1つの水平ラインに、赤色信号Rを得る画素と、青色信号Bを得る画素が、1画素ずつ交互に配置してある。そして、その赤色の画素と青色の画素が配置された水平ラインに隣接した水平ラインに、緑色信号Gを得る画素だけを配置してある。
このダブルベイヤ配列の場合にも、標準ベイヤ配列の場合と同様に、緑色信号Gは1画素ピッチで検出した信号となり、赤色信号Rと青色信号Bは2画素ピッチで検出した信号となる。
【0029】
撮像部101が備える撮像素子101aとして、例えば、図2(a)に示した標準ベイヤ配列のものを適用する。なお、図2(a)や図2(b)に示した画素配列は一例であり、その他の画素配列のものを適用してもよい。
【0030】
[3.撮像装置での処理と表示の例]
次に、本例の撮像装置100での撮像時に、ビューファインダ106でフォーカスバーを表示させる処理例について説明する。
フォーカスバー生成部117で生成される表示信号で示される棒グラフは、ピーク最大値選択部114で選択された色の積分値と、G輝度正規化部116で正規化された緑色信号Gの積分値とを加算した値に対応した長さのグラフである。
【0031】
ピーク最大値選択部114で選択された色の積分値は、撮像信号から得た輝度値の積分値が最も高くなる色の積分値である。したがって、被写体を撮像して得た撮像信号の内で、最も支配的な色の信号を積分した値が、棒グラフの長さの1つの要素となる。
【0032】
棒グラフの長さのもう1つの要素である、G輝度正規化部116で正規化された緑色信号Gの積分値は、緑色信号Gが最も高い周波数成分を有する信号であるため、棒グラフ表示に使用する。すなわち、図2(a)のベイヤ配列で説明したように、水平方向の最小配置間隔Pr,Pg,Pbから、緑色信号Gは他の色信号R,Bに比べて2倍高い周波数成分を持つ。フォーカス状態を示すフォーカスバーでは、撮像信号の高域成分の量を示すことで、現在のフォーカス調整状態を精度良く案内できる。
【0033】
このように最も高域成分が含まれる緑色信号Gの積分値を表示に使用して、高域成分の量を示すが、撮像した被写体によっては、撮像信号に含まれる緑色信号Gが少ない場合が考えられる。例えば、赤色の被写体を撮像した場合に得られる撮像信号では、緑色信号Gは比較的レベルが低く、赤色信号Rが比較的高いレベルで検出される。但し、実際にはどのような色の被写体を撮像した場合でも、特定の色の成分だけが検出されることは殆どなく、3色の成分が、それぞれ対応したレベルで検出される。
図3は、赤色成分が多い被写体を撮像した場合の、各色信号R,G,Bの周波数ごとのレベル例を示したもので、赤色信号Rのピーク輝度値Yrは、緑色信号Gのピーク輝度値Ygや青色信号Bのピーク輝度値Ybよりも高くなる。
【0034】
したがって、赤色成分が多い被写体を撮像した場合に、G輝度正規化部116で正規化することで、緑色信号Gの積分値は、赤色信号と緑色信号との比率で正規化されて、赤色信号を高域成分まで検出した場合に相当する積分値が得られる。このため、棒グラフの長さの1つの要素で、どの色の被写体を撮像しても、1画素ピッチで検出した場合に相当する高域成分が示されることになる。
【0035】
図4は、棒グラフの表示例を示したものである。
図4(a)に示すように、画面10の下側に、一定の長さのフォーカスバー11を白色などの比較的目立たない色で表示し、そのフォーカスバー11内で、第1要素表示11aと第2要素表示11bとを、緑色や黒色などの比較的目立つ色で行う。第1要素表示11aは、ピーク最大値選択部114で選択された色の積分値に対応した表示である。第2要素表示11bは、G輝度正規化部116で正規化された緑色信号Gの積分値に対応した表示である。それぞれの要素表示11a,11bは、対応した積分値の変動で長さが変化する。
【0036】
図4(a)では、第1要素表示11aと第2要素表示11bとで、異なる斜線を付与して区別して示したが、実際の画面では区別しない表示でもよい。つまり、第1要素表示11aと第2要素表示11bとを加算した棒グラフの長さが、ビューファインダ106で表示される画面から判るようにする。第1要素表示11aと第2要素表示11bとを加算した棒グラフの長さが長いほど、撮像画像のフォーカス検知エリア内の高周波成分が多くなって、ジャストフォーカス状態に近づいたことが示される。
フォーカス操作を行う撮影作業者は、このビューファインダ106での表示を確認しながら、レンズ装置200のフォーカスリングの操作で、第1要素表示11aと第2要素表示11bとを加算した棒グラフの長さが最も長くなるように調整する。
実際の画面では、第2要素表示11bが最も高い周波数成分に対応した要素であり、フォーカスリングの操作に対応して比較的迅速にレベルが変動する。これに対して、第1要素表示11aは、第2要素表示11bよりも低い中域の周波数成分の検出に対応した要素であり、第2要素表示11bよりも緩い変動である。したがって、第1要素表示11aである程度までの合焦状態が示され、第2要素表示11bで厳密な合焦状態が示されることになり、それぞれの要素を加算して表示することで、良好な表示形態となる。
【0037】
なお、フォーカスバーを表示するモードとして、第1要素表示11aと第2要素表示11bのいずれか一方だけを表示するモードを用意してもよい。例えば、図4(b)に示すように、G輝度正規化部116で正規化された緑色信号Gの積分値に対応した要素表示12aを行うフォーカスバー12を、ビューファインダ106で表示させてもよい。
あるいは、ピーク最大値選択部114で選択された色の積分値に対応した要素だけの棒グラフ表示でもよい。
このような表示モードの選択は、例えば、フォーカスバーの表示処理部であるフォーカスバー生成部117内での処理により行われる。
【0038】
以上説明したように、撮像装置100のビューファインダ106で、輝度の積分値に対応して表示が変化するフォーカスバー表示を行うことで、フォーカス操作をアシストする案内表示が簡単かつ良好に行える。このフォーカスバー表示を行うための処理は、図1に示したように各色成分を検波して積分し、ピーク選択や比率に基づいた正規化を行うだけでよく、比較的簡単な構成で実現ができる。
【0039】
[4.オートフォーカスに適用した例]
ここまで説明した実施の形態例では、フォーカス状態を検出して、そのフォーカス状態を表示する処理に適用した。これに対して、検出したフォーカス状態に基づいて、撮像装置に装着されたレンズ装置内のフォーカスレンズを駆動して、オートフォーカス調整を行うようにしてもよい。
【0040】
図5は、オートフォーカス調整を行う撮像装置100′の構成例を示す。
撮像装置100′は、図1の例の撮像装置100と同様に、R検波エリア積算部111とG検波エリア積算部112とB検波エリア積算部113とピーク最大値選択部114とを備えて、ピーク最大値選択部114で最大値となる色の積分値を得る。また撮像装置100′は、RGB輝度比率算出部115とG輝度正規化部116とを備えて、正規化された緑色信号Gの積分値を得る。
そして、ピーク最大値選択部114で選択された積分値と、G輝度正規化部116で正規化された積分値とを、フォーカスバー生成部117に供給すると共に、フォーカス状態判定部118に供給する。
【0041】
撮像装置100′は、フォーカス状態判定部118を備える点で、図1で示した撮像装置100と異なっている。フォーカス状態判定部118は、フォーカス状態の判定結果に基づいて、自動的なフォーカス調整の制御を実行するフォーカス処理部である。すなわち、フォーカス状態判定部118から、この撮像装置100′に装着されたレンズ装置200′のレンズ駆動部202に指令を送り、レンズ201の内のフォーカスレンズを駆動させて、自動的なフォーカス調整を行う。
この自動的なフォーカス調整を行うために、フォーカス状態判定部118で、ピーク最大値選択部114で選択された積分値と、G輝度正規化部116で正規化された積分値との加算値を判定する。そして、その加算値が最大となるようにフォーカスレンズを駆動させる。
【0042】
図5に示した撮像装置100′のその他の部分は、図1に示した撮像装置100と同様に構成する。
なお、図5の例では、フォーカスバー生成部117とフォーカス状態判定部118の双方を備えた構成として、ビューファインダ106でのフォーカスバー表示と、フォーカスレンズを制御するオートフォーカス制御の双方を行うようにした。これに対して、フォーカスバー生成部117を設けない構成として、オートフォーカス制御だけを行う撮像装置として構成してもよい。
また、フォーカス状態判定部118でフォーカス状態を判定する際にも、ピーク最大値選択部114で選択された積分値と、G輝度正規化部116で正規化された積分値との、いずれか一方だけをオートフォーカス制御に使用してもよい。
【0043】
[5.変形例]
図1や図5に示した撮像装置では、撮像信号から各色の検波信号の積分や比率算出などの処理は、それぞれ専用の回路ブロックで行う構成とした。これに対して、例えば撮像信号を演算する演算処理部を設けて、その演算処理部内で、最大値となる色の積分値を得る処理と、正規化された緑色信号Gの積分値を得る処理を行うようにしてもよい。この処理は、演算処理部に、図1の構成と同様の処理を行うソフトウェア(プログラム)を実装することにより実現できる。
【0044】
また、上述した実施の形態例では、撮像素子101aとして、ベイヤ配列で、赤色信号を得る画素と、緑色信号を得る画素と、青色信号を得る画素とを有するものとした。これに対して、それぞれの色の画素が別の撮像素子に配置された、いわゆる3板式の撮像素子構成の撮像装置に、上述した実施の形態で説明したフォーカス状態検出処理を適用してもよい。
また、図2に示した撮像素子101aの画素配列についても一例を示したものであり、その他の画素配列のものにも適用が可能である。
【0045】
さらに、撮像素子101aとして、加法混色の3原色である赤色信号と緑色信号の青色信号の画素を配置した例について説明したが、減法混色の3原色の画素を配置した撮像素子にも適用可能である。この減法混色の3原色の場合にも、画素の配置ピッチが最も狭い色の信号を、他の色との比率で正規化することで、同様の処理が行える。
【0046】
また、上述した実施の形態例では、棒グラフによる案内表示を行う例としたが、例えばピーク最大値選択部114で選択された積分値と、G輝度正規化部116で正規化された積分値との加算値を、数値表示などの別の形態で表示させてもよい。
【0047】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)第1、第2及び第3の色の画素を有する撮像素子で撮像する撮像部と、
前記撮像部が出力する撮像信号のフォーカス判定領域内の前記第1、第2及び第3の色の輝度を個別に積分し、輝度の積分値の各色の比率を算出する輝度比率算出部と、
前記撮像部が出力する撮像信号の前記フォーカス判定領域内の第1の色の輝度の積分値を、前記輝度比率算出部で算出した輝度の積分値の比率で正規化する輝度正規化部と、
前記輝度正規化部で正規化した輝度の積分値の変動に対応した表示を行う表示処理部とを備えた
撮像装置。
【0048】
(2)前記撮像部が出力する撮像信号の前記第1、第2及び第3の色の輝度を積分する色別積分部と、
前記色別積分部で得た積分値の内で、最大値となる積分値を選択する最大値選択部とをさらに備え、
前記最大値選択部で選択した積分値を前記表示処理部に供給して、前記表示処理部は、前記正規化した輝度の積分値と前記選択した輝度の積分値との変動に対応した表示を行う
前記(1)記載の撮像装置。
【0049】
(3)前記表示処理部は、画面中に、前記正規化した輝度の積分値と前記選択した輝度の積分値とを加算した値、又は前記正規化した輝度の積分値に対応して長さが変化するグラフ表示処理を行う
前記(1)又は(2)記載の撮像装置。
【0050】
(4)前記撮像素子は、第1の色の画素の水平方向の画素数と、第2及び第3の色の画素の水平方向の画素数が異なる素子である
前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の撮像装置。
【0051】
(5)前記撮像素子は、ベイヤ配列又は変形ベイヤ配列で赤色画素と緑色画素と青色画素を配置した素子であり、
前記輝度正規化部で正規化する前記第1の色の輝度の積分値は、緑色の輝度の積分値である
前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の撮像装置。
【0052】
(6)前記輝度正規化部で得た前記第1の色の輝度の積分値に基づいて、前記撮像素子に入射する像光の光路に配置されたフォーカスレンズの駆動を行うフォーカス処理部を備えた
前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の撮像装置。
【符号の説明】
【0053】
100,100′…撮像装置、101…撮像部、102…撮像信号処理部、103…画像フォーマット変換部、104…画像信号出力端子、105…表示処理部、106…ビューファインダ、107…RAWデータ出力端子、111…R検波エリア積算部、112…G検波エリア積算部、113…B検波エリア積算部、114…ピーク最大値選択部、115…RGB輝度比率算出部、116…G輝度正規化部、117…フォーカスバー生成部、118…フォーカス状態判定部、200,200′…レンズ装置、201…レンズ、202…レンズ駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2及び第3の色の画素を有する撮像素子で撮像する撮像部と、
前記撮像部が出力する撮像信号のフォーカス判定領域内の前記第1、第2及び第3の色の輝度を個別に積分し、輝度の積分値の各色の比率を算出する輝度比率算出部と、
前記撮像部が出力する撮像信号の前記フォーカス判定領域内の第1の色の輝度の積分値を、前記輝度比率算出部で算出した輝度の積分値の比率で正規化する輝度正規化部と、
前記輝度正規化部で正規化した輝度の積分値に対応した表示を行う表示処理部とを備えた
撮像装置。
【請求項2】
前記撮像部が出力する撮像信号の前記第1、第2及び第3の色の輝度を積分する色別積分部と、
前記色別積分部で得た積分値の内で、最大値となる積分値を選択する最大値選択部とをさらに備え、
前記最大値選択部で選択した積分値を前記表示処理部に供給して、前記表示処理部は、前記正規化した輝度の積分値と前記選択した輝度の積分値に対応した案内表示を行う
請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記表示処理部は、画面中に、前記正規化した輝度の積分値と前記選択した輝度の積分値とを加算した値に対応した長さのグラフ表示処理を行う
請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像素子は、第1の色の画素の水平方向の画素数と、第2及び第3の色の画素の水平方向の画素数が異なる素子である
請求項1記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像素子は、ベイヤ配列又は変形ベイヤ配列で赤色画素と緑色画素と青色画素を配置した素子であり、
前記輝度正規化部で正規化する前記第1の色の輝度の積分値は、緑色の輝度の積分値である
請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記輝度正規化部で得た前記第1の色の輝度の積分値に基づいて、前記撮像素子に入射する像光の光路に配置されたフォーカスレンズの駆動を行うフォーカス処理部を備えた
請求項1記載の撮像装置。
【請求項7】
第1、第2及び第3の色の画素を有する撮像素子で撮像した撮像信号のフォーカス判定領域内の前記第1、第2及び第3の色の輝度を個別に積分し、輝度の積分値の各色の比率を算出し、
前記撮像信号から得た前記フォーカス判定領域内の第1の色の輝度の積分値を、前記輝度の積分値の各色の比率で正規化し、
前記正規化した第1の色の輝度の積分値に対応した案内表示処理を行う
撮像方法。
【請求項8】
前記撮像信号の前記第1、第2及び第3の色の輝度を色別に積分し、その色別の積分値の内で、最大値となる積分値を選択し、
前記正規化した第1の色の積分値と、前記最大値となる積分値とに対応した案内表示処理を行う
請求項7記載の撮像方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−244346(P2012−244346A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111433(P2011−111433)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】