撮像装置及び測光値の予測方法
【課題】 低輝度下において測光に要する時間を短縮する。
【解決手段】 被写体を測光する測光手段の出力値が所定値となるように当該測光手段をリセットするリセットし、リセットを行ったときの測光手段の第1の出力値と、リセットを行ってから第1の時間が経過したときの測光手段の第2の出力値と、リセットを行ってから第1の時間よりも長い第2の時間が経過したときの測光手段の第3の出力値と、に基づいて、測光値を予測する。
【解決手段】 被写体を測光する測光手段の出力値が所定値となるように当該測光手段をリセットするリセットし、リセットを行ったときの測光手段の第1の出力値と、リセットを行ってから第1の時間が経過したときの測光手段の第2の出力値と、リセットを行ってから第1の時間よりも長い第2の時間が経過したときの測光手段の第3の出力値と、に基づいて、測光値を予測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び測光値の予測方法に関し、さらに詳しくは、低輝度下において測光時間を短縮するための撮像装置及び測光値の予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一眼レフカメラ等の撮像装置においては、被写体の輝度を、フォトダイオードの光電流をダイオード等のLOG特性を利用して、広ダイナミックレンジで測光する測光センサが広く利用されている。
【0003】
このようなLOG特性を利用した測光回路においては、電源投入時に、特に光電流の微小な低輝度下において、被写体光を受光してから正確な測光出力を得るまでに長い安定待ち時間を必要としていた。また、特に一眼レフカメラのように、撮影時にミラーが退避してフォトダイオードへの光が遮光されるシステムにおいては、光応答性による低輝度下での測光性能の悪化は、レリーズタイムラグの増大や連写速度の低下など、非常に大きな問題となる。
【0004】
さらに、近年のデジタルカメラにおいては、撮像素子の感度向上や画像処理の高度化により、ISO感度が数万といった高感度なカメラが登場しているため、カメラの測光回路においては、さらなる低輝度下での測光性能の向上が必要になっている。
【0005】
このような問題点を解消するために、例えば、特許文献1では、無受光期間に予備電流を流し、フォトダイオード及び対数圧縮用ダイオードの寄生容量を充電することによって、測光回路の応答性を改善するものが開示されている。また、例えば、特許文献2では、無受光期間に発光素子で予備照射し、光電流を発生させてフォトダイオード及び対数圧縮用ダイオードの寄生容量を予備充電することで、測光回路の応答性を改善するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−077938号公報
【特許文献2】特開2008−309732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、予備電流と光電流との違いが誤差要因となるため、この差分を補償するための補償回路を設ける必要があり、回路規模が大きくなってしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載の発明においても、予備照射で発生する光電流と測光時の光電流との差分が誤差要因になる。また、予備照射のために発光素子が必要であり、コスト、実装スペースなども必要になるという欠点がある。
【0009】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、低輝度下において測光に要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明にかかる撮像装置は、被写体を測光する測光手段と、前記測光手段の出力値が所定値となるように当該測光手段をリセットするリセット手段と、前記リセットを行ったときの前記測光手段の第1の出力値と、当該リセットを行ってから第1の時間が経過したときの前記測光手段の第2の出力値と、当該リセットを行ってから前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過したときの前記測光手段の第3の出力値と、に基づいて、測光値を予測する予測手段と、前記予測手段により予測された測光値に基づいて露出演算を行う露出演算手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明にかかる測光値の予測方法は、露出演算に用いる測光値の予測方法であって、被写体を測光する測光手段の出力値が所定値となるように当該測光手段をリセットするリセットステップと、前記リセットを行ったときの前記測光手段の第1の出力値と、当該リセットを行ってから第1の時間が経過したときの前記測光手段の第2の出力値と、当該リセットを行ってから前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過したときの前記測光手段の第3の出力値と、に基づいて、測光値を予測する予測ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低輝度下において測光に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態における撮像装置の概略構成図。
【図2】本発明の第1の実施形態における撮像装置のブロック図。
【図3】本発明の第1の実施形態における測光回路の回路図の一例を示した図。
【図4】本発明の第1の実施形態における測光回路の応答性を示した図。
【図5】測光出力の時間特性を予測する予測関数を示した図。
【図6】本発明の第1の実施形態における測光動作のメインフローチャート。
【図7】図5のメインフローチャートで取得される測光値と時間の関係を示した図。
【図8】測光出力の時間特性を予測する予測関数を決定するフローチャート。
【図9】本発明の第2の実施形態における測光動作のメインフローチャート。
【図10】測光回路からの読み出しと時間との関係を示した図。
【図11】本発明の第3の実施形態における測光関連部分を示した図。
【図12】本発明の第4の実施形態における撮影動作のタイムチャート。
【図13】本発明の第5の実施形態における測光関連部分を示した図。
【図14】本発明の第5の実施形態における測光出力と時間の関係を示した図。
【図15】本発明の第6の実施形態における測光動作のメインフローチャート。
【図16】本発明の第6の実施形態における測光回路の温度による応答性の違いを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明に用いる図面において、同一の要素部品は同じ符号としている。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における撮像装置の概略構成図である。同図において、101はCPU(中央演算処理装置)であり、本撮像装置の各部の動作はこのCPU101により制御される。
【0016】
不図示の被写体像からの光束が、レンズユニット内の撮影レンズ115及び絞り112を介してクイックリターンミラー110に導かれる。クイックリターンミラー110の中央部はハーフミラーになっており、一部の光束が透過する。そして、この透過した光束は、クイックリターンミラー110に設置されたサブミラー116によって、117、118、119からなる公知の位相差方式焦点検出ユニットに導かれる。ここで117はフィールドレンズ、118は2次結像レンズ、119はAFセンサである。AFセンサ119の出力に基づいて、CPU101は撮影レンズ駆動制御部125に撮影レンズ115の駆動させるための駆動パルスを送る。撮影レンズ駆動制御部125は送られてきた駆動パルスに応じてパルスモータを駆動させ、撮影レンズ115を合焦位置に駆動させることで自動焦点調節を行う。
【0017】
一方、クイックリターンミラー110で反射された光束は、焦点検出板(以降「ピント板」と称す)120、ペンタプリズム121を介して接眼レンズ122に導かれる。なお、ピント板120は撮影レンズ115の撮像素子113結像面と等価の結像面に配され、クイックリターンミラー110で反射された被写体像はピント板120で1次結像する。
【0018】
また、接眼レンズ122の近傍に配置された測光回路100は、測光プリズム123、測光レンズ124によってピント板120に結像した被写体像を測光回路100のチップ上に2次結像させることで被写体の測光を行う。
【0019】
撮影者が不図示のレリーズボタンを押すと、クイックリターンミラー110は撮像素子113への光路外に退避する。一方、撮影レンズ115によって集光された光束はフォーカルプレーンシャッタ111(以下、シャッタとする)にて光量制御がなされ、CMOS等の撮像素子113によって光電変換処理された後、撮影画像として不図示の記録メディアに記録される。
【0020】
図2は、本実施形態の撮像装置のブロック図である。測光回路100は被写界を複数の領域に分割して測光し、それぞれの領域の測光データを順次出力する。測光回路100から出力された測光データは記憶部102に記憶される。記憶部102に記憶された測光データは、測光値判定部103、測光制御部104、予測関数算出部106及び露出演算部107へ出力される。測光値判定部103は、測光回路100から出力された測光データが測光回路100の安定時に出力された測光データか否かを、出力された測光データの値と記憶部102に保持された閾値との比較に基づいて判定する。
【0021】
測光制御部104は、記憶部102に記憶されている測光データと測光値判定部103の判定結果に基づいて、測光回路100の電荷の蓄積及び蓄積された電荷の読み出しを行うタイミングを制御する。測光回路100の動作の詳細については、後に詳しく説明する。
【0022】
露出演算部107では、記憶部102に格納されている測光データと、レンズデータ108内に収められているレンズユニットの焦点距離、開放絞り値、射出瞳位置、ケラレ情報などのレンズデータなどに基づいて、被写体の適正露出値の演算を行う。
【0023】
露出制御部109は、不図示のレリーズボタンが押されると、露出演算部107により演算された適正露出値に基づいてクイックリターンミラー110、シャッター111、絞り112などを制御し、露光を行う。なお、記憶部102、測光値判定部103、測光制御部104、予測関数算出部106、露出演算部107、及び露出制御部109はすべてCPU101によって実現されているが、その機能の一部あるいは全部を他の電気回路によって実現することも可能である。
【0024】
図3は、本実施形態の測光回路100の詳細な構成を示す回路図の一例である。図3において、Q1は入射光に応じて電荷を発生する光電変換領域をベースに有するNPNのフォトトランジスタ、MP1はQ1のベース電位を固定するためのPMOS、IはMP1の負荷である電流源である。MP2はMP1のゲート電位をMP1のドレインにフィードバックするためのPMOS、MP3はQ1にキャリアの注入を強制的に行うための画素リセット(以下、リセット動作ともいう)用のPMOSである。そして、206はQ1のエミッタ電流を対数圧縮するための対数圧縮部である。
【0025】
なお、測光回路100の構成は図3に示す回路構成に限られるものではなく、フォトトランジスタのベース電位(光電変換領域)をリセットできる構成を有する回路構成であればよい。例えば、特開2000−77644号公報、特開2010−45293号公報、特開2010−45294号公報等に記載された回路のフォトトランジスタのベース電位をリセット可能な構成として、測光回路100に利用することができる。
【0026】
定電流が流れたMP1のゲート電圧は、電圧VCCに対して、一定の電位差Vthとなるので、Q1のベース電位もQ1に入射する光強度によらず一定電位となる。また、MP2を用いてフィードバックを形成することにより、さらにQ1のベース電位を安定化させている。これにより、大きなベース容量Ccbの充放電は行う必要がない。したがって、図3に示した測光回路の応答性は、コレクタ容量よりは小さい、エミッタ容量Ceb及びMP2のドレイン容量と光電流により決定される。したがって、応答性による影響が見え始める低輝度下では、測光値は、実際の輝度に相当する値よりも高くなってしまうため、実際の輝度に相当する値よりも高い測光値に基づいて露出制御を行い撮影することで露出アンダーの撮影画像になってしまう。
【0027】
図4は、測光回路100の応答性を示す図であって、測光出力の時間特性を模式的に示している。図4(a)は、被写体輝度に応じて測光出力の時間特性がどのように変化するかを示した図である。縦軸は、測光回路100の出力値を示し、横軸は、リセット動作後の経過時間を示している。グラフの各系列は、輝度による違いの例であり、それぞれ輝度=BV0、BV−2、BV−3、BV−4、BV−6の時の測光出力の変化を示している。
【0028】
図4(a)に示すように、測光出力はリセット動作を行うと輝度=BV−1のときと同程度の値となり、その後、エミッタ容量Ceb及びMP2のドレイン容量の充放電に伴い、適正な値に安定する。輝度=BV0の系列で示すように、輝度がBV−1よりも高輝度な被写体を測光する場合、リセット動作後の時間T1において直ちに値は安定する。T1は例えば10msといった極めて短い時間である。しかし、輝度がBV−1よりも低輝度になるにつれて測光出力の値が安定するまでの時間は長くなる。これは、エミッタ容量Ceb及びMP2のドレイン容量の充放電時間が光電流に比例しているためである。
【0029】
測光回路100は、図3で説明した測光回路を複数集積させることで、被写体を分割した複数の領域ごとに測光することができる。しかしながら、そうした構成においては、画素ごと、あるいはチップごとにリセット動作電位や寄生容量、トランジスタの電流増幅率hFEがばらついてしまい、図4(a)にて説明した測光出力の時間特性にもバラツキが生じてしまう。そのため、以下のような問題が生じる。
【0030】
図4(b)及び(c)はセンサ特性の違いによる測光出力の違いを説明する図であり、チップ内で異なる位置にあるセンサ特性の異なる2つの画素をそれぞれ画素A、画素Bとして説明する。なお、図4(b)及び(c)は、画素A及び画素Bについて、同一の輝度の被写体を測光した場合の測光出力の時間特性を示し、時間T1及び時間(T1+T2)において読み出された測光出力をプロットしている。
【0031】
図4(b)はリセット電位の違いが測光出力に与える影響を示したものである。画素Bは画素Aよりリセット電位が高いため、同じ輝度の被写体を測光しているにもかかわらず、画素Bのほうが画素Aよりも時間T1及び時間(T1+T2)において読み出された2つの測光出力の差分は大きくなる。
【0032】
また、図4(c)は寄生容量の違いが測光出力に与える影響を示したものである。画素Bは画素Aより寄生容量が大きいため、寄生容量の充放電に時間がかかり、画素Bのほうが画素Aよりも時間T1及び時間(T1+T2)において読み出された2つの測光出力の差分は小さくなる。そのため、測光出力が安定するまでの間に得られた2つの測光出力に基づいて安定後の測光出力の値を予測する場合に、画素A及び画素Bのそれぞれの予測測光値は、センサ特性のバラツキにより同一の輝度の被写体を測光したとしても異なる値になってしまう。つまり、センサ特性のバラツキを考慮した上で測光値予測を行うには、センサ特性由来のパラメータからなる予測関数で測光値予測を行う必要がある。
【0033】
そこで、本実施形態では、図5に示すように測光出力の時間特性を3つのパラメータからなる予測関数
V=(VR−VT)exp(−kt)+VT (1)
で表し、3つの測光出力により上記の式のパラメータを決定することによって測光値を予測する。ここで、Vはリセット動作後、時間t経過したときの測光出力の値、VR、VT、kは測光出力の時間特性を決めるパラメータである。つまり、Vの値はt=∞の時に、過渡状態から安定した際の測光値となるということをこの式は示している。t=0でV=VRとなることから、VRはリセット電位に関するパラメータ、t→∞でV=VTとなり、予測測光値であるVTに収束する。kは測光出力の時間特性のカーブの曲率を規定するパラメータであり、寄生容量やhFE、光電流などに依存する。
【0034】
以上のように、上記の式(1)を用いて3つの測光出力からセンサ特性由来のパラメータを決定して測光値を予測するため、画素ごとに予測関数を調整する必要がなくなる。
【0035】
図6は、本実施形態における測光動作を説明するフローチャートである。CPU101は、ステップS501で測光回路100を動作させてリセット動作を行い、リセット動作を行った後、直ちにステップS502で測光回路100の出力の読み出しを行い、読み出して得られた測光値AE0(第1の出力値)を記憶部102に記憶する。
【0036】
ステップS503でCPU101は測光安定待ちを時間T1(第1の時間)行う。安定待ち時間T1は、たとえば図4の説明と同様の10msに設定される。ステップS504でCPU101は測光回路100の出力の読み出しを行い、読み出して得られた測光値AE1(第2の出力値)を記憶部102に記憶する。ステップS505では測光値判定部103によって判定が行われ、測光値AE1の値が所定の閾値以上(BVa以上)であれば、ステップS506へ進み、CPU101は測光安定待ちを時間T2行う。
【0037】
測光値AE1の値が所定の閾値未満(BVa未満)の場合は、ステップS507へ進み、CPU101は測光安定待ちを時間T2より長い時間T2’行う。これは、図4(a)で示したように、輝度=BV−4、BV−6のような極低輝度では、経過時間が(T1+T2)(第2の時間)となる頃まで測光出力が同様に推移するため、測光安定待ち時間がT2では正しい予測演算が行えないからである。そこで、T2より長い時間T2’だけ測光安定待ちを行うことにより、極低輝度における予測の精度を高めるものである。
【0038】
したがって、時間T1における測光出力をもとに極低輝度か否かを判定するために、BVaは例えばBV−2.7などに設定する。ただ、予測精度よりも測光時間を短くすることを優先したい場合は、閾値(BVa)を適宜下げることにより、ステップS506に進みやすくしておけばよい。
【0039】
ステップS505の判定結果に基づいて測光安定待ちを行った後、ステップS508でCPU101は3つ目の測光値AE2(第3の出力値)を取得し、記憶部102に記憶する。ステップS509で予測関数算出部106は3つの測光値AE1〜AE2の値から予測関数である式(1)の各パラメータを決定し、ステップS510でCPU101は予測測光値を算出して露出演算に用いる測光値として記憶部102に記憶して測光動作を終了する。
【0040】
次に、予測演算に用いる3つの測光値と取得時間の関係を図7に示す。図7中の時間特性において、実線部は測光動作中であることを示し、破線部は3つの測光値から予測された時間特性を示している。
【0041】
図7に示すように、リセット動作を行ってから時間T1が経過してから得る2つ目の測光値AE1が所定の閾値以上(BVa以上)の場合には、時間T1から更に時間T2経過してから3つ目の測光値AE2を得て予測演算を行う。そのため、リセット動作を行ってから時間(T1+T2)だけ経過すれば測光出力が安定したときの出力値を正確に予測することができ、測光出力が安定するまで待つ場合に比べて測光に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0042】
また、2つ目の測光値AE1が所定の閾値未満(BVa未満)の場合には、時間T1から更に時間T2’経過してから3つ目の測光値AE2を得て予測演算を行う。そのため、極低輝度下であっても、リセット動作を行ってから時間(T1+T2’)だけ経過すれば測光出力が安定したときの出力値を正確に予測することができ、測光出力が安定するまで待つ場合に比べて測光に要する時間を短縮することができる。
【0043】
図8は、予測関数算出部106が3つの測光値AE0〜AE2から式(1)の各パラメータを決定する方法を説明するフローチャートである。ステップS509で予測関数生成のサブルーチンが実行されると、ステップS601で1つ目の測光値AE0をVRとする。次に、ステップS602で2つ目の測光値AE1と測光値AE1を取得した時間T1、及び、3つ目の測光値AE2と測光値AE2を取得した時間(T1+T2)をそれぞれ式(1)に代入する。なお、測光値AE2を取得した時間が(T1+T2’)の場合には、それを式(1)に代入する。ステップS603では、ステップS602で得られたVT及びkに関する連立方程式を解くことにより、予測関数の各パラメータを決定する。なお、予測演算を行うCPU101の性能により複雑な演算ができない場合は、1つ目の測光値AE1及び2つ目の測光値AE2を取得する際の安定待ち時間をそろえておくとよい。すなわち、それぞれの安定待ち時間T1=T2とすると、
AE1=(AE0−VT)exp(−kT1)+VT (2)
AE2=(AE0−VT)exp(−k・2T1)+VT (3)
が得られる。式(2)、(3)からkを消去するとVTに関する一次方程式に帰着でき、
VT=(AE0・AE2−AE12)/(AE0+AE2−AE1) (4)
と、比較的単純な演算により予測測光値を求めることができる。
【0044】
以上のように、測光出力が安定するまでの間に得られた3つの測光出力に基づいて安定後の測光出力を予測する予測関数の各パラメータを決定し、予測測光値を演算することで、センサ特性のバラツキに影響されない正確な予測測光値を得ることができる。また、測光出力が安定するまでの間に得られた3つの測光出力に基づいて安定後の測光出力を予測することで、測光出力が安定するまでの時間が長い低輝度下において、測光に要する時間を短縮することができる。また、極低輝度下においても、安定待ち時間を変更して測光値の予測に用いる測光出力が出力されるタイミングを変更することで、正確な予測測光値を得ることができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図9は、本発明にかかる第2の実施形態における測光動作を説明するフローチャートである。測光に要する時間を短縮するために測光安定待ち時間T1を短くしようとした場合、図4で示したように、測光安定待ち時間T1が短くなるほど2つ目の測光値AE1の輝度ごとの差が小さくなる。そのため、第1の実施形態で説明した測光値の予測方法では正確な予測測光値が得られない場合がある。そこで、第1の実施形態では図6のステップS505において2つ目の測光値AE1の値に応じて分岐させているところを、本実施形態では、3つ目の測光値AE2に応じて分岐させる。
【0046】
まず、ステップS701でCPU101は測光回路100を動作させてリセット動作を行い、リセット動作を行った後、直ちにステップS702で測光回路100の出力の読み出しを行い、読み出して得られた測光値AE0を記憶部102に記憶する。続いて、CPU101は第1の実施形態と同様にして2つ目の測光値AE1、3つ目の測光値AE2を取得し、それぞれ記憶部102に記憶する。ここで、測光に要する時間を短縮するため、測光安定待ち時間T1やT2は、例えば5msといった短時間に設定する。ステップS706で3つ目の測光値AE2を取得後、ステップS707で3つ目の測光値AE2の値に応じて分岐させる。
【0047】
まず、測光値AE2が第2の閾値以上(例えばBV0以上)の場合、測光値判定部103は測光出力が十分に安定していると判定し、CPU101はステップS708で測光値AE2をそのまま露出演算に用いる測光値とする。一方、測光値AE2が第1の閾値以上で第2の閾値未満(例えばBV−3.5以上0未満)といった範囲にある場合、ステップS709、ステップS710で第1の実施形態と同様に、CPU101は3つの測光値AE0〜AE2に基づいて予測測光値を得る。また、測光値AE2が第1の閾値未満(BV−3.5未満)だった場合は、3つ目の測光値取得時点でもなお注入キャリアの影響が大きいほどの極低輝度だと考えられる。そのため、CPU101はステップS711で測光安定待ちを時間T3(第3の時間)行い、ステップS712で4つ目の測光値AE3(第4の出力値)を取得し、記憶部102に記憶する。そして、CPU101はステップS709、ステップS710で直近の3つの測光値AE1〜AE3に基づいて予測測光値を得る。
【0048】
以上のように、安定待ち時間を短く設定する場合であっても、測光出力に応じて測光回数を変えることにより、必要最小限の時間で測光を行い、正確な予測測光値を得ることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、3つ目の測光値AE2が第2の閾値未満の場合には、更に測光を行って得られた4つ目の測光値AE3を予測演算に用いているが、測光値AE3も第2の閾値未満の場合に更に測光を行って5つ目の測光値AE4を得るようにしてもよい。
【0050】
(第3の実施形態)
図10は、第1及び第2の実施形態にかかる測光回路100の測光出力と時間との関係を示す図である。第1及び第2の実施形態では、t=0でV=VRとなることから、リセット動作直後に得られた測光値AE0をt=0でのVとみなし、AE0=VRとして式(1)を用いて予測演算を行っている。
【0051】
しかしながら、測光回路100からリセット動作直後の測光出力を読み出す場合、測光回路100では一定時間電流を蓄積しなくてはならず時間t0’まで蓄積した値を読み出さなければならない。そのため、図10に示すようにリセット動作してから時間t0’が経過するまでの間にも測光出力は変化しており、リセット動作直後に得た測光値AE0とリセット動作を行ったときの測光値にはわずかながら誤差が生じている。
【0052】
そこで、本実施形態では、上述した誤差を考慮して予測演算を行う構成としている。図11は、本実施形態における測光関連部分の構成を示した図である。310はリセット電圧設定部、300は測光回路100、φRES入力部301、VRES入力部302、出力部303からなる測光ユニットである。
【0053】
リセット電圧設定部310は、DCDCコンバーターなどからなっており、測光ユニット300に最適とされる電圧を供給する。一方で、測光ユニット300内部の測光回路100に達するまでにVRES入力部302を介するので、Q1に達するまでにリセット電圧設定部310で設定した電圧は変化してしまう。
【0054】
Q1での電圧は非常にシビアなものであり、ちょっとした差が、測光結果に大きく影響されてしまうことになる。そのため、リセット電圧を厳密に管理しても測光ユニット300のリセット動作を行ったときの測光出力を予測することは困難である。
【0055】
そこで、本実施形態では、以下のようにして、リセット動作時の測光出力を工場での組み立て時などに読み出して予め記憶部102に記憶しておく。
【0056】
まず、CPU101は、測光制御部104よりφRES信号を出力し、MP3をオンする。そうするとリセット電圧設定部310で設定された電圧が、VRES入力部302より入力されQ1のベース電位を確定する。
【0057】
この状態のまま対数圧縮部206を所定時間動作させることにより出力部303を経由してAD変換部105にリセットした状態での電圧(リセット中の電圧)が読み込まれる。読み込まれた値は記憶部102に記憶される。
【0058】
本実施形態では、以上のようにして記憶部102に記憶した測光値をリセット動作を行ったときの測光値AE0として用いるため、リセット動作を行った直後に測光は行わない。その後の測光動作は、図6のステップS503以降、あるいは、図9のステップS703以降と同様の処理を行えばよいので説明は省略する。
【0059】
以上のように、測光値の予測演算に用いるリセット動作時の測光値を予め記憶しておくことで、正確な予測測光値を得ることができる。
【0060】
(第4の実施形態)
本実施形態では、第3の実施形態とは異なり、撮影直前にリセット動作直後の測光値を読み出して記憶部102に記憶しておく場合について説明する。
【0061】
図12は、本実施形態におけるリセット動作直後の測光値を読み出すタイミングを示したタイミングチャートである。
【0062】
図12(a)は、撮像装置の電源がONになってからのタイミングチャートを示している。まず、撮像装置の電源がONになったあと期間Tpが経過するまではクイックリターンミラー110の位置が不定であり、測光回路100に光束が安定して導かれているとは限らない。そのため、このTpの期間の測光出力は、露出演算などに用いるのには適さない。一方、測光回路100のリセット動作は外部からの光束の有無によらず行うことが可能である。つまり、測光回路100のリセット動作中(φRESを出力してMP3をオンにした状態)は、測光回路100に導かれる光束の光量は測光値には影響しない。
【0063】
そのため、CPU101はこの期間Tpの間にリセット状態での読み出しを行い記憶部102に測光値を記憶しておく。そして、時間t0になってリセット動作を解除し本来の測光動作を開始する。
【0064】
連写撮影を行う場合は図12(b)のように動作する。本実施形態における撮像装置は、露光中(撮像素子113に光が導かれている状態)は、クイックリターンミラー110がアップした状態かミラー駆動の途中であり、測光回路100には光束が安定して導かれておらず、その期間は正確に測光ができない期間となる。
【0065】
そこで、本実施形態では、CPU101はこの期間Tpの間にリセット状態での読み出しを行い記憶部102に測光値を記憶しておく。そして、時間t0になってリセット動作を解除し本来の測光動作を開始する。
【0066】
その後の測光動作は、図6のステップS503以降、あるいは、図9のステップS703以降と同様の処理を行えばよいので説明は省略する。
【0067】
以上のように、測光を行うのに適さない期間においてリセット動作時の測光値を取得し記憶しておくことで、予測演算により正確な予測測光値を得ることができる。
【0068】
(第5の実施形態)
本実施形態は、測光回路100のリセット動作におけるリセット電圧を輝度に応じて変更可能な点が第4の実施形態と異なっている。図13は、本実施形態の測光関連部分を示した図であり、図11のリセット電圧設定部310が可変式リセット電圧設定部311に変更されていて、その他の部分は図11と同様である。
【0069】
安定待ち時間は、図4に示すように、低輝度においてリセット時の測光出力の値と収束する測光出力の値との差が大きいほど長くなる。そこで、測光により得られるであろう測光値を測光を行う前に予測しておき、リセット電位を予測した測光値にできる限り近づける。なお、リセット電位は連続的に変化できることが望ましいが、説明の簡単化のため、以下では離散的にリセット電位を設定する回路で説明する。
【0070】
図14は、本実施形態の測光回路100の測光出力と時間との関係を示す図である。連写撮影中は被写体の輝度が大きく変わりにくいと想定し、例えば、記憶部102に記憶された前回の測光出力がBV5だった場合、CPU101はBV5に近いリセット電圧を出力させるために可変式リセット電圧設定部311のSW311aをオンする。そうすると図14(a)のように、リセット動作を行うと測光出力はResetAの値でリセットされる。そのため、リセット動作時の測光出力の値と収束する測光出力の値との差を小さくすることができ、リセット動作後の時間t1において安定した測光出力を得ることができる。すなわち、第1ないし第4の実施形態で説明したような予測演算を行うことなく正確な測光値を得ることができる。
【0071】
ところが、被写体の輝度が急に変わった場合は、収束する測光出力の値は大きく変わる。例えば、前回の測光出力はBV5に収束したが今回はBV0に収束する場合は、図14(b)に示すように測光出力は変化する。すなわち、前回の測光出力が収束したBV5に合わせてResetAの値でリセットされるが、リセット動作後に測光出力は急に下落する。このような場合であるかは、時間t1において得る測光出力の値とリセット動作時の測光出力の値との差が所定値以上であるか否かによって判断できる。そのため、このような場合であると判断した場合には、第1ないし第4の実施形態で説明したような予測演算を行うことで正確な予測測光値を得ることができる。そして、今回の測光出力がBV0だったことを記憶部102に記憶し、CPU101はBV0に近いリセット電圧を出力させるために可変式リセット電圧設定部311のSW311bをオンする。そうすると、次にリセット動作を行うと測光出力はResetBの値でリセットされる。
【0072】
以上のように、測光回路100のリセット動作におけるリセット電圧を輝度に応じて変更することで、予測演算することなく正確な測光値を得ることができる状況を増やすことができる。
【0073】
(第6の実施形態)
図15は本実施形態における測光動作を説明するフローチャートである。本実施形態では、不図示の温度検出手段により取得した撮像装置の温度に応じて測光安定待ち時間を変更する点で他の実施形態と異なる。図16は、測光回路100の温度による応答性の違いを示す図であり、45度などの高温下では、通常使用時に想定される温度範囲下のときに比べて暗電流の影響で定常状態にある測光出力の値が高くなってしまう。その結果、10msなどといった短い測光安定待ち時間では、測光安定待ち時間後に得た測光出力の値の輝度による差異が小さくなるため正確な予測測光値を得ることが困難となる。そこで、高温化では測光安定待ち時間を長くすることにより、正確な予測測光値を得ることができるようにする。
【0074】
以下、図15のフローチャートについて説明する。まず、ステップS801でCPU101は測光回路100を動作させてリセット動作を行い、リセット動作を行った後、直ちにステップS802で測光回路100の出力の読み出しを行い、読み出して得られた測光値AE0を記憶部102に記憶する。続いて、ステップS803で温度検出手段により温度を検出し、検出した温度が所定温度Taより高い場合、ステップS810へと遷移する。そして、CPU101は、2つ目、3つ目の測光値取得のための測光安定待ち時間を通常より長く設定し(T1’、T2’)、ステップS811で測光値AE1、ステップS813で測光値AE2をそれぞれ取得して記憶部102に記憶する。記憶部102に記憶された3つの測光値AE0〜AE2からステップS808で予測関数算出部106は測光出力の予測関数を生成する。そして、CPU101はステップS809で予測測光値を算出して露出演算に用いる測光値として記憶部102に記憶して測光動作を終了する。
【0075】
ステップS803で検出した温度が所定温度Ta以下の場合、CPU101はステップS804〜S807で通常の測光安定待ち時間(T1、T2)で、2つ目、3つ目の測光値AE1、AE2を取得する。
【0076】
以上のように、検出した温度が所定温度より高い場合には、所定温度以下の場合よりも測光安定待ち時間を長くすることで、高温度下であっても正確な予測測光値を得ることができる。
【0077】
なお、上記の6つの実施形態はそれぞれ他の実施形態と組み合わせることも可能であり、例えば、第1の実施形態の構成に第6の実施形態の構成を組み合わせてもよい。
【0078】
また、上記の実施形態において、測光安定待ち時間に基づいて測光を行うのではなく、所定周期で測光を繰り返し行い、その中から測光安定待ち時間が経過したときに行った測光の測光出力を予測演算に用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
100 測光回路
101 CPU
111 シャッター
112 絞り
113 撮像素子
300 測光ユニット
310 リセット電圧設定部
311 可変式リセット電圧設定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び測光値の予測方法に関し、さらに詳しくは、低輝度下において測光時間を短縮するための撮像装置及び測光値の予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一眼レフカメラ等の撮像装置においては、被写体の輝度を、フォトダイオードの光電流をダイオード等のLOG特性を利用して、広ダイナミックレンジで測光する測光センサが広く利用されている。
【0003】
このようなLOG特性を利用した測光回路においては、電源投入時に、特に光電流の微小な低輝度下において、被写体光を受光してから正確な測光出力を得るまでに長い安定待ち時間を必要としていた。また、特に一眼レフカメラのように、撮影時にミラーが退避してフォトダイオードへの光が遮光されるシステムにおいては、光応答性による低輝度下での測光性能の悪化は、レリーズタイムラグの増大や連写速度の低下など、非常に大きな問題となる。
【0004】
さらに、近年のデジタルカメラにおいては、撮像素子の感度向上や画像処理の高度化により、ISO感度が数万といった高感度なカメラが登場しているため、カメラの測光回路においては、さらなる低輝度下での測光性能の向上が必要になっている。
【0005】
このような問題点を解消するために、例えば、特許文献1では、無受光期間に予備電流を流し、フォトダイオード及び対数圧縮用ダイオードの寄生容量を充電することによって、測光回路の応答性を改善するものが開示されている。また、例えば、特許文献2では、無受光期間に発光素子で予備照射し、光電流を発生させてフォトダイオード及び対数圧縮用ダイオードの寄生容量を予備充電することで、測光回路の応答性を改善するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−077938号公報
【特許文献2】特開2008−309732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、予備電流と光電流との違いが誤差要因となるため、この差分を補償するための補償回路を設ける必要があり、回路規模が大きくなってしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載の発明においても、予備照射で発生する光電流と測光時の光電流との差分が誤差要因になる。また、予備照射のために発光素子が必要であり、コスト、実装スペースなども必要になるという欠点がある。
【0009】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、低輝度下において測光に要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明にかかる撮像装置は、被写体を測光する測光手段と、前記測光手段の出力値が所定値となるように当該測光手段をリセットするリセット手段と、前記リセットを行ったときの前記測光手段の第1の出力値と、当該リセットを行ってから第1の時間が経過したときの前記測光手段の第2の出力値と、当該リセットを行ってから前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過したときの前記測光手段の第3の出力値と、に基づいて、測光値を予測する予測手段と、前記予測手段により予測された測光値に基づいて露出演算を行う露出演算手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明にかかる測光値の予測方法は、露出演算に用いる測光値の予測方法であって、被写体を測光する測光手段の出力値が所定値となるように当該測光手段をリセットするリセットステップと、前記リセットを行ったときの前記測光手段の第1の出力値と、当該リセットを行ってから第1の時間が経過したときの前記測光手段の第2の出力値と、当該リセットを行ってから前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過したときの前記測光手段の第3の出力値と、に基づいて、測光値を予測する予測ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低輝度下において測光に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態における撮像装置の概略構成図。
【図2】本発明の第1の実施形態における撮像装置のブロック図。
【図3】本発明の第1の実施形態における測光回路の回路図の一例を示した図。
【図4】本発明の第1の実施形態における測光回路の応答性を示した図。
【図5】測光出力の時間特性を予測する予測関数を示した図。
【図6】本発明の第1の実施形態における測光動作のメインフローチャート。
【図7】図5のメインフローチャートで取得される測光値と時間の関係を示した図。
【図8】測光出力の時間特性を予測する予測関数を決定するフローチャート。
【図9】本発明の第2の実施形態における測光動作のメインフローチャート。
【図10】測光回路からの読み出しと時間との関係を示した図。
【図11】本発明の第3の実施形態における測光関連部分を示した図。
【図12】本発明の第4の実施形態における撮影動作のタイムチャート。
【図13】本発明の第5の実施形態における測光関連部分を示した図。
【図14】本発明の第5の実施形態における測光出力と時間の関係を示した図。
【図15】本発明の第6の実施形態における測光動作のメインフローチャート。
【図16】本発明の第6の実施形態における測光回路の温度による応答性の違いを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明に用いる図面において、同一の要素部品は同じ符号としている。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における撮像装置の概略構成図である。同図において、101はCPU(中央演算処理装置)であり、本撮像装置の各部の動作はこのCPU101により制御される。
【0016】
不図示の被写体像からの光束が、レンズユニット内の撮影レンズ115及び絞り112を介してクイックリターンミラー110に導かれる。クイックリターンミラー110の中央部はハーフミラーになっており、一部の光束が透過する。そして、この透過した光束は、クイックリターンミラー110に設置されたサブミラー116によって、117、118、119からなる公知の位相差方式焦点検出ユニットに導かれる。ここで117はフィールドレンズ、118は2次結像レンズ、119はAFセンサである。AFセンサ119の出力に基づいて、CPU101は撮影レンズ駆動制御部125に撮影レンズ115の駆動させるための駆動パルスを送る。撮影レンズ駆動制御部125は送られてきた駆動パルスに応じてパルスモータを駆動させ、撮影レンズ115を合焦位置に駆動させることで自動焦点調節を行う。
【0017】
一方、クイックリターンミラー110で反射された光束は、焦点検出板(以降「ピント板」と称す)120、ペンタプリズム121を介して接眼レンズ122に導かれる。なお、ピント板120は撮影レンズ115の撮像素子113結像面と等価の結像面に配され、クイックリターンミラー110で反射された被写体像はピント板120で1次結像する。
【0018】
また、接眼レンズ122の近傍に配置された測光回路100は、測光プリズム123、測光レンズ124によってピント板120に結像した被写体像を測光回路100のチップ上に2次結像させることで被写体の測光を行う。
【0019】
撮影者が不図示のレリーズボタンを押すと、クイックリターンミラー110は撮像素子113への光路外に退避する。一方、撮影レンズ115によって集光された光束はフォーカルプレーンシャッタ111(以下、シャッタとする)にて光量制御がなされ、CMOS等の撮像素子113によって光電変換処理された後、撮影画像として不図示の記録メディアに記録される。
【0020】
図2は、本実施形態の撮像装置のブロック図である。測光回路100は被写界を複数の領域に分割して測光し、それぞれの領域の測光データを順次出力する。測光回路100から出力された測光データは記憶部102に記憶される。記憶部102に記憶された測光データは、測光値判定部103、測光制御部104、予測関数算出部106及び露出演算部107へ出力される。測光値判定部103は、測光回路100から出力された測光データが測光回路100の安定時に出力された測光データか否かを、出力された測光データの値と記憶部102に保持された閾値との比較に基づいて判定する。
【0021】
測光制御部104は、記憶部102に記憶されている測光データと測光値判定部103の判定結果に基づいて、測光回路100の電荷の蓄積及び蓄積された電荷の読み出しを行うタイミングを制御する。測光回路100の動作の詳細については、後に詳しく説明する。
【0022】
露出演算部107では、記憶部102に格納されている測光データと、レンズデータ108内に収められているレンズユニットの焦点距離、開放絞り値、射出瞳位置、ケラレ情報などのレンズデータなどに基づいて、被写体の適正露出値の演算を行う。
【0023】
露出制御部109は、不図示のレリーズボタンが押されると、露出演算部107により演算された適正露出値に基づいてクイックリターンミラー110、シャッター111、絞り112などを制御し、露光を行う。なお、記憶部102、測光値判定部103、測光制御部104、予測関数算出部106、露出演算部107、及び露出制御部109はすべてCPU101によって実現されているが、その機能の一部あるいは全部を他の電気回路によって実現することも可能である。
【0024】
図3は、本実施形態の測光回路100の詳細な構成を示す回路図の一例である。図3において、Q1は入射光に応じて電荷を発生する光電変換領域をベースに有するNPNのフォトトランジスタ、MP1はQ1のベース電位を固定するためのPMOS、IはMP1の負荷である電流源である。MP2はMP1のゲート電位をMP1のドレインにフィードバックするためのPMOS、MP3はQ1にキャリアの注入を強制的に行うための画素リセット(以下、リセット動作ともいう)用のPMOSである。そして、206はQ1のエミッタ電流を対数圧縮するための対数圧縮部である。
【0025】
なお、測光回路100の構成は図3に示す回路構成に限られるものではなく、フォトトランジスタのベース電位(光電変換領域)をリセットできる構成を有する回路構成であればよい。例えば、特開2000−77644号公報、特開2010−45293号公報、特開2010−45294号公報等に記載された回路のフォトトランジスタのベース電位をリセット可能な構成として、測光回路100に利用することができる。
【0026】
定電流が流れたMP1のゲート電圧は、電圧VCCに対して、一定の電位差Vthとなるので、Q1のベース電位もQ1に入射する光強度によらず一定電位となる。また、MP2を用いてフィードバックを形成することにより、さらにQ1のベース電位を安定化させている。これにより、大きなベース容量Ccbの充放電は行う必要がない。したがって、図3に示した測光回路の応答性は、コレクタ容量よりは小さい、エミッタ容量Ceb及びMP2のドレイン容量と光電流により決定される。したがって、応答性による影響が見え始める低輝度下では、測光値は、実際の輝度に相当する値よりも高くなってしまうため、実際の輝度に相当する値よりも高い測光値に基づいて露出制御を行い撮影することで露出アンダーの撮影画像になってしまう。
【0027】
図4は、測光回路100の応答性を示す図であって、測光出力の時間特性を模式的に示している。図4(a)は、被写体輝度に応じて測光出力の時間特性がどのように変化するかを示した図である。縦軸は、測光回路100の出力値を示し、横軸は、リセット動作後の経過時間を示している。グラフの各系列は、輝度による違いの例であり、それぞれ輝度=BV0、BV−2、BV−3、BV−4、BV−6の時の測光出力の変化を示している。
【0028】
図4(a)に示すように、測光出力はリセット動作を行うと輝度=BV−1のときと同程度の値となり、その後、エミッタ容量Ceb及びMP2のドレイン容量の充放電に伴い、適正な値に安定する。輝度=BV0の系列で示すように、輝度がBV−1よりも高輝度な被写体を測光する場合、リセット動作後の時間T1において直ちに値は安定する。T1は例えば10msといった極めて短い時間である。しかし、輝度がBV−1よりも低輝度になるにつれて測光出力の値が安定するまでの時間は長くなる。これは、エミッタ容量Ceb及びMP2のドレイン容量の充放電時間が光電流に比例しているためである。
【0029】
測光回路100は、図3で説明した測光回路を複数集積させることで、被写体を分割した複数の領域ごとに測光することができる。しかしながら、そうした構成においては、画素ごと、あるいはチップごとにリセット動作電位や寄生容量、トランジスタの電流増幅率hFEがばらついてしまい、図4(a)にて説明した測光出力の時間特性にもバラツキが生じてしまう。そのため、以下のような問題が生じる。
【0030】
図4(b)及び(c)はセンサ特性の違いによる測光出力の違いを説明する図であり、チップ内で異なる位置にあるセンサ特性の異なる2つの画素をそれぞれ画素A、画素Bとして説明する。なお、図4(b)及び(c)は、画素A及び画素Bについて、同一の輝度の被写体を測光した場合の測光出力の時間特性を示し、時間T1及び時間(T1+T2)において読み出された測光出力をプロットしている。
【0031】
図4(b)はリセット電位の違いが測光出力に与える影響を示したものである。画素Bは画素Aよりリセット電位が高いため、同じ輝度の被写体を測光しているにもかかわらず、画素Bのほうが画素Aよりも時間T1及び時間(T1+T2)において読み出された2つの測光出力の差分は大きくなる。
【0032】
また、図4(c)は寄生容量の違いが測光出力に与える影響を示したものである。画素Bは画素Aより寄生容量が大きいため、寄生容量の充放電に時間がかかり、画素Bのほうが画素Aよりも時間T1及び時間(T1+T2)において読み出された2つの測光出力の差分は小さくなる。そのため、測光出力が安定するまでの間に得られた2つの測光出力に基づいて安定後の測光出力の値を予測する場合に、画素A及び画素Bのそれぞれの予測測光値は、センサ特性のバラツキにより同一の輝度の被写体を測光したとしても異なる値になってしまう。つまり、センサ特性のバラツキを考慮した上で測光値予測を行うには、センサ特性由来のパラメータからなる予測関数で測光値予測を行う必要がある。
【0033】
そこで、本実施形態では、図5に示すように測光出力の時間特性を3つのパラメータからなる予測関数
V=(VR−VT)exp(−kt)+VT (1)
で表し、3つの測光出力により上記の式のパラメータを決定することによって測光値を予測する。ここで、Vはリセット動作後、時間t経過したときの測光出力の値、VR、VT、kは測光出力の時間特性を決めるパラメータである。つまり、Vの値はt=∞の時に、過渡状態から安定した際の測光値となるということをこの式は示している。t=0でV=VRとなることから、VRはリセット電位に関するパラメータ、t→∞でV=VTとなり、予測測光値であるVTに収束する。kは測光出力の時間特性のカーブの曲率を規定するパラメータであり、寄生容量やhFE、光電流などに依存する。
【0034】
以上のように、上記の式(1)を用いて3つの測光出力からセンサ特性由来のパラメータを決定して測光値を予測するため、画素ごとに予測関数を調整する必要がなくなる。
【0035】
図6は、本実施形態における測光動作を説明するフローチャートである。CPU101は、ステップS501で測光回路100を動作させてリセット動作を行い、リセット動作を行った後、直ちにステップS502で測光回路100の出力の読み出しを行い、読み出して得られた測光値AE0(第1の出力値)を記憶部102に記憶する。
【0036】
ステップS503でCPU101は測光安定待ちを時間T1(第1の時間)行う。安定待ち時間T1は、たとえば図4の説明と同様の10msに設定される。ステップS504でCPU101は測光回路100の出力の読み出しを行い、読み出して得られた測光値AE1(第2の出力値)を記憶部102に記憶する。ステップS505では測光値判定部103によって判定が行われ、測光値AE1の値が所定の閾値以上(BVa以上)であれば、ステップS506へ進み、CPU101は測光安定待ちを時間T2行う。
【0037】
測光値AE1の値が所定の閾値未満(BVa未満)の場合は、ステップS507へ進み、CPU101は測光安定待ちを時間T2より長い時間T2’行う。これは、図4(a)で示したように、輝度=BV−4、BV−6のような極低輝度では、経過時間が(T1+T2)(第2の時間)となる頃まで測光出力が同様に推移するため、測光安定待ち時間がT2では正しい予測演算が行えないからである。そこで、T2より長い時間T2’だけ測光安定待ちを行うことにより、極低輝度における予測の精度を高めるものである。
【0038】
したがって、時間T1における測光出力をもとに極低輝度か否かを判定するために、BVaは例えばBV−2.7などに設定する。ただ、予測精度よりも測光時間を短くすることを優先したい場合は、閾値(BVa)を適宜下げることにより、ステップS506に進みやすくしておけばよい。
【0039】
ステップS505の判定結果に基づいて測光安定待ちを行った後、ステップS508でCPU101は3つ目の測光値AE2(第3の出力値)を取得し、記憶部102に記憶する。ステップS509で予測関数算出部106は3つの測光値AE1〜AE2の値から予測関数である式(1)の各パラメータを決定し、ステップS510でCPU101は予測測光値を算出して露出演算に用いる測光値として記憶部102に記憶して測光動作を終了する。
【0040】
次に、予測演算に用いる3つの測光値と取得時間の関係を図7に示す。図7中の時間特性において、実線部は測光動作中であることを示し、破線部は3つの測光値から予測された時間特性を示している。
【0041】
図7に示すように、リセット動作を行ってから時間T1が経過してから得る2つ目の測光値AE1が所定の閾値以上(BVa以上)の場合には、時間T1から更に時間T2経過してから3つ目の測光値AE2を得て予測演算を行う。そのため、リセット動作を行ってから時間(T1+T2)だけ経過すれば測光出力が安定したときの出力値を正確に予測することができ、測光出力が安定するまで待つ場合に比べて測光に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0042】
また、2つ目の測光値AE1が所定の閾値未満(BVa未満)の場合には、時間T1から更に時間T2’経過してから3つ目の測光値AE2を得て予測演算を行う。そのため、極低輝度下であっても、リセット動作を行ってから時間(T1+T2’)だけ経過すれば測光出力が安定したときの出力値を正確に予測することができ、測光出力が安定するまで待つ場合に比べて測光に要する時間を短縮することができる。
【0043】
図8は、予測関数算出部106が3つの測光値AE0〜AE2から式(1)の各パラメータを決定する方法を説明するフローチャートである。ステップS509で予測関数生成のサブルーチンが実行されると、ステップS601で1つ目の測光値AE0をVRとする。次に、ステップS602で2つ目の測光値AE1と測光値AE1を取得した時間T1、及び、3つ目の測光値AE2と測光値AE2を取得した時間(T1+T2)をそれぞれ式(1)に代入する。なお、測光値AE2を取得した時間が(T1+T2’)の場合には、それを式(1)に代入する。ステップS603では、ステップS602で得られたVT及びkに関する連立方程式を解くことにより、予測関数の各パラメータを決定する。なお、予測演算を行うCPU101の性能により複雑な演算ができない場合は、1つ目の測光値AE1及び2つ目の測光値AE2を取得する際の安定待ち時間をそろえておくとよい。すなわち、それぞれの安定待ち時間T1=T2とすると、
AE1=(AE0−VT)exp(−kT1)+VT (2)
AE2=(AE0−VT)exp(−k・2T1)+VT (3)
が得られる。式(2)、(3)からkを消去するとVTに関する一次方程式に帰着でき、
VT=(AE0・AE2−AE12)/(AE0+AE2−AE1) (4)
と、比較的単純な演算により予測測光値を求めることができる。
【0044】
以上のように、測光出力が安定するまでの間に得られた3つの測光出力に基づいて安定後の測光出力を予測する予測関数の各パラメータを決定し、予測測光値を演算することで、センサ特性のバラツキに影響されない正確な予測測光値を得ることができる。また、測光出力が安定するまでの間に得られた3つの測光出力に基づいて安定後の測光出力を予測することで、測光出力が安定するまでの時間が長い低輝度下において、測光に要する時間を短縮することができる。また、極低輝度下においても、安定待ち時間を変更して測光値の予測に用いる測光出力が出力されるタイミングを変更することで、正確な予測測光値を得ることができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図9は、本発明にかかる第2の実施形態における測光動作を説明するフローチャートである。測光に要する時間を短縮するために測光安定待ち時間T1を短くしようとした場合、図4で示したように、測光安定待ち時間T1が短くなるほど2つ目の測光値AE1の輝度ごとの差が小さくなる。そのため、第1の実施形態で説明した測光値の予測方法では正確な予測測光値が得られない場合がある。そこで、第1の実施形態では図6のステップS505において2つ目の測光値AE1の値に応じて分岐させているところを、本実施形態では、3つ目の測光値AE2に応じて分岐させる。
【0046】
まず、ステップS701でCPU101は測光回路100を動作させてリセット動作を行い、リセット動作を行った後、直ちにステップS702で測光回路100の出力の読み出しを行い、読み出して得られた測光値AE0を記憶部102に記憶する。続いて、CPU101は第1の実施形態と同様にして2つ目の測光値AE1、3つ目の測光値AE2を取得し、それぞれ記憶部102に記憶する。ここで、測光に要する時間を短縮するため、測光安定待ち時間T1やT2は、例えば5msといった短時間に設定する。ステップS706で3つ目の測光値AE2を取得後、ステップS707で3つ目の測光値AE2の値に応じて分岐させる。
【0047】
まず、測光値AE2が第2の閾値以上(例えばBV0以上)の場合、測光値判定部103は測光出力が十分に安定していると判定し、CPU101はステップS708で測光値AE2をそのまま露出演算に用いる測光値とする。一方、測光値AE2が第1の閾値以上で第2の閾値未満(例えばBV−3.5以上0未満)といった範囲にある場合、ステップS709、ステップS710で第1の実施形態と同様に、CPU101は3つの測光値AE0〜AE2に基づいて予測測光値を得る。また、測光値AE2が第1の閾値未満(BV−3.5未満)だった場合は、3つ目の測光値取得時点でもなお注入キャリアの影響が大きいほどの極低輝度だと考えられる。そのため、CPU101はステップS711で測光安定待ちを時間T3(第3の時間)行い、ステップS712で4つ目の測光値AE3(第4の出力値)を取得し、記憶部102に記憶する。そして、CPU101はステップS709、ステップS710で直近の3つの測光値AE1〜AE3に基づいて予測測光値を得る。
【0048】
以上のように、安定待ち時間を短く設定する場合であっても、測光出力に応じて測光回数を変えることにより、必要最小限の時間で測光を行い、正確な予測測光値を得ることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、3つ目の測光値AE2が第2の閾値未満の場合には、更に測光を行って得られた4つ目の測光値AE3を予測演算に用いているが、測光値AE3も第2の閾値未満の場合に更に測光を行って5つ目の測光値AE4を得るようにしてもよい。
【0050】
(第3の実施形態)
図10は、第1及び第2の実施形態にかかる測光回路100の測光出力と時間との関係を示す図である。第1及び第2の実施形態では、t=0でV=VRとなることから、リセット動作直後に得られた測光値AE0をt=0でのVとみなし、AE0=VRとして式(1)を用いて予測演算を行っている。
【0051】
しかしながら、測光回路100からリセット動作直後の測光出力を読み出す場合、測光回路100では一定時間電流を蓄積しなくてはならず時間t0’まで蓄積した値を読み出さなければならない。そのため、図10に示すようにリセット動作してから時間t0’が経過するまでの間にも測光出力は変化しており、リセット動作直後に得た測光値AE0とリセット動作を行ったときの測光値にはわずかながら誤差が生じている。
【0052】
そこで、本実施形態では、上述した誤差を考慮して予測演算を行う構成としている。図11は、本実施形態における測光関連部分の構成を示した図である。310はリセット電圧設定部、300は測光回路100、φRES入力部301、VRES入力部302、出力部303からなる測光ユニットである。
【0053】
リセット電圧設定部310は、DCDCコンバーターなどからなっており、測光ユニット300に最適とされる電圧を供給する。一方で、測光ユニット300内部の測光回路100に達するまでにVRES入力部302を介するので、Q1に達するまでにリセット電圧設定部310で設定した電圧は変化してしまう。
【0054】
Q1での電圧は非常にシビアなものであり、ちょっとした差が、測光結果に大きく影響されてしまうことになる。そのため、リセット電圧を厳密に管理しても測光ユニット300のリセット動作を行ったときの測光出力を予測することは困難である。
【0055】
そこで、本実施形態では、以下のようにして、リセット動作時の測光出力を工場での組み立て時などに読み出して予め記憶部102に記憶しておく。
【0056】
まず、CPU101は、測光制御部104よりφRES信号を出力し、MP3をオンする。そうするとリセット電圧設定部310で設定された電圧が、VRES入力部302より入力されQ1のベース電位を確定する。
【0057】
この状態のまま対数圧縮部206を所定時間動作させることにより出力部303を経由してAD変換部105にリセットした状態での電圧(リセット中の電圧)が読み込まれる。読み込まれた値は記憶部102に記憶される。
【0058】
本実施形態では、以上のようにして記憶部102に記憶した測光値をリセット動作を行ったときの測光値AE0として用いるため、リセット動作を行った直後に測光は行わない。その後の測光動作は、図6のステップS503以降、あるいは、図9のステップS703以降と同様の処理を行えばよいので説明は省略する。
【0059】
以上のように、測光値の予測演算に用いるリセット動作時の測光値を予め記憶しておくことで、正確な予測測光値を得ることができる。
【0060】
(第4の実施形態)
本実施形態では、第3の実施形態とは異なり、撮影直前にリセット動作直後の測光値を読み出して記憶部102に記憶しておく場合について説明する。
【0061】
図12は、本実施形態におけるリセット動作直後の測光値を読み出すタイミングを示したタイミングチャートである。
【0062】
図12(a)は、撮像装置の電源がONになってからのタイミングチャートを示している。まず、撮像装置の電源がONになったあと期間Tpが経過するまではクイックリターンミラー110の位置が不定であり、測光回路100に光束が安定して導かれているとは限らない。そのため、このTpの期間の測光出力は、露出演算などに用いるのには適さない。一方、測光回路100のリセット動作は外部からの光束の有無によらず行うことが可能である。つまり、測光回路100のリセット動作中(φRESを出力してMP3をオンにした状態)は、測光回路100に導かれる光束の光量は測光値には影響しない。
【0063】
そのため、CPU101はこの期間Tpの間にリセット状態での読み出しを行い記憶部102に測光値を記憶しておく。そして、時間t0になってリセット動作を解除し本来の測光動作を開始する。
【0064】
連写撮影を行う場合は図12(b)のように動作する。本実施形態における撮像装置は、露光中(撮像素子113に光が導かれている状態)は、クイックリターンミラー110がアップした状態かミラー駆動の途中であり、測光回路100には光束が安定して導かれておらず、その期間は正確に測光ができない期間となる。
【0065】
そこで、本実施形態では、CPU101はこの期間Tpの間にリセット状態での読み出しを行い記憶部102に測光値を記憶しておく。そして、時間t0になってリセット動作を解除し本来の測光動作を開始する。
【0066】
その後の測光動作は、図6のステップS503以降、あるいは、図9のステップS703以降と同様の処理を行えばよいので説明は省略する。
【0067】
以上のように、測光を行うのに適さない期間においてリセット動作時の測光値を取得し記憶しておくことで、予測演算により正確な予測測光値を得ることができる。
【0068】
(第5の実施形態)
本実施形態は、測光回路100のリセット動作におけるリセット電圧を輝度に応じて変更可能な点が第4の実施形態と異なっている。図13は、本実施形態の測光関連部分を示した図であり、図11のリセット電圧設定部310が可変式リセット電圧設定部311に変更されていて、その他の部分は図11と同様である。
【0069】
安定待ち時間は、図4に示すように、低輝度においてリセット時の測光出力の値と収束する測光出力の値との差が大きいほど長くなる。そこで、測光により得られるであろう測光値を測光を行う前に予測しておき、リセット電位を予測した測光値にできる限り近づける。なお、リセット電位は連続的に変化できることが望ましいが、説明の簡単化のため、以下では離散的にリセット電位を設定する回路で説明する。
【0070】
図14は、本実施形態の測光回路100の測光出力と時間との関係を示す図である。連写撮影中は被写体の輝度が大きく変わりにくいと想定し、例えば、記憶部102に記憶された前回の測光出力がBV5だった場合、CPU101はBV5に近いリセット電圧を出力させるために可変式リセット電圧設定部311のSW311aをオンする。そうすると図14(a)のように、リセット動作を行うと測光出力はResetAの値でリセットされる。そのため、リセット動作時の測光出力の値と収束する測光出力の値との差を小さくすることができ、リセット動作後の時間t1において安定した測光出力を得ることができる。すなわち、第1ないし第4の実施形態で説明したような予測演算を行うことなく正確な測光値を得ることができる。
【0071】
ところが、被写体の輝度が急に変わった場合は、収束する測光出力の値は大きく変わる。例えば、前回の測光出力はBV5に収束したが今回はBV0に収束する場合は、図14(b)に示すように測光出力は変化する。すなわち、前回の測光出力が収束したBV5に合わせてResetAの値でリセットされるが、リセット動作後に測光出力は急に下落する。このような場合であるかは、時間t1において得る測光出力の値とリセット動作時の測光出力の値との差が所定値以上であるか否かによって判断できる。そのため、このような場合であると判断した場合には、第1ないし第4の実施形態で説明したような予測演算を行うことで正確な予測測光値を得ることができる。そして、今回の測光出力がBV0だったことを記憶部102に記憶し、CPU101はBV0に近いリセット電圧を出力させるために可変式リセット電圧設定部311のSW311bをオンする。そうすると、次にリセット動作を行うと測光出力はResetBの値でリセットされる。
【0072】
以上のように、測光回路100のリセット動作におけるリセット電圧を輝度に応じて変更することで、予測演算することなく正確な測光値を得ることができる状況を増やすことができる。
【0073】
(第6の実施形態)
図15は本実施形態における測光動作を説明するフローチャートである。本実施形態では、不図示の温度検出手段により取得した撮像装置の温度に応じて測光安定待ち時間を変更する点で他の実施形態と異なる。図16は、測光回路100の温度による応答性の違いを示す図であり、45度などの高温下では、通常使用時に想定される温度範囲下のときに比べて暗電流の影響で定常状態にある測光出力の値が高くなってしまう。その結果、10msなどといった短い測光安定待ち時間では、測光安定待ち時間後に得た測光出力の値の輝度による差異が小さくなるため正確な予測測光値を得ることが困難となる。そこで、高温化では測光安定待ち時間を長くすることにより、正確な予測測光値を得ることができるようにする。
【0074】
以下、図15のフローチャートについて説明する。まず、ステップS801でCPU101は測光回路100を動作させてリセット動作を行い、リセット動作を行った後、直ちにステップS802で測光回路100の出力の読み出しを行い、読み出して得られた測光値AE0を記憶部102に記憶する。続いて、ステップS803で温度検出手段により温度を検出し、検出した温度が所定温度Taより高い場合、ステップS810へと遷移する。そして、CPU101は、2つ目、3つ目の測光値取得のための測光安定待ち時間を通常より長く設定し(T1’、T2’)、ステップS811で測光値AE1、ステップS813で測光値AE2をそれぞれ取得して記憶部102に記憶する。記憶部102に記憶された3つの測光値AE0〜AE2からステップS808で予測関数算出部106は測光出力の予測関数を生成する。そして、CPU101はステップS809で予測測光値を算出して露出演算に用いる測光値として記憶部102に記憶して測光動作を終了する。
【0075】
ステップS803で検出した温度が所定温度Ta以下の場合、CPU101はステップS804〜S807で通常の測光安定待ち時間(T1、T2)で、2つ目、3つ目の測光値AE1、AE2を取得する。
【0076】
以上のように、検出した温度が所定温度より高い場合には、所定温度以下の場合よりも測光安定待ち時間を長くすることで、高温度下であっても正確な予測測光値を得ることができる。
【0077】
なお、上記の6つの実施形態はそれぞれ他の実施形態と組み合わせることも可能であり、例えば、第1の実施形態の構成に第6の実施形態の構成を組み合わせてもよい。
【0078】
また、上記の実施形態において、測光安定待ち時間に基づいて測光を行うのではなく、所定周期で測光を繰り返し行い、その中から測光安定待ち時間が経過したときに行った測光の測光出力を予測演算に用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
100 測光回路
101 CPU
111 シャッター
112 絞り
113 撮像素子
300 測光ユニット
310 リセット電圧設定部
311 可変式リセット電圧設定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を測光する測光手段と、
前記測光手段の出力値が所定値となるように当該測光手段をリセットするリセット手段と、
前記リセットを行ったときの前記測光手段の第1の出力値と、当該リセットを行ってから第1の時間が経過したときの前記測光手段の第2の出力値と、当該リセットを行ってから前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過したときの前記測光手段の第3の出力値と、に基づいて、測光値を予測する予測手段と、
前記予測手段により予測された測光値に基づいて露出演算を行う露出演算手段と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
測光時の状態に基づいて、前記予測に用いる前記測光手段の出力値が出力されるタイミングを決定する制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2の出力値が所定の閾値未満の場合、前記第2の出力値が当該所定の閾値以上の場合よりも前記第2の時間を長くすることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第3の出力値が第1の閾値未満の場合、
前記制御手段は、前記リセットを行ってから前記第2の時間よりも長い第3の時間が経過したときに前記測光手段に第4の出力値を出力させ、
前記予測手段は、前記第1の出力値の代わりに当該第4の出力値に基づいて前記予測を行うことを特徴とする請求項2または3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第3の出力値が前記第1の閾値より大きい第2の閾値以上の場合、
前記露出演算手段は、当該第3の出力値に基づいて露出演算を行うことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
温度を検出する温度検出手段を有し、
前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度が所定温度より高い場合、前記検出された温度が当該所定温度以下の場合よりも前記第1の時間及び前記第2の時間を長くすることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記測光手段の出力値あるいは前記予測手段により予測された測光値に基づいて前記リセットを行う際の前記所定値を設定する設定手段を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記設定手段は、前回の露出制御に用いた前記測光手段の出力値あるいは前記予測手段により予測された測光値に基づいて前記所定値を設定することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記第1の出力値を予め記憶する記憶手段を有し、
前記予測手段は、前記記憶手段に記憶された前記第1の出力値を前記予測に用いることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第1の出力値は、前記リセットを行った直後の前記測光手段の出力値であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第1の出力値は、前記リセット中の前記測光手段の出力値であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
露出演算に用いる測光値の予測方法であって、
被写体を測光する測光手段の出力値が所定値となるように当該測光手段をリセットするリセットステップと、
前記リセットを行ったときの前記測光手段の第1の出力値と、当該リセットを行ってから第1の時間が経過したときの前記測光手段の第2の出力値と、当該リセットを行ってから前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過したときの前記測光手段の第3の出力値と、に基づいて、測光値を予測する予測ステップと、を有することを特徴とする測光値の予測方法。
【請求項1】
被写体を測光する測光手段と、
前記測光手段の出力値が所定値となるように当該測光手段をリセットするリセット手段と、
前記リセットを行ったときの前記測光手段の第1の出力値と、当該リセットを行ってから第1の時間が経過したときの前記測光手段の第2の出力値と、当該リセットを行ってから前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過したときの前記測光手段の第3の出力値と、に基づいて、測光値を予測する予測手段と、
前記予測手段により予測された測光値に基づいて露出演算を行う露出演算手段と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
測光時の状態に基づいて、前記予測に用いる前記測光手段の出力値が出力されるタイミングを決定する制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2の出力値が所定の閾値未満の場合、前記第2の出力値が当該所定の閾値以上の場合よりも前記第2の時間を長くすることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第3の出力値が第1の閾値未満の場合、
前記制御手段は、前記リセットを行ってから前記第2の時間よりも長い第3の時間が経過したときに前記測光手段に第4の出力値を出力させ、
前記予測手段は、前記第1の出力値の代わりに当該第4の出力値に基づいて前記予測を行うことを特徴とする請求項2または3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第3の出力値が前記第1の閾値より大きい第2の閾値以上の場合、
前記露出演算手段は、当該第3の出力値に基づいて露出演算を行うことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
温度を検出する温度検出手段を有し、
前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度が所定温度より高い場合、前記検出された温度が当該所定温度以下の場合よりも前記第1の時間及び前記第2の時間を長くすることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記測光手段の出力値あるいは前記予測手段により予測された測光値に基づいて前記リセットを行う際の前記所定値を設定する設定手段を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記設定手段は、前回の露出制御に用いた前記測光手段の出力値あるいは前記予測手段により予測された測光値に基づいて前記所定値を設定することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記第1の出力値を予め記憶する記憶手段を有し、
前記予測手段は、前記記憶手段に記憶された前記第1の出力値を前記予測に用いることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第1の出力値は、前記リセットを行った直後の前記測光手段の出力値であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第1の出力値は、前記リセット中の前記測光手段の出力値であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
露出演算に用いる測光値の予測方法であって、
被写体を測光する測光手段の出力値が所定値となるように当該測光手段をリセットするリセットステップと、
前記リセットを行ったときの前記測光手段の第1の出力値と、当該リセットを行ってから第1の時間が経過したときの前記測光手段の第2の出力値と、当該リセットを行ってから前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過したときの前記測光手段の第3の出力値と、に基づいて、測光値を予測する予測ステップと、を有することを特徴とする測光値の予測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−189702(P2012−189702A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51790(P2011−51790)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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