説明

撮像装置及び画像生成方法

【課題】低解像動画から高解像画像を取得できる撮像装置及び画像生成方法等を提供すること。
【解決手段】撮像装置は、撮像素子と、読み出し制御部と、推定演算部と、画像出力部を含む。撮像素子は、複数の受光素子PD1〜PD4とフィルタ部CFを有する。読み出し制御部は、複数の受光素子の受光値を読み出して低解像フレーム画像を取得する。推定演算部は、低解像フレーム画像に基づいて、低解像フレーム画像の画素ピッチよりも小さい画素ピッチの推定画素値を推定する。画像出力部は、推定画素値に基づいて、低解像フレーム画像よりも高解像度の高解像フレーム画像を出力する。フィルタ部CFは、1つの受光素子PD1に対応するフィルタとして、異なる色の複数のフィルタc1〜c4が配列される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び画像生成方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子の各受光素子には、それぞれ1色のカラーフィルタが対応している。例えば、ベイヤ配列の撮像素子では、赤色フィルタ、緑色フィルタ、青色フィルタのいずれかのカラーフィルタが1つの受光素子に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−124621号公報
【特許文献2】特開2008−243037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、撮像により得られた低解像画像から高解像画像を生成する手法を開発している。この手法は、例えば撮像画像のデータ量を削減したり、そのデータを表示する際の高解像化を行うために用いられる。
【0005】
従来は、上述のように1つの受光素子に1色のカラーフィルタが対応した撮像素子により得られた画像を高解像化する。例えば特許文献1、2には、画素シフトを行いながら低解像画像を撮像し、撮像された低解像画像から高解像画像を生成する手法が開示されている。
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、低解像動画から高解像画像を取得できる撮像装置及び画像生成方法等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数の受光素子とフィルタ部を有する撮像素子と、前記複数の受光素子の受光値を読み出して低解像フレーム画像を取得する読み出し制御部と、前記低解像フレーム画像に基づいて、前記低解像フレーム画像の画素ピッチよりも小さい画素ピッチの推定画素値を推定する推定演算部と、前記推定画素値に基づいて、前記低解像フレーム画像よりも高解像度の高解像フレーム画像を出力する画像出力部と、を含み、前記フィルタ部には、1つの受光素子に対応するフィルタとして、異なる色の複数のフィルタが配列される撮像装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、異なる色の複数のフィルタを透過した光が受光素子により受光される。そして、その受光値による低解像フレーム画像が取得され、その低解像フレーム画像に基づいて推定画素値が推定され、その推定画素値に基づいて高解像フレーム画像が出力される。これにより、低解像画像から高解像画像を推定することと等が可能になる。また、複数のフィルタを透過した光を1つの受光素子で受光するため、複数受光値の加算値に相当する受光値を取得可能になる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記複数のフィルタの各フィルタは、重み付けされた透過率を有し、前記推定演算部は、前記重み付けされた透過率により得られた受光値に基づいて前記推定を行ってもよい。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記フィルタ部は、前記1つの受光素子に対応するフィルタとして、ベイヤ配列のフィルタを有し、前記ベイヤ配列のフィルタは、第1緑色フィルタと、赤色フィルタと、青色フィルタと、第2緑色フィルタを有し、前記赤フィルタと前記青色フィルタの透過率は、前記第1緑色フィルタの透過率に対して1/r(rは1以上の実数)であり、前記第2緑色フィルタの透過率は、前記第1緑色フィルタの透過率に対して1/rであってもよい。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記フィルタ部は、カラーフィルタと、前記重み付けされた透過率を有するNDフィルタと、を有してもよい。
【0012】
このようにすれば、透過率が重み付けされた複数のフィルタを透過した光を、1つの受光素子で受光できる。これにより、透過率の重み付けがない場合に比べて、より高解像な推定画素値を求めることが可能になる。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記読み出し制御部は、画素を重畳しながら順次画素シフトさせて被写体像をサンプリングし、前記画素シフトしながら前記撮像素子により各撮像動作を行い、前記各撮像動作により得られた前記画素の受光値を低解像フレーム画像として取得してもよい。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記読み出し制御部は、前記画素を、第1のポジションと、前記第1のポジションの次の第2のポジションに順次設定して前記画素シフトを行い、前記推定演算部は、前記第1のポジションの画素と前記第2のポジションの画素が重畳する場合に、前記第1のポジションの画素の受光値と前記第2のポジションの画素の受光値の差分値を求め、前記差分値に基づいて前記推定画素値を推定してもよい。
【0015】
本発明の一態様によれば、画素を重畳しながら順次画素シフトされ、画素シフトされながら撮像素子により各撮像動作が行われて受光値が取得され、低解像フレーム画像が取得される。そして、画素が順次画素シフトされることで得られた複数の受光値に基づいて推定画素値が推定される。このとき、重畳する第1、第2のポジションの画素の受光値の差分値に基づいて推定画素値が推定される。これにより、簡素な処理で低解像動画から高解像画像を取得すること等が可能になる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記推定演算部は、前記第1のポジションの画素から重畳領域を除いた第1の受光領域の受光値である第1の中間画素値と、前記第2のポジションの画素から前記重畳領域を除いた第2の受光領域の受光値である第2の中間画素値との関係式を、前記差分値を用いて表し、前記関係式を用いて前記第1、第2の中間画素値を推定し、推定した前記第1の中間画素値を用いて前記推定画素値を求めてもよい。
【0017】
このようにすれば、画素が重畳しながら順次画素シフトさせつつ取得された受光値から中間画素値を推定し、推定した中間画素値から最終的な推定画素値を求めることができる。これにより、高解像フレーム画像の画素値推定を簡素化できる。
【0018】
また、本発明の一態様では、推定演算部は、前記第1、第2の中間画素値を含む連続する中間画素値を中間画素値パターンとする場合に、前記中間画素値パターンの中間画素値間の関係式を、前記画素の受光値を用いて表し、中間画素値間の関係式で表された前記中間画素値パターンと前記画素の受光値とを比較して類似性を評価し、前記類似性の評価結果に基づいて、前記類似性が最も高くなるように、前記中間画素値パターンに含まれる各中間画素値を決定してもよい。
【0019】
このようにすれば、画素が重畳されながら画素シフトされることで取得された複数の受光値に基づいて、中間画素値を推定できる。
【0020】
また、本発明の一態様では、前記推定演算部は、中間画素値間の関係式で表された前記中間画素値パターンと前記画素の受光値との誤差を表す評価関数を求め、前記評価関数の値が最小となるように、前記中間画素値パターンに含まれる各中間画素値を決定してもよい。
【0021】
このようにすれば、評価関数の値が最小となるように中間画素値の値を決定することで、中間画素値パターンと受光値の類似性が最も高くなるように中間画素値の値を決定できる。
【0022】
また、本発明の他の態様は、撮像素子が複数の受光素子とフィルタ部を有する撮像素子における画像生成方法であって、前記フィルタ部に、1つの受光素子に対応するフィルタとして、異なる色の複数のフィルタが配列される場合に、前記複数の受光素子の受光値を読み出して低解像フレーム画像を取得し、前記低解像フレーム画像に基づいて、前記低解像フレーム画像の画素ピッチよりも小さい画素ピッチの推定画素値を推定し、前記推定画素値に基づいて、前記低解像フレーム画像よりも高解像度の高解像フレーム画像を出力する画像生成方法に関係する。
【0023】
また、本発明のさらに他の態様では、画素を重畳しながら順次画素シフトさせて被写体像をサンプリングし、前記画素シフトしながら前記撮像素子により各撮像動作を行い、前記各撮像動作により得られた前記画素の受光値を低解像フレーム画像として取得し、前記画素を、第1のポジションと、前記第1のポジションの次の第2のポジションに順次設定して前記画素シフトを行い、前記第1のポジションの画素と前記第2のポジションの画素が重畳する場合に、前記第1のポジションの画素の受光値と前記第2のポジションの画素の受光値の差分値を求め、前記差分値に基づいて前記推定画素値を推定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の撮像素子の構成例。
【図2】撮像素子の第1の詳細な構成例。
【図3】撮像素子の第2の詳細な構成例。
【図4】撮像素子の第3の詳細な構成例。
【図5】NDフィルタの詳細な構成例。
【図6】撮像素子の第4の詳細な構成例。
【図7】撮像装置の基本構成例。
【図8】推定処理ブロックの説明図。
【図9】図9(A)は、受光値の説明図であり、図9(B)は、中間画素値の説明図。
【図10】第1の推定手法における中間画素値の推定手法の説明図。
【図11】第1の推定手法における中間画素値の推定手法の説明図。
【図12】第1の推定手法における中間画素値の推定手法の説明図。
【図13】図13(A)、図13(B)は、第1の推定手法における推定画素値の推定手法の説明図。
【図14】第1の推定手法における推定画素値の推定手法の説明図。
【図15】第1の推定手法における推定画素値の推定手法の説明図。
【図16】第1の推定手法における推定画素値の推定手法の説明図。
【図17】第2の推定手法の説明図。
【図18】第2の推定手法の説明図。
【図19】第2の推定手法の説明図。
【図20】第2の推定手法の説明図。
【図21】第2の推定手法における探索範囲設定の説明図。
【図22】第2の推定手法の概要説明図。
【図23】第3の推定手法の説明図。
【図24】第3の推定手法の概要説明図。
【図25】第4の推定処理の説明図。
【図26】ノイズフィルタの構成例。
【図27】受光値の第1の補間手法の説明図。
【図28】補間処理のタイミングチャート例。
【図29】受光値の第2の補間手法の説明図。
【図30】受光値の第2の補間手法の説明図。
【図31】フュージョンフレームに対する動き補償の説明図。
【図32】撮像装置と画像処理装置の第1の詳細な構成例。
【図33】撮像装置と画像処理装置の第2の詳細な構成例。
【図34】図34(A)は、第5の推定手法における受光値の説明図であり、図34(B)は、第5の推定手法における中間画素値の説明図。
【図35】第5の推定手法における中間画素値の推定手法の説明図。
【図36】第5の推定手法における中間画素値の推定手法の説明図。
【図37】第5の推定手法における中間画素値の推定手法の説明図。
【図38】第5の推定手法における推定画素値の推定手法の説明図。
【図39】第6の推定手法における中間画素値の推定手法の説明図。
【図40】第6の推定手法における中間画素値の推定手法の説明図。
【図41】第6の推定手法における中間画素値の推定手法の説明図。
【図42】第6の推定手法における推定画素値の推定手法の説明図。
【図43】第6の推定手法における推定画素値の推定手法の説明図。
【図44】第6の推定手法における推定画素値の推定手法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0026】
1.比較例
まず、本実施形態の比較例について説明する。デジタルカメラやビデオカメラの製品には、静止画撮影を主とするデジタルカメラに動画撮影機能をもたせたものや、動画撮影を主とするビデオカメラに静止画撮影機能をもたせたものがある。これらのカメラでは、静止画撮影モードと動画撮影モードを切り換えて使用するものが多い。中には、動画撮影並の高速フレームレートにより高精細静止画を撮影可能とするものがあり、短時間の高速連写が可能である。このような機器を使えば、静止画と動画の撮影を一つの機器でまかなえるという利便さがある。
【0027】
しかしながら、これらの手法では、多くの人が求めるシャッターチャンスを逃さず高品位な静止画を得ることが難しいという課題がある。例えば、動画撮影中に高品位静止画を撮影するモードに瞬時に切り替える方法では、動画が途切れてしまったり、ユーザが気づいたときには既に決定的瞬間を逃してしまっているという課題がある。
【0028】
このシャッターチャンスを逃さないという課題を解決するには、動画撮影により全てのシーンをもれなく撮影しておいて、その中から自由に決定的瞬間を高品位な静止画として得る手法が考えられる。この手法を実現するためには、高精細画像を高速フレームレートにより撮影可能とすることが必要である。
【0029】
しかしながら、この手法の実現は容易ではない。例えば、1200万画素の画像を60fps(fps:フレーム/秒)で連続して撮影するためには、超高速撮像可能な撮像素子、撮像データを超高速処理する処理回路、超高速データ圧縮処理機能、莫大なデータを記録する記録手段が必要になる。このためには、複数撮像素子の使用、並列処理、大規模メモリー、高能力放熱機構などが必要になるが、小型化や低コストが求められる民生用機器においては非現実的である。動画撮影のハイビジョン(200万画素)程度の解像度の高品位でない静止画であれば実現可能であるが、ハイビジョン程度の解像度では静止画としては不十分である。
【0030】
また、高フレームレートの動画撮影を行う手法として、多画素で高精細画像が撮影できる高画素イメージセンサを用い、画素の間引き読み出しあるいは隣接画素の加算読出しによって低解像画像化し、1回の読み出しデータを低減することにより実現する手法が考えられる。しかしながら、この手法では、高精細画像を高フレームレートにより撮影することができない。
【0031】
この課題を解決するためには、高フレームレートで撮影された低解像画像から高解像画像を得る必要がある。低解像画像から高解像画像を得る手法として、例えば、画素シフトにより撮影した低解像画像に対して所謂超解像処理を行い、高解像画像を生成する手法が考えられる。
【0032】
例えば、その手法として、加算読み出しを用いた手法が考えられる。すなわち、低解像画像を順次位置ずらししながら読み出した後、それら複数の位置ずれ画像に基づいて高精細化画像を一旦仮定する。そして、仮定した画像を劣化させて低解像画像を生成し、元の低解像画像と比較し、その差異が最小になるように高精細画像を変形させ、高精細画像を推定する。この超解像処理として、ML(Maximum-Likelihood)法、MAP(Maximum A Posterior)法、POCS(Projection Onto Convex Set)法、IBP(Iterative Back Projection)法などが知られている。
【0033】
また、超解像処理を用いた手法として、上述の特許文献1に開示された手法がある。この手法では、動画撮影時に画素シフトさせた低解像画像を時系列的に順次撮影し、それらの複数低解像画像を合成することにより高解像画像を仮定する。そして、この仮定した高解像画像に対して上記の超解像処理を施し、尤度の高い(尤もらしい)高解像画像を推定する。
【0034】
しかしながら、これらの手法では、2次元フィルタを多用する繰り返し演算により推定精度を上げていく一般的な超解像処理を用いている。そのため、非常に処理の規模が大きくなったり、処理時間が増大したりしてしまい、処理能力やコストの制限がある機器への適用は困難であるという課題がある。例えば、デジタルカメラのような小型携帯撮像装置に適用すると、処理回路の規模が大きくなり、消費電力の増大、大量の熱の発生、コストの大幅アップなどの課題が生じてしまう。
【0035】
また、上述の特許文献2には、画素シフトさせた複数枚の低解像画像を使って高解像画像を生成する手法が開示されている。この手法では、求めたい高解像画像を構成する仮の画素を副画素とおき、その副画素の平均値が、撮影された低解像画像の画素値と一致するように副画素の画素値を推定する。この画素値の推定では、複数の副画素の初期値を設定し、算出したい副画素を除く副画素の画素値を低解像画像の画素値から差し引いて画素値を求め、それを順次隣接する画素に対して適用する。
【0036】
しかしながら、この手法では、初期値の特定が上手くいかないと推定誤差が非常に大きくなるという課題がある。この手法では、初期値を設定するために、副画素の画素値変化が小さく、ほぼそれらの平均値とそれらをカバーする低解像画素値が等しくなる部分を画像から見つけ出している。そのため、初期値の設定に適当な部分が撮影画像から見つけられないと、初期値の推定が困難になってしまう。また、初期値の設定に適当な部分を探索する処理が必要になってしまう。
【0037】
2.撮像素子
そこで本実施形態では、色の異なる複数のカラーフィルタが1画素内に配列された撮像素子により撮像する。そして、画素シフト(画素ずらし)により高フレームレートの低解像動画を撮像し、その低解像動画から簡素な画素推定手法で高解像画像を生成する。生成した高解像画像を用いて、動画の中の任意タイミングの高解像静止画を取得したり、高フレームレートの高解像動画を取得する。
【0038】
なお、本実施形態の撮像素子では一般的なカラー画像は撮像されないが、本明細書では、本実施形態の撮像素子により撮像された被写体像を適宜画像や動画と呼ぶこととする。
【0039】
ここで、以下では図7〜図44で後述する画素シフトと推定処理を行う場合を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、本実施形態の撮像素子により取得された低解像画像に対して、種々の公知の高解像化手法を適用してもよい。
【0040】
図1に、本実施形態の撮像素子の構成例を示す。図1は、撮像素子をフィルタ部CF側から平面視した場合の模式図である。撮像素子は、フィルタ部CF、受光素子PD1〜PD4(受光領域)を含む。
【0041】
受光素子PD1〜PD4は、フィルタ部CFを透過した光の光電変換を行う素子であり、例えばフォトダイオードやフォトトランジスターである。例えば、受光素子PD1〜PD4は、水平走査方向と垂直走査方向に沿ってマトリックス状に配列される。なお以下では受光素子PD1を例に説明するが、他の受光素子についても同様である。
【0042】
受光素子PD1に対応するフィルタ部は、複数色のフィルタcf1〜cf4で構成される。フィルタcf1〜cf4は、全て異なる色であってもよいし、一部同色であってもよい。このフィルタcf1〜cf4と受光素子PD1により撮像素子の画素が構成される。図7で後述するように、本実施形態では機械的な画素シフトが行われ、図9(A)で後述するように、画素シフトしながら画素の受光値a00,a10,a11,a01を順次取得する。
【0043】
3.撮像素子の詳細な構成例
図2に、撮像素子の第1の詳細な構成例を示す。図2のH1は1画素の平面視図であり、H2、H3は側面図である。図2に示す撮像素子は、第1緑色フィルタgr、赤色フィルタr、青色フィルタb、第2緑色フィルタgb、受光素子PD1を含む。
【0044】
フィルタgr,r,b,gbは、それぞれG(グリーン),R(レッド),B(ブルー),G(グリーン)を透過する原色系フィルタである。フィルタgr,r,b,gbの透過光による受光値を便宜的にv00,v10,v01,v11とすると、受光素子PD1の受光値はa00=v00+v10+v01+v11と表される。
【0045】
図7〜図44で後述する推定処理を行うと、例えば3メガピクセルの撮像素子を利用して12メガピクセルの画像が得られる。上述の受光値v00,v10,v01,v11は、12メガピクセルの画像の画素値に対応する。具体的には、受光値v00,v10,v01,v11の加算は、下式(1),(5)で後述する中間画素値や推定画素値の加算に対応する。すなわち、複数のフィルタgr,r,b,gbを透過した光を共通の受光素子PD1で受光するため、複数受光値の加算が画素内で行われる。
【0046】
本実施形態では、後述する推定処理によりGr,R,B,Gbのモザイク画像が求められる。このモザイク画像に対してデモザイキング処理を行うことで、高解像なカラー画像が得られる。
【0047】
本実施形態によれば、複数のフィルタに対して受光素子を共通化するため、プロセスルール(配線幅)が同じ場合には画素が大きくなることで相対的に開口率を向上可能である。また、開口率が向上することで感度を向上できる。また、画素が大きくなることでセンサを製造する際の歩留まりを向上できる。
【0048】
図3に、撮像素子の第2の詳細な構成例を示す。図3に示す撮像素子は、第1緑色フィルタg、赤色フィルタr1/r、青色フィルタb1/r、第2緑色フィルタgb1/r、受光素子PD1を含む。
【0049】
フィルタg,r1/r,b1/r,gb1/rは、個別に透過率が設定されている。具体的には、フィルタr1/r,b1/rの透過率は、フィルタgbの透過率に対して1/r(rは、r≧1の実数)の重み付けがされている。フィルタgb1/rの透過率は、フィルタgbの透過率に対して1/rの重み付けがされている。すなわち、受光素子PD1の受光値はa00=v00+(1/r)v10+(1/r)v01+(1/r)v11と表される。例えば、透過率の重み付けは、カラーフィルタの色素濃度や、カラーフィルタの厚さを変えることで実現できる。
【0050】
本実施形態によれば、より高解像な推定画素値を推定可能になる。具体的には、被写体像のサンプリングにおいて、画素開口をコンボリューションの窓関数と考えることができる。上記の重み付けがされた場合、重み付けされない場合(r=1)に比べてより高周波成分の多い窓関数となる。そのため、受光値a00にも高周波成分がより多く含まれ、その受光値a00から推定された画素値もより高解像となる。
【0051】
また、本実施形態によれば、重み付け加算の重み付け係数をカラーフィルタの透過率により設定できるため、重み付け加算のための回路やソフトウエアを削減できる。具体的には、受光素子の外部において電気信号で加算する場合には、アナログ方式ではアンプのゲインを重み付けに応じたものに設定する必要があり、デジタル方式では割り算やビットシフトなどの計算を行う必要がある。そのため、回路規模の増加や演算速度の低下が発生する。この点、本実施形態では、重み付けを各カラーフィルタの透過率で設定するため、そのような問題が発生しない。
【0052】
図4に、撮像素子の第3の詳細な構成例を示す。図4に示す撮像素子は、第1緑色フィルタgr、赤色フィルタr、青色フィルタb、第2緑色フィルタgb、ND(Neutral Density)フィルタNF、受光素子PD1を含む。
【0053】
NDフィルタNFは、全波長域(例えば可視光帯域)に対して比較的一定の透過率を示すフィルタである。本実施形態では、上述の重み付けをNDフィルタNFにより行う。図5にNDフィルタNFの詳細な構成例を示す。NDフィルタNFは、第1〜第4フィルタnd1〜nd4を含む。フィルタnd1〜nd4は、それぞれフィルタgr,r,b,gbと平面視において重なっている。フィルタgr,r,b,gbの透過率は、全て重み付け1である。フィルタnd2,nd3の透過率は、フィルタnd1の透過率に対して1/rの重み付けがされている。フィルタnd4の透過率は、フィルタnd1の透過率に対して1/rの重み付けがされている。
【0054】
なお本実施形態では、フィルタNFはNDフィルタに限定されず、波長の選択を目的としないフィルタであればよい。
【0055】
本実施形態によれば、波長選択用のRGBフィルタgr,r,b,gbを、従来と同じ手法で製造することが可能である。そのため、重み付け加算を行うために特別にカラーフィルタの材質やプロセスを用意する必要がない。また、透過率の制御を目的としたNDフィルタは、広く知られ利用されているフィルタであるため、重み付けの実現が容易である。
【0056】
図6に、撮像素子の第4の詳細な構成例を示す。図6に示す撮像素子は、シアンフィルタc、マゼンダフィルタm、イエローフィルタy、緑色フィルタg、受光素子PD1を含む。
【0057】
フィルタc,m,y,gは、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)、G(グリーン)を透過する補色系フィルタである。本実施形態では、後述の推定処理により、C,M,Y,Gのモザイク画像が求められる。このモザイク画像に対してRGB変換やデモザイキング処理を行うことで、高解像なカラー画像が得られる。なお、上述のように透過率の重み付けを行うことも可能である。すなわち、カラーフィルタの透過率を調整してもよいし、NDフィルタを加えて透過率を調整してもよい。
【0058】
以上のように本実施形態の撮像装置は、撮像素子と、読み出し制御部と、推定演算部、画像出力部を含む。図1に示すように、撮像素子は、複数の受光素子PD1〜PD4と、フィルタ部CFを有する。読み出し制御部は、複数の受光素子PD1〜PD4の受光値を読み出して低解像フレーム画像を取得する。推定演算部は、低解像フレーム画像に基づいて、低解像フレーム画像の画素ピッチよりも小さい画素ピッチの推定画素値を推定する。画像出力部は、推定画素値に基づいて、低解像フレーム画像よりも高解像度の高解像フレーム画像を出力する。この場合に、フィルタ部CFには、1つの受光素子PD1に対応するフィルタとして、異なる色の複数のフィルタcf1〜cf4が配列される。
【0059】
本実施形態では、読み出し制御部は、図32等で後述する重畳シフトサンプリング部140に対応する。推定演算部は、図32等で後述する画素値推定演算部230に対応する。画像出力部は、図32等で後述するアンチエリアシングフィルタ240に対応する。なお、フィルタ部CFやフィルタcf1〜cf4は、カラーフィルタのみから構成されてもよく、カラーフィルタと他のフィルタを含んでもよい。
【0060】
本実施形態によれば、異なる色の複数のフィルタcf1〜cf4の透過光を1つの受光素子PD1で受光できる。これにより、上述のように開口率の向上やセンサ感度の向上が可能になる。また本実施形態によれば、低解像画像を撮像し、その低解像画像から高解像画像を求めることが可能になる。すなわち、受光値に対して後述の推定処理を行うことで高解像画像を推定できる。これにより、撮像画像データのデータ量を削減できるため、ストレージの節約や通信データ量の削減が可能になる。
【0061】
また本実施形態では、図3に示すように、複数のフィルタの各フィルタは、重み付けされた透過率を有する。図39〜図44で後述するように、推定演算部は、重み付けされた透過率により得られた受光値に基づいて推定を行う。
【0062】
具体的には、フィルタ部CFは、1つの受光素子PD1に対応するフィルタとして、ベイヤ配列のフィルタを有する。ベイヤ配列のフィルタは、第1緑色フィルタgと、赤色フィルタr1/rと、青色フィルタb1/rと、第2緑色フィルタgb1/rを有する。赤フィルタr1/rと青色フィルタb1/rの透過率は、記第1緑色フィルタgの透過率に対して1/rである。第2緑色フィルタgb1/rの透過率は、第1緑色フィルタgの透過率に対して1/rである。
【0063】
あるいは図4に示すように、フィルタ部CFは、カラーフィルタgr,r,b,gbと、重み付けされた透過率を有するNDフィルタnd1〜nd4を有してもよい。
【0064】
このようにすれば、重み付けされた透過率の複数のフィルタを透過した光を、1つの受光素子で受光できる。これにより、上述のように、画素内で重み付け加算を行うことが可能になり、重み付けがない場合に比べて推定画像を高解像化できる。また、NDフィルタを用いた場合には、従来のカラーフィルタを利用可能なため、開発負担を軽減できる。
【0065】
4.画素シフト
以下では、本実施形態が行う推定処理について詳細に説明する。まず、図7を用いて、本実施形態が行う画素シフトについて説明する。図7には、撮像装置の基本構成例を模式的に示す。この撮像装置は、レンズ410(広義には、結像光学系)、撮像素子420(センサ、イメージャ)を含む。
【0066】
レンズ410は、被写体Objの像を撮像素子420の受光面に結像させる。C1に示すように、図示しないレンズ駆動部によりレンズ410に対して画素シフト制御が行われる。ここで、撮像素子420の画素ピッチをpとする。そうすると、レンズ410は、光軸と直交するx軸(またはy軸)に沿った方向にシフト量p/2(広義には、シフト量s<p)ずつシフトされる。このとき、レンズ410がp/2ずつシフトされるのに従って、受光面上の被写体像もシフト量p/2ずつシフトされる。
【0067】
撮像素子420は、レンズ410により結像された被写体Objの像を撮像する。具体的には、レンズ410のシフト動作ごとに撮像を行って、p/2ずつシフトされた被写体像をサンプリングする。このように、本実施形態では、画素シフトによりp/2ずつシフトされた画素ピッチpの低解像フレーム画像が取得される。
【0068】
なお、上記構成例では、レンズ410がシフト量p/2ずつシフトされる場合を例に説明したが、本実施形態では、撮像素子420がシフト量p/2ずつシフトされてもよい。
【0069】
5.第1の推定手法
本実施形態では、上述のようにして取得された画素ピッチpの低解像フレーム画像から、画素ピッチp/2の画素値を推定し、高解像フレーム画像を生成する。図8〜図16を用いて、この画素ピッチp/2の画素値を推定する手法について説明する。なお、本明細書では簡単のため、撮像素子の画素により取得される画素値を受光値と呼び、推定により得られる画素値を推定画素値と呼ぶ。
【0070】
図8に、画素推定に用いられる推定処理ブロックの説明図を示す。図8では、低解像フレーム画像の画素を実線の四角で示し、水平方向の画素位置をiで示し、垂直方向の画素位置をjで示す(i、jは自然数)。
【0071】
図8に示すように、本実施形態では、m×n画素を1ブロックとする推定処理ブロックBk00、Bk10、・・・を設定する。そして、この推定処理ブロック毎に、後述する画素値の推定処理を行う。この推定処理により、m×n画素から2m×2n画素の推定画素値が推定される。なお、以下では簡単のため、m×n=1×1画素から2×2画素を推定する場合を例に説明する。
【0072】
図9(A)、図9(B)に、推定処理に用いる受光値及び中間画素値の説明図を示す。図9(A)に示すように、撮像素子の画素ピッチpの画素(受光単位)をp/2ずつ画素シフトすることで、受光値a00、a10、a11、a01(画素値)が順次取得される。本実施形態では、この4つの受光値から画素ピッチp/2の推定画素値を推定する。なお、受光値a00〜a11は、撮像により取得された受光値そのものであってもよく、後述する時間軸補間により補間された受光値であってもよい。
【0073】
このとき、図9(B)に示すように、水平方向の画素ピッチがp/2の中間画素値b00〜b21(中間推定画素値)を受光値a00〜a11から推定する。そして、この中間画素値b00〜b21から、水平垂直方向の画素ピッチがp/2の推定画素値を最終的に推定する。
【0074】
この中間画素値の推定手法について、図10に示す水平方向の最初の行の中間画素値b00〜b20を例に説明する。受光値と中間画素値の間には、下式(1)の関係が成り立つ。
00=b00+b10
10=b10+b20 ・・・ (1)
【0075】
00を未知数(初期値、基準値)として上式(1)を変形すると、下式(2)に示すように、中間画素値b10、b20をb00の関数として表すことができる。
00=(未知数),
10=a00−b00
20=b00+δi=b00+(a10−a00) ・・・ (2)
【0076】
ここで、下式(3)に示すように、δiは1シフト離れた受光値の差分値であり、中間画素値b20、b00の差分値に対応する。
δi=a10−a00
=(b10+b20)−(b00+b10
=b20−b00 ・・・ (3)
【0077】
このようにして、b00を未知数とする高精細な中間画素値{b00,b10,b20}の組合せパターンが求められる。このb00の関数として表わされた中間画素値の値を決定するためには、未知数b00を求める必要がある。
【0078】
図11に示すように、本実施形態では、重畳シフトサンプリング(画素シフト)により検出される画素値によるパターン{a00,a10}と中間画素値によるパターン{b00,b10,b20}を比較する。そして、その誤差が最小になる未知数b00を導出し、導出した未知数b00を最終的な中間画素値b00として設定する。
【0079】
具体的には、下式(4)に示すように、誤差の評価関数Ejを未知数b00の関数で表す。そして、図12に示すように、評価関数Ejを最小(極小値)にする未知数b00=αを探索的に求める(最小二乗法)。
【数1】

【0080】
上式(4)に示すように、本実施形態では、中間画素値の平均値と、低域周波数成分をもつパターン{a00,a10}の誤差評価を行う。これにより、中間画素値{b00,b10,b20}の推定解として高域周波数成分を多く含むパターンが導出されることを抑止できる。すなわち、仮に未知数の推定が不正確となったとしても、低域周波数成分を多く含む画像を生成することになる。そのため、低域周波数成分よりも不自然さが強調され易い高域周波数成分に誤りを含むパターンを生成することを抑止でき、画像としては見た目の自然さを失うことがない。これにより、低域周波数成分に比べて高域周波数成分が小さい自然画像に対して、合理的な画素推定が可能になる。
【0081】
このようにして、中間画素値b00の値を推定し、推定したb00の値を上式(2)に代入して中間画素値b10、b20の値を決定する。そして、同様にb01を未知数として2行目の中間画素値b01〜b21を推定する。
【0082】
次に、推定した中間画素値bijを用いて最終的な推定画素値vijを求める手法について説明する。図13(A)、図13(B)に、中間画素値と推定画素値の説明図を模式的に示す。図13(A)に示すように、上述の手法で推定した3列の中間画素値b00〜b21のうち、2列の中間画素値b00〜b11を用いる。そして、図13(B)に示すように、中間画素値b00〜b11から、最終的な画素ピッチp/2の推定画素値v00〜v12を推定する。
【0083】
以下では、説明を簡単にするために、図14に示す1列目の画素値v00〜v02を例に説明する。画素値v00〜v02の推定は、上述の中間画素値の推定手法と同様の手法で行う。具体的には、中間画素値b00、b01は、画素値v00〜v02を垂直方向に2画素単位で1画素ずつシフトさせながら重畳サンプリングした値と等価である。そのため、中間画素値と推定画素値の間には、下式(5)の関係が成り立つ。
00=v00+v01
01=v01+v02 ・・・ (5)
【0084】
下式(6)に示すように、画素値v01、v02を未知数v00の関数として表すことができる。
00=(未知数),
01=b00−v00
02=v00+δj=v00+(b01−b00) ・・・ (6)
【0085】
ここで、下式(7)に示すように、δjは1シフト離れた中間画素値の差分値であり、画素値v02、v00の差分値に対応する。
δi=b01−b00
=(v01+v02)−(v00+v01
=v02−v00 ・・・ (7)
【0086】
図15に示すように、中間画素値によるパターン{b00,b10}と、推定画素値によるパターン{v00,v01、v02}の誤差が最小になる未知数v00を導出する。すなわち、下式(8)に示すように、誤差を評価関数Eiで表し、図16に示すように、その評価関数Eiを最小にする未知数v00=βを探索的に求める。
【数2】

【0087】
そして、同様の処理により2列目の画素値v10〜v12を求め、最終的な推定画素値v00、v01、v10、v11を決定する。なお、本実施形態では、最終推定画素値により構成される画像データに適当なノイズ低減処理を施して表示画像としてもよい。
【0088】
ここで、上述の実施形態では、未知数b00、v00を探索的に求める場合について説明したが、本実施形態では、未知数b00、v00を直接的に求めてもよい。すなわち、上式(4)に示す誤差Ejの式はb00の2次関数式であるので、下式(9)の形に式変形が可能である。そのため、Ejを最小にするb00の最小値αを直接的に求められる。v00の最小値βについても同様に求められる。
Ej=(b00−α)+ξ ・・・ (9)
【0089】
さて、上述のように、静止画撮影モードと動画撮影モードを切り替える手法では、ユーザがシャッターチャンスに気付いたときには既に決定的瞬間を逃していることが多いという課題がある。また、超解像処理により低解像動画から高解像静止画を合成する手法では、超解像処理が大負荷の処理であることから、処理回路の規模が増大してしまう等の課題がある。
【0090】
この点、本実施形態によれば、画素を重畳しながら順次画素シフトさせて被写体像がサンプリングされ、画素シフトされながら撮像素子により各撮像動作が行われ、各撮像動作により得られた画素の受光値が低解像フレーム画像として取得される。そして、取得された低解像フレーム画像が記憶され、記憶された複数の低解像フレーム画像に基づいて、低解像フレーム画像の画素ピッチよりも小さい画素ピッチの推定画素値が推定される。推定された推定画素値に基づいて、低解像フレーム画像よりも高解像度の高解像フレーム画像が出力される。このとき、画素シフトされる画素が、第1のポジションと、第1のポジションの次の第2のポジションに順次設定される。第1、第2のポジションの画素は、重畳する。そして、第1、第2のポジションの画素の受光値の差分値が求められ、その差分値に基づいて推定画素値が推定される。
【0091】
例えば、図7に示すように、撮像素子の画素ピッチpに対してp/2ずつ水平方向または垂直方向にシフトされる。図9(A)に示すように、この画素シフトでは、p/2ずつ画素が重畳される。第1〜第4フレームでは、受光値a00、a10、a11、a01を含む低解像フレーム画像が順次取得される。これらの低解像フレーム画像は、例えば図32に示す撮像装置10により取得され、画像処理装置20に入力され、フレームバッファ210(記憶部)に記憶される。そして、画素値推定演算部230(推定演算部)により、画素ピッチpよりも小さいピッチp/2の推定画素値v00〜v11が推定され、アンチエリアシングフィルタ240(画像出力部)により高解像フレーム画像が出力される。このとき、図9(A)に示すように、第1、第2フレームでは、受光値a00、a10を取得する第1、第2のポジションに画素が設定される。これらの画素は、推定画素v10、v11を含む領域において重畳する。そして、図10等で上述のように、差分値δi=a10−a00が求められ、差分値δiに基づいて推定画素値v00〜v11が推定される。
【0092】
これにより、簡素な処理で動画から高解像画像を取得することが可能になる。具体的には、差分値δiにより中間画素値を推定することで推定処理を簡素化できる。また、高解像静止画は、低解像動画の任意タイミングのものを生成できるため、ユーザは、決定的瞬間の高解像静止画を容易に得ることができる。また、撮影時には低解像動画(例えば3メガピクセル)を取得することで高フレームレート(例えば60フレーム)で撮影し、必要に応じて高解像静止画(12メガピクセル)やハイビジョン動画を表示できる。また、デジタルズームの場合には、画素数の低下を推定処理により補って高精細なズーム画像を生成できる。
【0093】
より具体的には、本実施形態では、第1のポジションの画素から重畳領域を除いた第1の受光領域の受光値である第1の中間画素値と、第2のポジションの画素から重畳領域を除いた第2の受光領域の受光値である第2の中間画素値との関係式が、差分値を用いて表される。そして、その関係式を用いて第1、第2の中間画素値が推定され、推定された第1の中間画素値を用いて画素の各画素の画素値が求められる。
【0094】
例えば、図9(A)、図9(B)で上述のように、第1の受光領域は、第1の中間画素値b00を取得する領域に対応する。また、第2の受光領域は、第2の中間画素値b20を取得する領域に対応する。そして、図10で上述のように、差分値δiを用いて関係式b20=b00+δiが求められる。図11で上述のように、未知数b00が推定され、関係式を用いてb20が推定される。図13(A)等で上述のように、b00を用いて、推定画素値v00、v01が求められる。
【0095】
このようにすれば、重畳シフトされた受光値から中間画素値を一旦推定し、その重畳シフトされた中間画素値から推定画素値を求めることで、高解像画像の推定処理を簡素化できる。例えば、上述の比較例に比べて、2次元フィルタの繰り返し演算(特許文献1)や、初期値の設定に適当な部分を探索(特許文献2)する等の複雑な処理が不要となる。
【0096】
また、本実施形態では、第1、第2の中間画素値を含む連続する(連続する順番の)中間画素値を中間画素値パターンとする場合に、中間画素値パターンの中間画素値間の関係式が画素の受光値を用いて表される。そして、中間画素値パターンと受光値パターン(画素の受光値)とを比較して類似性が評価され、その評価結果に基づいて、類似性が最も高くなるように中間画素値パターンの中間画素値の値が決定される。
【0097】
例えば、図11で上述したように、連続する中間画素値{b00、b10、b20}が中間画素値パターンに対応し、上式(2)で上述のように、{b00、b10、b20}間の関係式が受光値a00、a10を用いて表される。そして、中間画素値パターン{b00、b10、b20}と受光値パターン{a00、a10}を比較し、評価関数Ejで表される類似性が最も高くなるように{b00、b10、b20}の値が決定される。
【0098】
ここで、中間画素値パターンとは、水平方向(または垂直方向)に連続する中間画素値の集合である。また、受光値パターンとは、推定処理に用いる複数の低解像フレーム画像において、水平方向(または垂直方向)に連続する受光値の集合である。
【0099】
このようにすれば、画素が重畳されながら画素シフトされることで取得された複数の受光値に基づいて、中間画素値を推定できる。
【0100】
より具体的には、本実施形態では、中間画素値間の関係式で表された中間画素値パターンと受光値パターンとの誤差を表す評価関数が求められる。そして、その評価関数の値が最小となるように中間画素値パターンの中間画素値の値が決定される。
【0101】
例えば、上式(4)等で上述のように、中間画素値パターン{b00、b10、b20}が未知数b00の関数として表され、中間画素値パターン{b00、b10、b20}と受光値パターン{a00、a10}との誤差が評価関数Ejで表される。図12で上述のように、評価関数Ejの値が最小となる未知数b00=α(初期値)が求められ、求められたb00によりb00〜b20の値が決定される。
【0102】
このようにすれば、誤差を評価関数で表し、その評価関数の極小値に対応する中間画素値を求めることで、中間画素値の値を推定できる。例えば、上述のように最小二乗法を用いて未知数を求めることで、簡素な処理で中間画素推定の初期値を設定できる。これにより、上述の比較例(特許文献2)と比べて、初期値設定に適当な画像部分の探索を不要にできる。
【0103】
6.第2の推定手法
図9(B)等で上述のように、中間画素値b00、b10に設定された推定処理ブロックでは、中間画素値b20まで推定される。このb20は、中間画素値b20、b30に設定された次の推定処理ブロックでの未知数(初期変数)に当たる。本実施形態では、既に推定された中間画素値b20を利用して、次に推定する未知数b20の推定を高速化することができる。
【0104】
図17〜図21を用いて、未知数の推定を高速化できる第2の推定手法について説明する。以下では、中間画素値(b20等)の推定を例に説明するが、推定画素(v02等)についても同様に推定できる。
【0105】
図17に示すように、重畳シフトサンプリングにより検出される水平方向の最初の行において、受光値a00、a10に注目すると下式(10)が成り立つ。
00=b00+b10
10=b10+b20 ・・・ (10)
【0106】
00を未知数として下式(11)が成り立つ。
00=(未知数),
10=a00−b00
20=b00+δi=b00+(a10−a00) ・・・ (11)
【0107】
ここで、δiは、下式(12)で表される。
δi=a10−a00
=(b10+b20)−(b00+b10
=b20−b00 ・・・ (12)
【0108】
図18に示すように、受光値パターン{a00,a10}と中間画素値パターンφ0={b00,b10,b20}を比較する。具体的には、下式(13)に示すように、誤差の評価関数Ejを未知数b00の関数で表す。そして、図19に示すように、評価関数Ejを最小にする未知数b00=α1を探索的に求め、上式(11)により中間画素値b10、b20の値を決定する。
【数3】

【0109】
同様に、水平方向における次の未知数b20(初期変数)を求め、中間画素値パターンφ2={b20,b30,b40}を求める。すなわち、図20に示すように、受光値a20、a30に注目すると下式(14)が成り立つ。
20=b20+b30
30=b30+b40 ・・・ (14)
【0110】
20を未知数として下式(15)が成り立つ。
20=(未知数),
30=a20−b20
40=b20+δi=b20+(a30−a20) ・・・ (15)
【0111】
ここで、δiは1シフト離れた受光値の差分値であり、下式(16)で表される。
δi=a30−a20
=(b30+b40)−(b20+b30
=b40−b20 ・・・ (16)
【0112】
次に、図20に示すように、受光値パターン{a20,a30}と中間画素値パターンφ2={b20,b30,b40}を比較する。
【0113】
具体的には、下式(17)に示すように、誤差の評価関数Ejを未知数b20の関数で表す。このとき、中間画素値b00〜b20の推定によりb20の値が既に求められていることを利用して、図21に示すように、この既に求められたb20(=α1+δi)の近傍値の範囲を探索範囲に設定する。そして、その探索範囲内で未知数b20を変化させ、評価関数Ejが最小となるb00=α2を求める。このようにすれば、下式(17)の演算回数を格段に低減し、推定処理の高速化を図ることができる。
【数4】

【0114】
上記の本実施形態によれば、図22に示すように、第1の画素(第1の受光単位)と第2の画素(第2の受光単位)が隣接する画素である。そして、画素シフトにより第1、第2の画素が、第1のポジションと、第1のポジションの次の第2のポジションに順次設定される。第1、第2のポジションの第1の画素が第1の重畳領域で重畳し、第1、第2のポジションの第2の画素が第2の重畳領域で重畳する。
【0115】
このとき、第1のポジションの第1の画素から第1の重畳領域を除いた領域が、第1の受光領域である。また、第2のポジションの第1の画素から第1の重畳領域を除いた領域が、第2の受光領域である。そして、この第1、第2の受光領域の受光値である第1、第2の中間画素値(例えば、b00、b20)が推定される(b00=α1、b20=α1+δi)。
【0116】
また、第1のポジションの第2の画素から第2の重畳領域を除いた領域が、第3の受光領域である。また、第2のポジションの第2の画素から第2の重畳領域を除いた領域が、第4の受光領域である。そして、この第3の受光領域の受光値である第3の中間画素値(b20)が未知数とされ、第4の受光値である第4の中間画素値(b40)が未知数(b20)を用いた関係式(b40=b20+δi)で表される。
【0117】
そして、第3の受光領域と第2の受光領域は同じ領域であり、第2の受光領域の中間画素値として先に求めた第2の中間画素値(b20=α1+δi)に基づいて、第3の中間画素値である未知数(b20)の探索範囲が設定される。設定された探索範囲において未知数(b20)が探索的に求められ、第3の中間画素値(b20=α2)が推定される。
【0118】
このようにすれば、中間画素値の高速推定が可能になる。すなわち、先に求めた第2の中間画素値(b20=α1+δi)に基づいて、次の推定処理ブロックで推定する未知数(b20)の探索範囲を設定できる。これにより、未知数(b20)を探索する範囲を限定し、探索回数を削減できる。
【0119】
7.第3の推定手法
上述の実施形態では、未知数(b00、b20等)を1回だけ推定するが、本実施形態では、未知数を複数回推定し、その複数の推定値に基づいて未知数の値を高精度に決定してもよい。図23を用いて、複数の推定値から未知数の値を決定する第3の推定手法について説明する。以下では、中間画素値(b20)を例に説明するが、推定画素値(v02等)も同様に推定できる。
【0120】
図23に示すように、重畳シフトサンプリングにより検出される水平方向の受光値において、まず{a00,a10}から高精細な中間画素値φ={b00,b10,b20}を求める。この中間画素値φ={b00,b10,b20}は、上式(10)〜(13)の手法と同様の手法により求める。
【0121】
次に、上式(14)〜(17)の手法と同様の手法により、{a10,a20}から高精細な中間画素値φ={b10,b20,b30}を求める。また、上式(14)〜(17)の手法と同様の手法により、{a20,a30}から高精細な中間画素値φ={b20,b30,b40}を求める。
【0122】
これら3回の推定において、中間画素値b20は、集合φ,φ,φのそれぞれに表れる。そのため、3回の推定により中間画素値b20の3つの推定値が得られることになる。本実施形態では、これら3つの推定値から最終的な中間画素値b20の値を決定(判定)する。例えば、以下の第1〜第4の決定手法により最終的な中間画素値b20の値を決定できる。
【0123】
第1の決定手法では、3つのb20の候補値の平均値をb20の最終決定値とする。
【0124】
第2の決定手法では、3つのb20の候補値の内、差分が最も小さい2つの値を特定し、特定された2つの値の平均値をb20の最終決定値とする。この手法によれば、値の近い2つの推定値を確からしい推定値とし、未知数の推定精度を向上できる。
【0125】
第3の決定手法では、既知の多数の高解像画像サンプルの画素値を加算し、受光値と中間画素値を求める。求めた受光値と中間画素値から、受光値パターンに対して発生確率が高い中間画素値パターンを予め特定しておく。そして、その予め特定した対応関係を参照して、撮影により取得された受光値パターンに対して発生確率が高い中間画素値パターンを求める。3つの中間画素値パターンφ,φ,φのうち、求めた中間画素値パターンに最も近いものを判定し、判定した中間画素値パターンの要素であるb20を最も確からしいものとして、b20の最終決定値とする。この手法によれば、自然画像等の既知の画像を反映した画素値推定を行うことができる。
【0126】
第4の決定手法では、3つのb20の導出に関わる近傍観測画素値a00〜a30の差分値δi,δi,δiの変化の度合いによって、最終的に採用するb20を決定する。ここで、b20の判定に適用する変化の度合いの組合せパターンをξ={δi,δi,δi}とする。既知の多数の高解像画像サンプルの画素値を加算し、φ,φ,φの要素パターンと組み合わせパターンξを求める。求めた要素パターンと組み合わせパターンξから、組合せパターンξに対するb20の発生確率分布を予め求めておく。最終判定では、予め求めた発生確率分布を参照して、撮像した画像から求めた差分値のパターンξに対するb20の発生確率分布を求める。そして、その発生確率分布を用いて、推定演算により得た3つのb20の候補値のどれが最も発生する確率が高いかを判定し、b20を特定する。すなわち、変化の度合いの組合せパターンξに対するb20の発生する値の確率が予め分っているため、推定処理における組合せパターンξを用いて、推定によって得られた3つのb20の候補値の中から最も確からしいb20の値を決定できる。この手法によれば、自然画像等の既知の画像を反映した画素値推定を行うことができる。また、画素値の大きさに依らず、画素値の変化の度合いに応じた画素値推定を行うことができる。
【0127】
上記の本実施形態によれば、図24に示すように、第1の画素(第1の受光単位)と第2の画素(第2の受光単位)が隣接する画素である。そして、画素シフトにより第1、第2の画素が、第1のポジションと、第1のポジションの次の第2のポジションに順次設定される。第1、第2のポジションの第1の画素が第1の重畳領域で重畳し、第1、第2のポジションの第2の画素が第2の重畳領域で重畳する。
【0128】
このとき、第1のポジションの第1の画素から第1の重畳領域を除いた領域が、第1の受光領域である。また、第2のポジションの第1の画素から第1の重畳領域を除いた領域が、第2の受光領域である。そして、この第1、第2の受光領域の受光値である第1、第2の中間画素値(例えば、b00、b20)を含む連続する中間画素値である第1の中間画素値パターン(φ={b00、b10、b20})が推定される。
【0129】
第1のポジションの第2の画素から第2の重畳領域を除いた領域が、第3の受光領域である。また、第2のポジションの第2の画素から第2の重畳領域を除いた領域が、第4の受光領域である。そして、この第3、第4の受光領域の受光値である第3、第4の中間画素値(b20、b40)を含む連続する中間画素値である第2の中間画素値パターン(φ={b20、b30、b40})が推定される。
【0130】
第2のポジションの第1の画素と第1のポジションの第2の画素との重畳領域が、第5の受光領域である。そして、この第5の受光領域の受光値である第5の中間画素値(b20)を含み、第1、第4の中間画素値(b00、b40)を含まない連続する中間画素値である第3の中間画素値パターン(φ={b10、b20、b30})が推定される。
【0131】
上記の第3、第5の受光領域は、第2の受光領域と同一の受光領域である。そして、この同一の受光領域の中間画素値(b20)が、第1〜第3の中間画素値パターン(φ、φ、φ)の推定により得られた第2、第3、第5の中間画素値(b20)に基づいて最終的に決定される。
【0132】
このようにすれば、画素値の高精度推定が可能になる。すなわち、3回(複数回)推定することで求めた3つ(複数)の推定値に基づいて、最終的な画素値を決定できる。例えば、上述のように既知の画像を利用した決定手法を用いることで、より実際の画像の画素値パターンに即した画素値推定が可能になる。
【0133】
8.第4の推定手法
上述の推定手法では、最小二乗法を用いて画素値を推定するが、本実施形態では、ニューラルネットワーク(非線形の推定手法)を用いて画素値を推定してもよい。図25を用いて、この第4の推定手法について説明する。以下では、中間画素値(b00等)の推定について説明するが、推定画素値(v00等)も同様に推定できる。
【0134】
この推定手法では、既知の高解像画像の画素値を加算して、受光値{am0,a(m+1)0}と、この受光値に対応する中間画素値φ={bm0,b(m+1)0,b(m+2)0}を求める(mはゼロ以上の整数)。これらを学習データとして、図25に示すニューラルネットワークの学習計算により重み係数Wを予め算出しておく。具体的には、下式(18)に示す誤差評価値Eがゼロ(略ゼロを含む。広義には所定値)になるように重み係数Wを算出しておく。このニューラルネットワークの学習手法は、一般的なニューラルネットワーク学習法を用いればよい。
【0135】
そして、撮影画像から推定する際には、予め算出しておいた重み係数Wを用いて推定を行う。すなわち、上式(2)等で説明した手法により中間画素値の関係式を表し、未知数bm0を変化させ、下式(18)に示す誤差評価値Eが最小になるbm0(=α)を求める。
【数5】

【0136】
上記実施形態によれば、画素の受光値{am0,a(m+1)0}に対する中間画素値パターンφ={bm0,b(m+1)0,b(m+2)0}の対応関係が、既知の高解像フレーム画像に基づいて、画素の受光値と中間画素値パターンの類似性をあらかじめ定める先見情報として取得される。そして、取得された先見情報に基づいて、中間画素値間の関係式で表された中間画素値パターンφ={bm0,b(m+1)0,b(m+2)0}と、取得された画素の受光値{am0,a(m+1)0}との類似性が評価される。
【0137】
このようにすれば、既知の高解像フレーム画像に基づいて取得された先見情報に基づいて類似性が評価されるため、自然画像等の既知の画像に含まれる画像情報(例えば空間周波数特性)を反映した画素値推定を行うことができる。
【0138】
例えば、上記第4の推定手法によれば、画像処理装置は、ニューラルネットワークを有する。このニューラルネットワークは、先見情報として、既知の高解像フレーム画像に基づく学習によって得られたノードの重み係数Wを用いる。そして、ニューラルネットワークは、中間画素値パターンφ={bm0,b(m+1)0,b(m+2)0}と画素の受光値{am0,a(m+1)0}を受けて、類似性の評価結果Eを出力する。このニューラルネットワークからの類似性の評価結果Eに基づいて、中間画素値パターンφ={bm0,b(m+1)0,b(m+2)0}の各中間画素値の値が決定される。
【0139】
このようにすれば、学習によって得られたノードの重み係数Wを用いるニューラルネットワークにより、中間画素値パターンと画素の受光値との類似性を先見情報に基づいて評価できる。
【0140】
また、上述の第3の推定手法によれば、受光値パターンに対して発生確率が高い中間画素値パターンを先見情報として求める(第3の決定手法)。また、変化の度合いの組合せパターンξ={δi,δi,δi}に対するb20の発生確率分布を先見情報として求めてもよい(第4の決定手法)。
【0141】
このようにすれば、画素値の発生確率分布を先見情報として画素値を推定できる。これにより、自然画像等の既知の画像で発生確率の高い画素値を推定値にできる。
【0142】
9.適応ノイズ低減処理
本実施形態では、推定された画素値vijに対して、画素位置に応じたノイズフィルタ処理(広義にはフィルタ処理)を行ってもよい。図26に、ノイズフィルタの構成例を示す。
【0143】
例えば、画素シフトによる重畳シフトサンプリングにより画素推定を行った場合、最終推定画素vij〜v(i+1)(j+1)の位置によってノイズの出方が異なる。そこで、図26に示すように、固定階調のベタ画像(固定階調チャート)を撮像し、その撮像画像に対して推定処理を行い、推定した異なる位置の最終推定画素vij〜v(i+1)(j+1)をノイズ比較部NHにより比較する。そして、比較した結果に基づいて、生成ノイズの大きい画素位置のノイズフィルタF1〜F4のノイズ低減効果を強くするように、フィルタ係数設定部FKによりフィルタ係数を設定する。結果的に、vij〜v(i+1)(j+1)の位置に依らずノイズの出方が同じ(ほぼ同様)になるように、フィルタ係数を設定する。このようにしてフィルタ係数を設定したフィルタ処理を行うことで、予測画素画像の画像品質を高めることができる。
【0144】
上記のノイズフィルタ処理によれば、推定により得られた推定画素値vij〜v(i+1)(j+1)に対して、推定画素の画素位置に応じて異なるフィルタ係数のフィルタ処理が行われる。
【0145】
このようにすれば、推定画素の画素位置によって異なるノイズが発生する場合でも、推定画素の画素位置に応じたノイズフィルタ処理を行うことで、そのノイズを低減することができる。
【0146】
10.第1の補間手法
本実施形態では、画素値の推定に用いる受光値(a00等)として、重畳サンプリングにより取得された受光値をそのまま用いてもよく、補間により生成された受光値を用いてもよい。図27、図28を用いて、本実施形態における受光値の補間手法について説明する。図27には、第1の補間手法の説明図を示す。
【0147】
なお、以下の説明で用いるフレームとは、例えば撮像素子により1つの低解像フレーム画像が撮影されるタイミングや、画像処理において1つの低解像フレーム画像が処理されるタイミングである。あるいは、画像データにおける1つの低解像フレーム画像や高解像フレーム画像も適宜フレームと呼ぶ。
【0148】
この第1の補間手法では、他のフレームで取得された受光値を用いて補間対象のフレームの受光値を補間する(時間軸補間)。
【0149】
具体的には、図27のA1に示すように、フレームfx〜fx+3において、受光値aij、a(i+1)j、a(i+1)(j+1)、ai(j+1)を順次取得する。フレームfx+4では、再び受光値aijを取得する。すなわち、A2に示すように、受光値aijで構成される低解像フレーム画像は、4フレーム毎にフレームfx、fx+4、fx+8、・・・で取得される。A3に示すように、この受光値aijの時系列データに対して時間軸補間フィルタ処理(フィルタ処理)を行う。そして、A4に示すように、この時間軸補間フィルタ処理により、全フレーム(各フレーム)において受光値a’ijが生成される。
【0150】
このようにして、各受光値を4フレーム毎に取得し、時間軸補間フィルタ処理を行って、全フレームにおいて受光値a’ij、a’(i+1)j、a’(i+1)(j+1)、a’i(j+1)を生成する。
【0151】
図28に、補間処理のタイミングチャート例を示す。図28のB1に示すように、各フレームにおいて、画素の設定位置を1/2画素ずつずらす。B2に示すように、各フレームでフュージョンフレームF1、F2、・・・(低解像フレーム画像。fusion-frame)を撮影する。B3に示すように、低解像動画フレームを生成し、ライブビュー表示や録画を行う。B4に示すように、受光値の時間軸補間を行い、補間後の受光値を用いて画素値推定を行い、高解像静止画フレームを生成する。B5に示すように、全受光値が補間される9フレーム目から高解像静止画や、高解像動画を出力する。
【0152】
さて、低解像フレーム画像は画素シフトにより順次取得されるため、画素値推定に用いる受光値が全て取得されるためには4フレーム必要となる。そのため、撮影された受光値をそのまま画素値推定に用いると、異なるフレームの受光値を推定に用いることになり、被写体が動いている場合に画質が劣化する可能性がある。
【0153】
この点、上記の実施形態によれば、画素シフトが各フレームfx、fx+1、・・・で行われ、画素シフトにより画素が複数のポジション(例えば4ポジション。上述の図27に示すP1〜P4)に順次設定される。そして、複数のフレーム毎(4フレーム毎)に画素が同じポジションに設定される。このようにして、時系列に各ポジションに対応した受光値aij〜a(i+1)(j+1)が取得され、取得された受光値により低解像フレーム画像が時系列に取得される(連続低解像フレーム画像)。
【0154】
取得された連続低解像フレーム画像に対して、複数のポジションP1〜P4の画素の受光値a’ij〜a’(i+1)(j+1)を補間する処理が行われる。具体的には、補間対象のフレーム(例えばfx+1)の連続低解像フレーム画像での欠落したポジション(例えばP1)の画素の受光値(a’ij)が時間軸補間される。すなわち、受光値(a’ij)は、欠落したポジションと同じポジション(P1)の、補間対象のフレーム(fx+1)の前後のフレーム(fx、fx+4)の連続低解像フレーム画像での画素の受光値(aij)を用いて時間軸補間される。
【0155】
そして、時間軸補間により補間された連続低解像フレーム画像に基づいて、各フレームfx、fx+1、・・・での画素の各画素の画素値vijが推定される。
【0156】
このようにすれば、画素シフトにより受光値が取得され、取得された受光値を用いて欠落したポジションの受光値を補間し、補間後の受光値から最終推定画素値を求めることができる。これにより、各フレームに全ポジションの受光値を補間できるため、同じフレームでの受光値から画素値推定を行い、被写体が動いている場合でも画質劣化を抑止できる。
【0157】
例えば、上記の実施形態では、時間軸補間が時間軸補間フィルタにより行われる。
これにより、各ポジション(例えばP1)の受光値(fx、fx+4のaij)をそれぞれ時間軸補間し、欠落ポジション(fx+1〜fx+3のP1)の受光値(a’ij)を生成できる。
【0158】
11.第2の補間手法
本実施形態では、被写体の動きに応じた適応的な受光値の補間を行ってもよい。図29、図30を用いて、適応的な受光値の補間を行う第2の補間手法について説明する。
【0159】
第2の補間手法では、動きのない又は小さい部分(受光値)については、近隣前後のフレームの受光値を適用し、動きのある又は大きい部分については、同一フレーム内において近接受光値から重畳シフトした受光値を補間推定する。但し、パンニング(panning)などを行うと全画素に動きがあると判定されるため、事前に動き補償処理を行ってもよい。
【0160】
以下では、図29に示される低解像画像フレームfx〜fx+4の中からフレームfx+1に着目し、このフレームの高解像静止画像を生成する場合を例に説明する。図30には、説明を簡単にするために、フレームfx+1において撮像データとして取得した受光値の一部を示す。図30では、取得した受光値を、a10(x+1)、a(−1)0(x+1)、a(−1)2(x+1)、a12(x+1)で示す。
【0161】
図30に示すように、例えばa10(x+1)を構成する4つの高解像画素を求めるには、このa10(x+1)を基準として画素ピッチp/2だけシフトした3つの受光値a00(x+1)、a01(x+1)、a11(x+1)を補間により求める必要がある。以下では、これらの3つの受光値を求める手法について説明する。
【0162】
まず、図29のD1に示すように、a00(x+1)の対応位置で取得された、前後近隣フレームfx、fx+4のa00(x)とa00(x+4)を比較する。そして、その差が所定閾値δよりも小さい場合には、フレームfx、fx+4の間で、a00(x+1)に対応する画素位置を被写体(動きのある被写体の一部)が通過しなかったと判断する。この場合は、D2に示すように、a00(x+1)の値としてa00(x)またはa00(x+4)を割当てる。
【0163】
一方、a00(x)とa00(x+4)の差が所定閾値δよりも大きい場合には、フレームfx、fx+4の間で、a00(x+1)に対応する画素位置を被写体が通過したと判断する。この場合は、D3に示すように、同一フレーム内でa00(x+1)に近接する受光値a10(x+1)とa(−1)0(x+1)を用いて補間値を求め、a00(x+1)の値とする。例えば、a10(x+1)とa(−1)0(x+1)の平均値をa00(x+1)の値とする。但し、本実施形態では、近接した2つの受光値の平均でなく、より多くの周辺の受光値を用いて補間してもよい。
【0164】
上記のa00(x+1)の補間手法をまとめると、下式(19)で表される。
|a00(x)−a00(x+4)|≦δのとき、
00(x+1)=a00(x)=a00(x+4)
|a00(x)−a00(x+4)|>δのとき、
00(x+1)={a10(x+1)+a(−1)0(x+1)}/2
・・・ (19)
【0165】
同様に、D4、D5に示すように、a11(x+1)は下式(20)で補間される。
|a11(x−2)−a11(x+2)|≦δのとき、
11(x+1)=a11(x−2)=a11(x+2)
|a11(x−2)−a11(x+2)|>δのとき、
11(x+1)={a10(x+1)+a12(x+1)}/2
・・・ (20)
【0166】
D6、D7に示すように、a01(x+1)は下式(21)で補間される。
|a01(x−1)−a01(x+3)|≦δのとき、
01(x+1)=a01(x−1)=a01(x+3)
|a01(x−1)−a01(x+3)|>δのとき、
01(x+1)={a10(x+1)+a(−1)2(x+1)}/2
・・・ (21)
【0167】
なお、閾値δは、生成される画像品質を評価し、許容されるレベルの閾値δを設定すればよい。例えば、静止画にも関わらず、ノイズにより動きがあると判定されないレベルに設定すればよい。
【0168】
上記第2の補間手法によれば、補間対象のフレーム(例えばfx+1)の前後のフレーム(例えばfx、fx+4)での画素の受光値の差分値(a00(x)−a00(x+4))が求められる。そして、差分値が所定の閾値δより小さい場合には、補間対象のフレーム(fx+1)での欠落したポジション(位置)の画素の受光値(a00(x+1))が、前後のフレーム(fx、fx+4)での、欠落したポジションと同じポジションの画素の受光値(a00(x)、a00(x+4))を用いて補間される。一方、差分値が所定の閾値δより大きい場合には、補間対象のフレーム(fx+1)での欠落したポジションの画素の受光値(a00(x+1))が、補間対象のフレーム(fx+1)で取得された受光値(a10(x+1)、a(−1)0(x+1))を用いて補間される。
【0169】
このようにすれば、被写体の動きに応じて適応的に受光値を補間できる。具体的には、動きが小さい画素では、同一位置で取得された受光値を用いるため、位置的な誤差を低減できる。一方、動きが大きい画素では、同一フレームで取得された受光値を用いるため、時間的な誤差を低減できる。例えば、フレームfxとfx+4の間で、いつ被写体が通過したのかを受光値a00(x)、a00(x+4)から知ることはできない。そのため、a00(x)、a00(x+4)から補間すると、被写体の通過タイミングより前のタイミングであっても被写体の動きの影響が出てしまう。本実施形態では、被写体が通過したと判断したときには、同一フレームの受光値で補間するため、被写体の通過タイミングを正確に反映できる。
【0170】
また、第2の補間手法によれば、動きの誤検出による画質劣化を抑止できる。例えば、4フレーム撮像の期間内に所定閾値δを超える単なる明るさの変化があった場合、単なる明るさの変化を被写体の動きとして誤検出する可能性がある。この点、第2の補間手法によれば、誤検出された場合であっても、フレーム内補間に切り替わるだけなので著しく画質劣化してしまうことを抑止できる。
【0171】
なお、上記第1、第2の補間手法では、動き補償による受光値の補間を行ってもよい。例えば、図31に示すように、高フレームレート(1/60秒)で撮影された連続するフュージョンフレームを4つ用い、各フュージョンフレームに対して動き補償を行って1枚の静止画(低フレームレート1/15秒で撮影した高精細画像相当)を生成してもよい。
【0172】
12.撮像装置、画像処理装置
図32、図33に、上記推定処理や時間軸補間処理を行う撮像装置と画像処理装置の詳細な構成例を示す。
【0173】
図32に、ズーム選択を画素シフトの前で行う撮像装置と画像処理装置の第1の詳細な構成例を示す。この撮像装置10は、低域通過光学LPF100(LPF:ローパスフィルタ)、通常サンプリング部110、広域通過光学LPF120、ズーム領域選択部130、重畳シフトサンプリング部140(読み出し制御部)を含む。画像処理装置20は、アンチエリアシングフィルタ200、フレームバッファ210(記憶部)、時間軸画素補間部220(補間処理部)、画素値推定演算部230(推定処理部)、アンチエリアシングフィルタ240を含む。
【0174】
なお、本実施形態の撮像装置及び画像処理装置はこの構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。また、図32では、画像処理装置20が撮像装置10の外部に設けられる例を図示するが、本実施形態では、画像処理装置20が撮像装置10の内部に設けられてもよい。
【0175】
撮像装置10は、例えばデジタルカメラや、ビデオカメラである。また、画像処理装置20は、例えば画像処理エンジン(IC)や、PC(コンピュータ)により実現される。この撮像装置10と画像処理装置20は、ワイド撮影(通常撮影、非ズーム撮影)を行う第1のモードと、デジタルズーム撮影を行う第2のモードで動作する。これらのモードは、例えば撮像装置10と画像処理装置20の図示しない制御部により設定される。なお、以下では、12Mpix(Mpix:メガピクセル)の撮像素子を用いる場合を例に説明する。
【0176】
撮像装置10が第1のモードに設定されると、低域通過光学LPF100が設定される。この低域通過光学LPF100は、撮像素子の解像度12Mpixに対応した通過帯域をもつローパスフィルタである。そして、通常サンプリング部110が、画素シフト撮像ではなく、通常のワイド撮影により12Mpixの画像を撮影する。例えば、撮影レートは15fpsである。
【0177】
画像処理装置20のアンチエリアシングフィルタ200は、その画像をアンチエリアシング処理し、12Mpixの静止画像または動画を出力する。
【0178】
一方、撮像装置10が第2のモードに設定されると、広域通過光学LPF120が設定される。この広域通過光学LPF120は、画素シフトによる高解像画像に対応した通過帯域をもつローパスフィルタである。例えば、1/2画素ピッチで画素シフトする場合、4×12=48Mpixの解像度で撮像できる通過帯域をもつ。そして、ズーム領域選択部130が読み出し領域を設定する。例えば、2倍デジタルズームの場合、12/4=3Mpixの読み出し領域を設定する。重畳シフトサンプリング部140は、画素シフト制御を行いながら、読み出し領域から受光値を読み出す。例えば、撮影レートは15×4=60fpsである。
【0179】
画像処理装置20のフレームバッファ210は、補間処理に必要な8フレームの撮像画像をバッファリングする。時間軸画素補間部220は、その8フレームの画像から受光値を補間処理する。そして、画素値推定演算部230が、補間処理された受光値から推定画素値を求め、3×4=12Mpixの画像を出力する。アンチエリアシングフィルタ240は、その画像をアンチエリアシング処理し、12Mpicsの高精細な2倍デジタルズーム画像を出力する。
【0180】
図33に、ズーム選択を画素シフトの後で行う撮像装置と画像処理装置の第2の詳細な構成例を示す。この撮像装置10は、広域通過光学LPF120、重畳シフトサンプリング部140を含む。画像処理装置20は、フレームバッファ210、時間軸画素補間部220、画素値推定演算部230、アンチエリアシングフィルタ240、ズーム領域選択部250を含む。
【0181】
この撮像装置10と画像処理装置20は、推定処理による高精細化後にデジタルズームを行う。具体的には、広域通過光学LPF120は、4×12=48Mpixの解像度で撮像できる通過帯域をもつ。重畳シフトサンプリング部140は、画素シフト制御を行いながら、撮像素子の画素数12Mpixで撮影を行う。例えば、撮影レートは60fpsである。
【0182】
そして、フレームバッファ210が8フレームの画像をバッファリングし、時間軸画素補間部220が受光値を補間処理し、画素値推定演算部230が推定画素値を求め、4×12=48Mpixの画像を出力する。ズーム領域選択部250は、ズーム倍率に応じてズーム領域を設定し、その領域の画像をトリミングする。例えば、ズームなしの場合、48Mpixの画像をそのまま出力し、2倍デジタルズームの場合、48/4=12Mpixの画像をトリミングする。アンチエリアシングフィルタ240は、ズームなしの場合、ダウンサンプリングにより12Mpixの画像を出力し、2倍デジタルズームの場合、12Mpicsの高精細な2倍デジタルズーム画像を出力する。
【0183】
13.第5の推定手法
上述の第1〜第4の推定手法では、水平方向と垂直方向に画素シフトを行って画素値を推定したが、本実施形態では、斜め方向に画素シフトを行って画素値を推定してもよい。図34(A)〜図38を用いて、この第5の推定手法について説明する。
【0184】
図34(A)に示すように、画素を斜め方向にp/2ピッチでシフトしながら受光値a(kは0以上の整数)を取得する。ここで、斜め方向は、画素配列の水平方向及び垂直方向に交差する方向であり、例えば矩形の画素の対角線に沿った方向である。
【0185】
このように斜め方向に画素シフトが行われる場合に、斜め方向の中間画素値b(3画素加算値)の関係式を求める。図34(B)に示すように、シフト順に受光値をa、a、aとし、推定画素の3画素が加算されるように中間画素値b〜b、b’、b’の受光領域を定義する。このとき、図35に示すように、下式(22)が成り立つ。
=(未知数),
’=b+δ=b+(a−a),
’=b+δ=b+(a−a) ・・・ (22)
【0186】
とb’の受光領域の重なり部分が多いため、b≒b’と仮定すると、下式(23)が成り立つ。
=(未知数),
=b+δ=b+(a−a),
=b+δ=b+(a−a) ・・・ (23)
【0187】
このように、bを未知数とし、中間画素値b、bをbの関数として求めることができる。ここで、δ、δは、1シフト離れたサンプリング画素値の差分値である。
【0188】
次に、斜め方向における未知数bを求め、中間画素値を求める。図36に示すように、重畳シフトサンプリングにより検出されるサンプリング画素値によるパターン{a}と中間画素値{b}によるパターンを比較する。そして、図37に示すように、その誤差Eが最小になる状態をもって未知数bを導出し設定する。
【0189】
具体的には、下式(24)により誤差Ekを求める。そして、このEkを最小にするような未知数b(=γ)を求め、bをその値に設定する。
【数6】

【0190】
の値が推定できれば、上式(23)にbを代入することでb,bは自ずと決まる。これを他の画素に対しても求めれば、全ての中間画素値{b}を導出することができる。
【0191】
図38に示すように、最終的な推定画素値vは、斜め方向に画素シフトされた画素の重畳領域の画素値である。この推定画素値について下式(25)が成り立ち、上述の受光値aと中間画素値bを代入することで推定画素値vが求められる。
=a−b
=a−b ・・・ (25)
【0192】
上記実施形態によれば、画素が斜め方向に重畳されながら画素シフトされて低解像フレーム画像(受光値aで構成される画像)が取得される。そして、その斜め方向に画素シフトされた画素の重畳領域の受光値vが、推定画素値として推定される。
【0193】
このようにすれば、機械的な画素シフトを1方向のみにすることができ、水平方向と垂直方向に画素シフトを行う場合よりも画素シフトを容易に行うことができる。
【0194】
14.第6の推定手法(重み付け加算)
上述の推定手法では、フィルタ透過率の重み付けが無い場合(r=1)を例に説明したが、本実施形態では、重み付けされた(r>1)透過率の受光値から推定画素値を求めてもよい。図39〜図44を用いて、この第6の推定手法について説明する。
【0195】
図1に示すフィルタcf1〜cf4の透過率の重み係数をc、c、c、cとする。c=1とすると、重み係数は下式(26)に示す比率関係のルールをとる(rは、r>1の実数)。
=1,c=1/r,c=1/r,c=1/r ・・・ (26)
【0196】
以下では、説明を簡単にするために、r=2とおき、下式(27)とする。
=1、c=1/2、c=1/2、c=1/4 ・・・ (27)
【0197】
図39に示すように、重畳シフトサンプリングにより検出される水平方向の最初の行に注目し、シフト順に画素値をa00、a10、a20とする。このとき、下式(28)が成り立つ。
00=c00+c01+c10+c11
10=c10+c11+c20+c21 ・・・ (28)
【0198】
また、下式(29)に示すようにb00、b10、b20を定義し、上式(27)を代入する。
00=c00+c01=v00+(1/2)v01
10=c10+c11=v10+(1/2)v11
20=c20+c21=v20+(1/2)v21 ・・・ (29)
【0199】
次に、上式(27)、(29)を用いて上式(28)を変形すると、下式(30)が成り立つ。
00=v00+(1/2)v01+(1/2)v10+(1/4)v11
=b00+(1/2)b10
10=v10+(1/2)v11+(1/2)v20+(1/4)v21
=b10+(1/2)b20 ・・・ (30)
【0200】
上式(30)において、a00、a10に所定の係数(所定の重み係数)を掛けて差分δiを取り、上式(29)を使って変形すると、下式(31)が成り立つ。
δi=a10−2a00
=(1/2)v20+(1/4)v21−(2v00+v01
=(1/2)b20−2b00 ・・・ (31)
【0201】
00を未知数とすると、下式(32)に示すように、中間画素値b10、b20をb00の関数として求めることができる。
00=(未知数),
10=2(a00−b00),
20=4b00+2δi=4b00+2(a10−2a00) ・・・(32)
【0202】
このように、b00を未知数(初期変数)として高精細な中間画素値{b00,b10,b20}の組合せパターンが求められる。同様にして、2行目、3行目においてもb01、b02を未知数として中間画素値{b01,b11,b21}、{b02,b12,b22}の組合せパターンが求められる。
【0203】
次に、未知数b00を求める手法について説明する。図40に示すように、重み付け重畳シフトサンプリングにより検出されるサンプリング画素値によるパターン{a00,a10}と中間画素値{b00,b10,b20}によるパターンを比較する。そして、その誤差Eが最小になる未知数b00を導出し、中間画素値b00として設定する。
【0204】
このとき、上式(30)に示すように、サンプリング画素値{a00,a10}は、中間画素値{b00,b10,b20}の異なる重み付けによる隣接値の加算値となる。そのため、単純にこれらを比較しても正しい推定値が得られない。そこで、図40に示すように、中間画素値に重み付けをして比較を行う。具体的には、中間画素値{bij,b(i+1)j}の重み付けが、c=c/2、c=c/2であることを利用すると、下式(33)が成り立つことが分かる。
ij=bij+(1/2)b(i+1)j ・・・ (33)
【0205】
この上式(33)による重み付けを考慮すると、下式(34)に示す評価関数Ejが求められる。そして、この評価関数Ejにより、パターン{a00,a10}と中間推定画素値{b00,b10,b20}の類似性評価を行う。
【数7】

【0206】
上式(32)を用いると、評価関数Ejは、b00を初期変数とした関数で表される。したがって、図41に示すように、Ejを最小にする未知数b00(=α)を求め、b00の値を決定できる。そして、推定したb00の値を上式(32)に代入し、b10,b20が求められる。なお、b00が取り得る値の範囲は0≦b00≦a00であるので、この範囲にて評価関数Ejの最小値を求めればよい。同様に、2行目、3行目においても、中間画素値{b01,b11,b21}、{b02,b12,b22}の組合せパターンをb01,b02を未知数として求められる。
【0207】
次に、求めた中間画素値bijを用いて最終推定画素値vijを求める手法について説明する。以下では、図13(A)、図13(B)に示す左端垂直列(i=0列)を例に説明する。図42に示すように、中間画素値{b01,b01,b02}と最終推定画素値{v00,v01,v02}の関係は、下式(35)で表される。
00=c00+c01=v00+(1/2)v01
01=c01+c02=v01+(1/2)v02 ・・・(35)
【0208】
00、b01に所定の係数を掛けて差分δjを求めると、下式(36)が成り立つ。
δj=b01−2b00
=(v01+(1/2)v02)−(2v00+v01
=(1/2)v02−2v00 ・・・ (36)
【0209】
00を未知数(初期変数)とすると、上式(35)、(36)を用いて、最終推定画素値v01、v02がv00の関数として求められる。その関数を下式(37)に示す。
00=(未知数),
01=2(b00−v00),
02=4v00+2δj=4v00+2(b01−2b00) ・・・(37)
【0210】
上式(37)の推定画素値パターン{v00,v01,v02}と、中間画素値パターン{b00,b01}を比較し、その誤差Eiが最小になる未知数v00を導出する。このとき、最終推定画素値{vij,v(i+1)j}の重み付けが、c=c/2であることを利用すると、下式(38)が成り立つ。
ij=vij+(1/2)vi(j+1) ・・・ (38)
【0211】
図43に示すように、上式(38)に示す重み付けを考慮して、パターンの比較を行う。具体的には、下式(39)に示す評価関数Eiを求める。
【数8】

【0212】
そして、図44に示すように、評価関数Eiを最小にする未知数v00(=β)を求め、求めたv00を上式(37)に代入して最終推定画素値v01、v02を求める。同様に、2列目においても、v10を未知数として最終推定画素値{v10,v11,v12}の組合せパターンを求める。
【0213】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語(受光値、画素シフト等)と共に記載された用語(画素値、重畳シフトサンプリング等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また撮像素子、読み出し制御部、推定処理部、画像出力部、撮像装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0214】
10 撮像装置、20 画像処理装置、100 低域通過光学LPF、
110 通常サンプリング部、120 広域通過光学LPF、
130 ズーム領域選択部、140 重畳シフトサンプリング部、
200 アンチエリアシングフィルタ、210 フレームバッファ、
220 時間軸画素補間部、230 画素値推定演算部、
240 アンチエリアシングフィルタ、250 ズーム領域選択部、
410 レンズ、420 撮像素子、
Bk00 推定処理ブロック、CF フィルタ部、Ej 評価関数、
F1〜F4 ノイズフィルタ、FK フィルタ係数設定部、NH ノイズ比較部、
P1〜P4 ポジション、PD1〜PD4 受光素子、
W ニューラルネットワークの係数、
ij 受光値、b 未知数、bij 中間画素値、cf1〜cf4 フィルタ、
fx フレーム、NF NDフィルタ、p 画素ピッチ、p/2 シフト量、
00 未知数、vij 推定画素値、δi 差分値、φ 中間画素値パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光素子とフィルタ部を有する撮像素子と、
前記複数の受光素子の受光値を読み出して低解像フレーム画像を取得する読み出し制御部と、
前記低解像フレーム画像に基づいて、前記低解像フレーム画像の画素ピッチよりも小さい画素ピッチの推定画素値を推定する推定演算部と、
前記推定画素値に基づいて、前記低解像フレーム画像よりも高解像度の高解像フレーム画像を出力する画像出力部と、
を含み、
前記フィルタ部には、
1つの受光素子に対応するフィルタとして、異なる色の複数のフィルタが配列されることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数のフィルタの各フィルタは、
重み付けされた透過率を有し、
前記推定演算部は、
前記重み付けされた透過率により得られた受光値に基づいて前記推定を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記フィルタ部は、
前記1つの受光素子に対応するフィルタとして、ベイヤ配列のフィルタを有し、
前記ベイヤ配列のフィルタは、
第1緑色フィルタと、赤色フィルタと、青色フィルタと、第2緑色フィルタを有し、
前記赤フィルタと前記青色フィルタの透過率は、
前記第1緑色フィルタの透過率に対して1/r(rは1以上の実数)であり、
前記第2緑色フィルタの透過率は、
前記第1緑色フィルタの透過率に対して1/rであることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記フィルタ部は、
カラーフィルタと、
前記重み付けされた透過率を有するND(Neutral Density)フィルタと、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記読み出し制御部は、
画素を重畳しながら順次画素シフトさせて被写体像をサンプリングし、前記画素シフトしながら前記撮像素子により各撮像動作を行い、前記各撮像動作により得られた前記画素の受光値を低解像フレーム画像として取得することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記読み出し制御部は、
前記画素を、第1のポジションと、前記第1のポジションの次の第2のポジションに順次設定して前記画素シフトを行い、
前記推定演算部は、
前記第1のポジションの画素と前記第2のポジションの画素が重畳する場合に、前記第1のポジションの画素の受光値と前記第2のポジションの画素の受光値の差分値を求め、前記差分値に基づいて前記推定画素値を推定することを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記推定演算部は、
前記第1のポジションの画素から重畳領域を除いた第1の受光領域の受光値である第1の中間画素値と、前記第2のポジションの画素から前記重畳領域を除いた第2の受光領域の受光値である第2の中間画素値との関係式を、前記差分値を用いて表し、
前記関係式を用いて前記第1、第2の中間画素値を推定し、推定した前記第1の中間画素値を用いて前記推定画素値を求めることを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記推定演算部は、
前記第1、第2の中間画素値を含む連続する中間画素値を中間画素値パターンとする場合に、前記中間画素値パターンの中間画素値間の関係式を、前記画素の受光値を用いて表し、
中間画素値間の関係式で表された前記中間画素値パターンと前記画素の受光値とを比較して類似性を評価し、
前記類似性の評価結果に基づいて、前記類似性が最も高くなるように、前記中間画素値パターンに含まれる各中間画素値を決定することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記推定演算部は、
中間画素値間の関係式で表された前記中間画素値パターンと前記画素の受光値との誤差を表す評価関数を求め、前記評価関数の値が最小となるように、前記中間画素値パターンに含まれる各中間画素値を決定することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
撮像素子が複数の受光素子とフィルタ部を有する撮像装置における画像生成方法であって、
前記フィルタ部に、1つの受光素子に対応するフィルタとして、異なる色の複数のフィルタが配列される場合に、前記複数の受光素子の受光値を読み出して低解像フレーム画像を取得し、
前記低解像フレーム画像に基づいて、前記低解像フレーム画像の画素ピッチよりも小さい画素ピッチの推定画素値を推定し、
前記推定画素値に基づいて、前記低解像フレーム画像よりも高解像度の高解像フレーム画像を出力することを特徴とする画像生成方法。
【請求項11】
請求項10において、
画素を重畳しながら順次画素シフトさせて被写体像をサンプリングし、前記画素シフトしながら前記撮像素子により各撮像動作を行い、前記各撮像動作により得られた前記画素の受光値を低解像フレーム画像として取得し、
前記画素を、第1のポジションと、前記第1のポジションの次の第2のポジションに順次設定して前記画素シフトを行い、
前記第1のポジションの画素と前記第2のポジションの画素が重畳する場合に、前記第1のポジションの画素の受光値と前記第2のポジションの画素の受光値の差分値を求め、前記差分値に基づいて前記推定画素値を推定することを特徴とする画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公開番号】特開2012−142676(P2012−142676A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292176(P2010−292176)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】