説明

撮像装置

【課題】光学部材の表面または撮像素子のカバー部材の表面を傷つけることなく、その表面に付着した塵埃を除去することができ、光学部材またはカバー部材がそれを固定する部材から剥離する恐れがない撮像装置を提供する。
【解決手段】一眼レフレックス方式のデジタルカメラにおいては、光学部材19と光学フィルタ11間の空間および光学フィルタ11と固体撮像装置15のカバー部材15d間に形成される空間が、外部と遮断されている。撮影画像における影の写り込みの要因となる塵埃が付着する対象部位は、光学部材19の表面(光入射面)である。この光学部材19の表面上には櫛形電極63が形成されており、この櫛形電極63に交流電圧が印加されると、光学部材19の表面上に表面弾性波が励振される。これにより、光学部材19の表面に付着した塵埃が除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮像する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一眼レフレックス方式のデジタルカメラにおいて、撮影レンズの焦点面近傍に塵、埃(以下、総称して塵埃と記す)などが存在すると、その塵埃の影が固体撮像素子に写り込み、画質を低下させることがある。このような塵埃としては、レンズ交換時に外部から侵入するもの、また、シャッタまたはミラーの動作に伴い、それらを構成する樹脂または金属などの部材から発生する微細な磨耗紛などが考えられている。例えば、このような塵埃が特に固体撮像素子のカバーガラスと、カバーガラスの前面に配置されている光学フィルタとの間の空間に入り込むと、その塵埃を除去するために、カメラを分解する必要がある。このため、固体撮像素子のカバーガラスと光学フィルタとの間の空間を外部と遮断することにより、当該空間への塵埃の侵入を防止するための防塵構造が設けられている。
【0003】
しかしながら、上記防塵構造は、上記固体撮像素子のカバーガラスと光学フィルタとの間の空間への塵埃の侵入を防止するものであって、光学フィルタの光入射面すなわち表面に対して塵埃が付着することを阻止するものではない。よって、光学フィルタの表面には、塵埃が付着することがある。ここで、光学フィルタが焦点面近傍位置に配置されている場合、その表面に付着した塵埃は、影として固体撮像素子に写り込むことになり、画質の低下の原因となる。
【0004】
また、固体撮像素子のカバーガラスの表面または光学フィルタの表面をワイパーで清掃する構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。これによれば、レンズを外さず、またカメラを分解することなく固体撮像素子のカバーガラスの表面または光学フィルタの表面に付着した塵埃を除去することが可能である。
【0005】
しかしながら、固体撮像素子のカバーガラスの表面または光学フィルタの表面に付着した塵埃が金属粉などのような硬い場合がある。この場合、ワイパーがカバーガラス表面または光学フィルタ表面に沿って摺動する際に、この塵埃によりカバーガラスの表面または光学フィルタの表面が傷付けられることがある。
【0006】
そこで、固体撮像素子のカバーガラス表面または光学フィルタ表面を傷付けることなく、その表面に付着した塵埃を除去するために、カバーガラスまたは光学フィルタを加振させる構成が提案されている(例えば特許文献2参照)。すなわち、この構成は、加振手段によりカバーガラスまたは光学フィルタに振動を与え、カバーガラスまたは光学フィルタの振動により、その表面に付着した塵埃を除去するものである。
【特許文献1】特開2003−005254号公報
【特許文献2】特開2004−032191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、加振手段によりカバーガラスまたは光学フィルタに振動を与える場合、固体撮像素子のカバーガラスまたは光学フィルタの振動が、カバーガラスまたは光学フィルタを固定する部材へ伝搬する。その結果、固体撮像素子のカバーガラスまたは光学フィルタがそれを固定する部材から剥離する恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、光学部材の表面または撮像素子のカバー部材の表面を傷つけることなく、その表面に付着した塵埃を除去することができ、光学部材またはカバー部材がそれを固定する部材から剥離する恐れがない撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、被写体からの光を電気信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段の前方に該撮像手段と間隔を置いて配置されている光学部材と、前記撮像手段と前記光学部材との間に形成された空間を外部と遮断するための封止手段とを備え、前記光学部材は、透過性を有する圧電部材から構成され、前記光学部材の前記被写体側の面上には、駆動電圧の印加により、該光学部材の前記被写体側の面上に表面弾性波を励振させるための電極が形成されていることを特徴とする撮像装置を提供する。
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、被写体からの光を透過するカバー部材を有し、外部と遮断されている収容空間を構成する基体と、前記基体の収容空間に収容され、前記カバー部材を透過した光を電気信号に変換する撮像素子とを備え、前記カバー部材は、透過性を有する圧電部材から構成され、前記カバー部材の前記被写体側の面上には、駆動電圧の印加により、該カバー部材の前記被写体側の面上に表面弾性波を励振させるための電極が形成されていることを特徴とする撮像装置を提供する。
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、被写体からの光を透過するカバー部材を有し、外部と遮断されている収容空間を構成する基体と、前記基体の収容空間に収容され、前記カバー部材を透過した光を電気信号に変換する撮像素子とを備え、前記カバー部材の前記被写体側の面上には、圧電性を有する光学部材が貼り付けられ、前記光学部材の前記被写体側の面上には、駆動電圧の印加により、該光学部材の前記被写体側の面上に表面弾性波を励振させるための電極が形成されていることを特徴とする撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学部材の表面または撮像素子のカバー部材の表面を傷つけることなく、その表面に付着した塵埃を除去することができ、光学部材またはカバー部材がそれを固定する部材から剥離する恐れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の構成を示す縦断面図である。本実施の形態においては、撮像装置として、一眼レフレックス方式のデジタルカメラを説明する。
【0015】
一眼レフレックス方式のデジタルカメラは、図1に示すように、レンズ装置101を取り外し可能に装着するカメラ本体100を備える。レンズ装置101には、撮影光の光路L1を規定する撮影光学系103、撮影光学系103へ入射する光量を規制するための絞り(図示せず)などが組み込まれている。ここで、撮影光学系103に関しては、それを構成する複数のレンズのうち、レンズ103aのみが示されている。
【0016】
カメラ本体100には、レンズ装置101を取り外し可能に装着するマウント機構126および予め定められた範囲内で可動するハーフミラー111を有する。このハーフミラー111の屈折率は約1.5であり、その厚さは0.5mmである。ハーフミラー111は、第1の光路分割位置と第2の光路分割位置との間で移動する。ここで、第1の光路分割位置は、ハーフミラー111が、上記撮影光学系103から上記光路L1に沿って入射した撮影光のうち、一部をフォーカシングスクリーン105へ向けて反射し、残りを透過する位置である(図中の実線で示す位置)。第2の光路分割位置は、ハーフミラー111が上記光路L1から待避する位置である(図中の破線で示す位置111’)。
【0017】
フォーカシングスクリーン105上には、ハーフミラー111により反射された光が結像され、この光像は、ペンタプリズム112内部を経てファインダレンズ群109から外部へ導かれる。このファインダレンズ群109は、複数のレンズ109a,109b,109cから構成される。撮影者は、ファインダレンズ群109を介して、フォーカシングスクリーン105上に結像された光像を観察することができる。上記フォーカシングスクリーン105上には、情報表示ユニット180により、特定の情報(例えばシャッタ速度、絞り値、撮影モードなど)が表示される。
【0018】
このハーフミラー111の背面側には、サブミラー122が設けられている。このサブミラー122は、ハーフミラー111の保持部材(図示せず)に設けられた回転軸(図示せず)を中心に角度的に回転しながら、ハーフミラー111の動きに連動して移動する。サブミラー122は、ハーフミラー111が第1の光路分割位置にあるとき、ハーフミラー111を透過した光のうち、光路L1に近い光をレンズ164へ向けて反射する位置にある。これに対し、ハーフミラー111が第2の光路分割位置に移動すると、これに連動してサブミラー122は、光路L1から退避した位置へ移動する(図中の点線で示す位置122’)。
【0019】
上記サブミラー122による反射光は、レンズ164、反射ミラー165、レンズ166を介して、焦点検出ユニット167へ導かれる。この焦点検出ユニット167は、サブミラー122からの反射光を受光し、この受光した光に基づいて位相差検出方式による焦点検出を行う。
【0020】
上記ハーフミラー111の背面側には、固体撮像装置15へ入射する光量を調節するためのフォーカルプレンシャッタ50、光学部材19、光学フィルタ11、固体撮像装置15などが順に配置されている。これらの詳細については、後述する。
【0021】
また、カメラ本体100には、可動式閃光発光ユニット104、ディスプレイ107、メインスイッチ119、レリーズボタン120およびクリーニングスイッチ123が設けられている。
【0022】
閃光発光ユニット104は、カメラ本体100に収納される収納位置とカメラ本体100から外部へ露出する発光位置との間で移動可能である。ここでは、閃光発光ユニット104が発光位置にある状態が示されている。ディスプレイ107は、液晶表示パネルなどから構成され、撮影画像、撮影条件を含む各種情報などを表示する。
【0023】
メインスイッチ119は、カメラ本体100を起動させるためのスイッチである。レリーズボタン120は、2段階で押圧操作可能なボタンである。このレリーズボタン120が半押し操作(SW1がオン)されると、撮影準備動作(測光動作や焦点調節動作など)が開始される。また、レリーズボタン120が全押し操作(SW2がオン)されると、撮影動作(固体撮像素子15bから読み出された画像データのメモリへの記録)が開始される。クリーニングスイッチ123は、クリーニングモードを設定するためのスイッチである。このクリーニングモードは、光学部材19上に表面弾性波を励起させ、光学部材19の表面に付着した塵埃を除去するためのモードである。
【0024】
次に、フォーカルプレンシャッタ50および固体撮像装置15周りの構成について図2を参照しながら説明する。図2は図1のフォーカルプレンシャッタ50および固体撮像装置15周りの構成を示す縦断面図である。
【0025】
フォーカルプレンシャッタ50は、図2に示すように、先膜21と、後幕22と、押え板24と、カバー板25と、中間板23とを有する。先幕21は、複数のシャッタ羽根21a〜21dから構成される。後幕22は、先幕21と同様に、複数のシャッタ羽根から構成される。押え板24は、後幕22の押え板であり、その中央部には、撮像光を受け入れるための開口24aが設けられている。カバー板25は、先幕21の押え板であり、その中央部には、撮像光を受け入れるための開口25aが設けられている。中間板23は、押え板24とカバー板25との間に挿入されている。この中間板23により、押え板24とカバー板25との間の空間は、先幕21の駆動スペースと後幕22の駆動スペースのそれぞれに分離されている。カバー板25には、先幕21の各シャッタ羽根21a〜21dが開いたときに、その位置決めを行うためのストッパー部29が設けられている。
【0026】
フォーカルプレンシャッタ50の背面側に配置されている光学フィルタ11は、固体撮像装置15へ必要以上に高い空間周波数成分が入射しないように、この周波数成分の通過を制限するフィルタ特性を有する。この光学フィルタ11は、例えば水晶などの複屈折板および赤外カットフィルタが積層されたものである。
【0027】
光学フィルタ11の縁部は、保持部材12に保持され、保持部材12は、光学フィルタ11と一体化されて支持部材13に支持されている。支持部材13は、カメラ本体100のシャーシ(図示せず)に固定されている。
【0028】
光学フィルタ11の光入射面(シャッタ50との対向面)すなわち表面側には、矩形平板状の光学部材19が光学フィルタ11との間に間隔を置いて配置されている。この光学部材19は、可視光領域の周波数成分を透過する光透過性を有する圧電部材から構成される。光学部材19の縁部は、光学部材19と光学フィルタ11の間に形成されている空間が外部から遮断されるように、支持部材13に固定されている。これにより、光学部材19と光学フィルタ11の間の空間への塵埃の侵入が防止される。光学部材19の表面には、当該表面上に表面弾性波を励起させるための櫛形電極63が形成されている。この櫛形電極63の詳細については、後述する。ここで、光学部材19を、光学フィルタ11と共働して、高い空間周波数成分の通過を制限するフィルタ特性を発揮するような圧電部材から構成することも可能である。
【0029】
光学フィルタ11の背面側に配置されている固体撮像装置15は、光学フィルタ11側に向けて開口し、固体撮像素子15bを収容する収容空間を構成する基体15aを有する。基体15aの開口は、固体撮像素子15bを保護するとともに、その収容空間を外部と遮断するための透明のカバー部材15dにより覆われている。固体撮像素子15bは、例えば増幅型固体撮像素子の1つであるCMOSプロセスコンパチブルのセンサからなる。この固体撮像素子15bには、複数の接続端子15cが接続され、固体撮像素子15bは、各接続端子15cを介して、基板17と電気的に接続される。基板17および固体撮像装置15は一体化されて保持板18に保持され、保持板18は、カメラ本体100のシャーシ(図示せず)にビス(図示せず)により固定されている。
【0030】
上記カバー部材15dは、光学フィルタ11に対して予め定められた間隔を置いて配置されており、カバー部材15dと光学フィルタ11間に形成された空間は、シール部材16により、外部と遮断されている。これにより、カバー部材15dと光学フィルタ11間の空間へ塵埃が侵入することが防止される。
【0031】
このように、光学部材19と光学フィルタ11間の空間およびカバー部材15dと光学フィルタ11間の空間は外部から遮断された空間である。よって、撮影画像における影の写り込みの要因となる塵埃が付着する対象部位は、光学部材19の表面(光入射面)となる。
【0032】
次に、光学部材19の表面に形成されている櫛形電極63について図3を参照しながら詳細に説明する。図3は図2の光学部材19の表面に形成されている櫛形電極63の構成を示す平面図である。
【0033】
櫛形電極63は、図3に示すように、光学部材19に規定されている撮影領域Eを避けるように、その短辺方向に沿う一方の端部の近傍部位に形成されている。光学部材19の短辺方向に沿う他方の端部近傍の部位には、振動吸収部材65が形成され、この振動吸収部材65は、櫛形電極63と対向するように配置されている。櫛形電極63には、後述する電源回路67から予め定められた周波数の交流電圧が印加され、この電源回路67の交流電圧の印加動作は、カメラシステム制御部135により制御される。
【0034】
櫛形電極63に予め定められた周波数の交流電圧が印加されると、光学部材19の表面近傍の各部位が楕円運動し、これにより表面弾性波が励振される。この表面弾性波は、櫛形電極63から振動吸収部材65へ向けて進行する。この振動吸収部材65は、表面弾性波を吸収し、表面弾性波の反射波の発生を抑制するので、反射波により、進行する表面弾性波が定常波になることが防止される。
【0035】
ここで、光学部材19の結晶軸のカット方向は、櫛形電極63に交流電圧を印加した際に、光学部材19の櫛形電極63から振動吸収部材65へ向けて進行する表面弾性波が発生するように、設定されている。本実施の形態においては、光学部材19を構成する部材として、表面弾性波の伝搬面に対し42.75π/180(rad)Yカットされた水晶が用いられており、その厚さは、0.5mmである。
【0036】
また、上記櫛形電極63の電極幅をd1、電極間距離(交差幅)をd2、光学部材19における表面弾性波の伝搬速度をv、表面弾性波の周波数をfとすると、この周波数fは、以下の(1)式で与えられる。
【0037】
f=v/{2×(d1+d2)} …(1)
ここで、光学部材19の表面弾性波の伝搬速度vは、3157m/secである。また、櫛形電極63の電極幅d1は10μm、電極間距離d2は20μmにそれぞれ設定されている。この場合の表面弾性波の周波数fは、上記(1)式から、52MHzとなる。従って、櫛形電極63に対して、52MHzの周波数を有する交流電圧を印加すれば、最大の効率で、光学部材19の表面上に、表面弾性波を励振させることができることになる。
【0038】
本実施の形態においては、振動吸収部材65が用いられているが、振動吸収部材65の代わりに、櫛形電極を形成し、この櫛形電極により表面弾性波を励振させることにより、上述した反射波の発生を抑制することも可能である。
【0039】
次に、本実施の形態のデジタルカメラの制御構成について図4を参照しながら説明する。図4は図1のデジタルカメラの制御構成を示すブロック図である。
【0040】
本実施の形態における制御構成は、図4に示すように、カメラ本体100に設けられているカメラシステム制御部135を有する。カメラシステム制御部135は、CPU、ROM、RAMなどから構成され、カメラ全体の制御を行うとともに、各種の個別制御を行う。
【0041】
レンズ装置101がマウント機構126を介してカメラ本体100と装着されると、端子100aと端子101aとが電気的に接続され、カメラシステム制御部135は、レンズシステム制御部141と通信可能になる。レンズシステム制御部141は、レンズ装置101の状態(絞り102の絞り値、焦点距離、フォーカスレンズ位置など)を示すレンズ状態信号を、カメラシステム制御部135へ送出する。
【0042】
カメラシステム制御部135には、上記レンズ状態信号、操作検出部136からの検出信号、AF制御部140からの信号などが入力される。ここで、操作検出部136は、メインスイッチ119、レリーズボタン120、クリーニングスイッチ123(図1を参照)などの操作の有無を検出する。この検出結果は、操作検出信号としてカメラシステム制御部135へ出力される。AF制御部140は、焦点検出ユニット167からの出力信号に基づいて撮影光学系103の焦点調節状態(デフォーカス量)を示す信号を生成し、カメラシステム制御部135へ出力する。焦点検出ユニット167は、サブミラー122からの反射光に基づいて、撮影画面内の予め定められた位置に設けられた焦点検出領域内における像の合焦状態を検出し、この検出結果を示す信号を出力する。
【0043】
カメラシステム制御部135は、上記レンズ状態信号、操作検出部136からの検出信号、AF制御部140からの信号などに基づいて、レンズシステム制御部141に対して、制御信号を生成する。また、カメラシステム制御部135は、上記各信号に基づいて、カメラ本体100の各部のそれぞれに対して個別に制御信号を生成する。具体的には、ハーフミラー駆動部138、シャッタ制御部145、電源部67、基板17のそれぞれに対する制御信号が個別に生成される。また、A/D変換器130、RGB画像処理部131、YC処理部132、記録処理部133、再生処理部133、情報表示ユニット180のそれぞれに対する制御信号が個別に生成される。これらの制御信号は、動作タイミング、動作内容などを指示するための信号である。
【0044】
レンズシステム制御部141は、カメラシステム制御部135からの制御信号に基づいて、絞り104を駆動する絞り駆動部143の駆動信号を生成する。絞り駆動部143は、上記駆動信号により、絞り104の絞り口径が上記制御信号により指示された絞り値になるように、絞り104を駆動する。また、レンズシステム制御部141は、カメラシステム制御部135からの制御信号に基づいて、撮影光学系103のフォーカスレンズを駆動するAFモータ147の駆動信号を生成する。この駆動信号により、AFモータ147は、上記フォーカスレンズを上記制御信号により指示された位置へ移動させる。
【0045】
カメラ本体100のハーフミラー駆動部138は、カメラシステム制御部135からの制御信号に基づいて、ハーフミラー111を駆動する。シャッタ制御部145は、カメラシステム制御部135からの制御信号に基づいて対応するシャッタ速度が得られるように、フォーカルプレンシャッタ50(先幕および後幕)を駆動する。電源部67は、カメラシステム制御部135からの制御信号に基づいて、光学部材19に設けられている櫛形電極63に対して予め定められた周波数(=表面弾性波の周波数f)の交流電圧を予め定められた期間に亘り周期的に繰り返し印加する。これにより、光学部材19の表面には、表面弾性波が励振される。基板17は、カメラシステム制御部135からの制御信号に基づいて、予め定められたタイミングで、固体撮像装置15の撮像信号(電気信号)を読み出し、この読み出された撮像信号を、A/D変換器130へ出力する。
【0046】
A/D変換器130は、上記撮像信号の振幅に応じて、当該撮像信号を例えば10ビットのR,G,Bの各デジタル信号に変換する。RGB画像処理部131は、A/D変換器130から入力されたR,G,Bの各デジタル信号に対して、ホワイトバランス、ガンマ補正、補間演算による高解像度化処理などを施す。YC処理部132は、RGB画像処理部131から入力されたR,G,Bの各デジタル信号から、輝度信号Yおよび色差信号R−Y,B−Yを生成する。この生成された輝度信号Yおよび色差信号R−Y,B−Yは、画像信号として、記録処理部133へ入力される。A/D変換器130、RGB画像処理部131、YC処理部132のそれぞれの動作は、カメラシステム制御部135からそれぞれに対して出力される制御信号により制御される。
【0047】
記録処理部133は、カメラシステム制御部135からの制御信号に基づいて、入力された画像信号を例えばCFカード(登録商標)などのメモリ(図示せず)への書き込み処理、またメモリからの画像信号の読み出し処理を行う。再生処理部134は、カメラシステム制御部135からの制御信号に基づいて、上記メモリから読み出された画像信号を再生し、ディスプレイ107へ出力する。この再生処理部134およびディスプレイ107を、Bluetooth(登録商標)などの無線通信を介して接続するような構成を採用することも可能である。この場合、このデジタルカメラで撮像された画像をカメラから離れた位置でモニタすることができる。
【0048】
情報表示ユニット180は、カメラシステム制御部135からの制御信号に基づいて、フォーカシングスクリーン105上に特定の情報を表示する。この表示する特定の情報は、カメラシステム制御部135から、上記制御信号とともに与えられる情報である。閃光発光ユニット104は、カメラシステム制御部135からの制御信号に基づいて、予め定められたタイミングで閃光を発光する。
【0049】
次に、本実施の形態におけるクリーニングモードについて説明する。
【0050】
上述したように、撮影画像における影の写り込みの要因となる塵埃が付着する対象部位は、光学部材19の表面(光入射面)であるので、この光学部材19の表面に付着した塵埃の除去がクリーングモードにより行われる。
【0051】
このクリーニングモードは、クリーニングスイッチ123の操作に応じて、設定される。このクリーニングモードが設定されると、その直前に設定されていたモードおよび撮影条件などが記憶される。そして、クリーニングモードを開始すべく、カメラシステム制御部135から、交流電圧の印加開始を指示する制御信号が、電源部67へ出力される。
【0052】
電源部67は、上記制御信号に基づいて、光学部材19上の櫛形電極63に対して、予め定められた周波数の交流電圧の印加を開始する。これにより、光学部材19の表面には、表面弾性波が励振される。交流電圧の印加は、例えば予め定められた時間に亘り、周期的に繰り返し行われる。この表面弾性波により、光学部材19の表面上に付着している埃塵は、当該表面上を移動しながら当該表面から離脱し、最終的にカメラ本体100の下部に向けて落下する。すなわち、光学部材19の表面上に付着している埃塵は、当該表面から取り除かれることになる。
【0053】
次いで、予め定められた時間経過後、カメラシステム制御部135から、交流電圧の印加の停止を指示する制御信号が、電源部67へ出力される。電源部67は、上記制御信号に基づいて、櫛形電極63への交流電圧の印加を停止する。これにより、クリーニングモードは、終了する。
【0054】
本実施の形態においては、上述したように、任意のタイミングでクリーニングスイッチ123を操作すれば、光学部材19の表面に付着した塵埃の除去を行うためのクリーニングモードが実施される。これに代えて、例えばデジタルカメラへの電源投入または撮影動作の終了をトリガーとして、光学部材19の櫛形電極63へ交流電圧を印加するようなシーケンスを採用することも可能である。
【0055】
以上より、本実施の形態によれば、光学部材19の表面に表面弾性波を励振させることにより、光学部材19の表面に付着した塵埃を容易に除去することができる。すなわち、レンズ交換などの際に侵入する塵埃またはフォーカルプレンシャッタ50の駆動時に生じる磨耗紛などが光学部材19の表面上に付着したとしても、光学部材19に触れることなく、その塵埃を除去することが可能である。その結果、常に、塵埃の影の写り込みがない良好な画質の画像を得ることができる。
【0056】
また、表面弾性波は、光学部材19の表面のみに発生するので、光学部材19が支持板13から剥離する恐れがない。また、例えば光学部材19の裏面に赤外カットフィルタなどが接合されている場合でも、表面弾性波により、赤外カットフィルタが剥離することはない。換言すれば、光学部材の少なくとも一部(表面側)が圧電材料から構成されていれば、上述した効果を奏する光学部材を提供することが可能である。
【0057】
さらに、表面弾性波を励振させるための櫛形電極63は、光学部材19の表面に設けられているので、特に、光学部材19の厚さが大きく増すことはなく、光学部材19の設置スペースを容易に確保することができる。その結果、光学部材19の設置により、カメラ本体100が大型化することはない。
【0058】
本実施の形態においては、上記光学部材19が厚さ0.5mmの水晶基板から構成されている場合を示したが、これに代えて、光学部材を他の圧電材料から構成することも可能である。例えば、厚さ0.3mmのニオブ酸リチウム(LiNbO3)から上記光学部材19を構成することも可能である。この場合、ニオブ酸リチウムは、伝播面に対して128π/180(rad)Yカットしたものである。また、この場合、櫛形電極63の電極幅d1は10μm、電極間距離d2は30μmにそれぞれ設定される。
【0059】
このニオブ酸リチウムから光学部材19を構成した場合、表面弾性波の伝搬速度Vは4000m/secであるので、上記電極幅d1および電極間距離d2を有する櫛形電極63により発生される表面弾性波の周波数fは、上記(1)式から、50MHzとなる。よって、このような構成を有する光学部材19の場合、櫛形電極63に対して、50MHzの交流電圧が印加されることになる。
【0060】
また、本実施の形態においては、電源部67がカメラ本体100に内蔵されているが、これに代えて、例えば電源部67に相当する外部電源部を用意し、これをカメラ本体100に接続するような構成を採用することも可能である。この場合、カメラ本体100に上記外部電源部と上記櫛形電極63とを接続するための端子が設けられる。そして、上記外部電源を上記端子に接続し、上記外部電源部から上記端子を介して上記櫛形電極63へ交流電圧を印加すれば、光学部材19の表面に付着した塵埃を除去するためのクリーニングモードが実施されることになる。このような構成を採用すれば、電源部67をカメラ本体100に内蔵する必要はない。
【0061】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図5および図6を参照しながら説明する。図5は本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置におけるフォーカルプレンシャッタおよび固体撮像装置周りの構成を示す縦断面図である。ここで、本実施の形態の撮像装置は、一眼レフレックス方式のデジタルカメラであり、その基本的な構成は、上記第1の実施の形態と同じである。よって、本実施の形態においては、上記第1の実施の形態と異なる部分について説明する。また、図中、上記第1の実施の形態の同一の部材には、同一の符号が付されている。
【0062】
本実施の形態においては、図5に示すように、フォーカルプレンシャッタ50と固体撮像装置15との間には、上記第1の実施の形態のように、光学フィルタ11および光学部材19が設けられていない。この場合、固体撮像装置15のカバー部材の表面に塵埃が付着することになる。よって、本実施の形態においては、固体撮像装置15のカバー部材として、上記第1の実施の形態に示すような、櫛形電極63が形成されている光学部材19が用いられる。また、この場合、例えば上記第1の実施の形態の光学フィルタ11と同様のフィルタ特性を示すような圧電材から、光学部材19を構成することが好ましい。
【0063】
また、上記構成に代えて、図6に示すような構成を採用することも可能である。すなわち、この構成の場合、固体撮像装置15のカバー部材15dに対して、櫛形電極63が形成されている光学部材19が貼り付けられている。この場合においても、上記第1の実施の形態の光学フィルタ11と同様のフィルタ特性を示すような圧電材から、光学部材19を構成することが好ましい。
【0064】
このように、上記図5または図6に示すいずれの構成でも、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のフォーカルプレンシャッタ50および固体撮像装置15周りの構成を示す縦断面図である。
【図3】図2の光学部材19の表面に形成されている櫛形電極63の構成を示す平面図である。
【図4】図1のデジタルカメラの制御構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置におけるフォーカルプレンシャッタおよび固体撮像装置周りの構成を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置におけるフォーカルプレンシャッタおよび固体撮像装置周りの代替構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0066】
11 光学フィルタ
13 支持部材
15 固体撮像装置
15a 基体
15b 固体撮像素子
15d カバー部材
19 光学部材
63 櫛形電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を電気信号に変換する撮像手段と、
前記撮像手段の前方に該撮像手段と間隔を置いて配置されている光学部材と、
前記撮像手段と前記光学部材との間に形成された空間を外部と遮断するための封止手段とを備え、
前記光学部材は、透過性を有する圧電部材から構成され、前記光学部材の前記被写体側の面上には、駆動電圧の印加により、該光学部材の前記被写体側の面上に表面弾性波を励振させるための電極が形成されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記電極に駆動電圧を印加する駆動電圧印加手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記電極は、櫛形電極であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記封止手段により外部と遮断された前記光学部材と前記撮像手段との間の空間内に配置され、予め定められた帯域の光成分の透過を制限する光学フィルタを備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記光学部材は、予め定められた帯域の周波数成分の透過を制限するフィルタ特性を有する圧電部材から構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項6】
被写体からの光を透過するカバー部材を有し、外部と遮断されている収容空間を構成する基体と、
前記基体の収容空間に収容され、前記カバー部材を透過した光を電気信号に変換する撮像素子とを備え、
前記カバー部材は、透過性を有する圧電部材から構成され、前記カバー部材の前記被写体側の面上には、駆動電圧の印加により、該カバー部材の前記被写体側の面上に表面弾性波を励振させるための電極が形成されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
前記電極に駆動電圧を印加する駆動電圧印加手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記電極は、櫛形電極であることを特徴とする請求項6または7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記カバー部材は、予め定められた帯域の周波数成分の透過を制限するフィルタ特性を有する圧電部材から構成されていることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項10】
被写体からの光を透過するカバー部材を有し、外部と遮断されている収容空間を構成する基体と、
前記基体の収容空間に収容され、前記カバー部材を透過した光を電気信号に変換する撮像素子とを備え、
前記カバー部材の前記被写体側の面上には、圧電性を有する光学部材が貼り付けられ、
前記光学部材の前記被写体側の面上には、駆動電圧の印加により、該光学部材の前記被写体側の面上に表面弾性波を励振させるための電極が形成されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
前記電極に駆動電圧を印加する駆動電圧印加手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記電極は、櫛形電極であることを特徴とする請求項10または11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記光学部材は、予め定められた帯域の周波数成分の透過を制限するフィルタ特性を有する圧電部材から構成されていることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1つに記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−282101(P2007−282101A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108861(P2006−108861)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】