説明

撮像装置

【課題】撮像モードの切替を行うことが可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】熱供給部19A,19Bからバイメタル18A,18Bへの熱供給の有無に応じて、マイクロレンズアレイ12と撮像素子13との間の相対距離を変化させる。熱供給がなされている場合には、マイクロレンズアレイ12が光軸方向に沿って撮像素子13とは反対側に変位するため、マイクロレンズアレイ12において撮像レンズ11からの入射光が屈折され、撮像素子13上に集光する。熱供給がなされていない場合には、マイクロレンズアレイ12および撮像素子13が互いに近接したままであるため、入射光が屈折されず、そのまま撮像素子13へ到達する。撮像素子13上に集光させて得られた撮像データに所定の画像処理を施す撮像モードと、入射光をそのまま撮像素子13に到達させて撮像データを得る撮像モードとの間で、撮像モードの切替が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な撮像装置が提案され、開発されている。また、撮像して得られた撮像データに対し、所定の画像処理を施して出力するようにした撮像装置も提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1および非特許文献1には、「Light Field Photography」と呼ばれる手法を用いた撮像装置が提案されている。この撮像装置は、撮像レンズと、マイクロレンズアレイと、受光素子と、画像処理部とから構成され、受光素子から得られる撮像データが、受光面における光の強度分布に加えてその光の進行方向の情報をも含むようになっている。そして画像処理部において、任意の視点や方向からの観察画像を再構築できるようになっている。
【0004】
【特許文献1】国際公開第06/039486号パンフレット
【非特許文献1】Ren.Ng、他7名,「Light Field Photography with a Hand-Held Plenoptic Camera」,Stanford Tech Report CTSR 2005-02
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記手法を利用した撮像装置を構成した場合、この手法を用いない通常の高解像度の撮像モードと、この手法を用いて画像の再構築を行う撮像モードとを、適宜切り替えて使用することが考えられる。したがって、そのような撮像モードの切替が可能な撮像装置の提案が望まれる。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、撮像モードの切替を行うことが可能な撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撮像装置は、撮像レンズと、受光した光に基づいて撮像データを生成する撮像素子と、この撮像素子から得られた撮像データに対して画像処理を施すための画像処理部と、複数のマイクロレンズを有すると共に上記撮像レンズと撮像素子との間に配置されたマイクロレンズアレイ部と、このマイクロレンズアレイ部と撮像素子との間の相対距離を変化させる駆動部とを備えたものである。
【0008】
本発明の撮像装置では、駆動部の作用により、マイクロレンズアレイ部と撮像素子との間の相対距離が変化するため、例えばこの相対距離がマイクロレンズアレイ部の焦点距離と略同一となった場合には、マイクロレンズアレイにおいて撮像レンズからの入射光が屈折され、撮像素子上に集光する。また、例えばマイクロレンズアレイ部と撮像素子とが近接している場合には、撮像レンズからの入射光は屈折されず、そのまま撮像素子へ到達する。したがって、マイクロレンズアレイへの入射光を撮像素子上に集光させて得られた撮像データに画像処理を施す撮像モードと、入射光をそのまま撮像素子に到達させて撮像データを得る撮像モードとの間で、撮像モードの切替が可能となる。
【0009】
本発明の撮像装置では、上記画像処理部および駆動部を制御する制御部を備え、この制御部が、第1の撮像モードでは、駆動部によってマイクロレンズアレイ部と撮像素子とを近接させると共に画像処理部による画像処理を停止させ、第2の撮像モードでは、駆動部によって上記相対距離をマイクロレンズアレイ部の焦点距離と略同一にさせると共に上記画像処理を実行するように制御する構成とすることができる。このように構成した場合、第1の撮像モードが、マイクロレンズアレイへの入射光をそのまま撮像素子に到達させて撮像データを得る撮像モードとなり、第2の撮像モードが、入射光を撮像素子上に集光させて得られた撮像データに画像処理を施す撮像モードとなる。
【0010】
本発明の撮像装置では、上記マイクロレンズが、第2の撮像モードでの作動距離がより長くなるような向きで配置されているのが好ましい。そのように構成した場合、第1の撮像モードの際に、各マイクロレンズの焦点位置がマイクロレンズから見て撮像素子のより後方に位置することになるため、撮像レンズからの入射光がより屈折されにくくなり、撮像画像の解像度の低下がより抑えられる。したがって、撮像画像および画像処理後の画像の画質がより向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の撮像装置によれば、マイクロレンズアレイ部と撮像素子との間の相対距離を変化させる駆動部を設けるようにしたので、例えば、マイクロレンズアレイへの入射光を撮像素子上に集光させて得られた撮像データに画像処理を施す撮像モードと、入射光をそのまま撮像素子に到達させて撮像データを得る撮像モードとの間で、撮像モードの切替を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置(撮像装置1)の全体構成を表したものである。この撮像装置1は、撮像対象物2を撮像して撮像データDoutを出力するものであり、撮像レンズ11と、撮像ユニット部15と、画像処理部14と、撮像素子駆動部16と、制御部17とから構成されている。
【0014】
撮像レンズ11は、撮像対象物を撮像するためのメインレンズであり、例えば、ビデオカメラやスチルカメラ等で使用される一般的な撮像レンズにより構成される。
【0015】
撮像ユニット部15は、撮像を行う際の撮像機能を担う部分であり、マイクロレンズアレイ12と、撮像素子13と、一対のバイメタル18A,18Bとを含んで構成されている。なお、この撮像ユニット部15の詳細構成については、後述する。
【0016】
撮像素子駆動部16は、撮像素子13を駆動してその受光動作の制御を行うものである。
【0017】
画像処理部14は、後述する画像処理撮像モードの際に、撮像素子13で得られた撮像データに対して所定の画像処理を施し、撮像データDoutとして出力するものである。具体的には、例えば「Light Field Photography」と呼ばれる手法を用いたリフォーカス(Refocusing)演算処理を行い、これにより任意の視点や方向からの観察画像を再構築できるようになっている。
【0018】
制御部17は、画像処理部14、撮像素子駆動部16および後述する撮像ユニット15内の熱供給部(熱供給部19A,19B)の動作を制御するものである。具体的には、撮像素子駆動部16の駆動動作を適宜制御すると共に、詳細は後述するが、後述する2つの撮像モードに応じて、画像処理部14および撮像ユニット15(具体的には、後述する熱供給部19A,19B)の動作を制御するようになっている。なお、制御部17は、例えばマイクロコンピュータなどにより構成される。
【0019】
次に、図2および図3を参照して、撮像ユニット部15の詳細構成について説明する。ここで、図2は、撮像ユニット部15の詳細構成を断面図で表したものであり、図3は、この撮像ユニット部15内のバイメタル18Aの詳細構成を断面図で表したものである。
【0020】
この撮像ユニット部15では、筐体10内に、マイクロレンズアレイ12、撮像素子13、バイメタル18A,18Bおよび熱供給部19A,19Bが配置されている。
【0021】
マイクロレンズアレイ12は、複数のマイクロレンズ12Aがマトリクス状に配列してなり、光軸方向に沿って撮像素子13と互いに近接(好ましくは密着)するように配置されている。なお、このマイクロレンズアレイ12は、図1に示したように、後述する画像処理撮像モードの際に撮像レンズ11の焦点面(図1中の符号f1は、撮像レンズ11の焦点距離を表している)に配置されるようになっている。
【0022】
撮像素子13は、光を受光して撮像データを生成するものであり、例えば、マトリクス状に配列された複数のCCD(Charge Coupled Device;電荷結合素子)などにより構成される。なお、この撮像素子13は、図1に示したように、後述する画像処理撮像モードの際に、マイクロレンズアレイ12の焦点面(図中の符号f2は、マイクロレンズアレイ12の焦点距離を表している)に配置されるようになっている。
【0023】
バイメタル18A,18Bはそれぞれ、例えば図3(A)に示したように、互いに熱膨張率の異なる2つの金属板18A1,18A2が積層されてなり、それらの端部が支持部18A0によって支持されるようになっている。なお、金属板18A1は、例えばインバー(鉄とニッケルとの合金)などにより構成され、金属板18A2は、例えば、鉄とニッケルとの合金にマンガンやクロム、銅などを添加した合金などにより構成される。
【0024】
熱供給部19A,19Bはそれぞれ、バイメタル18A,18Bの近傍、具体的には、熱膨張率がより高い金属板側(この場合、金属板18A2等のマイクロレンズアレイ12とは反対側)の近傍に配置されている。このような構成により、例えば図3(B)に示したように、バイメタル18A,18Bに対して熱供給部19A,19Bからそれぞれ所定の熱量Qが供給されると、2つの金属板の熱膨張率の違いに起因してバイメタル18A,18Bの形状が変化し、より熱膨張率の小さい金属板側(例えば、金属板18A1等の側)にバイメタル18A,18Bが反るようになっている。よって、詳細は後述するが、このような熱供給の有無(または大きさ)に応じて、2つの撮像モード(通常の高解像度での撮像モード(以下、通常撮像モードという。)および画像処理部14による画像処理を施す撮像モード(以下、画像処理撮像モードという。))間の切替がなされるようになっている。なお、これら熱供給部19A,19Bおよび上記バイメタル18A,18Bが、本発明における「駆動部」の一具体例に対応する。
【0025】
次に、図1〜図6を参照して、本実施の形態の撮像装置1の動作について詳細に説明する。ここで、図4は、撮像ユニット部15の作用を説明するための断面構成であり、図4(A)は、バイメタル18A,18Bに対して熱を供給していない場合(通常撮像モード時)のものを、図4(B)は、バイメタル18A,18Bに対して熱を供給している場合(画像処理撮像モード時)のものを表している。
【0026】
この撮像装置1では、撮像レンズ11による撮像対象物2の像は、マイクロレンズアレイ12上に結像する。そしてマイクロレンズアレイ12への入射光線がこのマイクロレンズアレイ12を介して撮像素子13へ到達し、撮像素子駆動部16による駆動動作に従って、撮像素子13から撮像データが得られる。
【0027】
ここで、撮像ユニット部15では、熱供給部19A,19Bからバイメタル18A,18Bへの熱供給の有無(または熱供給量の大きさ)に応じて、前述のようにバイメタル18A,18Bの形状が変化し、これによりマイクロレンズアレイ12が光軸方向に変位する。
【0028】
具体的には、供給部19A,19Bからバイメタル18A,18Bへ熱供給がなされていない場合、図3(A)に示したようにバイメタル18A,18Bの形状は変化しないため、例えば図4(A)に示したように、マイクロレンズアレイ12および撮像素子13は互いに近接(または密着)したままである。したがって、撮像レンズ11からの入射光はマイクロレンズアレイ12において屈折されず、そのまま撮像素子13へ到達することになる。
【0029】
一方、供給部19A,19Bからバイメタル18A,18Bへ熱供給がなされている場合、図3(B)に示したようにバイメタル18A,18Bの形状が変化して反り生じるため、例えば図4(B)中の符号P1で示したように、マイクロレンズアレイ12が光軸方向に沿って撮像素子13とは反対側(撮像レンズ11側)に変位し、これによりマイクロレンズアレイ12と撮像素子13との間の相対距離が変化し、マイクロレンズアレイ12が筐体10に近接(または密着)するようになる。ここで、このようにマイクロレンズアレイ12が筐体10に近接(または密着)する位置となった場合、前述(図1)のようにマイクロレンズアレイ12と撮像素子13との間の相対距離がマイクロレンズアレイ12の焦点距離f2と一致(または略同一)となるように設定されているため、撮像レンズ11からの入射光がマイクロレンズアレイ12において屈折され、撮像素子13上に集光する。
【0030】
また、制御部17は、通常撮像モード(第1の撮像モード)の際には、熱供給部19A,19Bによる熱供給が停止するように制御する。よって、この通常撮像モードの際には、撮像レンズ11による像がそのまま撮像素子13へ到達し、通常の高解像度による撮像データが得られる。
【0031】
一方、画像処理撮像モード(第2の撮像モード)の際には、制御部17は、熱供給部19A,19Bによる熱供給がなされるように制御する。よってこの画像処理撮像モードの際には、マイクロレンズアレイ12への入射光が、撮像素子13上に集光される。
【0032】
次に、撮像素子13で得られた撮像データは、画像処理部14へ入力する。そして画像処理部14では、制御部17の制御に応じて、この撮像データに対して所定の画像処理(例えば、前述のリフォーカス演算処理)を施し、これにより撮像データDoutが出力される。
【0033】
具体的には、通常撮像モードの際には、制御部17は、画像処理部14による画像処理が停止するように制御し、その結果、入力した撮像データがそのまま撮像データDoutとして出力される。
【0034】
一方、画像処理モードの際には、制御部17は、画像処理部14による画像処理がなされるように制御し、その結果、入力した撮像データに対して所定の画像処理が施され、撮像データDoutとして出力される。
【0035】
ここで、図5および図6を参照して、画像処理部14による画像処理の一例(上記リフォーカス演算処理)について詳細に説明する。
【0036】
まず、図5に示したように、撮像レンズ11の撮像レンズ面上において直交座標系(u,v)を、撮像素子13の撮像面上において直交座標系(x,y)をそれぞれ考え、撮像レンズ11の撮像レンズ面と撮像素子13の撮像面との距離をFとすると、図中に示したような撮像レンズ11および撮像素子13を通る光線は、4次元関数L(x,y,u,v)で表されるため、光線の位置情報に加え、光線の進行方向が保持された状態で表される。
【0037】
そしてこの場合、図6に示したように、撮像レンズ面110、撮像面130およびリフォーカス面120間の位置関係を設定(F’=αFとなるようにリフォーカス面120を設定)した場合、リフォーカス面120上の座標(s,t)の撮像面130上における検出強度LF’は、以下の(1)式のように表される。また、リフォーカス面120で得られるイメージEF’(s,t)は、上記検出強度LF’をレンズ口径に関して積分したものとなるので、以下の(2)式のように表される。したがって、この(2)式からリフォーカス演算を行うことにより、画像処理後の撮像データDoutに基づいて、任意の視点や方向からの観察画像が再構築されるようになっている。
【0038】
【数1】

【0039】
このようにして本実施の形態では、熱供給部19A,19Bの作用、具体的にはバイメタル18A,18Bへの熱供給の有無(または大きさ)に応じて、マイクロレンズアレイ12と撮像素子13との間の相対距離が変化する。すなわち、例えばバイメタル18A,18Bへ熱供給がなされている場合には、マイクロレンズアレイ12が光軸方向に沿って撮像素子13とは反対側に変位するため、この相対距離がマイクロレンズアレイ12の焦点距離f2と一致(または略同一)となり、その結果、マイクロレンズアレイ12において撮像レンズ11からの入射光が屈折され、撮像素子13上に集光する。また、例えばバイメタル18A,18Bへ熱供給がなされていない場合には、マイクロレンズアレイ12および撮像素子13は互いに近接(または密着)したままであるため、撮像レンズ11からの入射光はマイクロレンズアレイ12において屈折されず、そのまま撮像素子13へ到達する。したがって、マイクロレンズアレイ12への入射光を撮像素子13上に集光させて得られた撮像データに所定の画像処理を施す撮像モード(画像処理撮像モード)と、入射光をそのまま撮像素子13に到達させて撮像データを得る撮像モード(通常撮像モード)との間で、撮像モードの切替が可能となる。
【0040】
以上のように本実施の形態では、撮像ユニット部15内のバイメタル18A,18Bおよび熱供給部19A,19Bによって、マイクロレンズアレイ12と撮像素子13との間の相対距離を変化させるようにしたので、例えば、マイクロレンズアレイ12への入射光を撮像素子13上に集光させて得られた撮像データに所定の画像処理を施す撮像モード(画像処理撮像モード)と、入射光をそのまま撮像素子13に到達させて撮像データを得る撮像モード(通常撮像モード)との間で、撮像モードの切替を行うことが可能となる。
【0041】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の撮像装置は、第1の実施の形態で説明した撮像装置1において、一対のバイメタル18A,18Bを含む撮像ユニット部15の代わりに、一対の圧電アクチュエータを含む撮像ユニット部を設けるようにしたものである。なお、第1の実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0042】
図7は、本実施の形態に係る撮像ユニット部(撮像ユニット部25)の断面構成を表すものである。この撮像ユニット部25は、第1の実施の形態で説明した撮像装置15において、一対のバイメタル18A,18Bの代わりに一対の圧電アクチュエータ28A,28Bを有すると共に、一対の熱供給部19A,19Bの代わりに一対の電圧供給部29A,29Bを有している。
【0043】
圧電アクチュエータ28A,28Bはそれぞれ、例えば図8(A)に示したように、互いに異なる2つの圧電素子28A1,28A2が積層されてなり、それらの端部が支持部28A0によって支持されるようになっている。なお、これら圧電素子28A1,28A2はそれぞれ、例えば、チタン酸ジルコン酸塩(通称PZT)や、チタン酸バリウム(BaTiO)などにより構成される。
【0044】
電圧供給部29A,29Bはそれぞれ、圧電アクチュエータ28A,28Bの近傍に配置されている。そして第1の実施の形態のバイメタル18A,18Bと同様に、例えば図8(B)に示したように、圧電アクチュエータ28A,28Bに対して電圧供給部29A,29Bからそれぞれ所定の電圧Vが供給されると、2つの圧電素子28A,28Bの圧電特性の違いに起因して圧電アクチュエータ28A,28Bの形状が変化し、反るようになっている。なお、これら電圧供給部29A,29Bおよび上記圧電アクチュエータ28A,28Bが、本発明における「駆動部」の一具体例に対応する。
【0045】
このような構成により本実施の形態では、例えば図9(A)および図9(B)に示したように、第1の実施の形態と同様に、電圧供給部29A,29Bから圧電アクチュエータ28A,28Bへの電圧供給の有無(または大きさ)に応じてマイクロレンズアレイ12と撮像素子13との間の相対距離が変化するため、マイクロレンズアレイ12への入射光を撮像素子13上に集光させて得られた撮像データに所定の画像処理を施す撮像モード(画像処理撮像モード)と、入射光をそのまま撮像素子13に到達させて撮像データを得る撮像モード(通常撮像モード)との間で、通常撮像モードと画像処理撮像モードと間の切替が可能となる。よって、第1の実施の形態と同様に、撮像モードの切替を行うことが可能となる。
【0046】
以上、第1および第2の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0047】
例えば、上記実施の形態では、マイクロレンズアレイ12内の各マイクロレンズ12Aにおいて、その両面が凸面であって曲率が等しい場合について説明したが、各マイクロレンズの形状はこれには限られない。ただし、そのようにマイクロレンズの両面の曲率が異なっている場合には、撮像レンズ11側の面の曲率よりも撮像素子13側の面の曲率のほうが大きくなるようにマイクロレンズを配置するのが好ましい。具体的には、例えば図10(A)に示したマイクロレンズアレイ121のように、各マイクロレンズ121Aの凸面を撮像レンズ11側に配置するよりも、例えば図10(B)に示したマイクロレンズアレイ122のように、各マイクロレンズ122Aの凸面を撮像素子13側に配置するのが好ましい。より一般的には、液体レンズや張り合わせレンズ(複合レンズ)の場合も考慮すると、例えば図10(A)のように、マイクロレンズアレイ121が矢印P5のように光軸方向に変位して画像処理撮像モードとなっている際の作動距離がより短くなる(作動距離:L1)配置よりも、例えば図10(B)のように、マイクロレンズアレイ122が矢印P6のように光軸方向に変位して画像処理撮像モードとなっている際の作動距離がより長くなる(作動距離:L2)配置のほうが好ましい。各マイクロレンズを後者のように配置した場合、通常撮像モードの際に、各マイクロレンズの焦点位置がマイクロレンズから見て撮像素子13のより後方に位置することになるため、撮像レンズ11からの入射光がより屈折されにくくなり、撮像画像の解像度の低下がより抑えられるからである。したがって、そのように構成した場合、撮像画像および画像処理後の画像の画質をより向上させることが可能となる。
【0048】
また、上記実施の形態では、図4(A),(B)および図9(A),(B)に示したように、バイメタル18A,18Bおよび熱供給部19A,19Bや圧電アクチュエータ28A,28Bおよび電圧供給部29A,29Bを、マイクロレンズアレイ12の撮像素子13側に配置し、熱供給または電圧供給がないときに通常撮像モードとなると共に熱供給または電圧供給があるときに画像処理撮像モードとなる場合について説明したが、例えば図11(A),(B)に示した撮像ユニット部15Aのように、逆に、バイメタル18A,18Bおよび熱供給部19A,19Bや圧電アクチュエータ28A,28Bおよび電圧供給部29A,29Bを、マイクロレンズアレイ12の撮像素子13とは反対側に配置し、熱供給または電圧供給がないとき(図11(A))に画像処理撮像モードとなると共に熱供給または電圧供給があるとき(図11(B))に通常撮像モードとなるようにしてもよい。このように構成した場合でも、上記実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0049】
また、上記実施の形態では、マイクロレンズアレイ12を光軸方向に変位させることによってマイクロレンズアレイ12と撮像素子13との間の相対距離を変化させる場合について説明したが、例えば図12(A),(B)に示した撮像ユニット部15Bのように、撮像素子13の端部(上端および下端)の近傍(具体的には、撮像素子13のマイクロレンズアレイ12とは反対側)にバイメタル18A,18Bおよび熱供給部19A,19Bや圧電アクチュエータ28A,28Bおよび電圧供給部29A,29Bを配置し、撮像素子13を光軸方向に変位させることによってマイクロレンズアレイ12と撮像素子13との間の相対距離を変化させるようにしてもよい。このように構成した場合、熱供給または電圧供給がないとき(図12(A))に画像処理撮像モードとなり、熱供給または電圧供給があるとき(図11(B))に通常撮像モードとなる。このように構成した場合でも、上記実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。なお、この場合においても、図12(A),(B)に示した配置とは逆に、バイメタル18A,18Bおよび熱供給部19A,19Bや圧電アクチュエータ28A,28Bおよび電圧供給部29A,29Bを、撮像素子13のマイクロレンズアレイ12側に配置し、熱供給または電圧供給がないときに通常撮像モードとなると共に熱供給または電圧供給があるときに画像処理撮像モードとなるようにしてもよい。
【0050】
また、これまでは、圧電アクチュエータ28A,28Bに対して電圧供給を行う電圧供給部が撮像ユニット部25内(具体的には、圧電アクチュエータ28A,28Bの近傍)に配置されている場合について説明したが、このような電圧供給部を撮像ユニット部25の外部に配置するようにしてもよい。そのように構成した場合、撮像ユニット部の構成をより簡素化および小型化することが可能となる。
【0051】
さらに、上記実施の形態では、画像処理部14における画像処理方法の一例として、「Light Field Photography」を利用したリフォーカス演算処理について説明したが、画像処理部14における画像処理方法としてはこれには限られず、他の画像処理方法としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の構成を表すブロック図である。
【図2】図1に示した撮像ユニット部の詳細構成を表す断面図である。
【図3】図2に示したバイメタルの詳細構成を説明するための断面図である。
【図4】図1に示した撮像ユニット部の作用を説明するための断面図である。
【図5】画像処理撮像モード時の画像処理の一例を説明するための模式斜視図である。
【図6】画像処理撮像モード時の画像処理の一例を説明するための模式断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る撮像ユニット部の構成を表す断面図である。
【図8】図7に示した圧電アクチュエータの詳細構成を説明するための断面図である。
【図9】図7に示した撮像ユニット部の作用を説明するための断面図である。
【図10】本発明の変形例に係るマイクロレンズアレイの構成例を説明するための断面図である。
【図11】本発明の変形例に係る撮像ユニット部の構成および作用を説明するための断面図である。
【図12】本発明の他の変形例に係る撮像ユニット部の構成および作用を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…撮像装置、10…筐体、11…撮像レンズ、110…撮像レンズ面、12,121,122…マイクロレンズアレイ、12A,121A,122A…マイクロレンズ、120…リフォーカス面、13…撮像素子、130…撮像面、14…画像処理部、15,15A,15B…撮像ユニット部、16…撮像素子駆動部、17…制御部、18A,18B…バイメタル、18A0…支持部、18A1,18A2…金属板、19A,19B…熱供給部、19A0…支持部、19A1,19A2…圧電素子、2…撮像対象物、28A,28B…圧電アクチュエータ、29A,29B…電圧供給部、f1,f2…焦点距離、Dout…撮像データ、Q…熱量、V…電圧、L1,L2…作動距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像レンズと、
受光した光に基づいて撮像データを生成する撮像素子と、
前記撮像素子から得られた撮像データに対して画像処理を施すための画像処理部と、
複数のマイクロレンズを有すると共に前記撮像レンズと前記撮像素子との間に配置されたマイクロレンズアレイ部と、
前記マイクロレンズアレイ部と前記撮像素子との間の相対距離を変化させる駆動部と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記画像処理部および前記駆動部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、第1の撮像モードでは、前記駆動部によって前記マイクロレンズアレイ部と前記撮像素子とを近接させると共に前記画像処理部による画像処理を停止させ、第2の撮像モードでは、前記駆動部によって前記相対距離を前記マイクロレンズアレイ部の焦点距離と略同一にさせると共に前記画像処理を実行するように制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記マイクロレンズは、前記第2の撮像モードでの作動距離がより長くなるような向きで配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記マイクロレンズは、前記撮像レンズ側の面の曲率よりも前記撮像素子側の面の曲率のほうが大きくなるように配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記マイクロレンズは、前記撮像素子側に凸面を有する凸レンズである
ことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記マイクロレンズアレイ部を光軸方向に変位させることにより、前記相対距離を変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記撮像素子を光軸方向に変位させることにより、前記相対距離を変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記駆動部は、
前記マイクロレンズアレイ部または前記撮像素子の端部に配置されたバイメタル部と、
前記バイメタル部に対して熱を供給する熱供給部とを含んで構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記駆動部は、
前記マイクロレンズアレイ部または前記撮像素子の端部に配置された圧電アクチュエータと、
前記圧電アクチュエータに対して電圧を供給する電圧供給部とを含んで構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−172347(P2008−172347A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1633(P2007−1633)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】