説明

撮像装置

【課題】撮影時に撮影画像内の特定の色を、実際の被写体の色に容易にかつ詳細に補正することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】色空間に対して色相領域を設定する色相設定部60と、色空間に対して色相回転量を設定する色相回転量設定部61と、色空間に対して彩度変更量を設定する彩度変更量設定部62と、メニューボタン12及び設定切替ボタン13の押圧操作により、色相設定部60に対して任意の色相領域を設定して、色相回転量設定部61に対して任意の色相回転量を設定し、更に彩度変更量設定部62に対して任意の彩度変更量を設定することで、特定色補正制御部63は、入力される設定された色相領域の色相回転量と設定された彩度変更量設定情報とに基づいて、液晶モニタ9に表示された画像内の特定の色に対して色相と彩度の変更を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラ(以下、「デジタルカメラ」という)では、撮影レンズ系を通して被写体像がCCD等の撮像素子に入射されると、この撮像素子から出力される画像信号に対して信号処理部で所定の信号処理を行うことで、被写体像に応じた画像データを得ることができる。更に、得られた画像データに対して、表示部(モニター画面)に表示するための処理や、メモリ等に保存するため処理が行われる。
【0003】
また、最近では、撮影に関して専門的な知識を有していない初心者等であっても、様々な撮影シーンに応じて適切な画質の画像が簡単に得られるように、複数の撮影モードを有しているデジタルカメラも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1のような撮像装置(カメラ装置)では、ユーザが所定の撮影モードを設定すると、その撮影モードに対応した画質パラメータ(彩度、色相、シャープネス、コントラスト、ホワイトバランスなど)に基づいて画像データ処理が行われる。ところで、前記画質パラメータ(彩度、色相、シャープネス、コントラスト、ホワイトバランスなど)は、複数の撮影モードに対応して最適な画質が得られるように初期設定されたパラメータ値として記憶されている。
【0005】
このため、撮影状況等によって、表示部(モニター画面)に表示された撮影画像内の特定の色が実際の被写体の色と異なっている場合に、撮影時に撮影画像内の特定の色を実際の被写体の色に補正することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、撮影時に撮影画像内の特定の色を、実際の被写体の色に容易にかつ詳細に補正することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために請求項1に記載の撮像装置は、被写体像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段から出力される撮像した被写体像に応じた画像データを取り込み、前記画像データに対して画像処理を行う画像処理手段と、前記画像処理手段により画像処理された画像を表示するための画像表示手段とを有する画像形成装置において、色空間に対して色相領域を設定する色相領域設定手段と、色空間に対して色相回転量を設定する色相回転量設定手段と、色空間に対して彩度変更量を設定する彩度変更量設定手段と、前記色相領域設定手段に対して任意の色相領域を設定させるための第1の設定入力手段と、前記色相回転量設定手段に対して任意の色相回転量を設定させるための第2の設定入力手段と、彩度変更量設定手段に対して任意の彩度変更量を設定させるための第3の設定入力手段と、前記画像表示手段に表示された画像内の特定の色に対して色相と彩度の変更を行う色補正制御手段とを備え、前記色補正制御手段は、前記第1の設定入力手段により前記色相領域設定手段に対して任意の色相領域を設定すると共に、前記第2の設定入力手段により前記色相回転量設定手段に対して任意の色相回転量を設定し、更に前記第3の設定入力手段により前記彩度変更量設定手段に対して任意の彩度変更量を設定することにより、入力される設定された前記色相領域の色相回転量と設定された前記彩度変更量設定情報とに基づいて、前記画像表示手段に表示された画像内の特定の色に対して色相と彩度の変更を行うことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の撮像装置は、前記第1の設定入力手段により前記色相領域設定手段に対して任意の色相領域を設定するときに、前記画像表示手段に色空間を示すチャートが表示され、表示された色空間チャート画面上で前記第1の設定入力手段により色相領域開始角度と終了角度の設定を行なうことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の撮像装置は、前記第2の設定入力手段により前記色相回転量設定手段に対して任意の色相回転量を設定するときに、前記画像表示手段に色空間を示すチャートが表示され、表示された色空間チャート画面上で前記第2の設定入力手段により色相回転後の色相領域開始角度と終了角度の設定を行なうことを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の撮像装置は、前記第3の設定入力手段により前記彩度変更量設定手段に対して任意の彩度変更量を設定するときに、前記画像表示手段に彩度変更量を示すパーセンテージが表示され、表示された彩度変更量パーセンテージ画面上で前記第3の設定入力手段により彩度変更量の設定を行なうことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の撮像装置によれば、画像表示手段に表示された撮影画像に対して、撮影状況等によってこの撮影画像内の特定の色が実際の被写体の色と異なっている場合でも、撮影画像内の特定の色を被写体の色に容易に補正することができる。
【0012】
請求項2に記載の撮像装置によれば、画像表示手段に表示された色空間チャート画面上で第1の設定入力手段により色相領域開始角度と終了角度の設定を行なうことにより、ユーザが表示された色空間チャート画面を見ながら設定することができ、設定操作を容易に行うことが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の撮像装置によれば、画像表示手段に表示された色空間チャート画面上で第2の設定入力手段により色相回転後の色相領域開始角度と終了角度の設定を行なうことにより、ユーザが表示された色空間チャート画面を見ながら設定することができ、設定操作を容易に行うことが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の撮像装置によれば、画像表示手段に表示された彩度変更量パーセンテージ画面上で第3の設定入力手段により彩度変更量の設定を行なうことにより、ユーザが表示された彩度変更量パーセンテージ画面を見ながら設定することができ、設定操作を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本発明の実施形態1に係る撮像装置の一例としてのデジタルカメラを示す正面図、(b)は、その上面図、(c)は、その背面図。
【図2】本発明の実施形態1に係る撮像装置の一例としてのデジタルカメラ内のシステム構成の概要を示すブロック図。
【図3】画像データ処理部の構成を示すブロック図。
【図4】(a)は、γ補正処理部で入出力変換処理を行う際のγ補正曲線の一例を示す図、(b)は、画像出力装置での入力信号に対する出力信号の出力特性の一例を示す図。
【図5】CbCr色空間の一例を示す図。
【図6】エッジ強調処理部の構成を示すブロック図。
【図7】制御部内に設けられた色相設定部、色相回転量設定部、彩度変更量設部、特定色補正制御部を示すブロック図。
【図8】本実施形態における特定色に対する色補正制御を示すフローチャート。
【図9】本実施形態における色相の変更設定処理を示すフローチャート。
【図10】(a)は、CbCr色空間において色相変更前の領域設定の一例を示した図、(b)は、CbCr色空間において色相変更後の領域設定の一例を示した。
【図11】(a)は、CbCr色空間において色相変更前領域と色相変更後領域のサイズが同じ場合の一例を示した図、(b)は、CbCr色空間において色相変更前領域と色相変更後領域のサイズが異なっている場合の一例を示した図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置の一例としてのデジタルカメラを示す正面図、図1(b)は、その上面図、図1(c)は、その背面図、図2は、図1(a),(b),(c)に示したデジタルカメラ内のシステム構成の概要を示すブロック図である。
【0017】
(デジタルカメラの外観構成)
図1(a),(b),(c)に示すように、本実施形態に係るデジタルカメラ1の上面側には、レリーズボタン(シャッタボタン)2、電源ボタン3、撮影・再生切替ダイアル4が設けられており、デジタルカメラ1の正面(前面)側には、撮影レンズ系5を有する鏡胴ユニット6、ストロボ発光部(フラッシュ)7、光学ファインダ8が設けられている。
【0018】
デジタルカメラ1の背面側には、液晶モニタ(LCD)9、前記光学ファインダ8の接眼レンズ部8a、広角側ズーム(W)スイッチ10、望遠側ズーム(T)スイッチ11、メニュー(MENU)ボタン12、設定切替ボタン13等が設けられている。また、デジタルカメラ1の側面内部には、撮影した画像データを保存するためのメモリカード14(図2参照)を収納するメモリカード収納部15が設けられている。
【0019】
(デジタルカメラのシステム構成)
図2に示すように、このデジタルカメラ1は、鏡胴ユニット6の撮影レンズ系5を通して入射される被写体像が受光面上に結像する固体撮像素子としてのCCD20、CCD20から出力される電気信号(アナログRGB画像信号)をデジタル信号に処理するアナログフロントエンド部(以下、「AFE部」という)21、AFE部21から出力されるデジタル信号を処理する信号処理部22、データを一時的に格納するSDRAM23、制御プログラム等が記憶されたROM24、鏡胴ユニット6を駆動するモータドライバ25等を有している。
【0020】
鏡胴ユニット6は、ズームレンズやフォーカスレンズ等を有する撮影レンズ系5、絞りユニット26、メカシャッタユニット27を備えており、撮影レンズ系5、絞りユニット26、メカシャッタユニット27の各駆動ユニットは、モータドライバ25によって駆動される。モータドライバ25は、信号処理部22の制御部(CPU)28からの駆動信号により駆動制御される。
【0021】
CCD20は、CCD20を構成する複数の画素上にRGB原色フィルタ(不図示)が配置されており、RGB3原色に対応した電気信号(アナログRGB画像信号)が出力される。
【0022】
AFE部21は、CCD20を駆動するTG(タイミング信号発生部)30、CCD20から出力される電気信号(アナログRGB画像信号)をサンプリングするCDS(相関2重サンプリング部)31、CDS31にてサンプリングされた画像信号のゲインを調整するAGC(アナログ利得制御部)32、AGC32でゲイン調整された画像信号をデジタル信号(以下、「RAW−RGBデータ」という)に変換するA/D変換部33を備えている。
【0023】
信号処理部22は、AFE部21のTG30からの画面水平同期信号(HD)と画面垂直同期信号(VD)、および画素転送クロック(ピクセルクロック)の出力を受け、これらの同期信号に合わせて、AFE部21のA/D変換部33から出力されるRAW−RGBデータを取り込むCCDインターフェース(以下、「CCDI/F」という)34と、SDRAM23を制御するメモリコントローラ35と、取り込んだRAW−RGBデータを表示や記録が可能な画像データに変換処理する画像データ処理部36と、表示や記録される画像データのサイズに合わせて画像サイズを変更処理するリサイズ処理部37と、画像データを液晶モニタ(LCD)9に表示出力するための表示出力制御部38と、画像データをJPEG形成などで記録するためのデータ圧縮部39と、画像データをメモリカード14へ書き込み、又はメモリカード14に書き込まれた画像データを読み出すメディアインターフェース(以下、「メディアI/F」という)40と、操作部41からの操作入力情報に基づき、ROM24に記憶された制御プログラムに基づいてデジタルカメラ1全体のシステム制御等を行う制御部28を備えている。
【0024】
操作部41は、デジタルカメラ1(図1(a),(b),(c)参照)の外観表面に設けられているレリーズボタン2、電源ボタン3、撮影・再生切替ダイアル4、広角側ズームスイッチ10、望遠側ズームスイッチ11、メニューボタン12、設定切替ボタン13等であり、撮影者の操作によって所定の動作指示信号が制御部28に入力される。
【0025】
SDRAM23には、CCDI/F34に取り込まれたRAW−RGBデータが保存されると共に、画像データ処理部36で変換処理されたYUVデータ(RAW−RGBデータを、輝度データ(Y)と色差成分画像データ(Cb、Cr)に変換処理したYCbCrデータ)が保存され、更に、データ圧縮部39で圧縮処理されたJPEG形成などの画像データが保存される。
【0026】
(被写体撮影時の画像データ処理)
次に、前記したデジタルカメラ1の被写体撮影時における画像データ処理について説明する。
【0027】
ユーザ(撮影者)が電源ボタン3をONし、撮影・再生切替ダイアル4を撮影モードに設定することで、デジタルカメラ1が記録モードで起動する。電源ボタン3がONされて、撮影・再生切替ダイアル4が撮影モードに設定されたことを制御部28が検知すると、制御部28はモータドライバ25に制御信号を出力して、鏡胴ユニット6を撮影可能位置に移動させ、かつCCD20、AFE部21、信号処理部22、SDRAM23、ROM24、液晶モニタ9等を起動させる。
【0028】
そして、鏡胴ユニット6の撮影レンズ系5を被写体に向けることにより、撮影レンズ系5を通して入射される被写体像がCCD20の各画素の受光面上に結像する。そして、CCD20から出力される被写体像に応じた電気信号(アナログRGB画像信号)は、CDS31、AGC32を介してA/D変換部33に入力され、A/D変換部33によりRAW−RGBデータに変換する。このRAW−RGBデータは、信号処理部22のCCDI/F34に取り込まれてメモリコントローラ35を介してSDRAM23に保存される。
【0029】
そして、信号処理部22のCCDI/F34は、取り込まれたRAW−RGBデータより、AF(自動合焦)評価値、AE(自動露出)評価値、AWB(オートホワイトバランス)評価値を算出する。
【0030】
AF評価値は、例えば高周波成分抽出フィルタの出力積分値や、近接画素の輝度差の積分値によって算出される。合焦状態にあるときは、被写体のエッジ部分がはっきりとしているため、高周波成分が一番高くなる。これを利用して、AF動作時(合焦検出動作時)には、撮影レンズ系5の各フォーカス位置におけるAF評価値を取得して、その極大になる点を合焦検出位置としてAF動作が実行される。
【0031】
AE評価値とAWB評価値は、RAW−RGBデータにおけるRGB値のそれぞれの積分値から算出される。例えば、CCD20の全画素の受光面に対応した画面を256エリアに等分割(水平16分割、垂直16分割)し、それぞれのエリアのRGB積算を算出する。そして、制御部28は、算出されたRGB積算値を読み出し、AE処理では、画面のそれぞれのエリアの輝度を算出して、輝度分布から適正な露光量を決定する。決定した露光量に基づいて、露光条件(CCD20の電子シャッタ回数、絞りユニット26の絞り値等)を設定する。また、AWB処理では、RGBの分布から被写体の光源の色に合わせたAWBの制御値を決定する。
【0032】
そして、レリーズボタン2が押圧(半押しから全押し)操作される静止画撮影動作が開始されると静止画記録処理が行われる。
【0033】
即ち、レリーズボタン2が押圧(半押しから全押し)操作されると、制御部28からモータドライバ25への駆動指令により撮影レンズ系5のフォーカスレンズが移動し、例えば、いわゆる山登りAFと称されるコントラスト評価方式のAF動作が実行される。AF(合焦)対象範囲が無限から至近までの全領域であった場合、撮影レンズ系5のフォーカスレンズは、至近から無限、又は無限から至近までの間の各フォーカス位置に移動し、CCDI/F34で算出されている各フォーカス位置における前記AF評価値を制御部28が読み出す。そして、各フォーカス位置のAF評価値が極大になる点を合焦位置としてフォーカスレンズを合焦位置に移動させ、合焦させる。
【0034】
そして、前記したAE処理が行われ、露光完了時点で、制御部28からモータドライバ25への駆動指令によりメカシャッタユニット27が閉じられ、CCD20から静止画用のアナログRGB画像信号が出力される。そして、AFE部21のA/D変換部33によりRAW−RGBデータに変換される。
【0035】
そして、このRAW−RGBデータは、信号処理部22のCCDI/F34に取り込まれ、後述する画像データ処理部36でYUVデータに変換されて、メモリコントローラ35を介してSDRAM23に保存される。そして、このYUVデータはSDRAM23から読み出されて、リサイズ処理部37で記録画素数に対応するサイズに変換され、データ圧縮部39でJPEG形式等の画像データへと圧縮される。圧縮されたJPEG形式等の画像データは、SDRAM23に書き戻された後にメモリコントローラ35を介してSDRAM23から読み出され、メディアI/F40を介してメモリカード14に保存される。
【0036】
画像データ処理部36には、図3に示すように、取り込んだRAW−RGBデータを表示や記録が可能な画像データに変換処理して出力するための、ホワイトバランス(WB)処理部50、γ補正処理部51、補間処理部52、YCbCr変換処理部53、色補正処理部54、エッジ強調処理部55を有している。
【0037】
ホワイトバランス(WB)処理部50は、CCDI/F34で算出された前記AWB評価値に基づいて、CCD20の全画素上に配置されているRGBフィルタの分布から被写体の光源の色に合わせたホワイトバランスの制御値を決定するWB処理を行って、ホワイトバランスを合わせる。
【0038】
即ち、被写体からの光量を蓄積するCCD20の各画素には、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)のいずれか1色のカラーフィルタがベイヤ配置されているが、カラーフィルタの色によって透過する光量が変わってくるため、各画素に蓄積される電荷量が異なっている。ベイヤ配置のRGBカラーフィルタでは、最も画素感度が高いのはGフィルタで、RフィルタとBフィルタはGフィルタと比較すると約半分程度の画素感度である。よって、WB処理では、これらのカラーフィルタの画素感度差を補い、撮影画像の中の白色を白く見せるために、RフィルタとBフィルタの画素からの出力にゲインを掛ける処理を行う。
【0039】
また、物の色は、光源色(例えば、太陽光、蛍光灯など)によって変わってくるため、ホワイトバランス(WB)処理部50は、光源が変わっても白色を白く見せるように、RフィルタとBフィルタの画素からの出力に掛けるゲインを変更し、制御する機能を有している。
【0040】
γ補正処理部51は、ホワイトバランス(WB)処理部50でホワイトバランスが合わされた各画素出力データに対して、例えば、図4(a)に示すようなγ補正の曲線によって入出力変換処理を行う。なお、図4(a)の横軸は入力信号、縦軸は出力信号である。
【0041】
即ち、このデジタルカメラ1の液晶モニタ(LCD)9などの画像出力装置では、例えば、図4(b)に示すように、入力信号に対して出力信号は非線形な特性で出力される。なお、図4(b)の横軸は入力信号、縦軸は出力信号である。このような非線形な出力の場合、表示される画像の階調性が異なったものとなる。そこで、画像出力装置の出力特性が線形性を保つように予め入力信号に対してγ補正処理を行なう。
【0042】
補間処理部52は、1画素に1色のデータしか持っていないRAWデータに対して、足りない他の2色のデータを補うためにその周辺の画素から補間する補間演算処理を行う。
【0043】
YCbCr変換処理部53は、RGBデータを表示や記録が可能なYUVデータ(以下、「YCbCrデータ」という)に変換する処理を行う。
【0044】
即ち、デジタルカメラ等で一般的に用いられているファイル形式のJPEG画像では、YCbCrデータから画像が作成されるため、RGBデータをYCbCrデータに変換する必要がある。この変換式としては、例えば、下記の式を用いることができる。
Y = 0.299×R+0.587×G+0.114×B
Cb=−0.299×R+0.587×G+0.886×B
Cr= 0.701×R−0.587×G−0.114×B
【0045】
色補正処理部54で行う色補正処理としては、彩度設定、色相設定、部分的な色相変更設定、色抑圧設定などが挙げられる。
【0046】
彩度設定は、色の濃さを決定するパラメータ設定処理であり、例えば、図5に示すようなCbCr色空間において、第2象限でR(レッド)の色に対して原点からR(レッド)のドットまでのベクトルの長さが長いほど、色の濃さは濃くなる。色相設定は、色合いを決定するパラメータ設定処理であり、例えば、図5のCbCr色空間において、第3象限でG(グリーン)の色に対してベクトルの長さが同じであっても、ベクトルの向きが異なると色合いが変わってくる。
【0047】
部分的な色相変更設定は、例えば、図5のCbCr色空間において、第4象限に示すように部分的に色領域を回転させる処理である。また、彩度が強いと色が濃くなる一方で、色ノイズが強くなる傾向にある。そこで、色抑圧設定は、例えば輝度信号に対して閾値を設けて、この閾値よりも低い又は高い領域に対して彩度を抑えることにより色ノイズを抑える処理である。
【0048】
エッジ強調処理部55は、YCbCr変換処理部53で変換されたYCbCrデータも対して画像に合わせたエッジ強調を行う処理である。エッジ強調処理部55は、図6に示すように、画像の輝度(Y)信号からエッジ部分を抽出するエッジ抽出フィルタ部56と、エッジ抽出フィルタ部56により抽出されたエッジに対してゲインを掛けるゲイン乗算部57と、エッジ抽出フィルタ部56でのエッジ抽出と並行して画像のノイズを除去するローパスフィルタ(LPF)部58と、ゲイン乗算後のエッジ抽出データとローパスフィルタ処理後の画像データを加算する加算部59を有している。
【0049】
なお、エッジの強弱は、ゲイン乗算部57のゲインによって決まり、ゲインが大きい場合にはエッジが強くなり、ゲインが小さい場合にはエッジが弱くなる。
【0050】
前記した通常の撮影時には、制御部28による制御によって画像データ処理部36で前記した画像データ処理(ホワイトバランス(WB)処理、γ補正処理、補間処理、YCbCr変換処理、色補正処理、エッジ強調処理)が自動的に行なわれる。
【0051】
また、本実施形態では、被写体を撮影して上記した画像データ処理後に表示出力制御部38を介して液晶モニタ9に表示された撮影画像に対して、この撮影画像内の特定の色(以下、「特定色」という)に対して色補正(色相、彩度の変更)ができるように、図7に示すように、デジタルカメラ1の制御部28に、色空間に対して色相領域を設定する色相設定部60と、色空間に対して色相回転量を設定する色相回転量設定部61と、色空間に対して彩度変更量を設定する彩度変更量設定部62と、液晶モニタ9に表示された撮影画像内の特定色に対して色補正制御を行う特定色補正制御部63を有している。
【0052】
また、本実施形態では、特定色に対して色補正を行うときに、デジタルカメラ1のメニューボタン12及び設定切替ボタン13の押圧操作により「特定色補正設定モード」を設定すると、液晶モニタ9にCbCr色空間を示すチャートと、彩度変更量を示すパーセンテージを表示することができる。なお、本実施形態では、第1、第2、第3の各設定入力手段がメニューボタン12及び設定切替ボタン13に相当する。
【0053】
(特定色に対する色補正(色相、彩度の変更)制御)
本実施形態における特定色に対する色補正(色相、彩度の変更)制御を、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0054】
ユーザが前記デジタルカメラ1で被写体を撮影すると、前記した画像データ処理によって表示出力制御部38を介して液晶モニタ9に撮影画像が表示される。この際、撮影状況等によって、液晶モニタ9に表示された撮影画像内の特定色が、ユーザが直接見ている実際の被写体の色と異なっている場合がある。
【0055】
そこで、このような場合に、液晶モニタ9に表示された撮影画像内の特定色を、この撮影時にユーザが実際の被写体の色と合うように、撮影画像内の特定色の色を補正したいと判断すると、メニューボタン12及び設定切替ボタン13を押圧操作して、液晶モニタ9の画面上で「特定色補正設定モード」に切替える(ステップS1)。そして、ステップS1で「特定色補正設定モード」に切替えられると、先ず色相の変更設定が行われる(ステップS2)。
【0056】
ステップS2での色相の変更設定処理は、図9に示すフローチャートに示すように、最初に変更する色相領域を設定するために変更前の開始角度設定と変更前の終了角度設定を行なう(ステップS11)。即ち、例えば、図10(a)に示すような、CbCr色空間が液晶モニタ9の画面上に表示され、ユーザがメニューボタン12及び設定切替ボタン13を押圧操作することにより、色相設定部60は、この画面上のCbCr色空間(図では、第1象限)の中で色相を変更する領域の開始角度θ1と終了角度θ2を設定する。
【0057】
そして、ユーザがステップS11で設定した変更前の開始角度A1と変更前の終了角度A2の間の領域でOKあると判断すると(ステップS12)、図10(b)に示すように、次に色相をどこまで変更させるかを、変更後の開始角度θ3と変更後の終了角度θ4で設定する(ステップS13)。そして、撮影者がステップS13で設定した変更後の開始角度θ3と変更後の終了角度θ4との間の領域でOKであると判断する(ステップS14)。
【0058】
そして、ステップS2での色相変更設定が終了すると(ステップS3)、次に、彩度の変更設定を行なう(ステップS4)。即ち、ユーザがメニューボタン12及び設定切替ボタン13を押圧操作して、液晶モニタ9の画面上に現在の彩度に対する彩度変更量を設定し、設定した彩度変更量をパーセンテージで表示させる。
【0059】
そして、ステップS4での彩度変更設定が終了すると(ステップS5)、特定色補正制御部63は、入力されるステップS2で設定された色相回転量設定情報とステップS4で設定された彩度変更設定情報とに基づいて、特定色に対する色補正(色相、彩度の変更)制御を行い、撮影画像内の特定色の色を実際の被写体の色と合うように補正する(ステップS6)。ステップS6で特定色に対する色補正が行われた後、液晶モニタ9に特定色の色を実際の被写体の色と合うように色補正された撮影画像が表示される。
【0060】
なお、ステップS6での特定色の色補正(特定色に対する色相、彩度の変更)方法としては、例えば、図11(a)に示すように、色相を変更する前の領域(色相変更前の開始角度θ1と終了角度θ2との間の領域)と色相を変更した後の領域(色相変更後の開始角度θ3と終了角度θ4との間の領域)のサイズが同じ場合は、単純な色相回転を行なう。そして、色相変更前領域の開始角度θ1と色相変更後領域の開始角度θ3との間の角度をθ5とし、色補正前の色情報をCb、Cr、色補正後の色情報をCb′、Cr′、彩度変更量をA(%)とすると、特定色の色補正後の色情報(Cb′、Cr′)は、下記の式から算出することができる。
Cb′=(cosθ5×Cb−sinθ5×Cr)×A/100
Cr′=(sinθ5×Cb+cosθ5×Cr)×A/100
【0061】
また、例えば、図11(b)に示すように、色相を変更する前の領域(色相変更前の開始角度θ1と終了角度θ2との間の領域)と色相を変更した後の領域(色相変更後の開始角度θ3と終了角度θ4との間の領域)のサイズが異なる場合(図11(b)では、色相変更後領域の方が大きい)は、 以下のようにして算出することができる。
【0062】
即ち、色相変更前領域の開始角度θ1と終了角度θ2の間の角度をθa、色相変更後領域の開始角度θ3と終了角度θ4の間の角度をθb、色補正する色情報の角度をθとし、色補正前の色情報をCb、Cr、色補正後の色情報をCb′、Cr′、彩度変更量をA(%)とすると、特定色の色補正後の色情報(Cb′、Cr′)は、下記の式から算出することができる。
Cb′=(cosθ6×Cb−sinθ6×Cr)×A/100
Cr′=(sinθ6×Cb+cosθ6×Cr)×A/100
ただし、θ6=(θ−θ1)×θb/θa+(θ3−θ1)
【0063】
このように、本実施形態によれば、ユーザがデジタルカメラ1で被写体を撮影したときに、画像データ処理によって表示出力制御部38を介して液晶モニタ9に表示された撮影画像に対して、撮影状況等によってこの撮影画像内の特定色が実際の被写体の色と異なっている場合でも、ユーザが任意の色空間領域を設定して、色相回転量と彩度変更量を液晶モニタ9の画面上で設定しながら変更することができるので、撮影画像内の特定色を、被写体の色に合わせて容易にかつ詳細に補正することができる。よって、忠実な色再現性を得ることができる。
【0064】
なお、前記実施形態では、色空間をCbCr空間で説明したが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 デジタルカメラ(撮像装置)
5 撮影レンズ系
9 液晶モニタ
12 メニューボタン
13 設定切替ボタン
20 CCD
21 アナログフロントエンド部
22 信号処理部
28 制御部
36 画像データ処理部
60 色相設定部
61 色相回転量設定部
62 彩度変更量設定部
63 特定色補正制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開2004−48786号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段から出力される撮像した被写体像に応じた画像データを取り込み、前記画像データに対して画像処理を行う画像処理手段と、前記画像処理手段により画像処理された画像を表示するための画像表示手段とを有する画像形成装置において、
色空間に対して色相領域を設定する色相領域設定手段と、
色空間に対して色相回転量を設定する色相回転量設定手段と、
色空間に対して彩度変更量を設定する彩度変更量設定手段と、
前記色相領域設定手段に対して任意の色相領域を設定させるための第1の設定入力手段と、
前記色相回転量設定手段に対して任意の色相回転量を設定させるための第2の設定入力手段と、
彩度変更量設定手段に対して任意の彩度変更量を設定させるための第3の設定入力手段と、
前記画像表示手段に表示された画像内の特定の色に対して色相と彩度の変更を行う色補正制御手段とを備え、
前記色補正制御手段は、前記第1の設定入力手段により前記色相領域設定手段に対して任意の色相領域を設定すると共に、前記第2の設定入力手段により前記色相回転量設定手段に対して任意の色相回転量を設定し、更に前記第3の設定入力手段により前記彩度変更量設定手段に対して任意の彩度変更量を設定することにより、入力される設定された前記色相領域の色相回転量と設定された前記彩度変更量設定情報とに基づいて、前記画像表示手段に表示された画像内の特定の色に対して色相と彩度の変更を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の設定入力手段により前記色相領域設定手段に対して任意の色相領域を設定するときに、前記画像表示手段に色空間を示すチャートが表示され、表示された色空間チャート画面上で前記第1の設定入力手段により色相領域開始角度と終了角度の設定を行なうことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の設定入力手段により前記色相回転量設定手段に対して任意の色相回転量を設定するときに、前記画像表示手段に色空間を示すチャートが表示され、表示された色空間チャート画面上で前記第2の設定入力手段により色相回転後の色相領域開始角度と終了角度の設定を行なうことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第3の設定入力手段により前記彩度変更量設定手段に対して任意の彩度変更量を設定するときに、前記画像表示手段に彩度変更量を示すパーセンテージが表示され、表示された彩度変更量パーセンテージ画面上で前記第3の設定入力手段により彩度変更量の設定を行なうことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−109360(P2011−109360A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261645(P2009−261645)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】