説明

撮像装置

【課題】筐体の設計自由度の低減を招くことなく、光学素子の周囲での封止性能の確保を容易なものとしつつ小型化の妨げのなることなく適切な光学性能を得ることのできる撮像装置を提供する。
【解決手段】鏡筒30と、撮像素子52と、鏡筒30の一端部(31)を撮影光軸Oに直交する方向で取り囲む外表面Sを形成する取付壁部11と、鏡筒30に対して撮影光軸O方向への相対的な移動を可能とすべく撮像素子52を鏡筒30に螺合により結合する結合部材54と、鏡筒30の一端部を撮影光軸O方向で取付壁部11に押圧した状態において、径方向からの固定動作により取付壁部11と鏡筒30とを固定する第1固定手段(23、31)と、結合部材54を介して撮像素子52を鏡筒30の他端部(32)に結合した状態において、径方向からの固定動作により結合部材54を鏡筒30に固定する第2固定手段(24)と、を備える撮像装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等として用いられる撮像装置に関し、特に、車載カメラに好適な撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像用のレンズ等の光学素子と、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子と、を有する撮像装置が、車載カメラやデジタルカメラ、デジタルビデオ等に広く適用されている。撮像装置は、一般に、光学素子(レンズ)の結像位置が撮像素子(その受光面)となるように位置決めした状態で、筐体に収められて構成されている。
【0003】
このような撮像装置では、筐体を防水機能や防塵機能を有する構成とすることにより、内部のレンズ(光学素子)および撮像素子(その駆動のための電装品)を水や塵から保護するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の撮像装置は、レンズと撮像素子とを位置決め固定したユニットを、一端にレンズを露出させるためのレンズ開口を有しかつ他端にユニット挿入のために開閉可能な挿入開口を有する筐体に、開放した挿入開口から挿入して固定する構成とされている。特許文献1の撮像装置では、レンズ開口から露見されるレンズの周囲を封止する必要があることから、レンズ開口とレンズとの間にOリングを介在させつつ位置決め固定したユニットを挿入開口から挿入した状態で、筐体内部において撮影光軸方向に延在するネジ部材で当該ユニットを筐体に固定しており、筐体とレンズとの間を互いに圧接するOリングで防水(防塵)するものとされている。
【0004】
ところが、この特許文献1の撮像装置では、レンズと撮像素子との位置決め固定が完了したユニットを筐体に取り付けるものであって、筐体とレンズとを撮影光軸方向に圧接させることによりOリングによる封止性能を確保するものであることから、位置決め固定したユニットにおいて、係合箇所に係合されるネジ部材への撮影光軸方向からの固定動作(締め付け操作)を可能な構成とする必要がある。ここで、撮像装置では、小型化が要求されることから、位置決め固定したユニットにおいて、係合箇所を撮影光軸に直交する方向で見て撮像素子が設けられた基板よりも突出する位置とすることは大型化を招くため望ましくない。このため、特許文献1の撮像装置では、基板の一部を切り欠くことにより、位置決め固定したユニットの係合箇所に係合されるネジ部材への撮影光軸方向からの固定動作を可能としている。しかしながら、基板の一部に切り欠きを設けると、基板における実装面積の低減を招くことから、基板の枚数の増加を招いてしまい、結果として撮像装置の小型化の妨げとなってしまう。また、ネジ部材自体を小さくすることにより、ユニットにおける係合箇所を小さくすることも考えられるが、筐体とレンズとの圧接力が不足してしまい、Oリングで十分な封止性能を確保することが困難となってしまう。
【0005】
このため、この筐体とレンズとを撮影光軸方向に圧接させることによりOリングによる封止性能を確保する構成にかえて、レンズ等の光学素子を直接筐体で封止的に保持する構成の撮像装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2の撮像装置では、筐体と光学素子とを撮影光軸方向に圧接させることなく光学素子の周囲の封止性を確保する構成であることから、ユニットを筐体に固定するための係合箇所に起因する上記した問題点を解消することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2の撮像装置では、撮像素子が設けられた基板を、筐体の内周面に設けたネジ溝への螺合により基板を筐体で保持する構成とされており、当該基板の撮影光軸回りの回転により基板の光学素子に対する撮影光軸方向への移動が可能とされ、光学素子と撮像素子との位置決め(ピント調整)が可能とされている。このため、特許文献2の撮像装置では、光学素子に対する撮像素子の撮影光軸方向での位置に応じて、撮影光軸回り方向で見た筐体に対する撮像素子の位置関係(撮影光軸回り方向での筐体に対する撮像素子の回転姿勢)が決まってしまうことから、光学素子の結像位置が撮像素子(その受光面)となるように位置決めした状態において、筐体に対する撮像素子の回転姿勢を所定のものとすることが困難である。
【0007】
ここで、撮像装置では、筐体の外観形状から見た上下左右方向と、取得した画像における上下左右方向と、が一致していることが、製品品質の観点から重要である。例えば、筐体が立方体または直方体に近い形状である場合、筐体の底面が鉛直方向下側となるように撮像装置を配置すると、取得した画像における上下方向が当該画像の被写体における鉛直方向と一致していることが求められる。このため、特許文献2の撮像装置のように、位置決めの結果に応じて撮影光軸回り方向での筐体に対する撮像素子の回転姿勢が変化する構成とする場合、外観形状からでは上下左右方向が特定できない形状の筐体(例えば、円筒状や球状)を用いることで、筐体の外観形状に対する取得した画像における上下左右方向のずれを認識できなくすることが考えられるが、筐体の設計自由度が大きく制限されてしまう。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、筐体の設計自由度の低減を招くことなく、光学素子の周囲での封止性能の確保を容易なものとしつつ小型化の妨げのなることなく適切な光学性能を得ることができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の撮像装置は、少なくとも1つ以上の光学素子を保持する鏡筒と、前記光学素子により結像された被写体像の取得のための撮像素子と、前記鏡筒における被写体側となる一端部を撮影光軸に直交する方向で取り囲む外表面を形成する取付壁部と、前記鏡筒に対して前記撮影光軸方向への相対的な移動を可能とすべく前記撮像素子を前記鏡筒に螺合により結合する結合部材と、前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧した状態において、前記撮影光軸に直交する方向からの固定動作により前記取付壁部と前記鏡筒とを固定する第1固定手段と、前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記撮影光軸に直交する方向からの固定動作により前記結合部材を前記鏡筒に固定する第2固定手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の撮像装置は、請求項1に記載の撮像装置であって、前記結合部材は、前記鏡筒の前記他端部を取り囲むことが可能な筒状を呈し、前記結合部材の内周面には、結合部材側ネジ溝が設けられ、前記鏡筒の前記他端部の外周面には、前記結合部材側ネジ溝と螺合可能な鏡筒側ネジ溝が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の撮像装置は、請求項2に記載の撮像装置であって、前記第2固定手段は、前記鏡筒の前記他端部を取り囲むことが可能な環状を呈し、内周面に前記鏡筒側ネジ溝と螺合可能な第2固定ネジ溝が設けられた第2ナット状部材であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の撮像装置は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の撮像装置であって、前記取付壁部は、被写体側から前記撮影光軸方向で見て同心状の2つの円形状を呈する段付きの貫通孔を有し、前記鏡筒は、前記他端側よりも前記一端側の方が外径寸法の大きな段付きの外観形状を呈し、前記第1固定手段は、前記鏡筒の前記他端部を取り囲むことが可能な環状を呈し内周面に前記鏡筒側ネジ溝と螺合可能な第1固定ネジ溝が設けられた第1ナット状部材を有し、前記鏡筒を前記他端側から前記取付壁部の前記貫通孔へと挿通した状態において、前記取付壁部の前記外表面とは反対側で前記鏡筒の前記他端部に螺合された前記第1ナット状部材が前記鏡筒の前記一端部と間で前記取付壁部を狭持するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の撮像装置は、請求項4に記載の撮像装置であって、前記取付壁部では、前記貫通孔における段付き箇所に、前記撮影光軸に直交する直交面が設けられ、前記鏡筒では、前記一端側と前記他端側との間の段付き箇所に、前記撮影光軸に直交する直交面が設けられ、前記取付壁部と前記鏡筒との間では、双方の前記直交面の間に封止部材が配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の撮像装置は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の撮像装置であって、前記結合部材は、前記撮像素子が設けられた基板に対して締結部材による螺合により固定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の撮像装置は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の撮像装置であって、前記結合部材は、前記撮像素子が設けられた基板に対して接着により固定されていることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の撮像装置は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の撮像装置であって、前記結合部材は、前記撮像素子に固定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の撮像装置は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の撮像装置であって、前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧し、かつ前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記第1固定手段に対する前記撮影光軸に直交する方向からの固定動作を可能とするための第1空間が設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の撮像装置は、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の撮像装置であって、前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧し、かつ前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記第2固定手段に対する前記撮影光軸に直交する方向からの固定動作を可能とするための第2空間が設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載の撮像装置は、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の撮像装置であって、前記鏡筒の外周面には、前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧し、かつ前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記撮影光軸に直交する方向からの前記鏡筒の撮影光軸回りの回転操作のための平坦面部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項12に記載の撮像装置は、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の撮像装置であって、前記鏡筒の外周面には、前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧し、かつ前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記撮影光軸に直交する方向からの前記鏡筒の撮影光軸回りの回転操作のためのピン穴が設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項13に記載の撮像装置は、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の撮像装置であって、前記取付壁部は、前記外表面とは反対側に一端開放の箱状部材が結合されることにより、該箱状部材と協働して、前記鏡筒と前記撮像素子とを収容する筐体を形成することを特徴とする。
【0022】
請求項14に記載の車載カメラは、請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の撮像装置を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の撮像装置では、鏡筒の一端部を撮影光軸方向で取付壁部に押圧しかつ結合部材を介して撮像素子を鏡筒の他端部に結合した状態において、取付壁部を固定するとともに、結合部材を撮影光軸回りの回転を防止しつつ撮影光軸に沿う移動を可能に保持することで、鏡筒を撮影光軸回りに回転させることにより、撮影光軸回り方向での取付壁部に対する撮像素子の回転姿勢を変化させることなく鏡筒に対する撮影光軸方向での撮像素子の位置を変化させることができるので、適切な光学性能を得ることができる。
【0024】
また、鏡筒の一端部を撮影光軸方向で取付壁部に押圧した状態において、取付壁部と鏡筒とを第1固定手段により固定することができるので、鏡筒と取付壁部との当接箇所に封止部材を配置することで、取付壁部の外表面側からの取付壁部と鏡筒との間での十分な封止性能を容易に確保することができる。
【0025】
さらに、第1固定手段は、撮影光軸に直交する方向からの固定動作により取付壁部と鏡筒とを固定することができ、かつ第2固定手段は、撮影光軸に直交する方向からの固定動作により結合部材を鏡筒に固定することができることから、それらの固定のために撮像素子が設けられた基板に切り欠きを設ける必要がないので、小型化の妨げとなることなく封止性能を確保することができる。
【0026】
ついで、外表面を形成する取付壁部に対して鏡筒の封止的な固定を容易なものとしつつその鏡筒に適切な状態で撮像素子を結合させることができるので、取付壁部を外表面形状から上下左右方向が特定できるものとすることができ、外観形状から上下左右方向が特定できる筐体に用いることができる。
【0027】
上記した構成に加えて、前記結合部材は、前記鏡筒の前記他端部を取り囲むことが可能な筒状を呈し、前記結合部材の内周面には、結合部材側ネジ溝が設けられ、前記鏡筒の前記他端部の外周面には、前記結合部材側ネジ溝と螺合可能な鏡筒側ネジ溝が設けられていることとすると、簡単な構成で、撮像素子と鏡筒(そこに保持された光学素子)との撮影光軸方向への相対的な移動を可能とすべく撮像素子と鏡筒とを螺合により結合することができる。
【0028】
上記した構成に加えて、前記第2固定手段は、前記鏡筒の前記他端部を取り囲むことが可能な環状を呈し、内周面に前記鏡筒側ネジ溝と螺合可能な第2固定ネジ溝が設けられた第2ナット状部材であることとすると、簡単な構成で第2固定手段を構成することができるとともに、第2固定手段(第2ナット状部材)による結合部材の鏡筒への固定を強固なものとすることができる。
【0029】
上記した構成に加えて、前記取付壁部は、被写体側から前記撮影光軸方向で見て同心状の2つの円形状を呈する段付きの貫通孔を有し、前記鏡筒は、前記他端側よりも前記一端側の方が外径寸法の大きな段付きの外観形状を呈し、前記第1固定手段は、前記鏡筒の前記他端部を取り囲むことが可能な環状を呈し内周面に前記鏡筒側ネジ溝と螺合可能な第1固定ネジ溝が設けられた第1ナット状部材を有し、前記鏡筒を前記他端側から前記取付壁部の前記貫通孔へと挿通した状態において、前記取付壁部の前記外表面とは反対側で前記鏡筒の前記他端部に螺合された前記第1ナット状部材が前記鏡筒の前記一端部と間で前記取付壁部を狭持するものであることとすると、簡単な構成で第1固定手段を構成することができるとともに、第1固定手段(第1ナット状部材および鏡筒の一端部)による取付壁部と鏡筒との固定を強固なものとすることができる。
【0030】
上記した構成に加えて、前記取付壁部では、前記貫通孔における段付き箇所に、前記撮影光軸に直交する直交面が設けられ、前記鏡筒では、前記一端側と前記他端側との間の段付き箇所に、前記撮影光軸に直交する直交面が設けられ、前記取付壁部と前記鏡筒との間では、双方の前記直交面の間に封止部材が配置されていることとすると、第1固定手段による固定方向である撮影光軸方向で封止部材を圧縮することができるので、取付壁部の外表面側からの取付壁部と鏡筒との間をより適切に封止することができる。
【0031】
上記した構成に加えて、前記結合部材は、前記撮像素子が設けられた基板に対して締結部材による螺合により固定されていることとすると、基板すなわち撮像素子を鏡筒により強固に固定することができる。
【0032】
上記した構成に加えて、前記結合部材は、前記撮像素子が設けられた基板に対して接着により固定されていることとすると、結合部材と基板との位置関係を微調整することができることから、結合部材を介して取り付けられる鏡筒すなわちそこに保持される光学素子に対する撮像素子の位置関係を微調整することができるので、より高精度の画像特性を得ることができる。
【0033】
上記した構成に加えて、前記結合部材は、前記撮像素子に固定されていることとすると、鏡筒と撮像素子との結合のための部材を減らすことができることから、各部材における製造誤差や温度変化に起因する変形の影響を低減することができるので、より高精度の画像特性を得ることができる。
【0034】
上記した構成に加えて、前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧し、かつ前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記第1固定手段に対する前記撮影光軸に直交する方向からの固定動作を可能とするための第1空間が設けられていることとすると、鏡筒に対する撮影光軸方向での撮像素子の位置調整を行った状態において、第1空間を利用して第1固定手段を固定動作させることができるので、取付壁部と鏡筒との固定を容易なものとすることができる。
【0035】
上記した構成に加えて、前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧し、かつ前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記第2固定手段に対する前記撮影光軸に直交する方向からの固定動作を可能とするための第2空間が設けられていることとすると、鏡筒に対する撮影光軸方向での撮像素子の位置調整を行った状態において、第2空間を利用して第2固定手段を固定動作させることができるので、結合部材の鏡筒への固定を容易なものとすることができる。
【0036】
上記した構成に加えて、前記鏡筒の外周面には、前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧し、かつ前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記撮影光軸に直交する方向からの前記鏡筒の撮影光軸回りの回転操作のための平坦面部が設けられていることとすると、鏡筒の撮影光軸回りの回転操作を容易なものとすることができるので、鏡筒に対する撮影光軸方向での撮像素子の位置調整を容易にかつ正確に行うことができる。
【0037】
上記した構成に加えて、前記鏡筒の外周面には、前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧し、かつ前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記撮影光軸に直交する方向からの前記鏡筒の撮影光軸回りの回転操作のためのピン穴が設けられていることとすると、鏡筒の撮影光軸回りの回転操作を容易なものとすることができるので、鏡筒に対する撮影光軸方向での撮像素子の位置調整を容易にかつ正確に行うことができる。
【0038】
上記した構成に加えて、前記取付壁部は、前記外表面とは反対側に一端開放の箱状部材が結合されることにより、該箱状部材と協働して、前記鏡筒と前記撮像素子とを収容する筐体を形成することとすると、全体に小さな構成であるにも拘らず高い光学性能を有しかつ全方位に対して封止性能を有するものとすることができる。
【0039】
上記した構成の撮像装置を用いる車載カメラでは、小型な構成であるにも拘らず、取付壁部の外表面側からの取付壁部と鏡筒との間での十分な封止性能を有し、かつ適切な光学性能を有するものとすることができることから、任意の位置に取り付けることができ、雨や湿気や塵埃が多い環境であっても適切に運転者による視認を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る撮像装置10の外観形状を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の撮像装置10を、撮影光軸Oを含む面で破断して示す説明図である。
【図3】取付壁部11の構成を説明するための模式的な断面図である。
【図4】鏡筒30の構成を説明するための模式的な斜視図である。
【図5】鏡筒30の構成を説明するために、その後端側(内縁突起部39側)から見た模式的な斜視図である。
【図6】図5のI−I線に沿って得られた模式的な断面図である。
【図7】撮像光学系20の構成を説明するための模式的な斜視図である。
【図8】撮像光学系20の構成を説明するために、鏡筒30の後端側(内縁突起部39側)から見た模式的な斜視図である。
【図9】電装基板部50の構成を説明するための模式的な斜視図である。
【図10】電装基板部50の構成を説明するために、斜め後方から見た模式的な斜視図である。
【図11】撮像装置10の暫定的に組付けの様子を説明するために、各部材に分解して示す模式的な断面図である。
【図12】撮像装置10が暫定的に組付けられた様子を示す模式的な断面図である。
【図13】撮像装置10の位置決め固定の様子を説明するための模式的な断面図である。
【図14】位置決め固定された撮像装置10を部分的に破断して示す模式的な斜視図である。
【図15】位置決め固定された撮像装置10を部分的に破断して示す模式的な側面図である。
【図16】他の例の鏡筒30´の構成を説明するための模式的な斜視図である。
【図17】鏡筒30´を用いた撮像装置10を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本願発明に係る撮像装置の発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0042】
本発明に係る撮像装置の一例としての撮像装置10を、図1ないし図15を用いて説明する。
【0043】
撮像装置10は、図1および図2に示すように、取付壁部11に、撮像光学系20(図1では、その後述する対物レンズ(レンズ41)および抜止部材22の前端部のみが露見している)と、電装基板部50と、が取り付けられて構成されている。
【0044】
取付壁部11は、少なくとも撮像光学系20の対物レンズ(この例ではレンズ41)すなわち鏡筒30の一端部の撮影光軸Oに直交する方向(以下では、径方向ともいう)で見た周囲を取り囲む外表面Sを形成するものであり、撮像装置10の所望の箇所への取り付けを可能とするものである。この取付壁部11は、本実施例では、撮影光軸O方向から見た正面形状が矩形状であって全体に直方体形状を呈し、筐体12の前側(被写体側)部分(前側筐体部)を構成するものとされている。このため、取付壁部11は、筐体12の後側を構成する後側筐体部13への取り付けが可能とされている。この取付壁部11は、図示は略すが、封止部材(例えば、Oリングや平パッキン等)を介在させた状態で、後端面11aを後側筐体部13の前端面13aに付き合わされてネジ止め等で結合されることにより、互いの結合箇所における防水機能や防塵機能(以下、封止性能という)を有する筐体12を形成する。この取付壁部11の撮影光軸O方向で見た大きさ寸法は、後述するように鏡筒30のネジ溝34との位置関係により設定されている。
【0045】
取付壁部11には、図3に示すように、撮像光学系20の後述する鏡筒30の撮影光軸O方向での挿通が可能とされた円柱状の挿通孔11bが設けられている。この挿通孔11bでは、撮影光軸O方向で見た後側(後側筐体部13側)に、内周壁面から内方へと突出された環状の内方突出部11cが設けられている。挿通孔11bでは、内方突出部11cが設けられることにより、前側(被写体側)が相対的に径寸法(径方向で見た撮影光軸O方向を基準とする内径寸法)の大きい拡孔部11dとされ、かつ後側(後側筐体部13側)が拡孔部11dよりも径寸法の小さな縮孔部11eとされている。すなわち、挿通孔11bは、内方突出部11cが設けられることにより、取付壁部11において、前側(被写体側)から見て同心状の2つの円形状を呈する段付きの貫通孔を形成している。この挿通孔11bは、縮孔部11e(内方突出部11c)の内壁面11fにより後述する径方向位置決め部と、内方突出部11cの前側面11gおよび後端面11hにより後述する撮影光軸方向位置決め部と、を取付壁部11に形成するように設定されている。この前側面11gおよび後端面11hは、撮影光軸O方向に直交する直交面とされている。
【0046】
後側筐体部13は、図1および図2に示すように、一端開放の箱形状を呈し、取付壁部11との協働により、撮像光学系20および電装基板部50(撮像素子52)を収容する筐体12を形成する。この後側筐体部13は、取付壁部11における撮影光軸O方向で見た大きさ寸法が後述するように鏡筒30のネジ溝34との位置関係により制限されていることから、取付壁部11の後端面11aの後方において、撮像光学系20と、その鏡筒30に結合された電装基板部50と、を収容可能な大きさ寸法(深さ寸法)とされている。後側筐体部13には、後端側に、撮像装置10を含む筐体12を所望の場所に取り付けるための2つの取付突起13bが設けられている。本実施例では、両取付突起13bは、図示は略すがネジ穴が設けられたボス部とされている。また、後側筐体部13には、後述する電装基板部50(後述する電子部品53)へと電力を供給したり、電装基板部50に実装される後述する撮像素子52で取得した画像データを伝送したりするための電線14が設けられている。この電線14は、外部との封止性能を有した状態で電装基板部50への接続を可能とされている。この封止性能を有する構成としては、後側筐体部13に接続穴(図示せず)を設け、そこに電線14を挿通するとともに周囲を防水用接着剤で充填することや、電線14(その被覆部材)を後側筐体部13と一体的に形成することがあげられる。なお、この電線14は、取付壁部11に後側筐体部13を取り付けない場合には、電装基板部50に直接接続する。この後側筐体部13との結合が可能とされた取付壁部11に撮像光学系20が取り付けられる。
【0047】
この撮像光学系20は、鏡筒30に光学素子群40が保持されて構成されている。この鏡筒30は、光学素子群40を内方で保持すべく筒状を呈し、図4ないし図6に示すように、外観形状が、前側(被写体側)となる一端側が相対的に径寸法(径方向で見た撮影光軸Oを基準とする外径寸法)の大きい拡径部31とされ、かつ後側となる他端側が拡径部31よりも径寸法の小さな縮径部32とされている。この拡径部31は、取付壁部11の挿通孔11bの拡孔部11dへの挿通が可能であり、かつ当該挿通孔11bの縮孔部11eへと挿通することのできない外径寸法とされている。また、縮径部32は、取付壁部11の挿通孔11bの縮孔部11eへの挿通が可能な外径寸法とされている。
【0048】
この鏡筒30では、拡径部31の外周面にネジ溝33と、縮径部32の外周面に鏡筒側ネジ溝としてのネジ溝34と、拡径部31と縮径部32との外径寸法の差異により形成された撮影光軸O方向に直交する直交面35と、縮径部32の外周面におけるネジ溝34と直交面35との間に位置する位置決め部36と、縮径部32の外周面で撮影光軸O方向に沿って延在する複数の平坦面部37と、が設けられている。
【0049】
拡径部31のネジ溝33は、後述する抜止部材22に設けられたネジ溝22aと螺合可能とされている。縮径部32のネジ溝34は、後述する前側ナット状部材23のネジ溝23a、後側ナット状部材24のネジ溝24aおよび電装基板部50の結合部材54のネジ溝54aと螺合可能とされている。直交面35は、鏡筒30の拡径部31を取付壁部11の挿通孔11bの拡孔部11d内に位置させると、その挿通孔11bの前側面11gと面当接可能な位置関係とされている。
【0050】
位置決め部36は、鏡筒30の縮径部32を取付壁部11の挿通孔11bの縮孔部11e内に位置させると、縮孔部11eの内壁面11fに内接可能な面形状とされている。すなわち、位置決め部36は、内壁面11fとの協働により、取付壁部11の挿通孔11b内において、鏡筒30の径方向での位置決めをすることができる。このため、この位置決め部36と取付壁部11の内壁面11fとは、取付壁部11に対する鏡筒30(撮像光学系20)の径方向での位置決めを行う径方向位置決め部として機能する。特に、本実施例では、位置決め部36と内壁面11fとが、撮影光軸Oを中心とし当該撮影光軸O方向に延在する曲面で当接する構成であることから、径方向位置決め部により、取付壁部11(挿通孔11b)における中心軸線と、鏡筒30(保持孔38)における中心軸線と、を一致させることができる。
【0051】
複数の平坦面部37は、撮影光軸O方向に沿って縮径部32の外周面を平面状に切削したように形成されており、縮径部32の周方向で見てネジ溝34および位置決め部36を分断するように設けられている。本実施例では、平坦面部37は、縮径部32の周方向で見て等しい間隔で4箇所に設けられており、径方向(撮影光軸Oに直交する方向)からの狭持を容易とすべく径方向で対を為している。このため、ネジ溝34および位置決め部36は、本実施例では、縮径部32の周方向で見て等しい間隔で4箇所に設けられている。
【0052】
この鏡筒30では、光学素子群40の保持ために、中心位置を撮影光軸O方向に沿って貫通する保持孔38が設けられている。この保持孔38は、前側(被写体側)の後述する光学素子群40としてのレンズ41の嵌合が可能な大内径部38aと、そこと隣接して大内径部38aよりも小さな内径寸法の中内径部38bと、そこと隣接して中内径部38bよりも小さな内径寸法の小内径部38cと、を有する。この大内径部38aでは、中内径部38b側に撮影光軸O方向に直交する直交面38dが設けられており、この直交面38dには、後述するレンズ41の後面を支持すべく中内径部38bと等しい内径寸法とされた環状を呈する環状突起部38eが設けられている。小内径部38cの後側(後述する撮像素子52側)すなわち鏡筒30の後端には、嵌合された後述する光学素子群40としてのレンズ47の脱落を防止するための内縁突起部39が設けられている。この鏡筒30の保持孔38に光学素子群40(図7および図8参照)が収容される。
【0053】
光学素子群40は、図7および図8に示すように、画像取得のために任意の位置に結像させるものであり、少なくとも1つ以上の光学素子を有し、撮像装置10(撮像光学系20)において求められる光学性能に応じて適宜構成される。この光学素子群40は、本実施例では、被写体(物体)側から順に、レンズ41、レンズ42、レンズ43、絞り44、レンズ45、レンズ46およびレンズ47を有する。レンズ41は、鏡筒30の保持孔38の大内径部38aに嵌合可能な外径寸法とされている。レンズ42、レンズ43および絞り44は、鏡筒30の保持孔38の中内径部38bに嵌合可能な外径寸法とされている。レンズ46およびレンズ47は、鏡筒30の保持孔38の小内径部38cに嵌合可能な外径寸法とされている。この光学素子群40は、大内径部38a側の開口から、レンズ47、レンズ46、レンズ45、絞り44、レンズ43、レンズ42およびレンズ41の順に、鏡筒30の保持孔38へと挿入される。ここで、本実施例では、レンズ42の次にレンズ41を保持孔38へと挿入する際、先ず、保持孔38の大内径部38aの直交面38dにおいて、環状突起部38eを取り巻くようにOリング21を配置し、そのOリング21および環状突起部38eに後面を宛がいつつ当該後面が直交面38dと対向するように、レンズ41を保持孔38へと挿入する。
【0054】
この保持孔38に挿入された光学素子群40は、抜止部材22により、大内径部38a側の開口から脱落することが防止される。この抜止部材22は、鏡筒30の拡径部31の外周面を取り巻くことが可能な大きさ寸法とされた筒状を呈し、前端部(被写体側の端部)がレンズ41の前面の周縁部(有効エリアの外側位置)に外方(前側)から当接可能な径寸法とされている。抜止部材22の内周面の後端側には、鏡筒30の拡径部31に設けられたネジ溝33と螺合可能なネジ溝22aが設けられている。この抜止部材22は、保持孔38に光学素子群40が適切に挿入された状態において、拡径部31を覆うようにネジ溝22aがネジ溝33に螺合されることにより、レンズ41を鏡筒30の後側(後述する撮像素子52側)へと押圧する。このため、光学素子群40は、鏡筒30の保持孔38において内縁突起部39側へと押圧され、レンズ47が内縁突起部39へと押し当てられて、当該保持孔38内で撮影光軸O方向に位置決めされる。これにより、光学素子群40が、鏡筒30内において撮影光軸O上で適切な位置に整列されることとなり、所望の光学性能を有する撮像光学系20が組み付けられる。このとき、レンズ41の後面と保持孔38の大内径部38aの直交面38dとの間に配置されたOリング21が、適切に圧縮される、すなわちレンズ41の後面に圧接されるとともに直交面38dに圧接される。このため、撮像光学系20では、適切に圧縮されたOリング21により、レンズ41の周囲から鏡筒30の内方(保持孔38の中内径部38bおよび小内径部38c)への水や塵埃等の侵入が防止されており、十分な封止性能を有している。このように、撮像光学系20では、鏡筒30により封止的に光学素子群40(その対物レンズとなるレンズ41)が保持され、所望の光学性能を有している。なお、本実施例では、光学素子群40(鏡筒30)の中心軸位置となる各レンズ41〜47(絞り44を含む)の回転対称軸(撮像素子52で取得される画像における中心位置)を、撮像光学系20の撮影光軸Oとしている。この撮像光学系20の光学素子群40の結像位置に、電装基板部50が配置される。
【0055】
電装基板部50は、図9および図10に示すように、基板51に撮像素子52と電子部品53とが実装されて構成されている。撮像素子52は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子で構成されており、撮像光学系20(光学素子群40)を通して受光面52a上に結像された被写体像を電気信号(画像データ)に変換して出力する。電子部品53は、撮像素子52における動作の制御や撮像素子52から出力された電気信号に基づく被写体像に対応したデジタル画像の生成等を行う。
【0056】
この電装基板部50では、基板51における撮像素子52が実装された面に、結合部材54が設けられている。この結合部材54は、撮像光学系20(光学素子群40)の結像位置を撮像素子52の受光面52a上とすべく、光学素子群40に対する撮影光軸O方向での撮像素子52(その受光面52a)の位置の変更を可能とするために、撮影光軸O回りのネジ溝を介する螺合により、鏡筒30に対して撮像素子52もしくはそれが実装された基板51を結合するものである。結合部材54は、本実施例では、鏡筒30の縮径部32の内方への挿入を許すとともに撮像素子52を内方に位置させることを可能とする円筒状を呈し、内周面に結合部材側ネジ溝としてのネジ溝54aが設けられている。このネジ溝54aは、鏡筒30の縮径部32の外周面に設けられたネジ溝34との螺合が可能とされている。この結合部材54には、基板51側となる基端部にその基板51への取り付け箇所となるフランジ部54bが設けられている。このフランジ部54bは、撮影光軸O方向で見た形状が八角形の直方体形状を呈し、8つの周面のうちの互いに隣接しない4つの周面が基板51の外観形状に略沿うものとされている。これにより、結合部材54では、径方向(撮影光軸Oに直交する方向)でのフランジ部54bの狭持が容易なものとされている。この結合部材54は、本実施例では、撮像素子52を取り囲むようにフランジ部54bの後端面が基板51に当接された状態で、図示を略すネジ部材による螺合により当該基板51に固定されている。この電装基板部50(結合部材54)の鏡筒30(縮径部32)への固定、および取付壁部11と鏡筒30との固定のために、2つのナット状部材23、24が設けられている(図2等参照)。
【0057】
両ナット状部材23、24は、図2に示すように、外周面に径方向(撮影光軸Oに直交する方向)での狭持を容易なものとすべく当該方向で対を為す平行平面が複数設けられ、かつ内周面に鏡筒30の縮径部32の外周面に設けられたネジ溝34との螺合が可能なネジ溝23a、24aが設けられて構成された環状部材である。縮径部32において拡径部31側に配置される前側ナット状部材23は、取付壁部11と鏡筒30とを固定するものである。このため、前側ナット状部材23は、第1ナット状部材として機能し、そのネジ溝23aは、第1固定ネジ溝として機能する。また、縮径部32において内縁突起部39側に配置される後側ナット状部材24は、電装基板部50(結合部材54)を鏡筒30(縮径部32)に固定するものである。このため、後側ナット状部材24は、第2ナット状部材として機能し、そのネジ溝24aは、第2固定ネジ溝として機能する。ここで、撮影光軸O方向で見て、鏡筒30の縮径部32においてネジ溝33が設けられた範囲の長さ寸法は、少なくとも両ナット状部材23、24の厚さ寸法と、電装基板部50の結合部材54のうちネジ溝54aが設けられた範囲の長さ寸法と、を加えたものに、径方向からの一対の平坦面部37を介する鏡筒30(縮径部32)の狭持を可能とするだけの長さ寸法を確保することが可能なものとされている。
【0058】
この撮像装置10は、次のように暫定的に組付けられる。図11に示すように、取付壁部11の前側面11g上に封止部材の一例としてのOリング25を配置し、鏡筒30の内縁突起部39側を挿入先端方向として、鏡筒30の直交面35をOリング25に宛がうように、取付壁部11の拡孔部11d側から挿通孔11bへと鏡筒30を挿入して、上述したように組み付けられた撮像光学系20(図7および図8参照)を取付壁部11の挿通孔11bに挿通する(矢印A1参照)。その後、取付壁部11の挿通孔11bに挿通された撮像光学系20の鏡筒30の縮径部32のネジ溝34に、その内縁突起部39側から、前側ナット状部材23(そのネジ溝23a)を螺合させ(矢印A2参照)、後側ナット状部材24(そのネジ溝24a)を螺合させ(矢印A3参照)、電装基板部50の結合部材54(そのネジ溝54a)を螺合させる(矢印A4参照)ことにより、撮像装置10の暫定的な組付けが完了する(図12参照)。このとき、図12に示すように、前側ナット状部材23(その前端面23b)は、取付壁部11(その後端面11h)に当接させず、かつ後側ナット状部材24(その後端面24b)は、結合部材54(その先端面54c)に当接させないものとする。これは、取付壁部11に対する鏡筒30の回転を可能とするとともに、結合部材54に対する鏡筒30の回転を可能とするためである。このように組み付けられた撮像装置10の位置決め固定について、以下で説明する。
【0059】
ここで、取付壁部11は、挿通孔11bに撮像光学系20が挿通された状態において、その撮像光学系20の鏡筒30の縮径部32のネジ溝34に螺合された前側ナット状部材23および後側ナット状部材24と、鏡筒30の縮径部32の平坦面部37への、径方向からの狭持のための接触およびその狭持した部材を撮影光軸O回りに回動させることが可能な構成とされている。換言すると、取付壁部11は、挿通孔11bに撮像光学系20が挿通された状態において、撮影光軸O方向で見て、撮像光学系20の鏡筒30の縮径部32の外周面上でネジ溝34が延在する領域に到達することのない大きさ寸法、すなわち当該ネジ溝34を横切りつつ撮影光軸O方向に直交する面と干渉することのない大きさ寸法とされている。このため、撮像装置10では、暫定的な組付け状態において、前側ナット状部材23および後側ナット状部材24を径方向で見た外方位置には他の構成部材が存在することはなく、かつ前側ナット状部材23と後側ナット状部材24との間および後側ナット状部材24と結合部材54との間の少なくとも一方から鏡筒30の縮径部32の平坦面部37の一部が露見している。よって、本実施例の撮像装置10では、暫定的な組付け状態において、前側ナット状部材23を径方向で見た外方位置に、前側ナット状部材23を撮影光軸O回りに回動させるための第1空間P1が形成されている。また、本実施例の撮像装置10では、暫定的な組付け状態において、後側ナット状部材24を径方向で見た外方位置に、後側ナット状部材24を撮影光軸O回りに回動させるための第2空間P2が形成されている。さらに、本実施例の撮像装置10では、暫定的な組付け状態において、結合部材54を径方向で見た外方位置に、結合部材54の径方向から狭持するための第3空間P3が形成されている。なお、この第1空間P1、第2空間P2および第3空間P3は、撮像装置10の位置決め固定の作業のための空間であることから、位置決め固定が完了した後は確保されている必要はない。
【0060】
先ず、位置決めのために、上述したように暫定的に組付けた撮像装置10を、図13に示すように、調整装置60に保持させる。この調整装置60は、少なくとも、取付壁部11を固定保持する筐体保持部61と、結合部材54(撮像素子52)を撮影光軸O方向への移動を許容しつつ撮影光軸O回りの回転を防止するように保持する撮像素子保持部62と、を有する。この撮像素子保持部62は、本実施例では、結合部材54のフランジ部54bを狭持することにより、結合部材54を保持するものとされている。本実施例の調整装置60では、これに加えて、筐体保持部61と撮像素子保持部62とに保持された撮像装置10において、撮像光学系20を撮影光軸O方向に沿って取付壁部11へと押圧する押圧部63を有する。この押圧部63は、本実施例では、鏡筒30の拡径部31に螺合された抜止部材22を押圧するものとされている。なお、この押圧部63は、作業者が手で押圧するものであってもよく、本実施例に限定されるものではない。
【0061】
暫定的に組付けた撮像装置10において、調整装置60の筐体保持部61で取付壁部11を固定保持し、かつその取付壁部11の上下左右方向と、撮像素子52で取得した画像における上下左右方向と、が一致するように調整装置60の撮像素子保持部62で結合部材54を保持する。また、調整装置60の押圧部63で撮像光学系20(抜止部材22)を撮影光軸O方向に沿って取付壁部11へと押圧する。
【0062】
この調整装置60に保持された撮像装置10の電装基板部50(その電子部品53)に電力を供給するとともに、電装基板部50(その撮像素子52)からの画像をモニタ70に表示可能な状態とする。そして、撮像装置10の撮影光軸O上で所定の距離に被写体(図示せず)を配置して、撮像光学系20で結像させるとともに、その被写体像を受光した撮像素子52からの電気信号(画像データ)に基づく画像をモニタ70に映し出す。
【0063】
この状態の撮像装置10において、鏡筒30の縮径部32の平坦面部37を鏡筒保持部64で狭持し、その鏡筒保持部64を撮影光軸O回りに移動(回動)させることにより、取付壁部11および結合部材54(撮像素子52)に対して、鏡筒30を撮影光軸O回りに回転させることができる。この鏡筒保持部64は、作業者の手であっても、作業者が使用する工具であってもよく、また調整装置60の一部として設けられているものであってもよい。なお、図13では、断面位置(図6と同様に図5のI−I線参照)の関係から、上下に対を為して示す鏡筒保持部64のうちの上側がネジ溝34に宛がわれているが、実際には撮影光軸Oを挟むように対向する一対の平坦面部37に宛がわれる。
【0064】
取付壁部11および結合部材54(撮像素子52)に対して、鏡筒30を撮影光軸O回りに回転させると、互いに螺合された鏡筒30の縮径部32のネジ溝34と結合部材54の内周面のネジ溝54aとの作用により、撮影光軸O方向で見た鏡筒30に対する結合部材54すなわち撮像素子52の位置を調整することができる(一点鎖線および二点鎖線で示す電装基板部50参照)。このとき、結合部材54すなわち撮像素子52は、撮像素子保持部62により撮影光軸O回りの回転が防止されかつ撮影光軸O方向への移動が可能とされていることから、取得した画像における上下左右方向が取付壁部11の上下左右方向と一致した状態を維持したまま撮影光軸O方向へと移動することとなり、撮像光学系20の結像位置を受光面52a上とするいわゆるピント調整を行うことができる。このピント調整では、取付壁部11の挿通孔11bの縮孔部11eの内壁面11fと、鏡筒30の縮径部32の位置決め部36と、の当接により、取付壁部11の挿通孔11b内において鏡筒30が径方向で位置決めされているとともに、取付壁部11(挿通孔11b)の中心軸線と鏡筒30(保持孔38)の中心軸線とが一致されていることから、取付壁部11の挿通孔11b内での鏡筒30の回転(回転姿勢)に拘らず、取付壁部11(その外観形状)に対する撮影光軸Oの位置関係が一定している。
【0065】
ピント調整は、取付壁部11および撮像素子52(電装基板部50の結合部材54)に対して、鏡筒30を撮影光軸O回りに回転させて、モニタ70に映し出された画像(被写体像)が適切な状態であるか否かで判断する。このピント調整は、作業者が画像を目視により確認しながら行うものであっても、画像解析により自動的に行う(調整装置60にそれらの機能を搭載する)ものであってもよい。このとき、押圧部63により、撮像光学系20が撮影光軸O方向に沿って取付壁部11へと押圧されていることから、取付壁部11の位置を基準とするピント調整をより適切に行うことができる。
【0066】
ピント調整が完了すると、筐体保持部61および撮像素子保持部62による保持と、押圧部63による押圧と、を維持した状態で、前側ナット状部材23を第1空間P1(図12参照)を利用して前側ナット保持部材65で保持し、鏡筒30に対して適宜回転させて、前側ナット状部材23の前端面23bを取付壁部11の後端面11hに圧接させることにより、図14および図15に示すように、取付壁部11の拡孔部11dの前側面11gを鏡筒30の直交面35に圧接させることができる。これにより、前側ナット状部材23と鏡筒30の拡径部31とで、取付壁部11の内方突出部11cを狭持することができ、取付壁部11と鏡筒30とを固定することができる。このため、前側ナット状部材23(その前端面23b)と鏡筒30の拡径部31(その直交面35)と取付壁部11の内方突出部11c(その前側面11gおよび後端面11h)とは、取付壁部11に対する鏡筒30(撮像光学系20)の撮影光軸O方向での位置決めを行う撮影光軸O方向位置決め部として機能する。また、前側ナット状部材23(その前端面23b)と鏡筒30の拡径部31(その直交面35)とは、取付壁部11と鏡筒30とを固定する第1固定手段として機能し、前側ナット状部材23を鏡筒30に対して回転させる(締め付ける)動作が、固定動作となる。
【0067】
このとき、取付壁部11と鏡筒30との間に配置されたOリング25は、取付壁部11の前側面11gと鏡筒30の直交面35とで適切に圧縮される、すなわち前側面11gに圧接されるとともに直交面35に圧接される。この適切に圧縮されたOリング25により、取付壁部11の外表面S側(対物レンズとなるレンズ41が露出された側)からの、取付壁部11と鏡筒30(撮像光学系20)との間での水や塵埃等の侵入が防止されており、十分な封止性能を有している。
【0068】
また、図13に示すように、筐体保持部61および撮像素子保持部62の保持と、押圧部63による押圧と、を維持した状態で、後側ナット状部材24を第2空間P2(図12参照)を利用して後側ナット保持部材66で保持し、鏡筒30に対して適宜回転させて、後側ナット状部材24の後端面24bを結合部材54の先端面54cに圧接させることにより、図14および図15に示すように、取得した画像における上下左右方向が取付壁部11の上下左右方向と一致した状態であって撮像光学系20とのピント調整が為された状態で、結合部材54すなわち撮像素子52と鏡筒30とを固定することができる。このため、後側ナット状部材24(その後端面24b)は、螺合により鏡筒30に結合された撮像素子52(電装基板部50の結合部材54)の、鏡筒30に対する撮影光軸O方向での位置決めを行う撮影光軸方向位置決め部として機能する。また、後側ナット状部材24(その後端面24b)は、結合部材54(撮像素子52)を鏡筒30に固定する第2固定手段として機能し、後側ナット状部材24を鏡筒30に対して回転させる(締め付ける)動作が、固定動作となる。
【0069】
これにより、位置決め固定が完了し、撮像装置10が形成される。この撮像装置10では、Oリング25により、取付壁部11の外表面S側(対物レンズとなるレンズ41が露出された側)からの、取付壁部11と鏡筒30(撮像光学系20)との間での水や塵埃等の侵入が防止されており、十分な封止性能を有しているとともに、適切な光学性能を有している。
【0070】
本実施例では、このように位置決め固定された撮像装置10は、図1および図2に示すように、その取付壁部11に後側筐体部13を封止的に結合することにより、筐体12により取付壁部11の裏面側における外方からの撮像光学系20および電装基板部50への防水機能および防塵機能を得ることができる。このため、撮像装置10は、後側筐体部13の両取付突起13bを介して所望の箇所に取り付けることが可能であって、全体に小さな構成であるにも拘らず高い光学性能を有しかつ全方位に対して封止性能を有するものとすることができる。このことから、この後側筐体部13が結合されて筐体12に取り囲まれた撮像装置10は、例えば、車載カメラとして好適である。
【0071】
このように、本発明の撮像装置10では、取得した画像における上下左右方向が取付壁部11の上下左右方向と一致した状態であって撮像光学系20とのピント調整が為された状態で、結合部材54すなわち撮像素子52と鏡筒30とを固定することができる。このため、取付壁部11として、外観形状から上下左右方向を特定できる形状を採用することができるので、取付壁部11すなわち筐体の設計自由度を飛躍的に向上させることができる。
【0072】
また、本発明の撮像装置10では、前側ナット状部材23を鏡筒30に対して撮影光軸O回りに回動させることにより、取付壁部11と鏡筒30とを封止的に固定することができるとともに、後側ナット状部材24を鏡筒30に対して撮影光軸O回りに回動させることにより、取付壁部11と鏡筒30とを封止的に固定することができる。このため、従来技術のように撮影光軸O方向での固定器具の挿通を可能とすべく撮像素子が設けられた基板の一部を切り欠く必要がないので、撮像装置10の小型化に大きく寄与することができる。
【0073】
さらに、本発明の撮像装置10では、鏡筒30(撮像光学系20)および結合部材54(電装基板部50の撮像素子52)を取付壁部11に暫定的に取り付けた状態で、その取付壁部11の上下左右方向と取得した画像における上下左右方向とを一致させたままピント調整を行うことができることから、光学素子群40の各部材における公差の影響をなくすことができ、適切な光学性能を得ることができる。
【0074】
本発明の撮像装置10では、暫定的な組付け状態において、前側ナット状部材23と後側ナット状部材24との間および後側ナット状部材24と結合部材54との間の少なくとも一方から鏡筒30の縮径部32の平坦面部37の一部が露見していることから、鏡筒30の撮影光軸O回りの回転操作すなわちピント調整(位置決め作業)を容易なものとすることができる。
【0075】
本発明の撮像装置10では、暫定的な組付け状態において、取付壁部11の挿通孔11bの縮孔部11eの内壁面11fと、鏡筒30の縮径部32の位置決め部36と、の当接により、取付壁部11の挿通孔11b内において鏡筒30が径方向で位置決めされているとともに、取付壁部11(挿通孔11b)の中心軸線と鏡筒30(保持孔38)の中心軸線とが一致されていることから、ピント調整のために取付壁部11の挿通孔11b内で鏡筒30を回転させても、取付壁部11(その外観形状)に対する撮影光軸Oの位置関係を一定とすることができるので、より適切にピント調整を行うことができ、より適切な光学性能を得ることができる。
【0076】
本発明の撮像装置10では、暫定的な組付け状態において、前側ナット状部材23および後側ナット状部材24を径方向で見た外方位置には他の部材が存在していない、換言すると上述した第1空間P1および第2空間P2が設けられていることから、撮像素子52(電装基板部50の結合部材54)が取付壁部11に対して位置決めされた状態での、取付壁部11と鏡筒30との固定作業およびその鏡筒30への結合部材54(電装基板部50の撮像素子52)の固定作業を容易なものとすることができる。
【0077】
本発明の撮像装置10では、ネジ溝34に螺合された前側ナット状部材23の締め付けにより取付壁部11と鏡筒30とが固定されるとともに、ネジ溝34に螺合された後側ナット状部材24の締め付けにより鏡筒30に結合部材54(電装基板部50の撮像素子52)が固定されていることから、その固定関係をより強固なものとすることができるとともに温度変化に伴う固定強度の変化を抑制することができるので、安定して高品質の画像特性を得ることができる。
【0078】
本発明の撮像装置10では、前側ナット状部材23により固定される取付壁部11と鏡筒30との間でOリング25が圧縮されていることから、より確実な封止性能を得ることができる。
【0079】
本発明の撮像装置10では、電装基板部50において、結合部材54がネジ部材(図示せず)による螺合により基板51に固定されていることから、電装基板部50すなわち撮像素子52を鏡筒30により強固に固定することができる。このため、例えば、車に搭載された状態での振動等の外乱にも耐えることができ、安定して高品質の画像特性を得ることができる。
【0080】
本発明の撮像装置10では、光学素子群40を保持する鏡筒30に電装基板部50(その結合部材54)が直接固定されている、すなわち鏡筒30と電装基板部50(その結合部材54)との間に他の部材が介在されていないことから、光学的に位置決めされた光学素子群40と撮像素子52(その受光面52a)との結合のための部材を減らすことができるので、各部材における製造誤差や温度変化に起因する変形の影響を低減することができ、より高精度の画像特性を得ることができる。
【0081】
本発明の撮像装置10では、鏡筒30に平坦面部37が設けられていることから、径方向からの狭持が容易であり、鏡筒30の撮影光軸O回りの回転操作すなわちピント調整を容易に行うことができる。
【0082】
本発明の撮像装置10では、取付壁部11と鏡筒30との間を封止するOリング25が、撮影光軸O方向に直交する鏡筒30の直交面35と、撮影光軸O方向に直交する取付壁部11の前側面11gと、の間に配置されていることから、たとえ取付壁部11の挿通孔11b内で鏡筒30が径方向のいずれかに偏っている場合であっても、その偏りの影響を受けることなく取付壁部11と鏡筒30との間でOリング25が適切に圧縮されるので、適切に封止性能を得ることができる。
【0083】
本発明の撮像装置10では、取付壁部11に後側筐体部13を封止的に結合することにより、筐体12内に収容された鏡筒30(そこに保持された光学素子群40)および撮像素子52(電装基板部50)を、全方位に対する防水性能および防塵性能を有するものとすることができる。
【0084】
本発明の撮像装置10では、光学素子群40が取付壁部11とは別体の鏡筒30に保持されていることから、取付壁部や筐体の外観形状を変更した場合であっても、高い光学性能の維持を容易なものとすることができるとともに、その外観形状の設計自由度を高めることができる。これは、以下のことによる。光学素子群40では、所定の光学性能を得るためには極めて高い精度で位置決めした状態でレンズ等の光学素子を保持する必要がある。このことは、本実施例のように、複数の光学素子が用いられている場合に特に重要となる。このため、例えば、上述した従来技術(特許文献2)のように筐体で直接光学素子を保持する構成とし、この筐体を樹脂成形で形成するものとすると、筐体の外観形状を変更する度に、光学素子を保持する箇所における高い精度の確保のために極めて高い精度の金型を作成する必要があり、高い光学性能の維持は容易なものではない。また、筐体で直接光学素子を保持する構成とし、例えば、この筐体を樹脂成形するものとすると、形状に応じて種々の偏肉や金型内での樹脂の流れの不均一等の影響の有無(大きさ)が変わるので、筐体(光学素子を保持する箇所)の精度を確保するために筐体自体の外観形状に制約が生じてしまう。これに対して、本発明に係る撮像装置10では、鏡筒30自体は変更することなく(鏡筒30を共通化する)、取付壁部における鏡筒30との固定のための構成箇所のみを共通のものとすればよいことから、取付壁部の外観形状の変更が光学素子群40の保持状態すなわち光学性能に影響を及ぼすことはなく、逆に光学性能の観点から取付壁部の外観形状の設計変更に影響を及ぼすこともない。
【0085】
本発明の撮像装置10では、光学素子群40が取付壁部11とは別体の鏡筒30に保持されているとともに、その鏡筒30に電装基板部50(撮像素子52)が固定されていることから、例えば、外気温や日光の照射により外表面Sを形成する取付壁部11が変形してしまった場合であっても、光学的に位置決めされた光学素子群40と撮像素子52(その受光面52a)との位置関係に影響が及ぶことを防止することができるので、安定して高品質の画像特性を得ることができる。
【0086】
本発明の撮像装置10では、鏡筒30と基板51との間が、撮像素子52を取り囲む結合部材54により塞がれていることから、鏡筒30の外方から撮像素子52の受光面52aへの異物の侵入を防止することができるとともに、鏡筒30の外方からの光が撮像素子52の受光面52aに入射することを確実に防止することができるので、より鮮明な画像を得ることができる。
【0087】
本発明の撮像装置10では、鏡筒30(撮像光学系20)と結合部材54(電装基板部50の撮像素子52)とが取付壁部11に対して位置決め固定されるとともに、鏡筒30(撮像光学系20)が取付壁部11に対して封止的に固定されて構成されていることから、この取付壁部11を所望の箇所、例えば、電子機器や建物の壁面の一部を構成するように取り付けることで、容易に所望の場所において封止性能を有する監視カメラとして利用することができる。
【0088】
したがって、本発明の撮像装置10では、筐体の設計自由度の低減を招くことなく、光学素子(光学素子群40)の周囲での封止性能の確保を容易なものとしつつ小型化の妨げのなることなく適切な光学性能を得ることができる。
【0089】
なお、上記した実施例では、本発明に係る撮像装置の一例としての撮像装置10について説明したが、少なくとも1つ以上の光学素子を保持する鏡筒と、光学素子により結像された被写体像の取得のための撮像素子と、鏡筒における被写体側となる一端部を撮影光軸に直交する方向で取り囲む外表面を形成する取付壁部と、鏡筒に対して撮影光軸方向への相対的な移動を可能とすべく撮像素子を鏡筒に螺合により結合する結合部材と、鏡筒の一端部を撮影光軸方向で取付壁部に押圧した状態において、撮影光軸に直交する方向からの固定動作により取付壁部と鏡筒とを固定する第1固定手段と、結合部材を介して撮像素子を鏡筒の他端部に結合した状態において、撮影光軸に直交する方向からの固定動作により結合部材を鏡筒に固定する第2固定手段と、を備える撮像装置であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0090】
また、上記した実施例では、暫定的な組付け状態の撮像装置10において、前側ナット状部材23および後側ナット状部材24を径方向で見た外方位置には他の部材が存在しないものとされていたが、径方向から前側ナット状部材23と後側ナット状部材24とを回動させることができるものであれば、例えば、撮影光軸O回りの角度で見て一部の角度領域のみが開放されているものであってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。すなわち、第1空間および第2空間は、撮影光軸O回りで見て全周に渡って形成されている必要はない。
【0091】
さらに、上記した実施例では、鏡筒30の縮径部32の外周面に4つの平坦面部37が形成されていたが、暫定的な組付け状態の撮像装置10において、径方向から鏡筒30を撮影光軸O回りに回転させることを容易なものとするものであれば、例えば、図16および図17に示すように、鏡筒30´の縮径部32´の外周面にピン穴55を設けるものであってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。このピン穴55は、径方向からの棒状部材の挿入が可能とされた凹所であり、図示の例では、縮径部32の周方向で見て等しい間隔で4箇所に設けられている。このため、周方向で隣り合う2つのピン穴55もしくは径方向で対向する2つのピン穴55へと2つの棒状部材を挿入することにより、容易に径方向から鏡筒30を保持して撮影光軸O回りに回転させることができる。なお、この各ピン穴55は、挿入される棒状部材で鏡筒30´に保持された光学素子群40を傷つけないように、保持孔38内に開放する(保持孔38へと連通する)していないものとすることが望ましい。この例のように、ピン穴55を設ける構成とすると、径方向からのピン穴55を介する鏡筒30(縮径部32)の狭持を可能とするだけの撮影光軸O方向での長さ寸法を小さくすることができるので、より小型化に寄与することができる。
【0092】
上記した実施例では、結合部材54は、ネジ部材(図示せず)による螺合により基板51に固定されていたが、接着により固定されていてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。この場合、結合部材54と基板51との位置関係を微調整することができるので、結合部材54を介して取り付けられる鏡筒30すなわちそこに保持される光学素子群40に対する撮像素子52の位置関係(例えば、撮影光軸O方向に対する受光面52aの角度)を微調整することができる。このため、より高精度の画像特性を得ることができる。
【0093】
上記した実施例では、前側ナット状部材23を鏡筒30に対して撮影光軸O回りに回動させて取付壁部11に圧接させることにより、前側ナット状部材23と鏡筒30の拡径部31とで、取付壁部11の内方突出部11cを狭持して取付壁部11と鏡筒30とを封止的に固定していたが、小型化の妨げとなることなく光学素子から撮像素子に至る封止性能の確保を容易なものとする観点からは、暫定的な組付け状態において径方向(撮影光軸Oに直交する方向)からの固定動作により取付壁部に対して撮影光軸O方向に鏡筒を押圧させて固定するものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0094】
上記した実施例では、後側ナット状部材24を鏡筒30に対して撮影光軸O回りに回動させて結合部材54に圧接させることにより、結合部材54すなわち撮像素子52と鏡筒30とを固定していたが、適切な光学性能を得る観点からは、ピント調整が完了した状態において、取付壁部と結合部材(撮像素子)との位置関係を維持したままでの径方向(撮影光軸Oに直交する方向)からの固定動作により結合部材と鏡筒とを固定するものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0095】
上記した実施例では、結合部材54が、撮像素子52を取り囲む筒状とされていたが、鏡筒に対して撮影光軸O方向への相対的な移動を可能とすべく撮像素子(電装基板部(基板))を鏡筒に螺合により結合するものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0096】
上記した実施例では、結合部材54が基板51に固定されていたが、撮像素子52に固定するものであってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。このとき、結合部材54(そのフランジ部54b)は、撮像素子52における有効エリア(実効的な受光面)以外の領域を利用して撮像素子52に取り付ければよい。この構成では、鏡筒30(光学素子群40)と撮像素子52との結合のための部材を減らすことができることから、各部材における製造誤差や温度変化に起因する変形の影響を低減することができるので、より高精度の画像特性を得ることができる。
【0097】
上記した実施例では、光学素子群40がレンズ41、レンズ42、レンズ43、絞り44、レンズ45、レンズ46およびレンズ47により構成されていたが、画像取得のために任意の位置に結像させるものであって少なくとも1つ以上の光学素子を有するものであり、上述した構成の鏡筒30に保持されているものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0098】
以上、本発明の撮影装置を実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0099】
10 撮像装置
11 取付壁部
11b (取付壁部の貫通孔としての)挿通孔
11g (直交面としての)前側面
12 筐体
13 (箱状部材としての)後側筐体部
23 (第1ナット状部材としての)前側ナット状部材
23a (第1固定ネジ溝としての)ネジ溝
24 (第2ナット状部材としての)後側ナット状部材
24a (第2固定ネジ溝としての)ネジ溝
25 (封止部材としての)Oリング
30、30´ 鏡筒
31 (一端側としての)拡径部
32 (他端側としての)縮径部
34 (鏡筒側ネジ溝としての)ネジ溝
35 直交面
37 平坦面部
40 光学素子群
51 基板
52 撮像素子
54 結合部材
54a (結合部材側ネジ溝としての)ネジ溝
55 ピン穴
O 撮影光軸
S 外表面
P1 第1空間
P2 第2空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【特許文献1】特許3835620号公報
【特許文献2】特開2009−290527号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上の光学素子を保持する鏡筒と、
前記光学素子により結像された被写体像の取得のための撮像素子と、
前記鏡筒における被写体側となる一端部を撮影光軸に直交する方向で取り囲む外表面を形成する取付壁部と、
前記鏡筒に対して前記撮影光軸方向への相対的な移動を可能とすべく前記撮像素子を前記鏡筒に螺合により結合する結合部材と、
前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧した状態において、前記撮影光軸に直交する方向からの固定動作により前記取付壁部と前記鏡筒とを固定する第1固定手段と、
前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記撮影光軸に直交する方向からの固定動作により前記結合部材を前記鏡筒に固定する第2固定手段と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記結合部材は、前記鏡筒の前記他端部を取り囲むことが可能な筒状を呈し、
前記結合部材の内周面には、結合部材側ネジ溝が設けられ、
前記鏡筒の前記他端部の外周面には、前記結合部材側ネジ溝と螺合可能な鏡筒側ネジ溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第2固定手段は、前記鏡筒の前記他端部を取り囲むことが可能な環状を呈し、内周面に前記鏡筒側ネジ溝と螺合可能な第2固定ネジ溝が設けられた第2ナット状部材であることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記取付壁部は、被写体側から前記撮影光軸方向で見て同心状の2つの円形状を呈する段付きの貫通孔を有し、
前記鏡筒は、前記他端側よりも前記一端側の方が外径寸法の大きな段付きの外観形状を呈し、
前記第1固定手段は、前記鏡筒の前記他端部を取り囲むことが可能な環状を呈し内周面に前記鏡筒側ネジ溝と螺合可能な第1固定ネジ溝が設けられた第1ナット状部材を有し、前記鏡筒を前記他端側から前記取付壁部の前記貫通孔へと挿通した状態において、前記取付壁部の前記外表面とは反対側で前記鏡筒の前記他端部に螺合された前記第1ナット状部材が前記鏡筒の前記一端部と間で前記取付壁部を狭持するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記取付壁部では、前記貫通孔における段付き箇所に、前記撮影光軸に直交する直交面が設けられ、
前記鏡筒では、前記一端側と前記他端側との間の段付き箇所に、前記撮影光軸に直交する直交面が設けられ、
前記取付壁部と前記鏡筒との間では、双方の前記直交面の間に封止部材が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記結合部材は、前記撮像素子が設けられた基板に対して締結部材による螺合により固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記結合部材は、前記撮像素子が設けられた基板に対して接着により固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記結合部材は、前記撮像素子に固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧し、かつ前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記第1固定手段に対する前記撮影光軸に直交する方向からの固定動作を可能とするための第1空間が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧し、かつ前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記第2固定手段に対する前記撮影光軸に直交する方向からの固定動作を可能とするための第2空間が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記鏡筒の外周面には、前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧し、かつ前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記撮影光軸に直交する方向からの前記鏡筒の撮影光軸回りの回転操作のための平坦面部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記鏡筒の外周面には、前記鏡筒の前記一端部を前記撮影光軸方向で前記取付壁部に押圧し、かつ前記結合部材を介して前記撮像素子を前記鏡筒の他端部に結合した状態において、前記撮影光軸に直交する方向からの前記鏡筒の撮影光軸回りの回転操作のためのピン穴が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記取付壁部は、前記外表面とは反対側に一端開放の箱状部材が結合されることにより、該箱状部材と協働して、前記鏡筒と前記撮像素子とを収容する筐体を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の撮像装置を用いることを特徴とする車載カメラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−211366(P2011−211366A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75299(P2010−75299)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】