説明

撮像装置

【課題】操作の煩わしさを低減することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】被写体情報記憶部211は、複数の撮影対象について、撮影対象毎に、撮影対象の撮影位置を示す撮影位置情報と、撮影位置を基準とした撮影対象の方向を示す少なくとも2つの対象方向情報とを対応付けて記憶する。演算部210は、撮像装置の位置報に基づいて、被写体情報記憶部211で記憶されている複数の撮影対象の撮影位置情報の中から少なくとも1つの撮影対象の撮影位置情報を選択し、選択した撮影位置情報に対応付けられて被写体情報記憶部211に記憶されている少なくとも2つの対象方向情報のそれぞれと、撮像装置の撮影方向を示す撮影方向情報との差分である少なくとも2つの方向差分を演算する。表示部202は、演算部210によって演算された少なくとも2つの方向差分に対応する情報を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より好適な撮影を可能とするために撮影者を誘導する機能を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザがカメラを持って観光地、景勝地などへ旅行に出掛け、その場に存在している被写体、例えば寺院・城・山や庭などの自然風景を撮影することがある。旅行者・撮影者の心理として、観光地に辿り着き、例えば園内に入場した直後に被写体を目にすると気分が昂揚する。そのため、興奮のあまり、初めに目にした被写体に気をとられ、その場所でばかり写真を撮り、撮影に満足すると、その被写体をより特徴的に、より綺麗に撮影できるお勧めの撮影場所があるにも関わらず、さっさと次の観光ポイントを求めて移動してしまう。すると、旅行後に改めてその時に撮影した写真を見ると、もっと大きく見えたとかもっと綺麗だったとか、イメージと異なる場合が多々あり、あのとき別の場所や角度から撮影すればよかったと後悔することが良くある。
【0003】
特許文献1では撮影者が初めて訪れる場所でも好適な構図で写真撮影が行えるようにするために、撮影装置が、サーバから取得した参照写真に対応する撮影位置情報及び自己の現在位置に基づいて、当該参照写真に対応する撮影位置に撮影者を誘導し、撮影位置において、撮影者の撮影状態に基づいて、撮影者の撮影状態に対応する構図が参照写真の構図と一致するように教示する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-239397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では撮影に好適な場所を探すために撮影者が現地でカメラを操作し、ネットワーク回線を利用して外部サーバから参照写真を取得し、取得した参照写真に基づいて撮影者自身が構図を決定する必要がある。構図の決定中に撮影者が、参照写真により教示される撮影方向とは異なる撮影方向で撮影すること等を望んだ場合、再度、参照写真の選択から操作をやり直す必要がある。このため、操作が煩わしいという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、操作の煩わしさを低減することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、撮像装置であって、複数の撮影対象について、前記撮影対象毎に、前記撮影対象の撮影位置を示す撮影位置情報と、前記撮影位置を基準とした前記撮影対象の方向を示す少なくとも2つの対象方向情報とを対応付けて記憶する記憶部と、前記撮像装置の位置を示す装置位置情報と、前記撮像装置の撮影方向を示す撮影方向情報とを取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記装置位置情報に基づいて、前記記憶部で記憶されている複数の前記撮影対象の前記撮影位置情報の中から少なくとも1つの前記撮影対象の前記撮影位置情報を選択し、選択した前記撮影位置情報に対応付けられて前記記憶部に記憶されている少なくとも2つの前記対象方向情報のそれぞれと、前記取得部によって取得された前記撮影方向情報との差分である少なくとも2つの方向差分を演算する演算部と、前記演算部によって演算された前記少なくとも2つの方向差分に対応する情報を表示する表示部と、を有する撮像装置である。
【0008】
また、本発明の撮像装置において、前記演算部はさらに、選択した前記撮影位置情報と前記装置位置情報との差分である位置差分を演算し、前記表示部はさらに、前記演算部によって演算された前記位置差分に対応する情報を表示する。
【0009】
また、本発明の撮像装置において、前記取得部はさらに、前記撮像装置の撮影画角を示す画角情報を取得し、前記演算部は、前記取得部によって取得された前記装置位置情報及び前記画角情報に基づいて、前記記憶部で記憶されている複数の前記撮影対象の前記撮影位置情報の中から少なくとも1つの前記撮影対象の前記撮影位置情報を選択する。
【0010】
また、本発明の撮像装置において、前記取得部は地磁気センサー及び角速度センサーを有し、当該地磁気センサー及び角速度センサーによって前記撮像装置の撮影方向を計測し、前記撮影方向情報を取得する。
【0011】
また、本発明の撮像装置において、前記記憶部はさらに、前記撮影対象毎に第1の画角情報を記憶し、前記取得部はさらに、前記撮像装置の撮影画角を示す第2の画角情報を取得し、前記演算部はさらに、前記第1の画角情報と前記第2の画角情報との差分である画角差分を演算し、前記表示部はさらに、前記演算部によって演算された前記画角差分に対応する情報を表示する。
【0012】
また、本発明の撮像装置において、前記記憶部はさらに、前記撮影対象毎に日時情報を記憶し、前記取得部はさらに、現在の日時を示す日時情報を取得し、前記演算部は、前記取得部によって取得された前記装置位置情報及び前記日時情報に基づいて、前記記憶部で記憶されている複数の前記撮影対象の前記撮影位置情報の中から少なくとも1つの前記撮影対象の前記撮影位置情報を選択する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、少なくとも1つの撮影対象に関して、少なくとも2つの方向差分に対応する情報が表示される。これによって、撮影者は、表示された少なくとも2つの方向差分のうちのいずれかを選択して構図を決定することが可能となるため、操作の煩わしさを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態における撮影環境を示す参考図である。
【図2】本発明の一実施形態によるカメラの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態によるカメラの動作の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態によるカメラの動作の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態によるカメラの動作の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態によるカメラの動作の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態によるカメラの動作の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態によるカメラの動作の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態における方位方向の画角を示す参考図である。
【図10】本発明の一実施形態における方位方向の画角を示す参考図である。
【図11】本発明の一実施形態における仰角方向の画角を示す参考図である。
【図12】本発明の一実施形態における仰角方向の画角を示す参考図である。
【図13】本発明の一実施形態における撮像センサーの画角を示す参考図である。
【図14】本発明の一実施形態における撮影対象領域を示す参考図である。
【図15】本発明の一実施形態における撮影対象領域を示す参考図である。
【図16】本発明の一実施形態における被写体情報を示す参考図である。
【図17】本発明の一実施形態における案内方法を示す参考図である。
【図18】本発明の一実施形態における案内方法を示す参考図である。
【図19】本発明の一実施形態における案内方法を示す参考図である。
【図20】本発明の一実施形態における案内方法を示す参考図である。
【図21】本発明の一実施形態における案内方法を示す参考図である。
【図22】本発明の一実施形態における案内方法を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
(利用環境)
図1は、本実施形態に係る例として、カメラ101を利用する環境を示している。被写体102があり、撮影者は撮影位置1にてカメラ101を被写体102へ向けて撮影を行おうとしている。しかしながら、観光地や景勝地などでは被写体102に対して撮影位置1から撮影するよりも撮影位置2から撮影を行ったほうがより良い撮影結果が得られる、ということが知られていることが良くある。図1は、カメラ101が撮影者に対して撮影位置1から撮影位置2へ移動することを案内し、その案内に従って撮影者が撮影位置1から撮影位置2へ移動し、カメラ101を被写体102へ向けて撮影を行うことを示している。
【0017】
(カメラの構成)
図2はカメラ101の構成を示している。カメラ101は、撮像部201、表示部202、制御部203、メモリ204、内蔵クロック205、GPSセンサー206、加速度センサー207、地磁気センサー208、角速度センサー209、演算部210、被写体情報記憶部211、操作部212を有する。撮像部201は撮像レンズ及び撮像センサーを具備し、被写体の撮影を行い、画像データを生成する。表示部202は、撮像部201が取得した画像データに基づく画像を表示するほか、撮影位置、撮影方向を撮影者に通知するための情報を表示する。
【0018】
制御部203は、カメラ101のシステム全体の制御を行う。メモリ204は、撮像部201が取得した画像データ等を記録する。内蔵クロック205は、システム全体が動作する際に利用する基準となる動作周期を提供すると共に、日付や時刻情報を提供する。GPSセンサー206は、GPS衛星から電波に乗って送られてくる情報を受信すると共に、カメラ101の現在位置を取得する。
【0019】
加速度センサー207は、カメラ101の前後・左右・上下方向の加速度を計測する。地磁気センサー208は地球の地磁気方向を基準に東西・南北方向を計測する。角速度センサー209はカメラ101の3次元空間における姿勢を計測する。演算部210は、GPSセンサー206、加速度センサー207、地磁気センサー208、角速度センサー209、被写体情報記憶部211、撮像部201、制御部203から得られる各種情報を元に各種演算を行う。
【0020】
被写体情報記憶部211は被写体の位置、被写体の撮影位置、被写体の撮影方向などの情報を含む被写体情報を記録しているデータベースである。被写体情報として記録されている情報は、例えばプロが撮影した時の撮影情報を収集したもの、あるいは観光地・景勝地を訪れた観光客がインターネット上のサービストなどに投稿した写真の撮影情報を収集しあらかじめ収録したものである。操作部212は、ユーザ(撮影者)が操作するレリーズボタンやスイッチ等を有する。
【0021】
(被写体情報)
図16を参照しながら、被写体情報の詳細を説明する。被写体情報記憶部211において、図16の情報1601が示すように、被写体の位置情報は、緯度・経度・高度を所在地情報として被写体名称及び撮影情報と関連付けて記録されている。被写体毎に撮影情報が関連付けられており、図16では2つの被写体に対応する撮影情報である情報1611と情報1612等が含まれる。撮影情報は、あらかじめ行われた撮影の撮影日時及び撮影位置を示す。
【0022】
撮影情報としての情報1611は情報1601の各被写体情報と関連付けられた情報である。情報1611が示すように、ある被写体に対して、複数の撮影日時、各撮影日時に対する撮影位置(撮影位置情報)、各撮影日時に対する撮影設定が記録されている。撮影設定は、あらかじめ行われた撮影の撮影方向及び画角を示す。撮影日時毎に撮影設定が関連付けられており、図16では情報1621と情報1622等が含まれる。撮影設定としての情報1622には、関連付けられた撮影位置で撮影を行った時のカメラ光軸の方位及び仰角(対象方向情報)、撮影時の画角が複数記録されている。
【0023】
(カメラの定期的な動作)
図3を参照しながらカメラ101の基本動作について説明する。本実施形態におけるカメラ101は撮影者に好適な撮影位置を案内するものである。カメラ101は、案内を行うためにまず以下に説明する処理を行っている。
【0024】
まず、加速度センサー207はカメラ101の加速度を計測する(ステップS301)。この計測は、カメラ101が起動している間、常に行っている。
【0025】
加速度センサー207から出力される加速度情報に基づいて演算部210は撮影者の歩幅を演算する(ステップS302)。歩幅の演算方法としては、まず、加速度センサー207の垂直方向の加速度の変化を計測し、この加速度の変化は撮影者が歩く時の上下動によるものであると推定し、その加速度変化から1歩の周期を演算する。更に進行方向の加速度を計測し、先に求めた1歩の周期で積分することで移動速度及び歩幅を得ることができる。
【0026】
この処理を常に行い、演算結果の平均をとることで、より精度の高い歩幅を得ることができる。また、あらかじめ撮影者の移動速度の閾値(例えば時速2km/h以下など)を定義しておき、進行方向の加速度から速度を求め、その速度が閾値以下であれば歩幅演算に利用しないようにしてもよい。
【0027】
続いて、GPSセンサー206は測位を行い、カメラ101の現在位置情報(装置位置情報)を得る(ステップS303)。続いて、制御部203は、現在カメラ101が撮影者を好適な撮影位置へ案内している最中かどうか判定する(ステップS304)。
【0028】
カメラ101が撮影者を好適な撮影位置へ案内している場合、処理は図5のステップS501へ進む。以下、カメラ101が撮影者を好適な撮影位置へ案内している最中でない場合について説明する。撮影者は被写体を撮影するために自分が撮影したい被写体へカメラ101を向け、フレーミングを行う(ステップS305)。制御部203は、操作部212から出力される信号に基づいて、撮影者がフレーミングを行った後、レリーズボタンを押下し、撮影行為を行ったかどうか判定する(ステップS306)。撮影行為が行われなかった場合は、処理がステップS301の処理へ戻る。
【0029】
尚、ここでいう撮影行為は、例えば一般的にカメラ101が有するレリーズボタンを、オートフォーカスを行うために軽く押すファーストレリーズに相当する行為を意味する。レリーズボタンを更に深く押し込むとセカンドレリーズとなり、シャッターを切ることになる。上述した処理は定期的に、あるいは常にカメラ101内で実行される。
【0030】
ステップS306で撮影者がカメラ101のレリーズボタンを押下し、撮影行為を行った場合、カメラ101は、次に説明する対象被写体の決定及び好適な撮影位置の選択処理を行う。
【0031】
(被写体の決定及び撮影位置の選択)
図4を参照しながら、撮影者が撮影行為を行った場合について説明する。まず、演算部210は、地磁気センサー208及び角速度センサー209による計測の結果に基づいて、カメラ101が向いている方向(撮影方向情報)を求める(ステップS401)。
【0032】
より具体的には、演算部210は、地磁気センサー208の出力から地磁気の方向を求め、求めた地磁気の方向とカメラ101の光軸方向との差から、カメラ101が向いている方位を求める。また、演算部210は、角速度センサー209の出力から、重力方向を基準にしたカメラ101の傾きを求めることにより、カメラ101の光軸方向の仰角を求める。
【0033】
続いて、制御部203はカメラ101の現在のレンズ焦点距離(ズーム量)を得る(ステップS402)。尚、カメラ101がパワーズーム(撮影者がカメラのボタンを操作し、電気的にレンズの焦点距離を動かす)により焦点距離を変化させるタイプであれば制御部203は自身の制御情報から焦点距離を得る。また、レンズのヘリコイド部を撮影者が回転させながらズーム量を変化させるタイプであれば制御部203は撮像部201からその焦点距離を得る。
【0034】
演算部210は、制御部203が得た焦点距離から、撮像部201が有する撮像センサーの大きさを考慮して、画角を求める(ステップS403)。ここで、画角の求め方について説明する。画角には垂直画角、水平画角、対角画角と呼ばれるものがある。本実施形態では、撮像部201の撮像センサーの撮像面に映し出される空間に含まれる被写体を抽出するため、焦点距離から垂直画角と水平画角を求める。
【0035】
図13に示すような撮像センサーがある場合、画角θx(x=h、w、d)は式(1)のようにして求まる。
画角θ = (180/π)×2tan-1(X/2f) [deg] ・・・ 式(1)
X=h、w、d
f=焦点距離
θh=垂直画角
θw=水平画角
θd=対角画角
【0036】
以上のようにして、所望の画角を求めることができる。引き続き、図4に示す処理について説明する。画角の算出後、制御部203は、カメラ101の現在位置と現在のカメラ101の光軸方向(方位・仰角)及び画角に基づいて、撮影対象領域(撮影対象となる3次元空間)に存在する被写体を被写体情報記憶部211から抽出し、現在位置に近い被写体を撮影対象被写体として決定する(ステップS404)。
【0037】
図9、図10、図11、図12を参照しながら、カメラ101の向いている光軸方向(方位・仰角)と画角から求める撮影対象領域について説明する。図9、図10は方位方向の画角を示している。図9ではカメラ101の画角が画角903のように設定されている。この場合、カメラ101は被写体901、被写体902を含む領域を撮影対象としている。この、カメラ101の画角に応じて決まる領域を撮影対象領域と呼ぶ。
【0038】
ここで、図10に示すようにカメラ101の画角を画角1003のように設定した場合を考える。図9では被写体902は撮影対象領域に含まれていたが、図10では含まれていない。
【0039】
図11、図12は仰角方向の画角を示している。図11ではカメラ101の画角は画角1101のようになっており、撮影対象領域は被写体902のみを含み、被写体901は含まない。図12のようにカメラ101の光軸方向を仰角1202のように傾けた場合、カメラ101の画角は画角1201のようになり、被写体901が撮影対象領域に含まれるようになる。制御部203はこのようにして撮影対象領域を求め、その領域に含まれる被写体を抽出する。
【0040】
(撮影対象被写体決定処理)
図4のステップS404に示す処理のより具体的な処理方法について、図6を参照しながら説明する。まず、制御部203は被写体情報記憶部211から被写体の位置情報を読み出し、演算部210へ出力する。演算部210は、制御部203から受け取った位置情報を、例えばhttp://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/algorithm/に公開されている平面直角座標⇔緯度・経度の変換方法を利用して平面直角座標へ変換する。
【0041】
この際、図16の情報1601の所在地が示す緯度・経度情報を平面直角座標に変換し、利用する。演算部210はさらに、上記の変換により求めた座標を、カメラ101の現在位置を原点とする座標に変換する。続いて、演算部210は、カメラ101の現在位置を原点とする被写体の座標を、方位(Z軸まわり)・仰角(X軸まわり)にそれぞれ回転させ、カメラ101の光軸方向を基準とした、カメラ101に固定された座標系における座標(X’、Y’、Z’)を演算する(ステップS601)。
【0042】
この演算方法には一般的に知られている回転移動の一次変換式を利用する。以下、各軸まわりの回転に対する演算式(2)、(3)を示す。
【0043】
【数1】

【0044】
制御部203は演算部210から演算結果を受け取り、演算結果がカメラ101の撮影対象領域の範囲内に存在するかどうか判定する(ステップS602)。この判定方法について、図14、図15を参照しながら説明する。
【0045】
図14は、カメラ101の撮影対象領域をXY平面で表したものである。この時使用する画角は水平画角θwである。カメラ101が原点にあり、カメラ101の光軸方向がY軸を向いている。被写体の変換後の座標が(X’、Y’、Z’)である場合、制御部203は、式(4)を満たすかどうか判定する。
【0046】
図15は、カメラ101の撮影対象領域をYZ平面で表したものである。この時使用する画角は垂直画角θhである。カメラ101が原点にあり、カメラ101の光軸方向がY軸を向いている。被写体の変換後の座標が(X’、Y’、Z’)である場合、制御部203は、式(5)を満たすかどうか判定する。
【0047】
【数2】

【0048】
以上の演算により、式(4)及び式(5)を満たす時、被写体は撮影対象領域に存在すると判定することができる。制御部203は、撮影対象領域に含まれる被写体の判定結果を用いて、この撮影対象領域に含まれる被写体が複数抽出された場合は、カメラ101の現在位置に最も近い被写体を撮影対象被写体として決定する。
【0049】
引き続き、図4に示す処理について説明する。制御部203は、現在の日時・時刻情報をカメラ101の内蔵クロック205から取得する(ステップS405)。続いて、制御部203は、内蔵クロック205から取得した現在日時・時刻情報及び現在位置に基づいて被写体情報から撮影位置情報を抽出するために被写体情報の検索条件を決定し、検索結果から好適な撮影位置を決定する(ステップS406)。
【0050】
(撮影位置決定処理)
ステップS406の処理の詳細について図7を参照しながら説明する。まず、制御部203は、被写体情報記憶部211に記憶されている被写体情報のうち、図16の情報1611に示すような撮影対象被写体の撮影情報から、撮影月・撮影時が現在日時に合致するものを抽出する(ステップS701)。
【0051】
具体的な抽出の方法として、制御部203は、まず現在の年月日の月と同じ月の情報を情報1611から抽出する。続いて、制御部203は、抽出した情報の中から、現在の時刻が示す時分の時と同じ時の情報を抽出する。これによって、撮影した月が現在の月と合致し、かつ撮影した時が現在の時刻の時と一致する情報が抽出される。
【0052】
尚、この検索条件として、例えば12〜2月を冬、3〜5月を春、6〜8月を夏、9〜11月を秋というようにカテゴリを設定し、現在の日付と撮影日時の日付とを照らし合わせて情報を抽出してもよい。例えば、現在の日付が3月20日であった場合、現在の日付のカテゴリは春なので、撮影日時の日付が3〜5月に含まれる情報が抽出される。
【0053】
また、時刻に関しても、5〜8時を朝、9〜12時を午前、13〜16時を午後、17〜20時を夕方、21〜24時を夜、1〜4時を深夜、というようにカテゴリを設定し、現在の時刻と撮影日時の時刻とを照らし合わせて情報を抽出してもよい。例えば、現在の時刻が15時であった場合、現在の時刻のカテゴリは午後なので、撮影日時の時刻が13〜16時に含まれる情報が抽出される。
【0054】
制御部203は、上記のようにして抽出された撮影情報に関連付けられている撮影位置を比較し、現在位置から最も近い撮影位置を撮影対象の撮影位置として決定する(ステップS702)。以上の処理により、被写体情報から好適な撮影位置情報を抽出し、撮影対象を決定することができる。
【0055】
(好適な撮影位置への誘導及び到着後の撮影指示)
図5を参照しながら、好適な撮影位置を決定した後にその撮影位置まで撮影者を誘導する方法について説明する。演算部210は、ステップS406で決定した好適な撮影位置(撮影位置情報)とカメラ101の現在位置の情報(装置位置情報)とを制御部203から受け取り、これらの位置の2点間の距離(位置差分)を演算する(ステップS501)。制御部203は、演算部210が演算した2点間の距離を閾値と比較し、2点間の距離が誤差の範囲内であるかどうか判定する(ステップS502)。
【0056】
閾値は撮影位置の許容誤差であり、GPSセンサー206の測位精度に応じて、例えば2点間の距離が3m以内であれば誤差の範囲内であると判定できるように、あらかじめカメラ101に値が設定されている。求めた2点間の距離が閾値の範囲内ではない場合、好適な撮影位置までの誘導が必要であるため、演算部210は、図6を参照して説明した方法を利用して、好適な撮影位置に基づいて、カメラ101の現在位置を原点にし、カメラ101の光軸を基準にしたXY座標上におけるX軸方向及びY軸方向の座標を演算する。求めた座標は原点(カメラ101の現在位置)からのX及びY成分の距離であるため、演算部210は、その距離を、図3のステップS202で求めた撮影者の歩幅で割り算し、X、Y成分の歩数を求める(ステップS503)。
【0057】
制御部203は、求めた歩数を演算部210から受け取り、その歩数を表示部202に表示する(ステップS504)。表示部202への歩数の表示方法について図17を参照しながら説明する。表示部202に案内表示領域として案内表示部1701が設定され、図17に示すように、例えば「右へ10歩、前に20歩」というメッセージが表示される。カメラ101は、このような表示によって撮影者を誘導する。
【0058】
引き続き、図5に示す処理の説明に戻る。図5のステップS502の判定で2点間の距離が閾値の範囲内である場合、カメラ101は好適な撮影位置にいるので、制御部203は、好適な撮影位置にいることを撮影者に伝える情報を表示部202に表示する(ステップS505)。続いて、撮影者に好適な撮影方向を伝え、その撮影方向にカメラ101の光軸を向けさせるための処理が行われる(ステップS506)。
【0059】
ここで、図18を参照しながら、撮影者が好適な撮影位置に到着した後、撮影者にどの方向を向いて撮影を行えばよいか伝えるための方法を説明する。制御部203は、好適な撮影位置に到着したことを伝える情報を表示部202に表示すると共に、方向表示1801を表示部202に表示する。方向表示1801は、カメラ101の光軸を中心1803とし、撮影対象が存在する方向を示す目標1802を表示する。
【0060】
図19は方向表示1801の詳細を示している。方向表示1801は、中心1803をカメラ101の光軸とし、左右方向が方位を示しており、上下方向がカメラ101の傾き(仰角)を示している。図19では同一の撮影対象に関する目標1802と目標1901が表示されている。目標1802あるいは目標1901が中心1803へくるように撮影者がカメラ101の光軸方向の向きをかえることにより、カメラ101の光軸方向を撮影対象の被写体方向へ向けることが可能になる。
【0061】
図16の情報1622が示すように、同一の撮影位置に対して複数の撮影方向が記録されている場合がある。その場合、図19に示すように複数の目標が方向表示1801内に表示される。つまり、同一の撮影対象に対して複数の撮影方向が教示され、それら複数の撮影方向の中から撮影者はいずれかを選択して撮影を行う。これは、撮影者が方向表示1801内に複数表示されている目標を目安にして、到着した撮影位置における季節による変化等に応じて、ファインダーを覗きながら、撮影者が好むフレーミングを行い、撮影ができることを意味している。
【0062】
(撮影方向指示処理)
ステップS506において、カメラ101の光軸方向を撮影対象の被写体へ向けさせる具体的な処理について図8を参照しながら説明する。まず、撮影者は、被写体を撮影するためにカメラ101を構える(ステップS801)。この時、カメラ101の光軸方向は被写体の方向である必要は無い。また、撮影者は、カメラ101を構えた時、カメラ101の光軸方向を変更したり、画角(焦点距離)を変更する操作を行ったりする。
【0063】
続いて、演算部210は、地磁気センサー208及び角速度センサー209による計測の結果に基づいて、カメラ101が現在向いている方向を求める(ステップS802)。カメラ101が現在向いている方向を求める方法は、ステップS401で用いている方法と同様である。演算部210は、求めたカメラ101の光軸方向(方位・仰角)と、図4のステップS406及び図7の処理で決定した撮影対象の被写体の撮影情報に含まれる方位及び仰角とを比較し、両者の差分(方向差分)を演算する(ステップS803)。
【0064】
ステップS803では、被写体情報記憶部211に記憶されている被写体情報のうち、図4のステップS406及び図7の処理で決定した方位及び仰角と、現在のカメラ101の方位及び仰角とを比較する。同一の撮影位置に対して、撮影方向及び画角を示す撮影設定が複数個ある場合には、それぞれの撮影設定に対して上記の比較が行われる。
【0065】
制御部203は、演算部210が演算した方位及び仰角の差分に基づいて、少なくとも1つの撮影設定に対して、角度α°の範囲で方位及び仰角が一致するかどうか判定する(ステップS804)。全ての撮影設定に対して、角度α°の範囲で方位又は仰角が一致しなかった場合、制御部203は、撮影者にカメラ101の向きを変えるように促すため、方向表示1801(図18、図19)を表示部202に表示する(ステップS808)。この後、撮影者がカメラ101を構えた状態に応じて、目標1802の表示位置を中心1803に近づけたり遠ざけたりしながら誘導が行われることになる。
【0066】
尚、カメラ101が有する地磁気センサー208及び角速度センサー209の測定精度に応じて、角度が一致したとみなす範囲α°(例えば±5°)があらかじめカメラ101に設定されている。以上の処理が終了し、誘導のための表示が更新された後、処理はステップS801の処理に戻る。
【0067】
一方、少なくとも1つの撮影設定に対して、角度α°の範囲で方位及び仰角が一致した場合、演算部210は、被写体情報において、カメラ101の方位及び仰角と一致した方位及び仰角に関連付けられている画角と、現在カメラ101に設定されている画角とを比較し、両者の差分(画角差分)を演算する(ステップS805)。制御部203は、演算部210が演算した画角の差分に基づいて、角度β°の範囲で画角が一致したかどうか判定する(ステップS806)。
【0068】
この画角が一致したとみなす範囲β°は、図13を参照して説明した画角演算方法により得られる演算結果の誤差である。画角の演算結果は撮像面のサイズと関係がある。カメラ101の撮像面のサイズと、被写体情報記憶部211に記録されている情報の元になる撮影を行ったカメラの撮像面のサイズとが異なる場合がある。また、通常、小数点の値は無視するため、演算結果が小数点以下を含む場合、1°程度の誤差が発生する可能性がある。従って、β°を例えば1°に設定し、この範囲内であれば同一画角であると判定する。
【0069】
角度β°の範囲で画角が一致しなかった場合、制御部203は、カメラ101の画角(焦点距離)を変更するように撮影者を誘導する指示を表示部202に表示する(ステップS809)。撮影者に画角の変更を誘導する表示方法について、図20を参照しながら説明する。カメラ101の表示部202の画面上に画角調整表示2001が表示される。例えば現在の画角より広く(広角側へ)画角を変更する必要がある場合、図21に示すように広角側へ画角を変更するという意味の画角調整指示2101のようなマークが表示される。また、現在の画角より狭く(望遠側へ)画角を変更する必要がある場合、図22に示すように望遠側へ画角を変更するという意味の画角調整指示2201のようなマークが表示される。このように、画角の変更を誘導する表示を行った後、処理は再度ステップS801の処理へ戻る。
【0070】
一方、角度β°の範囲で画角が一致した場合、制御部203は、撮影方向及び撮影画角が好適になったことを示す情報を表示部202に表示する(ステップS807)。この表示方法として、例えば図19の中心1803に目標1802が重なるように方向表示1801を表示し、図18の案内表示部1701に、撮影に好適な状態になったことを意味するメッセージを表示する方法がある。尚、これらの表示に関しては例えばカメラ101に音声出力手段を設け、音声によるアナウンスをしてもよい。
【0071】
以上の処理により、好適な撮影位置、撮影方向、及び撮影画角となるように撮影者を誘導することができる。本実施形態では、図19に示したように、同一の被写体に対して、異なる複数の撮影方向が教示される。撮影者は、教示された複数の撮影方向の中から好みの構図となるものを選択し、選択した撮影方向にカメラ101の光軸方向が一致するように構図を調整すればよい。また、構図の調整中に撮影者が撮影方向を変更したい場合、図19に示すような複数の目標のうち、構図調整に使用した目標とは異なる目標を選択して構図調整をやり直せばよく、この間、カメラ101の向きを変更する操作以外の操作は必要ない。
【0072】
上述したように、本実施形態によれば、少なくとも1つの撮影対象に関して、少なくとも2つの撮影方向を教示する情報が表示される。これによって、撮影者は、好適な撮影位置に到着した後、風景を眺めながら、表示部202に表示された少なくとも2つの撮影方向のうちのいずれかを選択して構図を決定することが可能となる。このため、操作の煩わしさを低減することができる。さらに、カメラ101の撮影方向が、被写体を撮影するのに好適な撮影方向となるように撮影者を誘導することができる。
【0073】
また、図17を参照して説明したように、撮影対象の被写体の位置とカメラ101の現在位置との差分を案内表示部1701にメッセージとして表示することによって、好適な撮影位置に撮影者を誘導することができる。さらに、案内表示部1701に好適な撮影位置までの歩数を表示することによって、撮影者が移動方向及び移動距離を直感的に認識することができる。
【0074】
また、図14及び図15を参照して説明したように、カメラ101の画角の範囲内にある被写体を撮影対象に決定することによって、被写体となる構造物等が密集している場合であっても、撮影対象となる被写体を絞り込むことができる。
【0075】
また、図21及び図22を参照して説明したように、好適な撮影を行った時の画角とカメラ101の現在の画角との差分を画角調整指示2101,2201として表示部202に表示することによって、カメラ101の画角が、被写体を撮影するのに好適な画角となるように撮影者を誘導することができる。
【0076】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0077】
101・・・カメラ、201・・・撮像部、202・・・表示部、203・・・制御部(演算部)、204・・・メモリ、205・・・内蔵クロック(取得部)、206・・・GPSセンサー(取得部)、207・・・加速度センサー、208・・・地磁気センサー(取得部)、209・・・角速度センサー(取得部)、210・・・演算部、211・・・被写体情報記憶部(記憶部)、212・・・操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
複数の撮影対象について、前記撮影対象毎に、前記撮影対象の撮影位置を示す撮影位置情報と、前記撮影位置を基準とした前記撮影対象の方向を示す少なくとも2つの対象方向情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記撮像装置の位置を示す装置位置情報と、前記撮像装置の撮影方向を示す撮影方向情報とを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記装置位置情報に基づいて、前記記憶部で記憶されている複数の前記撮影対象の前記撮影位置情報の中から少なくとも1つの前記撮影対象の前記撮影位置情報を選択し、選択した前記撮影位置情報に対応付けられて前記記憶部に記憶されている少なくとも2つの前記対象方向情報のそれぞれと、前記取得部によって取得された前記撮影方向情報との差分である少なくとも2つの方向差分を演算する演算部と、
前記演算部によって演算された前記少なくとも2つの方向差分に対応する情報を表示する表示部と、
を有する撮像装置。
【請求項2】
前記演算部はさらに、選択した前記撮影位置情報と前記装置位置情報との差分である位置差分を演算し、
前記表示部はさらに、前記演算部によって演算された前記位置差分に対応する情報を表示する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記取得部はさらに、前記撮像装置の撮影画角を示す画角情報を取得し、
前記演算部は、前記取得部によって取得された前記装置位置情報及び前記画角情報に基づいて、前記記憶部で記憶されている複数の前記撮影対象の前記撮影位置情報の中から少なくとも1つの前記撮影対象の前記撮影位置情報を選択する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記取得部は地磁気センサー及び角速度センサーを有し、当該地磁気センサー及び角速度センサーによって前記撮像装置の撮影方向を計測し、前記撮影方向情報を取得する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記記憶部はさらに、前記撮影対象毎に第1の画角情報を記憶し、
前記取得部はさらに、前記撮像装置の撮影画角を示す第2の画角情報を取得し、
前記演算部はさらに、前記第1の画角情報と前記第2の画角情報との差分である画角差分を演算し、
前記表示部はさらに、前記演算部によって演算された前記画角差分に対応する情報を表示する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記記憶部はさらに、前記撮影対象毎に日時情報を記憶し、
前記取得部はさらに、現在の日時を示す日時情報を取得し、
前記演算部は、前記取得部によって取得された前記装置位置情報及び前記日時情報に基づいて、前記記憶部で記憶されている複数の前記撮影対象の前記撮影位置情報の中から少なくとも1つの前記撮影対象の前記撮影位置情報を選択する請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−222603(P2012−222603A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86284(P2011−86284)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】