説明

撮像装置

【課題】撮像素子を備える撮像装置において、駆動部から発生するゴミ等が観察光の光路へ侵入してしまうことを防止できる撮像装置を提供する。
【解決手段】筐体300と、筐体300の内部を2つの空間A、Bに区画する中板303と、筐体300内の空間Aに配置された撮像素子301、302と、筐体300内の空間Bに配置されたモータ308と、中板303を貫通し、モータ308の駆動力を伝達する揺動軸304と、中板303の揺動軸304の貫通部に設けられ、揺動軸304との隙間をシールするベアリング305a、305bと、空間Aにおいて揺動軸304に接続され、揺動軸304により伝達された駆動力によって移動して、撮像素子301、302の少なくとも一つに標本からの光を導くように切り替えられるプリズム306とを備えるカメラ208を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば顕微鏡等の光学装置に用いられる撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡観察においては、細胞の形態により診断を行う病理診断や、微弱な蛍光により標本の変化を測定するイメージング等を行うにあたり、高画質な画像が要求される。画像を得るための手段としては、撮像媒体として在来からの銀塩フィルムを用いた撮像装置に代えて、CCD等の撮像素子を用いた撮像装置が用いられるようになっている(例えば、特許文献1から3参照)。
【0003】
特許文献1に開示されている撮像装置は、被写体を撮像するための固体撮像素子と、固体撮像素子を冷却する固体撮像素子冷却手段と、電気信号配線用のプリント基板とを備え、電気信号配線用のプリント基板が、固体撮像素子及び固体撮像素子冷却手段を密閉する密閉手段の一部を構成している。
【0004】
特許文献2に開示されている撮像装置は、撮像装置内部が区画壁により、撮像素子が配設された第一の空間と開口を有する第二の空間とに区画されており、第一の空間と第二の空間とが、カメラ本体よりも熱伝導率の高い伝熱部材を介して熱的に接続されている。
【0005】
特許文献3に開示されている撮像装置は、撮像装置内部に撮像素子を複数設けると共に、対物レンズから各撮像素子までの光路を分割して各撮像素子に導く光路分割手段を備えている。また、この撮像装置は、光路分割手段から各撮像素子までの各光路中に互いに焦点距離の異なるレンズを設けて、各撮像素子の受光面上に結ばれる像の倍率を異ならせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3944446号公報
【特許文献2】特開2007−208614号公報
【特許文献3】特開平9−186917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、病理診断などで用いる撮像素子は、色再現が重要視される。また、蛍光や発光といった微弱光を観察したい場合には、感度が重要視される。このように、観察法によって求められる撮像素子の特性は異なる。そこで、撮像装置内部にこれら特性の異なる撮像素子を配置すれば、様々な用途に1つの撮像装置で対応する事が可能となる。
【0008】
このような用途で内部に2つの撮像素子を配置した撮像装置は、微弱光を検出するため、撮像する撮像素子にのみ観察光を入射させたい。このため、各撮像素子までの光路を分割する光路分割部を移動させる駆動機構が必要となる。ここで、駆動機構には歯車やガイド機構といった機械要素が用いられるが、これらは使っていくうちに表面が磨耗し、金属粉等のゴミが発生する。
【0009】
しかしながら、撮像装置内部には、外部温度変化や撮像素子の冷却によって撮像素子上や撮像素子のカバーガラスに付着する結露を防止するための密閉部や、前述の光路分割部、顕微鏡に接続するための接続部などが設けられている。これらは観察光の経路となるため、前述のゴミが付着すると、被写体の画像に映り込んでしまうという不都合がある。
【0010】
特許文献1に開示されている撮像装置は、撮像装置内部に1つの撮像素子が配置されているだけであり、撮像素子へのゴミの付着を防止する構造とはなっていない。また、特許文献2に開示されている撮像装置は、内部に2つの空間が形成されているが、これは防塵と放熱のための用途であり、撮像装置内部に仮に駆動部を設けた場合に、駆動部からのゴミを撮像させない構成となっていない。また、特許文献3に開示されている撮像装置は、内部の光路分割手段を動かす例が実施例で述べられているが、具体的な方法は開示されていない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、撮像素子を備える撮像装置において、駆動部から発生するゴミ等が観察光の光路へ侵入してしまうことを防止できる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、筐体と、該筐体の内部を2つの空間に区画する隔壁と、前記筐体内の一方の空間に配置された撮像素子と、前記筐体内の他方の空間に配置された駆動部と、前記隔壁を貫通し、前記駆動部の駆動力を伝達する伝達部と、前記隔壁の前記伝達部の貫通部に設けられ、前記伝達部との隙間をシールするシール部と、前記一方の空間において前記伝達部に接続され、前記伝達部により伝達された駆動力によって移動して、前記撮像素子及び前記撮像素子とは別の部材の少なくとも一つに被写体からの光を導くように切り替えられる導光部とを備える撮像装置を採用する。
【0013】
本発明に係る撮像装置は、隔壁により筐体の内部が2つの空間に区画され、これら2つの空間のうち、一方の空間に撮像素子が配置されるとともに、他方の空間に駆動部が配置されている。また、駆動部を動作させることで、駆動部の駆動力が、隔壁を貫通する伝達部により前記一方の空間に配置された導光部に伝達される。これにより、導光部は、伝達部により伝達された駆動力によって移動して、撮像素子及び前記撮像素子とは別の部材の少なくとも一つに被写体からの光を導くように切り替えられる。
【0014】
この場合において、隔壁の伝達部の貫通部には、貫通部の壁面と伝達部との隙間をシールするシール部が設けられている。これにより、他方の空間に配置された駆動部から発生した金属粉等のゴミが、撮像素子が配置された一方の空間に侵入してしまうことを防止することができ、ゴミなどが映り込まない高品位の観察像を得ることができる。さらに、駆動部と撮像素子とを分離して配置することで、故障頻度が比較的高い駆動部へのアクセスを容易なものとすることができ、メンテナンス性を向上することができる。
【0015】
上記発明において、前記部材が、撮像素子であることとしてもよい。
このようにすることで、導光部は、伝達部により伝達された駆動力によって移動して、複数の撮像素子の少なくとも一つに被写体からの光を導くように切り替えられる。
【0016】
上記発明において、複数の前記撮像素子が、互いに特性の異なることとしてもよい。
このようにすることで、用途に応じて撮像素子を使い分けて被写体の画像を取得することができる。例えば、一方の撮像素子を高感度なものとして、他方の撮像素子を演色性の高いものとすることで、一方の撮像素子により微弱な蛍光等を検出して被写体の画像を取得するとともに、他方の撮像素子により病理診断に好適な色再現性の高い被写体の画像を取得することができる。
【0017】
上記発明において、複数の前記撮像素子のいずれかが、前記被写体からの光の光路上に配置され、前記導光部が、前記伝達部により伝達された駆動力によって、前記被写体からの光の光路上に挿脱されることとしてもよい。
このような構成とすることで、駆動部を動作させることにより、駆動力を伝達部により伝達し、導光部を移動させて、複数の撮像素子のいずれかに被写体からの光を導くように切り替えることができる。具体的には、導光部を被写体からの光の光路上から外した場合には、被写体からの光の光路上に配置された撮像素子に光を導くことができる。また、導光部を被写体からの光の光路上に挿入した場合には、他の撮像素子に光を導くことができる。
【0018】
上記発明において、前記駆動部が、モータと、該モータの回転軸に固定されたピニオン部とから構成され、前記伝達部が、前記ピニオン部に嵌合するラック部と、該ラック部と前記導光部とを接続する接続部材とから構成されていることとしてもよい。
このような構成とすることで、モータを回転させることで、モータの回転軸に固定されたピニオン部を回転させ、該ピニオン部に嵌合するラック部を動作させることができる。これにより、該ラック部に接続部材を介して接続された導光部を動作させることができる。
【0019】
上記発明において、前記撮像素子の周りを覆うように配置され、少なくとも一部が光を透過可能な部材で構成された密閉容器を備えることとしてもよい。
撮像素子を密閉容器に収容することで、駆動部からの金属粉等のゴミが撮像素子に付着することを確実に防止することができ、より高品位の観察像を得ることができる。
【0020】
上記発明において、前記導光部がプリズムであることとしてもよい。
このようにすることで、被写体からの光をプリズムにより反射して、所望の撮像素子に導くことができる。
【0021】
上記発明において、前記導光部がミラーであることとしてもよい。
このようにすることで、被写体からの光をミラーにより反射して、所望の撮像素子に導くことができる。また、ミラーは比較的軽量であるため、伝達部にかかる荷重を低減することができ、より正確な位置決めが可能となる。
【0022】
上記発明において、複数の前記撮像素子が、前記隔壁の表面に沿う方向に並んで配置され、前記伝達部が、前記貫通部を回動中心として前記導光部を回動させることとしてもよい。
上記発明において、複数の前記撮像素子が、前記隔壁の表面に沿う方向に並んで配置され、前記伝達部が、前記隔壁の表面に沿う方向に前記導光部を移動させることとしてもよい。
上記発明において、複数の前記撮像素子が、前記隔壁の表面に直交する方向に並んで配置され、前記伝達部が、前記隔壁の表面に直交する方向に前記導光部を移動させることとしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、撮像素子を備える撮像装置において、駆動部から発生するゴミ等が観察光の光路へ侵入してしまうことを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の各実施形態に係るカメラを備える顕微鏡の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るカメラの概略構成を示す縦断面図である。
【図3】図2の空間Aを紙面下方向から見た平面図である。
【図4】図2の空間Bを紙面上方向から見た平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るカメラの概略構成を示す縦断面図である。
【図6】図5の空間Aを紙面下方向から見た平面図である。
【図7】図5の中板の貫通部を紙面上方向から見た平面図である。
【図8】図5の中板の貫通部の縦断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るカメラの概略構成を示す縦断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るカメラの概略構成を示す縦断面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係るカメラの概略構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置について図1から図4を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における撮像装置208が搭載された顕微鏡100を示す概略構成図である。
本実施形態に係る顕微鏡100は、顕微鏡本体201と、ステージ202と、対物レンズ203と、接眼レンズ204と、鏡筒205と、結像レンズ207と、カメラ(撮像装置)208とを備えている。
【0026】
顕微鏡本体201には、ステージ202に対向して配置され、標本像を拡大するための対物レンズ203が設けられている。また、顕微鏡本体201には、標本(被写体)206を載置するとともに、対物レンズ203の光軸900方向に昇降自在に可動するステージ202が設けられている。このような構成を有することで、ステージ202を昇降させることにより、対物レンズ203に対して、対物レンズ203の光軸900方向に標本206の位置決めがされるようになっている。
【0027】
また、顕微鏡本体201には、標本206の像をカメラ208内の撮像素子301上に結像する結像レンズ207と、目視観察のための接眼レンズ204とを装着した鏡筒205が設けられている。そして、結像レンズ207の後段には、カメラ208が設けられている。
【0028】
図2は、本実施形態におけるカメラ208の内部構成を示した縦断面図である。
カメラ208は、図2に示すように、有底の円筒状すなわちカップ状の上フタ310および下フタ311から構成される筐体300と、筐体300の内部を2つの空間A、Bに区画する円板状の中板(隔壁)303と、筐体300内の空間(一方の空間)Aに配置された撮像素子301、302と、筐体300内の空間(他方の空間)Bに配置されたモータ(駆動部)308と、中板303を貫通し、モータ308の駆動力を伝達する揺動軸(伝達部)304と、中板303の揺動軸304の貫通部に設けられ、揺動軸304との隙間をシールするベアリング(シール部)305a、305bと、空間Aにおいて揺動軸304に接続されたプリズム(導光部)306とを備えている。
【0029】
符号301は色再現性に優れたカラー撮像素子、符号302は高感度の白黒撮像素子を示している。各々の撮像素子には、熱交換素子301a、302aが接続されている。熱交換素子301a、302aは、カメラ208の外壁を構成する中板303に隙間なく固定されている。
【0030】
中板303には、図2の紙面上下方向に開口部が設けられており、揺動軸304を回動させるためのベアリング305a、305bが挿入されている。ベアリング305a、305bは中板303の上下それぞれから組立てる。揺動軸304は、紙面下方向からベアリング305bに挿入して突起部304aを当てつけた後、紙面上方向から揺動軸304に設けられたねじ部にリング321をねじ込むことで、中板303に回転可能に固定されている。ここで、中板303と揺動軸304との隙間は、ベアリング305a、305bによってシールされている。
【0031】
揺動軸304の一端(紙面下方)には、プリズム306の保持部306aが図示されないビスで固定されている。プリズム306と保持部(接続部材)306aとは接着固定されている。
揺動軸304の他端(紙面上方)には、図2および図4に示すように、円弧上の歯車(ラック部)307が図示されないビスで固定されている。歯車307は、モータ308に固定した歯車(ピニオン部)308aと噛み合っており、モータ308の回転力を揺動軸304に伝達する事ができる。モータ308は、基板309にケーブル390により接続されている。モータ308は、例えば、回転量を任意にパルス制御できるステッピングモータ等を用いる。
【0032】
中板303と、上フタ310、下フタ311とは、それぞれ図示されないビスで固定されている。下フタ311には、顕微鏡装置接続用の開口311aが設けられている。開口311aの一部は段付形状となっており、防塵ガラス330が接着固定されている。
【0033】
撮像素子301、302は、空間A内に配置された密閉容器312内に収容されている。密閉容器312の下側には2箇所開口が設けられ、これら開口には防塵ガラス312a、312bが隙間なく接着固定されている。密閉容器312と中板303との間には、図示されない弾性部材が配置されていて、密閉容器312内は容易に湿度が進入しない空間が構成されている。密閉容器312内には、例えばシリカゲルといった図示しない除湿手段が設けられている。
【0034】
図4は、図2の空間Bを、紙面上方向から見た平面図である。中板303と上フタ310の外形は、同一もしくは中板303の方が大きい構造となっている。基板309には、PC接続用コネクタ309aが実装されている。上フタ310は、図4において紙面上下方向にコネクタ309aの外形に隙間なく合わせた図示しない開口が設けられている。コネクタ309aは、PCといったカメラに接続した図示しない制御手段に接続されている。このような構成を有することで、モータ308等が配置された空間Bは閉鎖した密閉空間とされている。上フタ310と下フタ311の外形は同一であり、プリズム306等が配置された空間Aも閉鎖した密閉空間とされている。
【0035】
図3は、図2の空間Aを紙面下方向から見た平面図であり、撮像素子301、302とプリズム306、揺動軸304との位置関係を示した図である。図中の矢印は、モータ308の回動で動く揺動軸304の移動方向を示す。図中の2点鎖線は撮像素子302で観察する場合のプリズム306の位置を示しており、実線は撮像素子301で観察する時のプリズム306の位置を示す。
【0036】
撮像素子301、302は、中板303の表面に沿う方向に並んで配置されている。
撮像素子301は、対物レンズ203の光軸900上に配置されている。
プリズム306は、標本206からの光(観察光)を光軸900に直交する方向に反射する反射面306bと、反射面306bにより反射された光を光軸900に沿う方向に反射する反射面306cとを備えている。
【0037】
また、図3に示すように、プリズム306は、揺動軸304により伝達されたモータ308からの駆動力によって、対物レンズ203の光軸900上に挿脱されるようになっている。具体的には、モータ308を動作させることで、中板303の貫通部(ベアリング305a、305b)を回動中心としてプリズム306を回動させ、プリズム306を対物レンズ203の光軸900上に挿脱させるようになっている。
【0038】
このようにすることで、モータ308を動作させることにより、モータ308の駆動力を揺動軸304により伝達し、プリズム306を中板303の貫通部回りに回動させて、撮像素子301、302のいずれかに観察光を導くように切り替えることができる。具体的には、プリズム306を光軸900上から外した場合には、光軸900上に配置された撮像素子301に観察光を導くことができる。また、プリズム306を光軸900上に挿入した場合には、撮像素子302に観察光を導くことができる。
【0039】
上記構成を有する顕微鏡100の作用について以下に説明する。
標本像を取得する場合には、ステージ202上に標本206を載置して、ステージ202を上下動させ、対物レンズ203の焦点位置に標本206を合わせる。これにより、結像レンズ207、接眼レンズ204により標本206の拡大像が観察可能となる。カメラ208で観察する場合には、鏡筒205に設けられた図示されない光路切換機構を用い、カメラ208側に観察光を入射させる。
【0040】
撮像素子301で観察したい場合には、例えばPCといったカメラ208に接続した図示しない制御手段を操作してコネクタ309a、基板309を介してモータ308を回転させる。すると、モータ308の回転力は、歯車308a、歯車307、揺動軸304を介して保持部306aに伝達され、保持部306aを回転してプリズム306を光軸900上から退避させる。これにより、プリズム306は、図3の実線で示した状態となり、観察光を撮像素子301に入射させる。
【0041】
撮像素子302で観察したい場合には、前述と同様に、制御手段を操作してモータ308を前述の場合と反対方向に回転させる。すると、前述の場合と同様に、モータ308の回転力は保持部306aに伝達され、プリズム306は光軸900上に配置される。ここで、プリズム306の微小な位置調整は、モータ308がステッピングモータだった場合はパルス制御で行う。
【0042】
これにより、プリズム306は、図3の二点鎖線で示した状態となる。この場合において、カメラ208に入射した観察光は、図2において、プリズム306によりいったん右側に反射したのち、再度上側に反射されて撮像素子302に入射する。
撮像素子301、302は、熱交換素子301a、302aの駆動により冷却され、熱交換素子で発生した熱は中板303、上フタ310、下フタ311に伝わり外気により冷却される。
【0043】
中板303の上側(空間B)と下側(空間A)とは、揺動軸304とベアリング305a、305bで完全にシールされているため、歯車307、308aで発生する金属粉等のゴミが中板303の下側の空間に落ちて観察光を遮るということがない。またベアリングは一般的にシール形が用いられており、揺動軸304の回転動作でゴミが発生し、観察光を遮るということもない。
【0044】
以上のように、本実施形態に係るカメラ208は、中板303により筐体300の内部が2つの空間A、Bに区画され、空間Aに撮像素子301、302が配置されるとともに、空間Bにモータ308が配置されている。また、モータ308を動作させることで、モータ308の駆動力が、中板303を貫通する揺動軸304により空間Aに配置されたプリズム306に伝達される。これにより、プリズム306は、揺動軸304により伝達された駆動力によって移動して、撮像素子301、302のいずれかに観察光を導くように切り替えられる。
【0045】
この場合において、中板303の揺動軸304の貫通部には、貫通部の壁面と揺動軸304との隙間をシールするベアリング305a、305bが設けられている。これにより、空間Bに配置されたモータ308からの金属粉等のゴミが、撮像素子301、302が配置された空間Aに侵入してしまうことを防止することができ、ゴミなどが映り込まない高品位の観察像を得ることができる。
【0046】
また、モータ308の駆動力をプリズム306に伝達する伝達機構を、軸や歯車など少ない機械要素で構成しており、無線など実現に高価な電気部品も用いていないため、安価かつ信頼性が高い。さらに、モータ308と撮像素子とを分離して配置することで、故障頻度が比較的高いモータ308へのアクセスを容易なものとすることができ、メンテナンス性を向上することができる。
【0047】
また、撮像素子301、302を、互いに特性の異なるものとすることで、用途に応じて撮像素子を使い分けて標本206の画像を取得することができる。具体的には、本実施形態においては、撮像素子301として色再現性に優れたカラー撮像素子を採用し、撮像素子302として高感度の白黒撮像素子を採用している。このような構成とすることで、撮像素子302により微弱な蛍光等を検出して標本206の画像を取得するとともに、撮像素子301により病理診断に好適な色再現性の高い標本206の画像を取得することができる。
【0048】
また、撮像素子301、302を密閉容器312に収容することで、モータ308等からのゴミが撮像素子301、302に付着することを確実に防止することができ、より高品位の観察像を得ることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、プリズム306を光軸900上に挿入した場合、観察光を片側の撮像素子302に全て導いていたが、これに限らず、例えば、観察光をプリズム306で分離して撮像素子301と撮像素子302の両方に導くようにしても良い。
また、本実施形態では、上フタ310および下フタ311をカップ状とし、中板303を円板状としたが、空間Aと空間Bとが密閉になるような構成であれば、この形状に限らない。
【0050】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るカメラ408について、図5から図8を参照して以下に説明する。以下、本実施形態のカメラ408について、第1の実施形態のカメラ208と共通する点については同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0051】
図5は本実施形態におけるカメラ408を示した縦断面図、図6はプリズム306と撮像素子との位置関係を示した空間Aの平面図である。図7は中板403の開口周りの構成を示した上面図であり、図8は中板403の開口周りを部分的に拡大した縦断面図である。
【0052】
符号410、411は、ガイド棒を示しており、中板403の上側の空間に配置された、例えばリニアガイドといった図示されないガイド機構に接続されている。ガイド棒410、411は図示されないビスで固定されている。
【0053】
ガイド棒410の中板403近傍には突起部410aが設けられており、中板403に設けられた溝部403aに0.5mm程度の隙間を持って配置されている。中板403の下側には、ガイド棒410の細い部分とガイド棒411と若干の隙間を持った、断面形状がクランク状の開口403b、403c、403dが設けられている。
【0054】
図7に示すように、突起部410aは、ガイド棒410の駆動範囲によらず中板403に設けられた開口403cを覆うように構成されている。突起部410aは、図7からも明らかな通り、ガイド棒410の短手方向全周を覆う形状となっている。ガイド棒410には突起部410eもあり、中板403の上面403pと隙間を持って配置されている。
【0055】
ガイド棒410は、モータ308の回転軸に固定された歯車308aに嵌合するラック409が図示されないビスで固定されており、モータ308の回転力が伝達されるようになっている。具体的には、モータ308を回転駆動させることで、ラック409(およびラック409に固定されたガイド棒410)が、図5における紙面鉛直方向に移動されるようになっている。
ガイド棒411は、保持部306aに図示されないビスで固定されている。
【0056】
上記構成を有するカメラ408の作用について以下に説明する。なお、前述の実施形態に係るカメラ208と同じ作用については説明を省略する。
撮像素子301で観察したい場合には、制御手段を操作して、モータ308の回転力をラック409に伝達し、図5における紙面鉛直方向に保持部306aを移動させる。そして、光軸900上からプリズム306を退避させた状態で標本206の観察を行う。
【0057】
撮像素子302で観察したい場合には、前述の場合と同様に、制御手段を操作してプリズム306を光軸900上に配置する。
歯車308aとラック409との摩擦により発生した金属粉等のゴミは、突起部410a、溝403a、ガイド棒411、開口403bで構成したラビリンス構造により、中板403より紙面下側(空間A)に落ちることが防止される。また、揺動機構と異なり、反射面と平行にプリズム306を動かすため、プリズム306がラフな位置決めであっても観察光の中心ずれが発生しない。
【0058】
以上のように、本実施形態に係るカメラ408によれば、前述の実施形態に係るカメラ208と同様の効果に加えて、プリズム306の位置決めはラフで良いため、より安価に装置を構成する事が可能となる。
【0059】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係るカメラ508について、図9を参照して以下に説明する。以下、本実施形態のカメラ508について、第1の実施形態のカメラ208と共通する点については同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0060】
図9は、本実施形態におけるカメラ508を示した縦断面図である。
本実施形態では、プリズム306の代わりに、ミラー(導光部)501、502が設けられている。ミラー501は保持部501aに接着固定され、保持部501aは揺動軸304の一端に図示されないビスで固定されている。ミラー502は、下フタ511の図示されない保持部に接着固定されている。
【0061】
本実施形態では、プリズムをミラーに変えたため、開口511aと撮像素子302との実際の距離(空気換算長は同じ)は第1の実施形態より短くなるため、図2の状態に比べて、撮像素子302は下側に配置されている。また、撮像装置302と密閉容器512との干渉を防止するため、開口512aが設けられている。
【0062】
上記構成を有するカメラ508の作用について以下に説明する。なお、前述の実施形態のカメラ208と同じ作用については説明を省略する。
撮像素子301で観察する場合には、モータ308を回転させ、ミラー501を光軸900上から退避させる。すると、開口511aから入射した観察光は、撮像素子301に入射する。
【0063】
撮像素子302で観察する場合には、モータ308を回転させ、ミラー501を光軸900上に配置する。これにより、開口511aから入射した観察光は、ミラー501、502で偏向され、撮像素子302に入射する。
【0064】
以上のように、本実施形態に係るカメラ508によれば、前述の実施形態に係るカメラ208と同様の効果に加えて、プリズムより軽いミラーを用いているため、揺動軸304にかかる重力による偏荷重を小さくすることができ、より正確な位置決めが可能となる。
【0065】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係るカメラ608について、図10を参照して以下に説明する。以下、本実施形態のカメラ608について、第3の実施形態のカメラ508と共通する点については同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0066】
図10は、本実施形態におけるカメラ608を示した縦断面図である。
中板603には、図10において左右方向に開口部が設けられており、揺動軸604を回動させるためのベアリング305a、305bが挿入されている。
【0067】
ベアリング305a、305bは、中板603の左右それぞれから組立てる。揺動軸604を紙面右方向からベアリング305bに挿入し、突起部304aに当てつけた後、揺動軸604に設けられたねじ部に紙面左方向からリング321をねじ込むことで、揺動軸604は中板603に回転可能に固定されている。
【0068】
揺動軸604の一端には、ミラー501の保持部606aが図示されないビスで固定されている。ミラー501と保持部606aとは接着固定されている。
モータ308は、駆動基板609とケーブル391で接続されている。
中板603と上フタ610、下フタ611とは、それぞれ図示されないビスで固定されている。下フタ611には、顕微鏡装置接続用の開口611aが設けられている。開口611aの一部は段付形状となっており、防塵ガラス330が接着固定されている。
【0069】
上記構成を有するカメラ608の作用について以下に説明する。なお、第3の実施形態のカメラ508と同じ作用については説明を省略する。
撮像素子302で観察する場合には、モータ308を回転させ、ミラー501を光軸900上から退避させる。すると、開口611aから入射した観察光は、ミラー502で偏向され、撮像素子302に入射する。
【0070】
撮像素子301で観察する場合には、モータ308を回転させ、ミラー501を光軸900上に配置する。これにより、開口611aから入射した観察光は、ミラー501で偏向され、撮像素子301に入射する。
【0071】
以上のように、本実施形態に係るカメラ608によれば、第3の実施形態に係るカメラ508と同様に、プリズムより軽いミラーを用いているため、揺動軸604にかかる重力による偏荷重を小さくすることができ、より正確な位置決めが可能となる。
【0072】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態に係るカメラ808について、図11を参照して以下に説明する。以下、本実施形態のカメラについて、第1の実施形態のカメラ208と共通する点については同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0073】
図11は、本実施形態におけるカメラ808を示した図である。
中板703には、図11における上下方向に開口部が設けられており、軸704を上下動させるための例えばリニアブッシュのようなベアリング705が挿入、固定されている。
軸704の一端(紙面下方)には、ミラー791が接着固定されている。
【0074】
軸704の他端(紙面上方)には、ラック707が図示されないビスで固定されている。ラック707は、モータ708に固定した歯車708aと噛み合っており、モータ708の回転力を軸704に伝達するようになっている。モータ708は、基板709とケーブル391で接続されている。モータ708は、例えば、回転量を任意にパルス制御できるステッピングモータ等を用いる。
【0075】
中板703と上フタ710、下フタ711とは、それぞれ図示されないビスで固定されている。下フタ711には、顕微鏡装置接続用の開口711aが設けられている。開口711aの一部は段付形状となっており、防塵ガラス330が接着固定されている。
【0076】
上記構成を有するカメラ808の作用について以下に説明する。なお、第1の実施形態のカメラ208と同じ作用については説明を省略する。
撮像素子302で観察したい場合には、例えばPCといったカメラ808に接続した図示しない制御手段を操作して、モータ708を回転させる。すると、モータ708の回転力は、歯車708a、ラック707、軸704を介してミラー791に伝達され、ミラー791を図11において上側へ移動させる。このときのラック707は図11の二点鎖線で示す位置707aとなり、ミラー791は図11の二点鎖線で示す位置791aとなり、観察光900は、この位置791aのミラー791で偏向され、撮像素子302に入射する。
【0077】
撮像素子301で観察したい場合には、前述の場合と同様に、制御手段を操作し、モータ708を前述の場合と反対方向に回転させる。すると、前述の場合と同様に、モータ708の回転力は軸704に伝達され、ミラー791は図11の実線で示した位置に配置される。そして、観察光900は、ミラー791で偏向され、撮像素子301に入射する。ミラー791の微小な位置調整は、モータ708がステッピングモータだった場合はパルス制御で行う。
【0078】
中板703の上側(空間B)と下側(空間A)とは、軸704とベアリング705で完全にシールされているため、ラック707と歯車708aとの摩擦により発生する金属粉等のゴミが、中板703の紙面下側の空間Aに落ちて観察光を遮るということがない。また、ベアリング705は、一般的にシール形が用いられており、軸704の上下動作でゴミが発生し、観察光を遮るということもない。
【0079】
以上のように、本実施形態に係るカメラ808によれば、前述の実施形態に係るカメラ208と同様の効果に加えて、各構成要素を縦方向に配置することで、カメラのフットプリント(設置面積)を小さくすることができる。
【0080】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の各実施形態を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよい。
また、各実施形態において、2つの撮像素子を備えたカメラを例として説明したが、3つ以上の撮像素子を備えることとしてもよい。
【0081】
さらに、各実施形態において、導光部によって、被写体からの光を撮像素子301及びこの撮像素子301とは別の部材である撮像素子302の少なくとも一つに導くように切り替える構成としたが、これに限らず、例えば、上記光を撮像素子301と光電素子(フォトダイオード)との少なくとも一つに導くように切り替える構成や、被写体からの光を撮像素子301と目視観察光路上の光学系との少なくとも一つに導くように切り替える構成としても、同様の効果が得られる。
【0082】
また、例えば第1の実施形態であれば歯車ではなく、リンク機構を用いても良いし、第2の実施形態であればモータの代わりにソレノイドを使用しても良い。さらに、プリズムを通らない観察光を検出する撮像素子301をより高感度にしてもよい。
【0083】
また、密閉容器312を撮像素子毎に設けても良いし、揺動軸304の中心を支点とするプリズムやミラーの自重によるモーメントを軽減するために、揺動軸304に例えば重りのようなバランサを設けても良い。
また、図4において、上フタ310と下フタ311と中板303が同一外形である例を示したが、機能は各々の空間を分離することなので、上フタ310、下フタ311に対して中板303が大きい外形であっても問題はない。
【符号の説明】
【0084】
A 空間(一方の空間)
B 空間(他方の空間)
100 顕微鏡
201 顕微鏡本体
202 ステージ
203 対物レンズ
204 接眼レンズ
205 鏡筒
206 標本(被写体)
207 結像レンズ
208 カメラ(撮像装置)
300 筐体
301、302 撮像素子
303 中板(隔壁)
304 揺動軸(伝達部)
305a、305b ベアリング(シール部)
306 プリズム(導光部)
308 モータ(駆動部)
310 上フタ
311 下フタ
312 密閉容器
501 ミラー(導光部)
502 ミラー(導光部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
該筐体の内部を2つの空間に区画する隔壁と、
前記筐体内の一方の空間に配置された撮像素子と、
前記筐体内の他方の空間に配置された駆動部と、
前記隔壁を貫通し、前記駆動部の駆動力を伝達する伝達部と、
前記隔壁の前記伝達部の貫通部に設けられ、前記伝達部との隙間をシールするシール部と、
前記一方の空間において前記伝達部に接続され、前記伝達部により伝達された駆動力によって移動して、前記撮像素子及び前記撮像素子とは別の部材の少なくとも一つに被写体からの光を導くように切り替えられる導光部とを備える撮像装置。
【請求項2】
前記別の部材が、撮像素子である請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
複数の前記撮像素子が、互いに特性の異なる請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
複数の前記撮像素子のいずれかが、前記被写体からの光の光路上に配置され、
前記導光部が、前記伝達部により伝達された駆動力によって、前記被写体からの光の光路上に挿脱される請求項2または3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記駆動部が、モータと、該モータの回転軸に固定されたピニオン部とから構成され、
前記伝達部が、前記ピニオン部に嵌合するラック部と、該ラック部と前記導光部とを接続する接続部材とから構成されている請求項1から4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記撮像素子の周りを覆うように配置され、少なくとも一部が光を透過可能な部材で構成された密閉容器を備える請求項1から5のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項7】
前記導光部がプリズムである請求項1から6のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項8】
前記導光部がミラーである請求項1から7のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項9】
複数の前記撮像素子が、前記隔壁の表面に沿う方向に並んで配置され、
前記伝達部が、前記貫通部を回動中心として前記導光部を回動させる請求項2に記載の撮像装置。
【請求項10】
複数の前記撮像素子が、前記隔壁の表面に沿う方向に並んで配置され、
前記伝達部が、前記隔壁の表面に沿う方向に前記導光部を移動させる請求項2に記載の撮像装置。
【請求項11】
複数の前記撮像素子が、前記隔壁の表面に直交する方向に並んで配置され、
前記伝達部が、前記隔壁の表面に直交する方向に前記導光部を移動させる請求項2に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−247638(P2012−247638A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119405(P2011−119405)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】