説明

撮像装置

【課題】赤外光カットフィルタが着脱自在になった撮像装置において、不適正な撮像行為を正しく判定する。
【解決手段】マイコンは、フィルタが離脱位置であることを検出したときに(S1でYES)、赤外光LEDランプを点灯し(S2)、所定のタイミングで、消灯直前の像をメモリに記憶した後(S4)、ランプを消灯し、消灯時の像を記憶すると共に、ファインダの像をリアルタイムの像からメモリに記憶した消灯直前の像に切替える(S5)。次に、消灯する直前の像と消灯時の像の明るさを比較し(S6)、明るさに差が無く(S7でNO)、両像が共に暗くない場合に(S8でNO)、不適正な撮像行為であると判定してファインダにブルーバック画像を表示する(S9)。赤外光により照明されている直前画像と、赤外光による照明がない消灯時画像とで明るさに差が無い場合には、被写体が赤外光の到達不能な距離にあることから、不適正な撮像であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に関し、詳しくは、可視光領域と赤外光領域の撮像が可能な撮像素子を備え、ユーザによって赤外光領域の波長成分をカットする赤外光カットフィルタが着脱自在になった撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用ビデオカメラやディジタルカメラ等の撮像装置に搭載される撮像素子は、通常可視光領域と、赤外光領域の一部とを撮像することができる。これを利用して、撮像装置に赤外光LEDランプ等の赤外光源を付設すると共に赤外光カットフィルタを着脱自在に取り付けて、昼間の撮影時の撮像画像を良質なものにでき、しかも夕暮れ時や暗い室内での撮影も可能にしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような撮像装置において、ユーザは昼間の撮影時には赤外光カットフィルタをレンズ、絞り等の光学系により形成される光路に挿入して、被写体から到来する光の赤外光領域の波長成分をカットし、撮像される像に赤みがかかるのを防いで良好な画質にする。また、暗い室内等での撮影時には赤外光源を点灯して被写体を赤外光により照明すると共に、赤外光カットフィルタを前記光路から離脱して被写体から到来する可視光と赤外光の両方を撮像素子により撮像させ、像をより明るくすることができる。
【0004】
ところが、上記のような撮像装置では、ユーザが赤外光カットフィルタを光路から離脱するだけで、簡単に赤外光領域の波長成分を撮像素子に到達させ、赤外光領域の像を撮像することができ、赤外光は、薄い衣服であれば容易に透過するので、これを利用して不適正な撮像が行われる可能性がある。例えば、夏場等の赤外光が強い昼間の屋外において、意図的に赤外光カットフィルタを光路から離脱すれば、水着や薄い衣服を着た人物を透視して盗撮するという不適正な撮像を行うことができる。
【0005】
上記のような不適正な撮像を防止するために、特許文献1に記載の撮像装置では、赤外光領域の波長成分がカットされていないことと、撮像された画像の明るさが所定の閾値以上であることを条件として誤操作を判定し、誤操作と判定したときには電源を遮断するようになっている。
【0006】
なお、被写体側の人物に気づかれることなく撮像が行われる、不正な撮像行為の一種としてのいわゆる隠し撮りを防止するシステムとしては、撮像装置側だけに不正撮像を防止する機構を設けるのではなく、人物側が不正撮像の対象とされることを避けるための小型の装置を身につけるものがある。
【0007】
例えば、人物は不正撮像の防止用の画像を有する小型装置を身につけておき、撮像装置側には撮像した画像信号の中に上記不正撮像防止用の画像情報が含まれることを検出する検出手段を備え、不正撮像防止用の画像情報が含まれていることを検出したときには、撮像装置の一部の電源をオフにするものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、撮像装置にはレリーズボタンの半押し操作時に可視光を発する光源を備え、被写体人物は上記光源からの可視光を受光したときにアラーム音を発生する受光ユニットを持ち、不正な撮像者が隠し撮りをしようとしてレリーズボタンを押したときに、被写体人物は受光ユニットからのアラーム音により気づくようにしたシステムが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4341102号公報
【特許文献2】特開2001−169175号公報
【特許文献3】特開2006−301418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に記載の撮像装置は、特許文献2及び3に記載の撮像装置に比べて、人物側が不正撮像防止用の装置を身につけておく必要がなく、撮像装置側が単独で不適正な撮像を判定できる点で優れている。ところが、撮像装置が単独でユーザの行う不適正な撮像行為を的確に検出することは、現実には難しい。例えば、昼間であっても外光の進入が少ない室内で撮像するときには、画質を犠牲にしてでも画像の明るさを増すために赤外光カットフィルタを外す場合がある。特許文献1に記載の撮像装置では、画像の明るさだけを判断基準にしているために、ユーザが撮像装置を室内の比較的明るい領域の被写体に向けたときに、画像の明るさが設定された閾値よりも僅かに上回れば、正しい使用をしているにも拘わらず、ユーザの当該撮像行為が不適正と判定されて撮像ができなくなってしまう。
【0011】
一方、前述のような不適正な撮像行為は、被写体の人物に気づかれないようにするために5m以上の比較的離れたところから行われるという事情があり、撮像装置に被写体との距離を検出するAF(オートフォーカス)用の距離センサを備える場合には、距離センサの検出した被写体との距離を、不適正な撮像を判定するための条件に加えることが考えられる。ところが、距離センサの種類によっては、位相差方式のように暗い場所や被写体のコントラストが小さいときには距離検出ができないといった制限がある場合がある。また、この問題を解消するために撮像装置に専用の距離センサを設ける場合には製造コストが大幅にアップする。
【0012】
そこで、本願の発明者は、赤外光カットフィルタが着脱自在になった撮像装置には被写体を照明するための赤外光源が標準的に装備されていることと、赤外光源からの赤外光は通常5m程度の到達距離しか有しないことに着目し、搭載された距離センサによる距離検出に依拠することなく、赤外光源を点灯・消灯制御したときの画像の明るさの変化に基づいて被写体との概略の距離を検知できることに気づき、本願発明に想到した。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するものであり、可視光領域と赤外光領域の撮像が可能な撮像素子と、被写体を照明するための赤外光源と、ユーザの操作によって着脱自在な赤外光カットフィルタと、を備える撮像装置において、距離センサを新たに付設する等の構成の大きな変更の必要がなく、簡単な構成で不適正な撮像行為をより正しく判定することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、レンズ、絞り等の光学系により形成された光路を経て被写体から到来する光を受けて該光の可視光領域と赤外光領域の撮像が可能な撮像素子と、前記撮像素子により撮像された像を表示する表示部と、ユーザの操作によって、前記光路に挿入されて光の赤外光領域の波長成分をカットするカット位置と、前記光路から離脱されて光をそのまま前記撮像素子に到達させる離脱位置との間で切替え自在になった赤外光カットフィルタと、前記被写体を照明するための赤外光源と、を備える撮像装置において、前記赤外光カットフィルタの前記カット位置から前記離脱位置への切替えを検出するフィルタ位置検出手段と、前記フィルタ位置検出手段により前記赤外光カットフィルタの前記カット位置から前記離脱位置への切替えが検出されたときに、前記赤外光源を点灯する赤外光源点灯手段と、前記赤外光源点灯手段により点灯された赤外光源を所定のタイミングで一時的に消灯又は照度が減少した状態にする赤外光源制御手段と、前記赤外光源制御手段により赤外光源が消灯又は照度が減少した状態にされたときに前記撮像素子により撮像された像と、赤外光源が消灯又は照度が減少した状態にされる直前、又は直後に前記撮像素子により撮像された像とを比較し、明るさに差が無い場合、又は明るさの差が所定の差量よりも小さい場合に、不正な撮像操作であると判定する不正操作判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明は、レンズ、絞り等の光学系により形成された光路を経て被写体から到来する光を受けて該光の可視光領域と赤外光領域の撮像が可能な撮像素子と、前記撮像素子により撮像された像を表示する表示部と、ユーザの操作によって、前記光路に挿入されて光の赤外光領域の波長成分をカットするカット位置と、前記光路から離脱されて光をそのまま前記撮像素子に到達させる離脱位置との間で切替え自在になった赤外光カットフィルタと、前記被写体を照明するための赤外光源と、を備える撮像装置において、前記赤外光カットフィルタの前記カット位置から前記離脱位置への切替えを検出するフィルタ位置検出手段と、前記フィルタ位置検出手段により前記赤外光カットフィルタの前記カット位置から前記離脱位置への切替えが検出されたときに、前記赤外光源を点灯する赤外光源点灯手段と、前記赤外光源点灯手段により点灯された赤外光源を所定のタイミングで一時的に消灯又は照度が減少した状態にする赤外光源制御手段と、前記赤外光源制御手段により赤外光源が消灯又は照度が減少した状態にされたときに前記撮像素子により撮像された像と、赤外光源が消灯又は照度が減少した状態にされる直前、又は直後に前記撮像素子により撮像された像とを比較し、明るさに差が無い場合、又は明るさの差が所定の差量よりも小さい場合であって、かつ両像の明るさが共に被写体の輪郭を判別できる程度の明るさである場合に、不正な撮像操作であると判定する不正操作判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、前記不正操作判定手段により不正な撮像操作であると判定されたときに、前記表示部への像の表示を中止して前記撮像素子により撮像された像をユーザが見ることができないようにする表示中止手段を、さらに備えることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項の発明において、前記赤外光源制御手段が赤外光源を一時的に消灯又は照度が減少した状態にするときに、前記表示部に表示される像を、前記撮像素子により撮像されるリアルタイムの像に替えて、前記赤外光源制御手段が赤外光源を一時的に消灯又は照度が減少した状態にする直前に前記撮像素子により撮像された像とする表示画像制御手段を、さらに備えることを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記赤外光源制御手段が赤外光源を一時的に消灯又は照度が減少した状態にする時間は、前記撮像素子が1フレームを撮像する時間と同等であることを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項の発明において、前記赤外光源制御手段が赤外光源を一時的に消灯又は照度が減少した状態にするタイミングがランダムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、赤外光カットフィルタが離脱位置に切替えられたときに、赤外光源を点灯して所定のタイミングで一時的に消灯又は照度が減少した状態にし、消灯又は照度が減少した状態にしたときに撮像された像と、その直前、又は直後に撮像された像とを比較し、明るさに差が無い場合、又は明るさの差が所定の差量よりも小さい場合に、不正な撮像操作であると判定するので、簡単な構成でありながら、より正確に不正な撮像操作を判定することができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、赤外光カットフィルタが離脱位置に切替えられたときに、赤外光源を点灯して所定のタイミングで一時的に消灯又は照度が減少した状態にし、消灯又は照度が減少した状態にしたときに撮像された像と、その直前、又は直後に撮像された像とを比較し、明るさに差が無い場合、又は明るさの差が所定の差量よりも小さい場合であって、かつ両像の明るさが共に被写体の輪郭を判別できる程度の明るさである場合に、不正な撮像操作であると判定するので、簡単な構成でありながら、画像が輪郭を判別できないような暗さであって実質的に問題ない場合を適正に除きつつ、正確に不正な撮像操作を判定することができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、不正な撮像操作であると判定したときに、表示部への像の表示を中止してユーザが撮像画像を見ることができないようにするので、結果的にユーザの不正な撮像行為を防止することができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、赤外光源を一時的に消灯又は照度が減少した状態にするときに、表示部に表示される像を、撮像素子により撮像されるリアルタイムの像から、直前に撮像された像に差し替えるので、表示部に表示される像が不連続になることがなく、ユーザのスムーズな撮像行為が妨げられることがない。
【0024】
請求項5の発明によれば、赤外光源を一時的に消灯又は照度が減少した状態にする時間が、撮像素子が1フレームを撮像する時間と同等であるので、表示部に表示される像を、撮像素子により撮像されるリアルタイムの像から、直前に撮像された像に差し替える制御が容易であり、表示部の表示画像が不連続になることを容易に防止できる。
【0025】
請求項6の発明によれば、赤外光源を一時的に消灯又は照度が減少した状態にするタイミングがランダムであるので、ユーザが撮像装置に外部の検査装置を接続して表示部の画像を検査しようとしたときに、表示部の画像を差し替えていることを容易に検出できないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置のブロック図。
【図2】同撮像装置における不正な撮像を判定するための手順のフローチャート。
【図3】(a)は同撮像装置における赤外光LEDランプの点灯・消灯のタイミングを示す図、(b)は同撮像装置における適正な撮像が行われるときの撮像素子が撮像する像をフレーム毎に示す図、(c)は同撮像装置における不適正な撮像が行われるときの撮像素子が撮像する像をフレーム毎に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係る撮像装置について、図1乃至図3を参照して説明する。本実施形態の撮像装置1は、図1に示されるように、ズームレンズ2、フォーカスレンズ3、及び絞り4を備える光学系により形成された光路5を経て被写体6から到来する光を受けて可視光領域と赤外光領域の撮像が可能な撮像素子7と、撮像素子7が出力する画像信号のゲイン制御とAD変換を行う信号制御回路8と、信号制御回路8から出力される画像信号に色補正、輪郭補正を行ってビューファインダ(表示部)9に出力する信号処理回路11と、それらの動作制御用のマイコン(赤外光源点灯手段、赤外光源制御手段、不正操作判定手段、表示中止手段、表示画像制御手段)12と、被写体6を照明するための赤外光LEDランプ(赤外光源)13と、を備えている。
【0028】
撮像素子7は、CCD、CMOSイメージセンサ等の固体撮像素子からなり、撮像した画像を画像信号として1/60秒に1フレームずつのタイミングで信号制御回路8へ出力する。マイコン12は、撮像素子7からの入力信号aにより撮像素子7が画像信号を1フレームずつ出力するタイミングを検知し、そのタイミングに同調させて赤外光LEDランプ13を、ランプ駆動源14を介して点灯・消灯制御することができる。
【0029】
また、マイコン12は、ユーザが操作ボタン15を押下して録画指示を与えたとき、及びマイコン12が生成する後述のタイミングで、信号処理回路11から出力される画像を静止画像又は動画像としてメモリ16に記録する。なお、マイコン12は、スイッチ10を切替えることによりビューファインダ9への入力を切替えて、ビューファインダ9に表示される画像を、信号処理回路11から出力されるリアルタイムの画像からメモリ16に記録された画像へ一時的に切替えることができるようになっている。
【0030】
ズームレンズ2と絞り4との間には、赤外光カットフィルタ17が配されている。この赤外光カットフィルタ17は、ユーザの操作によって、光路5に挿入されて被写体6からの光の赤外光領域の波長成分をカットするカット位置(実線図示)と、光路5から下方へ離脱されて光をそのまま撮像素子7に到達させる離脱位置(二点鎖線図示)との間で切替え自在になっている。
【0031】
具体的には、赤外光カットフィルタ17の側部が図示しないレールによって上下方向に摺動自在に支持され、位置を切替えるときには、ユーザが赤外光カットフィルタ17のつまみ部17aを持って上下に移動することにより行う。なお、赤外光カットフィルタ17の位置を切替え自在にする構成は上記のものに限られず、例えば赤外光カットフィルタ17が上下に揺動するレバーの先端に固定されているものなど種々の構成が可能である。
【0032】
上記のようにして位置が切替え自在になった赤外光カットフィルタ17の下方には、赤外光カットフィルタ17が下方へ移動されたときに、フィルタ17の下端が当接することによりオンするスイッチ(フィルタ位置検出手段)18が備えられている。マイコン12は、スイッチ18からのオン信号bを受信することにより、赤外光カットフィルタ17の離脱位置への切替えを検知する。
【0033】
なお、赤外光カットフィルタ17がカット位置にあるときには、光の赤外光領域の波長成分がカットされるので、撮像素子7には可視光領域の波長成分のみが到達し、明るい場所にある被写体6の像が自然な色調で鮮明に撮像される。赤外光カットフィルタ17が離脱位置にあるときには、可視光領域と赤外光領域の両方の波長成分が光量の多い光として撮像素子7に到達するので、例えば昼間であっても比較的暗い室内にある被写体6の像が、赤みがかかって画質は少し低下するものの比較的明るい像として撮像することができる。
【0034】
また、赤外光カットフィルタ17が離脱位置にあるときに、被写体6を照明すべく赤外光LEDランプ13を点灯させると、被写体6が赤外光の届く範囲(通常5m以内)にある場合には、被写体6から反射されてくる赤外光を撮像できるので、暗い夜間においても被写体6を撮像することができる。この場合の撮像画像は、被写体6の外形を確認できる程度の暗いものである。
【0035】
次に、マイコン12が実行する不正な撮像行為の判定手順について、図2のフローチャートを参照して説明する。マイコン12は、スイッチ18からのオン信号bを受信すると赤外光カットフィルタ17が離脱位置に切替えられたことを検知し(S1でYES)、赤外光LEDランプ13を点灯する(S2)。このときに、被写体6と撮像装置1の距離が約5m以内であれば、赤外光LEDランプ13からの赤外光が被写体6に到達して反射し、反射した赤外光が可視光と共に撮像素子7により撮像される。被写体6と撮像装置1の距離が約5m以上であれば、赤外光LEDランプ13からの赤外光が被写体6に到達せず、撮像画像は赤外光が被写体6に到達するときの画像よりも暗くなる。
【0036】
続いて、マイコン12は、予め決められた消灯のタイミングになると(S3でYES)、信号処理回路11から出力される消灯直前の画像をメモリ16に記憶させたうえで(S4)、赤外光LEDランプ13を1フレーム分の撮像時間と同等の時間(1/60秒)だけ消灯する。また、消灯しているときの撮像素子7が撮像する画像をメモリ16に記憶させると共に、ビューファインダ9への入力を切替えて、ビューファインダ9に表示されているリアルタイムの像を、S4でメモリ16に記憶させた消灯直前の画像に差し替えて表示させる(S5)。
【0037】
消灯のタイミングは、点灯してから一定の時間間隔ごと(例えば1/10秒ごと)であってもよいし、マイコン12内のROM12aに予め記憶された乱数に基づくランダムな時間間隔であってもよい。具体的には、例えば、マイコン12は、点灯時間が、1/20秒、1/15秒、1/30秒、1/45秒・・と、消灯のタイミングがランダムになるように制御する。
【0038】
なお、ビューファインダ9に表示される画像は、撮像素子7が1フレームを撮像する時間と同等の時間だけ、リアルタイムの画像からメモリ16に記憶された画像に差し替えるので、ビューファインダ9に表示される画像が不連続にならないようにして入力の切替え制御を行うことが容易である。そして、そのことから、ユーザがビューファインダ9の画像が差し替えられていることに気付いたり、不自然さを感じることがなく、通常の撮像行為が妨げられることがない。また、ユーザが仮にビューファインダ9の画像に不自然さを感じて、撮像装置1に検査装置を接続してビューファインダ9に表示される画像を検査しようとした場合でも、切替えタイミングがランダムであれば、ビューファインダ9の画像が切り替えられていることを検出することを難しくできる。
【0039】
次に、マイコン12は、S4でメモリ16に記憶した赤外光LEDランプ13を消灯する直前の画像(以下、直前画像と言う)と、S5でメモリ16に記憶した赤外光LEDランプ13が消灯しているときの画像(以下、消灯時画像と言う)とを比較する(S6)。比較の結果、直前画像と消灯時画像の明るさに差がある場合は(S7でYES)、適正な撮像行為であるので、S3に戻り次の消灯のタイミングを待つ。また、両画像の明るさに差がない場合は(S7でNO)、両画像が共に暗いか否かを判定する(S8)。両画像が共に暗い場合以外(共に明るい場合)は(S8でNO)、不適正な撮像行為であると判定し、信号処理回路11から所定の信号を出力して、ビューファインダ9にブルーバック画像を表示させる(S9)。これによりユーザは画像を見ることができなくなり、結果的に不適正な撮像を防止することができる。なお、ここで「明るい」とは、被写体6の輪郭が判別可能な明るさを有することをいう。
【0040】
S7とS8の判定処理について、図3を参照して説明する。図3は、赤外光LEDランプ13が消灯される期間20の直前、直後における撮像素子7により撮像された像を1フレームずつ示したものであり、図3(b)は、適正な撮像行為の場合、図3(c)は(盗撮の可能性の高い)不適正な撮像行為の場合のものである。いま、被写体6が約5m以内にあるときには、赤外光が被写体6に到達し、反射された赤外光を可視光とともに撮像素子7が撮像するので、図3(b)に示すように、直前画像21aの方が消灯時画像21bよりも明るくなる。換言すると、両画像21a、21bの明るさに差が生じる。このことから、両画像21a、21b間に明るさの差があるときには、被写体6が約5m以内にあることになり、不適正な撮像行為ではないと判定できる。
【0041】
また、被写体6が約5m以上の距離にあるときには、赤外光が被写体6に到達しないので、赤外光LEDランプ13の点灯・消灯に関わらず撮像素子7の受ける光量に差が生じず、図3(c)に示すように、直前画像22aと消灯時画像22bの明るさに差が生じない。このことから、両画像22a、22bに明るさの差が無いときには、被写体6が5m以上の距離にあり、不適正な撮像行為であることが推定される。
【0042】
さらに、両画像22a、22bの明るさに差が無く、共に被写体6の輪郭が判別できない程暗い場合には(S8でYES)、被写体6との距離は5m以上の距離であることが推定されるが、可視光領域の光量も少なく被写体6の輪郭等が判別できる程度の明るさもないことになるので、この場合は、不適正な撮像行為ではないと判定する。具体的には、例えば、ユーザが赤外光カットフィルタ17を離脱させた状態で露光時間を伸ばして夜景を撮影するときなどである。なお、このように両画像22a、22bの明るさに差が無く、共に暗い場合に(S8でYES)、不適正な撮像行為であると判定して、ビューファインダ9にブルーバックの画像を表示させてもよい。
【0043】
なお、実際には、直前画像21a、22aと消灯時画像21b、22bとの明るさを比較するときに、所定の幅を設けて、両画像の明るさの差が所定の差量よりも小さいときに明るさの差が無く、大きいときに明るさの差があると判定する。また、明るさを比較する像は、直前画像21a、22aに代えて、赤外光LEDランプ13の消灯期間20が終了した直後の像21c、22c(以下、直後画像と言う)とし、直後画像21c、22cと消灯時画像21b、22bとを比較するものであってもよい。この場合には、撮像素子7の像をメモリ16に記憶させるS4の処理がS5の後に移行する。さらに、赤外光LEDランプ13は、消灯させずに照度が減少した状態にするようにしてもよい。
【0044】
以上のように、本願発明の撮像装置1によれば、ユーザにより赤外光カットフィルタ17が離脱位置に切替えられたときに、赤外光LEDランプ13を点灯し、その後、所定のタイミングで一時的に消灯又は照度が減少した状態にし、消灯又は照度が減少した状態にしたときに撮像素子7により撮像された像(消灯時画像21b、22b)と、その直前、又は直後に撮像された像(直前画像21a、22a、又は直後画像21c、22c)とを比較し、明るさに差が無い場合に、不適正な撮像であると判定するので、専用の距離センサを設けるなどの構成の変更が必要ではなく、簡単な構成でありながら、より正確に不正な撮像操作を判定することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 撮像装置
2 ズームレンズ
3 フォーカスレンズ
4 絞り
5 光路
6 被写体
7 撮像素子
9 ビューファインダ(表示部)
12 マイコン(赤外光源点灯手段、赤外光源制御手段、不正操作判定手段、表示中止手段、表示画像制御手段)
13 赤外光LEDランプ(赤外光源)
17 赤外光カットフィルタ
18 スイッチ(フィルタ位置検出手段)
20 消灯時間
21a、22a 消灯直前の像
21b、22b 消灯時の像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ、絞り等の光学系により形成された光路を経て被写体から到来する光を受けて該光の可視光領域と赤外光領域の撮像が可能な撮像素子と、
前記撮像素子により撮像された像を表示する表示部と、
ユーザの操作によって、前記光路に挿入されて光の赤外光領域の波長成分をカットするカット位置と、前記光路から離脱されて光をそのまま前記撮像素子に到達させる離脱位置との間で切替え自在になった赤外光カットフィルタと、
前記被写体を照明するための赤外光源と、を備える撮像装置において、
前記赤外光カットフィルタの前記カット位置から前記離脱位置への切替えを検出するフィルタ位置検出手段と、
前記フィルタ位置検出手段により前記赤外光カットフィルタの前記カット位置から前記離脱位置への切替えが検出されたときに、前記赤外光源を点灯する赤外光源点灯手段と、
前記赤外光源点灯手段により点灯された赤外光源を所定のタイミングで一時的に消灯又は照度が減少した状態にする赤外光源制御手段と、
前記赤外光源制御手段により赤外光源が消灯又は照度が減少した状態にされたときに前記撮像素子により撮像された像と、赤外光源が消灯又は照度が減少した状態にされる直前、又は直後に前記撮像素子により撮像された像とを比較し、明るさに差が無い場合、又は明るさの差が所定の差量よりも小さい場合に、不正な撮像操作であると判定する不正操作判定手段と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
レンズ、絞り等の光学系により形成された光路を経て被写体から到来する光を受けて該光の可視光領域と赤外光領域の撮像が可能な撮像素子と、
前記撮像素子により撮像された像を表示する表示部と、
ユーザの操作によって、前記光路に挿入されて光の赤外光領域の波長成分をカットするカット位置と、前記光路から離脱されて光をそのまま前記撮像素子に到達させる離脱位置との間で切替え自在になった赤外光カットフィルタと、
前記被写体を照明するための赤外光源と、を備える撮像装置において、
前記赤外光カットフィルタの前記カット位置から前記離脱位置への切替えを検出するフィルタ位置検出手段と、
前記フィルタ位置検出手段により前記赤外光カットフィルタの前記カット位置から前記離脱位置への切替えが検出されたときに、前記赤外光源を点灯する赤外光源点灯手段と、
前記赤外光源点灯手段により点灯された赤外光源を所定のタイミングで一時的に消灯又は照度が減少した状態にする赤外光源制御手段と、
前記赤外光源制御手段により赤外光源が消灯又は照度が減少した状態にされたときに前記撮像素子により撮像された像と、赤外光源が消灯又は照度が減少した状態にされる直前、又は直後に前記撮像素子により撮像された像とを比較し、明るさに差が無い場合、又は明るさの差が所定の差量よりも小さい場合であって、かつ両像の明るさが共に被写体の輪郭を判別できる程度の明るさである場合に、不正な撮像操作であると判定する不正操作判定手段と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
前記不正操作判定手段により不正な撮像操作であると判定されたときに、前記表示部への像の表示を中止して前記撮像素子により撮像された像をユーザが見ることができないようにする表示中止手段を、さらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記赤外光源制御手段が赤外光源を一時的に消灯又は照度が減少した状態にするときに、前記表示部に表示される像を、前記撮像素子により撮像されるリアルタイムの像に替えて、前記赤外光源制御手段が赤外光源を一時的に消灯又は照度が減少した状態にする直前に前記撮像素子により撮像された像とする表示画像制御手段を、さらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記赤外光源制御手段が赤外光源を一時的に消灯又は照度が減少した状態にする時間は、前記撮像素子が1フレームを撮像する時間と同等であることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記赤外光源制御手段が赤外光源を一時的に消灯又は照度が減少した状態にするタイミングがランダムであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−39359(P2012−39359A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177391(P2010−177391)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】