説明

撮像装置

【課題】できるだけ短い処理時間で、ユーザーが指定した被写体を追尾して、その被写体にピントを合わせ続けられるようにする。
【解決手段】撮像光学系により結像された被写体像を光電変換する撮像素子と、撮像素子の出力信号から得られた画像の色情報及び輝度情報の少なくとも一方に基づいて、撮像素子の画面上における、焦点を合わせようとする対象被写体の存在する領域である被写体領域を検出する検出部と、検出された被写体領域を基準として、撮像光学系の合焦状態を検出するための領域である複数の焦点検出領域を設定する設定部と、複数の焦点検出領域の中から対象被写体が存在する焦点検出領域を選択する選択部と、選択された焦点検出領域における撮像素子の出力信号に基づいて、撮像光学系を移動させて焦点調節を行う焦点調節部とを備え、複数の焦点検出領域の全範囲は被写体領域よりも広く、かつ、複数の焦点検出領域の各々は被写体領域の設定可能な最小サイズよりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ及びビデオカメラ等の撮像装置に利用されるオートフォーカス技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より映像信号中の色情報や輝度情報に基づいて動体を追尾する技術が提案されている。その際、追尾している動体にピントを合わせ続けることがユーザーにより求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、指定した対象被写体の移動に追従するようにAFエリアの範囲を変更するオートフォーカス装置が提案されている。また、特許文献2では、複数の測距領域を設定し、各焦点評価値に基づいて選択した測距領域の焦点評価値を加算することで、高精度な測距を可能とする自動焦点調節装置が提案されている。また、特許文献3では、同じ映像信号から、被写体の追尾領域を判断し、その領域の特定周波数成分を用いてAF制御する動体追尾装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−338352号公報
【特許文献2】特開2005−141068号公報
【特許文献3】特開平5−145822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、例えば図8(A)に示すように追尾領域(a)の中に背景などの対象被写体以外のものを含んでしまった場合に、背景にピントが合ってしまうなど、対象被写体にピントを合わせられない場合があるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2では、画面全体を動くような動体を想定してピントを合わせ続けようとすると、画面全体に測距領域を設定する必要があり、処理時間が多大にかかってしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献3では、被写体領域を判断したあとにその領域の特定周波数成分を算出してAF制御しなければならないため、処理時間が多大にかかってしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、できるだけ短い処理時間で、ユーザーが指定した被写体を追尾して、その被写体にピントを合わせ続けられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係わる撮像装置は、撮像光学系により結像された被写体像を光電変換する撮像素子と、前記撮像素子の出力信号から得られた画像の色情報及び輝度情報の少なくとも一方に基づいて、前記撮像素子の画面上における、焦点を合わせようとする対象被写体の存在する領域である被写体領域を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記被写体領域を基準として、前記撮像光学系の合焦状態を検出するための領域である複数の焦点検出領域を設定する設定手段と、前記複数の焦点検出領域の中から前記対象被写体が存在する焦点検出領域を選択する選択手段と、前記選択手段により選択された焦点検出領域における前記撮像素子の出力信号に基づいて、前記撮像光学系を移動させて焦点調節を行う焦点調節手段と、を備え、前記複数の焦点検出領域の全範囲は前記被写体領域よりも広く、かつ、前記複数の焦点検出領域の各々は前記被写体領域の設定可能な最小サイズよりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、できるだけ短い処理時間で、ユーザーが指定した被写体を追尾して、その被写体にピントを合わせ続けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる撮像装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態の撮像装置の動作を表すフローチャート。
【図3】図2における追尾中AF動作を説明するフローチャート。
【図4】図2における合焦判定動作を説明するフローチャート。
【図5】図3における合焦判定を説明する図。
【図6】図3における枠選択及びフォーカス移動を説明するフローチャート。
【図7】図2における通常AF動作を説明するフローチャート。
【図8】図3における複数のAF枠設定を説明する図。
【図9】図2における追尾中AF動作の第2の実施形態を説明するフローチャート。
【図10】図9における複数のAF枠設定を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、図1〜図8を参照しながら本発明の第1の実施形態について説明する。図1は本発明の撮像装置の第1の実施形態としてのデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【0013】
図1において、101はズーム機構を含む撮影レンズ(撮像光学系)、102は光量を制御する絞り及びシャッター、103はAE処理部、104は後述する撮像素子106上に焦点を合わせるためのフォーカスレンズ、105はAF処理部である。106は撮影レンズ101により結像された被写体からの反射光(被写体像)を電気信号に変換し、画像信号を出力信号として出力する受光手段又は光電変換手段としての撮像素子である。107は撮像素子106の出力ノイズを除去するCDS回路やA/D変換前に行う非線形増幅回路を含むA/D変換部である。108は画像処理部、109はフォーマット変換部、110は高速な内蔵メモリ(例えばランダムアクセスメモリなどで、以下DRAMと記す)、111はメモリーカードなどの記録媒体とそのインターフェースからなる画像記録部である。
【0014】
112は撮影シーケンスなどシステムを制御するシステム制御部(以下、CPUと記す)、113は画像表示用メモリ(以下、VRAMと記す)である。114は画像表示の他、操作補助のための表示やカメラ状態の表示を行うとともに、撮影時には撮影画面と、追尾領域または測距領域を表示する画像表示部である。115はカメラを外部から操作するための操作部、116は追尾AFモードなどを選択するための撮影モードスイッチ、117はシステムに電源を投入するためのメインスイッチである。118はAFやAE等の撮影スタンバイ動作を行うためのスイッチ(以下、SW1と記す)、119はSW1の操作後、撮影を行う撮影スイッチ(以下、SW2と記す)である。
【0015】
DRAM110は一時的な画像記憶手段としての高速バッファとして、あるいは画像の圧縮伸張における作業用メモリなどとして使用される。操作部115は、例えば次のようなものが含まれる。撮像装置の撮影機能や画像再生時の設定などの各種設定を行うメニュースイッチ、撮影レンズのズーム動作を指示するズームレバー、撮影モードと再生モードの動作モード切換えスイッチ、画像の特定位置を指示するためのタッチパネルや選択ボタンなどである。120は、操作部115により、画面内(画面上)の任意の被写体が選択されたときに、画像処理部108により処理された映像信号中の色情報や輝度情報によりその被写体を検出して追尾する被写体追尾部である。被写体追尾部120は、例えば、選択した被写体領域に含まれる色情報および輝度情報の少なくとも一方を記憶し、この記憶した情報を用いて、被写体を選択した画像とは別の画像から、選択した被写体領域と最も相関の高い領域を抽出するものである。なお、被写体追尾部120は、選択した被写体を検出する際に、焦点評価値を用いることはない
以下、本発明の第1の実施形態のデジタルカメラの動作について図2〜図8を用いて詳細に説明する。
【0016】
図2において、S201では、ユーザーが操作部115により画面内の任意の被写体を選択することによって追尾動作中となっているかどうかを調べ、追尾動作中であればS202へ進み、そうでなければS203へ進む。ここで、撮影モードスイッチ116により、追尾AFモードが選択されているときのみ追尾動作を可能にしてもよい。
【0017】
S202では、後述する追尾中AF動作を行ってS203へ進む。S203では、スイッチSW1の状態を調べ、ONであればS204へ進み、ONでなければS201へ戻る。S204では、後述する合焦フラグがTRUEかどうかを調べ、TRUEであればS206へ進み、TRUEでなければS205へ進む。S205では、後述する通常AF動作を行う。
【0018】
S206では、後述する追尾中AF動作を行ってS207へ進む。S207ではスイッチSW1の状態を調べ、ONであればS208へ進み、ONでなければS201へ戻る。S208ではスイッチSW2の状態を調べ、ONであればS209へ進み、ONでなければS206へ戻る。S209では、撮影動作を行った後S201へ戻る。
【0019】
図3は、図2におけるS202及びS206の追尾中AF動作を説明するフローチャートである。まず、S301では、現在位置を中心にスキャン範囲(1)を設定してS302へ進む。ここで、スキャン範囲(1)は、ピント変動によりライブ画像の見栄えが悪化しないように考慮して、AF精度が確保できる範囲で、できるだけ微小な範囲とする。
【0020】
S302では、S301で決定したスキャン範囲(1)に基づいたスキャン開始位置へフォーカスレンズ104を移動させてS303へ進む。S303では、被写体追尾部120で得られる現在の追尾被写体領域の中心位置や追尾被写体領域の大きさなどの追尾情報を取得してS304へ進む。S304では、S303で取得した追尾情報を基準として、複数のAF枠(焦点検出領域)を設定してS305へ進む。
【0021】
ここで、複数のAF枠の設定の仕方を図8(B)を用いて詳細に説明する。複数のAF枠は、S303で取得した追尾領域(図8(B)の(a))の中心位置を中心として、(b)に示すようにN×M個を設定する(図8(B)ではN=3、M=3)。各AF枠のサイズは、AF精度が確保できる範囲で、ピントが背景に行かないようにするためにできるだけ小さいサイズで設定する。従って、各AF枠のサイズは、追尾被写体領域として設定可能な最小サイズよりも小さいものとなる。また、被写体から追尾領域が外れてしまった場合にも被写体にピントを合わせられるようにするために、追尾領域よりも複数のAF枠を設定する全範囲の方が広くなるように設定する。
【0022】
S305では、CPU112は、S304で設定した複数のAF枠のうちの各AF枠において現在のフォーカスレンズ位置における合焦状態を示す焦点評価値を、DRAM110へ記憶させて、S306へ進む。S306ではフォーカスレンズ104の現在位置を取得してCPU112がその現在位置のデータをDRAM110へ記憶させてS307へ進む。S307ではCPU112がフォーカスレンズ104の現在位置がスキャン終了位置と等しいかを調べ、両者が等しい場合にはS309へ進み、そうでなければS308へ進む。
【0023】
S308では、AF処理部105がフォーカスレンズ104をスキャン終了方向へ向かって所定量だけ移動させた後、S303に戻る。S309ではS305で取得した焦点評価値がピークとなる合焦位置を算出してS310へ進む。S310では、後述する合焦判定を行い、S311へ進む。S311では、後述する枠選択及びフォーカス移動を行い、本処理を終了する。
【0024】
以下、図3におけるS310の合焦判定のサブルーチンについて図4、図5を用いて説明する。
【0025】
焦点評価値は遠近競合などの場合を除けば、横軸にフォーカスレンズ位置、縦軸に焦点評価値をとると、その形は図5に示すような山状になる。そこで焦点評価値の、最大値と最小値の差、一定値(SlopeThr)以上の傾きで傾斜している部分の長さ、傾斜している部分の勾配から、山の形状を判断することにより、合焦判定を行うことができる。
【0026】
合焦判定における判定結果は、以下に示すように○判定、×判定で出力される。
○判定:被写体のコントラストが十分、かつスキャンした距離範囲内の距離に被写体が存在する。
×判定:被写体のコントラストが不十分、もしくはスキャンした距離範囲外の距離に被写体が位置する。
【0027】
また、×判定のうち、至近側方向のスキャンした距離範囲外に被写体が位置する場合を△判定とする。
【0028】
図4は、図3におけるS310の合焦判定を説明するフローチャートである。まず、S401では、焦点評価値の最大値と最小値を求め、次にS402では焦点評価値が最大となるスキャンポイントを求め、S403へ進む。S403では、スキャンポイント、焦点評価値から、山の形状を判断するためのL、SL(図5参照)を求め、S404へ進む。
【0029】
S404では、山の形状が至近側登り止まりかどうかを判断する。至近側登り止まりだと判断するのは、焦点評価値が最大値となるスキャンポイントがスキャンを行った所定範囲における近端(距離情報)であり、かつ近端のスキャンポイントにおける焦点評価値の値と、近端のスキャンポイントより1ポイント分無限遠寄りのスキャンポイントにおける焦点評価値の値の差が、所定値以上である場合である。至近側への登り止まりだと判断した場合はS409へ進み、そうでなければS405へ進む。
【0030】
S405では山の形状が無限遠側への登り止まりかを判断する。無限遠側への登り止まりだと判断するのは、焦点評価値の最大値となるスキャンポイントがスキャンを行った所定範囲における無限遠端であり、かつ無限遠端スキャンポイントにおける焦点評価値の値と、無限遠端スキャンポイントより1ポイント分至近端寄りのスキャンポイントにおける焦点評価値の値の差が、所定値以上である場合である。無限遠側への登り止まりだと判断した場合は、S408へ進み、そうでなければS406へ進む。
【0031】
S406では一定値以上の傾きで傾斜している部分の長さLが所定値以上であり、かつ傾斜している部分の傾斜の平均値SL/Lが所定値以上であり、かつ焦点評価値の最大値(Max)と最小値(Min)の差が所定値以上であれば、S407へ進む。そうでなければS408へ進む。
【0032】
S407では得られた焦点評価値が山状となっていて、被写体にコントラストがあり、焦点調節が可能であるため、判定結果を○判定としている。S408では、得られた焦点評価値が山状となっておらず、被写体にコントラストがなく、焦点調節が不可能であるため判定結果を×判定としている。S409では得られた焦点評価値が山状となってはいないが、近端方向に登り続けている状態となっており、さらに至近側に被写体ピークが存在している可能性があるため判定結果を△判定としている。以上のようにして、合焦判定を行う。
【0033】
図6は、図3におけるS311の枠選択及びフォーカス移動について説明するフローチャートである。まず、S601では、複数のAF枠の中で△判定の枠があるかどうかを調べ、△判定の枠があればS602へ進み、なければS604へ進む。S602では、△判定の枠を選択してS603へ進む。ここで、△判定の枠が複数あった場合は、焦点評価値のピーク位置が最も至近である枠を選択する。さらに、その中でも焦点評価値のピーク位置が同じ枠が複数あった場合のために、枠選択の優先度を予め決めておく。
【0034】
S604では、複数のAF枠の中で○判定の枠があるかどうかを調べ、○判定の枠があればS605へ進み、なければS607へ進む。S605では、○判定の枠のうち焦点評価値のピーク位置が最も至近である枠を選択してS606へ進む。さらに、その中でも焦点評価値のピーク位置が同じ枠が複数あった場合のために、選択の優先度を予め決めておく。S606では、合焦フラグをTRUEにしてS603へ進む。
【0035】
S607では、設定した複数のAF枠の中央枠を選択してS608へ進む。S608では、S301で設定したスキャン範囲(1)の中心位置へフォーカスレンズ104を移動して本処理を終了する。
【0036】
例えば、複数のAF枠の合焦判定結果が、図8(C)のような結果になった場合は、中段左の△判定枠が選択され、その枠の焦点評価値ピーク位置にフォーカスが駆動される。
【0037】
図7は、図2のS205における通常AF動作を説明するフローチャートである。S701では、撮影可能な距離範囲の全域を対象としたスキャン範囲(2)を設定してS702へ進む。S702では、操作部115により画面内の任意の被写体が選択されることによって追尾動作中となっているかどうかを調べ、追尾動作中であればS703へ進み、そうでなければS705へ進む。S703では、被写体追尾部120で得られる現在の追尾領域の中心位置や追尾領域の大きさなどの追尾情報を取得してS704へ進む。S704では、S703で取得した追尾情報に基づいてAF枠を設定してS706へ進む。ここで、AF枠は1枠で設定するが、複数のAF枠を設定してもよい。なお、AF枠を1枠で設定する場合には、AF枠のサイズを追尾領域よりも大きくしてもよい。
【0038】
S705では、画面中央にAF枠を設定してS706へ進む。ここでも、AF枠は1枠でも複数のAF枠でもどちらでもよい。S706では、S701で決定したスキャン範囲(2)に基づいて、スキャン開始位置へフォーカスレンズ104を移動してS707へ進む。S707では、CPU112は、S704またはS705で設定したAF枠において現在のフォーカスレンズ位置における焦点評価値を、DRAM110へ記憶させて、S708へ進む。
【0039】
S708では、フォーカスレンズ104の現在位置を取得してCPU112がその現在位置のデータをDRAM110へ記憶させてS709へ進む。S709では、CPU112がフォーカスレンズ104の現在位置がスキャン終了位置と等しいかを調べ、両者が等しい場合にはS711へ進み、そうでなければS710へ進む。S710では、AF処理部105がフォーカスレンズ104をスキャン終了方向へ向かって所定量だけ移動させた後、S707に戻る。
【0040】
S711では、S707で取得した焦点評価値がピークとなる合焦位置を算出してS712へ進む。S712では、前述した合焦判定を行ってS713へ進む。S713では、S712の合焦判定で○判定かどうかを調べ、○判定であればS714へ進み、そうでなければS715へ進む。S714では、焦点評価値のピーク位置へフォーカスレンズ104を移動させて本処理を終了する。S715では、定点へフォーカスレンズを移動して本処理を終了する。
【0041】
以上説明したように、上記の第1の実施形態によれば、追尾領域の中心位置を中心として、追尾領域よりも広い範囲で複数のAF枠を設定することで、追尾領域の中に背景を含んでしまった場合においても、追尾対象被写体にピントを合わせ続けることができる。
【0042】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、複数のAF枠の設定のしかたと枠選択のしかたが第1の実施形態とは異なる。以下、図2と図9、図10を参照しながら、第2の実施形態における追尾中AF動作について説明する。
【0043】
図9は、図2におけるS202及びS206の追尾中AF動作の第2の実施形態を説明するフローチャートである。まず、S901では、現在位置を中心にスキャン範囲(1)を設定してS902へ進む。ここで、スキャン範囲(1)は、ピント変動によりライブ画像の見栄えが悪化しないように考慮して、AF精度が確保できる範囲で、できるだけ微小な範囲とする。S902では、S901で決定したスキャン範囲(1)に基づいて、スキャン開始位置へフォーカスレンズ104を移動してS903へ進む。S903では、被写体追尾部120で得られる追尾情報を取得してS904へ進む。ここで、追尾情報とは、画面を複数のブロックに分割した中で、色情報や輝度情報により追尾被写体を含むブロックであると判断した領域(以下、追尾被写体領域と記す)のことであり、さらに判断に用いた画像フレームを露光したタイミングと対応付けて記憶しておく。例えば、図10(A)の(a)の実線で囲まれている領域が追尾被写体領域であると判断された場合は、その領域と、判断に用いたフレームの露光タイミングt=t0を対応付けて記憶しておく。
【0044】
S904では、S903で取得した追尾情報に基づいて、複数のAF枠を設定してS905へ進む。ここで、複数のAF枠の設定は、例えば、図10(B)の(a)に示すように、追尾被写体領域(図10(B)の(b))の重心位置を中心としてN×M個を設定する(図10(B)の(a)ではN=7、M=7)。この追尾被写体領域(図10(B)の(b))は、図10(A)の(a)と同じ領域である。また、各AF枠は、追尾被写体領域の判断時に使用した画面分割ブロックのサイズや位置に合わせて設定する。
【0045】
S905では、S904で設定した複数のAF枠の各AF枠において現在のフォーカスレンズ104の位置における焦点評価値を、DRAM110へ記憶させて、S906へ進む。ここで、焦点評価値は、焦点評価値を取得した画像フレームを露光したタイミング(例えばt=t1)と対応付けて記憶しておく。S906ではフォーカスレンズ104の現在位置を取得してCPU112がその現在位置のデータをDRAM110へ記憶させてS907へ進む。
【0046】
S907では、S903と同様に被写体追尾部120で得られる追尾情報を取得してS908へ進む。例えば、図10(C)の(b)の斜線領域が追尾被写体領域であると判断された場合は、その追尾被写体領域と、判断に用いたフレームの露光タイミングt=t1を対応付けて記憶しておく。
【0047】
S908では、CPU112がフォーカスレンズ104の現在位置がスキャン終了位置と等しいかを調べ、両者が等しい場合にはS910へ進み、そうでなければS909へ進む。S909では、AF処理部105がフォーカスレンズ104をスキャン終了方向へ向かって所定量だけ移動させた後、S904に戻る。S910では、S905で取得した焦点評価値と、S903及びS907で取得した追尾情報に基づいて、同一画像フレームにおいて追尾被写体領域と領域が一致するAF枠を選択する。そして、それらの焦点評価値を演算することで新たな焦点評価値を算出してS911へ進む。

例えば、S904で設定した複数のAF枠が図10(C)の(a)のように設定されていれば、焦点評価値を取得した画像フレームを露光したタイミングt=t1では、この時点における被写体の位置に関係なく、S904で設定したAF枠における焦点評価値が求められ、記憶される。その後、被写体追尾部120がタイミングt=t1の画像フレームから追尾被写体領域(図10(C)の(b))を選択すると、記憶した焦点評価値のうち、この新たに選択された追尾被写体領域における焦点評価値を読み出して加算したものを新たな焦点評価値とする。ここで、追尾被写体領域と領域が一致するAF枠が1枠しかないなど、AF精度が確保できないような場合は、周辺のAF枠を所定数加算して加算値を求めてもよい。
【0048】
ここで、タイミングt=t1の画像フレームから追尾被写体領域を検出した後に、タイミングt=t1の画像フレームのAF枠における焦点評価値を求める構成としていない理由について説明する。被写体追尾部120は、画像から輝度情報および色情報の少なくとも一方を求め、かつ、予め記憶した追尾被写体領域と最も相関の高くなる領域を抽出するという演算を行うため、AF枠の焦点評価値を求めることよりも処理に時間がかかる。そのため、追尾被写体領域を検出してから、AF枠を設定して焦点評価値を求めようとすると、焦点評価値を求めるためにその画像フレームを別のメモリに記憶させておかなければならない。これに対し、本実施形態のように、前の画像フレームにおいて設定されたAF枠における焦点評価値を求める構成とすれば、焦点評価値を求めるために画像フレームを別のメモリに記憶させておく必要がなくなるという利点がある。
【0049】
S911では、S910で算出した焦点評価値がピークとなる合焦位置を算出してS912へ進む。S912では、前述した合焦判定を行い、S913へ進む。S913では、S912で判定した結果×判定かどうかを調べ、×判定であればS915へ進み、そうでなければS914へ進む。S914では、焦点評価値のピーク位置へフォーカスレンズを移動して本処理を終了する。S915では、S301で設定したスキャン範囲(1)の中心位置へフォーカスレンズ104を移動させて本処理を終了する。
【0050】
以上説明したように第2の実施形態によれば、過去の追尾情報に基づいて複数のAF枠を設定して焦点評価値を取得しておき、現在の追尾情報に基づいて複数のAF枠の中からAF枠を選択して新たな焦点評価値を算出することで、無駄に処理時間を増大させることなく、動いている追尾対象被写体にピントを合わせ続けることができる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系により結像された被写体像を光電変換する撮像素子と、
前記撮像素子の出力信号から得られた画像の色情報および輝度情報の少なくとも一方に基づいて、前記撮像素子の画面上における、焦点を合わせようとする対象被写体の存在する領域である被写体領域を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記被写体領域を基準として、前記撮像光学系の合焦状態を検出するための領域である複数の焦点検出領域を設定する設定手段と、
前記複数の焦点検出領域の中から前記対象被写体が存在する焦点検出領域を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された焦点検出領域における前記撮像素子の出力信号に基づいて、前記撮像光学系を移動させて焦点調節を行う焦点調節手段と、を備え、
前記複数の焦点検出領域の全範囲は前記被写体領域よりも広く、かつ、前記複数の焦点検出領域の各々は前記被写体領域の設定可能な最小サイズよりも小さいことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記被写体領域の中心位置を中心として、前記複数の焦点検出領域を設定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記選択手段は、前記複数の焦点検出領域における被写体の距離情報に基づいて、前記対象被写体が存在する焦点検出領域を選択することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記複数の焦点検出領域における被写体の色情報および輝度情報の少なくとも一方に基づいて前記対象被写体が存在する焦点検出領域を選択することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記選択手段は、前記複数の焦点検出領域について前記撮像光学系の合焦状態を示す焦点評価値を取得した画像と同じ画像における被写体の色情報および輝度情報の少なくとも一方に基づいて、前記対象被写体が存在する焦点検出領域を選択することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記焦点調節手段は、前記選択手段で選択した焦点検出領域における前記撮像素子の出力信号の加算値に基づいて焦点調節を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−58724(P2012−58724A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132710(P2011−132710)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】