説明

撮像装置

【課題】 動画撮影時に、被写体の輝度変化に対応したゲイン設定を行うと共に、ゲイン設定切換え時に生じる撮影画像の輝度変化による画像劣化を低減すること。
【解決手段】 第1の増幅手段と、第2の増幅手段との出力の合計が入射光量に基づく露出制御手段の出力である制御ゲインによって決定され、ゲイン制御手段の行う第1及び第2の増幅手段の各々に設定される第1及び第2のゲインの各々のゲイン切換えを、ゲイン制御手段が算出する制御ゲインの所定時間毎の出力変化量と、ヒストグラム算出手段によって撮影画像のヒストグラムからの検出された黒レベル領域結果に基づいて、黒レベル領域判定手段が判定する黒レベル領域判定結果とから、制御ゲインの所定時間毎の出力変化量が所定の閾値以上かつ黒レベル領域判定手段の黒レベル領域判定結果が所定の割合以下と判断された場合に、第1及び第2の増幅手段の第1及び第2のゲインを切り換えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びその制御方法に関し、詳しくは、動画撮影時の撮像装置の感度制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CCD、CMOS等の固体撮像素子を用いたデジタルビデオカメラでは、撮影シーンの輝度変化に基づき自動的に感度を制御し、適正露出で撮影可能な機能(以下、自動露出制御機能)を備えている。この自動露出制御機能は、光学的な絞り・ND制御および時間的な電子シャッター制御、更にはカメラ内部の電気信号を増幅する電気的なゲイン制御によって入射光量の調節を実現している。電気信号のゲイン制御は信号レベルと同時にノイズレベルも同様に増幅してしまうため、自動露出制御機能は、絞り・ND制御と電子シャッター制御での入射光量の調節を優先的に行うことが一般的である。
【0003】
しかしながら、撮影シーンの照度が低く、絞り・ND制御と電子シャッター制御では十分な光量が得られない場合には電気信号のゲイン制御が必須となる。この電気信号のゲイン制御には、いくつかの方法があり、例えば、信号処理系統内に複数設けられた増幅手段の前段で大きくゲインをかけ、後段で前段より刻み幅の細かいゲインをかけることによって、ノイズの少ない画像を得るというものがある。
【0004】
具体的には、撮像素子のレイアウト構成上、ゲインの設定が1倍、2倍、4倍等の離散的となる撮像素子内部に設ける前段のアナログ増幅手段と、前記アナログ増幅手段より細かい刻み幅のゲイン設定が可能な撮像素子より後段の電気回路に設けるデジタル増幅手段とを、各々備える構成とする。前述の構成において、後段のデジタル増幅手段の細かい刻み幅のゲイン制御を行い、所定時間経過後に撮像素子内部のアナログ増幅手段の離散的なゲイン制御を組み合わせることで増幅時のノイズの影響を低減しつつ、連続的なゲイン制御を可能とする撮像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、他の提案として、ゲイン分割ステップの大きい第1の増幅手段とゲイン分割ステップのより小さい第2の増幅手段を備え、二つの増幅手段のゲイン特性が線形な特性となるように、前記第1の増幅手段のゲイン切換えを考慮して、前記第2の増幅手段のゲインを変化させる撮像装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
前述の特許文献1は、動画撮影時の輝度変化を滑らかにするため、被写体の輝度が低下してからあらかじめ設定された時間の間は、アナログ増幅手段のゲインは変えずに、後段のデジタル増幅手段のゲインによってゲイン調節を行う。その後、被写体の輝度が変化してから変化した輝度レベルのままあらかじめ設定した時間が経過したら、アナログ増幅手段のゲインを変えるとともにデジタル増幅手段のゲインも変え、最終的なトータルゲインが変わらないゲイン制御を行うように制御を可能としている。
【0007】
また、前述の特許文献2は、動画撮影時の輝度変化を滑らかにするため、第1および第2の二つの増幅手段のゲイン特性が線形な特性となるように、前記第1の増幅手段のゲイン切換えを考慮して、前記第2の増幅手段のゲインを変化させている。そして、ゲイン分割ステップの大きい第1の増幅器のゲイン切換り時に生じるノイズを含む映像信号部分を有する映像フレーム信号を、他のフレーム信号に置き換えることで、映像信号に生じるノイズの影響をなくすことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−049981号公報
【特許文献2】特許第03573442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1では、動画撮影時の輝度の変化に対して、あらかじめ設定された時間の間は前段のアナログ増幅手段によるゲイン変更をせず、後段のデジタル増幅手段のみでゲイン調節を行い、その後、被写体の輝度変化が変化した輝度レベルのままあらかじめ設定された時間経過後に、アナログ増幅手段のゲインを変えるとともにデジタル増幅手段のゲインも変え、最終的なトータルゲインが変わらないゲイン調節を行うように制御するため、以下のような問題があった。
【0010】
例えば、アナログ増幅手段とデジタル増幅手段のゲイン切換えを、被写体の輝度が変化した輝度レベルのままあらかじめ設定された時間経過後の輝度レベルが安定した状態で行っているので、ゲイン切換え時の切換えノイズが目立つ場合がある。
【0011】
また、動画撮影時の輝度の変化に対して、あらかじめ設定された時間の間は前段のアナログ増幅手段のゲイン変更量を所望のゲイン変更量の半分程度とし、前段のアナログ増幅手段のゲインに不足する分を後段のデジタル増幅手段によってゲイン調節を行い、その後、被写体の輝度変化が変化した輝度レベルのままあらかじめ設定された時間経過後に、アナログ増幅手段のゲインを更に変えるとともにデジタル増幅手段のゲインも変え、最終的なトータルゲインが変わらないゲイン調節を行うように制御するため、以下のような問題があった。
【0012】
アナログ増幅手段とデジタル増幅手段のゲイン切換えを、被写体の輝度が変化した輝度レベルが変化した時点と、被写体の輝度が変化した輝度レベルのままあらかじめ設定された時間経過後に行っているので、ゲイン切換え時の切換えノイズが複数回発生して目立つ場合がある。
【0013】
また、上記特許文献2では、ゲイン分割ステップの大きい第1の増幅器のゲイン切換り時に生じるノイズを含む映像信号部分を有する映像フレーム信号を、直前のフレーム信号に置き換えることで、映像信号に生じるノイズの影響をなくすとしているため、以下のような問題があった。
【0014】
例えば、撮影時の撮像装置は定点撮影とは限らず、パンニングやチルティング(以下、パンニング)、画角変更など、ユーザーの意図による操作がなされる。従って、撮影シーンによっては輝度変化が大きく生じる場合があり、ゲイン制御の追従が収束するまでに時間を要し、増幅手段のゲイン切換え時に生じるノイズを含む映像信号部分を有するフレーム信号の連続性が乏しくなるような場合は、直前のフレーム信号に置き換えてもゲイン切換えノイズがなくなる効果が弱くなる。または、フレーム信号間の相関がなくなり逆にノイズが生じてしまう。
【0015】
したがって、本出願に係る目的は、低照度の被写体を撮影する場合に、離散的なゲイン設定のアナログ増幅手段と、前記アナログ増幅手段より細かい刻みのゲイン設定可能なデジタル増幅手段とのゲイン設定切換えを、入射光量に基づいて決定されるトータルゲインの所定期間中のゲイン変化量と撮影画像のヒストグラムから検出した黒レベル領域の割合に基づいて行い、アナログ増幅手段のゲイン切換えノイズが目立つことを低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本出願に係る発明は、撮像光学手段と、前記撮像光学手段によって集光される入射光を電気信号へ変換する撮像手段と、前記電気信号を第1のゲインで増幅する第1の増幅手段と、前記第1の増幅手段の出力を前記第1のゲインより細かい刻み幅の第2のゲインで増幅する第2の増幅手段と、前記第1の増幅手段の出力と、前記第2の増幅手段の出力の合計が、前記撮像素子への入射光量に基づいて決定される制御ゲインを算出する露出制御手段と、前記露出制御手段の出力からヒストグラムを算出するヒストグラム算出手段と、前記ヒストグラム算出手段のの出力に基づき撮影画像に占める黒レベル領域の割合を判定する黒レベル領域判定手段と、前記露出制御手段の出力と前記黒レベル領域判定手段の出力に基づき、前記第1の増幅手段と前記第2の増幅手段の各々のゲイン設定を制御するゲイン制御手段と、を備え、前記ゲイン制御手段は、前記露出制御手段の所定時間毎の出力変化量を算出し、該出力変化量が所定値以上と判断された場合及び前記黒レベル判定手段の判定する黒レベル領域が撮影画角の所定の割合以下の場合に、第1の増幅手段のゲイン設定を切換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本出願に係る発明によれば、低照度の被写体を撮影する場合に、離散的なゲイン設定の第1の増幅手段と、前記第1の増幅手段より細かい刻みのゲイン設定可能な第2の増幅手段とのゲイン設定切換えを、入射光量に基づいて決定される露出制御手段の出力である制御ゲインの所定期間中のゲイン変化量と撮影画像のヒストグラムから検出した黒レベル領域の割合に基づいて行うようにしたので、第1の増幅手段と第2の増幅手段のゲイン切換え時の輝度変化による撮影画像への影響度を低減するこが可能となり、撮影画像の品質が向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の第1の形態に係わる撮像装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】第1のゲイン、第2のゲイン及び制御ゲインの関係を説明する図である。
【図3】撮影画像から算出されるヒストグラムの一例を示した図である。
【図4】入射光量に対する垂直同期周期期間の制御ゲイン変化量を模式的に示した図である。
【図5】第1の実施形態の制御ゲイン設定処理のフローチャートである。
【図6】撮影画像の黒レベル領域を判定する一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示したブロック図である。なお、本実施形態では、ビデオカメラについて説明するが、本発明は、デジタルスチルカメラ等の他の撮像装置にも適用することが可能である。
【0021】
図1において、101は被写体を撮影する撮影レンズであり、画角変更を行うズームレンズ、焦点調節を行うフォーカスレンズ、入射光量を調節する絞り及びND等の駆動部を備えている。102は前記撮像レンズの各駆動部を動作させる駆動回路であるレンズドライバ、103は撮像装置の動作指示をする操作スイッチ群、104は前記撮影レンズ101によって結像された被写体像を電気信号に変換する撮像素子、105は前記撮像素子104内部において前記撮影レンズ101が集光する入射光を電気信号に変換する光電変換部、106は前記光電変換部105で光電変換された電気信号を増幅する第1の増幅部、107は前記撮像素子104の出力に相関二重サンプリングを行うCDS部及びアナログ画素信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換部を含むAFE、108は前記AFE107の出力に所定の信号処理を施すマイクロコンピュータ(以下、マイコン)である。
【0022】
次に、前記マイコン108内に構成される処理ブロックを説明する。
【0023】
109は前記AFE107でA/D変換されたデジタル画像信号の縦線補正データを生成するセンサ補正部、110は前記センサ補正部109の出力を適正な輝度レベルにするためにデジタル的に増幅する第2の増幅部、111は前記第2の増幅部110の出力である輝度レベルの変動を適正に保つための制御を行う露出制御部、112は前記露出制御部111の出力に、γ・アパーチャ・カラーバランス等の画像処理を施し所望の動画フォーマットに変換して後段の信号処理部へ出力する画像処理部である。前記画像処理部112の出力が後段の信号処理部へ供給され、不図示の表示部に表示がなされ、不図示の記録部によって画像の記録が行われることとなる。また、露出制御部111の出力は、後述するゲイン制御部113、レンズ駆動制御部114、ヒストグラム算出部115へも出力される。113は前記露出制御部111の出力と後述する黒レベル領域判定部116の出力から、前記第1の増幅部106、前記第2の増幅部110のゲイン設定を切換え制御するゲイン制御部、114は前記露出制御部111の出力によって前記撮像レンズ101に備えられる絞り/NDを前記レンズドライバ102を介して駆動するレンズ駆動制御部である。115は前記露出制御部111の出力からヒストグラムを算出し、黒レベル領域を検出するヒストグラム算出部である。116は前記ヒストグラム算出部の出力から黒レベル領域を算出し、撮影画像のに占める黒レベル領域の割合を判定する黒レベル領域判定部である。
【0024】
次に、上記のように構成される撮像装置の動作について説明する。撮影レンズ101によって結像された被写体像は入射光として撮像素子104に入力される。撮像素子104は、内部において入射光を電気信号に変換する光電変化部105と電気信号を増幅する第1の増幅部とで構成される。撮影レンズ101から入力された入射光は撮像素子104内部の光電変換部105によって光電変換がなされ電気信号へと変換される。次に、光電変換された電気信号は、撮像素子104内部の第1の増幅部106に入力され、所定量増幅され出力することになるが、第1の増幅部106のゲイン設定は撮像素子内部レイアウトの関係により、例えば、0[dB]、6[dB]、12[dB]のように離散的なゲイン設定となる。この離散的なゲインを第1のゲインと呼ぶことにする。また、この第1のゲインは撮影中、被写体像の輝度レベルによって切換えるが、その詳細は後述する。
【0025】
次に、撮像素子104の出力はAFE107に入力される。AFE107では、撮像素子104のノイズ・オフセット誤差を抑えるCDS処理、アナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換処理を施し、デジタル画像信号をマイコン108に出力する。
【0026】
次に、マイコン108に入力されたデジタル画像信号は、センサ補正部109にて縦線補正が施される。これは、CMOS撮像素子のような列毎に個別の列アンプを有するデバイスでは列アンプ毎のオフセット成分のバラツキによる縦線が生じるので、遮光されている垂直OB領域でライン毎に複数フレームを用いて列毎にクランプすることでオフセット除去し、縦線補正を行うものである。センサ補正部109によって縦線補正が施されたデジタル画像信号は、第2の増幅部110へ入力される。
【0027】
次に、第2の増幅部110では、入力されたデジタル画像信号を前述の第1の増幅部106の第1のゲインよりゲイン分割ステップの小さいゲインで所定量増幅される。この第2の増幅部110のゲイン分割ステップの小さいゲインを第2のゲインと呼ぶことにする。第2の増幅部110の出力は、第1の増幅部106の第1のゲインと第2の増幅部110の第2のゲインとの合計されたゲインによって増幅され、露出制御部111に入力される。
【0028】
次に、露出制御部111では、入力されたデジタル画像信号の輝度レベルが適正となるように撮像素子104に入力される入射光量を調節している。具体的には、第2の増幅部110から入力されたデジタル画像信号の輝度レベルに基づいて、レンズ駆動制御部114に駆動制御信号を出力し、レンズドライバ102を介して撮影レンズ101の備える絞りの開閉、不図示のND機構の挿入出を制御するのである。また、撮影シーンの照度が低下して、絞り開放、ND未挿入、電子シャッターを低速化しても適正露出を得られない場合に、露出制御部111はデジタル画像信号を増幅するための増幅信号をゲイン制御部113へ出力する。この増幅信号を制御ゲインと呼ぶことにする。
【0029】
制御ゲインを出力しデジタル画像信号を増幅すると、デジタル画像信号の輝度レベルが増幅されると同時にデジタル画像信号のノイズレベルも増幅されることとなり、S/N比劣化を生じるが低照度撮影には必須の制御である。露出制御部111から出力される制御ゲインはゲイン制御部113を介して、第1のゲインと第2のゲインに各々適切なゲイン設定が成され、第1の増幅部106と第2の増幅部110に供給される。
【0030】
次に、ゲイン制御部113によって制御ゲインが第1の増幅部106の第1のゲインと第2の増幅部110の第2のゲインの各々に適切なゲイン設定がされることについて図2を用いて説明する。図2は露出制御部111の出力する制御ゲインと第1の増幅部にかける第1のゲインと第2の増幅部にかける第2のゲインの関係を示した図であり、横軸は入射光量を、縦軸は各アンプのゲインを表している。図2では、右側ほど入射光量が少ない低照度であり、高いゲインをかける設定となっている。図2において、201は露出制御部111の出力する制御ゲインである。202は第1の増幅部106に設定される第1のゲインであり、撮像素子104内のアナログアンプのゲインであるため、例えば、6[dB]単位の分割ステップが大きい離散的なゲインとなっている。制御ゲイン201には第1のゲイン202の切換えを動的にするためgainTH1とgainTH2の2点の閾値が設定されている。この第1のゲイン202を動的に切換えることについての詳細は後述する。204は第2の増幅部110に設定される第2のゲインであり、マイコン108内のデジタルアンプのゲインであるため、第1のゲイン202より分割ステップが小さく小刻みなゲイン設定が可能である。また、図2からわかるように第1のゲインと第2のゲインの合計ゲインが制御ゲインとなるので、第1のゲインで調節できないゲイン分を第2のゲインによって調節することになる。
【0031】
例えば、撮影中、被写体の輝度が低下して制御ゲインが5[dB]から10[dB]に設定変更された場合、第1のゲインを6[dB]、第2のゲインを4[dB]に設定する。具体的には、第2のゲインを第1のゲインの最初のゲイン切換えステップの6[dB]までゲインを上げ、第2のゲインが6[dB]に達すると同時に、第1のゲインを6[dB]に切換え、第2のゲインは6[dB]ゲインを下げてからその後、第2のゲインで不足するゲイン分4[dB]のゲインをかけるように動作する。このように、低照度時に高感度設定が必要な環境下において、ゲイン分割ステップの大きな第1の増幅部106と、ゲイン分割ステップが小さな第2の増幅部110とを組み合わせて使用するとき、各々の増幅部に大きなゲイン変化があるため、そのゲイン変化時に撮影画像の輝度レベルが変動し、画面がちらつくようにみえる場合がある。この撮影画像の輝度レベルの変動によるちらつき(以下、輝度ちらつき)が目立つ頻度を低減させるために、本発明の撮像装置では、ゲイン制御部113に撮影画像に占める黒レベル領域情報を用いて、ゲイン切換えのタイミングを輝度変化の状態と撮影画像に占める黒レベル領域の割合に基づいて行うようにしている。
【0032】
ゲイン切換え時に生じる輝度ちらつきは撮影画像の輝度変化が緩やかな黒レベル領域が多い場合に目立ちやすいため、輝度変化の変化量が小さく撮影画像に占める黒レベル領域の割合が少ないときにゲイン切換えをして輝度ちらつきが目立つのを低減するのである。そのため、ゲイン制御部113は露出制御部111の出力以外に、ヒストグラム算出部115によって撮影画像のヒストグラム算出を行った後、黒レベル領域の撮影画像に占める割合を判定する黒レベル領域判定部116の出力も参照している。
【0033】
次に、ヒストグラム算出部115で算出する撮影画像のヒストグラムの一例を図3に示す。図3のヒストグラムは輝度レベルヒストグラムである。図3において、横軸は輝度値を、縦軸は画素数をとっており、画像中の画素の輝度値の分布示している。また、301は輝度値の低い画素を黒レベル領域として検出する閾値を示している。この閾値は、検討によって導かれた値を設定すればよい。
【0034】
次に、マイコン108の全体の処理内におけるゲイン制御部113でのゲイン切換えの処理について、図2、図4のグラフと図5のフローチャートを用いて説明する。
【0035】
図5において、処理が開始されるとまずステップS501にて制御ゲイン201が設定されたgainTH1以上かつgainTH1とgainTH2の二つのゲイン閾値の範囲内にあるか否かを判断する。この二つのゲイン閾値は、図2に記載の6[dB]と9[dB]に設定された閾値を指している。これは、第1及び第2のゲインの切換えを設定された二つのゲイン閾値の範囲内で動的に切換えるためである。制御ゲイン201が二つのゲイン閾値の範囲内にある場合は(yes)、ステップS503へ進み、制御ゲイン201が二つのゲイン閾値の範囲内にない場合は(no)、ステップS502へ進む。ステップS502では、制御ゲイン201が第2のゲイン203のみで画像信号のゲイン設定が可能な状態であるので、第2のゲインによるゲイン調節を行い、第1のゲインを切換えを実行しない。ステップS502の処理が終了したら、制御ゲイン201の設定処理を終了し、次の処理タイミングまで処理を待機する。
【0036】
次に、ステップS501の判断結果がステップS503進んだ場合(yes)を説明する。ステップS503へ進んだ場合は、制御ゲイン201の変動量を算出する。これは、所定期間、例えば、垂直同期信号周期期間(以下、V周期期間)でのゲイン変動量を算出して、輝度変化の大きさを把握するためである。制御ゲイン201のゲイン変動量を算出したら、ステップS504へ進む。
【0037】
ここで、図4に入射光量に基づく制御ゲイン201のV周期期間におけるゲイン変化量を説明するための模式図を示す。図5において、横軸は時間であるV周期期間を、縦軸はゲインをとっている。201a、201bは入射光量に基づく制御ゲインであり、201aは入射光量が急激に減少した場合を、202bは入射光量が緩やかに変化した場合を示している。501、502は制御ゲイン201a、201bのV周期期間におけるゲイン変化量であり、この変化量501、変化量502が予め設定されるゲイン変化量の閾値と比較されることになる。gainTH1とgainTH2は第1のゲイン202の切換えをするための閾値である。
【0038】
図5のフローチャートに戻り、説明を続ける。
【0039】
次に、ステップS504では、撮影画像のヒストグラムから黒レベルの領域を検出する。これは、ヒストグラム算出部115で撮影画像が予め定められたブロックに分割されたブロック毎にヒストグラムを算出し、前述したヒストグラムのグラフに示した黒レベル領域の閾値より輝度値が低い黒レベル領域が多いブロックを検出するのである。黒レベル領域の検出が完了したら、ステップS505へ進む。
【0040】
次に、ステップS505では、制御ゲイン201のゲイン変動量が所定値以上か否かを判断している。これは、ステップS503で算出した制御ゲイン201の変動量が所定値以上か否かによって輝度変化のレベルの大小を判断しているのである。この判断は、第1及び第2のゲインの切換えによる輝度変化による輝度ちらつきが、輝度変化のレベルが大きい場合より小さい場合の方が目立ちやすいためで、第1及び第2のゲインの切換えを輝度変化のレベルが大きい時に行い、輝度ちらつきが目立つことを低減するためである。ここで設定するゲイン変動量の所定値は検討などから導き出した値を閾値として設定すればよい。ステップS505でゲインの変動量が所定値以上の場合は(yes)、ステップS506に進み、ステップS506では、第1のゲイン及び第2のゲインを切換えて、制御ゲイン201の設定処理を終了し、次の処理タイミングまで待機する。
【0041】
次に、ステップS505の判断結果がゲインの変動量が所定値以下の場合は(no)の説明をする。ステップS507では、ステップS504で検出した黒レベル領域が撮影画像に占める割合を判定している。複数ブロックに分割された全ブロックに黒レベル領域のブロックが占める割合が閾値として設定されている。撮影画像の黒レベル領域の判定の一例を、図6(a)、図6(b)、図6(c)に示す。図6(a)は撮影画像の元画像であり、元画像を図6(b)のように予め設定された複数ブロックに分割して、ブロック毎にヒストグラムが算出されている。算出されたヒストグラムから、ブロック毎に数値化し(例では10段階で示している)、黒レベルの領域が多いブロックが全ブロックに占める割合を黒レベル領域判定部116で判定するのである。黒レベル領域が撮影画像の所定の割合以上(例えば、75%以上)であれば(yes)、ステップS508に進み、ステップS508では、制御ゲイン201の変動量が小さく、撮影画像に占める黒レベル領域が所定の割合以上であったので、輝度ちらつきを低減するために第1のゲインを切換えないで処理を終了し、次の処理タイミングまで待機する。
【0042】
次に、ステップS507での判断が、撮影画像に占める黒レベル領域が所定の割合以下であったので、ステップS509へ進む。
【0043】
次に、ステップS509では、ステップS505での制御ゲイン201が第1のゲイン切換え閾値であるgainTH2以下か否かを判断している。これは、ステップS505での判断が、輝度変化のレベルが小さいとなり、さらに、ステップS507での判断が、撮影画像に占める黒レベル領域が所定の割合以下となったため、撮影画像の輝度ちらつきが目立つことを低減するために、第1及び第2のゲイン切換えを第1のゲイン切換え閾値gainTH2以上となるまで遅らせる処理である。第1及び第2のゲイン切換えを可能な限り遅らせることで、撮影画像の輝度ちらつきの発生頻度を低減させようとするものである。
【0044】
ステップS509の判断結果が、制御ゲイン201がgainTH2以下であれば(yes)、ステップS501に進み処理を繰り返す。ステップS509の判断結果が、制御ゲイン201がgainTH2以上であれば(no)、ステップS510へ進み、ステップS510では、第1のゲイン及び第2のゲインを切換えて、制御ゲイン201の設定処理を終了し、次の処理タイミングまで待機する。
【0045】
こうして、露出制御部111によって入射光量の変化に基づく適正な露出制御が施されたデジタル画像信号を画像信号処理部113へ出力する。
【0046】
次に、露出制御部111によって適正な露出制御が施されたデジタル画像信号は画像信号処理部113へ入力される。
【0047】
次に、画像信号処理部113では、入力されたデジタル画像信号にγ・アパーチャ・カラーバランス等の各画像処理を施し所望の動画フォーマットに変換して後段の信号処理部へ出力する。出力された画像処理後の画像信号は、不図示の表示部にモニター画像として表示されたり、不図示の記録部に記録されることとなる。
【0048】
以上、説明したように第1の増幅部106の出力と、第2の増幅部110の出力との合計が入射光量に基づく露出制御部111の出力である制御ゲインによって決定され、第1の増幅部に設定される第1のゲインと第2の増幅部に設定される第2のゲインの各々のゲイン切換えを、制御ゲインの所定期間の変動量と、撮影画像に占める黒レベル領域の割合とに基づき行うこととした。そうすることで、被写体輝度が低下した撮影での第1のゲインと第2のゲインの各々のゲイン切換えで生じる撮影画像の輝度ちらつきが目立つ頻度を低減することが可能となった。また、第1の増幅部に設定される第1のゲインと第2の増幅部に設定される第2のゲインの各々のゲイン切換えを、入射光量のV周期期間中の制御ゲイン変化量と、撮影画像に占める黒レベル領域の割合とに基づいて第1の増幅部に設定される第1のゲインと第2の増幅部に設定される第2のゲインの各々のゲイン切換えのポイントを二つの閾値の範囲内で行うようにした。そうすることで輝度変化のレベルが小さく、黒レベル領域が多い場合は、ゲイン切換えを行わず、輝度変化のレベルが小さく、黒レベル領域が少ない場合は、可能な限りゲイン切換えを遅らせることが可能で、ゲイン切換え時の輝度ちらつきの発生頻度を低減することが可能となった。
【0049】
<他の実施形態>
前述第1の実施形態では、第1の増幅部106の出力と、第2の増幅部110の出力との合計が入射光量に基づく露出制御部111の出力である制御ゲイン201によって決定され、第1の増幅部106に設定される第1のゲインと第2の増幅部110に設定される第2のゲインの各々のゲイン切換えを、制御ゲイン201の所定期間の変動量と、撮影画像のヒストグラムを算出し、黒レベル領域を検出し、黒レベル領域の撮影画像全体に占める割合とに基づいて行うようにした。そうすることで、ゲイン切換えで生じる撮影画像の輝度ちらつきが目立つ頻度を低減可能なことについて説明した。
【0050】
他の実施形態では、黒レベル領域の撮影画像全体に占める割合と黒レベル領域が撮影画像の中心部にある場合や、周辺部のある場合のゲイン切換えを行うようにしてもよい。
【0051】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。例えば、黒レベル領域が撮影画像の中心部にある場合は、被写体を画角中心に撮影することが一般的なので、ゲイン切換えを行わなくするとしてもよい。
【0052】
また、上述の実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、記録媒体から直接、或いは有線/無線通信を用いてプログラムを実行可能なコンピュータを有するシステム又は装置に供給し、そのプログラムを実行する場合も本発明に含む。
【0053】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給、インストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明に含まれる。
【0054】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0055】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリでもよい。
【0056】
また、プログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバに本発明を形成するコンピュータプログラムを記憶し、接続のあったクライアントコンピュータはがコンピュータプログラムをダウンロードしてプログラムするような方法も考えられる。
【符号の説明】
【0057】
101‥‥撮影レンズ
102‥‥レンズドライバ
103‥‥操作部
104‥‥撮像素子
105‥‥撮像素子内部の光電変換部
106‥‥撮像素子内部の第1の増幅部
107‥‥AFE
108‥‥マイコン
109‥‥センサ補正部
110‥‥第2の増幅部
111‥‥露出制御部
112‥‥画像信号処理部
113‥‥ゲイン制御部
114‥‥レンズ制御部
115‥‥ヒストグラム算出部
116‥‥黒レベル領域判定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学手段と、
前記撮像光学手段によって集光される入射光を電気信号へ変換する撮像手段と、
前記電気信号を第1のゲインで増幅する第1の増幅手段と、
前記第1の増幅手段の出力を前記第1のゲインより細かい刻み幅の第2のゲインで増幅する第2の増幅手段と、
前記第1の増幅手段の出力と、前記第2の増幅手段の出力の合計が、前記撮像素子への入射光量に基づいて決定される制御ゲインを算出する露出制御手段と、
前記露出制御手段の出力からヒストグラムを算出するヒストグラム算出手段と、
前記ヒストグラム算出手段のの出力に基づき撮影画像に占める黒レベル領域の割合を判定する黒レベル領域判定手段と、
前記露出制御手段の出力と前記黒レベル領域判定手段の出力に基づき、前記第1の増幅手段と前記第2の増幅手段の各々のゲイン設定を制御するゲイン制御手段と、を備え、
前記ゲイン制御手段は、前記露出制御手段の所定時間毎の出力変化量を算出し、該出力変化量が所定値以上と判断された場合及び前記黒レベル判定手段の判定する黒レベル領域が撮影画角の所定の割合以下の場合に、第1の増幅手段のゲイン設定を切換えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記ゲイン制御手段は、前記第1のゲイン切換えのゲイン幅があらかじめ設定されており、前記制御ゲインに基づくゲイン設定変更ポイントが該ゲイン幅の範囲内にあるときは、前記黒レベル領域判定手段による判定結果が所定の割合以下と判定された場合は、前記露出制御手段の出力変化量の大きさに基づいて、前記第1のゲインを切換えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記ゲイン制御手段は、前記第1のゲイン切換えのゲイン幅があらかじめ設定されており、前記制御ゲインに基づくゲイン設定変更ポイントが該ゲイン幅の範囲内にあるときは、前記黒レベル領域判定手段による判定結果が所定の割合以上と判定された場合は、前記露出制御手段の出力変化量の大きさに基づいて、前記第1のゲインを切換えないことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記ゲイン制御手段は、前記第1のゲイン切換えのゲイン幅があらかじめ設定されており、前記制御ゲインに基づくゲイン設定変更ポイントが該ゲイン幅の範囲内にあるときは、前記黒レベル領域判定手段による判定結果が所定の割合以下かつ撮影画角の周辺部であると判定された場合は、前記露出制御手段の出力変化量の大きさに基づいて、前記第1のゲインを切換えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記ゲイン制御手段は、前記第1のゲイン切換えのゲイン幅があらかじめ設定されており、前記制御ゲインに基づくゲイン設定変更ポイントが該ゲイン幅の範囲内にあるときは、前記黒レベル領域判定手段による判定結果が所定の割合以上かつ撮影画角の中央部であると判定された場合は、前記露出制御手段の出力変化量の大きさに基づいて、前記第1のゲインを切換えないことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−106228(P2013−106228A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249330(P2011−249330)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】