撮像装置
【課題】視点間のクロストークに起因する画質劣化を抑制することが可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、撮像レンズと、撮像レンズの通過光線を互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、複数の画素を有すると共に、各画素において視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく画素信号を得る撮像素子と、複数の画素から得られた画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制する補正を行う補正部とを備える。
【解決手段】撮像装置は、撮像レンズと、撮像レンズの通過光線を互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、複数の画素を有すると共に、各画素において視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく画素信号を得る撮像素子と、複数の画素から得られた画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制する補正を行う補正部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズアレイを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な撮像装置が提案され、開発されている(非特許文献1)。また、撮像信号に対し、所定の画像処理を施して出力するようにした撮像装置も提案されている。例えば、特許文献1および非特許文献1には、「Light Field Photography」と呼ばれる手法を用いた撮像装置が提案されている。この撮像装置は、撮像レンズとイメージセンサとの間に、レンズアレイを配置したものである。被写体からの入射光線は、レンズアレイにおいて各視点の光線に分離された後、イメージセンサで受光される。イメージセンサから得られる画素信号を用いて、同時刻に多視点の画像を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−021683号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ren.Ng、他7名,「Light Field Photography with a Hand-Held Plenoptic Camera」,Stanford Tech Report CTSR 2005-02
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような撮像装置では、レンズアレイの1つのレンズを通過した光線は、イメージセンサ上のm×n(m,nは1以上の整数、但しm=n=1を除く)の画素において受光される。各レンズに対応する画素数(m×n個)分の視点画像を得ることができる。
【0006】
従って、レンズアレイとイメージセンサとの間で相対的な位置ずれが生じると、互いに異なる視点からの光線が同一の画素で受光されてしまい、光線のクロストーク(以下、視点間クロストーク、あるいは単にクロストークという)が生じる。このような視点間クロストークは、例えば被写体の画像が二重像になる等、画質劣化を招くことから、抑制されることが望まれしい。
【0007】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、視点間のクロストークに起因する画質劣化を抑制することが可能な撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の撮像装置は、撮像レンズと、撮像レンズの通過光線を互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、複数の画素を有すると共に、各画素において視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく画素信号を得る撮像素子と、複数の画素から得られた画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制する補正を行う補正部とを備えたものである。
【0009】
本開示の撮像装置では、撮像レンズの通過光線は、視点分離素子によって複数の視点からの光線に分離され、撮像素子の各画素において受光されることにより、その受光量に基づく画素信号が得られる。視点分離素子と撮像素子との相対的な位置ずれが生じた場合、その位置ずれに起因して視点間クロストークが生じるが、各画素から得られた画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制する補正を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の撮像装置によれば、撮像レンズの通過光線を、視点分離素子によって複数の視点からの光線に分離し、撮像素子の各画素において受光することにより、その受光量に基づく画素信号を得ることができる。視点分離素子と撮像素子との相対的な位置ずれが生じた場合であっても、各画素から得られた画素信号の一部または全部を用いた補正により、視点間クロストークを抑制することができる。よって、視点間クロストークに起因する画質劣化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示の一の実施の形態に係る撮像装置の全体構成を表す図である。
【図2】イメージセンサとレンズアレイとの理想的な配置について表す模式図である。
【図3】視点分離について説明するための模式図である。
【図4】イメージセンサにより取得される撮像信号を表す模式図である。
【図5】図3に示した撮像信号に基づいて生成される各視点画像を説明するための模式図である。
【図6】視点画像の一例を表す模式図である。
【図7】イメージセンサとレンズアレイとの相対的な位置ずれ(X方向に沿って生じたずれ)について示す模式図である。
【図8】図7の位置ずれが生じた場合の各画素への入射光線の模式図である。
【図9】CT補正部の機能構成を説明するためのブロック図である。
【図10】(A)〜(C)は、X方向に沿った各ラインにおける1次変換の行列演算式の一例を表したものである。
【図11】(A),(B)は、X方向の中央ラインの画素信号の集合に着目した場合の表現行列の導出について説明するための模式図である。
【図12】変形例1に係るイメージセンサとレンズアレイとの相対的な位置ずれ(Y方向)について表した模式図である。
【図13】(A)〜(C)は、Y方向に沿った各ラインにおける1次変換の行列演算式の一例を表したものである。
【図14】変形例2に係るイメージセンサとレンズアレイとの相対的な位置ずれ(XY平面において生じたずれ)について示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(X方向に沿った各ラインの画素信号の集合に対して1次変換を施す撮像装置の例)
2.変形例1(Y方向に沿った各ラインを補正対象とした場合の例)
3.変形例2(X,Y方向の各ラインを補正対象とした場合の例)
【0013】
<実施の形態>
[全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る撮像装置(撮像装置1)の全体構成を表すものである。撮像装置1は、いわゆる単眼方式のライトフィールドカメラであり、例えば被写体2を撮像して所定の画像処理を施すことにより、多視点の画像(画像信号Dout)を出力するものである。この撮像装置1は、撮像レンズ11、レンズアレイ12、イメージセンサ13、画像処理部14、イメージセンサ駆動部15、CT(クロストーク)補正部17および制御部16を備える。尚、以下では、光軸Z1に沿った方向をZとし、光軸Z1に直交する面内において、水平方向(横方向)をX、垂直方向(縦方向)をYとする。
【0014】
撮像レンズ11は、被写体2を撮像するためのメインレンズであり、例えば、ビデオカメラやスチルカメラ等で使用される一般的な撮像レンズにより構成されている。この撮像レンズ11の光入射側(または光出射側)には、開口絞り10が配設されている。
【0015】
レンズアレイ12は、撮像レンズ11の結像面(焦点面)に配置されることにより、入射光線を、互いに異なる視点からの光線として、画素単位で分離するための視点分離素子である。レンズアレイ12では、複数のマイクロレンズ12aがX方向(行方向)およびY方向(列方向)に沿って2次元配置されている。このようなレンズアレイ12では、各マイクロレンズ12aに割り当てられた画素数((イメージセンサ13の全画素数)/(レンズアレイ12のレンズ数))分の視点分離が可能である。換言すると、1つのマイクロレンズ12aに割り当てられた画素(後述のマトリクス領域U)の範囲内で画素単位での視点分離が可能である。尚、「視点分離」とは、換言すると、撮像レンズ11の通過光線が撮像レンズ11のどの領域を通過してきたものであるかをその方向性を含めて、イメージセンサの画素単位で記録しておくことである。このレンズアレイ12の結像面には、イメージセンサ13が配設されている。
【0016】
イメージセンサ13は、例えばマトリクス状に配列した複数の画素センサ(以下、単に画素という)を有し、レンズアレイ12を通過した光線を受光して撮像信号D0を取得するものである。撮像信号D0は、いわゆるRAW画像信号であり、イメージセンサ13上の各画素が受光した光強度を示す電気信号(画素信号)の集合である。このイメージセンサ13は、複数の画素がマトリクス状に(X方向およびY方向に沿って)配置したものであり、例えばCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)またはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子により構成されている。このイメージセンサ13の光入射側(レンズアレイ12の側)には、例えば図示しないカラーフィルタが設けられていてもよい。
【0017】
図2は、これらのレンズアレイ12とイメージセンサ13との理想的な配置例(相対的な位置ずれなし)を表したものである。この例では、1つのマイクロレンズ12aに対し、イメージセンサ13上の3×3の画素A〜I(マトリクス領域U)が割り当てられている。これにより、各マイクロレンズ12aを通過した光線は、マトリクス領域U内の各画素A〜I単位で視点分離されつつ受光されるようになっている。
【0018】
画像処理部14は、イメージセンサ13により取得された撮像信号D0に対して所定の画像処理を施し、例えば視点画像としての画像信号Doutを出力するものである。画像処理部14は、例えば、視点画像生成部と、デモザイク処理、ホワイトバランス調整処理およびガンマ補正処理等を行う画像補正処理部とを備えている。視点画像生成部は、詳細は後述するが、画素配列に対応して得られた撮像信号D0において選択的な画素信号同士を合成する(並べ替える)ことにより、互いに異なる複数の視点画像を生成する。
【0019】
イメージセンサ駆動部15は、イメージセンサ13を駆動してその露光や読み出しの制御を行うものである。
【0020】
CT補正部17は、視点間クロストークを抑制する補正を行う演算処理部である。尚、本明細書および本開示において、視点間クロストークとは、互いに異なる視点からの光線が同一の画素で受光されてしまうこと、即ち完全な視点分離ができず、視点の異なる光線が混在して受光されることを示す。この視点間クロストークは、レンズアレイ12とイメージセンサ13との距離と、イメージセンサ13およびレンズアレイ12の相対的な位置関係とに起因して生じる。特に、イメージセンサ13およびレンズアレイ12の相対的な位置関係が図2のような理想的な配置となるように位置合わせされていない場合、即ち位置ずれが生じている場合に、発生し易い。あるいは、この視点間クロストークは、イメージセンサ13およびレンズアレイ12と撮像レンズ11との3次元的な相対位置関係、およびマイクロレンズ12aの成形精度等にも影響を受ける。CT補正部17は、イメージセンサ13から得られた撮像信号D0のうち、選択的な画素信号の集合に対して1次変換を施すことにより、上記のような視点間クロストークを抑制する補正を行う。このCT補正部17の詳細な機能構成および補正動作については、後述する。
【0021】
制御部16は、画像処理部14、イメージセンサ駆動部15およびCT補正部17の各動作を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータなどにより構成されている。
【0022】
[作用、効果]
(撮像信号の取得)
撮像装置1では、撮像レンズ11の結像面にレンズアレイ12が設けられ、このレンズアレイ12の結像面にイメージセンサ13が設けられることにより、イメージセンサ13の各画素には、被写体2からの光線が、その強度分布に加え進行方向(視点)についての情報が保持された光線ベクトルとして記録される。即ち、レンズアレイ12を通過した光線は、視点毎に分離され、イメージセンサ13の異なる画素において受光される。
【0023】
例えば、図3に示したように、撮像レンズ11を通過してマイクロレンズ12aへ入射した光線のうち、互いに異なる視点における光線(光束)Ld,Le,Lfは、それぞれ互いに異なる3つの画素(D,E,F)において受光される。このように、マイクロレンズ12aに割り当てられたマトリクス領域Uでは、互いに異なる視点の光線が、画素毎に受光される。イメージセンサ13では、イメージセンサ駆動部15による駆動動作に応じて、例えばライン順次に読み出しが行われ、撮像信号D0が取得される。尚、この際、本実施の形態では、イメージセンサ13のX方向に沿ったライン単位で信号読み出しがなされ、撮像信号D0は、X方向に沿って画素信号が配列してなるライン信号の集合として取得される。
【0024】
図4は、このようにして得られた撮像信号D0(RAW画像信号)を模式的に表したものである。本実施の形態のように、1つのマイクロレンズ12aに3×3のマトリクス領域Uが割り当てられている場合、イメージセンサ13では、上述のようにマトリクス領域U毎に、計9つの視点の光線がそれぞれ互いに異なる画素(画素センサー)A〜Iにおいて受光される。このため、撮像信号D0は、マトリクス領域Uに対応した、3×3の配列の画素信号(図4中のUa)を含んでいる。尚、図4の撮像信号D0では、説明上、各画素信号に対応する画素A〜Iの符号を付している。各画素A〜Iから得られる画素信号は、イメージセンサ13上に設けられたカラーフィルタ(図示せず)の色配列に対応したカラーの信号として記録される。このような画素信号を有する撮像信号D0は、CT補正部17へ出力される。
【0025】
CT補正部17は、詳細は後述するが、撮像信号D0に対し、この撮像信号D0のうちの一部または全部の画素信号を用いて、視点間クロストークを抑制する補正を施す。クロストーク補正後の撮像信号(撮像信号D1)は、画像処理部14へ出力される。
【0026】
(視点画像の生成)
画像処理部14は、撮像信号D0に基づく撮像信号(CT補正部17から出力された撮像信号D1)に対し、所定の画像処理を行い、複数の視点画像を生成する。即ち、撮像信号D0に対し、各マトリクス領域U同士の間において互いに同一の位置にある画素から抽出される画素信号同士を合成する(撮像信号D1における各画素信号を並べ替える)。例えば、図4に示したようなRAW画像データの配列において、各マトリクス領域Uにおける画素Aから得られた画素信号同士を合成する(図5(A))。他の画素B〜Iから得られた画素信号についても同様の処理を行う(図5(B)〜(I))。このようにして、画像処理部14は、撮像信号D1に基づいて、複数の視点画像(ここでは、9つの視点画像)を生成する。このようにして生成された視点画像は、画像信号Doutとして外部あるいは図示しない記憶部へ出力される。尚、実際には、後述するように、各画素データには隣接画素で受光すべき光線についての信号成分も含んでいるが、図5(A)〜(I)では、説明上各画素データ「A」〜「I」のみを用いて、各視点画像を表している。
【0027】
尚、画像処理部14は、上記視点画像に対し、他の画像処理、例えばデモザイク処理等のカラー補間処理、ホワイトバランス調整処理、ガンマ補正処理等を施し、それらの画像処理後の視点画像信号を画像信号Doutとして出力してもよい。この画像信号Doutは、撮像装置1の外部へ出力されるようにしてもよいし、撮像装置1の内部に設けられた記憶部(図示せず)に記憶するようにしてもよい。
【0028】
但し、上記画像信号Doutは、視点画像に対応する信号であってもよいし、視点画像生成前の撮像信号D0であってもよい。即ち、上記のような視点画像生成処理(画素信号の並べ替え処理)を行わずに、イメージセンサ13から読み出された信号配列のままの撮像信号(クロストーク補正後の撮像信号D1)を外部へ出力するか、あるいは記憶部に記憶するようにしてもよい。
【0029】
ここで、図6(A)〜(I)に、図5(A)〜(I)の信号配列に対応する視点画像の一例(視点画像R1〜R9)を示す。被写体2の画像としては、奥行き方向において互いに異なる位置に配置された3つの被写体「人」,「山」,「花」の画像Ra,Rb,Rcを示している。視点画像R1〜R9は、上記3つの被写体のうち「人」に撮像レンズの焦点が合うようにして撮影されたものであり、「人」よりも奥にある「山」の画像Rbと、「人」よりも手前にある「花」の画像Rcとについてはデフォーカスした画像となっている。単眼方式の撮像装置1では、フォーカスした「人」の画像Raは、視点が変わってもシフトしないが、デフォーカスした画像Rb,Rcは、視点毎に互いに異なる位置にシフトする。尚、図6(A)〜(I)では、各視点画像間の位置シフト(画像Rb,Rcの位置シフト)を誇張して示している。
【0030】
これらの9つの視点画像R1〜R9は、互いに視差を有する多視点画像として様々な用途に利用可能であるが、これらの視点画像R1〜R9のうち、例えば左視点および右視点に対応する2つの視点画像を利用して、立体映像表示を行うことができる。例えば、図6(D)に示した視点画像R4を左視点画像、図6(F)に示した視点画像R6を右視点画像として用いることができる。このような左右2枚の視点画像を、所定の立体表示システムを用いて表示することにより、「山」は「人」よりも奥まって、「花」は「人」よりも手前に飛び出して、それぞれ観察される。
【0031】
ここで、撮像装置1では、上述のように、レンズアレイ12の1つのマイクロレンズ12aに、イメージセンサ13のマトリクス領域Uを割り当てて配置し、受光を行うことにより視点分離を行う。このため、各マイクロレンズ12aとマトリクス領域Uとが精度良く位置合わせされることが望ましい。また、レンズアレイ12およびイメージセンサ13と撮像レンズ11との相対的な位置精度やマイクロレンズ12aの成形精度についても、許容範囲内に納まっていることが望ましい。例えば、3×3のマトリクス領域Uに対して1つのマイクロレンズ12aを割り当てた場合、イメージセンサ13とレンズアレイ12とがサブミクロンオーダーの精度で位置合わせされていることが望ましい。これは、以下のような理由による。
【0032】
即ち、例えば図7に示したように、マトリクス領域Uとマイクロレンズ12aとの間に、X方向に沿った相対的な位置ずれ(dr)が生じている場合、実際には、異なる視点からの光線が同一画素で受光されてしまい、各画素信号に異なる視点成分の信号が混在してしまう。具体的には、図8に示したように、3つの視点成分の光線Ld,Le,Lfが、それぞれ対応する画素D,E,Fにおいてのみ受光されるのではなく、それぞれの一部が隣接する画素に跨って受光されてしまう。例えば、画素Dで受光されるべき光線Ldの一部が画素Eにおいて受光されてしまう。このような視点間クロストーク(Ct)が生じると、画像処理部14において生成される視点画像では、被写体の画像が二重像になる等の画質劣化が生じる。しかしながら、量産性等を考慮すると、上記のような位置ずれが生じないように、イメージセンサ13とレンズアレイ12との相対的位置精度をサブミクロンオーダーで確保することは非常に困難である。
【0033】
そこで、本実施の形態では、画像処理部14による画像処理動作を行う前(視点画像を生成する前)に、イメージセンサ13から出力された撮像信号D0に対し、次のようなクロストーク補正処理を行う。
【0034】
(視点間クロストーク補正)
図9は、CT補正部17の機能ブロック構成を表したものである。CT補正部17は、例えばRAWデータ分離部171、演算部172、行列パラメータレジスタ173およびライン選択部174を備えている。尚、本実施の形態では、X方向に沿ってレンズアレイ12とイメージセンサ13との相対的な位置ずれが生じており、撮像信号D0においてX方向に沿って配列する画素信号の集合に対して線形変換を施す場合について説明する。
【0035】
RAWデータ分離部171は、各画素A〜Iから得られた画素信号から構成される撮像信号D0を、複数のライン信号に分離する処理回路である。例えば、図4に示したように、撮像信号D0を、3行分のライン信号D0a(A,B,C,A,B,C,…)、D0b(D,E,F,D,E,F,…)、D0c(G,H,I,G,H,I…)に分離し、これらのライン信号D0a,D0b,D0cを、演算部172へ出力する。
【0036】
演算部172は、ライン信号D0a,D0b,D0cのそれぞれに対し、マトリクス領域Uの一部または全部の画素から得られた画素信号の集合に対して所定の線形変換(1次変換)を施すものであり、1次変換部172a,172b,172cを有している。これらの1次変換部172a,172b,172cは、入力されたライン信号D0a,D0b,D0cのそれぞれに対応した表現行列を保持している。表現行列としては、マトリクス領域Uの行方向および列方向の画素数以下の次元数を有する正方行列が用いられる。例えば、3×3の画素配列を有するマトリクス領域Uに対しては、3次元または2次元の正方行列を用いる。尚、2次元の正方行列を表現行列として用いる場合には、3×3のマトリクス領域Uのうちの一部(選択的な2×2の画素領域)についてのみ1次変換を施すか、あるいは2以上の画素を組み合わせたブロック領域を1画素と見做して、2×2の画素領域を形成してもよい。
【0037】
図10(A)〜(C)は、表現行列を用いた演算処理の一例を表したものである。図10(A)は、マトリクス領域Uにおける3つの画素A,B,Cに着目し、これらの画素信号に対する1次変換(ライン信号D0aに対する1次変換)について表したものである。同様に、図10(B)は、画素D,E,Fの画素信号に対する1次変換(ライン信号D0bに対する1次変換)について、図10(C)は、画素G,H,Iの画素信号に対する1次変換(ライン信号D0cに対する1次変換)についてそれぞれ表したものである。尚、各図において、XA(n)〜XI(n)は、画素A〜Iから得られた画素信号(受光感度値)であり、YA(n)〜YI(n)は、補正後の画素信号(クロストークがない場合の電気信号)に相当する。また、画素A,B,Cの画素信号の集合に対する1次変換の表現行列をMa、画素D,E,Fの画素信号の集合に対する1次変換の表現行列をMb、画素G,H,Iの画素信号の集合に対する1次変換の表現行列をMcとする。
【0038】
表現行列Ma,Mb,Mcは、この例では、3次元の正方行列(3×3の行列マトリクス)からなり、いずれも対角成分が「1」に設定されている。これらの表現行列Ma,Mb,Mcでは、対角成分以外の成分については、マトリクスパラメータとして適切な設定値が与えられる。具体的には、表現行列Ma,Mb,Mcのマトリクスパラメータ(a,b,c,d,e,f)(a’,b’,c’,d’,e’,f’)(a”,b”,c”,d”,e”,f”)はそれぞれ、行列パラメータレジスタ173a,173b,173cに保持されている。これらのマトリクスパラメータa〜f,a’〜f’,a”〜f”は、上述したようなイメージセンサ13およびレンズアレイ12の相対的位置精度、これらと撮像レンズ11との相対的位置精度、マイクロレンズ12aの成形精度等に応じて、規定値として予め保持されている。あるいは、図示しないコントロールバスを通じて外部入力されてもよい。外部入力による場合には、例えば外部接続されたPCからカメラコントローラソフトにより、上記マトリクスパラメータを設定可能である。これにより、例えばユーザによるキャリブレーションが可能となり、また使用環境や経年劣化等に起因して各部材の位置ずれやレンズ形状の変化が生じた場合にも適切な補正が可能となる。
【0039】
(表現行列,マトリクスパラメータの導出)
ここで、上記のような表現行列Ma,Mb,Mcの導出について、表現行列Mbを例に挙げて説明する。即ち、図10(B)に示した1次変換の式の導出について説明する。但し、ここでは、イメージセンサ13およびレンズアレイ12の相対的な位置ずれがX方向に沿ってのみ生じている場合を想定する。
【0040】
図11(A),(B)は、イメージセンサ13およびレンズアレイ12の相対的位置ずれについて模式的に表したものである。図11(A)は、イメージセンサ13がレンズアレイ12に対してX方向負の向き(X1)にシフトしている場合、図11(B)は、イメージセンサ13がレンズアレイ12に対してX方向正の向き(X2)にシフトしている場合についてそれぞれ表している。各図では、あるマトリクス領域UのX方向に沿った3ラインのうちの中央ラインに配置された画素D,E,Fを、D(n),E(n),F(n)とし、これに隣接するマトリクス領域Uの画素D,E,Fを、D(n-1),E(n-1),F(n-1)およびD(n+1),E(n+1),F(n+1)としている。
【0041】
まず、図11(A)に示したように、イメージセンサ13の位置ずれがX方向負の向きである場合、画素D(n),E(n),F(n)からそれぞれ出力される画素信号XD(n),XE(n),XF(n)は、上記位置ずれによるクロストークを考慮すると次の式(1)〜(3)のように表すことができる。但し、α1,α2,α3はそれぞれ、異なる視点からの光線が本来の視点からの光線に混在する割合(クロストーク量)を表す係数であり、0<α1,α2,α3<<1である。これらのα1,α2,α3は、例えば、サンプル画像を撮影し、そのサンプル画像における二重像(実像とクロストークによる虚像)の輝度をいくつか測定し、これらの測定値の平均(平均輝度値)の比から画素毎に設定することができる。
XD(n)=YD(n)+α1・YF(n-1) ………(1)
XE(n)=YE(n)+α2・YD(n) ………(2)
XF(n)=YF(n)+α3・YE(n) ………(3)
【0042】
これらの式(1)〜(3)から、YD(n),YE(n),YF(n)をそれぞれ、Xの項を用いて表されるように変形する。例えば、YD(n)は式(4)のように表されるが、この式(4)中のYの項(YF(n-1))は、式(3)を用いて消すことができ、式(5)のように表される。また、式(5)中のYの項(YE(n-1))は、式(2)を用いて消すことができ、式(6)のように表される。
YD(n)=XD(n)−α1・YF(n-1) ………(4)
YD(n)=XD(n)−α1・{XF(n-1)−α3・YE(n-1)} ………(5)
YD(n)=XD(n)−α1・[XF(n-1)−α3・{XE(n-1)−α2・YD(n-1)}]…(6)
【0043】
ここで、α1,α2,α3は、1よりも極めて小さな値である(α1,α2,α3<<1)と見做せるので、これらの3乗以上の項については無視する(0(ゼロ)と近似する)ことができる。従って、YD(n)は次の式(7)のように表すことができる。YE(n),YF(n)についても、式(1)〜(3)を用いて上記と同様の変形を行うことにより、以下の式(8),(9)のように表すことができる。
YD(n)=XD(n)−α1・XF(n-1)+α1・α3・XE(n-1) ………(7)
YE(n)=XE(n)−α2・XD(n)+α1・α2・XF(n-1) ………(8)
YF(n)=XF(n)−α3・XE(n)+α2・α3・XD(n) ………(9)
【0044】
同様に、図11(B)に示したように、イメージセンサ13の位置ずれがX方向正の向きである場合には、YF(n),YE(n),YD(n)はそれぞれ、以下の式(10)〜(12)のように表すことができる。
YF(n)=XF(n)−β1・XD(n+1)+β1・β3・XE(n+1) ………(10)
YE(n)=XE(n)−β2・XF(n)+β1・β2・XD(n+1) ………(11)
YD(n)=XD(n)−β3・XE(n)+β2・β3・XF(n) ………(12)
【0045】
そして、隣接画素間の画素値がほぼ等しいと仮定した場合、Xx(n-1)およびXx(n+1)の各項を区別することなく、Xx(n)として扱えるので、YD(n)は、上記式(7),(12)から以下の式(13)のように表すことができる。同様に、YE(n)は上記式(8),(11)から以下の式(14)、YF(n)は上記式(9),(10)から以下の式(15)のようにそれぞれ表すことができる。
YD(n)=XD(n)−(β3−α1・α3)XE(n)−(α1−β2・β3)XF(n)…(13)
YE(n)=−(α2−β1・β2)XD(n)+XE(n)−(β2−α1・α2)XF(n)…(14)
YF(n)=−(β1−α2・α3)XD(n)−(α3−β1・β3)XE(n)+XF(n)…(15)
【0046】
これらの式(13)〜(15)が、図10(B)に示した1次変換の式に対応する。但し、図10(B)におけるマトリクスパラメータ(a’,b’,c’,d’,e’,f’)はそれぞれ、以下のように表される。
a’=α1・α3−β3
b’=β2・β3−α1
c’=β1・β2−α2
d’=α1・α2−β2
e’=α2・α3−β1
f’=β1・β3−α3
【0047】
尚、Z方向に位置ずれが生じた場合や、レンズ形状不良の場合にも、上記式(13)〜(15)が有効である。但し、位置ずれの向きが1方向のみの場合には、その位置ずれの向きに応じて上記式(7)〜(9)または式(10)〜(12)を使い分けるようにしてもよい。位置ずれの向きは、例えば、サンプル画像を撮影し、そのサンプル画像に基づく各視点画像における二重像(実像とクロストークによる虚像)において実像に対する虚像の生じる方向から判断することが可能である。例えば、位置ずれの向きがX1である場合には、マトリクスパラメータ(a’,b’,c’,d’,e’,f’)はそれぞれ、以下のように表される。
a’=α1・α3
b’=−α1
c’=−α2
d’=α1・α2
e’=α2・α3
f’=−α3
【0048】
あるいは、位置ずれの向きがX2である場合には、マトリクスパラメータ(a’,b’,c’,d’,e’,f’)はそれぞれ、以下のように表される。
a’=−β3
b’=β2・β3
c’=β1・β2
d’=−β2
e’=−β1
f’=β1・β3
【0049】
上記のような手順により、画素D,E,Fにおける画素信号を補正するための表現行列Mbおよびマトリクスパラメータa’〜f’を設定することができる。また、他の画素ラインに着目すれば、表現行列Ma,Mcおよびマトリクスパラメータa〜f,a”〜f”を上記と同様の導出手順により設定することができる。但し、これらのマトリクスパラメータa〜f,a’〜f’,a”〜f”は、補正の必要がなければ、その一部または全部を0(ゼロ)に設定することもできる。
【0050】
このようにして設定された表現行列Ma,Mb,Mcを用いて、演算部172(1次変換部172a〜172c)は、撮像信号D0のうちの一部の画素信号(ここでは、X方向に沿って配列する3つの画素信号の集合)に対して、1次変換を施す。例えば、1次変換部172bは、中央ラインの3つの画素(D,E,F)から得られた画素信号(XD(n),XE(n),XF(n))に対して、表現行列Mbを乗じて、クロストーク排除後の画素信号(YD(n),YE(n),YF(n))を算出する。同様に、1次変換部172aは、画素(A,B,C)の画素信号(XA(n),XB(n),XC(n))に対して表現行列Maを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YA(n),YB(n),YC(n))を算出する。同様に、1次変換部172cは、画素(G,H,I)の画素信号(XG(n),XH(n),XI(n))に対して表現行列Mcを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YG(n),YH(n),YI(n))を算出する。
【0051】
上記処理を各ラインにおいて3画素ずつ連続して行うことにより、ある画素において混在して取得された隣接画素情報を排除すると同時に、それを本来の画素へ戻すことが可能である。つまり、画素単位で良好な視点分離がなされた(視点間クロストークの低減された)ライン信号D1a,D1b,D1cが得られる。これらのライン信号D1a,D1b,D1cはライン選択部174へ出力される。
【0052】
ライン選択部174は、演算部172の1次変換部172a,172b,172cからそれぞれ出力されたライン信号D1a,D1b,D1cを、1ラインに並べ替えて出力するものである。このライン選択部174により、3ライン分のライン信号D1a,D1b,D1cが、1ライン分のライン信号(撮像信号D1)に変換され、後段の画像処理部14へ出力される。画像処理部14では、この補正後の撮像信号D1に基づいて、上述したような画像処理が行われ、複数の視点画像が生成される。
【0053】
以上のように本実施の形態では、撮像レンズ11の通過光線を、レンズアレイ12によって複数の視点からの光線に分離しつつ、イメージセンサ13の各画素において受光し、受光量に基づく画素信号を取得する。イメージセンサ13とレンズアレイ12との相対的な位置ずれが生じた場合であっても、各画素から出力された画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制し、画素単位で精度良く視点分離を行うことができる。よって、視点間クロストークに起因する画質劣化を抑制することが可能となる。これにより、サブミクロンオーダーでマイクロレンズが形成されたレンズアレイ12とイメージセンサ13との位置合わせ精度が十分に得られない場合であっても、クロストークによる画質劣化を抑制することができ、量産性の向上につながると共に、新たな製造設備投資が少なくて済む。また、製造時の光学的な位置ずれ、レンズ形状不良等に起因するクロストークに限らず、経年劣化や衝撃等に起因して生じるクロストークについても補正可能であるため、高い信頼性を維持することができる。
【0054】
尚、上記実施の形態では、CT補正部17において、撮像信号D0に対し、X方向に沿ったライン毎に1次変換を行うことで、全ての画素信号を用いてクロストーク補正を行ったが、必ずしも全ての画素信号を用いる必要はない。例えば、本実施の形態では、上述のように、撮像信号D1に基づいて、マトリクス領域Uの画素数分(ここでは9つ)の視点画像を生成可能であるが、例えば立体表示用途としては、左右2枚の視点画像が得られればよく、9枚全ての視点画像を要しない場合もある。このような場合には、マトリクス領域Uのうちの一部の画素(例えば左右の視点画像を得るための画素D,F)の画素信号を含む中央ラインについてのみ、1次変換を施してもよい。
【0055】
以下、上記実施の形態の変形例(変形例1,2)に係るクロストーク補正手法ついて説明する。変形例1,2では、上記実施の形態と同様、撮像レンズ11、レンズアレイ12、イメージセンサ13、画像処理部14、イメージセンサ駆動部15、CT補正部17および制御部16を備えた撮像装置1において、CT補正部17が上記実施の形態と異なる画素に着目して1次変換を行うようになっている。尚、上記実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0056】
<変形例1>
図12は、変形例1に係るレンズアレイ12(マイクロレンズ12a)とイメージセンサ13との相対的な位置ずれを表したものである。変形例1では、上記実施の形態と異なり、レンズアレイ12とイメージセンサ13との相対的な位置ずれdrが、Y方向に沿って生じている場合を想定したものである。このようにY方向に沿って位置ずれdrが生じている場合には、マトリクス領域Uのうち、Y方向に沿って配列する画素から得られる画素信号の集合に対して線形変換を施す。尚、位置ずれがX方向およびY方向のうちのどちらの方向に生じているかについては、例えば、サンプル画像を撮影し、そのサンプル画像に基づく各視点画像における二重像(実像とクロストークによる虚像)において実像に対する虚像の生じる方向から判断することが可能である。X方向およびY方向のどちらに沿って補正を施すかは、予め保持されていてもよいし、外部入力信号により設定されるようにしてもよい。
【0057】
本変形例においても、上記実施の形態と同様、CT補正部17が図9に示したような機能構成を有し、RAWデータ分離部171、演算部172、行列パラメータレジスタ173およびライン選択部174を備えている。但し、上述のように、イメージセンサ13からの信号読み出しがX方向に沿ったライン単位で行われる場合には、次のような構成とする必要がある。即ち、本変形例では、Y方向に沿って配列した画素信号に対して1次変換を施すので、上記実施の形態と異なり、3行分のライン信号を一時的に記憶しておくためのバッファメモリ(図示せず)が必要となる。従って、例えばRAWデータ分離部171と演算部172との間、もしくは演算部172において、上記のようなバッファメモリを設け、このバッファメモリに記憶された3行分のライン信号を用いて、Y方向に配列する画素信号の集合に対して、1次変換を施す。
【0058】
具体的には、演算部172は、上記のような3行分ライン信号に基づき、マトリクス領域U内でY方向に沿って配列する3つの画素(A,D,G)(B,E,H)(C,F,I)から得られた各画素信号の集合に対して1次変換を施す。本変形例においても、演算部172は、それぞれの画素信号の集合に対応する3つの1次変換部を有しており、1次変換部毎に表現行列(後述の表現行列Md,Me,Mf)を保持している。表現行列としては、上記実施の形態の場合と同様、マトリクス領域Uの行方向および列方向の画素数以下の次元数を有する正方行列が用いられる。
【0059】
図13(A)〜(C)は、本変形例における表現行列を用いた演算処理の一例を表したものである。図13(A)は、マトリクス領域Uにおける3つの画素A,D,Gに着目し、これらの画素信号に対する1次変換について表したものである。同様に、図13(B)は、画素B,E,Hの画素信号に対する1次変換について、図13(C)は、画素C,F,Iの画素信号に対する1次変換についてそれぞれ表したものである。尚、各図において、XA(n)〜XI(n)は、画素(画素センサー)A〜Iから得られた画素信号(受光感度値)であり、YA(n)〜YI(n)は、補正後の電気信号(クロストークがない場合の電気信号)に相当する。また、画素A,D,Gの画素信号の集合に対する1次変換の表現行列をMd、画素B,E,Hの画素信号の集合に対する1次変換の表現行列をMe、画素C,F,Iの画素信号の集合に対する1次変換の表現行列をMfとする。
【0060】
表現行列Md,Me,Mfは、上記実施の形態の表現行列Ma,Mb,Mcと同様、3次元の正方行列(3×3の行列マトリクス)からなり、いずれも対角成分が「1」に設定されている。また、これらの表現行列Md,Me,Mfでは、対角成分以外の成分については、マトリクスパラメータとして適切な設定値が与えられる。具体的には、表現行列Md,Me,Mfのマトリクスパラメータ(g,h,i,j,k,m)(g’,h’,i’,j’,k’,m’)(g”,h”,i”,j”,k”,m”)はそれぞれ、行列パラメータレジスタ173a,173b,173cに保持されている。これらのマトリクスパラメータg〜m,g’〜m’,g”〜m”は、上記実施の形態のマトリクスパラメータと同様、イメージセンサ13およびレンズアレイ12の相対的位置精度等に応じて、規定値として予め保持されているか、あるいは外部入力されるようになっている。尚、本変形例においても、上記のような表現行列Md,Me,Mfおよびマトリクスパラメータg〜m,g’〜m’,g”〜m”は、上記実施の形態と同様にして導出可能である。
【0061】
本変形例では、上記のような表現行列Md,Me,Mfを用いて、撮像信号D0のうちの一部の画素信号(Y方向に沿って配列する3つの画素信号の集合)に対して、1次変換を施す。例えば、3つの画素センサー(A,D,G)から得られた画素信号(XA(n),XD(n),XG(n))に対して、表現行列Mdを乗じて、クロストーク排除後の画素信号(YA(n),YD(n),YG(n))を算出する。同様に、画素(B,E,H)の画素信号(XB(n),XE(n),XH(n))に対して表現行列Meを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YB(n),YE(n),YH(n))を算出する。同様に、画素(C,F,I)の画素信号(XC(n),XF(n),XI(n))に対して表現行列Mfを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YC(n),YF(n),YI(n))を算出する。
【0062】
上記処理をY方向に沿って配列した3画素分ずつ連続して行うことにより、ある画素において混在して取得された隣接画素情報を排除すると同時に、それを本来の画素へ戻すことが可能である。つまり、画素単位で良好な視点分離がなされた(視点間クロストークの低減された)撮像信号D1が得られる。従って、本変形例においても、イメージセンサ13とレンズアレイ12との相対的な位置ずれが生じた場合であっても、各画素から出力された画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制し、画素単位で精度良く視点分離を行うことができる。よって、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0063】
<変形例2>
図14は、変形例2に係るレンズアレイ12(マイクロレンズ12a)とイメージセンサ13との相対的な位置ずれを表したものである。変形例2では、上記実施の形態と異なり、レンズアレイ12とイメージセンサ13との相対的な位置ずれdrが、X方向だけでなくY方向にも生じている場合を想定したものである。このようにXY平面に沿って位置ずれdrが生じている場合には、マトリクス領域Uのうち、X方向に沿って配列する画素から得られる画素信号の集合に対する線形変換と、Y方向に沿って配列する画素から得られる画素信号の集合に対する線形変換とを、順次施す。
【0064】
本変形例においても、上記実施の形態と同様、CT補正部17が図9に示したような機能構成を有し、RAWデータ分離部171、演算部172、行列パラメータレジスタ173およびライン選択部174を備えている。また、イメージセンサ13からの信号読み出しがX方向に沿ったライン単位で行われる場合には、上記変形例1と同様、Y方向に沿って配列した画素信号に対して1次変換を施す処理を含むので、3行分のライン信号を一時的に記憶しておくためのバッファメモリ(図示せず)を更に備えている。
【0065】
具体的には、演算部172は、まず、上記実施の形態と同様にして、図10(A)〜(C)に示したように、表現行列Ma,Mb,Mcを用いて、撮像信号D0のうちのX方向に沿って配列する3つの画素信号の集合に対して、1次変換を施す。例えば、3つの画素(D,E,F)から得られた画素信号(XD(n),XE(n),XF(n))に対して、表現行列Mbを乗じて、クロストーク排除後の画素信号(YD(n),YE(n),YF(n))を算出する。同様に、画素(A,B,C)の画素信号(XA(n),XB(n),XC(n))に対して表現行列Maを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YA(n),YB(n),YC(n))を算出する。同様に、画素(G,H,I)の画素信号(XG(n),XH(n),XI(n))に対して表現行列Mcを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YG(n),YH(n),YI(n))を算出する。
【0066】
続いて、上記変形例1と同様にして、図13(A)〜(C)に示したように、表現行列Md,Me,Mfを用いて、撮像信号D0のうちのY方向に沿って配列する3つの画素信号の集合に対して、1次変換を施す。例えば、3つの画素(A,D,G)から得られた画素信号(XA(n),XD(n),XG(n))に対して、表現行列Mdを乗じて、クロストーク排除後の画素信号(YA(n),YD(n),YG(n))を算出する。同様に、画素(B,E,H)の画素信号(XB(n),XE(n),XH(n))に対して表現行列Meを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YB(n),YE(n),YH(n))を算出する。同様に、画素(C,F,I)の画素信号(XC(n),XF(n),XI(n))に対して表現行列Mfを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YC(n),YF(n),YI(n))を算出する。
【0067】
上記のように、X方向に沿った画素信号の集合に対する1次変換と、Y方向に沿った画素信号の集合に対する1次変換とを順次連続して行うことにより、XY平面において位置ずれ(dr1,dr2)が生じている場合であっても、ある画素において混在して取得された隣接画素情報を排除すると同時に、それを本来の画素へ戻すことが可能である。つまり、画素単位で良好な視点分離がなされた(視点間クロストークの低減された)撮像信号D1が得られる。従って、本変形例においても、イメージセンサ13とレンズアレイ12との相対的な位置ずれが生じた場合であっても、各画素から出力された画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制し、画素単位で精度良く視点分離を行うことができる。よって、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0068】
尚、上記変形例2では、X方向に沿った画素信号の集合に対する1次変換を行った後、Y方向に沿った画素信号の集合に対する1次変換を行うようにしたが、これらの1次変換の順序は逆でもよい。即ち、Y方向に沿った画素信号の集合に対する1次変換を行った後、X方向に沿った画素信号の集合に対する1次変換を行うようにしてもよい。また、これらの実施順序については、予め設定されていてもよいし、外部入力信号により設定されるようにしてもよい。いずれの場合であっても、順次1次変換を施すことにより、各方向に沿った位置ずれに起因する視点間クロストークを抑制することができる。
【0069】
以上、実施の形態および変形例を挙げたが、本開示内容は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、1つのマイクロレンズに割り当てられる画素(マトリクス領域U)が3×3=9個である場合を例に挙げて説明したが、マトリクス領域Uは、これに限定されず、任意のm×n(m,nは1以上の整数。但し、m=n=1を除く。)の画素から構成することができ、m,nが互いに異なっていてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態等では、視点分離素子としてレンズアレイを例示したが、光線の視点成分を分離可能な素子であれば、レンズアレイに限定されない。例えば、撮像レンズと、イメージセンサとの間に、XY平面において複数領域に分割され、各領域において開閉を切り替えることが可能な液晶シャッターを視点分離素子として配置した構成であってもよい。あるいは、XY平面に複数の孔が形成された、いわゆるピンホールを利用した視点分離素子を用いてもよい。
【0071】
更に、上記実施の形態等では、本開示の撮像装置の一例として、視点画像を生成する画像処理部を備えたものを例に挙げて説明したが、この画像処理部については必ずしも備えていなくともよい。
【0072】
尚、本開示は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)撮像レンズと、前記撮像レンズの通過光線を、互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、複数の画素を有すると共に、各画素において前記視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく画素信号を得る撮像素子と、前記複数の画素から得られる画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制する補正を行う補正部とを備えた撮像装置。
(2)前記補正部は、2以上の画素信号の集合に対して1次変換を施すことにより、前記補正を行う上記(1)に記載の撮像装置。
(3)前記視点分離素子はレンズアレイであり、前記レンズアレイの1つのレンズを通過した光線は、前記撮像素子の2以上の画素からなる単位領域において受光される上記(1)または(2)に記載の撮像装置。
(4)前記補正部は、前記単位領域のうちの一部または全部の画素から出力された画素信号の集合に対して前記1次変換を施す上記(3)に記載の撮像装置。
(5)前記単位領域は、2以上の画素を行列状に2次元配置したものであり、前記補正部は、前記1次変換の際の表現行列として、前記単位領域の行方向または列方向の画素数以下の次元数を有する正方行列を用いる上記(3)または(4)に記載の撮像装置。
(6)前記表現行列の各成分は、前記単位領域と前記マイクロレンズとの相対的な位置ずれに基づいて予め設定されるか、あるいは外部入力信号に基づいて設定可能となっている上記(3)〜(5)のいずれかに記載の撮像装置。
(7)前記表現行列の対角成分は1である上記(5)または(6)に記載の撮像装置。
(8)前記補正部は、前記単位領域において行方向に配置された画素から得られた画素信号の集合、および列方向に配置された画素から得られた画素信号の集合のうち、どちらか一方に対してのみ前記1次変換を施すか、または両方に対して順次一回ずつ前記1次変換を施す上記(3)〜(7)のいずれかに記載の撮像装置。
(9)前記1次変換を施す画素信号の行方向および列方向の実施選択または実施順序選択は、予め設定されているか、あるいは外部入力信号に基づいて設定可能となっている上記(3)〜(8)のいずれかに記載の撮像装置。
(10)前記補正部による補正後の画素信号に基づいて画像処理を行う画像処理部を更に備えた上記(1)〜(9)のいずれかに記載の撮像装置。
(11)前記画像処理部は、前記補正後の画素信号を含む撮像信号に対して並べ替え処理を施すことにより、複数の視点画像を生成する上記(1)〜(10)のいずれかに記載の撮像装置。
【符号の説明】
【0073】
1…撮像装置、11…撮像レンズ、12…レンズアレイ、12a…マイクロレンズ、13…イメージセンサ、14…画像処理部、15…イメージセンサ駆動部、16…制御部、17…CT補正部、2…被写体、D0,D1…撮像信号、Dout…画像信号、U…マトリクス領域、A〜I…画素(画素信号)、R1〜R9…視点画像。
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズアレイを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な撮像装置が提案され、開発されている(非特許文献1)。また、撮像信号に対し、所定の画像処理を施して出力するようにした撮像装置も提案されている。例えば、特許文献1および非特許文献1には、「Light Field Photography」と呼ばれる手法を用いた撮像装置が提案されている。この撮像装置は、撮像レンズとイメージセンサとの間に、レンズアレイを配置したものである。被写体からの入射光線は、レンズアレイにおいて各視点の光線に分離された後、イメージセンサで受光される。イメージセンサから得られる画素信号を用いて、同時刻に多視点の画像を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−021683号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ren.Ng、他7名,「Light Field Photography with a Hand-Held Plenoptic Camera」,Stanford Tech Report CTSR 2005-02
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような撮像装置では、レンズアレイの1つのレンズを通過した光線は、イメージセンサ上のm×n(m,nは1以上の整数、但しm=n=1を除く)の画素において受光される。各レンズに対応する画素数(m×n個)分の視点画像を得ることができる。
【0006】
従って、レンズアレイとイメージセンサとの間で相対的な位置ずれが生じると、互いに異なる視点からの光線が同一の画素で受光されてしまい、光線のクロストーク(以下、視点間クロストーク、あるいは単にクロストークという)が生じる。このような視点間クロストークは、例えば被写体の画像が二重像になる等、画質劣化を招くことから、抑制されることが望まれしい。
【0007】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、視点間のクロストークに起因する画質劣化を抑制することが可能な撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の撮像装置は、撮像レンズと、撮像レンズの通過光線を互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、複数の画素を有すると共に、各画素において視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく画素信号を得る撮像素子と、複数の画素から得られた画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制する補正を行う補正部とを備えたものである。
【0009】
本開示の撮像装置では、撮像レンズの通過光線は、視点分離素子によって複数の視点からの光線に分離され、撮像素子の各画素において受光されることにより、その受光量に基づく画素信号が得られる。視点分離素子と撮像素子との相対的な位置ずれが生じた場合、その位置ずれに起因して視点間クロストークが生じるが、各画素から得られた画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制する補正を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の撮像装置によれば、撮像レンズの通過光線を、視点分離素子によって複数の視点からの光線に分離し、撮像素子の各画素において受光することにより、その受光量に基づく画素信号を得ることができる。視点分離素子と撮像素子との相対的な位置ずれが生じた場合であっても、各画素から得られた画素信号の一部または全部を用いた補正により、視点間クロストークを抑制することができる。よって、視点間クロストークに起因する画質劣化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示の一の実施の形態に係る撮像装置の全体構成を表す図である。
【図2】イメージセンサとレンズアレイとの理想的な配置について表す模式図である。
【図3】視点分離について説明するための模式図である。
【図4】イメージセンサにより取得される撮像信号を表す模式図である。
【図5】図3に示した撮像信号に基づいて生成される各視点画像を説明するための模式図である。
【図6】視点画像の一例を表す模式図である。
【図7】イメージセンサとレンズアレイとの相対的な位置ずれ(X方向に沿って生じたずれ)について示す模式図である。
【図8】図7の位置ずれが生じた場合の各画素への入射光線の模式図である。
【図9】CT補正部の機能構成を説明するためのブロック図である。
【図10】(A)〜(C)は、X方向に沿った各ラインにおける1次変換の行列演算式の一例を表したものである。
【図11】(A),(B)は、X方向の中央ラインの画素信号の集合に着目した場合の表現行列の導出について説明するための模式図である。
【図12】変形例1に係るイメージセンサとレンズアレイとの相対的な位置ずれ(Y方向)について表した模式図である。
【図13】(A)〜(C)は、Y方向に沿った各ラインにおける1次変換の行列演算式の一例を表したものである。
【図14】変形例2に係るイメージセンサとレンズアレイとの相対的な位置ずれ(XY平面において生じたずれ)について示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(X方向に沿った各ラインの画素信号の集合に対して1次変換を施す撮像装置の例)
2.変形例1(Y方向に沿った各ラインを補正対象とした場合の例)
3.変形例2(X,Y方向の各ラインを補正対象とした場合の例)
【0013】
<実施の形態>
[全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る撮像装置(撮像装置1)の全体構成を表すものである。撮像装置1は、いわゆる単眼方式のライトフィールドカメラであり、例えば被写体2を撮像して所定の画像処理を施すことにより、多視点の画像(画像信号Dout)を出力するものである。この撮像装置1は、撮像レンズ11、レンズアレイ12、イメージセンサ13、画像処理部14、イメージセンサ駆動部15、CT(クロストーク)補正部17および制御部16を備える。尚、以下では、光軸Z1に沿った方向をZとし、光軸Z1に直交する面内において、水平方向(横方向)をX、垂直方向(縦方向)をYとする。
【0014】
撮像レンズ11は、被写体2を撮像するためのメインレンズであり、例えば、ビデオカメラやスチルカメラ等で使用される一般的な撮像レンズにより構成されている。この撮像レンズ11の光入射側(または光出射側)には、開口絞り10が配設されている。
【0015】
レンズアレイ12は、撮像レンズ11の結像面(焦点面)に配置されることにより、入射光線を、互いに異なる視点からの光線として、画素単位で分離するための視点分離素子である。レンズアレイ12では、複数のマイクロレンズ12aがX方向(行方向)およびY方向(列方向)に沿って2次元配置されている。このようなレンズアレイ12では、各マイクロレンズ12aに割り当てられた画素数((イメージセンサ13の全画素数)/(レンズアレイ12のレンズ数))分の視点分離が可能である。換言すると、1つのマイクロレンズ12aに割り当てられた画素(後述のマトリクス領域U)の範囲内で画素単位での視点分離が可能である。尚、「視点分離」とは、換言すると、撮像レンズ11の通過光線が撮像レンズ11のどの領域を通過してきたものであるかをその方向性を含めて、イメージセンサの画素単位で記録しておくことである。このレンズアレイ12の結像面には、イメージセンサ13が配設されている。
【0016】
イメージセンサ13は、例えばマトリクス状に配列した複数の画素センサ(以下、単に画素という)を有し、レンズアレイ12を通過した光線を受光して撮像信号D0を取得するものである。撮像信号D0は、いわゆるRAW画像信号であり、イメージセンサ13上の各画素が受光した光強度を示す電気信号(画素信号)の集合である。このイメージセンサ13は、複数の画素がマトリクス状に(X方向およびY方向に沿って)配置したものであり、例えばCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)またはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子により構成されている。このイメージセンサ13の光入射側(レンズアレイ12の側)には、例えば図示しないカラーフィルタが設けられていてもよい。
【0017】
図2は、これらのレンズアレイ12とイメージセンサ13との理想的な配置例(相対的な位置ずれなし)を表したものである。この例では、1つのマイクロレンズ12aに対し、イメージセンサ13上の3×3の画素A〜I(マトリクス領域U)が割り当てられている。これにより、各マイクロレンズ12aを通過した光線は、マトリクス領域U内の各画素A〜I単位で視点分離されつつ受光されるようになっている。
【0018】
画像処理部14は、イメージセンサ13により取得された撮像信号D0に対して所定の画像処理を施し、例えば視点画像としての画像信号Doutを出力するものである。画像処理部14は、例えば、視点画像生成部と、デモザイク処理、ホワイトバランス調整処理およびガンマ補正処理等を行う画像補正処理部とを備えている。視点画像生成部は、詳細は後述するが、画素配列に対応して得られた撮像信号D0において選択的な画素信号同士を合成する(並べ替える)ことにより、互いに異なる複数の視点画像を生成する。
【0019】
イメージセンサ駆動部15は、イメージセンサ13を駆動してその露光や読み出しの制御を行うものである。
【0020】
CT補正部17は、視点間クロストークを抑制する補正を行う演算処理部である。尚、本明細書および本開示において、視点間クロストークとは、互いに異なる視点からの光線が同一の画素で受光されてしまうこと、即ち完全な視点分離ができず、視点の異なる光線が混在して受光されることを示す。この視点間クロストークは、レンズアレイ12とイメージセンサ13との距離と、イメージセンサ13およびレンズアレイ12の相対的な位置関係とに起因して生じる。特に、イメージセンサ13およびレンズアレイ12の相対的な位置関係が図2のような理想的な配置となるように位置合わせされていない場合、即ち位置ずれが生じている場合に、発生し易い。あるいは、この視点間クロストークは、イメージセンサ13およびレンズアレイ12と撮像レンズ11との3次元的な相対位置関係、およびマイクロレンズ12aの成形精度等にも影響を受ける。CT補正部17は、イメージセンサ13から得られた撮像信号D0のうち、選択的な画素信号の集合に対して1次変換を施すことにより、上記のような視点間クロストークを抑制する補正を行う。このCT補正部17の詳細な機能構成および補正動作については、後述する。
【0021】
制御部16は、画像処理部14、イメージセンサ駆動部15およびCT補正部17の各動作を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータなどにより構成されている。
【0022】
[作用、効果]
(撮像信号の取得)
撮像装置1では、撮像レンズ11の結像面にレンズアレイ12が設けられ、このレンズアレイ12の結像面にイメージセンサ13が設けられることにより、イメージセンサ13の各画素には、被写体2からの光線が、その強度分布に加え進行方向(視点)についての情報が保持された光線ベクトルとして記録される。即ち、レンズアレイ12を通過した光線は、視点毎に分離され、イメージセンサ13の異なる画素において受光される。
【0023】
例えば、図3に示したように、撮像レンズ11を通過してマイクロレンズ12aへ入射した光線のうち、互いに異なる視点における光線(光束)Ld,Le,Lfは、それぞれ互いに異なる3つの画素(D,E,F)において受光される。このように、マイクロレンズ12aに割り当てられたマトリクス領域Uでは、互いに異なる視点の光線が、画素毎に受光される。イメージセンサ13では、イメージセンサ駆動部15による駆動動作に応じて、例えばライン順次に読み出しが行われ、撮像信号D0が取得される。尚、この際、本実施の形態では、イメージセンサ13のX方向に沿ったライン単位で信号読み出しがなされ、撮像信号D0は、X方向に沿って画素信号が配列してなるライン信号の集合として取得される。
【0024】
図4は、このようにして得られた撮像信号D0(RAW画像信号)を模式的に表したものである。本実施の形態のように、1つのマイクロレンズ12aに3×3のマトリクス領域Uが割り当てられている場合、イメージセンサ13では、上述のようにマトリクス領域U毎に、計9つの視点の光線がそれぞれ互いに異なる画素(画素センサー)A〜Iにおいて受光される。このため、撮像信号D0は、マトリクス領域Uに対応した、3×3の配列の画素信号(図4中のUa)を含んでいる。尚、図4の撮像信号D0では、説明上、各画素信号に対応する画素A〜Iの符号を付している。各画素A〜Iから得られる画素信号は、イメージセンサ13上に設けられたカラーフィルタ(図示せず)の色配列に対応したカラーの信号として記録される。このような画素信号を有する撮像信号D0は、CT補正部17へ出力される。
【0025】
CT補正部17は、詳細は後述するが、撮像信号D0に対し、この撮像信号D0のうちの一部または全部の画素信号を用いて、視点間クロストークを抑制する補正を施す。クロストーク補正後の撮像信号(撮像信号D1)は、画像処理部14へ出力される。
【0026】
(視点画像の生成)
画像処理部14は、撮像信号D0に基づく撮像信号(CT補正部17から出力された撮像信号D1)に対し、所定の画像処理を行い、複数の視点画像を生成する。即ち、撮像信号D0に対し、各マトリクス領域U同士の間において互いに同一の位置にある画素から抽出される画素信号同士を合成する(撮像信号D1における各画素信号を並べ替える)。例えば、図4に示したようなRAW画像データの配列において、各マトリクス領域Uにおける画素Aから得られた画素信号同士を合成する(図5(A))。他の画素B〜Iから得られた画素信号についても同様の処理を行う(図5(B)〜(I))。このようにして、画像処理部14は、撮像信号D1に基づいて、複数の視点画像(ここでは、9つの視点画像)を生成する。このようにして生成された視点画像は、画像信号Doutとして外部あるいは図示しない記憶部へ出力される。尚、実際には、後述するように、各画素データには隣接画素で受光すべき光線についての信号成分も含んでいるが、図5(A)〜(I)では、説明上各画素データ「A」〜「I」のみを用いて、各視点画像を表している。
【0027】
尚、画像処理部14は、上記視点画像に対し、他の画像処理、例えばデモザイク処理等のカラー補間処理、ホワイトバランス調整処理、ガンマ補正処理等を施し、それらの画像処理後の視点画像信号を画像信号Doutとして出力してもよい。この画像信号Doutは、撮像装置1の外部へ出力されるようにしてもよいし、撮像装置1の内部に設けられた記憶部(図示せず)に記憶するようにしてもよい。
【0028】
但し、上記画像信号Doutは、視点画像に対応する信号であってもよいし、視点画像生成前の撮像信号D0であってもよい。即ち、上記のような視点画像生成処理(画素信号の並べ替え処理)を行わずに、イメージセンサ13から読み出された信号配列のままの撮像信号(クロストーク補正後の撮像信号D1)を外部へ出力するか、あるいは記憶部に記憶するようにしてもよい。
【0029】
ここで、図6(A)〜(I)に、図5(A)〜(I)の信号配列に対応する視点画像の一例(視点画像R1〜R9)を示す。被写体2の画像としては、奥行き方向において互いに異なる位置に配置された3つの被写体「人」,「山」,「花」の画像Ra,Rb,Rcを示している。視点画像R1〜R9は、上記3つの被写体のうち「人」に撮像レンズの焦点が合うようにして撮影されたものであり、「人」よりも奥にある「山」の画像Rbと、「人」よりも手前にある「花」の画像Rcとについてはデフォーカスした画像となっている。単眼方式の撮像装置1では、フォーカスした「人」の画像Raは、視点が変わってもシフトしないが、デフォーカスした画像Rb,Rcは、視点毎に互いに異なる位置にシフトする。尚、図6(A)〜(I)では、各視点画像間の位置シフト(画像Rb,Rcの位置シフト)を誇張して示している。
【0030】
これらの9つの視点画像R1〜R9は、互いに視差を有する多視点画像として様々な用途に利用可能であるが、これらの視点画像R1〜R9のうち、例えば左視点および右視点に対応する2つの視点画像を利用して、立体映像表示を行うことができる。例えば、図6(D)に示した視点画像R4を左視点画像、図6(F)に示した視点画像R6を右視点画像として用いることができる。このような左右2枚の視点画像を、所定の立体表示システムを用いて表示することにより、「山」は「人」よりも奥まって、「花」は「人」よりも手前に飛び出して、それぞれ観察される。
【0031】
ここで、撮像装置1では、上述のように、レンズアレイ12の1つのマイクロレンズ12aに、イメージセンサ13のマトリクス領域Uを割り当てて配置し、受光を行うことにより視点分離を行う。このため、各マイクロレンズ12aとマトリクス領域Uとが精度良く位置合わせされることが望ましい。また、レンズアレイ12およびイメージセンサ13と撮像レンズ11との相対的な位置精度やマイクロレンズ12aの成形精度についても、許容範囲内に納まっていることが望ましい。例えば、3×3のマトリクス領域Uに対して1つのマイクロレンズ12aを割り当てた場合、イメージセンサ13とレンズアレイ12とがサブミクロンオーダーの精度で位置合わせされていることが望ましい。これは、以下のような理由による。
【0032】
即ち、例えば図7に示したように、マトリクス領域Uとマイクロレンズ12aとの間に、X方向に沿った相対的な位置ずれ(dr)が生じている場合、実際には、異なる視点からの光線が同一画素で受光されてしまい、各画素信号に異なる視点成分の信号が混在してしまう。具体的には、図8に示したように、3つの視点成分の光線Ld,Le,Lfが、それぞれ対応する画素D,E,Fにおいてのみ受光されるのではなく、それぞれの一部が隣接する画素に跨って受光されてしまう。例えば、画素Dで受光されるべき光線Ldの一部が画素Eにおいて受光されてしまう。このような視点間クロストーク(Ct)が生じると、画像処理部14において生成される視点画像では、被写体の画像が二重像になる等の画質劣化が生じる。しかしながら、量産性等を考慮すると、上記のような位置ずれが生じないように、イメージセンサ13とレンズアレイ12との相対的位置精度をサブミクロンオーダーで確保することは非常に困難である。
【0033】
そこで、本実施の形態では、画像処理部14による画像処理動作を行う前(視点画像を生成する前)に、イメージセンサ13から出力された撮像信号D0に対し、次のようなクロストーク補正処理を行う。
【0034】
(視点間クロストーク補正)
図9は、CT補正部17の機能ブロック構成を表したものである。CT補正部17は、例えばRAWデータ分離部171、演算部172、行列パラメータレジスタ173およびライン選択部174を備えている。尚、本実施の形態では、X方向に沿ってレンズアレイ12とイメージセンサ13との相対的な位置ずれが生じており、撮像信号D0においてX方向に沿って配列する画素信号の集合に対して線形変換を施す場合について説明する。
【0035】
RAWデータ分離部171は、各画素A〜Iから得られた画素信号から構成される撮像信号D0を、複数のライン信号に分離する処理回路である。例えば、図4に示したように、撮像信号D0を、3行分のライン信号D0a(A,B,C,A,B,C,…)、D0b(D,E,F,D,E,F,…)、D0c(G,H,I,G,H,I…)に分離し、これらのライン信号D0a,D0b,D0cを、演算部172へ出力する。
【0036】
演算部172は、ライン信号D0a,D0b,D0cのそれぞれに対し、マトリクス領域Uの一部または全部の画素から得られた画素信号の集合に対して所定の線形変換(1次変換)を施すものであり、1次変換部172a,172b,172cを有している。これらの1次変換部172a,172b,172cは、入力されたライン信号D0a,D0b,D0cのそれぞれに対応した表現行列を保持している。表現行列としては、マトリクス領域Uの行方向および列方向の画素数以下の次元数を有する正方行列が用いられる。例えば、3×3の画素配列を有するマトリクス領域Uに対しては、3次元または2次元の正方行列を用いる。尚、2次元の正方行列を表現行列として用いる場合には、3×3のマトリクス領域Uのうちの一部(選択的な2×2の画素領域)についてのみ1次変換を施すか、あるいは2以上の画素を組み合わせたブロック領域を1画素と見做して、2×2の画素領域を形成してもよい。
【0037】
図10(A)〜(C)は、表現行列を用いた演算処理の一例を表したものである。図10(A)は、マトリクス領域Uにおける3つの画素A,B,Cに着目し、これらの画素信号に対する1次変換(ライン信号D0aに対する1次変換)について表したものである。同様に、図10(B)は、画素D,E,Fの画素信号に対する1次変換(ライン信号D0bに対する1次変換)について、図10(C)は、画素G,H,Iの画素信号に対する1次変換(ライン信号D0cに対する1次変換)についてそれぞれ表したものである。尚、各図において、XA(n)〜XI(n)は、画素A〜Iから得られた画素信号(受光感度値)であり、YA(n)〜YI(n)は、補正後の画素信号(クロストークがない場合の電気信号)に相当する。また、画素A,B,Cの画素信号の集合に対する1次変換の表現行列をMa、画素D,E,Fの画素信号の集合に対する1次変換の表現行列をMb、画素G,H,Iの画素信号の集合に対する1次変換の表現行列をMcとする。
【0038】
表現行列Ma,Mb,Mcは、この例では、3次元の正方行列(3×3の行列マトリクス)からなり、いずれも対角成分が「1」に設定されている。これらの表現行列Ma,Mb,Mcでは、対角成分以外の成分については、マトリクスパラメータとして適切な設定値が与えられる。具体的には、表現行列Ma,Mb,Mcのマトリクスパラメータ(a,b,c,d,e,f)(a’,b’,c’,d’,e’,f’)(a”,b”,c”,d”,e”,f”)はそれぞれ、行列パラメータレジスタ173a,173b,173cに保持されている。これらのマトリクスパラメータa〜f,a’〜f’,a”〜f”は、上述したようなイメージセンサ13およびレンズアレイ12の相対的位置精度、これらと撮像レンズ11との相対的位置精度、マイクロレンズ12aの成形精度等に応じて、規定値として予め保持されている。あるいは、図示しないコントロールバスを通じて外部入力されてもよい。外部入力による場合には、例えば外部接続されたPCからカメラコントローラソフトにより、上記マトリクスパラメータを設定可能である。これにより、例えばユーザによるキャリブレーションが可能となり、また使用環境や経年劣化等に起因して各部材の位置ずれやレンズ形状の変化が生じた場合にも適切な補正が可能となる。
【0039】
(表現行列,マトリクスパラメータの導出)
ここで、上記のような表現行列Ma,Mb,Mcの導出について、表現行列Mbを例に挙げて説明する。即ち、図10(B)に示した1次変換の式の導出について説明する。但し、ここでは、イメージセンサ13およびレンズアレイ12の相対的な位置ずれがX方向に沿ってのみ生じている場合を想定する。
【0040】
図11(A),(B)は、イメージセンサ13およびレンズアレイ12の相対的位置ずれについて模式的に表したものである。図11(A)は、イメージセンサ13がレンズアレイ12に対してX方向負の向き(X1)にシフトしている場合、図11(B)は、イメージセンサ13がレンズアレイ12に対してX方向正の向き(X2)にシフトしている場合についてそれぞれ表している。各図では、あるマトリクス領域UのX方向に沿った3ラインのうちの中央ラインに配置された画素D,E,Fを、D(n),E(n),F(n)とし、これに隣接するマトリクス領域Uの画素D,E,Fを、D(n-1),E(n-1),F(n-1)およびD(n+1),E(n+1),F(n+1)としている。
【0041】
まず、図11(A)に示したように、イメージセンサ13の位置ずれがX方向負の向きである場合、画素D(n),E(n),F(n)からそれぞれ出力される画素信号XD(n),XE(n),XF(n)は、上記位置ずれによるクロストークを考慮すると次の式(1)〜(3)のように表すことができる。但し、α1,α2,α3はそれぞれ、異なる視点からの光線が本来の視点からの光線に混在する割合(クロストーク量)を表す係数であり、0<α1,α2,α3<<1である。これらのα1,α2,α3は、例えば、サンプル画像を撮影し、そのサンプル画像における二重像(実像とクロストークによる虚像)の輝度をいくつか測定し、これらの測定値の平均(平均輝度値)の比から画素毎に設定することができる。
XD(n)=YD(n)+α1・YF(n-1) ………(1)
XE(n)=YE(n)+α2・YD(n) ………(2)
XF(n)=YF(n)+α3・YE(n) ………(3)
【0042】
これらの式(1)〜(3)から、YD(n),YE(n),YF(n)をそれぞれ、Xの項を用いて表されるように変形する。例えば、YD(n)は式(4)のように表されるが、この式(4)中のYの項(YF(n-1))は、式(3)を用いて消すことができ、式(5)のように表される。また、式(5)中のYの項(YE(n-1))は、式(2)を用いて消すことができ、式(6)のように表される。
YD(n)=XD(n)−α1・YF(n-1) ………(4)
YD(n)=XD(n)−α1・{XF(n-1)−α3・YE(n-1)} ………(5)
YD(n)=XD(n)−α1・[XF(n-1)−α3・{XE(n-1)−α2・YD(n-1)}]…(6)
【0043】
ここで、α1,α2,α3は、1よりも極めて小さな値である(α1,α2,α3<<1)と見做せるので、これらの3乗以上の項については無視する(0(ゼロ)と近似する)ことができる。従って、YD(n)は次の式(7)のように表すことができる。YE(n),YF(n)についても、式(1)〜(3)を用いて上記と同様の変形を行うことにより、以下の式(8),(9)のように表すことができる。
YD(n)=XD(n)−α1・XF(n-1)+α1・α3・XE(n-1) ………(7)
YE(n)=XE(n)−α2・XD(n)+α1・α2・XF(n-1) ………(8)
YF(n)=XF(n)−α3・XE(n)+α2・α3・XD(n) ………(9)
【0044】
同様に、図11(B)に示したように、イメージセンサ13の位置ずれがX方向正の向きである場合には、YF(n),YE(n),YD(n)はそれぞれ、以下の式(10)〜(12)のように表すことができる。
YF(n)=XF(n)−β1・XD(n+1)+β1・β3・XE(n+1) ………(10)
YE(n)=XE(n)−β2・XF(n)+β1・β2・XD(n+1) ………(11)
YD(n)=XD(n)−β3・XE(n)+β2・β3・XF(n) ………(12)
【0045】
そして、隣接画素間の画素値がほぼ等しいと仮定した場合、Xx(n-1)およびXx(n+1)の各項を区別することなく、Xx(n)として扱えるので、YD(n)は、上記式(7),(12)から以下の式(13)のように表すことができる。同様に、YE(n)は上記式(8),(11)から以下の式(14)、YF(n)は上記式(9),(10)から以下の式(15)のようにそれぞれ表すことができる。
YD(n)=XD(n)−(β3−α1・α3)XE(n)−(α1−β2・β3)XF(n)…(13)
YE(n)=−(α2−β1・β2)XD(n)+XE(n)−(β2−α1・α2)XF(n)…(14)
YF(n)=−(β1−α2・α3)XD(n)−(α3−β1・β3)XE(n)+XF(n)…(15)
【0046】
これらの式(13)〜(15)が、図10(B)に示した1次変換の式に対応する。但し、図10(B)におけるマトリクスパラメータ(a’,b’,c’,d’,e’,f’)はそれぞれ、以下のように表される。
a’=α1・α3−β3
b’=β2・β3−α1
c’=β1・β2−α2
d’=α1・α2−β2
e’=α2・α3−β1
f’=β1・β3−α3
【0047】
尚、Z方向に位置ずれが生じた場合や、レンズ形状不良の場合にも、上記式(13)〜(15)が有効である。但し、位置ずれの向きが1方向のみの場合には、その位置ずれの向きに応じて上記式(7)〜(9)または式(10)〜(12)を使い分けるようにしてもよい。位置ずれの向きは、例えば、サンプル画像を撮影し、そのサンプル画像に基づく各視点画像における二重像(実像とクロストークによる虚像)において実像に対する虚像の生じる方向から判断することが可能である。例えば、位置ずれの向きがX1である場合には、マトリクスパラメータ(a’,b’,c’,d’,e’,f’)はそれぞれ、以下のように表される。
a’=α1・α3
b’=−α1
c’=−α2
d’=α1・α2
e’=α2・α3
f’=−α3
【0048】
あるいは、位置ずれの向きがX2である場合には、マトリクスパラメータ(a’,b’,c’,d’,e’,f’)はそれぞれ、以下のように表される。
a’=−β3
b’=β2・β3
c’=β1・β2
d’=−β2
e’=−β1
f’=β1・β3
【0049】
上記のような手順により、画素D,E,Fにおける画素信号を補正するための表現行列Mbおよびマトリクスパラメータa’〜f’を設定することができる。また、他の画素ラインに着目すれば、表現行列Ma,Mcおよびマトリクスパラメータa〜f,a”〜f”を上記と同様の導出手順により設定することができる。但し、これらのマトリクスパラメータa〜f,a’〜f’,a”〜f”は、補正の必要がなければ、その一部または全部を0(ゼロ)に設定することもできる。
【0050】
このようにして設定された表現行列Ma,Mb,Mcを用いて、演算部172(1次変換部172a〜172c)は、撮像信号D0のうちの一部の画素信号(ここでは、X方向に沿って配列する3つの画素信号の集合)に対して、1次変換を施す。例えば、1次変換部172bは、中央ラインの3つの画素(D,E,F)から得られた画素信号(XD(n),XE(n),XF(n))に対して、表現行列Mbを乗じて、クロストーク排除後の画素信号(YD(n),YE(n),YF(n))を算出する。同様に、1次変換部172aは、画素(A,B,C)の画素信号(XA(n),XB(n),XC(n))に対して表現行列Maを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YA(n),YB(n),YC(n))を算出する。同様に、1次変換部172cは、画素(G,H,I)の画素信号(XG(n),XH(n),XI(n))に対して表現行列Mcを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YG(n),YH(n),YI(n))を算出する。
【0051】
上記処理を各ラインにおいて3画素ずつ連続して行うことにより、ある画素において混在して取得された隣接画素情報を排除すると同時に、それを本来の画素へ戻すことが可能である。つまり、画素単位で良好な視点分離がなされた(視点間クロストークの低減された)ライン信号D1a,D1b,D1cが得られる。これらのライン信号D1a,D1b,D1cはライン選択部174へ出力される。
【0052】
ライン選択部174は、演算部172の1次変換部172a,172b,172cからそれぞれ出力されたライン信号D1a,D1b,D1cを、1ラインに並べ替えて出力するものである。このライン選択部174により、3ライン分のライン信号D1a,D1b,D1cが、1ライン分のライン信号(撮像信号D1)に変換され、後段の画像処理部14へ出力される。画像処理部14では、この補正後の撮像信号D1に基づいて、上述したような画像処理が行われ、複数の視点画像が生成される。
【0053】
以上のように本実施の形態では、撮像レンズ11の通過光線を、レンズアレイ12によって複数の視点からの光線に分離しつつ、イメージセンサ13の各画素において受光し、受光量に基づく画素信号を取得する。イメージセンサ13とレンズアレイ12との相対的な位置ずれが生じた場合であっても、各画素から出力された画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制し、画素単位で精度良く視点分離を行うことができる。よって、視点間クロストークに起因する画質劣化を抑制することが可能となる。これにより、サブミクロンオーダーでマイクロレンズが形成されたレンズアレイ12とイメージセンサ13との位置合わせ精度が十分に得られない場合であっても、クロストークによる画質劣化を抑制することができ、量産性の向上につながると共に、新たな製造設備投資が少なくて済む。また、製造時の光学的な位置ずれ、レンズ形状不良等に起因するクロストークに限らず、経年劣化や衝撃等に起因して生じるクロストークについても補正可能であるため、高い信頼性を維持することができる。
【0054】
尚、上記実施の形態では、CT補正部17において、撮像信号D0に対し、X方向に沿ったライン毎に1次変換を行うことで、全ての画素信号を用いてクロストーク補正を行ったが、必ずしも全ての画素信号を用いる必要はない。例えば、本実施の形態では、上述のように、撮像信号D1に基づいて、マトリクス領域Uの画素数分(ここでは9つ)の視点画像を生成可能であるが、例えば立体表示用途としては、左右2枚の視点画像が得られればよく、9枚全ての視点画像を要しない場合もある。このような場合には、マトリクス領域Uのうちの一部の画素(例えば左右の視点画像を得るための画素D,F)の画素信号を含む中央ラインについてのみ、1次変換を施してもよい。
【0055】
以下、上記実施の形態の変形例(変形例1,2)に係るクロストーク補正手法ついて説明する。変形例1,2では、上記実施の形態と同様、撮像レンズ11、レンズアレイ12、イメージセンサ13、画像処理部14、イメージセンサ駆動部15、CT補正部17および制御部16を備えた撮像装置1において、CT補正部17が上記実施の形態と異なる画素に着目して1次変換を行うようになっている。尚、上記実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0056】
<変形例1>
図12は、変形例1に係るレンズアレイ12(マイクロレンズ12a)とイメージセンサ13との相対的な位置ずれを表したものである。変形例1では、上記実施の形態と異なり、レンズアレイ12とイメージセンサ13との相対的な位置ずれdrが、Y方向に沿って生じている場合を想定したものである。このようにY方向に沿って位置ずれdrが生じている場合には、マトリクス領域Uのうち、Y方向に沿って配列する画素から得られる画素信号の集合に対して線形変換を施す。尚、位置ずれがX方向およびY方向のうちのどちらの方向に生じているかについては、例えば、サンプル画像を撮影し、そのサンプル画像に基づく各視点画像における二重像(実像とクロストークによる虚像)において実像に対する虚像の生じる方向から判断することが可能である。X方向およびY方向のどちらに沿って補正を施すかは、予め保持されていてもよいし、外部入力信号により設定されるようにしてもよい。
【0057】
本変形例においても、上記実施の形態と同様、CT補正部17が図9に示したような機能構成を有し、RAWデータ分離部171、演算部172、行列パラメータレジスタ173およびライン選択部174を備えている。但し、上述のように、イメージセンサ13からの信号読み出しがX方向に沿ったライン単位で行われる場合には、次のような構成とする必要がある。即ち、本変形例では、Y方向に沿って配列した画素信号に対して1次変換を施すので、上記実施の形態と異なり、3行分のライン信号を一時的に記憶しておくためのバッファメモリ(図示せず)が必要となる。従って、例えばRAWデータ分離部171と演算部172との間、もしくは演算部172において、上記のようなバッファメモリを設け、このバッファメモリに記憶された3行分のライン信号を用いて、Y方向に配列する画素信号の集合に対して、1次変換を施す。
【0058】
具体的には、演算部172は、上記のような3行分ライン信号に基づき、マトリクス領域U内でY方向に沿って配列する3つの画素(A,D,G)(B,E,H)(C,F,I)から得られた各画素信号の集合に対して1次変換を施す。本変形例においても、演算部172は、それぞれの画素信号の集合に対応する3つの1次変換部を有しており、1次変換部毎に表現行列(後述の表現行列Md,Me,Mf)を保持している。表現行列としては、上記実施の形態の場合と同様、マトリクス領域Uの行方向および列方向の画素数以下の次元数を有する正方行列が用いられる。
【0059】
図13(A)〜(C)は、本変形例における表現行列を用いた演算処理の一例を表したものである。図13(A)は、マトリクス領域Uにおける3つの画素A,D,Gに着目し、これらの画素信号に対する1次変換について表したものである。同様に、図13(B)は、画素B,E,Hの画素信号に対する1次変換について、図13(C)は、画素C,F,Iの画素信号に対する1次変換についてそれぞれ表したものである。尚、各図において、XA(n)〜XI(n)は、画素(画素センサー)A〜Iから得られた画素信号(受光感度値)であり、YA(n)〜YI(n)は、補正後の電気信号(クロストークがない場合の電気信号)に相当する。また、画素A,D,Gの画素信号の集合に対する1次変換の表現行列をMd、画素B,E,Hの画素信号の集合に対する1次変換の表現行列をMe、画素C,F,Iの画素信号の集合に対する1次変換の表現行列をMfとする。
【0060】
表現行列Md,Me,Mfは、上記実施の形態の表現行列Ma,Mb,Mcと同様、3次元の正方行列(3×3の行列マトリクス)からなり、いずれも対角成分が「1」に設定されている。また、これらの表現行列Md,Me,Mfでは、対角成分以外の成分については、マトリクスパラメータとして適切な設定値が与えられる。具体的には、表現行列Md,Me,Mfのマトリクスパラメータ(g,h,i,j,k,m)(g’,h’,i’,j’,k’,m’)(g”,h”,i”,j”,k”,m”)はそれぞれ、行列パラメータレジスタ173a,173b,173cに保持されている。これらのマトリクスパラメータg〜m,g’〜m’,g”〜m”は、上記実施の形態のマトリクスパラメータと同様、イメージセンサ13およびレンズアレイ12の相対的位置精度等に応じて、規定値として予め保持されているか、あるいは外部入力されるようになっている。尚、本変形例においても、上記のような表現行列Md,Me,Mfおよびマトリクスパラメータg〜m,g’〜m’,g”〜m”は、上記実施の形態と同様にして導出可能である。
【0061】
本変形例では、上記のような表現行列Md,Me,Mfを用いて、撮像信号D0のうちの一部の画素信号(Y方向に沿って配列する3つの画素信号の集合)に対して、1次変換を施す。例えば、3つの画素センサー(A,D,G)から得られた画素信号(XA(n),XD(n),XG(n))に対して、表現行列Mdを乗じて、クロストーク排除後の画素信号(YA(n),YD(n),YG(n))を算出する。同様に、画素(B,E,H)の画素信号(XB(n),XE(n),XH(n))に対して表現行列Meを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YB(n),YE(n),YH(n))を算出する。同様に、画素(C,F,I)の画素信号(XC(n),XF(n),XI(n))に対して表現行列Mfを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YC(n),YF(n),YI(n))を算出する。
【0062】
上記処理をY方向に沿って配列した3画素分ずつ連続して行うことにより、ある画素において混在して取得された隣接画素情報を排除すると同時に、それを本来の画素へ戻すことが可能である。つまり、画素単位で良好な視点分離がなされた(視点間クロストークの低減された)撮像信号D1が得られる。従って、本変形例においても、イメージセンサ13とレンズアレイ12との相対的な位置ずれが生じた場合であっても、各画素から出力された画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制し、画素単位で精度良く視点分離を行うことができる。よって、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0063】
<変形例2>
図14は、変形例2に係るレンズアレイ12(マイクロレンズ12a)とイメージセンサ13との相対的な位置ずれを表したものである。変形例2では、上記実施の形態と異なり、レンズアレイ12とイメージセンサ13との相対的な位置ずれdrが、X方向だけでなくY方向にも生じている場合を想定したものである。このようにXY平面に沿って位置ずれdrが生じている場合には、マトリクス領域Uのうち、X方向に沿って配列する画素から得られる画素信号の集合に対する線形変換と、Y方向に沿って配列する画素から得られる画素信号の集合に対する線形変換とを、順次施す。
【0064】
本変形例においても、上記実施の形態と同様、CT補正部17が図9に示したような機能構成を有し、RAWデータ分離部171、演算部172、行列パラメータレジスタ173およびライン選択部174を備えている。また、イメージセンサ13からの信号読み出しがX方向に沿ったライン単位で行われる場合には、上記変形例1と同様、Y方向に沿って配列した画素信号に対して1次変換を施す処理を含むので、3行分のライン信号を一時的に記憶しておくためのバッファメモリ(図示せず)を更に備えている。
【0065】
具体的には、演算部172は、まず、上記実施の形態と同様にして、図10(A)〜(C)に示したように、表現行列Ma,Mb,Mcを用いて、撮像信号D0のうちのX方向に沿って配列する3つの画素信号の集合に対して、1次変換を施す。例えば、3つの画素(D,E,F)から得られた画素信号(XD(n),XE(n),XF(n))に対して、表現行列Mbを乗じて、クロストーク排除後の画素信号(YD(n),YE(n),YF(n))を算出する。同様に、画素(A,B,C)の画素信号(XA(n),XB(n),XC(n))に対して表現行列Maを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YA(n),YB(n),YC(n))を算出する。同様に、画素(G,H,I)の画素信号(XG(n),XH(n),XI(n))に対して表現行列Mcを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YG(n),YH(n),YI(n))を算出する。
【0066】
続いて、上記変形例1と同様にして、図13(A)〜(C)に示したように、表現行列Md,Me,Mfを用いて、撮像信号D0のうちのY方向に沿って配列する3つの画素信号の集合に対して、1次変換を施す。例えば、3つの画素(A,D,G)から得られた画素信号(XA(n),XD(n),XG(n))に対して、表現行列Mdを乗じて、クロストーク排除後の画素信号(YA(n),YD(n),YG(n))を算出する。同様に、画素(B,E,H)の画素信号(XB(n),XE(n),XH(n))に対して表現行列Meを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YB(n),YE(n),YH(n))を算出する。同様に、画素(C,F,I)の画素信号(XC(n),XF(n),XI(n))に対して表現行列Mfを乗じ、クロストーク排除後の画素信号(YC(n),YF(n),YI(n))を算出する。
【0067】
上記のように、X方向に沿った画素信号の集合に対する1次変換と、Y方向に沿った画素信号の集合に対する1次変換とを順次連続して行うことにより、XY平面において位置ずれ(dr1,dr2)が生じている場合であっても、ある画素において混在して取得された隣接画素情報を排除すると同時に、それを本来の画素へ戻すことが可能である。つまり、画素単位で良好な視点分離がなされた(視点間クロストークの低減された)撮像信号D1が得られる。従って、本変形例においても、イメージセンサ13とレンズアレイ12との相対的な位置ずれが生じた場合であっても、各画素から出力された画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制し、画素単位で精度良く視点分離を行うことができる。よって、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0068】
尚、上記変形例2では、X方向に沿った画素信号の集合に対する1次変換を行った後、Y方向に沿った画素信号の集合に対する1次変換を行うようにしたが、これらの1次変換の順序は逆でもよい。即ち、Y方向に沿った画素信号の集合に対する1次変換を行った後、X方向に沿った画素信号の集合に対する1次変換を行うようにしてもよい。また、これらの実施順序については、予め設定されていてもよいし、外部入力信号により設定されるようにしてもよい。いずれの場合であっても、順次1次変換を施すことにより、各方向に沿った位置ずれに起因する視点間クロストークを抑制することができる。
【0069】
以上、実施の形態および変形例を挙げたが、本開示内容は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、1つのマイクロレンズに割り当てられる画素(マトリクス領域U)が3×3=9個である場合を例に挙げて説明したが、マトリクス領域Uは、これに限定されず、任意のm×n(m,nは1以上の整数。但し、m=n=1を除く。)の画素から構成することができ、m,nが互いに異なっていてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態等では、視点分離素子としてレンズアレイを例示したが、光線の視点成分を分離可能な素子であれば、レンズアレイに限定されない。例えば、撮像レンズと、イメージセンサとの間に、XY平面において複数領域に分割され、各領域において開閉を切り替えることが可能な液晶シャッターを視点分離素子として配置した構成であってもよい。あるいは、XY平面に複数の孔が形成された、いわゆるピンホールを利用した視点分離素子を用いてもよい。
【0071】
更に、上記実施の形態等では、本開示の撮像装置の一例として、視点画像を生成する画像処理部を備えたものを例に挙げて説明したが、この画像処理部については必ずしも備えていなくともよい。
【0072】
尚、本開示は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)撮像レンズと、前記撮像レンズの通過光線を、互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、複数の画素を有すると共に、各画素において前記視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく画素信号を得る撮像素子と、前記複数の画素から得られる画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制する補正を行う補正部とを備えた撮像装置。
(2)前記補正部は、2以上の画素信号の集合に対して1次変換を施すことにより、前記補正を行う上記(1)に記載の撮像装置。
(3)前記視点分離素子はレンズアレイであり、前記レンズアレイの1つのレンズを通過した光線は、前記撮像素子の2以上の画素からなる単位領域において受光される上記(1)または(2)に記載の撮像装置。
(4)前記補正部は、前記単位領域のうちの一部または全部の画素から出力された画素信号の集合に対して前記1次変換を施す上記(3)に記載の撮像装置。
(5)前記単位領域は、2以上の画素を行列状に2次元配置したものであり、前記補正部は、前記1次変換の際の表現行列として、前記単位領域の行方向または列方向の画素数以下の次元数を有する正方行列を用いる上記(3)または(4)に記載の撮像装置。
(6)前記表現行列の各成分は、前記単位領域と前記マイクロレンズとの相対的な位置ずれに基づいて予め設定されるか、あるいは外部入力信号に基づいて設定可能となっている上記(3)〜(5)のいずれかに記載の撮像装置。
(7)前記表現行列の対角成分は1である上記(5)または(6)に記載の撮像装置。
(8)前記補正部は、前記単位領域において行方向に配置された画素から得られた画素信号の集合、および列方向に配置された画素から得られた画素信号の集合のうち、どちらか一方に対してのみ前記1次変換を施すか、または両方に対して順次一回ずつ前記1次変換を施す上記(3)〜(7)のいずれかに記載の撮像装置。
(9)前記1次変換を施す画素信号の行方向および列方向の実施選択または実施順序選択は、予め設定されているか、あるいは外部入力信号に基づいて設定可能となっている上記(3)〜(8)のいずれかに記載の撮像装置。
(10)前記補正部による補正後の画素信号に基づいて画像処理を行う画像処理部を更に備えた上記(1)〜(9)のいずれかに記載の撮像装置。
(11)前記画像処理部は、前記補正後の画素信号を含む撮像信号に対して並べ替え処理を施すことにより、複数の視点画像を生成する上記(1)〜(10)のいずれかに記載の撮像装置。
【符号の説明】
【0073】
1…撮像装置、11…撮像レンズ、12…レンズアレイ、12a…マイクロレンズ、13…イメージセンサ、14…画像処理部、15…イメージセンサ駆動部、16…制御部、17…CT補正部、2…被写体、D0,D1…撮像信号、Dout…画像信号、U…マトリクス領域、A〜I…画素(画素信号)、R1〜R9…視点画像。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像レンズと、
前記撮像レンズの通過光線を、互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、
複数の画素を有すると共に、各画素において前記視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく画素信号を得る撮像素子と、
前記複数の画素から得られる画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制する補正を行う補正部と
を備えた撮像装置。
【請求項2】
前記補正部は、2以上の画素信号の集合に対して1次変換を施すことにより、前記補正を行う
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記視点分離素子はレンズアレイであり、
前記レンズアレイの1つのレンズを通過した光線は、前記撮像素子の2以上の画素からなる単位領域において受光される
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記単位領域のうちの一部または全部の画素から出力された画素信号の集合に対して前記1次変換を施す
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記単位領域は、2以上の画素を行列状に2次元配置したものであり、
前記補正部は、前記1次変換の際の表現行列として、前記単位領域の行方向または列方向の画素数以下の次元数を有する正方行列を用いる
請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記表現行列の各成分は、前記単位領域と前記マイクロレンズとの相対的な位置ずれに基づいて予め設定されるか、あるいは外部入力信号に基づいて設定可能となっている
請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記表現行列の対角成分は1である
請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記補正部は、前記単位領域において行方向に配置された画素から得られた画素信号の集合、および列方向に配置された画素から得られた画素信号の集合のうち、どちらか一方に対してのみ前記1次変換を施すか、または両方に対して順次一回ずつ前記1次変換を施す
請求項5に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記1次変換を施す画素信号の行方向および列方向の実施選択または実施順序選択は、予め設定されているか、あるいは外部入力信号に基づいて設定可能となっている
請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記補正部による補正後の画素信号に基づいて画像処理を行う画像処理部を更に備えた
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記画像処理部は、前記補正後の画素信号を含む撮像信号に対して並べ替え処理を施すことにより、複数の視点画像を生成する
請求項10に記載の撮像装置。
【請求項1】
撮像レンズと、
前記撮像レンズの通過光線を、互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、
複数の画素を有すると共に、各画素において前記視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく画素信号を得る撮像素子と、
前記複数の画素から得られる画素信号の一部または全部を用いて、視点間クロストークを抑制する補正を行う補正部と
を備えた撮像装置。
【請求項2】
前記補正部は、2以上の画素信号の集合に対して1次変換を施すことにより、前記補正を行う
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記視点分離素子はレンズアレイであり、
前記レンズアレイの1つのレンズを通過した光線は、前記撮像素子の2以上の画素からなる単位領域において受光される
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記単位領域のうちの一部または全部の画素から出力された画素信号の集合に対して前記1次変換を施す
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記単位領域は、2以上の画素を行列状に2次元配置したものであり、
前記補正部は、前記1次変換の際の表現行列として、前記単位領域の行方向または列方向の画素数以下の次元数を有する正方行列を用いる
請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記表現行列の各成分は、前記単位領域と前記マイクロレンズとの相対的な位置ずれに基づいて予め設定されるか、あるいは外部入力信号に基づいて設定可能となっている
請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記表現行列の対角成分は1である
請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記補正部は、前記単位領域において行方向に配置された画素から得られた画素信号の集合、および列方向に配置された画素から得られた画素信号の集合のうち、どちらか一方に対してのみ前記1次変換を施すか、または両方に対して順次一回ずつ前記1次変換を施す
請求項5に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記1次変換を施す画素信号の行方向および列方向の実施選択または実施順序選択は、予め設定されているか、あるいは外部入力信号に基づいて設定可能となっている
請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記補正部による補正後の画素信号に基づいて画像処理を行う画像処理部を更に備えた
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記画像処理部は、前記補正後の画素信号を含む撮像信号に対して並べ替え処理を施すことにより、複数の視点画像を生成する
請求項10に記載の撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−81087(P2013−81087A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220230(P2011−220230)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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