説明

撮像装置

【課題】外装の内部空間に配置された光学部品に付着した埃等の除去作業を容易にする。
【解決手段】外装カバーユニット60は、交換レンズを取り付けるためのレンズマウント63を有する。NDフィルタユニット70はNDフィルタ1を内蔵し、NDフィルタ1の被写体側に開口部11を有して、外装カバーユニット60に固定される。カバーガラス31を保持する保持部材32を有したカバーガラスユニット30は、NDフィルタユニット70が外装カバーユニット60に固定された状態のまま被写体側に着脱可能に構成される。カバーガラスユニット30を外装カバーユニット60に取り付けた状態では、カバーガラス31が開口部11を塞ぎ、カバーガラスユニット30を外装カバーユニット60から取り外した状態では、開口部11を介してNDフィルタ1が被写体側から見える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、特にレンズ交換式撮像装置において光学部品に付着した埃を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置においては、光路に埃等が入り込み、画像に映り込んでしまうことを避けるため、撮像光学系は外部から埃等が入り込まないように密閉構造となっていることが多い。
【0003】
しかし、どれほど厳密に密閉したとしても、外部から埃が混入する可能性を完全に無くすことは困難である。特に、近年多く市場に出回るようになってきたレンズ交換式の撮像装置では、その構造上、レンズ備え付けの撮像装置よりも外部から埃が進入しやすい。
【0004】
従って、撮像光学系自体は密閉構造をとりつつも、埃等が内部に混入した際にはその埃を除去できる方法が必要とされる。このような方法として、特許文献1には、レンズ交換式の撮像装置に関して塵埃除去装置が提案されている。すなわち、レンズを取り外した状態でマウント側から空気案内管を突っ込ませ、最外面にある光学部材(ローパスフィルタ)に付着したゴミを吹き飛ばすことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−47487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、外部から直接空気を送ることのできる箇所に付着した埃しか吹き飛ばすことができない。従って、ある程度密閉された外装の内部空間に外部から埃が進入してしまった場合に上記の方法にて埃を除去することはできない。内部空間に進入した埃を確実に取り除くためには、撮像装置本体を分解し、埃が付着した光学部品を取り出して埃を除去する必要があるが、そのような作業は非常に効率が悪い。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、外装の内部空間に配置された光学部品に付着した埃等の除去作業を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、外装部に取り付けられ、交換レンズを取り付けるためのレンズマウントと、光学部品を有し、前記外装部に固定され、光軸が通る開口部を前記光学部品の被写体側に有する光学ユニットと、透明部材を保持し、前記光学ユニットが前記外装部に固定された状態のまま前記外装部に対して被写体側から着脱可能に構成された保持部材とを有し、前記保持部材を前記外装部に取り付けた状態では、前記透明部材が前記開口部を塞ぎ、前記保持部材を前記外装部から取り外した状態では、前記開口部を介して前記光学部品が被写体側から見えるように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外装の内部空間に配置された光学部品に付着した埃等の除去作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレンズ交換式撮像装置の分解斜視図である。
【図2】NDフィルタユニットをそれぞれ被写体側、撮像素子ユニット側から見た斜視図である。
【図3】カバーガラスユニットをそれぞれ被写体側、撮像素子ユニット側から見た分解斜視図である。
【図4】撮像素子ユニット側から見たカバーガラスユニットの斜視図である。
【図5】組み付け完了後で交換レンズが非装着状態の装置本体の外観斜視図、組み付け完了状態からカバーガラスユニットを取り外した状態を示す装置本体の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係るレンズ交換式撮像装置の分解斜視図である。
【0013】
この撮像装置の装置本体100は、主な構成要素として、カバーガラスユニット30、外装部である外装カバーユニット60、光学ユニットであるNDフィルタユニット70、及び撮像素子ユニット90を有する。これらは図示しない交換レンズの光軸Zの方向に沿って配置され、これらのうち最も被写体側から遠い側に撮像素子ユニット90が配置される。
【0014】
図2(a)、(b)は、NDフィルタユニット70をそれぞれ被写体側、撮像素子ユニット90側から見た斜視図である。
【0015】
NDフィルタユニット70は、光学部品であるNDフィルタ1、モールドカバー2、金属カバー3、フレキシブル基板5、ローパスフィルタ6、押さえ板金7を有する。NDフィルタ1は、レンズからの入射光の量を減少させる光学フィルタである。NDフィルタ1を使用することで、撮影の際の絞りを開いたり、シャッタースピードを下げたりすることが可能となるため、長時間露出による特殊効果を利用した撮影等を行う際に用いられる。
【0016】
モールドカバー2には、金属カバー3と締結されるためのビス留め部10a〜10c、外装カバーユニット60に取り付けられるための取り付け部12a〜12dが設けられている。また、モールドカバー2には、光軸Zが通る開口部11が形成されている(図2(a))。
【0017】
NDフィルタ1は、NDフィルタユニット70に内蔵され、モールドカバー2と金属カバー3とで覆われた内部空間に配設される。NDフィルタ1は、撮影使用時にはレンズからの入射光を透過させるために光軸Z上に位置する。しかし、非撮影使用時には、NDフィルタユニット70の駆動機構(不図示)により、レンズからの入射光が透過しないように図2(a)のA方向(光軸Zに略垂直な平面方向)へ退避可能となっている。
【0018】
NDフィルタ1が使用位置と退避位置のどちらにあるのかという情報は、NDフィルタユニット70に設けられた図示しない検知手段により検知され、フレキシブル基板5を通じて電気的信号として本体制御部(図示せず)へと送られる。また、金属カバー3にもモールドカバー2と同様に、光軸Z上に開口部(図示せず)が設けられ、この開口部を塞ぐようにローパスフィルタ6が配置されている(図2(b))。
【0019】
ローパスフィルタ6は、光学像の空間周波数の高域成分を除去する光学ローパスフィルタである。すなわち、ローパスフィルタ6は、特定の閾値よりも高い周波数信号を減衰させて遮断し、低域周波数のみを信号として通過させることができるフィルタであり、高周波域が雑音として入りやすい撮像装置等に一般的に用いられているものである。
【0020】
板金部材7を、ローパスフィルタ6の上(撮像素子側)から金属カバー3に対してビス9a、9bを用いて組み付けることにより、ローパスフィルタ6が金属カバー3に対して固定される。
【0021】
このような構成により、NDフィルタ1は、モールドカバー2の開口部11を除いた部分においては、モールドカバー2、金属カバー3、ローパスフィルタ6及び板金部材7により密閉された空間に配置されていることになる。NDフィルタユニット70の単体としては、NDフィルタ1は開口部11を介して被写体側に開放されている。
【0022】
次に、モールドカバー2の開口部11を塞ぐためのカバーガラスユニット30について説明する。
【0023】
図3(a)、(b)は、カバーガラスユニット30をそれぞれ被写体側、撮像素子ユニット90側から見た分解斜視図である。図4は、撮像素子ユニット90側から見たカバーガラスユニット30の斜視図である。
【0024】
カバーガラスユニット30は、透明部材であるカバーガラス31、カバーガラス31を保持する保持部材32、導電部である押さえ板金33、及び、両面テープ34a、34bを有する。保持部材32には、溶着部35a、35b、両面テープ貼りつけ面37a、37b、ガイドリブ38a〜38f、3つのビス座39a、39b、39c、光軸Zが通る開口部40、及びつまみ部41が設けられている。つまみ部41は、保持部材32の上部から被写体側に向かって延設されており、指またはピンセット等で把持することでカバーガラスユニット30の全体を持つことができるようになっている。
【0025】
カバーガラス31は、開口部40を全て覆うことができるよう、開口部40よりも大きくなっている。また、押さえ板金33にはスリット穴43a、43bが形成されている。
【0026】
カバーガラスユニット30の組み立て順序としては、まず保持部材32の両面テープ貼りつけ面37a、37b(図3(b))に両面テープ34a、34bを貼りつける。次に、その上からカバーガラス31を貼り付けて、保持部材32に対してカバーガラス31を保持固定する。その際、保持部材32に設けられたガイドリブ38a〜38f(図3(b))が、カバーガラス31の外形に沿ってガイドの役割を果たすので、カバーガラス31は保持部材32に対して正確に位置決めされた状態で保持することができる。
【0027】
次に、押さえ板金33を保持部材32に対して組み付ける。その際、押さえ板金33に設けられたスリット穴43aには、それぞれ保持部材32の溶着部35a、35bが嵌り込む(図4)。そして溶着部35a、35bをスリット穴43aに対して溶着する。また、図示しないが、保持部材32には溶着部35a、35bの対角位置にも同様の溶着部があり、スリット穴43bに対し同様の溶着を行う。これにより、押さえ板金33は保持部材32に対して両側で固定される。
【0028】
押さえ板金33が組み付けられると、カバーガラス31は、押さえ板金33に接触する。あるいは、保持部材32の少なくとも一部が導電部で構成され、この導電部を介してカバーガラス31と押さえ板金33とが電気的に導通するようにしてもよい。
【0029】
次に、装置本体100の全体構成について図1を用いて説明する。
【0030】
まず、外装カバーユニット60は、図1に示すように、金属外装部61、モールド外装部62、レンズマウント63、レンズリリース釦64、電気接点65を有する。レンズマウント63は、不図示の交換レンズを装置本体100に対して取り付け固定するための部分であり、交換レンズの取り付けの基準面でもある。
【0031】
レンズマウント63に交換レンズが取り付いた状態でレンズリリース釦64が押下されることによって、交換レンズをレンズマウント63より取り外すことができる。金属外装部61に設けられる電気接点65は、レンズマウント63に装着されている交換レンズの電気接点と接触し、当該交換レンズと装置本体100とを電気的に接続して、電気的信号の通信を行えるようにするためのものである。
【0032】
レンズマウント63、レンズリリース釦64、電気接点65の構造については公知であり、これらの詳細な説明を省略する。
【0033】
金属外装部61には、カバーガラスユニット30を組み付けるための開口部67とビスボス68が設けられる。ビスボス68は、カバーガラスユニット30を締結するための締結部であり、図1には1つしか現れていないが、カバーガラスユニット30の3つのビス座39a、39b、39cに対応して3つ設けられる。具体的には、ビスボス68は金属外装部61の上部と左右の計3ヶ所に設けられ、且つ、被写体側から見て投影上、電気接点65に重ならない位置に配置される。金属外装部61にはさらに、電気接点65を取り付けるための取り付け部69が設けられている。
【0034】
また、NDフィルタユニット70とカバーガラスユニット30との間に弾性部材81が配置される。弾性部材81は、NDフィルタユニット70の開口部11よりもひと回り大きい開口部82を有しており、その材質は例えばスポンジである。
【0035】
被写体からの入射光が、装着された交換レンズを介して、カバーガラスユニット30の開口部40、外装カバーユニット60の開口部67、弾性部材81の開口部82、及びNDフィルタユニット70の開口部11を通過してくる。この入射光を撮像素子ユニット90が電気信号へと変換する。
【0036】
カバーガラスユニット30とNDフィルタユニット70とは、光軸Z方向において外装カバーユニット60を挟むように位置している。カバーガラスユニット30は外装カバーユニット60に対してα方向(光軸Zに平行で被写体側から撮像素子側に向く方向)にビス座39a〜39cを介して組み付けられる。すなわち、ビス座39a〜39cが、それぞれ対応するビスボス68に対してビス66a〜66cにて締結される。
【0037】
その際、カバーガラスユニット30の押さえ板金33(図3)が、金属部分である金属外装部61とビスボス68を通じて外装カバーユニット60と接触し、互いの導通が確保される。押さえ板金33、金属外装部61及びビスボス68は導電性があるので、カバーガラス31に帯電した静電気が押さえ板金33を介して金属外装部61へと流れ、カバーガラス31への、静電気による埃等の吸着・付着が防止される。
【0038】
また、NDフィルタユニット70は外装カバーユニット60に対して取り付け部12a〜12d(図2(a)参照)でのビス留めにより、β方向(α方向の反対方向)に組み付けられる。組み付け時には、カバーガラスユニット30とNDフィルタユニット70の開口部11との間は弾性部材81でチャージされる構成になっている。そのため、NDフィルタユニット70の開口部11はカバーガラス31と弾性部材81とで密閉されることになる。
【0039】
弾性部材81に設けられた開口部82は、上述のようにNDフィルタユニット70の開口部11に対して十分大きいので、レンズからの入射光の通過を弾性部材81が阻害することは無い。
【0040】
次に、かかる構成の撮像装置において、NDフィルタ1に埃が付着した場合の除去方法について説明する。
【0041】
図5(a)は、組み付け完了後で交換レンズが非装着状態の装置本体100の外観斜視図である。図5(b)は、図5(a)の組み付け完了状態からカバーガラスユニット30を取り外した状態を示す外観斜視図である。
【0042】
図5(a)に示すように、装置本体100において、カバーガラスユニット30と外装カバーユニット60とが外観に露出しているが、NDフィルタユニット70等は装置本体100の内部に格納され、外部からは見えないようになっている。
【0043】
図5(a)の状態からカバーガラスユニット30を取り外すには、まず3カ所のビス66a〜66cをドライバにて外し、つまみ部41をピンセット等で摘まんで引っ張るようにする。これにより、カバーガラスユニット30が装置本体100から被写体側に取り外される。
【0044】
このようにしてカバーガラスユニット30を取り去ると、装置本体100において、金属外装部61の開口部67及びNDフィルタユニット70の開口部11(図1参照)を介してNDフィルタ1が被写体側から見えるようになる。NDフィルタ1が外観に露出するので、開口部11からNDフィルタ1に対してエアー等を吹き付けることによって、NDフィルタ1に付着した埃を吹き飛ばすことが可能になる。
【0045】
以上のように、カバーガラス31を保持する保持部材32を有したカバーガラスユニット30を、NDフィルタユニット70が外装カバーユニット60に固定された状態のまま被写体側に着脱可能に構成した。これにより、装置本体100を分解するという大掛かりな作業をすることなく、カバーガラスユニット30を取り外すだけでNDフィルタ1を外観に露出させることができる。
【0046】
従って本発明によれば、カバーガラスユニット30を取り外し、露出した開口部11を介してNDフィルタ1にエアーを吹き付ければ、NDフィルタ1に付着した埃等を非常に簡単な作業で確実に除去することができる。よって、装置本体100の内部のほぼ密閉された空間に配置された光学部品であるNDフィルタ1に付着した埃等の除去作業を容易にすることができる。
【0047】
また、保持部材32につまみ部41を設けたので、カバーガラスユニット30を外装カバーユニット60に対して着脱する際に被写体側から把持することができ、着脱作業が行いやすい。
【0048】
また、ビスボス68は、被写体側から見て投影上、電気接点65に重ならない位置に配置されるので、保持部材32の着脱によって電気の導通機能が害されることが回避される。
【0049】
また、カバーガラスユニット30の押さえ板金33が、カバーガラス31に接触すると共に、外装カバーユニット60の金属外装部61及びビスボス68に接触する。これにより、カバーガラス31への静電気による埃等の吸着・付着が抑制される。なお、静電気に起因する埃等の吸着・付着対策の観点からは、カバーガラスユニット30に設ける導電部が、カバーガラス31と外装カバーユニット60のうちの金属部分とに接触するようにすればよい。
【0050】
なお、埃等を除去すべき対象である光学部品としてNDフィルタ1を例示したが、これに限られず、外装の内部空間に配置される光学部品を対象にできる。
【0051】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 NDフィルタ
11 開口部
30 カバーガラスユニット
31 カバーガラス
32 保持部材
41 つまみ部
60 外装カバーユニット
63 レンズマウント
70 NDフィルタユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部に取り付けられ、交換レンズを取り付けるためのレンズマウントと、
光学部品を有し、前記外装部に固定され、光軸が通る開口部を前記光学部品の被写体側に有する光学ユニットと、
透明部材を保持し、前記光学ユニットが前記外装部に固定された状態のまま前記外装部に対して被写体側から着脱可能に構成された保持部材とを有し、
前記保持部材を前記外装部に取り付けた状態では、前記透明部材が前記開口部を塞ぎ、前記保持部材を前記外装部から取り外した状態では、前記開口部を介して前記光学部品が被写体側から見えるように構成されたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記外装部に対して着脱する際に被写体側から把持することができるつまみ部を有することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記外装部には、前記レンズマウントに装着された交換レンズと電気的に接続するための電気接点が設けられると共に、前記保持部材が締結されるための締結部が、被写体側から見て投影上、前記電気接点に重ならない位置に設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記外装部の少なくとも一部は金属でなり、前記保持部材は前記透明部材と接触する導電部を有し、前記保持部材が前記外装部に取り付けられた状態では前記導電部が前記外装部のうち金属部分に接触することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92609(P2013−92609A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233815(P2011−233815)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】