説明

撮影装置および該撮影装置によって撮影した画像の画像処理方法

【課題】人工食塊と微粒子の色の違いを、撮影時において照射する光源の色の違いによって鮮明にさせることによって、「微細に粉砕、すり潰されていない微粒子」の計数を、コンピュータ等によっても精度よく行うことが可能な画像を撮影するための撮影装置を提供する。
【解決手段】被撮影対象を撮影するための撮影装置であって、記被撮影対象を上方から撮影するための撮影手段と、被撮影対象の上方から、被撮影対象を照射する上方光源と、被撮影対象の下方から、被撮影対象を照射する下方光源とを備え、上方光源と、下方光源はそれぞれ異なる波長帯の光を照射し、上方光源と下方光源が両方とも同時に被撮影対象を照射した状態で、撮影手段によって、被撮影対象を撮影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を含有する人工食塊を用いてヒトの咀嚼機能を評価する際に、ヒトに咀嚼させた人工食塊に含まれる微粒子をコンピュータ等によって計数するために画像撮影する撮影装置および該撮影装置によって撮影した画像の画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
咀嚼、すなわち、食物をかみ砕き、唾液とよく混和させ、適当な大きさで水気のある食塊を作り、飲み込む準備をする行為は、ヒトが固形物を食べるために必要であるほか、覚醒効果やリラックス効果を得られたり、肥満、ぼけ、視力低下、姿勢悪化、むし歯、ガンなどを予防し、脳内の血液量の増加による加齢変化の抑制などの効果も得られるとされている。
【0003】
この咀嚼の能力(咀嚼能率)は、歯数、歯の健否、咬合面の形態、歯周組織の状態、顎型、咀嚼筋力、下顎運動様式、年齢、補綴物の状態など、無数の条件によって影響されるものである。
【0004】
咀嚼機能を評価する方法としては、例えば、ピーナッツや生米などをヒトに所定回数咀嚼させ、咀嚼後の状態を観察したり(篩分法)、色変わりガムをヒトに所定回数咀嚼させ、咀嚼後のガムの色の変化を観察したりする方法(色変わりガム法)が存在する。
【0005】
しかしながら、篩分法は、再現性に乏しく、また、計測時間が24時間程度と長時間を要していた。また、色変わりガム法は、観察結果を定量化することはできず、また、この方法は、実際には、咀嚼能力ではなく、混和能力を観察している。
【0006】
このため、本発明者等は、「咀嚼により微細に粉砕、すり潰される性質を有するほぼ均一な球形微粒子」を含有した人工食塊、および、この人工食塊を用いて咀嚼機能を評価するシステムを開発した(特許文献1)。
【0007】
この咀嚼機能評価システムは、咀嚼により微細に粉砕、すり潰され、咀嚼されないとき球形の形状を有する微粒子を含有する人工食塊をヒトに咀嚼させる工程と、この咀嚼された人工食塊を2枚のプレパラートの間に挟んで微粒子を押し潰さない程度の適切な厚みに圧延する工程と、この2枚のプレパラートの間に圧延された人工食塊中の残存する球形の形状を有する微粒子を計数する工程を含んでいる。
【0008】
このようにすることによって、有機溶剤等を使用することもなく、評価に高価な機器を使用することもなく、また、「微細に粉砕、すり潰されていない微粒子」を計数することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開公報WO2008/020588
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来、「微細に粉砕、すり潰されていない微粒子」を正確に計数するためにはヒトが目視によって行っていたため、計数に多大な時間と熟練を要していた。
この「微細に粉砕、すり潰されていない微粒子」の計数を、コンピュータ等に自動的に行わせようとする場合、咀嚼された人工食塊を2枚のプレパラートの間に挟んだ状態で、CCD(Charge Coupled Device Image Sensor)カメラなどによって撮影し、パターンマッチング等の手段によって計数する必要がある。
【0011】
しかしながら、人工食塊と微粒子の色の差がはっきりしない場合や、微粒子の輪郭がはっきりと撮影できない場合があり、従来の方法では、「微細に粉砕、すり潰されていない微粒子」の計数を、コンピュータ等によって精度よく行うことは困難であった。
【0012】
特に、食品安全性を考慮して人工食塊として市販のチューインガムと同等の成分のものを用いる場合には、甘味料として、および、チューインガムの作業工程における必要性から諸成分が含まれているため、これら諸成分がコンピュータ認識を行う際に、画像を曖昧とする原因となっていた。
【0013】
本発明は、人工食塊と微粒子の色の違いを、撮影時において照射する光源の色の違いによって鮮明にさせることによって、「微細に粉砕、すり潰されていない微粒子」の計数を、コンピュータ等によっても精度よく行うことが可能な画像を撮影するための撮影装置を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本発明は、このように撮影した画像において、微粒子の形状を鮮明にすることが可能な画像処理方法、ならびに、上述する撮影から画像処理までを行う撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前述したような従来技術における課題および目的を達成するために発明されたものであって、本発明の撮影装置は、被撮影対象を撮影するための撮影装置であって、
前記被撮影対象を上方から撮影するための撮影手段と、
前記被撮影対象の上方から、被撮影対象を照射する上方光源と、
前記被撮影対象の下方から、被撮影対象を照射する下方光源と、を備え、
前記上方光源と、下方光源はそれぞれ異なる波長帯の光を照射し、
前記上方光源と下方光源が両方とも同時に被撮影対象を照射した状態で、前記撮影手段によって、被撮影対象を撮影することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の撮影装置は、前記被撮影対象が、光透過性を有する微粒子を含み、所定の色彩を有する人工食塊であることを特徴とする。
また、本発明の撮影装置は、前記上方光源が、白色光を照射することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の撮影装置は、前記下方光源が、前記微粒子の特徴色となる波長の光を照射することを特徴とする。
また、本発明の撮影装置では、被撮影対象である前記人工食塊の色彩が、青の色相を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の撮影装置は、前記下方光源が照射する光の色彩が、赤の色相を有することを特徴とする。
また、本発明の撮影装置は、前記被撮影対象が、プレパラートによって挟持された状態で、前記下方光源の上方で、かつ、前記上方光源および撮影手段の下方に位置することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の撮影装置は、前記人工食塊が、チューインガムであることを特徴とする。
また、本発明の撮影装置は、前記チューインガムに、ガムの基本成分の白色結晶様である構造物が含有されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の画像処理方法は、上記の撮影装置によって撮影した被撮影対象の画像において、前記微粒子の形状を鮮明にするための画像処理方法であって、
前記画像のデータを、R,G,Bの各プレーンの画像に分割するRGBプレーン分割ステップと、
前記RGBプレーン分割ステップによって分割されたRプレーン、Gプレーン、Bプレーンの画像のうち、前記人工食塊の色彩が属するプレーンである除外プレーンによって構成される画像の輝度を反転させるとともに、輝度の最適化を行い、除外画像を生成する除外画像処理ステップと、
前記RGBプレーン分割ステップによって分割されたRプレーン、Gプレーン、Bプレーンのうち、前記下方光源が照射する光の色彩が属するプレーンである取得プレーンによって構成される画像の輝度の最適化を行う取得画像処理ステップと、
前記除外画像と取得画像とを乗算合成し、乗算画像を生成する画像乗算ステップと、
前記乗算画像を空間周波数画像に変換して、所定の周波数帯域のみを取得するバンドパスフィルタを適用したのち、実空間画像に変換して、X画像を生成するBPF適用ステップと、
前記X画像に対して、ガウス関数に基づいた画像平滑化フィルタを適用することによって、輪郭の膨張処理を行いY画像を生成する輪郭膨張ステップと、
前記Y画像を二値化してα画像を生成する二値化ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の画像処理方法は、前記α画像と、前記微粒子の形状を示すパターン画像とを比較することによって、α画像中の微粒子の個数を計数することを特徴とする。
また、本発明の画像処理システムは、上記の撮影装置と、該撮影装置によって撮影した被撮影対象の画像データを処理するための画像処理装置を備えた、画像処理システムであって、
前記撮影装置によって撮影した画像データを保存するための記憶装置と、
前記記憶装置に保存された画像データを処理するための演算処理装置と、を備え、
前記記憶装置に保存された画像データを、前記演算処理装置において、R,G,Bの各プレーンの画像に分割し、
前記分割されたRプレーン、Gプレーン、Bプレーンの画像のうち、前記人工食塊の色彩が属するプレーンである除外プレーンによって構成される画像の輝度を反転させるとともに、輝度の最適化を行い、
前記分割されたRプレーン、Gプレーン、Bプレーンの画像のうち、前記下方光源が照射する光の色彩が属するプレーンである取得プレーンによって構成される画像の輝度の最適化を行い、
前記除外画像と取得画像とを乗算合成することで、乗算画像を生成し、
前記乗算画像を空間周波数画像に変換して、所定の周波数帯域のみを取得するバンドパスフィルタを適用したのち、実空間画像に変換して、X画像を生成し、
前記X画像に対して、ガウス関数に基づいた画像平滑化フィルタを適用することによって、輪郭の膨張処理を行いY画像を生成し、
前記Y画像を二値化してα画像を生成することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の画像処理システムは、前記α画像と、前記微粒子の形状を示すパターン画像とを比較することによって、α画像中の微粒子の個数を計数することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、被撮影対象の撮影時に、上方と下方から異なる波長帯の光を照射することによって、光透過性を有する部分の色と、所定の色彩を有する部分、すなわち、光透過率の低い部分の色とを、明らかに異なる色彩として撮影することができるため、コントラストの高い画像を撮影することができる。
【0024】
さらに、本発明によれば、コントラストの高い撮影画像に対して画像処理を施すため、画像データにおける不要な部分、すなわち除外部分と、必要な部分、すなわち取得部分とを明確にした画像を生成することができる。
【0025】
さらに、本発明によれば、被撮影対象中の微粒子の計数を行う場合であっても、除外部分と取得部分とを明確にした画像を用いることで、微粒子の形状、すなわち、取得部分の形状が明確となっているため、コンピュータなどによっても正確に、かつ、迅速に計数を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の撮影装置の構成を説明するための概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の撮影装置で撮影する被撮影対象の一例であるチューインガムの形状を説明するための概略構成図である。
【図3】図3は、図2のチューインガムを本発明の撮影装置によって撮影するためにプレパラートによって圧延した状態を説明するための概略構成図である。
【図4】図4は、本発明の画像処理システムの構成を説明するための概略構成図である。
【図5】図5は、本発明の画像処理システムにおいて行われる画像処理のステップを説明するフロー図である。
【図6】図6は、図5のステップに沿って行われた画像処理後のα画像の一例を示す図である。
【図7】図7は、図6のα画像において、パターンマッチングによって微粒子の数を計数した場合の、パターンマッチングの状況を画像化した際の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を、図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明の撮影装置の構成を説明するための概略構成図、図2は、本発明の撮影装置で撮影する被撮影対象の一例であるチューインガムの形状を説明するための概略構成図、図3は、図2のチューインガムを本発明の撮影装置によって撮影するためにプレパラートによって圧延した状態を説明するための概略構成図である。
【0028】
図1に示すように、本発明の撮影装置は、被撮影対象18が挟まれた状態のプレパラート20を上方から撮影する撮影手段12と、プレパラート20の上方から光を照射する上方光源14と、プレパラート20の下方から光を照射する下方光源16とを備えている。
【0029】
撮影手段12としては、プレパラート20を近接して撮影できるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、フィルムカメラやCCD(Charge Coupled Device Image Sensor)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)といった素子を用いたデジタルカメラなどを用いることができる。特に、被撮影対象を撮影したのちに、画像処理を行うことを考慮した場合には、デジタルカメラを用いることが好ましい。また、撮影手段12としては、静止画のみならず動画も撮影可能なものであっても構わない。
【0030】
また、上方光源14としては、撮影手段12がプレパラート20を撮影する障害とならない形状であれば、特に限定されるものではないが、例えば、リング型光源を用いたり、撮影手段12の周囲に複数のLED(Light Emitting Diode)を設けたりすることができる。なお、上方光源14が照射する光としては、特に限定されるものではないが、被撮影対象18を撮影する際に、色彩に大きな影響を与えない光として白色光を照射することが好ましい。また、撮影時に光量の調整が可能なように、光量調整機能を有する光源を用いることが好ましい。
【0031】
また、下方光源16としては、特に限定されるものではなく、広く知られる様々な光源を用いることができる。なお、後述するように、被撮影対象18が、光透過性を有する微粒子を含んだ所定の色彩を有する人工食塊である場合、微粒子の特徴色となる色彩の波長の光を照射する光源とすることが好ましい。なお、微粒子の特徴色とは、後述する人工食塊30の基材32の色彩とは異なる色相を有する色彩、すなわち、基材32の色彩と微粒子34の色彩のコントラストが大きくなる色彩のことを意味する。
この場合、下方光源16として所定の色彩を発光するLEDを用いたり、下方光源16に所定の色彩を有するフィルタを設けるなどして、任意の波長の光を照射することができる。また、撮影時に光量の調整が可能なように、光量調整機能を有する光源を用いることが好ましい。
【0032】
なお、符号22は、撮影手段12および上方光源14を所定の高さで固定するための保持手段、符号24は、保持手段22が固定される支持軸、符号26は、下方光源16が載置される台座部、符号28は、後述するコンピュータと接続するためのケーブルである。
【0033】
以下、このような撮影装置10によって撮影される被撮影対象18の一例として、「咀嚼により微細に粉砕、すり潰される性質を有するほぼ均一な球形微粒子」を含有した人工食塊を用いた場合について説明する。
【0034】
図2に示すように、本実施例の人工食塊30としては、市販のチューインガムと同等の成分のものを用いており、この人工食塊30は、概ね青色をしたチューインガムのベースとなる基材32に、光透過性を有する直径250から300μm程度の微粒子34が含まれている。なお、図2では粒状の人工食塊30を示しているが、板状のものでもよいなど、人工食塊30の形状は限定されるものではない。また、図2では、説明のために微粒子34の大きさを実際の大きさよりも大きく、数は少なく描いている。
【0035】
チューインガムのベースとなる基材32としては、市販されるチューインガムと同様のものを用いることができる。
また、光透過性を有する微粒子34としては、口に含んで害のないものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、カルバナワックスの微粒子などを用いることができる。
【0036】
咀嚼機能を評価するために、この人工食塊30をヒトに所定回数咀嚼させ、咀嚼後の人工食塊30を、プレパラート20によって、圧延し、挟持することによって、人工食塊30を被撮影対象18として、撮影可能な状態としている。
【0037】
なお、プレパラート20は、微粒子34の直径の125%程度の隙間が形成されるように、間隔調整部21が備えられている。このようなプレパラート20によって、人工食塊30を圧延し、挟持することによって、図3に示すように、微粒子34が重ならずに広げることができる。なお、図3では、説明のために微粒子34の大きさを実際の大きさよりも大きく、数は少なく描いている。
【0038】
このように、被撮影対象18である人工食塊30が挟持されたプレパラート20を、撮影装置10の下方光源16の上方で、かつ、撮影手段12および上方光源14の下方に位置するように配置する。
【0039】
そして、上方光源14および下方光源16を照射した状態で、撮影手段12によって被撮影対象18を撮影する。なお、被撮影対象18として、概ね青色の基材32からなる人工食塊30を用いる場合には、下方光源16として、微粒子の特徴色である赤色の光を照射している。また、上方光源14としては、白色光を照射している。なお、人工食塊30としてチューインガムを用いる場合には、必要な添加物としての白色結晶(例えば、キシリトールや炭酸カルシウムなど)が混入されている。
【0040】
なお、被撮影対象18を撮影する場合には、蛍光灯の光や太陽光などの外光の影響を受けないように、遮光板(図示せず)などによって、撮影装置10を包囲することが好ましい。
【0041】
また、撮影手段12としてデジタルカメラを用いる場合には、撮影された画像データは後述するコンピュータの記憶装置に記憶される。一方、撮影手段12としてフィルムカメラを用いた場合には、撮影したフィルムを現像した後、イメージスキャナなどによって、画像データとして、後述するコンピュータに読み取り、記憶装置に記憶する。
【0042】
なお、このように白色光の上方光源14と、赤色の下方光源16によって照射された状態で撮影された被撮影対象18は、人工食塊30のベースとなる基材32、すなわち光透過性を有しない部分については、基材32そのものの色である概ね青色として撮影され、光透過性を有する微粒子34は、下方光源16の光の色である概ね赤色として撮影されることになる。なお、人工食塊30としてチューインガムを用いた場合に含まれるキシリトールなどの成分(白色結晶)は、白色として撮影される。
【0043】
なお、本明細書において赤とは、JIS慣用色名(JIS Z8102:2001 付表1に記載の色名。以下同様。)において、例えば、とき色、つつじ色、ばら色、からくれない、さんご色、紅梅色、桃色、紅色、紅赤、えんじ、蘇芳、茜色、赤、朱色、紅樺色、あやめ色、鉛丹色、牡丹色、赤紫、ローズレッド、ローズピンク、コチニールレッド、ルビーレッド、ワインレッド、オールドローズ、ローズ、ストロベリー、コーラルレッド、ピンク、ポピーレッド、シグナルレッド、カーマイン、レッド、トマトレッド、バーミリオン、スカーレット、マゼンタ、チェリーピンクのような色を意味し、これらの色と近い色も含んだ概念である。また、Rプレーンに属する色彩とは、このような赤の色彩のことを意味する。
【0044】
また、本明細書において緑とは、JIS慣用色名において、例えば、緑、常磐色、深緑、もえぎ色、若竹色、シャトルーズグリーン、リーフグリーン、シーグリーン、アイビーグリーン、アップルグリーン、ミントグリーン、グリーン、コバルトグリーン、エメラルドグリーン、マカライトグリーン、フォレストグリーン、ビリジアン、ビリヤードグリーンのような色を意味し、これらの色と近い色も含んだ概念である。また、Gプレーンに属する色彩とは、このような緑の色彩のことを意味する。
【0045】
また、本明細書において青とは、JIS慣用色名において、例えば、青緑、新橋色、浅葱色、白群、納戸色、かめのぞき、水色、藍鼠、空色、青、藍色、濃藍、勿忘草色、露草色、はなだ色、紺青、るり色、るり紺、紺色、かきつばた色、勝色、群青色、藤納戸、ききょう色、紺藍、ナイルブルー、ピーコックブルー、ターコイズブルー、マリンブルー、シアン、スカイブルー、セルリアンブルー、サックスブルー、ブルー、コバルトブルー、アイアンブルー、ブルシャンブルー、ネービーブルー、ウルトラマリンブルー、オリエンタルブルーのような色を意味し、これらの色と近い色も含んだ概念である。また、Bプレーンに属する色彩とは、このような青の色彩のことを意味する。
【0046】
以下、撮影された画像データの画像処理について説明する。
図4は、本発明の画像処理システムの構成を説明するための概略構成図である。
本発明の画像処理システム50は、上述する撮影装置10と、記憶装置54および演算処理装置56を備えたコンピュータ52によって構成されている。
【0047】
上述するように、撮影装置10によって撮影された画像は、画像データとして、コンピュータ52の記憶装置54に保存される。そして、保存された画像データは、微粒子34の形状が鮮明となるように、図5に示す手順に従って、演算処理装置56によって画像処理が行わる。
【0048】
まず、撮影された画像データは、赤色の成分(Rプレーン)のみを有するR画像、緑色の成分(Gプレーン)のみを有するG画像、青色の成分(Bプレーン)のみを有するB画像に分割される(S10)。
【0049】
なお、各プレーンの成分のみを有する各画像は、各画素が輝度情報のみを有しており、各画像を実空間画像として表現した場合には、グレースケール画像として表現される。
次いで、人工食塊30の色彩、すなわち本実施例においては青色が属するプレーンであるBプレーン画像の輝度を反転させるとともに、輝度の最適化を行い、除外画像としてB^画像を生成する(S11)。
【0050】
次に、下方光源16が照射する光の色彩、すなわち本実施例においては微粒子の特徴色である赤色が属するプレーンであるRプレーン画像の輝度の最適化を行う(S12)。
なお、輝度の最適化としては、画像処理方法として一般的に用いられている方法、例えば、画像データのコントラストを上げる方法などを用いることができる。
【0051】
そして、B^画像とR画像とを乗算合成し、乗算画像としてB^R画像を生成する(S13)。なお、乗算合成とは、例えば、所定位置の画素の色をRGB表記とした場合に(Ra,Ga,Ba)によって表すことができる画像Aと、所定位置の画素の色をRGB表記とした場合に(Rb,Gb,Bb)によって表すことができる画像Bを画像合成した場合に、所定位置の画素の色をRGB表記として数1によって表すことができる合成方法である。なお、乗算合成の際には、画像全ての画素について、同様の計算が行われ乗算合成される。
【0052】
【数1】

なお、白色として撮影されたキシリトールなどの添加物は、B^画像と、R画像を乗算合成することによって、除外情報となり、後述する画像処理後のα画像においては、黒色で表現される。
【0053】
そして、乗算画像であるB^R画像を、例えば、離散コサイン変換やフーリエ変換などによって空間周波数画像に変換し、所定の周波数帯域のみを取り出すために所定の通過周波数帯域を有するバンドパスフィルタを適用する。その後、バンドパスフィルタを通過した空間周波数画像を、例えば、逆フーリエ変換などによって実空間画像に変換し、この得られた画像データをX画像とする(S14)。
【0054】
次いで、X画像に対して、ガウス関数(正規分布)に基づいた画像平滑化フィルタを適用することによって、画像データにおける微粒子34の輪郭を膨張させる(S15)。このようにして得られた画像データをY画像とする。
【0055】
そして、Y画像を二値化することによって、白と黒のみによって表現されるα画像を生成する(S16)。
このように画像処理を行い、生成されたα画像においては、図6に示すように、被撮影対象18の基材32の部分、すなわち、概ね青色の部分については、黒によって表現され、微粒子34の部分、すなわち、概ね赤色の部分については、白によって表現される。なお、図6は、被撮影対象18の一部を撮影し、上述する画像処理を施したものである。
【0056】
このように、微粒子34の形状を鮮明にすることによって、例えば、図7に示すように、パターンマッチングなどの方法によって、微粒子34の個数を演算処理装置において、正確に、かつ、迅速に計数することが可能となる。
【0057】
なお、図6に示すように、撮影手段12の有効画素数や解像度などの問題により、被撮影対象18全体を撮影できない場合には、プレパラート20を平面方向に回転可能な台座に載置することによって、プレパラート20を回転させながら撮影手段12によって撮影することによって、撮影手段12の焦点距離等を変えずに被撮影対象18を撮影することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、画像処理を行うコンピュータ52をサーバーとし、撮影装置10によって撮影された画像データをインターネットなどのネットワークを介してコンピュータ50に送信して画像処理を行うなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 撮影装置
12 撮影手段
14 上方光源
16 下方光源
18 被撮影対象
20 プレパラート
21 間隔調整部
22 保持手段
24 支持軸
26 台座部
28 ケーブル
30 人工食塊
32 基材
34 微粒子
50 画像処理システム
52 コンピュータ
54 記憶装置
56 演算処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被撮影対象を撮影するための撮影装置であって、
前記被撮影対象を上方から撮影するための撮影手段と、
前記被撮影対象の上方から、被撮影対象を照射する上方光源と、
前記被撮影対象の下方から、被撮影対象を照射する下方光源と、を備え、
前記上方光源と、下方光源はそれぞれ異なる波長帯の光を照射し、
前記上方光源と下方光源が両方とも同時に被撮影対象を照射した状態で、前記撮影手段によって、被撮影対象を撮影することを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記被撮影対象が、光透過性を有する微粒子を含み、所定の色彩を有する人工食塊であることを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
前記上方光源が、白色光を照射することを特徴とする請求項1または2に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記下方光源が、前記微粒子の特徴色となる波長の光を照射することを特徴とする請求項2または3に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記人工食塊の色彩が、青の色相を有することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項6】
前記下方光源が照射する光の色彩が、赤の色相を有することを特徴とする請求項5に記載の撮影装置。
【請求項7】
前記被撮影対象が、プレパラートによって挟持された状態で、前記下方光源の上方で、かつ、前記上方光源および撮影手段の下方に位置することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項8】
前記人工食塊が、チューインガムであることを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項9】
前記チューインガムに、キシリトール(ほかの必要添加物)が含有されていることを特徴とする請求項8に記載の撮影装置。
【請求項10】
請求項2から9のいずれかに記載の撮影装置によって撮影した被撮影対象の画像において、前記微粒子の形状を鮮明にするための画像処理方法であって、
前記画像のデータを、R,G,Bの各プレーンの画像に分割するRGBプレーン分割ステップと、
前記RGBプレーン分割ステップによって分割されたRプレーン、Gプレーン、Bプレーンの画像のうち、前記人工食塊の色彩が属するプレーンである除外プレーンによって構成される画像の輝度を反転させるとともに、輝度の最適化を行い、除外画像を生成する除外画像処理ステップと、
前記RGBプレーン分割ステップによって分割されたRプレーン、Gプレーン、Bプレーンのうち、前記下方光源が照射する光の色彩が属するプレーンである取得プレーンによって構成される画像の輝度の最適化を行う取得画像処理ステップと、
前記除外画像と取得画像とを乗算合成し、乗算画像を生成する画像乗算ステップと、
前記乗算画像を空間周波数画像に変換して、所定の周波数帯域のみを取得するバンドパスフィルタを適用したのち、実空間画像に変換して、X画像を生成するBPF適用ステップと、
前記X画像に対して、ガウス関数に基づいた画像平滑化フィルタを適用することによって、輪郭の膨張処理を行いY画像を生成する輪郭膨張ステップと、
前記Y画像を二値化してα画像を生成する二値化ステップと、
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
前記α画像と、前記微粒子の形状を示すパターン画像とを比較することによって、α画像中の微粒子の個数を計数することを特徴とする請求項10に記載の画像処理方法。
【請求項12】
請求項2から9のいずれかに記載の撮影装置と、該撮影装置によって撮影した被撮影対象の画像データを処理するための画像処理装置を備えた、画像処理システムであって、
前記撮影装置によって撮影した画像データを保存するための記憶装置と、
前記記憶装置に保存された画像データを処理するための演算処理装置と、を備え、
前記記憶装置に保存された画像データを、前記演算処理装置において、R,G,Bの各プレーンの画像に分割し、
前記分割されたRプレーン、Gプレーン、Bプレーンの画像のうち、前記人工食塊の色彩が属するプレーンである除外プレーンによって構成される画像の輝度を反転させるとともに、輝度の最適化を行い、
前記分割されたRプレーン、Gプレーン、Bプレーンの画像のうち、前記下方光源が照射する光の色彩が属するプレーンである取得プレーンによって構成される画像の輝度の最適化を行い、
前記除外画像と取得画像とを乗算合成することで、乗算画像を生成し、
前記乗算画像を空間周波数画像に変換して、所定の周波数帯域のみを取得するバンドパスフィルタを適用したのち、実空間画像に変換して、X画像を生成し、
前記X画像に対して、ガウス関数に基づいた画像平滑化フィルタを適用することによって、輪郭の膨張処理を行いY画像を生成し、
前記Y画像を二値化してα画像を生成することを特徴とする画像処理システム。
【請求項13】
前記α画像と、前記微粒子の形状を示すパターン画像とを比較することによって、α画像中の微粒子の個数を計数することを特徴とする請求項12に記載の画像処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−103586(P2011−103586A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258170(P2009−258170)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(507184591)株式会社エグザマスティカ (1)
【Fターム(参考)】