説明

撮影装置

【課題】 解像度の低下が小さく抑えられて画質が高められた撮影装置を提供する。
【解決手段】 カメラ100のぶれの方向およびぶれの程度を検出するカメラ動き方向検出部9からのぶれの検出結果に基づいて、パンによる撮影が行なわれた場合は、液晶光学ローパスフィルタ3の、ぶれの大きな横方向について分離幅が小さくなるように、またチルトによる撮影が行なわれた場合は、液晶光学ローパスフィルタ3の、ぶれの大きな縦方向について分離幅が小さくなるように、分離幅調整部4で調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影光学系を備えその撮影光学系を経由して入射してきた被写体光を撮像素子で捉えて画像信号を生成する撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影装置の一つであるデジタルカメラには、撮影素子として、CCD(Charge Coupled Device)が広く用いられている。CCDには、所定の間隔(画素ピッチと称する)で二次元的に配列された多数の光電変換素子、およびそれら多数の光電変換素子上に配備されたカラーフィルタアレイが備えられている。カラーフィルタアレイの色の配列方式としては、ベイヤ配列方式、Gストライプ配列方式、R/G市松配列方式、GRBストライプ配列方式等が知られている。CCDは、撮影レンズを経由して入射されてきた被写体光を、上記光電変換素子および上記カラーフィルタで離散的にサンプリングすることによりカラーの画像信号を得ている。
【0003】
ここで、CCDに備えられた光電変換素子の画素ピッチやカラーフィルタアレイの配列方式に応じて定まる色配列ピッチ以上の高周波成分を有する被写体光が入射されると、折り返し歪みが生じる。被写体を撮影して得られた画像に、この折り返し歪みの成分が混入すると、撮影された画像の色や輝度が周期的に変動する縞状の模様(モアレ)等が発生する。詳細には、画素ピッチや色配列ピッチにより定まる空間サンプリング周波数を有するCCDを備えた撮影装置において、被写体を撮影するにあたり、その被写体に空間サンプリング周波数の1/2の周波数(ナイキスト周波数と称する)以上の成分が含まれていると、そのナイキスト周波数で折り返されて、折り返し歪みが発生し、その折り返し歪みが偽信号として画像信号に重畳され、これによりモアレ等が発生して、撮影画像の画質が低下するという問題がある。この問題を解決するために、撮影レンズとCCDとの間に光学的ローパスフィルタを配置し、この光学的ローパスフィルタで被写体光の高周波成分を除去するということが行なわれている。
【0004】
例えば、偏向分離機能を有する2枚の水晶複屈折板と、これら2枚の複屈折板の間に配備され液晶を用いた旋光子を備えた光学的ローパスフィルタとで、CCDを構成する隣り合う光電変換素子に1つの光線を分離して得られた同じ強度を持つ常光と異常光とを入射し、これにより画素ピッチよりも細かい空間周波数を有する被写体像を鈍らせて、モアレを低減する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、2枚の水晶複屈折板と位相差板を備えた光学的ローパスフィルタからの常光と異常光との光線強度の差を低減するために、撮影レンズと光学的ローパスフィルタの間に、偏向板と液晶素子を有する調光装置を設けた技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
さらに、水平方向および斜め方向に画素の見かけ上の位置を光学素子でずらすことにより、解像度を高める技術が提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
また、見かけ上の画素数を増加させて解像度を高めるために、偏向板と液晶板と複屈折板とでCCDの画素配列の水平方向,垂直方向それぞれについて1/2画素ずつずらし、1/2画素ずつずれた2つの画像信号を切り替えて出力する技術が提案されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2003−287620号公報
【特許文献2】特開2003−330046号公報
【特許文献3】特開2001−66625号公報
【特許文献4】特開2000−125169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
デジタルカメラで動画や静止画を撮影するにあたり、デジタルカメラの位置を変更せずにそのデジタルカメラを横方向や縦方向に振りながら撮影する、いわゆるパンやチルトによる撮影を行なう場合がある。
【0009】
ここで、光学式ローパスフィルタは、画素ピッチよりも細かい空間周波数を有する被写体像を鈍らせるものであるため、モアレ等の発生を防止することはできるものの撮影画像の解像度が低下するという問題がある。そこで、パンやチルトが行なわれた場合、その動きを考慮して光学式ローパスフィルタの特性を変化させることにより、撮影画像の画質の低下を小さく抑えることが考えられる。即ち、パンやチルトにおける動き方向については、光学式ローパスフィルタの効果を低下させることにより、撮影画像の解像度の低下を小さく抑えて画質を高めることが考えられる。また、手ぶれ等が発生した場合も同様に、動きの発生していない方向については、光学式ローパスフィルタの機能を低下させることが考えられる。
【0010】
しかし、特許文献1に提案された光学的ローパスフィルタは、それぞれが固有の屈折率を有する2枚の水晶複屈折板と、液晶分子のねじれの角度が45度に固定された旋光子とを備えたものであるため、その光学的ローパスフィルタの特性をカメラの動きに応じて可変することは困難であり、従って撮影画像の画質の低下を小さく抑える点に欠けるという問題がある。
【0011】
また、特許文献2に提案された、光学的ローパスフィルタを構成する2枚の複屈折板はそれぞれ固有の屈折率を有するとともに調光装置を構成する偏向板の偏向軸および液晶素子の液晶分子配向方位は、光学的ローパスフィルタからの光線分離方位に対して45度の角度をなすものである。このため、光学的ローパスフィルタおよび調光装置の特性をカメラの動きに応じて可変することは困難であり、従って撮影画像の画質の低下を小さく抑える点に欠けるという問題がある。
【0012】
さらに、特許文献3に提案された技術は、観察される画素数を見かけ上増加させて、見易い画像を提供する技術であり、カメラの動きに伴う解像度の変化に対する対応については記載されていない。
【0013】
また、特許文献4に提案された技術は、偏向板と液晶板と複屈折板とでCCDの画素配列の水平方向,垂直方向それぞれについて1/2画素ずつずれた2つの画像信号を切り替えて出力することにより、見かけ上の画素数を増加させて解像度を高める技術であり、やはりカメラの動きに伴う解像度の変化に対する対応については記載されていない。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑み、解像度の低下が小さく抑えられて画質が高められた撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成する本発明の撮影装置のうちの第1の撮影装置は、撮影光学系を備えその撮影光学系を経由して入射してきた被写体光を撮像素子で捉えて画像信号を生成する撮影装置において、
この撮影装置のぶれの方向およびぶれの程度を検出するセンサと、
液晶を用い印加電圧に応じて複屈折の分離幅が変化するローパスフィルタであって、縦横の各分離幅を独立に調整自在なローパスフィルタと、
上記センサによるぶれの検出結果に基づいて、上記ローパスフィルタの縦および横の分離幅を、ぶれの大きな方向については分離幅が小さくなるようにそれぞれ調整する分離幅調整部とを備えたことを特徴とする。
【0016】
撮影装置で動画や静止画を撮影するにあたり、パンやチルトによる撮影が行なわれた場合、この撮影装置は横方向や縦方向に動くため、鈍ったボケた感じの画像となってしまう。ここで、ローパスフィルタは、画素ピッチよりも細かい空間周波数を有する被写体像を鈍らせるものであるため、横方向や縦方向への動きに起因する解像度の劣化とローパスフィルタの機能に起因する解像度の劣化とが重なり、さらにボケた画像が得られてしまうこととなる。
【0017】
本発明の第1の撮影装置は、この撮影装置のぶれの方向およびぶれの程度を検出するセンサによるぶれの検出結果に基づいて、液晶を用い印加電圧に応じて複屈折の分離幅が変化するローパスフィルタの縦および横の分離幅を、ぶれの大きな方向については分離幅が小さくなるようにそれぞれ調整するものである。このため、パンによる撮影が行なわれた場合は、ローパスフィルタの、ぶれの大きな横方向について分離幅が小さくなるように、またチルトによる撮影が行なわれた場合は、ローパスフィルタの、ぶれの大きな縦方向について分離幅が小さくなるように調整することにより、撮影画像の解像度を必要以上に低下させないようにすることができる。従って、撮影画像の画質を高めることができる。
【0018】
また、上記目的を達成する本発明の撮影装置のうちの第2の撮影装置は、撮影光学系を備えその撮影光学系を経由して入射してきた被写体光を撮像素子で捉えて画像信号を生成する撮影装置において、
この撮影装置のぶれの方向およびぶれの程度を検出するセンサと、
液晶を用い印加電圧に応じて光束の屈折方向が変化する画素ずらし素子であって、縦横の画素ずらし量を独立に調整することにより上記撮像素子上の被写体像の画像信号を二次元的に調整する画素ずらし素子と、
上記センサによるぶれの検出結果に基づいて、上記画素ずらし素子の、縦および横の画素ずらし量を、ぶれの大きな方向については画素ずらし量が小さくなるようにそれぞれ調整する画素ずらし量調整部とを備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明の第2の撮影装置は、この撮影装置のぶれの方向およびぶれの程度を検出するセンサによるぶれの検出結果に基づいて、液晶を用い印加電圧に応じて光束の屈折方向が変化する画素ずらし素子の、縦および横の画素ずらし量を、ぶれの大きな方向については画素ずらし量が小さくなるようにそれぞれ調整するものである。このため、この撮影装置で動画や静止画を撮影するにあたり、ぶれが発生した場合、画素ずらし素子の、縦および横の画素ずらし量を、ぶれの大きな方向については画素ずらし量が小さくなるようにそれぞれ調整することにより、撮影画像の解像度を必要以上に低下させないようにすることができる。従って、撮影画像の画質を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、解像度の低下が小さく抑えられて画質が高められた撮影装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1の撮影装置の第1実施形態であるカメラの外観図である。
【0023】
図1(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は側面図、(d)は背面図である。
【0024】
図1(a)〜(c)に示すカメラ100は、撮影光学系を備えその撮影光学系を経由して入射してきた被写体光を撮像素子で捉えて画像信号を生成するデジタルカメラである。
【0025】
図1(d)に示すように、このカメラ100の背面にはユーザがこのカメラ100を使用するときに種々の操作を行なうための操作部120が設けられている。
【0026】
この操作部120には、カメラ100を作動させるための電源投入用の電源スイッチ121、撮影と再生とを自在に切り替える撮影・再生切替レバー122、オート撮影やマニュアル撮影等を選択するための撮影モードダイヤル123、各種のメニューの設定や選択あるいはズームを行なうための十字スイッチ124、閃光発光用のスイッチ125、および十字スイッチ124で選択されたメニューの実行やキャンセル等を行なうための実行/キャンセルスイッチ126が備えられている。
【0027】
また、カメラ100の背面には、撮影画像や再生画像等を表示するための画像表示LCD102と、操作の手助けを行なうための操作表示LCD103が備えられている。
【0028】
さらに、図1(b)に示すように、このカメラ100の上面にはレリーズ釦104が配備されている。このレリーズ釦104によって撮影の開始指示がカメラ100の内部に備えられた、後述するメインCPUへと伝えられる。このカメラ100では撮影・再生切替レバー122によって撮影と再生との切り替えが自在になっていて、撮影を行なうときにはユーザによって撮影・再生切替レバー122が撮影側122aに切り替えられ、再生を行なうときには撮影・再生切替レバー122が再生側122bに切り替えられる。また、図1(a)に示すように、カメラ100の上面には、閃光を発光する閃光発光管105aを有する閃光発光装置105が配備されている。
【0029】
さらに、図1(c)に示すように、カメラ100の側面には、このカメラ100により撮影された被写体の画像信号をテレビやプロジェクタ等に出力するためのケーブルが接続される映像出力端子106と、このカメラ100により撮影された被写体の画像信号をUniversal Serial Bus(USB)端子が備えられたパーソナルコンピュータ等に出力し、およびこのようなパーソナルコンピュータ等からカメラ100に画像信号を入力するためのケーブルが接続されるUSB端子107と、ACアダプタからの直流電圧が入力される直流電圧入力端子108とが備えられている。
【0030】
図2は、図1に示すカメラの回路構成を示すブロック図である。
【0031】
このカメラ100には、撮影光学系1が備えられている。この撮影光学系1は、撮影レンズ101と、絞りユニット2と、液晶光学ローパスフィルタ3(本発明にいうローパスフィルタの一例に相当)とから構成されている。撮影レンズ101は、ズーム群101_1とフォーカス群101_2から構成されている。
【0032】
液晶光学ローパスフィルタ3は、液晶を用い印加電圧に応じて複屈折の分離幅が変化するローパスフィルタであって、縦横の各分離幅を独立に調整自在なローパスフィルタである。
【0033】
また、このカメラ100には、このカメラ100のぶれの方向およびぶれの程度を検出するカメラ動き方向検出部9(本発明にいうセンサの一例に相当)が備えられている。具体的には、カメラ動き方向検出部9は、このカメラ100で動画や静止画を撮影するにあたり、パンによる撮影が行なわれた場合は、そのぶれの大きな横方向における信号を検出し、またチルトによる撮影が行なわれた場合は、そのぶれの大きな縦方向における信号を検出する。
【0034】
さらに、このカメラ100には、カメラ動き方向検出部9によるぶれの検出結果に基づいて、液晶光学ローパスフィルタ3の縦および横の分離幅を、ぶれの大きな方向については分離幅が小さくなるようにそれぞれ調整する分離幅調整部4が備えられている。
【0035】
また、このカメラ100には、ズーム群101_1を駆動するズーム駆動部5と、フォーカス群101_2を駆動するフォーカス駆動部6と、絞りユニット2を駆動する絞り駆動部7と、ズーム群101_1の位置を検出するズーム位置検出部8とが備えられている。
【0036】
さらに、このカメラ100には、撮影光学系1を経由して入射してきた被写体光を結像させてアナログの画像信号に変換する撮像素子であるCCD132が備えられている。
【0037】
また、このカメラ100には、CCD132からのアナログ画像信号をディジタルの画像データにA/D変換するA/D部133と、A/D部133からのデジタルの画像データが表わす被写体像のホワイトバランスを合わせるとともにその被写体像の階調特性における直線の傾き(γ)を調整し、さらにデジタルの画像信号を増幅する白バランス・γ処理部134が備えられている。
【0038】
さらに、カメラ100には、白バランス・γ処理部134からの画像データを格納するバッファメモリ135が備えられている。
【0039】
また、カメラ100には、CG(クロックジェネレータ)部136と、測光・測距用CPU137と、充電・発光制御部138と、通信制御部139と、YC処理部140と、電源141とが備えられている。
【0040】
CG部136は、CCD132を駆動するための駆動信号、A/D部133,白バランス・γ処理部134を制御する制御信号、および通信制御部139を制御する制御信号を出力する。また、このCG部136には、後述するメインCPU145からのシャッタ制御信号、および測光・測距用CPU137からの制御信号が入力される。
【0041】
測光・測距用CPU137は、撮影レンズ101,絞りユニット2を、ズーム駆動部5,フォーカス駆動部6,絞り駆動部7で駆動するとともにズーム位置検出部8で検出することにより測光や測距を行ない、CG部136および充電・発光制御部138を制御する。さらに、この測光・測距用CPU137は、後述するメインCPUとの間でデータ通信を行なう。また、この測光・測距用CPU137は、カメラ動き方向検出部9からのぶれの大きさを表わす検出信号、即ち、このカメラ100で動画や静止画を撮影するにあたり、パンによる撮影が行なわれた場合は、そのぶれの大きな横方向における検出信号を、またチルトによる撮影が行なわれた場合は、そのぶれの大きな縦方向における検出信号を入力し、入力された検出信号に応じた大きさの信号を分離幅調整部4に向けて出力する。
【0042】
充電・発光制御部138は,閃光発光管105aを発光させるために電源141からの電力の供給を受けて図示しない閃光発光用のコンデンサを充電したり、その閃光発光管105aの発光を制御する。
【0043】
通信制御部139には、図1(c)に示すUSB端子107が備えられており、この通信制御部139は、カメラ100により撮影された被写体の画像信号をUSB端子が備えられたパーソナルコンピュータ等の外部装置に出力し、およびこのような外部装置からカメラ100に画像信号を入力することにより、その外部装置との間のデータ通信を担うものである。
【0044】
また、このカメラ100には、図1(c)に示す映像出力端子106が備えられており、YC処理部140は、バッファメモリ135に格納された画像データをバスライン142を介して読み出し、輝度信号(Y)と色信号(C)に分離されたカラー映像信号YCを生成する。生成されたカラー映像信号YCは、上記映像出力端子106から出力される。
【0045】
電源141は、このカメラ100の各部に電力を供給する。
【0046】
さらに、カメラ100には、圧縮・伸長&ID抽出部143と、I/F部144が備えられている。圧縮・伸長&ID抽出部143は、バッファメモリ135に格納された画像データを、バスライン142を介して読み出して圧縮し、I/F部144を経由してメモリカード200に格納する。また、圧縮・伸長&ID抽出部143は、メモリカード200に格納された画像データの読み出しにあたり、メモリカード200固有の識別番号(ID)を抽出し、そのメモリカード200に格納された画像データを読み出して伸長し、バッファメモリ135に格納する。
【0047】
また、カメラ100には、メインCPU145と、EEPROM146と、YC/RGB変換部147と、表示用のドライバ148とが備えられている。
【0048】
メインCPU145は、このカメラ100全体の制御を行なう。
【0049】
EEPROM146には、このカメラ100固有の固体データ等が格納されている。
【0050】
YC/RGB変換部147は、YC処理部140で生成されたカラー映像信号YCを3色のRGB信号に変換して表示用のドライバ148を経由して画像表示LCD102に出力する。
【0051】
図3は、図2に示す液晶光学ローパスフィルタの断面図である。
【0052】
図3に示す液晶光学ローパスフィルタ3には、スペーサ31と、スペーサ31を介して互いに対向して配置された平板状の透明基板32,33と、透明基板32,33の内面に配備された透明電極34,35と、透明電極34,35の内面に配備された配光膜36,37と、スペーサ31および配光膜36,37からなる空間に封入された液晶38とが備えられている。液晶38は液晶分子38aを有する。また、透明電極34,35には、液晶分子38aの配列の方向を調整する電圧Vが印加される。
【0053】
透明基板32,33は、入射される光の波長帯域に対して高い透過率を有する材料で形成され、ガラスや高分子フイルム等を用いることができる。
【0054】
透明電極34,35は、電圧Vが印加される電極パターンを有する。電極パターンの構造については後述するが、この電極パターンの構造およびこの電極パターンに印加される電圧Vの大きさに応じて、液晶分子38aの配列の方向を自在に調整することができる。
【0055】
配光膜36,37は、透明電極34,35に電圧Vが印加されていないときに液晶分子38aを所定の配列の方向にさせておくためのものである。
【0056】
図4は、図3に示す液晶光学ローパスフィルタの液晶分子の配列の方向を調整する様子を説明するための図である。
【0057】
図4には、液晶光学ローパスフィルタ3を構成する透明電極34,35と、配光膜36,37と、液晶分子38aを有する液晶38とが示されている。液晶分子38aは、長軸方向に光学軸を有する。透明電極34,35には、液晶分子38aの配列の方向を調整する電圧Vが印加されており、これにより液晶分子38aの配列の方向は、光学軸に対して角度(チルト角)βだけ変更されている。
【0058】
図5は、図4に示す液晶分子の、印加電圧に応じて変化する複屈折の分離幅を示す図である。
【0059】
液晶分子38aの配列の方向は、光学軸Pに対してチルト角βだけ変更されている。このような状態における液晶分子38aは、光路長Lを有する。このような光路長Lを有する液晶分子217aに入射光Aが入射される。この入射光Aは、液晶分子38aで複屈折されて常光A1と異常光A2とに分離されて出射される。これら常光A1と異常光A2の分離幅dは、チルト角βnに応じて定まる。このように、入射光Aを液晶分子38aで複屈折して常光A1と異常光A2とに分離して、CCD132を構成する隣り合う光電変換素子に同じ光線を入射し、これにより画素ピッチよりも細かい空間周波数を有する被写体像を鈍らせて、モアレ等を低減する。
【0060】
通常の液晶分子の屈折率を想定した場合、10μmまでの分離幅なら変えることは可能である。
【0061】
ここで、液晶光学ローパスフィルタ3の実施例について説明する。本実施例では、ガラス基板上に透明電極34,35としてインジウムスズオキサイド(ITO)をスパッタにより付けた。その上に、配光膜36,37としてポリイミド膜(日産化学製)を塗布、焼成したのち、ラビング処理した。40μmのスペーサ31(積水化学製)でサンドイッチ状に挟んだ素子中に液晶ZLI−1132(メルク製)を注入し封止した。
【0062】
電圧Vを印加しない状態でのチルト角は30度であり、液晶光学ローパスフィルタ3の分離幅を偏光顕微鏡で観測したところ7μmであった。この素子(液晶光学ローパスフィルタ3)に電圧Vを印加させてチルト角を45度とした場合、分離幅は5μmとなり、また、この素子に電圧Vを印加させてチルト角を60度とした場合、分離幅は4μmとなった。即ち、電圧Vnにより液晶光学ローパスフィルタ3の分離幅を可逆的に変化させることが可能であった。
【0063】
図6は、液晶光学ローパスフィルタの、分離幅dにおける空間周波数レスポンスを示す図である。
【0064】
図6の横軸は空間周波数を示し、縦軸はMTFを示す。液晶光学ローパスフィルタの、分離幅d(mm)における、グラフAで示す空間周波数レスポンスは、分離幅dの逆数の半分1/(2d)cs/mmでゼロとなる。
【0065】
図7は、種々のレンズの空間周波数レスポンスを示す図である。
【0066】
レンズの、空間周波数に対するMTF特性には、いろいろな傾向があり、グラフB,Cに示すように高周波まで伸びて高解像度を有する特性のもの、グラフDに示すように低周波で高コントラストを有する特性のもの等、多様である。ズームレンズにおいても、空間周波数に対するMTF特性は、ズーム全域にわたって一様ではなく、多くのものは、ワイド端では高周波まで伸び、テレ端では開放F値の落ち込みと相俟って中間の周波数帯からMTF値が低くなる。一般に、液晶光学ローパスフィルタは、このようなレンズ特性を考慮して複屈折の分離幅が調整される。
【0067】
本実施形態のカメラ100では、このような液晶光学ローパスフィルタ3に対して、このカメラ100のぶれの方向およびぶれの程度を検出するカメラ動き方向検出部9からのぶれの検出結果に基づいて、液晶光学ローパスフィルタ3の縦および横の分離幅を、ぶれの大きな方向については分離幅が小さくなるように分離幅調整部4でそれぞれ調整するものである。このため、このカメラ100で動画や静止画を撮影するにあたり、パンによる撮影が行なわれた場合は、液晶光学ローパスフィルタ3の、ぶれの大きな横方向について分離幅が小さくなるように、またチルトによる撮影が行なわれた場合は、液晶光学ローパスフィルタ3の、ぶれの大きな縦方向について分離幅が小さくなるように調整することにより、撮影画像の解像度を必要以上に低下させないようにすることができる。従って、撮影画像の画質を高めることができる。
【0068】
図8は、図1,図2に示すカメラにおける液晶光学ローパスフィルタの断面形状を、電極の構造とともに示す図である。
【0069】
図8には、カメラ100における液晶光学ローパスフィルタ3を構成する配光膜36,37と、それら配光膜36,37の外面に配備された透明電極34,35が示されている。透明電極34は、水平方向に形成されたストライプ状の電極パターン34aを有する。また、透明電極35も、透明電極34と同様に、やはり水平方向に形成されたストライプ状の電極パターン35aを有する。この液晶光学ローパスフィルタ3は、透明電極34,35の電極パターン34a,35aが対称的であるため、例えば電極パターン34a,35aの上部から下部にかけて共に値が徐々に小さく(もしくは大きく)なるような電圧Vを印加することにより、液晶分子38aの配列の方向を徐々に小さく(もしくは大きく)なるように調整することができる。このようにすることにより、液晶光学ローパスフィルタ3の上下方向に対する複屈折の分離幅を調整することができる。また、例えば電極パターン34a,35aそれぞれの各部分ごとに任意の大きさの電圧Vを印加することにより、液晶分子38aの配列の方向を自在に調整することもできる。このようにすることにより、液晶光学ローパスフィルタ3の複屈折の分離幅を自在に調整することができる。
【0070】
図9は、図8に示す液晶光学ローパスフィルタとは異なる液晶光学ローパスフィルタの断面形状を、電極の構造とともに示す図である。
【0071】
図9に示す液晶光学ローパスフィルタ3_1は、図8に示す液晶光学ローパスフィルタ3と比較し、水平方向に形成されたストライプ状の電極パターン35aを有する透明電極35に代えて、垂直方向に形成されたストライプ状の電極パターン3_11aを有する透明電極3_11が配備されている点が異なっている。ここで、例えば電極パターン34aで液晶光学ローパスフィルタ3_1の上下の複屈折の分離幅を調整するとともに、電極パターン3_11aで液晶光学ローパスフィルタ3_1の左右の複屈折の分離幅を調整することにより、液晶光学ローパスフィルタ3_1の上下方向および左右方向に対する複屈折の分離幅を調整することができる。また、例えば電極パターン34a,3_11aそれぞれの各部分ごとに任意の大きさの電圧Vを印加することにより、液晶光学ローパスフィルタ3_1の複屈折の分離幅を自在に調整することができる。
【0072】
図10は、図8,図9に示す液晶光学ローパスフィルタとは異なる液晶光学ローパスフィルタの断面形状を、電極の構造とともに示す図である。
【0073】
図10に示す液晶光学ローパスフィルタ3_2は、図8に示す液晶光学ローパスフィルタ3と比較し、水平方向に形成されたストライプ状の電極パターン35aを有する透明電極35に代えて、複数の同心円状の電極パターン3_21aを有する透明電極3_21が配置されている点が異なっている。ここで、同心円状の電極パターン3_21aの周辺部から中央部にかけて値が徐々に小さく(もしくは大きく)なるような電圧Vを印加することにより、液晶光学ローパスフィルタ3_2の周辺部から中央部にかけて複屈折の分離幅を調整することができる。
【0074】
図11は、図8,図9,図10に示す液晶光学ローパスフィルタとは異なる液晶光学ローパスフィルタの断面形状を、電極の構造とともに示す図である。
【0075】
図11に示す液晶光学ローパスフィルタ3_3は、図8に示す液晶光学ローパスフィルタ3と比較し、水平方向に形成されたストライプ状の電極パターン35aを有する透明電極35に代えて、マトリックス状の電極パターン3_31aを有する透明電極3_31が配置されている点が異なっている。ここで、マトリックス状の電極パターン3_31aそれぞれに異なる値の電圧Vを印加することにより、液晶光学ローパスフィルタ3_3の任意の位置に対する複屈折の分離幅を調整することができる。
【0076】
図12は、2枚の液晶光学ローパスフィルタと旋光制御素子とを備えた液晶光学ローパスフィルタの断面図である。
【0077】
図12に示す液晶光学ローパスフィルタ310は、2枚の液晶光学ローパスフィルタ3と、隣接する液晶光学ローパスフィルタ3の間に配置され後段側(図12の右側)に配置された液晶光学ローパスフィルタ3で複屈折の分離が行なわれるように入射した画像の偏光の向きを回転させる旋光制御素子311とを備えたものである。ここで、旋光制御素子311は、液晶を用いて旋光を生じさせる液晶旋光制御素子であり、具体的には液晶光学ローパスフィルタ3が用いられる。尚、液晶を用いて旋光を生じさせる液晶旋光制御素子に変えて、水晶素子を用いて旋光を生じさせる水晶旋光制御素子を用いてもよい。
【0078】
この液晶光学ローパスフィルタ310では、この液晶光学ローパスフィルタ310に入射された光線は、前段の液晶光学ローパスフィルタ3で垂直方向に常光と異常光とに分離される。分離された常光と異常光は、旋光制御素子311に入射される。この旋光制御素子311では、常光と異常光との偏光の向きを、例えば45度に回転して後段の液晶光学ローパスフィルタ3に向けて出射する。後段の液晶光学ローパスフィルタ3では、垂直方向に2つの常光と2つの異常光とに分離して出射する。ここで、旋光制御素子311は、液晶を用いて旋光を生じさせるものであるため、液晶の液晶分子の配列の方向を印加電圧に応じて上述した45度以外の角度(旋光量)にも変化させることができる。従って、この液晶光学ローパスフィルタ310では、1つの光線が4つの光線に分離されることとなり、正方形、長方形、または菱形の特性を持つ分離幅を調整することができる。従って、複屈折の分離幅をさらに自在に調整することができる。
【0079】
図13は、図1、図2に示すカメラの、ぶれの方向に応じて液晶光学ローパスフィルタの複屈折の分離幅を調整する分離幅調整方法のフローを示す図である。
【0080】
先ず、ステップS11において、ぶれ方向検出データを取得する。次いで、ステップS12において、液晶光学ローパスフィルタ(LPF)の、撮影レンズの特性に見合った特性を決定し、さらにステップS13において液晶光学ローパスフィルタに電圧を印加することにより液晶光学ローパスフィルタを調整する。
【0081】
次にステップS14において、液晶光学ローパスフィルタのX方向(横方向)についての調整を行なう。さらに、ステップS15において、液晶光学ローパスフィルタのY方向(縦方向)についての調整を行なう。例えば、パンによる撮影が行なわれた場合は、液晶光学ローパスフィルタの、ぶれの大きなX方向について分離幅が小さくなるように、またチルトによる撮影が行なわれた場合は、液晶光学ローパスフィルタの、ぶれの大きなY方向について分離幅が小さくなるように調整する。
【0082】
さらに、ステップS16において、ぶれ方向検出データを取得する。次いで、ステップS17において、ぶれがあるか否かを判定する。ぶれがないと判定された場合はステップS16に戻る。一方、ぶれがあると判定された場合はステップS11まで戻る。
【0083】
図14および図15は、本発明の第1の撮影装置の第2実施形態である携帯電話の、それぞれ表面および裏面を示す外観斜視図である。
【0084】
図14および図15に示す携帯電話2000は、撮影光学系を備えその撮影光学系を経由して入射してきた被写体光を撮像素子で捉えて画像信号を生成する、上部2010と下部2020とからなる折り畳み式の携帯電話である。
【0085】
上部2010には、図14に示すように、画像表示装置2100と、スピーカからの音声を放つための送話口2012と、アンテナ2013とが備えられている。また、上部2010には、図15に示すように、撮影光学系を構成する撮影レンズ2014が備えられている。一方、下部2020には、図14に示すように、各種の操作ボタン2021_1,2021_2からなる操作部2021と、話者の声をマイクロホンに伝えるための受話口2022が設けられている。
【0086】
図16は、図14,図15に示す携帯電話の内部の概略構成を示すブロック図である。
【0087】
この携帯電話2000には、撮影光学系を構成する撮影レンズ2014および液晶光学ローパスフィルタ2003(本発明にいうローパスフィルタの他の一例に相当)が備えられている。液晶光学ローパスフィルタ2003は、液晶を用い印加電圧に応じて複屈折の分離幅が変化するローパスフィルタであって、縦横の各分離幅を独立に調整自在なローパスフィルタである。尚、この液晶光学ローパスフィルタ2003の構成および機能は、図3を参照して説明した液晶光学ローパスフィルタ3の構成および機能と同じであるため、これ以上の説明は省略する。
【0088】
また、この携帯電話2000には、この携帯電話2000のぶれの方向およびぶれの程度を検出する携帯電話動き方向検出部2009(本発明にいうセンサの他の一例に相当)が備えられている。具体的には、携帯電話動き方向検出部2009は、この携帯電話2000で動画や静止画を撮影するにあたり、パンによる撮影が行なわれた場合は、そのぶれの大きな横方向における信号を検出し、またチルトによる撮影が行なわれた場合は、そのぶれの大きな縦方向における信号を検出する。
【0089】
さらに、この携帯電話2000には、携帯電話動き方向検出部2009によるぶれの検出結果に基づいて、液晶光学ローパスフィルタ2003の縦および横の分離幅を、ぶれの大きな方向については分離幅が小さくなるようにそれぞれ調整する分離幅調整部2004が備えられている。
【0090】
また、この携帯電話2000には、撮影光学系を経由して入射してきた被写体光を結像させてアナログの画像信号に変換する撮像素子であるCCD2031が備えられている。
【0091】
さらに、この携帯電話2000には、CCD固体撮像素子2031で得られた画像信号を入力して、利得調整、A/D変換、ホワイトバランス補正、ガンマ補正等の各種画像処理を行なう画像処理部2032、および、図14に示す画像表示装置2100が備えられている。
【0092】
また、この携帯電話2000には、記録部2033が備えられており、画像処理部2032における、さらに圧縮処理の行なわれた画像信号が送られてその記録部2033に配備された画像メモリ(図示せず)に画像信号が記録される。
【0093】
さらに、この携帯電話2000には、図14にも示す、多数の操作ボタンが配列されそれらの操作ボタンの操作の検出が行なわれる操作部2021、および制御部2034が備えられており、この操作部2021における操作ボタンの操作状態に基づいて、画像処理部2032、記録部2033、画像表示装置2100、および後述する通信部2035の動作を制御部2034で制御する。
【0094】
この図16に示すマイクロホン2036は、図14に示す受話口2022の内側の位置に配備されていて話者の声をピックアップするものであり、スピーカ2037は、図14に示す送話口2012の内側に配備されていて、電話の相手から送られてきた音声を発するものである。
【0095】
通信部2035は、それらマイクロホン2036とスピーカ2037、さらに図14、図15にも示すアンテナ2013に接続され、制御部2034の制御を受けて、電話のための通信を担当している。この通信部2035はいわゆる電子メールの送受信も担当するが、本発明の特徴とは直接な関係がないため電話や電子メールの機能についてはこれ以上の詳細説明は省略する。
【0096】
この携帯電話2000は、この携帯電話2000のぶれの方向およびぶれの程度を検出する携帯電話動き方向検出部2009からのぶれの検出結果に基づいて、液晶光学ローパスフィルタ2003の縦および横の分離幅を、ぶれの大きな方向については分離幅が小さくなるように分離幅調整部2004でそれぞれ調整するものである。このため、この携帯電話2000で動画や静止画を撮影するにあたり、パンによる撮影が行なわれた場合は、液晶光学ローパスフィルタ2003の、ぶれの大きな横方向について分離幅が小さくなるように、またチルトによる撮影が行なわれた場合は、液晶光学ローパスフィルタ2003の、ぶれの大きな縦方向について分離幅が小さくなるように調整することにより、撮影画像の解像度を必要以上に低下させないようにすることができる。従って、撮影画像の画質を高めることができる。
【0097】
図17は、本発明の第2の撮影装置の第1実施形態であるカメラの回路構成を示すブロック図である。
【0098】
尚、図17に示すカメラ3000の外観図は、図1に示すカメラ100の概観図と同じであるため、図示省略する。また、図2に示すカメラ100の構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付し、異なる点について説明する。
【0099】
図17に示すカメラ3000は、図2に示すカメラ100と比較し、画素ずらし素子3001と、画素ずらし量調整部3002が追加されている点が異なっている。
【0100】
画素ずらし素子3001は、液晶を用い印加電圧に応じて光束の屈折方向が変化する画素ずらし素子であって、縦横の画素ずらし量を独立に調整することによりCCD132上の被写体像の画像信号を二次元的に調整する。
【0101】
画素ずらし量調整部3002は、カメラ動き方向検出部9によるぶれの検出結果に基づいて、画素ずらし素子3001の、縦および横の画素ずらし量を、ぶれの大きな方向については画素ずらし量が小さくなるようにそれぞれ調整する。
【0102】
カメラ3000で動画や静止画を撮影するにあたり、前述したように、パンやチルトによる撮影が行なわれた場合、このカメラ3000では、液晶光学ローパスフィルタ3の、ぶれの大きな横方向や縦方向について分離幅が小さくなるように調整される。さらに、このカメラ3000では、カメラ動き方向検出部9によるぶれの検出結果に基づいて、画素ずらし素子3001の、縦および横の画素ずらし量を、ぶれの大きな方向については画素ずらし量が小さくなるようにそれぞれ調整される。このため、このカメラ3000では、ぶれが発生した場合、液晶光学ローパスフィルタ3の調整と併用して、画素ずらし素子3001の、縦および横の画素ずらし量を、ぶれの大きな方向については画素ずらし量が小さくなるようにそれぞれ調整することにより、撮影画像の解像度を必要以上に低下させないようにすることができる。従って、撮影画像の画質を高めることができる。尚、ぶれの大きさが、画素の1/2ピッチを超えた時点で画素ずらし量はゼロ(画素ずらし素子3001の特性はオフ)になる。
【0103】
図18は、図17に示すカメラの、画素ずらし素子の画素ずらし量を調整する画素ずらし量調整方法のフローを示す図である。
【0104】
先ず、ステップS21において、ぶれ方向検出データを取得する。次いで、ステップS22において、画素ずらし方向を決定する。さらに、ステップS23において、画素ずらし方向を調整してステップS24に進む。
【0105】
ステップS24では、光学液晶ローパスフィルタ(LPF)の調整方法を決定し、さらにステップS25で光学液晶ローパスフィルタをその方法で調整する。次いで、ステップS26において、ぶれ方向検出データを取得する。
【0106】
さらに、ステップS27において、ぶれがあるか否かを判定する。ぶれがないと判定された場合はステップS26に戻る。一方、ぶれがあると判定された場合はステップS21まで戻る。
【0107】
図19は、本発明の第2の撮影装置の第2実施形態である携帯電話の内部の概略構成を示すブロック図である。
【0108】
尚、図19に示す携帯電話4000の外観斜視図は、図14,図15に示す携帯電話2000の概観斜視図と同じであるため、図示省略する。また、図16に示す携帯電話2000の構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付し、異なる点について説明する。
【0109】
図19に示す携帯電話4000は、図16に示す携帯電話2000と比較し、画素ずらし素子4001と、画素ずらし量調整部4002が追加されている点が異なっている。
【0110】
画素ずらし素子4001は、液晶を用い印加電圧に応じて光束の屈折方向が変化する画素ずらし素子であって、縦横の画素ずらし量を独立に調整することによりCCD2031上の被写体像の画像信号を二次元的に調整する。
【0111】
画素ずらし量調整部4002は、携帯電話動き方向検出部2009によるぶれの検出結果に基づいて、画素ずらし素子4001の、縦および横の画素ずらし量を、ぶれの大きな方向については画素ずらし量が小さくなるようにそれぞれ調整する。
【0112】
この携帯電話4000で動画や静止画を撮影するにあたり、パンやチルトによる撮影が行なわれた場合、この携帯電話4000では、液晶光学ローパスフィルタ2003の、ぶれの大きな横方向や縦方向について分離幅が小さくなるように調整される。さらに、この携帯電話4000では、携帯電話動き方向検出部2009によるぶれの検出結果に基づいて、画素ずらし素子4001の、縦および横の画素ずらし量を、ぶれの大きな方向については画素ずらし量が小さくなるようにそれぞれ調整される。このため、この携帯電話4000では、ぶれが発生した場合、液晶光学ローパスフィルタ2003の調整と併用して、画素ずらし素子4001の、縦および横の画素ずらし量を、ぶれの大きな方向については画素ずらし量が小さくなるようにそれぞれ調整することにより、撮影画像の解像度を必要以上に低下させないようにすることができる。従って、撮影画像の画質を高めることができる。尚、ぶれの大きさが、画素の1/2ピッチを超えた時点で画素ずらし量はゼロ(画素ずらし素子3001の特性はオフ)になる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の撮影装置の第1実施形態であるカメラの外観図である。
【図2】図1に示すカメラの回路構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す液晶光学ローパスフィルタの断面図である。
【図4】図3に示す液晶光学ローパスフィルタの液晶分子の配列の方向を調整する様子を説明するための図である。
【図5】図4に示す液晶分子の、印加電圧に応じて変化する複屈折の分離幅を示す図である。
【図6】液晶光学ローパスフィルタの、分離幅dにおける空間周波数レスポンスを示す図である。
【図7】種々のレンズの空間周波数レスポンスを示す図である。
【図8】図1,図2に示すカメラにおける液晶光学ローパスフィルタの断面形状を、電極の構造とともに示す図である。
【図9】図8に示す液晶光学ローパスフィルタとは異なる液晶光学ローパスフィルタの断面形状を、電極の構造とともに示す図である。
【図10】図8,図9に示す液晶光学ローパスフィルタとは異なる液晶光学ローパスフィルタの断面形状を、電極の構造とともに示す図である。
【図11】図8,図9,図10に示す液晶光学ローパスフィルタとは異なる液晶光学ローパスフィルタの断面形状を、電極の構造とともに示す図である。
【図12】2枚の液晶光学ローパスフィルタと旋光制御素子とを備えた液晶光学ローパスフィルタの断面図である。
【図13】図1、図2に示すカメラの、ぶれの方向に応じて液晶光学ローパスフィルタの複屈折の分離幅を調整する分離幅調整方法のフローを示す図である。
【図14】本発明の第1の撮影装置の第2実施形態である携帯電話の表面を示す外観斜視図である。
【図15】本発明の第1の撮影装置の第2実施形態である携帯電話の裏面を示す外観斜視図である。
【図16】図14,図15に示す携帯電話の内部の概略構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第2の撮影装置の第1実施形態であるカメラの回路構成を示すブロック図である。
【図18】図17に示すカメラの、画素ずらし素子の画素ずらし量を調整する画素ずらし量調整方法のフローを示す図である。
【図19】本発明の第2の撮影装置の第2実施形態である携帯電話の内部の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0114】
1 撮影光学系
2 絞りユニット
3,3_1,3_2,3_3,310,2003 液晶光学ローパスフィルタ
3_11,3_21,3_31,34,35 透明電極
3_11a,3_21a,3_31a,34a,35a 電極パターン
4,2004 分離幅調整部
5 ズーム駆動部
6 フォーカス駆動部
7 絞り駆動部
8 ズーム位置検出部
9 カメラ動き方向検出部
31 スペーサ
32,33 透明基板
36,37 配光膜
38 液晶
38a 液晶分子
100,3000 カメラ
101 撮影レンズ
101_1 ズーム群
101_2 フォーカス群
102 画像表示LCD
103 操作表示LCD
104 レリーズ釦
105 閃光発光装置
105a 閃光発光管
106 映像出力端子
107 USB端子
108 直流電圧入力端子
120 操作部
121 電源スイッチ
122 撮影・再生切替レバー
123 撮影モードダイヤル
124 十字スイッチ
125 閃光発光用スイッチ
126 実行/キャンセルスイッチ
132 CCD
133 A/D部
134 白バランス・γ処理部
135 バッファメモリ
136 CG部
137 測光・測距用CPU
138 充電・発光制御部
139 通信制御部
140 YC処理部
141 電源
142 バスライン
143 圧縮・伸長&ID抽出部
144 I/F部
145 メインCPU
146 EEPROM
147 YC/RGB変換部
148 ドライバ
200 メモリカード
311 旋光制御素子
2000,4000 携帯電話
2009 携帯電話動き方向調整部
2010 上部
2012 送話口
2013 アンテナ
2020 下部
2021 操作部
2021_1,2021_2 操作ボタン
2022 受話口
2031 CCD固体撮像素子
2032 画像処理部
2033 記録部
2034 制御部
2035 通信部
2036 マイクロホン
2037 スピーカ
3001,4001 画素ずらし素子
3002,4002 画素ずらし量調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系を備え該撮影光学系を経由して入射してきた被写体光を撮像素子で捉えて画像信号を生成する撮影装置において、
この撮影装置のぶれの方向およびぶれの程度を検出するセンサと、
液晶を用い印加電圧に応じて複屈折の分離幅が変化するローパスフィルタであって、縦横の各分離幅を独立に調整自在なローパスフィルタと、
前記センサによるぶれの検出結果に基づいて、前記ローパスフィルタの縦および横の分離幅を、ぶれの大きな方向については分離幅が小さくなるようにそれぞれ調整する分離幅調整部とを備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
撮影光学系を備え該撮影光学系を経由して入射してきた被写体光を撮像素子で捉えて画像信号を生成する撮影装置において、
この撮影装置のぶれの方向およびぶれの程度を検出するセンサと、
液晶を用い印加電圧に応じて光束の屈折方向が変化する画素ずらし素子であって、縦横の画素ずらし量を独立に調整することにより前記撮像素子上の被写体像の画像信号を二次元的に調整する画素ずらし素子と、
前記センサによるぶれの検出結果に基づいて、前記画素ずらし素子の、縦および横の画素ずらし量を、ぶれの大きな方向については画素ずらし量が小さくなるようにそれぞれ調整する画素ずらし量調整部とを備えたことを特徴とする撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−104419(P2007−104419A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292656(P2005−292656)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】