説明

撹拌円型焼却炉

【課題】下水汚泥を効率よく処理でき、且つ分岐送風管のたわみを炉床に敷設した耐熱小粒子状物で支持し、その厚さを適宜調整することにより該炉床面が損傷するのを防止できるようにしたものである。
【解決手段】焼却炉の中心部に回転自在な回転送風軸管を設け、該回転送風軸管より放射状に分岐送風管を延出し、該分岐送風管には複数の分岐送風枝管を設けてなる撹拌円型焼却炉において、該焼却炉の平坦な耐熱性炉床上に耐熱小粒子状物を移動自在に敷設し、且つ該分岐送風管の延出長さに応じて回転送風軸管側に設けた堰の高さを調整し、該堰の高さを該耐熱小粒子状物の厚さとし、各々の該分岐送風管の先端側に位置する分岐送風枝管の下端部は該耐熱小粒子状物に接し或いは埋設する位置となるように形成したことを特徴とする撹拌円型焼却炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する分岐送風管から送られてきた空気を分岐送風枝管から吹き出し、同時に処理物を撹拌しながら燃焼する撹拌円型焼却炉に関するもので、焼却炉内で処理物を乾燥し燃焼することができるので汚泥のような水分を多く含む処理物でも焼却処理ができる撹拌円型焼却炉を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水分を多く含む下水等における汚泥の減量化や焼却処理を行うことのできる処理装置が求められている。この目的に適合する装置として、乾燥機と撹拌円型焼却炉を組み合わせた装置が着目されている。しかし、上記のように、水分を多く含む下水汚泥は、従来処理を行ってきた汚泥処理とは異なって、処理対象物がかさばり、処理量が多くなり、それに応えるためには大型の焼却炉が必要となっている。
【0003】
撹拌円型焼却炉を大型化とするには燃焼床面積を大きくする必要があるが、これを実現するためには焼却炉の隅部にまで空気を供給する回転アームとなる分岐送風管の長さを長くする必要がある。この場合、分岐送風管は、自重でたわみが生じたり、処理物から回転に伴う抵抗を受けやすくなるため、該分岐送風管を含め強い構造物とする必要がある。通常、たわみを考慮した片持ち構造の設計基準では、分岐送風管長を長くするためには長さの3乗に比例した強度を持つ構造体が必要となる。また、該分岐送風管は、焼却炉内で使用する構造物のため熱の影響を強く受け、その材料の選定及び冷却方法等の考慮が必要となってくる。該分岐送風管のたわみ量としては、例えば、有効床面積が20mの焼却炉でも450℃の昇温時に該分岐送風管の先端側が50mmを超える場合も観察されている。このことを放置して運転を続行すると空気の吹き出し口と焼却炉の炉床面とが噛んでしまい、該分岐送風管の回転が持続しなくなる欠点があった。
【0004】
他方、処理の対象物となる下水汚泥は、発熱量も様々で砂を含むものもあり、また、地域特性もあり、焼却炉の稼動に困難が生じていることが増加している。更に、この下水汚泥の焼却灰は、灰分が多い特徴がある。上記のような特性を持つ下水汚泥を処理するためには、焼却炉内で乾燥、燃焼、焼却、炭化成分が残った焼却灰の再燃焼及び冷却を確実に行えるように下水汚泥の挙動を適切にコントロールする必要があるが、下水汚泥の挙動をコントロールするには焼却炉床面を安定化することが重要なこととなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−17619号公報
【特許文献2】特開昭61−17826号公報
【特許文献3】特開2009−243744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記欠点を解決したもので、下水汚泥を効率よく処理でき、且つ分岐送風管のたわみを炉床に敷設した耐熱小粒子状物で支持し、その厚さを適宜調整することにより、該分岐送風管長を長くでき、燃焼床面積を大きくすることを可能としたものである。また、該耐熱小粒子状物により該炉床面が損傷することを防止できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決したもので、焼却炉の中心部に回転自在な回転送風軸管を設け、該回転送風軸管より放射状に分岐送風管を延出し、該分岐送風管には複数の分岐送風枝管を設けてなる撹拌円型焼却炉において、該焼却炉の平坦な耐熱性炉床上に耐熱小粒子状物を移動自在に敷設し、且つ該分岐送風管の延出長さに応じて回転送風軸管側に設けた堰の高さを調整し、該堰の高さを該耐熱小粒子状物の厚さとし、各々の該分岐送風管の先端側に位置する分岐送風枝管の下端部は該耐熱小粒子状物に接し或いは埋設する位置となるように形成した撹拌円型焼却炉を特徴とする。
【0008】
また、耐熱小粒子状物に接し或いは埋設する位置とした各々の分岐送風管の先端側に位置する分岐送風枝管を、複数とした撹拌円型焼却炉を特徴とする。
【0009】
更に、各々の分岐送風管の先端側に位置する分岐送風枝管は、断面扁平形状に形成し、撹拌円型焼却炉内に投入された処理物が回転送風軸管側に移動するように該分岐送風管の延出方向に対して傾斜位置に取着してなる撹拌円型焼却炉を特徴とする。
【0010】
また、各々の分岐送風管の先端側に位置する分岐送風枝管は、その下方部に撹拌円型焼却炉内に投入された処理物が焼却炉の側壁側に移動することを防止する阻止板を設けてなる撹拌円型焼却炉を特徴とする。
【0011】
更に、各々の分岐送風管の先端側に位置する分岐送風枝管は、その側壁に耐熱小粒子状物又は/及び炉床との摩擦を少なくする摩擦防止突起を設けてなる撹拌円型焼却炉を特徴とする。
【0012】
また、耐熱小粒子状物は、粒径5mm以下となる砂又は/及び5mm以下のセラミック、金属等の耐熱球状物とした撹拌円型焼却炉を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、分岐送風管を通じて分岐送風枝管から吹き出された空気により処理物に酸素を与え、且つ、該分岐送風枝管により該処理物を撹拌して酸素が効率よく行き渡るようにして燃焼するので、汚泥のような水分を多く含む処理物でも焼却処理が行えるものである。その際、該分岐送風管は、回転送風軸管から放射状に長く延設されるのでその先端側はたわみ、該分岐送風枝管が沈み込むことになるが、炉床上に敷設した耐熱小粒子状物により炉床より浮き上がった状態で保持することができ、その下端が該炉床に接することなく該分岐送風管の回転に負荷をかけることなく継続させることが可能となった。
【0014】
また、焼却炉内の温度や該分岐送風管の長さ、重量、強度等によりたわみの大きさが異なってくるが、該耐熱小粒子状物の厚さを適宜変えることにより、それらに対応することができ、その厚さの調整は回転送風軸管側の堰の高さを調整することにより可能となり、処理物の処理により生じた灰を適切に焼却炉外へ排出することが可能となった。
【0015】
また、該耐熱小粒子状物を小径の砂或いはセラミック、金属等の耐熱球状物としたので、焼却炉中の熱を持った該耐熱小粒子状物は下水汚泥のような水分を多量に含む処理物と接触することにより乾燥を促進させ、焼却を早めることが可能となった。
【0016】
また、先端部の分岐送風枝管を断面扁平状に形成し、その取着角度を処理物を中心側へ押し出す方向とすることにより処理物を焼却炉の中心側へ効率よく移動させることが可能となり、また、同部材に阻止板を取着することにより、該処理物が炉壁側へ押しやられることを防止することが可能となった。
【0017】
また、分岐送風枝管の下端部に摩擦抵抗の少ない突起を設けることにより、同部材の摩擦防止と分岐送風管の回転トルク負荷を低減することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の撹拌円型焼却炉の概略縦断面図。
【図2】分岐送風管及び分岐送風枝管の平面図。
【図3】(a)、(b)図2の(a)、(b)の位置の分岐送風管の平面図。
【図4】分岐送風管と分岐送風枝管との関係を示す平面図。
【図5】(a)先端部の分岐送風枝管の側面図、(b)先端部の分岐送風枝管のA−Aの平面図、(c)先端部の分岐送風枝管のB−Bの平面図。
【図6】撹拌円型焼却炉の内側概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の撹拌円型焼却炉1の概略縦断面図を示している。該撹拌円型焼却炉1は、円型形炉内の炉床2上の中心部に、その下方側から炉内に回転送風軸管3を突出させ、該回転送風軸管3の頂部から放射状に複数本の回転アーム(以下、分岐送風管という)4、4、…を延出させ、各々の該分岐送風管4、4、…には該炉床2面方向に向かって複数の分岐送風枝管5、5、…を突出形成している。
【0021】
複数の該分岐送風枝管5、5、…の内、各々の分岐送風管4、4、…の先端部の位置或いは最先端部及びその内側に位置する分岐送風枝管5については、その形状を断面扁平形状とし、該撹拌円型焼却炉1内に投入された処理物Aが該撹拌円型焼却炉1の中心部となる該回転送風軸管3側へ移動するように該分岐送風管4の延出方向に対して傾斜させて設けている。
【0022】
図2は、撹拌円型焼却炉1内を回転する分岐送風管4、4、…とその先端部の分岐送風枝管5との関係の平面図を示し、図3(a)、(b)は、図2の(a)及び(b)の位置の分岐送風管4の拡大平面図を示し、更に、図4は、分岐送風管4と分岐送風枝管5との関係を示した拡大平面図である。該分岐送風枝管5は、図3(a)、(b)に示すように、筒状の突出管としているが、点線で示した先端部の分岐送風枝管5aは、処理物Aを中心部へ移動させるため断面扁平形状とし、その長手方向が該分岐送風管4の長手方向に対しほぼ30度の傾斜角度を有して該分岐送風管4に取着形成されている。
【0023】
分岐送風管4の回転方向を、図2に示すように、反時計回り方向とすると、ほぼ30度方向の傾斜角度での取着により該分岐送風枝管5aが長手方向の広い面となる処理物Aを中心部となる矢印C方向へ押し出すことになる。上記傾斜角度は、上記数値に限定されるものではなく、対象となる処理物Aや回転速度等により必要に応じて20〜80度の傾斜角度が選定される。
【0024】
図5(a)は、先端部の該分岐送風枝管5aの側面図を示しており、その下端部の周壁から外方へ摩擦防止突起6を適数個設けている。該摩擦防止突起6は、その先端側が曲面となる形状とし、該分岐送風管4の回転に対し炉床2や下記する耐熱小粒子状物或いは処理物Aとの接触抵抗を低減させ、摩擦防止と回転トルクの負荷低減の役割をしている。
【0025】
また、図5(a)、(b)、(c)に示すように、該分岐送風枝管5aの側壁に処理物Aが焼却炉1の側壁側へ移動することを防止するための阻止板7を形成している。該阻止板7は、板状のものでその一端部側を該分岐送風枝管5aの側壁に取着し、他端部側は該分岐送風枝管5aの外方へ突出形成させている。該阻止板7の他端部側の回転軌道は、該分岐送風管4の先端部の回転軌道より外方側となり、且つ該分岐送風管4の傾斜取着により処理物Aが焼却炉1の側壁側へ移動することを防止することができる。
【0026】
上記処理物Aは、下水汚泥等の水分を多量に含む汚泥の減量化及び焼却処理も想定することができるが、下水汚泥は通常の汚泥と比較してその処理量は多くなるので、撹拌円型焼却炉1を大型とする必要もあり、分岐送風管4の長さを長くすることが考えられる。この場合は、自重でたわみが生じたり、回転に伴い処理物Aから大きな抵抗を受けやすくなり、それを防ぐためには強い構造の分岐送風管とする他、そのたわみを考慮した構造とする必要がある。
【0027】
図6は、冷却時(図の点線で示す)と稼動時(図の実線で示す)の状態の分岐送風管4を示している。冷却時はほぼ水平状態を維持しているが、該分岐送風管4が延び、焼却炉1内の高温にさらされると、実線で示すように、先端側が炉床2側へたわむことになる。その状態では先端側の分岐送風枝管5aは炉床2に接触するおそれがある。そこで、図6に示すように、該炉床2上に流動性のある耐熱小粒子状物8を所定厚に敷設する。
【0028】
該耐熱小粒子状物8としては、粒径5mm程度までの砂や5mm以下の耐熱球状物が好ましい。該耐熱小粒子状物8を、図6に示すように、平坦な炉床2の上に敷設する。炉床2上全体に敷設し、その厚さは中心部の回転送風軸管3側に設けた高さ調整可能な堰9の設定した高さとほぼ同一の高さとなるような厚さとする。該堰9の高さは、処理物Aの種類、加熱温度、撹拌速度等により適宜選択される。
【0029】
上記構成により、撹拌円型焼却炉1は、回転送風軸管3、分岐送風管4及び分岐送風枝管5を通じて加熱された焼却炉1内の炉床2上の加熱された耐熱小粒子状物8上に処理物Aが投入されることになる。該分岐送風管4は、該処理物Aを撹拌しながら空気を吹き出すが、同時に、該分岐送風管4の先端側はその重量と高温下によりたわみ、その先端側に位置する分岐送風枝管5aは、該分岐送風枝管5aからの送風により該耐熱小粒子状物8を少しえぐりながら該耐熱小粒子状物8に接し或いは少し埋設した状態で処理物Aを撹拌しながら回転することになる。該分岐送風枝管5aの下端には摩擦防止突起6が設けられているので回転に伴う抵抗を防止する役割をしている。
【0030】
先端側の該分岐送風枝管5aの取り付け位置及びそれに取着された阻止板7は、該分岐送風管4の回転する方向の後端に取着されているので投入された処理物Aは焼却炉1の中心部側へ送り込まれると同時に、該焼却炉1の側壁側への移動は阻止板7によって防止されることになる。
【0031】
下水汚泥のように水分を多量に含む処理物Aでも焼却炉1内の高温により水分が除去され、乾燥し、分岐送風管4及び分岐送風枝管5から送風されてきた空気中の酸素により燃焼する。焼却炉1内の温度は、焼却炉1の出口で550℃〜820℃に制御する。分岐送風管4の回転により処理物Aは撹拌燃焼され、焼却炉1の中心部に徐々に移動してくるが、中心側では炭化物がゆっくりと燃え、灰となって堰9を乗り越えて排出され、回収されることになる。
【符号の説明】
【0032】
A 処理物
1 撹拌円型焼却炉
2 炉床
3 回転送風軸管
4 分岐送風管
5 分岐送風枝管
6 摩擦防止突起
7 阻止板
8 耐熱小粒子状物
9 堰

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉の中心部に回転自在な回転送風軸管を設け、該回転送風軸管より放射状に分岐送風管を延出し、該分岐送風管には複数の分岐送風枝管を設けてなる撹拌円型焼却炉において、該焼却炉の平坦な耐熱性炉床上に耐熱小粒子状物を移動自在に敷設し、且つ該分岐送風管の延出長さに応じて回転送風軸管側に設けた堰の高さを調整し、該堰の高さを該耐熱小粒子状物の厚さとし、各々の該分岐送風管の先端側に位置する分岐送風枝管の下端部は該耐熱小粒子状物に接し或いは埋設する位置となるように形成したことを特徴とする撹拌円型焼却炉。
【請求項2】
耐熱小粒子状物に接し或いは埋設する位置とした各々の分岐送風管の先端側に位置する分岐送風枝管を、複数としたことを特徴とする請求項1記載の撹拌円型焼却炉。
【請求項3】
各々の分岐送風管の先端側に位置する分岐送風枝管は、断面扁平形状に形成し、撹拌円型焼却炉内に投入された処理物が回転送風軸管側に移動するように該分岐送風管の延出方向に対して傾斜位置に取着してなることを特徴とする請求項1又は2記載の撹拌円型焼却炉。
【請求項4】
各々の分岐送風管の先端側に位置する分岐送風枝管は、その下方部に撹拌円型焼却炉内に投入された処理物が焼却炉の側壁側に移動することを防止する阻止板を設けてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の撹拌円型焼却炉。
【請求項5】
各々の分岐送風管の先端側に位置する分岐送風枝管は、その側壁に耐熱小粒子状物又は/及び炉床との摩擦を少なくする摩擦防止突起を設けてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の撹拌円型焼却炉。
【請求項6】
耐熱小粒子状物は、粒径5mm以下となる砂又は/及び5mm以下のセラミック、金属等の耐熱球状物としたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の撹拌円型焼却炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−68347(P2013−68347A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206744(P2011−206744)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(591079018)株式会社大和三光製作所 (8)
【Fターム(参考)】