説明

撹拌装置

【課題】撹拌羽根およびスクレーパに付着する撹拌対象を大幅に減少させることができる撹拌装置を提供する。
【解決手段】撹拌対象を収容するタンクと、該タンク内部の撹拌対象を撹拌するための撹拌羽根と、当該撹拌羽根の周端に突設され、前記タンク内壁に付着する撹拌対象を掻き取るためのスクレーパとを備えた撹拌装置であって、
前記撹拌羽根が、時計方向および反時計方向の両方向に回転可能であり、
前記スクレーパが、前記撹拌羽根が時計方向に回転するときに前記タンク内壁に接触する第1のエッジと、前記撹拌羽根が反時計方向に回転するときに前記タンク内壁に接触する第2のエッジとを有してなる撹拌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撹拌装置に関する。さらに詳しくは、撹拌羽根およびスクレーパに付着する撹拌対象を大幅に減少させることができる撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧品、医薬品または食品などを製造するために、液体または粘着性を有する粉体などの撹拌対象を撹拌する撹拌装置がある。
【0003】
従来の撹拌装置は、図5〜6に示されるように、撹拌対象を収容するタンク31と、タンク31内部の撹拌対象を撹拌するための第1撹拌羽根32と、第1撹拌羽根32の周端に突設され、タンク31の内壁に付着する撹拌対象を掻き取るためのスクレーパ33とから構成されている。
【0004】
第1撹拌羽根32は、タンク31の内壁に近い位置の撹拌対象を撹拌するループ状の羽根であり、上端部において回転軸34の固定板37に固定されている。また、第1撹拌羽根32は、タンク31の内壁に付着する撹拌対象の比較的大きな塊を掻き取ることができるように、タンク31の内壁に対して45°程度の角度で傾斜して配設されている。さらに、第1撹拌羽根32の内側面には、複数のフィン32aが設けられている。
【0005】
また、第1撹拌羽根32の内側の空間部には、タンク31の中央付近の撹拌対象を撹拌するための第2撹拌羽根35が設けられ、当該第2撹拌羽根35のシャフト36は固定軸34に対して回転自在に連結されている。
【0006】
スクレーパ33は、図5〜6に示されるように、合成樹脂または合成ゴムなどからなる薄板状の部材であり、前記第1撹拌羽根32の最外周の側面および下面にピン止めなどにより揺動自在に取り付けられている。
【0007】
さらに、図5〜6に示される撹拌装置タンク31の底部には、シャフト39の周りを回転する撹拌突起38、メイン排出口40およびサンプル採取口41が配設されている。
【0008】
図6に示されるように、従来の撹拌装置は、図中反時計方向に第1および第2撹拌羽根32、35を回転させて撹拌対象の撹拌を行ない、それとともにスクレーパ33の先端のエッジ33aが撹拌対象からの圧力を受けてタンク31の内壁に押しつけられ、当該エッジ33aによってタンク31に内壁に付着する撹拌対象を掻き取ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の撹拌装置では、粘性の高い液体や粘着性の強い粉体などの撹拌対象を撹拌する場合、図6に示されるように、第1撹拌羽根32およびスクレーパ33の回転方向に対する裏側には、流動しない製品原料などの撹拌対象Sが付着し、撹拌工程の終了まで剥離しないため、製品の均一性が得られない場合がある。そのため、製品全体の配合バランスが損なわれて、所望の特性を有する製品を得ることができないという問題がある。
【0010】
また、従来の撹拌装置では、第1撹拌羽根32がタンク31の内壁面に対して45°程度傾斜して配設されているため、第1撹拌羽根32の裏側に付着する撹拌対象Sは、洗浄工程の際に付着物が落ちにくいという問題がある。
【0011】
本発明はかかる問題を解消するためになされたものであり、撹拌羽根およびスクレーパに付着する撹拌対象を大幅に減少させることができる撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の撹拌装置は、撹拌対象を収容するタンクと、該タンク内部の撹拌対象を撹拌するための撹拌羽根と、当該撹拌羽根の周端に突設され、前記タンク内壁に付着する撹拌対象を掻き取るためのスクレーパとを備えた撹拌装置であって、
前記撹拌羽根が、時計方向および反時計方向の両方向に回転させても前記スクレーパがタンク内の付着物を掻き取ることが可能であり、かつ前記撹拌羽根がタンクの内壁に対して傾斜しておらず、
前記スクレーパが、前記撹拌羽根が時計方向に回転するときに前記タンク内壁に接触する第1のエッジと、前記撹拌羽根が反時計方向に回転するときに前記タンク内壁に接触する第2のエッジとを有し、前記スクレーパが、前記第1エッジおよび第2エッジに近づくにつれて先細りになる形状を呈してなることを特徴としている。
【0013】
前記スクレーパが、前記撹拌羽根に揺動自在に取り付けられてなるのが好ましい。
【0014】
前記スクレーパの第1のエッジおよび第2のエッジが、線対称の位置に配置されてなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液体や粘着性を有する粉体を撹拌する際に正転または逆転のいずれの方向に回転させてもタンク内壁の付着物を掻き取ることができるスクレーパを採用したことにより、撹拌羽根およびスクレーパに付着する付着物が減少し、均一な製品を得ることができる。したがって、製品の品質が安定し、洗浄工程が簡略化するため、撹拌装置のメンテナンスのコストを低減することができ、その結果、化粧品などの液状製品の製造コストを大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに図面を参照しながら本発明の撹拌装置をさらに詳細に説明する。図1は本発明の撹拌装置の一実施の形態を示す縦断面説明図、図2は図1の撹拌装置のタンク内部を上から見た図、図3は図1のスクレーパの要部拡大斜視図および図4は図1のスクレーパの揺動を示す平面説明図である。
【0017】
図1〜2に示される撹拌装置は、双方向に掻き取ることができる形状のスクレーパ3をタンク1の内壁に対して傾斜していない第1撹拌羽根2に取り付けたものであり、図2に示されるように、正転または逆転のいずれの方向に回転させてもタンク1の内壁にスクレーパ3のエッジ3a、3bが密着し、タンク1の内壁に付着する付着物を効果的に掻き取ることができる。
【0018】
図1〜2に示される撹拌装置は、撹拌対象を収容するタンク1と、タンク1内部の撹拌対象を撹拌するための第1撹拌羽根2と、第1撹拌羽根2の周端に突設され、タンク1の内壁に付着する撹拌対象を掻き取るためのスクレーパ3とから構成されている。
【0019】
本実施の形態の撹拌装置は、従来の装置と異なり、双方向の撹拌ができるようになっている。具体的には、正転または逆転について時間設定で切り換えることができるように、タイマーによる制御を行ない、駆動モータについてはインバータ制御を行なうのが好ましい。
【0020】
第1撹拌羽根2は、タンク1の内壁に近い位置の撹拌対象を撹拌するループ状の羽根であり、上端部において回転軸4の固定板7に固定されており、第1撹拌羽根2の内側面には、複数のフィン2aが設けられている。また、図1に示される第1撹拌羽根2は、タンク1の内壁に対して傾斜していないため、製品が落ちやすく、洗浄効率を向上させることができる。
【0021】
第1撹拌羽根2の内側の空間部には、タンク1の中央付近の撹拌対象を撹拌するための第2撹拌羽根5が設けられ、当該第2撹拌羽根5のシャフト6は回転軸4に対して回転自在に連結されている。この第2撹拌羽根5は、第1撹拌羽根2に対して、通常、独立して任意な回転方向、回転速度を得ることができ、撹拌対象を撹拌するための最適な条件となるように回転させられる。
【0022】
さらに、図1〜2に示される撹拌装置タンク1の底部には、シャフト9の周りを回転する撹拌突起8、メイン排出口10およびサンプル採取口11が配設されている。
【0023】
本実施の形態のスクレーパ3は、図1〜4に示されるように、第1撹拌羽根2が時計方向に回転するときにタンク1の内壁に接触する第1のエッジ3aと、第1撹拌羽根2が反時計方向に回転するときにタンク1内壁に接触する第2のエッジ3bとを有しているため、双方向の回転についてタンク1内壁の付着物の掻き取りを行なうことができる。
【0024】
スクレーパ3の材質について、本発明ではとくに限定されないが、たとえば合成樹脂や合成ゴムなどを採用することができるが、とくに耐摩耗性および耐腐食性などにすぐれたポリカーボネートなどのエンジニアリングプラスチックを採用するのが好ましい。さらに、スクレーパ3の表面をフッ素樹脂でコーティングすれば、撹拌対象が付着しにくくなる。
【0025】
スクレーパ3は、図3〜4に示されるように、第1撹拌羽根2の最外周の側面および下面にハンガ13を介して、ピン14により揺動自在に取り付けられている。したがって、第1撹拌羽根2が時計方向または反時計方向のいずれの方向に回転するときでも、スクレーパ3はピン14回りに揺動して第1エッジ3aまたは第2エッジ3bのいずれかのエッジを確実にタンク1の内壁に密着させて付着物の掻き取りを効果的に行なうことができる。
【0026】
図3〜4に示されるスクレーパ3は、第1のエッジ3aおよび第2のエッジ3bが、線対称の位置に配置されているため、スクレーパ3が時計方向または反時計方向のいずれの方向に回転してもほぼ同等の条件で付着物を掻き取ることができる。
【0027】
さらに、スクレーパ3は、第1エッジ3aおよび第2エッジ3bに近づくにつれて先細りになる形状、たとえば台形断面形状を呈しているため、双方向の回転について鋭いエッジを向けることができるとともにスクレーパの剛性も高いという利点がある。
【0028】
本実施の形態ではスクレーパ3がループ状の第1撹拌羽根2の外周面に設けられた例をあげて説明したが、本発明では撹拌羽根の形状に付いてはとくに限定するものではなく、イカリ形の撹拌羽根の外周縁に本発明の双方向掻き取り可能なスクレーパを設けてもよい。
【0029】
本発明の撹拌装置で撹拌される撹拌対象については、本発明ではとくに限定するものではないが、たとえば粘性の高い液体または粘着性を有する粉体など、具体的には化粧品ではコールドクリームやファンデーションなど、医薬品では軟膏や飲み薬用シロップなど、または食品ではマヨネーズやねりわさびなどが撹拌可能である。
【0030】
つぎに、実験データに基づいて、本実施の形態の撹拌装置と従来の撹拌装置との撹拌処理後の撹拌対象の付着状態を比較する。
【0031】
実験データ1
従来の全容量250リットルの撹拌装置に200kgの製品原料を仕込み、30Pa・sの化粧品クリームを製造し、第1撹拌羽根およびスクレーパに付着した原料の重量を測定したところ、全体重量の2%であり、第1撹拌羽根全体を洗浄するのに1時間程度の時間を必要とした。
【0032】
一方、本実施の形態における双方向掻き取り可能なスクレーパ3が取り付けられ、しかも傾斜していない第1撹拌羽根2を備えた撹拌装置では、正転および逆転を5分間隔程度で切り換えて同じ仕込み量で製造したところ、第1撹拌羽根2およびスクレーパ3のいずれにも化粧品クリームはほとんど付着しておらず、第1撹拌羽根の洗浄も20分で完了した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の撹拌装置の一実施の形態を示す縦断面説明図である。
【図2】図1の撹拌装置のタンク内部を上から見た図である。
【図3】図1のスクレーパの要部拡大斜視図である。
【図4】図1のスクレーパの揺動を示す平面説明図である。
【図5】従来の撹拌装置の縦断面図である。
【図6】図5の撹拌装置のタンク内部を上から見た図である。
【符号の説明】
【0034】
1 タンク
2 第1撹拌羽根
3 スクレーパ
5 第2撹拌羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌対象を収容するタンクと、該タンク内部の撹拌対象を撹拌するための撹拌羽根と、当該撹拌羽根の周端に突設され、前記タンク内壁に付着する撹拌対象を掻き取るためのスクレーパとを備えた撹拌装置であって、
前記撹拌羽根が、時計方向および反時計方向の両方向に回転させても前記スクレーパがタンク内の付着物を掻き取ることが可能であり、かつ前記撹拌羽根がタンクの内壁に対して傾斜しておらず、
前記スクレーパが、前記撹拌羽根が時計方向に回転するときに前記タンク内壁に接触する第1のエッジと、前記撹拌羽根が反時計方向に回転するときに前記タンク内壁に接触する第2のエッジとを有し、前記スクレーパが、前記第1エッジおよび第2エッジに近づくにつれて先細りになる形状を呈してなる撹拌装置。
【請求項2】
前記スクレーパが、前記撹拌羽根に揺動自在に取り付けられてなる請求項1記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記スクレーパの第1のエッジおよび第2のエッジが、線対称の位置に配置されてなる請求項1または2記載の撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−132498(P2008−132498A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54063(P2008−54063)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【分割の表示】特願2001−135036(P2001−135036)の分割
【原出願日】平成13年5月2日(2001.5.2)
【出願人】(592205148)みづほ工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】