説明

操作性や使い勝手の良いマイクロメータ装置

【課題】操作性や使い勝手に優れたマイクロメータ装置を提供する。
【解決手段】測定子9を用いて微少変位を測定するマイクロメータ装置28において液晶表示装置又は有機EL表示装置からなる表示装置22に操作プログラムや測定結果を分り易く表示し、また独立な機能をもつ多数のキーからなる操作パネル24を備えることで入力操作が簡単に行える。更にマイクロメータ装置を何台並べる多連測定において測定条件が同一の場合、測定条件転送手段20により1台目29の測定条件を2台目以降28,30に一括に転送することで各本体の測定条件の入力が効率的になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定子9及び微少変位検出手段10を用いて検出したマスターに対する微少変位変化を、電気信号変換手段14によって電気信号に変換し、該電気信号に基づいて微少変位変化を計量化する電気マイクロメータ又は空気マイクロメータ装置に係り、特に前記電気マイクロメータ又は空気マイクロメータ装置の操作手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測定子9及び微少変位検出手段10を用いて微少変位変化を検出し、微少変位変化を、電気信号変換手段14によって電気信号に変換し、該電気信号に基づいて微少変位変化を計量化する空気マイクロメータ又は電気マイクロメータ(以下、空気又は電気マイクロメータをマイクロメータ装置と記する)は比較方式の測定機であるため、このマイクロメータ装置を使用し、ワークの寸法を測定するにはワークの規範となるマスターを使って前記マイクロメータ装置を校正しておかなければならない。また、このマスターに対するワークの微少寸法を検出し、検出した寸法に基づいてワークの状態を判断する場合にはワークの合否判定基準値を予め設定する必要がある。このように前記マイクロメータ装置によりワークを測定するには測定条件となるマスター寸法や合否判定基準値を前記マイクロメータ装置に与えなければならない。また、その他にも測定条件として内径か外径測定といった測定対象の選定、測定範囲などがある。この多数の測定条件の下で前記マイクロメータ装置はマスターに対する微少変位の変化を検出しワークの寸法を測定する。さらに、測定結果が定められた合否判定基準値の範囲にあるかどうか合否判定を行う。
【0003】
測定子9及び微少変位検出手段10を用いて検出した微少変位変化を、電気信号変換手段14によって電気信号に変換し、該電気信号に基づいて微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置の従来のもの1において検出した微少変位変化を表示する表示手段として7セグメントLED表示装置3を使用している。
【0004】
マスターに対する微少変位の変化を計量化するマイクロメータ装置においてワークの寸法を測定する際に基準尺となる規範の寸法、内径か外径の測定といった測定対象の選定、ワークの合否判定基準となる判定基準値、測定範囲などの測定条件の設定入力及び前記マイクロメータ装置の操作は入力キーボード5から行われている。
【0005】
マイクロメータ装置の本体を何台か並べて同時に使用する多連測定において測定条件の設定値は各本体に一台ずつ入力キーボード5から入力し、多連の測定を行っている。
【0006】
微少変位を検出し、ワークの寸法を測定し、その測定結果が予め設定した合否判定基準値の範囲にあるかどうかの合否判定機能を持つマイクロメータ装置の従来のもの1はその合否判定の手段が合否判定結果に応じたLEDアナログバー2の色別で合否判定結果を目視的に識別している。
【0007】
しかしながら、上に述べられた微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置の従来のもの1の構造は特にその操作性がかならずしも便利で良いものではありません。例えば一般的には前記マイクロメータ装置はその幅が狭く設計されることが好ましいため、LED表示装置3は主に8個の7セグメントLED4から構成されている。そのため、表示できる文字の数はLEDの構成上で8個までとなり、表示できる文章の表現も限られている。その結果、前記マイクロメータ装置の操作プログラムにおいて測定条件の名称が短い言葉で表現せざるをえないため、測定条件の全体の構想が把握しにくくなっている。このように前記7セグメントLED表示装置3は表現力に欠けており、ワークの測定状況の把握に役立つ多数の情報を表示しようとすることは難点を有していた。
【0008】
また、ワークの微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置の従来のもの1において多数の測定条件の設定値を入力する入力キーボード5は6個の数の少ないキーから構成されているため、一つのキーに複数の機能を持たせざるをえない。特に数値を入力する際には独立な機能をもつ数値のキーがないため、手間がかかるゆえに前記入力キーボード5の使い勝手が不便である。
【0009】
さらにマイクロメータ装置の本体を何台か並べて同時に使用する多連測定において1台目の本体と同様な測定条件の設定値を2台目の本体に一台ずつ入力する従来の方法は時間を要するため、効率的な手段ではない。
【0010】
マイクロメータ装置の従来のもの1においてワークの合否判定手段は合否判定結果に応じたLEDアナログバー2の色別によるものであるが、この合否判定手段では目で見て判定結果を把握しなければならない。そのため、特に多量生産のワークを測定する際には測定する者の目に疲労を与え、集中力を落とす恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述のような事情に鑑みてしたもので、操作性及び使い勝手の優れた、微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置を提供しようとするものである。
【0012】
本発明は前述の目的を達成するために測定子9及び微少変位検出手段10を用いて検出した微少変位変化を、電気信号変換手段14によって電気信号に変換し、該電気信号に基づいて微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置においてその操作プログラムや測定結果や測定条件の項目等を表示する表示装置22として表現力に優れた液晶表示装置または有機EL表示装置と、前記マイクロメータ装置の操作を行う操作入力手段として独立な機能を持つ多数のキーから構成されている操作パネル24と、ワークの合否判定手段として目視的および聴覚的に行う合否判定手段21、27と、前記マイクロメータ装置の本体を何台か並べて同時に使用する多連測定において1台目の本体の測定条件の設定値を2台目以降の本体に連動できるように測定条件転送手段20と、を備えたことで前記マイクロメータ装置の操作性や使い勝手を画期的に高める。
【課題を解決するための手段】
【0013】
微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置において表示装置22に前記マイクロメータ装置の操作プログラム22aを表示し、また測定条件の項目22bの全体構成およびその操作順序を分りやすく表現する。さらに、ワークを測定する際にワークの寸法の他にワークの判定結果、測定条件一部の情報22cを表示装置22に表示する。
【0014】
微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置においてプログラムの操作を行う操作入力手段として独立な機能をもつ多数のキーから構成されている操作パネル24を装備し、前記マイクロメータ装置の操作と数字の入力がワンタッチで行えるようにする。
【0015】
微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置の本体を何台か並べて多連測定に利用し、且つ測定条件が同一の場合、測定条件転送手段20の設定スイッチ21によりマスターとスレーブになる本体を予め設定し、マスターになる本体29の測定条件の設定値をスレーブになる本体28,30に測定条件転送手段20を介して一括に転送する。
【0016】
また、ワークの合否判定手段として合否判定結果に応じたLEDアナログバー21の色別によるものの他に、聴覚的な合否判定手段27を装備し、合否判定の結果を聴覚的にも把握することを可能にする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば表示装置22に表現力に優れた液晶表示装置または有機EL表示装置を使用することによって微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置の操作プログラムの項目22aを分りやすく表示することを可能にし、測定条件22bの全体構成およびその操作順序を分りやすく表現することも可能になる。また、測定中に液晶表示装置または有機EL表示装置から構成されている表示装置22にワークの寸法の他にワークの判定結果、測定条件一部の多くの情報22cを同時に表示させ、測定状況を素早く把握することが可能になっている。
【0018】
微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置の内部プログラムの操作を行う操作入力手段24は独立な機能をもつ多数のキーから構成され、前記マイクロメータ装置の内部プログラムの操作及び数字の入力がワンタッチで素早く且つ簡単に行えるようになっている。
【0019】
マイクロメータ装置の本体を何台か並べて多連測定に利用し、且つ測定条件が同一の場合、測定条件転送手段20の設定スイッチ21によりマスターとスレーブになる本体を設定する。マスターとして設定した本体29の測定条件の設定値を、スレーブとして設定した本体28,30に転送し、これによって前記マイクロメータ装置の測定条件は一括に設定することができ、測定条件の設定値の入力が効率的に行える。
【0020】
また、ワークの合否判定手段としてLEDアナログバー21の色別による目視的なものの他に聴覚的な判定手段27を装備し、合否判定の結果を聴覚的にも把握することが可能になっており、ワークの合否判定がさらに便利になっている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は前述のように微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置においてその操作性や使い勝手を良くし、ワークの測定状況に関する情報をより多く提供することができるようにするものである。以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0022】
図2は微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置の全体構成図である。測定子9及び微少変位検出手段10を用いて検出した微少変位変化を、電気信号変換器11によって電気信号に変換する。そして、この電気信号はアンプ回路12で増幅されてから、A/D変換器13によって16ビットのデジタルシリアルデータとしてCPU16に出力する。
【0023】
CPU16はA/D変換器13からのシリアルデータを取り込み、シリアルEEPROM17に保存された測定条件22a、22bに応じて処理を行い、測定結果表示手段23へデータを出力する。
【0024】
マイクロメータ装置の内部プログラムの操作や測定条件の設定値の入力は「MENU」、「CLR」、「ENT」、カーソルを上下に動かすキー、10個の数字、小数点「・」と[−]の17個のキーから構成されている操作パネル24から行う。前記操作パネル24は10個の数値キーから構成されており、数値をワンタッチで入力し、数値の入力が素早く行える。そしてCPU16は前記操作パネル24からの入力を取り込み、各処理、演算などを行う。
【0025】
測定結果表示手段23は、検出した微少変位変化をアナログ的に表示するLEDバー21と微少変位変化をデジタル的に表示する表現力の優れた液晶表示装置または有機EL表示装置からなる表示装置22を備えている。
【0026】
液晶表示装置または有機EL表示装置からなる表示装置22にはマイクロメータ装置の内部プログラムの操作項目22aを分りやすく表示し、測定条件22bの全体構成およびその操作順序を分りやすく表現する。さらに前記表示装置22に表示する文章は英語又は日本語で表現することを任意に設定する。
【0027】
また、測定状況を素早く把握するため、例えば、測定中にワークの寸法やワークの合否判定結果などといった測定結果の他に、測定条件の一部も表示装置22に表示する。
【0028】
ワークの合否判定手段として測定結果に応じたLEDバー21の色別によるものの他にワークの合否判定の結果を聴覚的に知らせる合否判定手段27を設ける。前記合否判定手段27は内部プログラムによって任意に設定する。そして、CPU16は前記合否判定手段27の設定値を読み込み、ボリューム26の設定に応じた鳴動信号を前記合否判定手段27のブザー25に対して出力する。
【0029】
多連測定において1台目のマイクロメータ装置の本体の測定条件の設定値を2台目以降の本体に連動できるように各本体に2線式のRS−485インターフェース18および8ビット設定スイッチ19からなる測定条件転送手段20を設け、各本体間のデータ通信を行う。
【0030】
測定条件の設定値の転送に当たって1台目のマイクロメータ装置の本体29を1台目のマイクロメータ装置の本体にある8ビット設定スイッチ19の入力によりマスターとして設定し、2台目以降は各本体に設置する8ビット設定スイッチの入力によりスレーブとして設定しておく。マスターで設定した測定条件の設定値は前記2線式のRS−485インターフェース18を介してスレーブとなる各本体に一括に転送する。
【0033】
上記に説明したように微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置に表現力に優れた液晶表示装置または有機EL装置からなる表示装置22、独立な機能をもつ多数のキーから構成されている操作パネル24、測定条件転送手段20、目視的な合否判定手段21及び聴覚的な合否判定手段27を装備することによりワークの測定状況に関する情報を多く提供することを可能にし、本実施の形態によれば前記微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置の操作性や使い勝手を画期的に高める。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置の従来のものの概略図
【図2】微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置の構成を示すブロック図
【図3】微少変位変化を計量化するマイクロメータの概略斜視図
【図4】操作パネルの図
【図5】表示装置に表示する操作画面と測定画面の図
【符号の説明】
【0035】
1 微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置の従来のもの
2 LEDアナログバー
3 7セグメントLED表示装置
4 7セグメントLED
5 入力キーボード
9 測定子
10 微少変位検出手段
11 電気信号変換器
12 アンプ回路
13 A/D変換器
14 電気信号変換手段
16 CPU
17 シリアルEEPROM
18 2線式RS−485
19 8ビット設定スイッチ
20 測定条件転送手段
21 測定値をアナログ的に表示するLEDバー
22 表示装置
22a 操作項目を表示する画面
22b 測定条件の設定を行う画面
22c 測定結果を表示する画面
23 測定結果表示手段
24 操作パネル
25 ブザー
26 ボリューム
27 聴覚的な合否判定手段
28 スレーブに設定したマイクロメータ装置の本体
29 マスターに設定したマイクロメータ装置の本体
30 スレーブに設定したマイクロメータ装置の本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定子9及び微少変位検出手段10を用いて検出した微少変位変化を、電気信号変換手段14によって電気信号に変換し、該電気信号に基づいて前記微少変位変化を表示する液晶表示装置または有機EL表示装置からなる表示装置22と、測定条件の設定を行う設定入力手段の操作パネル24と、ワークの合否判定を行う合否判定手段21,27と、を備えたことを特徴とする微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置。
【請求項2】
微少変位変化を計量化するマイクロメータ装置の本体を多連測定に使用する際に1台目の本体の測定条件の設定値を2台目以降の本体に連動できるように測定条件転送手段20を備えたことを特徴とする請求項1記載のマイクロメータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−164545(P2010−164545A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29072(P2009−29072)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(503465889)オヂヤセイキ 株式会社 (3)
【Fターム(参考)】