説明

操作感触可変入力装置

【課題】可動部材のガタを抑制できて小型化も容易な操作感触可変入力装置を提供する。
【解決手段】操作感触可変入力装置1には、X,Y方向を含む所定平面に沿ってスライド移動可能な操作部材2と、操作部材2のスライド移動によって駆動される突起部6b〜8bを有し該平面に沿って回転可能な駆動部材6〜8と、該平面に対し直交するモータ軸9a,11aを歯車10,12を介して駆動部材6,7に連結させたモータ9,11と、操作部材2のX,Y方向への移動状態を検出するセンサ13,14と、各センサ13,14の出力に基づいてモータ9,11の駆動制御を行う制御回路16とが具備されている。操作部材2がX方向へスライド移動すると、突起部6b,8bが駆動されて駆動部材6,8が互いに逆向きに回転し、連動するモータ軸9aの回転をセンサ13が検出する。また、操作部材2がY方向へスライド移動すると、突起部7bが駆動されて駆動部材7が回転し、連動するモータ軸11aの回転をセンサ14が検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動操作されてスライド移動する操作部材に対して電気制御された力覚(操作感触)を伝えることができる操作感触可変入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エアコンやオーディオあるいはナビゲーション等の車載用制御機器の操作部材を手動操作して機能調整等を行う際に、この操作部材の操作量や操作方向に応じた抵抗力や推力等を付与することにより、所望の操作が確実に行えるようにしたフォースフィードバック機能付きの操作感触可変入力装置が種々提案されている。
【0003】
かかる操作感触可変入力装置の一例として、従来より、互いに直交するX,Y方向を含む所定平面に沿って任意方向へスライド移動可能な操作部材と、この操作部材のスライド移動に伴ってX方向へ駆動される第1の駆動部材およびY方向へ駆動される第2の駆動部材と、第1の駆動部材に噛合する歯車をモータ軸に固着した第1のモータと、第2の駆動部材に噛合する歯車をモータ軸に固着した第2のモータと、第1のモータの回転状態を検出する第1の検出手段と、第2のモータの回転状態を検出する第2の検出手段と、各モータを駆動制御する制御手段とを備えた構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。第1の駆動部材はX方向へ直線移動できるように支持されており、操作部材に一体化されてY方向に延びる第1のガイドレールと第1の駆動部材とが摺動自在に係合している。同様に、第2の駆動部材はY方向へ直線移動できるように支持されており、操作部材に一体化されてX方向に延びる第2のガイドレールと第2の駆動部材とが摺動自在に係合している。
【0004】
上記した従来の操作感触可変入力装置において、ユーザの手動操作で操作部材を例えばX方向へスライド移動すると、第1の駆動部材がX方向へ駆動されて第1のモータのモータ軸が回転し、その回転方向や回転量が第1の検出手段によって検出される。そして、制御手段が第1の検出手段の出力に基づいて第1のモータを駆動制御することで、第1のモータの回転力が第1の駆動部材を介して操作部材に付与されるようになっているため、ユーザの手指に抵抗感等の所要の力覚(操作感触)が伝えられる。その際、第2のガイドレールは第2の駆動部材を押し込むことなく摺動するので、第2の駆動部材は移動しない。同様に、操作部材をY方向へスライド移動すると、第1の駆動部材は移動しないが、第2の駆動部材がY方向へ駆動されて第2のモータのモータ軸が回転し、その回転方向や回転量が第2の検出手段によって検出される。そして、第2の検出手段の出力に基づいて制御手段が第2のモータを駆動制御することで、第2のモータの回転力が第2の駆動部材を介して操作部材に付与されるようになっているため、ユーザの手指に所要の力覚が伝えられる。また、操作部材をX,Y方向に対して斜めにスライド移動した場合には、第1および第2の駆動部材がそれぞれ駆動されて第1および第2のモータのモータ軸がそれぞれ回転するため、第1および第2の検出手段の出力に基づいて制御手段が第1および第2のモータを駆動制御して各モータの回転力が操作部材に付与され、これによりユーザの手指に所要の力覚が伝えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−31074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した従来の操作感触可変入力装置において、第1および第2の駆動部材をそれぞれガイド部材によって移動方向にスライド支持するようにすれば、各駆動部材が円滑に直線移動できるようになって好ましいが、その場合、支持構造を小型化しようとすると各駆動部材にガタが生じやすくなるため、各駆動部材のガタを抑制するには支持構造を大型化せざるを得ないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、可動部材のガタを抑制できて小型化も容易な操作感触可変入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の操作感触可変入力装置は、互いに直交する第1方向と第2方向を含む平面に沿ってスライド移動可能な操作部材と、この操作部材の前記第1方向へのスライド移動によって駆動される第1係合部を有する第1駆動部材と、前記操作部材の前記第2方向へのスライド移動によって駆動される第2係合部を有する第2駆動部材と、第1動力伝達手段を介して前記第1駆動部材に連結された第1モータと、第2動力伝達手段を介して前記第2駆動部材に連結された第2モータと、前記操作部材の前記第1方向への移動状態を検出する第1検出手段と、前記操作部材の前記第2方向への移動状態を検出する第2検出手段と、前記第1および第2検出手段の出力に基づいて前記第1および第2モータの駆動制御を行う制御手段とを備え、前記第1および第2駆動部材が前記平面に沿ってそれぞれ回転可能に支持されていると共に、前記第1駆動部材の回転中心から前記第2方向へ離隔した位置を前記第1係合部の可動範囲となすことにより、前記第1駆動部材の回転時に前記第1係合部が前記第1方向および該第1方向と鋭角をなす方向へ移動するようにし、かつ、前記第2駆動部材の回転中心から前記第1方向へ離隔した位置を前記第2係合部の可動範囲となすことにより、前記第2駆動部材の回転時に前記第2係合部が前記第2方向および該第2方向と鋭角をなす方向へ移動するように構成した。
【0009】
このように構成された操作感触可変入力装置では、ユーザの手動操作で操作部材を例えば第1方向へスライド移動させると、第1係合部を介して第1駆動部材が回転駆動されて第1モータのモータ軸が回転し、第1検出手段によって操作部材の第1方向へのスライド移動状態が検出できる。同様に、ユーザが操作部材を第2方向へスライド移動させると、第2係合部を介して第2駆動部材が回転駆動されて第2モータのモータ軸が回転し、第2検出手段によって操作部材の第2方向へのスライド移動状態が検出できる。また、操作部材を第1および第2方向に対して斜めにスライド移動させた場合には、第1および第2モータのモータ軸が共に回転するため、操作部材の移動状態の第1方向成分と第2方向成分がそれぞれ検出できる。そして、各検出手段の出力に基づいて各モータを駆動制御することにより、各モータの回転力を各駆動部材を介して操作部材に付与することができるため、ユーザの手指に所要の力覚(操作感触)を伝えることができる。また、操作部材と各駆動部材と各モータの全てを平面視で狭い領域内にコンパクトに配設することができるため、装置全体の小型化が容易であり、かつ構造が単純なためコストアップも回避できる。また、操作部材に駆動される各駆動部材が回転可能に支持されているため、操作部材のスライド移動時に各駆動部材にガタが生じる虞もない。
【0010】
上記の構成において、操作部材と第1駆動部材のうち、いずれか一方が第2方向へ延びる溝状または長孔状の第1ガイド部を有すると共に、いずれか他方が第1ガイド部に摺動自在に挿入された第1突起部を有し、第1駆動部材の第1係合部が第1突起部または第1ガイド部であると、操作部材の第1方向へのスライド移動に伴って第1駆動部材を円滑に回転駆動させることができて好ましい。
【0011】
また、上記の構成において、操作部材と第2駆動部材のうち、いずれか一方が第1方向へ延びる溝状または長孔状の第2ガイド部を有すると共に、いずれか他方が第2ガイド部に摺動自在に挿入された第2突起部を有し、第2駆動部材の第2係合部が第2突起部または第2ガイド部であると、操作部材の第2方向へのスライド移動に伴って第2駆動部材を円滑に回転駆動させることができて好ましい。
【0012】
また、上記の構成において、前記平面に沿って回転可能に支持されると共に、操作部材の第1方向へのスライド移動によって駆動される補助係合部を有する補助駆動部材を備え、この補助駆動部材の回転中心から第2方向へ離隔した位置を補助係合部の可動範囲となすことにより、この補助駆動部材の回転時に補助係合部が第1方向および該第1方向と鋭角をなす方向へ移動するようにし、かつ、第1駆動部材の第1係合部と補助駆動部材の補助係合部とが同期して移動するように構成すると、スライド移動中に懸念される操作部材の回転を防止できて好ましい。すなわち、かかる補助駆動部材を備えていない場合、操作部材が第1方向へスライド移動して第1駆動部材の第1係合部との相対位置を変化させるのに伴って、操作部材が僅かに回転してしまう可能性があるが、補助駆動部材の補助係合部が操作部材と係合させてあれば、こうした不所望な回転を未然に防止することができる。
【0013】
この場合において、第1駆動部材と補助駆動部材がそれぞれの回転中心から等距離の位置で噛合して互いに逆向きに回転するように両部材を直接連結させても良く、あるいは、第1モータの回転軸に連結された歯車を第1駆動部材と補助駆動部材との間に介在させ、この歯車を第1駆動部材に形成した歯部と補助駆動部材に形成した歯部の両方に噛合させても良い。
【0014】
また、上記の構成において、操作部材と補助駆動部材のうち、いずれか一方が第2方向へ延びる溝状または長孔状の第2ガイド部を有すると共に、いずれか他方が第2ガイド部に摺動自在に挿入された第2突起部を有し、補助係合部が第2突起部または第2ガイド部であると、操作部材の第1方向へのスライド移動に伴って補助駆動部材を円滑に回転駆動させることができて好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の操作感触可変入力装置によれば、ユーザの手動操作で操作部材を所定平面に沿ってスライド移動させると、第1駆動部材や第2駆動部材が回転駆動されて第1モータや第2モータのモータ軸が回転し、この回転情報を各検出手段で検出することによって操作部材のスライド移動状態を検出できるので、各検出手段の出力に基づいて各モータを駆動制御することにより、各モータの回転力を操作部材に付与してユーザの手指に所要の力覚(操作感触)を伝えることができる。また、操作部材と各駆動部材と各モータの全てを平面視で狭い領域内にコンパクトに配設することができるため、装置全体の小型化が容易であり、かつ構造が単純なためコストアップも回避できる。また、操作部材に駆動される各駆動部材が回転可能に支持されているため、操作部材のスライド移動時に懸念される各駆動部材のガタを防止できて良好な操作性が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る操作感触可変入力装置を斜め上方から見た外観図である。
【図2】該入力装置を図1とは異なる方向から見た外観図である。
【図3】該入力装置を斜め下方から見た外観図である。
【図4】該入力装置の各構成部品を示す分解斜視図である。
【図5】該入力装置を操作部材を外した状態で示す分解斜視図である。
【図6】該操作部材の裏面形状を示す斜視図である。
【図7】該入力装置を操作部材および上側支持板を外した状態で示す分解斜視図である。
【図8】該入力装置の内部構造を示す一部断面斜視図である。
【図9】該入力装置の内部構造を透視状態で図示した図1に対応する説明図である。
【図10】該入力装置の内部構造を透視状態で図示した図2に対応する説明図である。
【図11】該入力装置の内部構造を透視状態で図示した図3に対応する説明図である。
【図12】該入力装置の動作説明図である。
【図13】本発明の第2実施形態例に係る操作感触可変入力装置の平面図である。
【図14】該入力装置から操作部材および上側支持板を取り除いて示す平面図である。
【図15】該入力装置の主要構成部品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態例を図1〜図12に基づいて説明する。本実施形態例に係る操作感触可変入力装置1は、図1〜図3に示すような外観を呈し、図4に示すような部品によって構成されている。すなわち、この操作感触可変入力装置1は、スライダ2aの上面中央部に取付部2bを突設してなる操作部材2と、円筒状のスペーサ5を挟んで対向する配置で一体化された上側支持板3および下側支持板4と、両支持板3,4に軸支されて回転可能な第1駆動部材6と第2駆動部材7および補助駆動部材8と、モータ軸9aに歯車10が固着されている第1モータ9と、モータ軸11aに歯車12が固着されている第2モータ11と、モータ軸9a,11aの回転状態を検出する一対のセンサ13,14と、第1および第2モータ9,11やセンサ13,14等が実装される回路基板15とによって主に構成され、回路基板15には各モータ9,11を駆動制御する制御回路16が設けられている。
【0018】
操作部材2の取付部2bには図示せぬ操作つまみが取り付けられ、この操作つまみをユーザが手指で把持して操作部材2をスライド操作するようになっている。操作部材2は図4のX,Y方向を含む所定平面に沿って任意方向へスライド移動可能であり、X方向とY方向は互いに直交している。なお、両支持板3,4や回路基板15はこの所定平面に対して平行に配設されており、各駆動部材6,7,8の回転平面もこの所定平面に対して平行である。操作部材2のスライダ2aの裏面側には、Y方向に延びる一対のガイド溝2c,2dと、X方向に延びるガイド溝2eとが設けられている(図6参照)。ガイド溝2cには第1駆動部材6の突起部6bが摺動自在に挿入され、ガイド溝2dには補助駆動部材8の突起部8bが摺動自在に挿入される。また、ガイド溝2eには第2駆動部材7の突起部7bが摺動自在に挿入される。
【0019】
上側支持板3には操作部材2が搭載される4本の支持突起3aが上向きに突設されており、これら支持突起3aの上面を摺動面として操作部材2がスライド移動できるようになっている。この上側支持板3には、第1駆動部材6の支軸6aの上端部を軸支する軸受部3bと、補助駆動部材8の支軸8aの上端部を軸支する軸受部3cと、第2駆動部材7の支軸7aの上端部を軸支する軸受部3dとが設けられている。また、この上側支持板3には、第1駆動部材6の突起部6bが遊挿される逃げ孔3eと、補助駆動部材8の突起部8bが遊挿される逃げ孔3fと、第2駆動部材7の突起部7bが遊挿される逃げ孔3gとが、それぞれ長孔状に形成されている。さらに、この上側支持板3には、各スペーサ5の真上に位置する透孔3hと、四隅に位置する取付孔3iとが形成されている。各透孔3hには固定ねじ17が挿通されてスペーサ5に螺着されており、各取付孔3iは上側支持板3を図示せぬ外部装置へ取り付ける際のねじ挿通孔として利用される。
【0020】
下側支持板4には、第1駆動部材6の支軸6aの下端部を軸支する軸受部4aと、補助駆動部材8の支軸8aの下端部を軸支する軸受部4bと、第2駆動部材7の支軸7aの下端部を軸支する軸受部4cとが設けられている。また、この下側支持板4には、モータ軸9a,11aが挿通される一対の丸孔4d,4eと、各スペーサ5の真下に相当する四隅に位置する透孔4fとが形成されており、各透孔4fには固定ねじ18が挿通されてスペーサ5に螺着されている。
【0021】
すなわち、図2や図3に示すように、上側支持板3と下側支持板4は4本のスペーサ5を介して一体化されており、両支持板3,4間に画成される隙間19に、モータ軸9a,11aに固着された歯車10,12が配置されている。そして、図9や図10に示すように、一方の歯車10が第1駆動部材6の歯部6cと噛合して他方の歯車12が第2駆動部材7の歯部7cと噛合しているため、第1駆動部材6とモータ軸9aとが連動して回転し、かつ第2駆動部材7とモータ軸11aとが連動して回転するようになっている。
【0022】
第1駆動部材6は支軸6aを中心に回転可能であり、操作部材2のガイド溝2cと係合する突起部6bを上向きに突設していると共に、両支持板3,4間の隙間19内で歯車10と噛合する歯部6cを有している。ガイド溝2cはY方向に延びているため、操作部材2がX方向へスライド移動すると、突起部6bが同方向へ駆動されて第1駆動部材6は回転する。そして、この回転に伴って突起部6bがガイド溝2c内を摺動すると共に、歯部6cが歯車10を駆動するため、第1モータ9のモータ軸9aが回転するようになっている。ただし、操作部材2をX方向へスライド移動できる範囲は限定されているため、図12に示すように、突起部6bの可動範囲は支軸6aからY方向片側(同図上側)へ突起部6bの回転半径分だけ離隔した位置とその近傍に限定されている。それゆえ、第1駆動部材6の回転時に、突起部6bはX方向および該X方向と鋭角をなす方向へのみ移動可能である。
【0023】
補助駆動部材8は支軸8aを中心に回転可能であり、操作部材2のガイド溝2dと係合する突起部8bを上向きに突設していると共に、両支持板3,4間の隙間19内で第1駆動部材6の歯部6cと噛合する歯部8cを有している。図12に示すように、この補助駆動部材8の支軸8aおよび突起部8bは第1駆動部材6の支軸6aおよび突起部6bと線対称な位置関係になっており、補助駆動部材8と第1駆動部材6はそれぞれの回転中心から等距離の位置で噛合して互いに逆向きに回転する。すなわち、ガイド溝2dはガイド溝2cと同じくY方向に延びているため、操作部材2がX方向へスライド移動すると、突起部8bが同方向へ駆動されて補助駆動部材8が第1駆動部材6とは逆向きに回転し、この回転に伴って突起部8bはガイド溝2d内を摺動するようになっている。また、図12に示すように、突起部8bの可動範囲は、支軸8aからY方向他側(同図下側)へ突起部8bの回転半径分だけ離隔した位置とその近傍に限定されているため、補助駆動部材8の回転時に、突起部8bはX方向および該X方向と鋭角をなす方向へのみ移動可能である。
【0024】
第2駆動部材7は支軸7aを中心に回転可能であり、操作部材2のガイド溝2eと係合する突起部7bを上向きに突設していると共に、両支持板3,4間の隙間19内で歯車12と噛合する歯部7cを有している。ガイド溝2eはX方向に延びているため、操作部材2がY方向へスライド移動すると、突起部7bが同方向へ駆動されて第2駆動部材7は回転する。そして、この回転に伴って突起部7bがガイド溝2e内を摺動すると共に、歯部7cが歯車12を駆動するため、第2モータ11のモータ軸11aが回転するようになっている。ただし、操作部材2をY方向へスライド移動できる範囲は限定されているため、図12に示すように、突起部7bの可動範囲は、支軸7aからX方向片側へ突起部7bの回転半径分だけ離隔した位置とその近傍に限定されている。それゆえ、第2駆動部材7の回転時に、突起部7bはY方向および該Y方向と鋭角をなす方向へのみ移動可能である。
【0025】
第1および第2モータ9,11のモータ軸9a,11aはいずれも、スライド操作される操作部材2の移動平面や各駆動部材6〜8の回転平面に対して直交している。そのため、モータ軸9aと第1駆動部材6との動力伝達手段である歯車10や、モータ軸11aと第2駆動部材7との動力伝達手段である歯車12として、動力伝達が確実に行える安価で小径のものを用いることができる。
【0026】
センサ13は回路基板15上で第1モータ9に覆われており、このセンサ13がモータ軸9aの回転方向と回転量を検出するため、操作部材2のX方向への移動状態をセンサ13によって検出することができる。同様に、センサ14は回路基板15上で第2モータ11に覆われており、このセンサ14がモータ軸11aの回転方向と回転量を検出するため、操作部材2のY方向への移動状態をセンサ14によって検出することができる。また、回路基板15に形成されている制御回路16は、センサ13の出力に基づいて第1モータ9を駆動制御すると共に、センサ14の出力に基づいて第2モータ11を駆動制御するように設計されている。
【0027】
次に、図12を参照しつつ、上記の如くに構成された操作感触可変入力装置1のスライド操作時の動作について説明する。ここで、図12(E)は操作部材2が中立位置にある状態を示しており、このとき、操作部材2の中心を通ってY方向に延びる直線は第1駆動部材6の突起部6bおよび補助駆動部材8の突起部8bと重なり合っており、操作部材2の中心を通ってX方向に延びる直線は第2駆動部材7の突起部7bと重なり合っている。
【0028】
ユーザが手動操作して操作部材2を図12(E)の状態からX方向片側(同図右側)へスライド移動させると、突起部6b,8bが操作部材2に駆動されるため、第1駆動部材6が同図時計回りに回転して補助駆動部材8が同図反時計回りに回転し、同図(F)のような状態になる。その際、突起部6bはガイド溝2c内で同図下向きに変位して突起部8bはガイド溝2d内で同図上向きに変位するが、突起部7bはガイド溝2e内を長手方向へ移動するだけなので、第2駆動部材7は回転しない。また、第1駆動部材6の回転に伴って歯部6cが歯車10を駆動するため、第1モータ9のモータ軸9aが第1駆動部材6に連動して回転する。モータ軸9aの回転状態はセンサ13によって検出されるため、操作部材2のX方向への移動状態が検出され、このセンサ13の検出結果に基づいて制御回路16が第1モータ9を駆動制御することにより、第1モータ9の回転力が第1駆動部材6および補助駆動部材8を介して操作部材2に付与されて、ユーザの手指に抵抗感等の所要の力覚(操作感触)が伝えられるようになっている。なお、線対称な位置関係にある突起部6b,8bを操作部材2に係合させたまま第1駆動部材6と補助駆動部材8が逆向きに回転するため、操作部材2がX方向へのスライド移動時に回転する虞はない。また、歯車10と噛合する第1駆動部材6や該駆動部材6と噛合する補助駆動部材8は回転可能に支持されているため、操作部材2のスライド移動によって駆動される両駆動部材6,8にガタが生じる虞もない。
【0029】
ユーザが操作部材2を図12(E)の状態からX方向他側(同図左側)へスライド移動させた場合には、第1駆動部材6が同図反時計回りに回転して補助駆動部材8が同図時計回りに回転し、同図(D)のような状態になるが、基本的な動作は上記の場合と同様である。ただし、第1駆動部材6の歯部6cによって駆動されるモータ軸9aの回転方向は上記の場合と逆になる。
【0030】
また、ユーザが操作部材2を図12(E)の状態からY方向片側(同図上側)へスライド移動させた場合には、突起部7bが操作部材2に駆動されるため、第2駆動部材7が同図反時計回りに回転して同図(B)のような状態になる。その際、突起部6b,8bはそれぞれガイド溝2c,2d内を長手方向へ移動するだけなので、第1駆動部材6や補助駆動部材8は回転しない。また、第2駆動部材7の回転に伴って歯部7cが歯車12を駆動するため、第2モータ11のモータ軸11aが第2駆動部材7に連動して回転する。モータ軸11aの回転状態はセンサ14によって検出されるため、操作部材2のY方向への移動状態が検出され、このセンサ14の検出結果に基づいて制御回路16が第2モータ11を駆動制御することにより、第2モータ11の回転力が第2駆動部材7を介して操作部材2に付与されて、ユーザの手指に所要の力覚が伝えられるようになっている。なお、この場合も、突起部6b,8bによって操作部材2の回転は阻止されている。また、歯車12と噛合する第2駆動部材7は回転可能に支持されているため、操作部材2のスライド移動によって駆動される第2駆動部材7にガタが生じる虞もない。
【0031】
ユーザが操作部材2を図12(E)の状態からY方向他側(同図下側)へスライド移動させた場合には、第2駆動部材7が同図時計回りに回転して同図(H)のような状態になるが、基本的な動作は上記の場合と同様である。ただし、第2駆動部材7の歯部7cによって駆動されるモータ軸11aの回転方向は上記の場合と逆になる。
【0032】
次に、ユーザが操作部材2を図12(E)の状態からX,Y方向に対して斜めにスライド移動させた場合の動作について説明する。例えば、操作部材2を図12(E)の状態から同図の斜め右上方へスライド移動させると、第1駆動部材6の突起部6bと補助駆動部材8の突起部8bがX方向片側(同図右側)へ駆動されて、モータ軸9aが第1駆動部材6に連動して回転すると共に、第2駆動部材7の突起部7bがY方向片側(同図上側)へ駆動されて、モータ軸11aが第2駆動部材7に連動して回転する。その結果、各駆動部材6〜8は図12(C)のような状態になる。この場合、操作部材2はX方向へもY方向へも移動するので、操作部材2の位置変化のX方向成分とY方向成分がそれぞれ検出されることになる。すなわち、操作部材2のX方向およびY方向への移動状態がそれぞれセンサ13,14によって検出され、その検出結果に基づいて駆動制御される第1および第2モータ9,11の回転力を操作部材2に付与することによって、ユーザの手指に所要の力覚が伝えられるようになっている。
【0033】
操作部材2を図12(E)の状態から同図の斜め左上方へスライド移動させて同図(A)のような状態に移行させる場合の動作や、同図の斜め右下方へスライド移動させて同図(I)のような状態に移行させる場合の動作、あるいは同図の斜め左下方へスライド移動させて同図(G)のような状態に移行させる場合の動作も、基本的に上記の動作と同様である。
【0034】
以上説明したように、本実施形態例に係る操作感触可変入力装置1は、ユーザの手動操作で操作部材2を所定平面に沿って任意方向へスライド移動させると、操作部材2の位置変化のX方向成分に応じて第1駆動部材6および補助駆動部材8が回転駆動されて第1モータ9のモータ軸9aが回転し、かつ操作部材2の位置変化のY方向成分に応じて第2駆動部材7が回転駆動されて第2モータ11のモータ軸11aが回転するようにしてある。そのため、操作部材2のX,Y方向の移動状態を検出するセンサ13,14の検出結果に基づいて各モータ9,11を駆動制御することにより、各モータ9,11の回転力を操作部材2に付与してユーザの手指に所要の力覚を伝えることができる。また、操作部材2と各駆動部材6〜8と各モータ9,11の全てを平面視で狭い領域内にコンパクトに配設することができるため、装置全体の小型化が容易であり、かつ構造が単純なためコストアップも回避できる。しかも、操作部材2に駆動される各駆動部材6〜8は回転可能に支持されているため、操作部材2のスライド移動時に各駆動部材6〜8にガタが生じる虞はなく、よって良好な操作性が期待できる。
【0035】
また、本実施形態例に係る操作感触可変入力装置1では、操作部材2のY方向に延びるガイド溝2c,2dに突起部6c,8cを摺動自在に挿入し、かつ操作部材2のX方向に延びるガイド溝2eに突起部7cを摺動自在に挿入しているため、操作部材2のスライド移動によって各駆動部材6〜8を円滑に回転駆動させることができ、この点からも良好な操作性が期待できる。ただし、操作部材2に設けた突起部を各駆動部材6〜8に設けた溝状または長孔状のガイド部に摺動自在に挿入するという係合構造であってもよい。
【0036】
なお、本実施形態例に係る操作感触可変入力装置1では、歯部6cに噛合して第1駆動部材6と逆向きに回転する補助駆動部材8を備えた構成にしてあるが、補助駆動部材8を省略した構成にすることも可能である。ただし、本実施形態例のように補助駆動部材8の突起部8cと第1駆動部材6の突起部6cとが線対称な位置関係で操作部材2に係合させてあると、スライド移動中に懸念される操作部材2の回転が防止できるため好ましい。すなわち、補助駆動部材8を備えていない場合、操作部材2がX方向へスライド移動して第1駆動部材6の突起部6cとの相対位置を変化させるのに伴って該操作部材2が僅かに回転してしまう可能性があるが、補助駆動部材8の突起部8cが操作部材2と係合させてあれば、こうした不所望な回転を未然に防止することができる。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態例に係る操作感触可変入力装置20を図13〜図15に基づいて説明する。なお、図13〜図15において、図1〜図12と対応する部分には同一符号を付すことで重複説明は適宜省略する。
【0038】
この第2実施形態例に係る操作感触可変入力装置20が前述した第1実施形態例に係る操作感触可変入力装置1と相違する点は、第1モータ9のモータ軸9aに固着されている歯車10を第1駆動部材6の歯部6cと補助駆動部材8の歯部8cとの間に介在させ、この歯車10を介して第1駆動部材6の突起部(第1係合部)6bと補助駆動部材8の突起部(補助係合部)8bとが同期して移動するようにしたことにあり、それ以外の構成は基本的に同じである。
【0039】
すなわち、本実施形態例に係る操作感触可変入力装置20の場合、第1駆動部材6に形成された扇形状の歯部6cと補助駆動部材8に形成された扇形状の歯部8cとは直接噛合しておらず、これら両歯部6c,8cに第1モータ9のモータ軸9aに固着した歯車10を介在させることにより、第1駆動部材6と補助駆動部材8が歯車10を介して逆向きに回転し、突起部(第1係合部)6bと突起部(補助係合部)8bとが同期して移動するように構成されている。したがって、第1駆動部材6と補助駆動部材8はいずれも1箇所の噛合部分を介して第1モータ9と動力伝達されることになり、その分、噛合箇所のバックラッシに起因するガタを第1駆動部材6と補助駆動部材8の両方について抑制することができる。しかも、第1モータ9の回転力が第1駆動部材6だけでなく補助駆動部材8にも直接伝達されるため、よりダイレクト感のある操作感触を生起させることができる。
【0040】
また、本実施形態例に係る操作感触可変入力装置20では、補助駆動部材8の回転中心である支軸8aを外方側に配置すると共に、操作部材2のガイド溝2eに挿入される突起部8bを歯車10寄りに配置してあるため、第1駆動部材6の突起部6bと補助駆動部材8の突起部8bとの距離を第1実施形態例に比べて短くすることができ、その分、装置全体の小型化を促進することができる。
【0041】
なお、本実施形態例に係る操作感触可変入力装置20では、下側支持板4として用いた金属板の周縁部に複数の折曲片4gを形成し、これら折曲片4gを介して上側支持板3と下側支持板4を一体化することにより、両支持板3,4間に各駆動部材6〜8や歯車10,12を配置するための隙間が画成されている。したがって、下側支持板4の各折曲片4gが第1実施形態例のスペーサ5と同等の機能を有することになり、その分、部品点数を削減してコストダウンが図られている。
【符号の説明】
【0042】
1,20 操作感触可変入力装置
2 操作部材
2a スライダ
2b 取付部
2c ガイド溝(第1ガイド部)
2d ガイド溝(第3ガイド部)
2e ガイド溝(第2ガイド部)
3 上側支持板
3a 支持突起
3b〜3d 軸受部
4 下側支持板
4a〜4c 軸受部
5 スペーサ
6 第1駆動部材
6a 支軸
6b (第1)突起部(第1係合部)
6c 歯部
7 第2駆動部材
7a 支軸
7b (第2)突起部(第2係合部)
7c 歯部
8 補助駆動部材
8a 支軸
8b (第3)突起部(補助係合部)
8c 歯部
9 第1モータ
9a モータ軸
10 歯車(第1動力伝達手段)
11 第2モータ
11a モータ軸
12 歯車(第2動力伝達手段)
13 センサ(第1検出手段)
14 センサ(第2検出手段)
15 回路基板
16 制御回路(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する第1方向と第2方向を含む平面に沿ってスライド移動可能な操作部材と、この操作部材の前記第1方向へのスライド移動によって駆動される第1係合部を有する第1駆動部材と、前記操作部材の前記第2方向へのスライド移動によって駆動される第2係合部を有する第2駆動部材と、第1動力伝達手段を介して前記第1駆動部材に連結された第1モータと、第2動力伝達手段を介して前記第2駆動部材に連結された第2モータと、前記操作部材の前記第1方向への移動状態を検出する第1検出手段と、前記操作部材の前記第2方向への移動状態を検出する第2検出手段と、前記第1および第2検出手段の出力に基づいて前記第1および第2モータの駆動制御を行う制御手段とを備え、
前記第1および第2駆動部材が前記平面に沿ってそれぞれ回転可能に支持されていると共に、前記第1駆動部材の回転中心から前記第2方向へ離隔した位置を前記第1係合部の可動範囲となすことにより、前記第1駆動部材の回転時に前記第1係合部が前記第1方向および該第1方向と鋭角をなす方向へ移動するようにし、かつ、前記第2駆動部材の回転中心から前記第1方向へ離隔した位置を前記第2係合部の可動範囲となすことにより、前記第2駆動部材の回転時に前記第2係合部が前記第2方向および該第2方向と鋭角をなす方向へ移動するようにしたことを特徴とする操作感触可変入力装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記操作部材と前記第1駆動部材のうち、いずれか一方が前記第2方向へ延びる溝状または長孔状の第1ガイド部を有すると共に、いずれか他方が前記第1ガイド部に摺動自在に挿入された第1突起部を有し、前記第1係合部が前記第1突起部または前記第1ガイド部であることを特徴とする操作感触可変入力装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記操作部材と前記第2駆動部材のうち、いずれか一方が前記第1方向へ延びる溝状または長孔状の第2ガイド部を有すると共に、いずれか他方が前記第2ガイド部に摺動自在に挿入された第2突起部を有し、前記第2係合部が前記第2突起部または前記第2ガイド部であることを特徴とする操作感触可変入力装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記平面に沿って回転可能に支持されると共に、前記操作部材の前記第1方向へのスライド移動によって駆動される補助係合部を有する補助駆動部材を備え、前記補助駆動部材の回転中心から前記第2方向へ離隔した位置を前記補助係合部の可動範囲となすことにより、前記補助駆動部材の回転時に前記補助係合部が前記第1方向および該第1方向と鋭角をなす方向へ移動するようにし、かつ、前記第1駆動部材の前記第1係合部と前記補助駆動部材の前記補助係合部とが同期して移動するように構成したことを特徴とする操作感触可変入力装置。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記第1駆動部材と前記補助駆動部材がそれぞれの回転中心から等距離の位置で噛合して互いに逆向きに回転するようにしたことを特徴とする操作感触可変入力装置。
【請求項6】
請求項4の記載において、前記第1モータの回転軸に連結された歯車を前記第1駆動部材と前記補助駆動部材との間に介在させ、この歯車を前記第1駆動部材に形成した歯部と前記補助駆動部材に形成した歯部の両方に噛合させたことを特徴とする操作感触可変入力装置。
【請求項7】
請求項4の記載において、前記操作部材と前記補助駆動部材のうち、いずれか一方が前記第2方向へ延びる溝状または長孔状の第3ガイド部を有すると共に、いずれか他方が前記第3ガイド部に摺動自在に挿入された第3突起部を有し、前記補助係合部が前記第3突起部または前記第3ガイド部であることを特徴とする操作感触可変入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−103116(P2011−103116A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161236(P2010−161236)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】