説明

操作装置および画像読取装置

【課題】 環状のタッチスイッチなどの環状の広い照明領域を背後から明るく且つ明度ムラが小さく照明することができ、且つこれを少ない数の光源で実現する。
【解決手段】 タッチパネルは環状の光透過部を有している。導光体の下面にはリング形状の拡散面が形成されている。リング形状は1つの光源に対応する第1領域と隣り合う2つの光源の間に対応する第2領域を有し、第1領域における環状の光透過部に対応した位置から光源がある側のリング周囲までの距離に比べて第2領域における環状の光透過部に対応した位置から光源がある側のリング周囲までの距離のほうが大きい形状ある。光源が発光して導光体に入射した光は拡散面で拡散反射し、拡散反射光の一部は環状の光透過部を照明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチスイッチを持つ操作装置およびこれを備えたを有する画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には画像読取部を備えた複合機が開示されている。この装置は、原稿読取面に置かれた原稿を読み取る読取部と、原稿読取面に対して開閉可能な原稿圧板とを備え、原稿圧板の上面に操作部(複数の入力キー)と表示器(LCDパネル)が設けられている。
【0003】
特許文献2には、静電容量式のタッチパネル入力装置が開示される。この装置は、複数のセンサ電極が実装された基板と、各センサ電極の上にセットされるスペーサとを備えている。
【0004】
特許文献3には、文字や図形を表示する液晶表示器を背後から照明する照明装置(バックライト)が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−88759号公報
【特許文献2】特開2009−37373号公報
【特許文献3】特開平11−283425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、操作部はタクトスイッチのような機械式接点のキー構造であるが、コストや配置デザイン上の理由により、操作部を特許文献2のような静電容量式のタッチスイッチに置き換えることが考えられる。その際、スイッチの背後にバックライト(照明装置)を設けて、暗部でもスイッチの視認性を高めると共に、必要のないときにはバックライトを消灯することができれば、装置の操作性が向上する。これを実現する際の課題の一つは、タッチスイッチの照明すべき領域が広い面積を有していたとしても背後から照明する光が明るく且つ明度ムラを小さくし、これを少ない数の光源で実現することである。
【0007】
特許文献3に開示される照明装置は、導光板(8)の限定された領域に反射面に形成することで明るい照明光を得るとともに、表示範囲に限定して白色蓋枠の出射窓(11)を設けて漏れ光を防ぐ構造となっている。しかし、光源の数をなるべく減らしつつ大きな面積を明度のムラなく照明するには、特許文献3のような構成でも不十分な場合がある。例えば、操作部がジョグホイールのような大サイズの環状の入力デバイスであって入力デバイスを環状に照明しようとすると、環状の場所に応じて光源からの距離差が大きく異なるので顕著な明度差が生じ、全体を均一且つ明るく照明することが困難である。ムラを軽減するには、環状に沿って多数の光源を配置しなければならず、配置上の制約やコスト上昇の要因となる。
【0008】
また、特許文献3に開示されている照明装置を、特許文献2のような静電容量式のタッチスイッチのバックライトに適用することは、以下の理由により困難である。すなわち、特許文献2の構造では出射窓11の部分に空気層ができる。使用者が指で触れるパネル表面と電極との間に空気層が存在すると静電容量を検知することが困難になる。そのため、特許文献2の構造で電極を設けようとすると、電極を出射窓11よりも外側すなわち液晶表示器12の裏面に配置するしかない。するとバックライト光に対して電極が陰になって表示に重なってしまうという問題が起きる。
【0009】
本発明は上述の課題の認識に基づいてなされたものである。本発明の目的は、環状のタッチスイッチなどの環状の広い照明領域を背後から明るく且つ明度ムラが小さく照明することができ、且つこれを少ない数の光源で実現した装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の操作装置は、環状の光透過部を有するパネルと、第1面と第2面を有し、前記第1面が前記パネルに面する導光体と、前記導光体の周囲の複数の位置に配置された光源と、前記導光体の前記第2面の側で前記環状の光透過部に対応した複数の位置に設けられ、静電容量を検知することで前記パネルに使用者がタッチしたか否かのスイッチング状態を検知するための電極とを備え、前記導光体の前記第2面にはリング形状の拡散面が形成され、前記拡散面のリング形状は1つの前記光源に対応する第1領域と隣り合う2つの前記光源の間に対応する第2領域を有し、前記第1領域における前記環状の光透過部に対応した位置から前記光源がある側のリング周囲までの距離に比べて前記第2領域における前記環状の光透過部に対応した位置から前記光源がある側のリング周囲までの距離のほうが大きい形状であって、前記光源が発光して前記導光体に入射した光は前記拡散面で拡散反射し、拡散反射光の一部は前記光透過部を照明することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環状のタッチスイッチなどの環状の広い照明領域を背後から明るく且つ明度ムラが小さく照明することができ、且つこれを少ない数の光源で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の装置の構成を示す斜視図
【図2】電源OFF/ONでの操作パネルの表示状態を示す図
【図3】パネル部の構造図
【図4】静電容量式タッチスイッチの断面図
【図5】導光体の構造を示す図
【図6】導光体の別の構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。本明細書においては、スキャナ、プリンタ、ファクシミリ、複写機、複合機など、原稿を読み取るための画像読取部を有する装置を総称して「画像読取装置」というものとする。
【0014】
図1は本発明の実施形態の画像読取装置の構成を示す斜視図である。図1(a)は画像読取部の原稿圧板を閉じた状態、図1(b)は原稿圧板を開けた状態を示す。装置の筐体には原稿読取面に置かれた原稿を読み取る読取部(フラットベッドスキャナ)、シートにプリントを行なう記録部、および装置全体を制御する制御部5が内蔵されている。読取部、記録部それぞれについては上述の特許文献1などで周知なので、ここでは詳細な説明を省略する。制御部5はCPU、メモリ、各種I/Oインターフェースを備えたコントローラボードを有する。装置の上部には原稿読取面2に対して原稿圧板6が開閉可能に設けられている。設置された装置は、図中の矢印Aの方向(正面側)から使用者によって操作される。
【0015】
図1(a)において、原稿圧板6の上面にはパネル部1が配置されている。パネル部1には、表示ユニット4と各種の操作キー(入力スイッチ)が密集して設けられたパネルカバー11が設けられている。さらに電源ボタン111もパネルカバー11に設けられている。電源ボタン111を除く操作キーは静電容量式のタッチスイッチとなっている。静電容量式のタッチスイッチは、人の指をタッチ面に接触すると変化する静電容量を検知して入力となす方式のタッチスイッチである。その詳細構造と動作については後述する。
【0016】
表示ユニット4には透明部材からなる表示窓4aが設けられている。表示ユニット4は、収納時は図1(a)のようにパネルカバー11の表面と一体の面を構成するように寝かせた状態である。表示ユニット4は、使用者の操作によって表示窓4aが装置手前(矢印A)に向けて立ち開くように回動可能である。つまり、表示ユニット4を寝かせた状態では表示窓4aの表示は上方から見ることができ、表示ユニット4を立てた状態では表示窓4aの表示は正面から見ることができる。電源ボタン111は、タクトスイッチなどの機械式接点のキー構造であり、電源OFFの状態で使用者が押圧すると装置ONに、逆に電源ONの状態で使用者が押圧すると装置OFFになる。
【0017】
図1(b)において、原稿圧板6は2箇所のヒンジ8でフレーム9の奥側(正面の反対側)に回動可能に取り付けれている。原稿読取面2は透明のガラス板からなり、この上に原稿面を下向きにして原稿が置かれる。ガラス板はカバーによりフレーム9に取り付けられている。原稿読取面2の上の原稿を押さえつけて浮きを抑えるため、原稿圧板6の内側面には圧着シート7が取り付けられている。ヒンジ8と原稿圧板6との係合は上下方向に遊びを持っており、厚みのあるブック原稿にも対応することができる。
【0018】
制御部5は、読取部と記録部の動作制御とともに、表示ユニット4の表示制御、タッチスイッチのスイッチ入力および表示制御など、装置全体の各種制御を司る。後述するように、制御部5は複数の動作モードの制御を行ない、動作モードに応じてタッチスイッチのバックライト(背後からの照明)の点灯と消灯の状態を変化させる。
【0019】
図2は、画像読取装置の上面図であり、原稿圧板6の上面、パネルカバー11に設けられた操作パネル(操作装置)の表示状態を示す。図2(a)は電源OFFの状態であり、操作部の各種の操作キーは電源ボタン111、ジョグホイール101dを除いて使用者には見えなくなっている。図2(b)は電源ONですべての操作キーが点灯表示した状態である。点灯したキーは入力が有効状態となる。
【0020】
この例では、操作キーは、ホームキー101b、1つ前の状態に戻すための戻るキー101c、モノクロコピーキー101h、カラーコピーキー101i、ストップキー101jなどである。モノクロコピーキー101hはモノクロコピーまたはモノクロ画像スキャンの動作開始を指示するキーであり、カラーコピーキー101iはカラーコピーまたはカラー画像スキャンの動作開始を指示するキーである。ストップキー101jはコピー動作またはスキャン動作の停止を支持するためのキーである。操作キーはさらに、表示ユニット4に表示される画面上の表示項目を選択するための3つのキーからなるファンクションキー101aを有する。
【0021】
操作キーはさらに、表示ユニット4に表示される画面上のカーソルを上下左右に移動させるための4つの矢印キー101f、およびカーソル等を移動させるためのリング形状キーであるジョグホイール101dを有する。操作キーはさらに、選択を決定するためのOKキー101e、コピー枚数などの数値を設定するための“+”“−”キー101gを有する。これらの各操作キーは、各々が独立して点灯と消灯が可能なバックライトを備えた静電容量式のタッチスイッチとなっている。バックライトが点灯するとそのキー固有の図形(マーク)が表示されて使用者が視認することが可能となり、バックライトが消灯するとキーのマークは非表示となって使用者には視認できなくなる。
【0022】
図3はパネル部1の構成図であり、図3(a)は積層構造を示す分解斜視図、図3(b)は上面図である。パネル部1は図3(a)に示すように、表面(上面)から順に、パネルカバー11、弾性体シート12、導光体群13、弾性体シート14、パネル基板15を備えた5層の積層構造を有する。全体は弾性体シート12と弾性体シート14で密着して一体構造物となっている。すなわち、パネルカバー11と導光体群13の間には透光性のシート状の弾性体シート12(第1弾性体シート)が介在して両者の間を密着させる。同様に、パネル基板15と導光体群の間にはシート状の弾性体シート14(第2弾性体シート)が介在して両者の間を密着させる。弾性体シート14は透光性である必要はない。弾性体シート12、14はいずれも非導電性の絶縁体材料からなる。
【0023】
パネルカバー11は透光性(透明または半透明)で継ぎ目のない1枚の板状部材であり、プラスチック材料(例えば、アクリル、ABS、PC、MBS、SBCなど)またはガラス材料からなる。導光体群13も透明のプラスチック材料またはガラス材料からなる。弾性体シート12および弾性体シート14はそれぞれ、複数の電極に対して共通の分割されていない1枚のシートである。細かく分割されていない1枚のシートなので操作パネルの組み立てが容易になる。
【0024】
組み立ての際には、パネルカバー11と導光体群13とはシート状の弾性体シート12によって隙間なく完全に密着することが求められる。なぜなら、完全に密着せずに誘電率が低い空気層が介在してしまうと、静電容量変化の検知が不安定となって静電容量式スイッチとしての信頼性が劣化するためである。さらに、メンテナンスにおけるパネルカバー11の交換作業を考慮すると、いったん密着させた後にも、糊を残さずに剥がしやすいことが求められる。密着性の高さと剥がしやすさの2つの特性を両立させるために、弾性体シート12は接着剤を使わずに粘着性が得られる自己粘着性の弾性体シートを用いる。このような弾性体シートとしては、例えばゲルシートが好適である。導光体群13とパネル基板15(複数の電極の表面)とを密着させる弾性体シート14にも同様の特性が求められるので、弾性体シート14にも自己粘着性をもつ弾性体シート、例えばゲルシートを用いる。なお、弾性体シート12、弾性体シート14の両方ではなく一方のみをゲルシートとしてもよい。また、ゲルシートの替わりに、同様の自己粘着性と弾性を有する材質のシートを用いてもよい。また、剥がすときに破れ難い両面テープ、例えばポリエチレンテレフタラート(PTE)を基材とする両面テープを用いてもよい。
【0025】
図3(b)はパネル基板15の上での導光体群13の各導光体の配列を示す。同図に示すように、導光体群13は、静電容量式スイッチのタッチ位置に対応した位置に複数の導光体103a〜103jが配列されている。また、各導光体に対応して1つまたは複数の光源が、パネル基板15に実装されている。例えば、戻るキー101cを照明するために導光体103cと1つの光源106cが設けられ、‘+’‘−’キー101gを照明するために導光体103gと2つの光源106gが設けられている。また、ジョグホイール101dを照明するために導光体103dと4つの光源106dが設けれている。
【0026】
図4は静電容量式スイッチの断面図を示す。図4(a)は図2(b)の‘+’‘−’キー101gにおける断面図(A−A方向断面)である。パネルカバー11の裏面側の面には黒インクの印刷によって遮光層101kが形成されている。遮光層101kには部分的に黒インク印刷されていない所定形状の光透過部を持つ透過図形部101mが形成されている。透過図形部101mは上面から見ると意味のある図形となっており、この例では、図2(b)のように、‘+’‘−’の文字とそれぞれの周りを矩形の線で囲んだ図形となっている。パネルカバー11は透光性なので、透過図形部101mをバックライトで背後(下)から照明すれば図形を使用者に視認させることができる。バックライトを消灯すると図形は黒くなるので図形は視認されない。発明者らの実験によると、パネルカバー11は、半透過性のグレースモークの材質とすると、バックライト消灯時に透過図形部101mが非常に視認し難く事実上不可視となり、図形表示ON/OFFのコントラストを高めることができる。パネルカバー11は一枚の板体からなるので、バックライトが消灯されたら、電源ボタン111、ジョグホイール101d、OKキー101eを除いてスイッチは存在感がなくなり、使用者に混乱を与えることなく且つ美観上も好ましい。
【0027】
パネル基板15には、2箇所に半導体光源からなる光源106gが実装されている。半導体光源としてはLEDやOLEDが用いられる。光源106gの光の射出方向はパネル面に対して水平な方向で且つ導光体103gに対して導光体103gの側面から光が入射される方向である。光源106gが点灯すると、導光体103gに矢印Cの方向を中心とする拡散光束が入射する。入射した拡散光束は導光体103gの中で反射を繰り返して伝播する。導光体103gの下面には白塗料の塗布によって拡散面103g−aが形成されている。拡散面103g−aに当たった光は拡散反射して一部は上方向(矢印Dの方向)に拡散する。この光の一部は透過図形部101mから外部に射出され残りは遮光層101kでは遮られる。これにより、‘+’‘−’が図形として使用者に視認される。このように、光源と導光体とでバックライトが構成されている。
【0028】
パネル基板15には、タッチ位置の直下、すなわち2箇所の光源106gの間で拡散面103g−aに対応した位置に、‘+’キー、‘−’キーのスイッチング状態の個別検知のため2つの電極105gが実装されている。さらに、パネル基板15には各電極に電気接続された信号処理回路(プロセッサを含む)が実装されている。信号処理回路は、電極で検出した静電容量変化をデジタルデータに変換し信号処理によってスイッチング状態(タッチの有無)をON/OFFとして判定する。パネルカバー11にタッチした使用者の指先Fと電極105gとの間は一種のコンデンサとなって、指先Fがパネルカバー11の表面に触れると静電容量が変化する。信号処理回路は、電極105gによって静電容量の変化を検知することでタッチの有無を検知する。タッチスイッチの入力を有効にした場合には、電極による検知される静電容量が所定の閾値を越えたらスイッチ入力された(スイッチON)と判断する。一方、タッチスイッチの入力を無効にした場合には、電極による静電容量の検出を無視するまたは上記所定の閾値を高くする。
【0029】
図4(b)は、図2(b)の矢印キー101f、ジョグホイール101d、OKキー101eにおける断面図(B−B方向断面)である。パネルカバー11の表面には、OKキー101eに対応した位置は凹形状の窪みが形成されている。同様に、リング形状のジョグホイール101dも凹形状の窪み(溝)がリング状に形成されている。その他のキーに対応する位置には窪みは形成されていない。使用頻度の高いキーについて窪みを設けることで、使用者に触覚感および視覚感を与えて確実な操作に行わせることができる。とくにジョグホイール101dについては、リング形状の窪みが使用者がタッチした指先Fの動きを物理的にガイドするので、使用者は正確な位置に沿って滑らかに指を滑らせることでき、良好な操作性が得られる。
【0030】
OKキー101eの下には導光体103eが配置され、4つの矢印キー101fの下には4つの導光体103fが配置されている。ジョグホイール101dの下にはリング形状の導光体103dが配置されている。導光体103dの周囲には4つの光源が配置されている。導光体それぞれの導光体の下にはパネル基板15上にスイッチング状態を検知するための電極105e、105f、電極105dが設けられている。パネル基板15には電極の近傍に貫通孔105tが形成されており、弾性体シート14で広い面積を密着させる際には貫通孔105tから空気が逃げて、弾性体シート14と電極表面との間に空気層ができにくい。このように、弾性体シート14に密着性の高いゲルシートを採用するとともパネル基板15に貫通孔を設けたことの相乗効果で操作パネル組み立ての際に空気層が入り込みにくくなっている。
【0031】
ここで、OKキー101eおよびジョグホイール101dは、凹形状の窪み分だけ、パネルカバー11の表面(タッチ面)から対応する電極までの距離が矢印キー101fに比べて短くなっている。距離が短いほうが使用者がタッチした際の静電容量変化が大きくなるので、検知感度が高くなる。もし、使用者が隣り合うキー同士のちょうど境界をタッチした場合には、検知感度の高いOKキー101eまたはジョグホイール101dの方が感応する確率が高い。スイッチとしての使用頻度を考えると、OKキー101eとジョグホイール101dは、矢印キー101fより使用頻度が多いので、使用頻度の高いキーの感応が優先される設計は合理的である。つまり、複数のタッチスイッチは互いに隣接し検知感度が異なる第1スイッチ(OKキー101e、ジョグホイール101d)と第2スイッチ(矢印キー101f)を含み、使用頻度がより高い第1スイッチのほうが第2スイッチよりも検知感度が高い。
【0032】
OKキー101eとジョグホイール101dは、パネルカバー11の表面の窪みによって電極までの距離が変化することが、静電容量の検知感度の差を生じさせている。つまり、各キーにおいて窪みは指をガイドするガイド機能と検知感度を調整する機能の2つを同時に満たすものであり、簡素な構成で高い操作性と信頼性を実現している。とくにジョグホイール101dについては、リングに沿って指を動かすので指の位置がずれやすいが、リング形状の窪みが指の動きを物理的にガイドするので、指がリングから外れて隣り合う矢印キー101fに触れてしまう可能性をより低くしている。それでも指がずれたとしても、検知感度に差を設けてジョグホイール101dの方が優先されるようになっている。つまり、物理的なガイドと検知感度差による優先順位という2つの手法の組み合わせにより、非常に高い操作性ならびに信頼性を実現するものである。
【0033】
次に、図5、図6を用いて、ジョグホイール101dに対応した導光体103dの詳細な構造について説明する。図5は複数の光源がリングの外側にある形態である。図5(a)は導光体の第1の形態を示す。導光体103dは透明なガラスまたはプラスチックからなり、上方から見た形状がリング形状である。リング形状の導光体103dの外周側の周囲には、複数箇所(4箇所)に均等角度(90度)ごとに光源106dが設けられている。光源106dはLEDやOLEDなどの半導体光源である。導光体103dの下面の一部(内周側)にはリング形状の拡散面103d−aが形成されている。拡散面103d−aは、リング形状の光透過部101d−aを少なくとも含む範囲に対応してリング状に形成されている。拡散面103d−aは導光体の表面に白色塗料が印刷や手作業によって塗布されたもので、ここに入射した光は塗料の微細な凹凸によって拡散反射する。
【0034】
それぞれの光源106dが発光すると、図中の矢印のように、リング内周に向けて導光体103dの側面から光が入射する。入射した光は、拡散面103d−aが無い領域では導光体の上面(第1面)と下面(第2面)で全反射して、光量ロスがほとんど無くリングの内周側に導入される。導入された光のうち拡散面103d−aに入射した光はここで拡散反射する。そして、上方に拡散反射した光の一部はジョグホイール101dの光透過部101d−aを照明しリング状の図形表示がなされる。
【0035】
ここで、拡散面103d−aの形状について説明する。リング形状の拡散面103d−aのリングの幅は1周に渡って一様ではなく、部位に応じて幅が非一様に変化している。光源106dに近い第1領域では幅A、光源106dから遠い第2領域(隣合う光源の間の領域)では幅Bとなっており、B>Aの関係を満たす。つまり、拡散面103d−aは非一様な幅を持つリング形状を有し、リング形状は光源から第1の距離の部位での幅に比べて光源から第1の距離よりも大きな第2の距離の部位での幅が太くなっている領域を含んでいる。拡散面103d−aのうち、第1領域では十分な光量の拡散反射光が得られる。これに対して、隣り合う光源の間である第2領域では光源からの遠いために到達する光源から光が減少して、拡散反射光の光量も弱まる。このままでは、リング状の図形表示は円周に沿って明るい部分と暗い部分が交互に混在して明度にムラが生じてしまう。そこで、第1領域での幅Aに比べて第2領域での幅Bを太くすることで、拡散面の面積を大きくして、光源から遠い領域では拡散反射光がより多く生じるようにしている。これにより、リング状の図形表示の明度ムラが軽減される。
【0036】
本実施形態では、ジョグホイール101dが円形のリング形状であるので、それに対応して拡散面103d−aも円形のリング形状としている。これに限らず、ジョグホイール101dおよび拡散面103d−aは、円形に限らず多角形のリング形状であってもよい。また、ジョグホイール101dや拡散面103d−aのリング形状は、1周が途切れがない形態に限らず、周の途中に1または複数の切れ目のあるリング形状であってもよい。
【0037】
図5(b)は導光体103dの第2の形態を示す。図5(a)の例と違ってリング形状の拡散面103d−aのリング幅は1周に渡ってほぼ一様の幅Cである。ただし、リング形状は正円ではなく矩形に近いいびつな形状となっている。つまり、リング形状の拡散面103d−aは、光源に近い第1領域ではリングの内周方向(光源から離れる方向)に変形し、且つ、隣り合う光源の間の第2領域ではリングの外周方向に変形した形状である。なお、第1領域と第2領域の一方だけで変形して他方は変形しないような形状であってもよい。
【0038】
図6は複数の光源がリングの内側にある形態である。図6(a)は図5(a)に対応した形態である。リング形状の導光体103dの内側の周囲には、均等角度(90度)ごとに計4箇所に光源106dが設けられている。導光体103dの下面の一部(半径方向の中央付近)にはリング形状の拡散面103d−aが形成されている。拡散面103d−aは、リング形状の光透過部101d−aを少なくとも含む範囲に対応してリング状に形成されている。それぞれの光源106dが発光すると、図中の矢印のように、リング外周に向けて導光体103dの側面から光が入射し、拡散面103d−aに到達した光はここで拡散反射する。拡散面103d−aのリングの幅は1周に渡って一様ではなく、部位に応じて幅が非一様に変化している。光源106dに近い第1領域では幅A、光源106dから遠い第2領域(隣合う光源の間の領域)では幅Bとなっており、B>Aの関係を満たす。これにより、図5(a)の形態と同様にリング状の図形表示の明度ムラが軽減される。
【0039】
図6(b)は図5(b)に対応した形態である。リング形状の拡散面103d−aのリング幅は1周に渡ってほぼ一様の幅Cであり、光源に近い第1領域ではリングの外周方向(光源から離れる方向)に変形し、且つ、隣り合う光源の間の第2領域ではリングの内周方向に変形した形状である。なお、第1領域と第2領域の一方だけで変形して他方は変形しないような形状であってもよい。これにより、図5(b)の形態と同様にリング状の図形表示の明度ムラが軽減される。
【0040】
このように、図5、図6いずれの形態も、導光体103dの第2面に形成された拡散面103d−aのリング形状が、1つの光源106dに対応する第1領域と隣り合う2つの光源106dの間に対応する第2領域を有する。そして、第1領域における環状の光透過部101d−aに対応した位置から光源がある側のリング周囲までの距離に比べて、第2領域における環状の光透過部101d−aに対応した位置から光源がある側のリング周囲までの距離のほうが大きい形状である。光源がある側のリング周囲とは、図5のように光源106dが外周側にある場合は外周側のリング端部を意味し、図6のように光源106dが内周側にある場合は内周側のリング端部を意味する。これにより、第1領域よりも第2領域で拡散反射光がより多く生じるので、リング状の図形表示の明度ムラが軽減される。
【0041】
以上のように本実施形態の装置によれば、導光体の工夫によって、ジョグホイールのタッチスイッチが広い面積を有していたとしても、背後から環状に照明する光が明るく且つ明度ムラが少なく、これを少ない数の光源で実現している。また、パネルの表面には、使用者がタッチした指先をガイドするための環状の光透過部に対応して環状の窪みが形成されているので、確実な操作感を得ることができる。
【0042】
また、以上説明した画像読取装置では、原稿圧板の上面に静電容量式のタッチスイッチを有する操作パネルが設けられている。タッチスイッチには静電容量と感圧式があるが、静電容量式は感圧式よりもスイッチ面を強固にすることができる。使用者が画像読取装置の原稿圧板に手を置いて原稿を押さえ付ける際にスイッチ面を押したとしても、より大きな押さえ力に耐えることができる。また、画像入力装置の原稿圧板の上面はもっとも物が触れ易い露出面であり、使用者が不用意に異物をぶつけたり飲料液などをこぼす可能性が大きい。静電容量式のスイッチ面は感圧式よりも、そのような局所的な衝撃や液体付着に対しても耐性が高い。また、入力が有効なキーに対応したバックライトだけを発光させるようにすれば、操作に不慣れな使用者にも混乱を与えることはない。加えて、使用者が原稿圧板で原稿を押さえ付ける際に使用しないキーに対応したタッチスイッチのバックライトが消灯していればスイッチの存在感がなくなるので、操作パネルに手を掛けるのにも心理的な抵抗が少ない。
【符号の説明】
【0043】
1 パネル部
11 パネルカバー
15 パネル基板
101d ジョグホイール
103d 導光体
103d−a 拡散面
106d 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の光透過部を有するパネルと、
第1面と第2面を有し、前記第1面が前記パネルに面する導光体と、
前記導光体の周囲の複数の位置に配置された光源と、
前記導光体の前記第2面の側で前記環状の光透過部に対応した複数の位置に設けられ、静電容量を検知することで前記パネルに使用者がタッチしたか否かのスイッチング状態を検知するための電極と、を備え、
前記導光体の前記第2面にはリング形状の拡散面が形成され、前記拡散面のリング形状は1つの前記光源に対応する第1領域と隣り合う2つの前記光源の間に対応する第2領域を有し、前記第1領域における前記環状の光透過部に対応した位置から前記光源がある側のリング周囲までの距離に比べて前記第2領域における前記環状の光透過部に対応した位置から前記光源がある側のリング周囲までの距離のほうが大きい形状であって、
前記光源が発光して前記導光体に入射した光は前記拡散面で拡散反射し、拡散反射光の一部は前記光透過部を照明することを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記拡散面のリング形状は、前記第2領域での幅が前記第1領域での幅よりも太くなっている形状であることを特徴とする、請求項1記載の操作装置。
【請求項3】
前記拡散面のリング形状は、前記第1領域では内周方向に変形し、且つ/または、前記第2領域では外周方向に変形した形状であることを特徴とする、請求項1記載の操作装置。
【請求項4】
前記導光体は環状の形状を有し、前記光源は前記導光体の外周側の周囲の複数箇所に均等角度ごとに設けられていることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の操作装置。
【請求項5】
前記導光体は環状の形状を有し、前記光源は前記導光体の内周側の周囲の複数箇所に均等角度ごとに設けられていることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の操作装置。
【請求項6】
前記拡散面のリング形状は、周の途中に1または複数の切れ目のあるリング形状であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の操作装置。
【請求項7】
前記パネルの表面には、使用者がタッチした指先をガイドするための、前記環状の光透過部に対応して環状の窪みが形成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の操作装置。
【請求項8】
前記パネルと前記導光体の前記第1面は密着しており、前記導光体の前記第2面と前記電極は密着していることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の操作装置。
【請求項9】
前記パネルと前記導光体の前記第1面は透光性で非導電性の第1弾性体シートを介して密着しており、前記導光体の前記第2面と前記電極は非導電性の第2弾性体シートを介して密着していることを特徴とする、請求項8記載の操作装置。
【請求項10】
原稿読取面に置かれた原稿を読み取る読取部と、
前記原稿読取面に対して開閉可能な原稿圧板と、
前記原稿圧板の上面に設けられた、請求項1から9のいずれか記載の操作装置と、
を有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項11】
環状の光透過部を有するパネルと、
第1面と第2面を有し、前記第1面が前記パネルに面する導光体と、
前記導光体の周囲の複数の位置に配置された光源と、
前記導光体の前記第2面にはリング形状の拡散面が形成され、前記拡散面のリング形状は1つの前記光源に対応する第1領域と隣り合う2つの前記光源の間に対応する第2領域を有し、前記第1領域における前記環状の光透過部に対応した位置から前記光源がある側のリング周囲までの距離に比べて前記第2領域における前記環状の光透過部に対応した位置から前記光源がある側のリング周囲までの距離のほうが大きい形状であって、
前記光源が発光して前記導光体に入射した光は前記拡散面で拡散反射し、拡散反射光の一部は前記光透過部を照明することを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−259163(P2011−259163A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131252(P2010−131252)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】