説明

操作装置

【課題】操作部と動作部との間に遮蔽部材を設けたものにおいて、この遮蔽部材に、ごみや飲料水などの異物が残留するのを防止する。
【解決手段】ケース3内において、前側に操作ノブ4(操作部)を設け、後側に開口3aからケース3及びボディ2の内部(動作部)が露出するのを塞ぐように、カバー5(遮蔽部材)をケース3と一体に設ける。カバー5の前部は、操作ノブ4の後部と重なるように位置すると共に、断面が円弧状をなす窪み5aを有し、この窪み5aに複数の孔6を有している。操作ノブ4及びカバー5の下方に位置する回路基板13に、孔6と対向するように孔部13aを形成する。ボディ2の上部及び下部において、孔部13aと対向する位置に、孔部13aと同形状をなす開口部2a、2bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部と動作部との間に遮蔽部材を有する操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に搭載される操作装置には、端部を上下方向に操作可能な操作ノブが設けられているものがある。この操作ノブの下方には、操作ノブの操作に応じてオン又はオフされるスイッチを主体とする電気的動作部、又は操作ノブの操作に応動するワイヤを主体とする機械的動作部が配置されている。
【0003】
このうち、電気的動作部は、スイッチのオン又はオフに応じてモータなどを駆動し、シートの前後位置の調節やシートバックの傾斜角度の調節などを電動で行う。一方、機械的動作部は、ワイヤが引っ張られることによって、トランクリッドを開放させたり、給油口の扉部を開放させたりするなどの動作を機械的に行う。
【0004】
このような操作装置は、操作ノブの下方において、上述したような電気的動作又は機械的動作を行う動作部と操作ノブとの間を遮るために、操作ノブと重なるように遮蔽部材が設けられており、使用者から動作部が見えにくい構成となっている。
なお、本発明が解決しようとする課題に対応するような公知文献は発見できなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した構成の操作装置は、操作ノブと遮蔽部材との間に、砂塵、ごみ、飲料水などの異物が進入した場合、遮蔽部材上に異物が残留してしまうおそれがある。特に、この種の操作装置は運転席のドア側の側部に設けられることが多いため、ドアやドアウインドウが開放されたときに、砂塵、雨水などの車室外からの異物が操作装置に直接かかったり、或いは、既に車室内にある異物が車室外からの風で舞い上げられて操作装置にかかったりしてしまう。このため、操作ノブと遮蔽部材との間への異物の進入が多くなるという事情がある。
【0006】
遮蔽部材上に残留した異物が蓄積されていくと、使用者が操作ノブを操作する際、その手指に異物が接触して操作を妨げるという問題が考えられる。また、手指によって異物がかき出され、この異物が動作部へ進入してしまった場合には、動作部の動作への悪影響などの問題が考えられる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作部と動作部との間に遮蔽部材を設けたものにおいて、この遮蔽部材に、ごみや飲料水などの異物が残留するのを防止できる操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明の操作装置は、使用者によって操作される操作部と、前記操作部の下方に位置し、該操作部の操作に応じて所定の電気的動作又は所定の機械的動作を行う動作部と、前記操作部の下方において、該操作部と重なり、且つ前記動作部との間を遮るように設けられた遮蔽部材と、前記遮蔽部材に設けられた複数の通過孔と、前記動作部に前記通過孔と対向させて設けられ、外部に連通する排出孔とを備えて構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操作部と遮蔽部材との間に、ごみや飲料水などの異物が進入した場合、この異物は複数の通過孔から下方へ落下し、さらに、通過孔と対向させて配置された排出孔から操作装置の外部へと排出されるため、遮蔽部材に異物が残留しにくくなる。従って、遮蔽部材に蓄積された異物によって、操作部の操作を阻害したり、動作部の電気的動作又は機械的動作に対して悪影響を及ぼしたりすることがなくなり、良好な操作性を確保できると共に、正確な動作を行うことができる。
【0010】
また、遮蔽部材に設ける通過孔を複数としたことにより、これら複数の通過孔によって所定の図形や模様を形成することが可能となる。従って、遮蔽部材の見栄えを悪くすることなく、むしろデザイン性を高めた状態で遮蔽部材への異物の残留を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例(第1の実施形態)について図1〜図3を参照して説明する。
図2及び図3は、自動車のパワーシート用スイッチユニットの一部を構成するスイッチ装置1の外観を示す平面図及び斜視図である。このスイッチ装置1は、図示しないパワーシートにおけるシートバックの傾斜角度を調節する際に使用されるものであり、いわゆるリクライニング用のスイッチとして機能するものである。
【0012】
スイッチ装置1を含むパワーシート用スイッチユニットは、パワーシートのドア側の側部に設けられており、図2における上下方向がパワーシートの前後方向と一致するように配置されている。
【0013】
図3に示すように、スイッチ装置1は、矩形箱状をなすボディ2の上部に、上面に開口3aを有する矩形箱状をなすケース3を装着して構成されている。このケース3内の前側(図2中、上側)には、上面が略矩形状をなす操作ノブ4(操作部に相当)が設けられている。また、ケース3内の後側(図2中、下側)には、開口3aからケース3の内部及びボディ2の内部が露出されるのを塞ぐようにカバー5(遮蔽部材に相当)がケース3と一体に設けられている。
【0014】
図2に示すように、カバー5の前側には、円形状をなす複数の孔6(通過孔に相当)が規則的且つ等間隔に設けられている。具体的には、孔6が左右方向に等間隔に並んで列が形成されており、この列が、これを形成する孔6の個数を一列毎に5個又は6個と交互に変化させて前後方向に複数配置されている。
【0015】
図1は、図2におけるA−A線に沿う縦断面図である。操作ノブ4の前部下方において、図1で奥側部及び手前側部(図2中、右側部及び左側部)には、断面が略半円状をなす一対の軸受部(奥側部のみ符号4aを付して示す)が配設されている。操作ノブ4は、これら軸受部に設けられた軸受孔(奥側部のみ符号4bを付して示す)に、ケース3側に設けられた一対の軸部(奥側部のみ符号3bを付して示す)がそれぞれ嵌合されることによってケース3に支持されており、図1中、上下方向に回動可能となっている。
【0016】
また、操作ノブ4は、後端から前端にかけて下方へ傾斜して配置されている。つまり、操作ノブ4の外観を、実際のシートの外観と似せるような構成となっており、操作ノブ4の操作に伴うパワーシートの動作を使用者がイメージしやすいようになっている。
【0017】
カバー5は、操作ノブ4と同様に、後端から前端側にかけて下方に傾斜して配置されている。カバー5の前部は、操作ノブ4の後部と重なるように位置しており、断面が円弧状をなす窪み5aが設けられていて、この窪み5aに前記孔6が形成されている。このようなカバー5の構成と前述した操作ノブ4の構成とによって、操作ノブ4とカバー5との間に、使用者が手指を入れて操作を行うのに十分な空間が確保されると共に、スイッチ装置1上方の様々な角度からケース3及びボディ2の内部が露出しにくいように構成されている。
【0018】
操作ノブ4の下面において、軸受部4a両側の部分には、突起部4c、4dが下方に突設されており、突起部4c、4dの下方には、それぞれ棒状のプッシャ7、8が配置されている。プッシャ7、8は、ボディ2と一体に形成された筒状のプッシャガイド9、10に、それぞれ上下の直線方向に移動可能に挿通されてボディ2に装設されている。プッシャ7、8の下方には、プッシュスイッチ11、12が、ボディ2に固定された回路基板13に実装して設けられている。
【0019】
プッシュスイッチ11、12は、ゴム製で弾性を有するドーム部と、ドーム部の下面に設けられた可動接点と、回路基板13の上面に設けられ可動接点が接離する固定接点とにより構成される、いわゆるラバーコンタクトスイッチである。非押圧状態では可動接点が固定接点から離間してオフとなり、ドーム部が上方から押圧されることによって可動接点が固定接点に接触してオンとなるようになっている。
【0020】
回路基板13には、カバー5に設けられた孔6と対向するように孔部13aが形成されている。孔部13aは、複数の孔6の全てに、それらと同じ広さ、もしくはそれらより大きな広さで対向するような形状になっている。また、ボディ2の上部及び下部において、孔部13aと対向する位置には、孔部13aと略同じ大きさ、もしくはそれよりも大きな開口部2a、2bが形成されている。
【0021】
スイッチ装置1の下方には、上面に開口を有する容器状の異物回収部14がボディ2の開口部2bと対向して設けられている。この異物回収部14は、例えば車室内の床下などに設けられており、車室内において使用者から直接見えにくい所に配置される。
なお、本実施例では、プッシャ7、8、プッシャガイド9、10、プッシュスイッチ11、12、及び回路基板13によってスイッチ動作部15(動作部に相当)が構成され、孔部13a及び開口部2a、2bによって排出孔が構成される。
【0022】
次に、本実施例の作用について説明する。
まず、スイッチ装置1によるスイッチ動作について説明する。操作ノブ4の後端部が下方に押し込まれると、突起部4c及びプッシャ7を介してプッシュスイッチ11のドーム部が下方へ押し込まれ、プッシュスイッチ11がオンとなる。これにより、図示しないモータが駆動されてシートバックが後方に回動(仰臥)する。また、操作ノブ4の後端部が上方へ引っ張られると、突起部4d及びプッシャ8を介してプッシュスイッチ12のドーム部が下方へ押し込まれ、プッシュスイッチ12がオンとなる。これにより、モータが駆動されてシートバックが前方に回動(起立)する。
【0023】
上記した各操作状態から、操作ノブ4の後端部への押し込み(又は引っ張り)操作が解除されると、ドーム部の弾性力により、プッシャ7(又は8)及び突起部4c(又は4d)を介して操作ノブ4の後端部が押し戻され、プッシュスイッチ11(又は12)はオフに戻る。これにより、モータの駆動が停止されてシートバックの回動が停止する。
以上のように、電気的動作が行われる。
【0024】
続いて、スイッチ装置1の異物対策について説明する。砂塵、埃、小石、雨水などの異物がスイッチ装置1に降りかかった場合、これら異物は、操作ノブ4とカバー5との間に入り込む。あるいは、使用者が飲料水を誤ってスイッチ装置1の上にこぼしてしまった場合、その飲料水が操作ノブ4とカバー5との間に入り込む。
このように、操作ノブ4とカバー5との間に異物が入り込んだ場合、従来はカバー5の上面に異物が残留していた。これに対して、本実施例では、カバー5に複数の孔6が設けられているため、この孔6よりも小さな異物は、これを通過して下方に落下する。
【0025】
孔6から下方へと落下した異物は、孔6と対向したボディ2の開口部2a、回路基板13の孔部13a及びボディ2の開口部2bを通過して、スイッチ装置1の外部へと落下して排出され、開口部2bと対向するように床下に配置された異物回収部14に蓄積されていく。
従って、操作ノブ4とカバー5との間に進入した異物が、カバー5に残留しにくくなると共に、ケース3及びボディ2の内部に配置されるスイッチ動作部15に進入しにくくなる。なお、孔6よりも大きなコインなどの異物はカバー5に残留してしまうが、このような大きな異物は、使用者が十分認識できる大きさであり、容易に取り除くことができる。
【0026】
以上説明したように、本実施例のスイッチ装置1は、カバー5に複数の孔6を設けることによって、カバー5の上面に異物が残留しにくい構成とした。従って、操作ノブ4とカバー5との間に異物が進入してしまった場合でも、異物によって操作ノブ4の回動が妨げられることがなくなる。また、使用者は、操作ノブ4とカバー5との間に手指を入れて操作ノブ4を操作する際、手指に異物が当たることがなくなるため、快適にシートバックの角度調節を行うことができる。
【0027】
また、カバー5に設けた孔6と対向するように、回路基板13に開口13aを設けると共に、ボディ2にも開口部2a、2bを設け、孔6から落下された異物が開口13a及び開口部2a、2bを通過してスイッチ装置1の外部に排出されるようにした。従って、スイッチ動作部15に異物が進入しにくくなり、回路基板13における回路の短絡や、プッシュスイッチ11、12のスイッチ動作不良など、スイッチ動作部15の作動が阻害されることなく、正確なスイッチ動作を行うことができる。
【0028】
スイッチ装置1は、カバー5の前部に円弧状の窪み5aを有しているため、操作ノブ4とカバー5との間に進入した異物が、この窪み5aに集まりやすい。そこで、カバー5の窪み5aを含む前部に複数の孔6を設け、進入した異物を窪み5aに集めると共に、孔6から下方に落下させるようにした。従って、より効果的に異物を排出することができる。
【0029】
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した実施例に限定されるものではなく、次のような変形又は拡張が可能である。
カバー5に設ける複数の通過孔の形状及びその配置については変更可能であり、図4〜図10に示す他の実施例のように、複数の通過孔の集合体によって所定の模様や文字などを表すようにしてもよい。以下、これらの実施例について説明する。
【0030】
図4は、略正方形状の孔20を、左右方向及び前後方向に等間隔に並べて配置し、メッシュ形状とした第2実施例を示している。図5は、横長矩形状の孔21を左右方向に並べて配置し、くし歯形状とした第3実施例を示している。図6は、波形状の孔22を左右方向に並べて配置した第4実施例を示している。図7は、矩形状の孔23を千鳥格子状に配置した第5実施例を示している。図8は、略二等辺三角形状の孔24を、その向きを交互に反転させると共に、それぞれの高さ方向の辺同士が向き合うように左右方向に並べて配置した第6実施例を示している。図9は、文字、特にはアルファベットのA、B、Cの形状をなす孔25、26、27を左右方向に並べて配置した第7実施例を示している。図10は、カバー5に矩形状の開口部28を設け、その開口部28を覆うように網29を配置した第8実施例を示している。この場合、網29の網目30ひとつひとつが通過孔に相当する。
【0031】
上述したように、通過孔の形状及びその配置を変更すれば、スイッチ装置1の見栄えを悪くすることなく、カバー5に複数の通過孔を設けることができると共に、様々な模様、ロゴなどを表示させることができる。
【0032】
上記した各実施例では、自動車用のスイッチ装置1に適用したが、これに限らず、他用途のスイッチ装置に適用してもよい。また、動作部としてスイッチを有していなくともよく、ワイヤを動作させるなどの機械的な動作を行うための操作装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施例を示す図2のA−A線に沿うスイッチ装置の縦断面図
【図2】スイッチ装置の平面図
【図3】スイッチ装置の斜視図
【図4】本発明の第2実施例を示す通過孔の形状及びその配置を示す図
【図5】本発明の第3実施例を示す図4相当図
【図6】本発明の第4実施例を示す図4相当図
【図7】本発明の第5実施例を示す図4相当図
【図8】本発明の第6実施例を示す図4相当図
【図9】本発明の第7実施例を示す図4相当図
【図10】本発明の第8実施例を示す図4相当図
【符号の説明】
【0034】
図面中、1はスイッチ装置(操作装置)、2a、2bは開口部(排出孔)、4は操作ノブ(操作部)、5はカバー(遮蔽部材)、5aは窪み、6は孔(通過孔)、13aは孔部(排出孔)、15はスイッチ動作部(動作部)、20〜27は孔(通過孔)、30は網目(通過孔)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者によって操作される操作部と、
前記操作部の下方に位置し、該操作部の操作に応じて所定の電気的動作又は所定の機械的動作を行う動作部と、
前記操作部の下方において、該操作部と重なり、且つ前記動作部との間を遮るように設けられた遮蔽部材と、
前記遮蔽部材に設けられた複数の通過孔と、
前記動作部に前記通過孔と対向させて設けられ、外部に連通する排出孔とを備えて構成されることを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、前記通過孔を設けた部分が窪みとなっていることを特徴とする請求項1記載の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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