説明

操作装置

【課題】 指などが触れた位置を検知する操作装置において、引き出し基板や引き出し導電層が配置されている領域で、操作装置の表面の凹凸を目立たないようにできる操作装置を提供する。
【解決手段】 操作装置10は、支持側の可撓性基板21と操作側の可撓性基板22とが重ねられた検知パネル20を有し、検知パネル20の一部で、可撓性基板21と可撓性基板22の間に引き出し基板40が挟まれている。検知パネル20は、支持側接着剤層15を介して支持板11に接着され、検知パネル20の表面に操作側接着剤層16を介してカバーシート12が接着されている。引き出し基板40が挟まれている領域は、支持側接着剤層15と操作側接着剤層16が塗布されていない非接着領域となっており、この領域に接着剤層15,16の厚みが加味されないことで、カバーシート12の表面に凹凸が目立つのを防止しやすくしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器やその他の電子機器に搭載されて、指などが触れたときの操作位置を判別することができる操作装置に係り、特に電子機器の表面に設置するのに適した操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1ないし3には、携帯機器などの電子機器に設置される操作装置が開示されている。この種の操作装置は、2枚の可撓性基板が対向して配置され、それぞれの可撓性基板の対向面にITO(酸化インジウム−錫)などの導電層が設けられている。一方の可撓性基板の導電層と他方の可撓性基板の導電層には、互いに直交する向きの電界が交互に与えられる。操作側の可撓性基板が指などで押され両可撓性基板の導電層どうしが接触すると、電界方向の電圧比(抵抗比)によって、導電層どうしの接触位置の座標情報が得られる。
【0003】
この種の操作装置には、前記可撓性基板に設けられた導電層を外部に導通させるための可撓性の引き出し基板が設けられ、この引き出し基板が少なくとも一方の可撓性基板の電極部に接合されている。そのため、前記引き出し基板が可撓性基板に重ねられた部分で操作装置の厚さ寸法が部分的に大きくなるという問題が生じる。
【0004】
そこで、以下の特許文献1と2に記載された操作装置は、一方の可撓性基板に引き出し基板が重ねられて接合され、この接合部分で、他方の可撓性基板に凹部(切欠き部)が形成され、引き出し基板と1枚の可撓性基板が重なるようにして、操作装置が部分的に厚くなるのを防止している。
【0005】
以下の特許文献3に記載の操作装置は、硬質の基板に可撓性基板が対向して、硬質基板と可撓性基板のそれぞれの対向面にITOなどの導電層が形成されている。前記硬質基板には、厚さ方向に窪む窪み部が形成され、前記導電層に導通する引き出し基板が前記窪み部の内部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−288166号公報
【特許文献2】特開2002−82772号公報
【特許文献3】特開2008−21304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1と特許文献2に記載された操作装置は、引き出し基板が重ねられている部分で一方の可撓性基板に凹部(切欠き部)が形成されているため、凹部が形成されている部分で操作装置の厚さ寸法が極端に薄くなってしまう。凹部が形成されている部分は電子機器の表面の露出させることができないため、凹部が形成されている部分を筐体の内部に隠すことが必要になり、結果として携帯用機器などが大きくなってしまう。
【0008】
前記特許文献3に記載された操作装置は、引き出し基板が硬質基板の凹部に収納されるが、この引き出し基板に設けられた電極を操作領域の導電層に導通させるためには、前記導電層を凹部の上にまで引き出すという特殊な構造が必要になる。すなわち、2つの可撓性基板の間に引き出し基板を挟むという通常の接続構造を採用できなくなる。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、引き出し基板が重ねられた部分の厚さ寸法の変動を極力少なくし、さらに可撓性基板に凹部を設ける必要をなくして、引き出し基板が重ねられた部分を電子機器の表面に配置することを可能にした操作装置を提供することを目的としている。
【0010】
また、本発明は、可撓性基板に形成された引き出し導電層によって基板表面に凹凸部が現れるのを抑制できる操作装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明は、対向する2枚の可撓性基板と、それぞれの前記可撓性基板の対向面に形成された導電層とを有し、所定面積の操作領域内において操作側の前記可撓性基板が操作されるとその操作位置を特定する出力を得る操作装置において、
支持側の前記可撓性基板が支持側接着層を介して支持板に固定され、操作側の前記可撓性基板の表面に、操作側接着剤層を介して可撓性のカバーシートが固定されており、
2枚の前記可撓性基板の間に、前記導電層を外部と導通する可撓性の引き出し基板が挟まれており、前記支持側接着剤層と前記操作側接着剤層の少なくとも一方が、前記引き出し基板が挟まれている領域を避けた領域に設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
上記操作装置では、引き出し基板が可撓性基板に挟まれることによる厚みの変化を、支持側接着剤層と操作側接着剤層のいずれか一方を部分的に除去することで吸収している。したがって、可撓性基板に引き出し基板を避ける凹部(切欠き部)を設けなくてもカバーシート表面に目立つ凹凸が形成されるのを防止でき、引き出し基板が重ねられている領域を電子機器の表面に配置しても、機器の外観を損ねることがない。
【0013】
第2の本発明は、対向する2枚の可撓性基板と、それぞれの前記可撓性基板の対向面に形成された導電層とを有し、所定面積の操作領域内において操作側の前記可撓性基板が操作されるとその操作位置を特定する出力を得る操作装置において、
支持側の前記可撓性基板が支持側接着層を介して支持板に固定され、操作側の前記可撓性基板の表面に、操作側接着剤層を介して可撓性のカバーシートが固定されており、
前記可撓性基板の前記対向面には、前記操作領域を外れた領域に延びて前記導電層に導通する引き出し導電層が設けられており、前記支持側接着剤層と前記操作側接着剤層の少なくとも一方が、前記引き出し導電層が形成されている領域を避けた領域に設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
上記操作装置では、重ねられた可撓性基板の間に引き出し導電層が位置することによる厚みの変化を、支持側接着剤層と操作側接着剤層のいずれか一方を部分的に除去することで吸収している。したがって、引き出し導電層の配線領域でカバーシート表面に目立つ凹凸が形成されるのを防止でき、引き出し導電層の配線領域を電子機器の表面に配置しても、機器の外観を損ねることがない。
【0015】
本発明は、前記カバーシートは、前記操作領域が透明部で前記操作領域以外が着色部であり、前記引き出し基板が、前記着色部に配置されている。または、前記カバーシートは、前記操作領域が透明部で前記操作領域以外が着色部であり、前記引き出し導電層が、前記着色部に配置されている。
【0016】
第1の本発明では、前記引き出し基板が挟まれている領域で、前記支持板に、支持側の前記可撓性基板と対向する表面から板厚の途中まで凹部が形成され、あるいは裏面まで貫通する切欠き部が形成されているものが好ましい。
【0017】
上記構成では、引き出し基板の厚さ寸法が大きいときや、前記支持側接着剤層や前記操作側接着剤層の厚みが小さい場合に、引き出し基板が挟まれている部分での各基板の厚み方向の撓みを、凹部または切欠き部の内部で吸収することが可能になる。
【0018】
また、本発明は、前記操作領域の全域において、前記カバーシートと操作側の前記可撓性基板とが前記操作側接着剤層によって接着されていることが好ましい。
【0019】
操作領域の全域でカバーシートと可撓性基板とが接着されていると、操作領域においてカバーシートが平坦な状態を保ち、操作領域での操作感触を均一にすることができる。
【0020】
前記のように、本発明は、前記カバーシートが、装置の表面に現れるものとして構成できる。
【0021】
また、本発明は、少なくとも前記操作領域では、前記カバーシート、それぞれの前記可撓性基板、前記導電層および前記支持板が透明である。
【0022】
本明細書での透明部ならびに透明とは、その下に位置する表示装置の表示内容を透過して目視することが可能である、という意味であり、完全な無色透明のみを意味しているのではない。
【0023】
本発明の操作装置は、可撓性基板に設けられた前記導電層が抵抗層であり、操作側の可撓性基板が押されて2つの可撓性基板の導電層どうしが接触した位置を電圧比(抵抗比)で特定する抵抗式のタッチパネルである。あるいは、指などの導電体が操作側の可撓性基板に接近したときに導電層と導電体との間に形成される静電容量によって電圧または電流が変化する静電容量型であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、引き出し基板が挟まれている領域、または引き出し導電層が引回されている領域で、カバーシートの表面に極端に目立つ凹凸が形成されるのを防止でき、カバーシートが電子機器の表面に現れていても、機器の外観を損なうのを防止しやすい。また、可撓性基板に凹部(切欠き部)を形成しなくても、カバーシートの表面の凹凸の発生を抑制できるため、操作装置の一部が極端に薄くなることもなく、引き出し基板や引き出し導電層が設けられている領域を電子機器の表面に配置することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の操作装置を備えた携帯機器の分解斜視図、
【図2】前記操作装置を示す分解斜視図、
【図3】前記操作装置を一部透視して示す平面図、
【図4】図3のIV−IV切断線で切断した操作装置の部分断面図、
【図5】図3のV−V切断線で切断した操作装置の部分断面図、
【図6】図2のVI−VI切断線で切断した操作装置の部分断面図、
【図7】操作装置の動作説明図、
【図8】本発明の第2の実施の形態の操作装置を示す図4と同じ部分断面図、
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示す携帯機器1は、携帯電話、携帯用の情報処理装置、携帯用の記憶装置、携帯用のゲーム装置などとして使用される。
【0027】
携帯機器1は、合成樹脂材料で形成されたケース2を有している。ケース2は右側壁3aと左側壁3bならびに上側壁3cと下側壁3dを有している。前部は、それぞれの前記側壁3a,3b,3c,3dで囲まれた開口部4であり、後部が底壁5で塞がれている。
【0028】
ケース2の開口部4の内部では、前記側壁3a,3b,3c,3dの内面の全周に合成ゴム製のシール部材6が取り付けられている。操作装置10は、前記開口部4を塞ぐようにしてケース2の内部に設置され、前記シール部材6で背部から支持されている。したがって、操作装置10の表面が携帯機器1の表面に現れ、操作装置10の外周と開口部4の内周との間は、前記シール部材6によって密閉されている。
【0029】
ケース2の内部には、各種電子回路が実装された配線基板が配置されている。また、ケース2の内部では、操作装置10の内側に表示装置7が設けられている。表示装置7はカラー液晶表示パネルなどであり、表示装置7の表示画面は、操作装置10の透明部13を介して携帯機器1の外部から目視可能である。
【0030】
図2に示すように、操作装置10は支持板11を有している。支持板11は、PMMA(メタクリル酸メチル樹脂)、PC(ポリカーボネート)、COP(環状オレフィンコポリマー)などの透明なプラスチック板である。
【0031】
支持板11の表面に、抵抗式の検知パネル20が設置されている。検知パネル20は、支持側の可撓性基板21と操作側の可撓性基板22が重ねられ互いに接着されて構成されている。両可撓性基板21,22が重ねられて検知パネル20が形成された後に、図4ないし図6に示すように、検知パネル20が、支持側接着剤層15を介して支持板11の表面に接着されて固定される。また、検知パネル20の表面には、操作側接着剤層16を介してカバーシート12が接着固定される。
【0032】
カバーシート12は、絶縁性で可撓性の樹脂フィルムであり、一部が押されたときにその下に位置する可撓性基板22の一部を下向きに撓ませることができる厚さ寸法を有している。カバーシート12を構成する樹脂フィルムは透明である。図2に示すように、カバーシート12は、中央部の四角い領域が透明部13であり、それ以外の周囲部が着色部14すなわち遮蔽部となっている。着色部14は、カバーシート12を構成している樹脂フィルムの下面に、黒色またはその他の色相の印刷層または塗装層を設けることで形成されている。
【0033】
透明部13は、ケース2内に設けられた表示装置7の画像を透視して見ることができる透視表示領域である。また、透明部13は、その下に位置する検知パネル20を操作する操作領域を覆っている。
【0034】
検知パネル20を構成している可撓性基板21,22は、PETなどの絶縁フィルムであり、可撓性で透明である。図6に示すように、支持側の可撓性基板21の操作側の表面(対向面)には、導電層29が形成されている。導電層29は、ITOなどの透明で所定の面積抵抗率を有する導電性材料で形成されている。
【0035】
図2と図6に示すように、可撓性基板21のX1側の縁部には、導電層29の表面にX電極層23が形成され、可撓性基板21のX2側の縁部には、導電層29の表面にX電極層24が形成されている。X電極層23とX電極層24は、導電層29よりも比抵抗が十分に低い導電性材料で、例えば銀粉がバインダー樹脂に混入された銀ペーストで形成されている。図2に示すように、X電極層23は、X1側の縁部でY方向に沿って帯状に形成され、X電極層24はX2側の縁部でY方向に沿って帯状に形成されている。X電極層23とX電極層24は、カバーシート12の着色部14の下に隠れる位置に形成されている。
【0036】
図2と図6に示すように、X電極層23よりもX1側には、Y方向に延びる引き出し導電層25が形成されている。引き出し導電層25はX電極層23と同じ導電性材料で同じ工程で形成されている。X電極層24よりもX2側には、Y方向に延びる引き出し導電層26が形成されている。引き出し導電層26は、X電極層24と同じ導電性材料で同じ工程で形成されている。
【0037】
検知パネル20は、X電極層23とX電極層24とが対向し且つ操作側の可撓性基板22に形成されたY電極層31とY電極層32とが対向している領域が操作領域である。X電極層23とX電極層24ならびに引き出し導電層25と引き出し導電層26は、操作領域から外れた領域に形成されている。
【0038】
図2に示すように、支持側の可撓性基板21のY1側には、引き出し導電層25と一体の連結導電層25aがX2方向に向かって延び、その端部に引き出しランド部25bが形成されている。同様に、可撓性基板21のY1側には、引き出し導電層26と一体の連結導電層26aがX1方向に向かって延び、その端部に引き出しランド部26bが形成されている。
【0039】
図2と図3に示すように、可撓性基板21の表面のY1側に、中継導電層27,28が、前記X電極層23,24と同じ導電性材料で同じ工程で形成されている。中継導電層27の一方の端部に連結ランド部27aが形成され、他方の端部に引き出しランド部27bが形成されている。中継導電層28も、一方の端部に連結ランド部28aが形成され、他方の端部に引き出しランド部28bが形成されている。
【0040】
連結導電層25aと連結導電層26aおよび中継導電層27と中継導電層28は、前記操作領域から外れた位置に形成され、且つカバーシート12の着色部14で覆われる領域に形成されている。
【0041】
図6に示すように、X1側に設けられたX電極層23と引き出し導電層25は、絶縁層30で覆われ、同様にX2側に設けられたX電極層24と引き出し導電層26も絶縁層30で覆われている。絶縁層30は有機絶縁層である。図2と図3に示されている前記連結導電層25aと連結導電層26aおよび中継導電層27と中継導電層28も、絶縁層30で覆われている。ただし、4箇所の引き出しランド部25b,26b,27b,28bと、連結ランド部27a,28aは、前記絶縁層30で覆われていない。
【0042】
図2に示すように、支持側の可撓性基板21には、前記連結ランド部27a,28aを囲む分離部21aが形成されており、この分離部21aで囲まれている領域が、可撓性基板21から部分的に分離されている。また、支持側の可撓性基板21のY1側の端部には、引き出し基板を挿入するための挿入スリット21bが形成されている。
【0043】
図6に示すように、検知パネル20を構成する操作側の可撓性基板22の下面(対向面)には、ITOなどの透明な導電層33が形成されており、図2に示すように、導電層33の下面には、Y1側にY電極層31が形成され、Y2側にY電極層32が形成されている。Y電極層31,32は、X電極層23,24などと同じ導電性材料で形成されている。
【0044】
Y電極層31とY電極層32は、互いに平行で対向しX方向に帯状に延びている。Y電極層31とY電極層32は、操作領域から外れた領域において、カバーシート12の着色部14で覆われる位置に形成されている。
【0045】
図2に示すように、操作側の可撓性基板22の下面には、Y1側において、Y電極層31に連続する引き出し導電層34が形成されている。引き出し導電層34は、Y電極層31と同じ導電性材料で且つ同じ工程で形成されている。引き出し導電層34は、Y電極層31よりもY1側にあり、操作領域から外れた領域で、カバーシート12の着色部14で覆われる位置に形成されている。
【0046】
可撓性基板22の下面には、Y2側のY電極層32と導通する引き出し導電層35が形成されている。引き出し導電層35は、Y電極層32と同じ導電性材料で且つ同じ工程で形成されている。引き出し導電層35は、可撓性基板22のX1側の縁部に沿ってY方向に帯状に延びており、図6にも示すように、X電極層23と導通する引き出し導電層25と上下に重なる領域に形成されている。
【0047】
図6に示すように、引き出し導電層35は有機材料で形成された絶縁層36で覆われており、Y電極層32も同様に絶縁層36で覆われている。また、Y1側のY電極層31と引き出し導電層34も絶縁層36で覆われている。図2に示すように、引き出し導電層34の端部には接続ランド部34aが一体に形成され、引き出し導電層35の端部にも接続ランド部35aが一体に形成されている。接続ランド部34aと接続ランド部35aは絶縁層36で覆われておらず、接続ランド部34aは、支持側の可撓性基板21に形成された連結ランド部28aに対向し、接続ランド部35aは、支持側の可撓性基板21に形成された連結ランド部27aに対向している。
【0048】
検知パネル20のY1側では、支持側の可撓性基板21と操作側の可撓性基板22との間に、引き出し基板40が挟まれている。図4には引き出し基板40の構造が断面図で示されている。引き出し基板40は、絶縁性で可撓性の樹脂基板41の下面に、配線導電層42が形成されている。配線導電層42は、銅などの低抵抗の薄膜層で形成されている。図4に示すように、前記樹脂基板41の下面には、接着剤層43を介して絶縁性のカバーシート44が積層されている。
【0049】
図2と図3に示すように、引き出し基板40には、幅広の接合部40aが形成され、接合部40aの端部で前記カバーシート44が除去されている。前記配線導電層42は、間隔を空けて並んで配置されている4本のリードパターンから成り、それぞれのリードパターンの端部がカバーシート44が形成されていない領域に露出して、接続ランド部42a,42b,42c,42dが形成されている。
【0050】
検知パネル20は次のようにして組み立てられる。
表面に導電層29が形成され、さらにX電極層23,24、引き出し導電層25,26、ならびに中継導電層27,28が形成されている支持側の可撓性基板21に引き出し基板40が取り付けられる。
【0051】
図3と図4に示すように、引き出し基板40は、支持側の可撓性基板21の下面側から挿入スリット21bに挿入され、接合部40aが支持側の可撓性基板21の表面(対向面)に重ねられる。図4および図5に示すように、引き出し基板40のカバーシート44が除去されている部分が、異方性の導電性接着剤層45を介して、支持側の可撓性基板21の表面に接合され、加熱されて加圧される。これにより、引き出し基板40に形成された接続ランド部42aが、支持側の可撓性基板21に形成された引き出しランド部25bと導通され、接続ランド部42bが引き出しランド部26bに、接続ランド部42cが引き出しランド部27bに、接続ランド部42dが引き出しランド部28bにそれぞれ導通される。
【0052】
引き出し基板40が支持側の可撓性基板21に取り付けられた後に、支持側の可撓性基板21に操作側の可撓性基板22が重ねられて、図4ないし図6に示すように、絶縁性の有機材料で形成された接着剤層38を介して接合される。接着剤層38は、カバーシート12の透明部13の下に形成されている操作領域を除く領域で、前記操作領域を囲むように塗布され、支持側の可撓性基板21と操作側の可撓性基板22とが重ねられ加圧されて、熱硬化またはUV硬化によって硬化させられる。接合後に、X電極層23,24とY電極層31,32が対向する操作領域に、空間部39が形成され、この空間部39では、支持側の可撓性基板21に形成された導電層29と操作側の可撓性基板22に形成された導電層33が空隙を介して対向している。
【0053】
図5に示すように、支持側の可撓性基板21と操作側の可撓性基板22とが接合されるときに、支持側の可撓性基板21において分離部21aで囲まれて分離されている部分が持ち上げられ、可撓性基板21に形成されている連結ランド部27aが、操作側の可撓性基板22に形成されている接続ランド部35aに重ねられ、連結ランド部28aが接続ランド部34aに重ねられて、異方性の導電性接着剤層46によって接合される。
【0054】
支持側の可撓性基板21と操作側の可撓性基板22を接合する接着剤層38は20〜50μm程度の厚さで塗布されるが、加圧および加熱などの工程を経るために、硬化後の接着剤層の厚さにばらつきが生じるのを避けることができず、空間部39における可撓性基板21と可撓性基板22の間隔Tにもばらつきが生じやすい。その結果、図4に示すように、支持側の可撓性基板21と操作側の可撓性基板22との間に位置する引き出し基板40の厚さ寸法が、前記間隔Tよりも大きくなることがあり、可撓性基板21と可撓性基板22の間に引き出し基板40が挟まれている領域において、操作側の可撓性基板22の操作側の表面、または支持側の可撓性基板21の支持板11に対向する側の表面に、厚さ方向に膨らむ凸部が形成されやすい。
【0055】
また、図6に示すように、支持側の可撓性基板21にX電極層23と引き出し導電層25が形成され、その上に、操作側の可撓性基板22の引き出し導電層35が重ねられている領域においても、可撓性基板21と可撓性基板22との間隔が、操作領域の空間部39での間隔Tよりも大きくなることがある。同様に、図2に示すように、支持側の可撓性基板21に形成された連結導電層25a,26aと、操作側の可撓性基板22に形成されたY電極層31または引き出し導電層34とが重ねられた領域においても、可撓性基板21と可撓性基板22との間隔が、操作領域の空間部39での間隔Tよりも大きくなることがある。この場合にも、図6に示すように、操作領域を外れた外側において、操作側の可撓性基板22の操作側の表面、または支持側の可撓性基板21の支持板11に対向する側の表面に、厚さ方向に膨らむ凸部が形成されやすい。
【0056】
上記のようにして作成された検知パネル20は、支持側接着剤層15を介して支持板11の表面に接着されて固定される。その後に、検知パネル20の表面に、操作側接着剤層16を介してカバーシート12が接着固定される。
【0057】
図4と図5に示すように、支持側の可撓性基板21と操作側の可撓性基板22との間に引き出し基板40が挟まれている部分では、前記支持側接着剤層15と操作側接着剤層16の双方が設けられていない。また、図6に示すように、X電極層23または引き出し導電層25と、引き出し導電層35が重ねられている部分に、前記支持側接着剤層15と操作側接着剤層16の双方が設けられていない。さらに、連結導電層25a,26aと、Y電極層31または引き出し導電層34とが重ねられた部分にも前記支持側接着剤層15と操作側接着剤層16の双方が設けられていない。
【0058】
前記のように、引き出し基板40が挟まれている部分や、電極層または引き出し導電層が重なっている部分は、可撓性基板21と可撓性基板22との間隔が、操作領域の空間部39の間隔Tより大きくなりやすく、この場合に、可撓性基板21の外表面や可撓性基板22の外表面が部分的に凸状に膨らむことがある。ただし、凸状に膨らみやすい部分で支持側接着剤層15と操作側接着剤層16を除去しているため、この部分での接着剤層15,16の厚みが無くなり、よって凸状の膨らみが、カバーシート12の表面で目立たなくなる。
【0059】
図3の部分平面図では、支持側接着剤層15と操作側接着剤層16が設けられている接着領域(i)(ii)(iii)に鎖線のハッチングを付し、支持側接着剤層15と操作側接着剤層16が設けられていない非接着領域(iv)(v)(vi)には前記ハッチングが付されていない。
【0060】
図3に示すように、支持側の可撓性基板21と操作側の可撓性基板2が空間部39を介して対向している操作領域は、その全域が接着領域(i)となっている。引き出し基板40が可撓性基板21,22に挟まれている領域は非接着領域(iv)で、電極層と引き出し導電層とが重ねられあるいは引き出し導電層どうしが重ねられている領域も非接着領域(v)(vi)である。操作領域から外れた領域で且つ前記非接着領域(v)(vi)以外の領域が接着領域(ii)(iii)である。
【0061】
上記のように、非接着領域(iv)(v)(vi)を限られた領域とし、操作領域を含めほとんどの部分を接着領域(i)(ii)(iii)とすることで、検知パネル20を支持板11に強固に固定でき、またカバーシート12は検知パネル20に強固に接着される。特に、操作領域は、その全域が接着領域(i)となっているため、操作領域を覆うカバーシート12の透明部13の表面が平坦な状態を維持しやすい。
【0062】
図1に示すように、操作装置10のカバーシート12が携帯機器1の最表面に現れるが、最表面に現れているカバーシート12の着色部14に目立つような凸部が形成されるのを防止しやすくなる。すなわち、凹凸が形成されやすい部分である引き出し基板40が挟まれている領域や、導電層が重ねられている領域を、ケース2の内部に隠す必要がなく、これら領域を携帯機器1の最表面に配置することができるようになる。そのため、デザインの自由度が拡大し、携帯機器1を小型に形成しやすくなる。しかも、カバーシート12のほとんどの部分を占める透明部13は平坦な状態を保つため、外観が良好になる。
【0063】
なお、引き出し基板40が挟まれている領域や、電極層または引き出し導電層が重ねられている領域で、前記支持側接着剤層15と操作側接着剤層16のいずれか一方にのみ非接着領域(iv)(v)(vi)を形成してもよい。
【0064】
図4に示すように、この操作装置10では、引き出し基板40が、支持側の可撓性基板21の下側から挿入スリット21b内に挿入される部分で、支持板11に板厚方向に窪む凹部11aが形成されている。これによっても、可撓性基板22の下に引き出し基板40が重ねられている領域の膨らみが前方から目立つのを防止できるようにしている。
【0065】
図1に示すように、携帯機器1は、その全面に操作装置10が現れており、透明部13で、表示装置7の表示画面の表示内容を確認できる。また、透明部13である操作領域においてカバーシート12の一部を押すことで、操作位置の座標を特定することができる。
【0066】
図7に示すように、電源が投入されている動作時には、X電極層23とX電極層24の間に電圧が印加され、それとは別のタイミングでY電極層31とY電極層32の間に電圧が印加される。カバーシート12の透明部13の表面が指で押されると、カバーシート12が部分的に撓み、これとともに操作側の可撓性基板22が部分的に撓んで、P点で操作側の導電層33と支持側の導電層29とが接触する。このとき、支持側の導電層29をX方向に分割した抵抗値に対応する電圧がY電極層31,32から得られ、操作側の導電層33をY方向に分割した抵抗値に対応する電圧がX電極層23,24から得られる。これによりP点のX−Y座標上の位置が検知される。
【0067】
なお、本発明の検知パネルは、前記の抵抗式に限られるものではなく、支持側の可撓性基板と操作側の可撓性基板の間に、誘電体層を介してX電極とY電極とが対向しており、カバーシート12の表面に指を触れたときの静電容量の変化により操作位置の座標を特定する静電容量型であってもよい。
【0068】
図8は本発明の第2の実施の形態の操作装置110を示すものであり、図4と同じ部分を示す部分断面図である。第2の実施の形態の操作装置110は、図4に示す前記操作装置10と共通する構成部材に同じ符号を付し、共通する部分の詳しい説明を省略する。
【0069】
図8に示す操作装置110は、支持側の可撓性基板21と操作側の可撓性基板22との間に引き出し基板40が挟まれている領域、すなわち図3において、引き出し基板40の幅広の接合部40aを含み、前記接合部40aの輪郭よりもやや広げられた領域において、支持板11に凹部11bが形成されている。凹部11bは、支持板11における支持側の可撓性基板21に対向する表面から裏面方向に向けて板厚の途中まで窪むように形成されている。
【0070】
そのため、図8に示すように、引き出し基板40が、空間部39における間隔Tに比べて厚すぎる場合や、引き出し電極40の接続ランド部42a,42b,42c,42dと、支持側の可撓性基板21の引き出しランド部25b,26b,27b,28bとの接合部の厚さが大きすぎる場合であっても、引き出し基板40が挟まれている領域において、カバーシート12の表面の膨らみを目立たなくすることが可能である。
【0071】
特に、支持側接着剤層15や操作側接着剤層16の厚みが小さく、これら接着剤層15,16を除去しただけでは、カバーシート12の表面の膨らみを無くすことが出来ないときに、前記凹部11bを設けることが有効である。
【0072】
また、支持板11が薄い場合には、引き出し基板40が挟まれている領域において、前記凹部11bに代えて、支持板11を厚さ方向に貫通する切欠き部が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 携帯機器
2 ケース
4 開口部
10,110 操作装置
11 支持板
11a,11b 凹部
12 カバーシート
13 透明部
14 着色部
15 支持側接着剤層
16 操作側接着剤層
20 検知パネル
21 支持側の可撓性基板
22 操作側の可撓性基板
23,24 X電極層
25,26 引き出し導電層
25b,26b,27b,28b 引き出しランド部
29 支持側の導電層
31,32 Y電極層
33 操作側の導電層
34,35 引き出し導電層
38 接着剤層
39 空間部
40 引き出し基板
(i)(ii)(iii) 接着領域
(iv)(v)(vi) 非接着領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2枚の可撓性基板と、それぞれの前記可撓性基板の対向面に形成された導電層とを有し、所定面積の操作領域内において操作側の前記可撓性基板が操作されるとその操作位置を特定する出力を得る操作装置において、
支持側の前記可撓性基板が支持側接着層を介して支持板に固定され、操作側の前記可撓性基板の表面に、操作側接着剤層を介して可撓性のカバーシートが固定されており、
2枚の前記可撓性基板の間に、前記導電層を外部と導通する可撓性の引き出し基板が挟まれており、前記支持側接着剤層と前記操作側接着剤層の少なくとも一方が、前記引き出し基板が挟まれている領域を避けた領域に設けられていることを特徴とする操作装置。
【請求項2】
対向する2枚の可撓性基板と、それぞれの前記可撓性基板の対向面に形成された導電層とを有し、所定面積の操作領域内において操作側の前記可撓性基板が操作されるとその操作位置を特定する出力を得る操作装置において、
支持側の前記可撓性基板が支持側接着層を介して支持板に固定され、操作側の前記可撓性基板の表面に、操作側接着剤層を介して可撓性のカバーシートが固定されており、
前記可撓性基板の前記対向面には、前記操作領域を外れた領域に延びて前記導電層に導通する引き出し導電層が設けられており、前記支持側接着剤層と前記操作側接着剤層の少なくとも一方が、前記引き出し導電層が形成されている領域を避けた領域に設けられていることを特徴とする操作装置。
【請求項3】
前記カバーシートは、前記操作領域が透明部で前記操作領域以外が着色部であり、前記引き出し基板が、前記着色部に配置されている請求項1記載の操作装置。
【請求項4】
前記引き出し基板が挟まれている領域で、前記支持板に、支持側の前記可撓性基板と対向する表面から板厚の途中まで凹部が形成され、あるいは裏面まで貫通する切欠き部が形成されている請求項1または3記載の操作装置。
【請求項5】
前記カバーシートは、前記操作領域が透明部で前記操作領域以外が着色部であり、前記引き出し導電層が、前記着色部に配置されている請求項2記載の操作装置。
【請求項6】
前記操作領域の全域において、前記カバーシートと操作側の前記可撓性基板とが前記操作側接着剤層によって接着されている請求項1ないし5のいずれかに記載の操作装置。
【請求項7】
前記カバーシートが、装置の表面に現れる請求項1ないし6のいずれかに記載の操作装置。
【請求項8】
少なくとも前記操作領域では、前記カバーシート、それぞれの前記可撓性基板、前記導電層および前記支持板が透明である請求項1ないし7のいずれかに記載の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−118657(P2011−118657A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275349(P2009−275349)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】