説明

操縦支援装置

【課題】 管制官の管制指示に対する操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができる操縦支援装置を提供する。
【解決手段】 ECU1における比較判定部15は、管制官の指示内容と、機体の操縦者の復唱内容とを比較し、管制官の内容と操縦者の復唱内容が不一致である場合に、操縦者の復唱内容をカテゴリーに分類する。ここで、操縦者の復唱内容が肯定語である場合に、管制官の指示内容に応じた操縦支援を行う。操縦者の復唱内容が否定語である場合には、管制官から再度の指示の回答待ちを行う。操縦者の復唱内容が要求語である場合には、管制官に新たな要求を行った後、管制官から再度の指示の回答待ちを行う。操縦者の復唱内容が「その他の語」である場合には、警告装置4による警告を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦支援装置に係り、特に、管制官からの管制指示に対する操縦者の応答態様に応じた操縦支援を行う操縦支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機における操縦者は、管制塔における管制官からの指示に従った操縦が要求される場面がある。このような場面では、操縦者が管制官からの指示に従わないと、航空交通を阻害する原因となる。その一方、管制官に指示ミスが生じることもあり、管制官に指示ミスが生じた場合にもやはり航空交通を妨げる要因となることがある。
【0003】
このような管制官の指示ミスに対して管制官の管制指示を音声認識して管制指示の内容を把握し、指示内容の適否を判定する。そして、指示内容が不適切であると判定した場合には、操縦者に対して警告を行う航空管制指示誤り訂正装置がある(たとえば、特許文献1参照)。この航空管制指示誤り訂正装置では、航空管制情報と管制官による管制指示とを比較し、管制官による管制指示と一致する管制指示内容データが航空管制情報中に存在しない場合に、警告音を出力するとともに、警告情報を表示するというものである。
【特許文献1】特開2004−145566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の操縦支援装置では、管制官の管制指示に対して、操縦者がオウム返しで復唱することによって指示内容を確認している。しかし、上記特許文献1に開示された航空管制指示誤り訂正装置では、管制官による管制指示と一致する管制指示内容データが航空管制情報中に存在しない場合に、警告音を出力するとともに、警告情報を表示している。
【0005】
このため、管制官の管制指示に対する操縦者の応答が実際には異なっているにもかかわらず、管制官による管制指示と一致する管制指示内容データが航空管制情報中に存在すれば、警告音を出力等が行われないこととなる。したがって、管制指示を操縦者が確実に把握していないにもかかわらず、警告音の出力等が行われない可能性がある等、管制官の管制指示に対する操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができないことがあるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、管制官の管制指示に対する操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができる操縦支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係る操縦支援装置は、管制官の管制指示を認識する管制指示認識手段と、操縦者の管制指示に対する応答内容を認識する応答内容認識手段と、操縦者の応答内容のカテゴリーを判定するカテゴリー判定手段と、管制指示認識手段で認識された管制指示と、応答内容認識手段で認識された応答内容とを比較する指示内容比較手段と、指示内容比較手段による比較の結果、管制指示と応答内容とが不一致であると判定された場合に、カテゴリー判定手段で判定された操縦者の応答内容に基づいて操縦支援内容を決定する支援内容決定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る操縦支援装置は、管制官による管制指示と操縦者の応答内容が不一致であると判定された場合には、カテゴリー判定手段で判定された操縦者の応答内容に基づいて操縦支援内容を決定している。操縦者の応答内容は、操縦者における管制指示の認識状態を反映するので、操縦者の応答内容によって操縦者における管制指示の認識状態を推測することができる。したがって、管制官の管制指示に対する操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができる。
【0009】
ここで、支援内容決定手段は、操縦者の応答内容が肯定語であるとカテゴリー判定手段が判定した場合に、管制指示と応答内容とが一致した場合に行われる操縦支援である正解操縦支援を支援内容として決定する態様とすることができる。
【0010】
操縦者の応答内容が肯定語である場合には、操縦者は管制指示を認識していると推測することができる。したがって、操縦者の応答内容が肯定語であるとカテゴリー判定手段が判定した場合に、管制指示と応答内容とが一致した場合に行われる正解操縦支援を行うことにより、管制官の管制指示を認識していると考えられる操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができる。
【0011】
また、支援内容決定手段は、操縦者の応答内容が否定語であるとカテゴリー判定手段が判定した場合に、再度の管制指示を待つ場合に行われる操縦支援である待機操縦支援を支援内容として決定する態様とすることができる。
【0012】
操縦者の応答内容が否定語である場合には、管制指示の内容に同意していないと推測される。したがって、操縦者の応答内容が否定語であるとカテゴリー判定手段が判定した場合に、再度の管制指示を待つ場合に行われる待機操縦支援を行うことにより、管制官の管制指示を認識していながら、管制指示と異なる指示を要求している操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができる。
【0013】
さらに、支援内容決定手段は、操縦者の応答内容が要求語であるとカテゴリー判定手段が判定した場合に、再度の管制指示を待つ場合に行われる操縦支援である待機操縦支援を支援内容として決定する態様とすることができる。
【0014】
操縦者の応答内容が要求語である場合には、管制指示を再度要求していると推測される。したがって、操縦者の応答内容が要求語であるとカテゴリー判定手段が判定した場合に、再度の管制指示を待つ場合に行われる待機操縦支援を行うことにより、管制官の管制指示を認識していながら、管制指示と異なる指示を要求している操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができる。
【0015】
あるいは、管制指示を操縦者が認識していない場合に、操縦者に対して警告を行う警告装置をさらに備え、支援内容決定手段は、操縦者の応答内容が、肯定語、否定語、および要求語以外の内容であるとカテゴリー判定手段が判定した場合に、警告装置に対して警告を行わせる警告操縦支援を支援内容として決定する態様とすることができる。
【0016】
このように、操縦者の応答内容が肯定語、否定語、および要求語以外の内容である場合には、管制指示を把握しておらず、航空交通に悪影響を与えるおそれがある状況にあると推測される。したがって、操縦者の応答内容が肯定語、否定語、および要求語以外の内容であるとカテゴリー判定手段が判定した場合に、警告装置による警告を行うことにより、操縦者に対して、現在の状況を伝達することができる。したがって、管制官の管制指示に対する操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る操縦支援装置によれば、管制官の管制指示に対する操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る操縦支援装置のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る操縦支援装置は、航空機の機体Xに設けられるECU(Electronic controlunit)1を備えている。ECU1には、操縦者用マイク2、機体側データ送受信装置3、および警告装置4が接続されている。また、操縦支援装置は、管制塔Yに設けられた管制官用マイク5、管制塔側データ送受信装置6、および出力装置7を備えている。管制官用マイク5は、管制塔側データ送受信装置6に接続されており、管制塔側データ送受信装置6には、出力装置7が接続されている。
【0020】
操縦者用マイク2は、たとえば機体Xにおける図示しない操縦席に設けられており、操縦者の音声を含む周辺の音響を拾得する。操縦者用マイク2からは、拾得した音響に基づく操縦者側拾得音関係データがECU1における音声認識部11に出力される。操縦者側拾得音関係データには、操縦者の音声に基づく操縦者音声データが含まれる。
【0021】
機体側データ送受信装置3には、アンテナが設けられており、管制塔Yにおける管制塔側データ送受信装置6から送信される各種信号を受信し、ECU1に出力する。また、機体側データ送受信装置3は、ECU1から送信される各種信号を管制塔側データ送受信装置6に送信する。
【0022】
また、警告装置4は、たとえばスピーカ等の音声出力装置、モニタ等の画像表示装置、操縦席に設けられたバイブレータ等の振動発生装置を備えている。警告装置4は、ECU1から送信される警告信号に基づいて、音声出力装置、画像表示装置、および振動発生装置から所定の態様の警告を操縦者に向けて出力する。
【0023】
管制官用マイク5は、たとえば管制塔Yにおける図示しない管制官座席に設けられており、管制官の音声を含む周辺の音響を拾得する。管制官用マイク5からは、拾得した音響に基づく管制官側拾得音関係データが管制塔側データ送受信装置6に出力される。管制官側拾得音関係データには、管制官の音声に基づく管制官音声データが含まれる。また、管制官は、管制官用マイク5に向けて航空交通制御(Air Traffic Control、以下「ATC」という)に基づく指示内容を発声し、管制塔側データ送受信装置6を介して機体Xにおける操縦者に伝達する。
【0024】
管制塔側データ送受信装置6には、アンテナが設けられており、機体Xにおける機体側データ送受信装置3から送信される各種信号を受信する。この信号が指示要求信号である場合には、受信した指示要求信号を出力装置7に出力する。また、管制塔側データ送受信装置6は、管制官用マイク5から送信される管制官側拾得音関係データを機体側データ送受信装置3に送信する。
【0025】
出力装置7は、たとえば管制官座席の周辺に設けられたスピーカ等の音声出力装置やモニタ等の画像表示装置を備えている。出力装置7は、管制塔側データ送受信装置6から指示要求信号が出力された場合、再度の指示を促す指示促進情報を音声出力装置や画像表示装置を用いて管制官に提供する。
【0026】
ECU1における音声認識部11は、操縦者用マイク2から出力される操縦者側拾得音関係データの中から、操縦者音声データを認識する。また、機体側データ送受信装置3から出力される管制官側拾得音関係データの中から、管制官音声データを認識する。音声認識部11は、認識した操縦者音声データおよび管制官音声データをデータ抽出部12に出力する。
【0027】
データ抽出部12は、音声認識部11から出力された管制官音声データから機体番号((以下「管制官指示機体番号」という)および指示内容を抽出する。さらには、音声認識部11から出力された操縦者音声データから機体番号(以下「操縦者指示機体番号」という)および復唱内容を抽出する。また、データ抽出部12は、抽出したデータのうち、管制官指示機体番号および指示内容を管制官音声記憶部13に分配し、操縦者指示機体番号および復唱内容を操縦者音声記憶部14に分配してそれぞれ記憶させる。このため、管制官音声記憶部13には、管制官指示機体番号および指示内容が一時的に記憶され、操縦者音声記憶部14には、操縦者指示機体番号および復唱内容が一時的に記憶される。
【0028】
比較判定部15は、管制官音声記憶部13に記憶された管制官音声データおよび操縦者音声記憶部14に記憶された操縦者音声データをそれぞれ読み出し、管制官音声データと操縦者音声データとを比較する。また、管制官音声記憶部13および操縦者音声記憶部14では、比較判定部15によって管制官音声データと操縦者音声データが読み出された後、管制官音声データと操縦者音声データが削除される。比較判定部15は、管制指示認識手段、応答内容認識手段、および指示内容比較手段を構成する。
【0029】
また、比較判定部15では、操縦者音声データから読み取れる操縦者の音声のカテゴリーを判断して分類する。このときのカテゴリーとしては、「肯定語」「否定語」「要求語」「その他の語」に分類される。さらに、比較判定部15は、管制官音声データと操縦者音声データの比較結果や操縦者の音声のカテゴリー等に応じて、警告装置4に警告信号を出力したり、機体側データ送受信装置3に対して、指示要求信号を送信したりといった支援内容の操縦支援を行う。比較判定部15は、カテゴリー判定手段および支援内容決定手段を構成する。
【0030】
次に、本実施形態に係る操縦支援装置の処理手順について説明する。図2は、本実施形態に係る操縦支援装置における処理手順を示すフローチャートである。
【0031】
図2に示すように、本実施形態に係る操縦支援装置では、音声認識部11における音声認識処理を行う(S1)。音声認識処理では、音声認識部11は、機体側データ送受信装置3から出力される管制官側拾得音関係データから管制官音声データを認識する。このとき、管制塔Yでは、管制官用マイク5によって操縦者側拾得音関係データが拾得され管制塔側データ送受信装置6を介して機体側データ送受信装置3に送信されている。また、機体側データ送受信装置3では、合わせて、操縦者用マイク2から出力される操縦者側拾得音関係データから管制官音声データを認識する。
【0032】
音声認識処理が済んだら、音声認識部11は、認識した管制官音声データおよび操縦者音声データをデータ抽出部12に出力する。データ抽出部12では、管制官音声データに含まれる管制官指示機体番号および指示内容を抽出する(S2)。さらに、データ抽出部12では操縦者音声データに含まれる操縦者指示機体番号および復唱内容を抽出する(S3)。データ抽出部12は、抽出した管制官指示機体番号および指示内容を管制官音声記憶部13に記憶させる。さらには、操縦者指示機体番号および復唱内容を操縦者音声記憶部14に記憶させる。
【0033】
続いて、比較判定部15では、管制官音声記憶部13に記憶された管制官音声データおよび操縦者音声記憶部14に記憶された操縦者音声データをそれぞれ読み出し、管制官音声データと操縦者音声データとを比較する。このとき、操縦者が管制官の指示に応答しておらず、操縦者音声記憶部14に操縦者音声データが記憶されていない場合には、警告装置3による警告を行う。
【0034】
また、比較判定部15では、管制官音声記憶部13および操縦者音声データ記憶部14にそれぞれ管制官音声データおよび操縦者音声データが記憶されている場合には、管制官音声データにおける管制官指示機体番号と操縦者音声データにおける操縦者指示機体番号とを比較し、管制官指示機体番号と操縦者指示機体番号とが一致しているか否かを判断する(S4)。その結果、管制官指示機体番号と操縦者指示機体番号とが一致していないと判断した場合には、警告装置4から機体番号が異なる旨の警告を操縦者に行って(S12)、操縦支援装置による処理を終了する。ここでの警告としては、警告装置におけるスピーカから機体番号が異なる旨を出力したり、モニタに表示したりすることができる。
【0035】
一方、管制官指示機体番号と操縦者指示機体番号とが一致していると判断した場合には、管制官音声記憶部13に記憶された指示内容と操縦者音声記憶部14に記憶された復唱内容とを比較し、操縦者の復唱内容が管制官の指示内容と一致しているか否かを判断する(S5)。その結果、操縦者の復唱内容が管制官の指示内容と一致していると判断した場合には、操縦者は管制官の指示内容を理解し了承していると判断し(S8)、管制官の指示内容に沿った操縦支援を行って操縦支援処理を終了する。
【0036】
また、操縦者の復唱内容が管制官の指示内容と一致しておらず、両者が不一致であると判断した場合には、操縦者の復唱内容を確認し、操縦者の復唱内容が肯定語または否定語のいずれかであるか否かを判断する(S6)。操縦者は、管制官からの指示を正しく認識するとともに復唱し、その指示通りに操縦することが原則として求められる。このため、たとえば操縦者の思い込みから、管制官の指示内容と異なる復唱を行っている場合には、警告等を発することが好適となる。
【0037】
その一方で、操縦者は、飛行状態等によっては、管制官の指示内容と異なる操縦を行う希望を管制官に要求することができる場合がある。さらに、操縦者は、管制官の指示に対して、管制官の指示内容を復唱するほか、管制官の指示に応じるか否かの返答を肯定語または否定語によって行う場合がある。この肯定語としては、ATC特有のものとして「ラジャー」「ポジティブ」などの語が用いられ、否定語としては、ATC特有のものとして「ネガティブ」「アファーガティブ」などが用いられる。
【0038】
したがって、操縦者の復唱内容と管制官の指示内容とが不一致である場合でも、操縦者が管制官の指示を理解していないとして即座に警告を出力することが操縦者にわずらわしくなる場合がある。そこで、操縦者の復唱内容が管制官の指示内容と不一致である場合でも、操縦者が肯定語または否定語を復唱した場合には、操縦者は管制官の指示内容を理解していると考えた処理を行う。
【0039】
続いて、操縦者の復唱内容が肯定語または否定語のいずれかである場合には、操縦者の復唱内容が肯定語であるか否かを判断する(S7)。その結果、操縦者の復唱内容が肯定語である場合には、操縦者は管制官の指示を了承したと考えられる。このため、復唱内容が正しい場合と同様であると判断し(S8)、正解操縦支援である管制官の指示内容に沿った操縦支援を行って操縦支援処理を終了する。
【0040】
一方、操縦者の復唱内容が否定語である場合には、操縦者は管制官の指示内容を理解しているが、その指示内容を承服しておらず、管制官からの新たな指示を待っていると考えられる。したがって、操縦者の復唱内容が否定語である場合には、待機操縦支援である管制官からの回答待ち処理の操縦支援を行う(S11)。
【0041】
また、ステップS6において、操縦者の復唱内容が肯定語または否定語のいずれでもないと判断した場合には、操縦者の復唱内容が要求語であるか否かを判断する(S9)。ここでの要求語としては、復唱内容に「リクエスト」の語が含まれているものが挙げられる。その結果、復唱内容が要求後であると判断した場合には、操縦者が返答した要求語に応じた新しい要求を指示要求信号として管制塔における管制官に対して行う(S10)。それから、回答待ち処理を行う(S12)。
【0042】
その一方、操縦者の復唱内容が要求語でないと判断した場合には、操縦者の復唱内容は、肯定語、否定語、要求語のいずれでもない「その他の語」となる。この場合には、操縦者の復唱内容は管制官の指示内容と異なっており、操縦者は管制官の指示内容を理解していないと推測され、航空交通に悪影響を与えるおそれがある状況にあると推測される。したがって、この場合には、所定の警告による警告操縦支援を行って(S12)、操縦支援装置による処理を終了する。
【0043】
ここでの警告としては、操縦者の復唱内容と管制官の指示内容が異なる旨を警告装置におけるスピーカから出力したり、モニタに表示したりすることができる。また、スピーカからの音声出力やモニタによる表示に合わせて、振動装置を振動させて警告があることを操縦者に知らせることもできる。
【0044】
このように、本実施形態に係る操縦支援装置では、管制官による管制指示と操縦者の復唱内容が不一致であると判定された場合には、操縦者の復唱内容に基づいて操縦支援内容を決定している。操縦者の復唱内容は、操縦者における管制指示の認識状態を反映するので、操縦者の復唱内容によって操縦者における管制指示の認識状態を推測することができる。したがって、管制官の管制指示に対する操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができる。
【0045】
また、操縦者の復唱内容が肯定語である場合には、指示内容と復唱内容とが一致した場合に行われる操縦支援を行う。このため、管制官の管制指示を認識していると考えられる操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができる。さらに、操縦者の復唱内容が否定語である場合や要求語である場合には、管制官からの再度の指示を待つ回答待ち状態となる。したがって、管制官の管制指示を認識していながら、管制指示と異なる指示を要求している操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができる。
【0046】
さらに、操縦者の応答内容が肯定語、否定語、および要求語以外の「その他の語」である場合には、警告装置による警告を行い、操縦者に対して、現在の状況を伝達している。したがって、操縦者は管制官の指示内容を理解していない管制官操縦者の認識状態に応じた適切な操縦支援を行うことができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、管制官の指示内容を機体側で判定しているが、管制官の指示内容を管制塔側で判定し、判定した指示内容を機体側に送信する態様とすることができる。また、管制官音声データおよび操縦者音声データを一時的に記憶しているが、これらを一時的に記憶することなく直接比較する態様とすることができる。さらには、管制官の指示内容となるデータベースを予め作成しておき、管制官の指示内容とデータベース上の指示内容とを比較して管制官の指示内容の間違いを検出する管制官指示判定手段を併用する態様とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】操縦支援装置のブロック構成図である。
【図2】操縦支援装置の処理手順を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1…ECU、2…操縦者用マイク、3…機体側データ送受信装置、4…警告装置、5…管制官用マイク、6…管制塔側データ送受信装置、7…出力装置、11…音声認識部、12…データ抽出部、13…管制官音声記憶部、14…操縦者音声記憶部、15…比較判定部、X…機体、Y…管制塔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管制官の管制指示を認識する管制指示認識手段と、
操縦者の前記管制指示に対する応答内容を認識する応答内容認識手段と、
前記操縦者の応答内容のカテゴリーを判定するカテゴリー判定手段と、
前記管制指示認識手段で認識された管制指示と、前記応答内容認識手段で認識された応答内容とを比較する指示内容比較手段と、
前記指示内容比較手段による比較の結果、前記管制指示と前記応答内容とが不一致であると判定された場合に、前記カテゴリー判定手段で判定された前記操縦者の応答内容に基づいて操縦支援内容を決定する支援内容決定手段と、
を備えることを特徴とする操縦支援装置。
【請求項2】
前記支援内容決定手段は、前記操縦者の応答内容が肯定語であると前記カテゴリー判定手段が判定した場合に、前記管制指示と前記応答内容とが一致した場合に行われる操縦支援である正解操縦支援を支援内容として決定する請求項1に記載の操縦支援装置。
【請求項3】
前記支援内容決定手段は、前記操縦者の応答内容が否定語であると前記カテゴリー判定手段が判定した場合に、再度の前記管制指示を待つ場合に行われる操縦支援である待機操縦支援を支援内容として決定する請求項1または請求項2に記載の操縦支援装置。
【請求項4】
前記支援内容決定手段は、前記操縦者の応答内容が要求語であると前記カテゴリー判定手段が判定した場合に、再度の前記管制指示を待つ場合に行われる操縦支援である待機操縦支援を支援内容として決定する請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の操縦支援装置。
【請求項5】
前記管制指示を前記操縦者が認識していない場合に、前記操縦者に対して警告を行う警告装置をさらに備え、
前記支援内容決定手段は、前記操縦者の応答内容が、肯定語、否定語、および要求語以外の内容であると前記カテゴリー判定手段が判定した場合に、前記警告装置に対して警告を行わせる警告操縦支援を支援内容として決定する請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の操縦支援装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−152523(P2010−152523A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328235(P2008−328235)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】