説明

擬似接着ラベルおよびその製造方法

【課題】大型化した設備を必要とせず低コストで製造可能であるとともに、ラベル基材をはがすときの力を安定して得ることができる擬似接着ラベルおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】擬似接着剤層9を水系混合物からなる接着剤から形成することに着目したもので、ラベル基材は、表面ラベル基材7と、表面ラベル基材7の裏面側に積層する裏面ラベル基材8と、からこれを構成し、擬似接着剤層9は、水系混合物からなる接着剤からこれを形成するとともに、表面ラベル基材7と裏面ラベル基材8との間にこれを積層し、さらに、裏面ラベル基材8の裏面に積層する粘着剤層4と、粘着剤層4の裏層側に仮着する剥離紙2と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は擬似接着ラベルおよびその製造方法にかかるもので、とくに製造工程を簡略化可能な擬似接着ラベルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、擬似接着ラベルは、二層状態の基材の間に擬似接着剤層を形成して剥離可能とするとともに再接着が困難なラベルであって、各種の用途に使用されている。
この擬似接着ラベルの製造工程としては、たとえば、圧着タイプの接着剤を表裏面の基材の間に塗布したのち、圧着工程において大きな圧力をかけることにより接着状態を実現していた。表裏面のそれぞれの基材を互いに剥離(分離)したのちは、人力による押圧力では互いに再接着が事実上不可能で、擬似接着性能を発揮することになる。
【0003】
しかしながら、上記圧着工程は大きな設備を必要とすることから設備の大型化はもちろん、製造コストがかかるという問題がある。
さらに、上記圧着タイプの接着剤を用いる擬似接着ラベルでは、その製造時における押圧力によって、基材をはがすときに必要な力(剥離力)が影響を受けることになり、この剥離力の安定性を得ることが困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−84529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、大型化した設備を必要とせず製造可能な擬似接着ラベルおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
また本発明は、製造コストを上昇させることがない擬似接着ラベルおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
また本発明は、ラベル基材をはがすときの力を安定して得ることができる擬似接着ラベルおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
また本発明は、各種の用途に広く利用可能である擬似接着ラベルおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、擬似接着剤層を水系混合物からなる接着剤から形成することに着目したもので、第一の発明は、ラベル基材と、このラベル基材に積層する擬似接着剤層と、を有する擬似接着ラベルであって、上記ラベル基材は、表面ラベル基材と、この表面ラベル基材の裏面側に積層する裏面ラベル基材と、からこれを構成し、上記擬似接着剤層は、水系混合物からなる接着剤からこれを形成するとともに、上記表面ラベル基材と上記裏面ラベル基材との間にこれを積層し、さらに、上記裏面ラベル基材の裏面に積層する粘着剤層と、この粘着剤層の裏層側に仮着する剥離紙と、を有することを特徴とする擬似接着ラベルである。
【0010】
第二の発明は、ラベル基材と、このラベル基材に積層する擬似接着剤層と、を有する擬似接着ラベルの製造方法であって、上記ラベル基材として、表面ラベル基材と、この表面ラベル基材の裏面側に積層する裏面ラベル基材と、を準備し、この表面ラベル基材とこの裏面ラベル基材との間に、水系混合物からなる接着剤から形成する擬似接着剤層を積層し、乾燥工程を経て複合ラベル基材とするとともに、この複合ラベル基材と剥離紙との間に粘着剤層を積層して擬似接着ラベルとすることを特徴とする擬似接着ラベルの製造方法である。
【0011】
上記擬似接着剤層は、水分を含む擬似接着剤を上記ラベル基材に塗布したのち、乾燥工程を経て、これを形成することができる。
【0012】
上記水系混合物からなる接着剤は、液状ポリイソプレンゴムとメタクリル酸メチルとのグラフト共重合体を含有することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による擬似接着ラベルおよびその製造方法においては、水系混合物からなる接着剤を用いて擬似接着剤層を形成するようにしたので、従来のような高コストの圧着工程を採用することなく、単純かつ低コストの乾燥工程を経て擬似接着ラベルを得ることができる。
【0014】
とくに第一の発明の擬似接着ラベルによれば、擬似接着剤層を水系混合物からなる接着剤から形成されているので、従来の圧着タイプの擬似接着ラベルとは異なり、基材をはがすときの力が製造時における基材への押付け圧力から影響を受けることなく、安定して使用することができる。
【0015】
とくに第二の発明の擬似接着ラベルの製造方法によれば、擬似接着剤層を水系混合物からなる接着剤から形成し、乾燥工程を経て複合ラベル基材を得た上で、剥離紙および粘着剤層との積層を行うようにしたので、水分を蒸発させて擬似接着剤層を形成するための乾燥工程をより簡略化することができる
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例による擬似接着ラベル1の平面図である。
【図2】同、図1のII−II線断面図である。
【図3】同、擬似接着ラベル1(複合ラベル基材3)を配送荷物Mに貼り付けた状態を示す断面図である。
【図4】同、擬似接着ラベル1を製造する製造方法を説明する概略説明図であって、図4(1)は、複合ラベル基材3の製造工程の説明図、図4(2)は、擬似接着ラベル1の製造工程の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、水系混合物からなる接着剤を用いて擬似接着剤層を形成するようにしたので、製造工程を簡略化するとともに、従来のように製造時の押圧力に左右されない安定した剥離性能を有する擬似接着ラベルおよびその製造方法を実現した。
【実施例】
【0018】
つぎに本発明の実施例による擬似接着ラベル1およびその製造方法を図1ないし図5にもとづき説明する。
図1は、擬似接着ラベル1の平面図、図2は、図1のII−II線断面図であって、擬似接着ラベル1は、帯状の剥離紙(台紙)2と、複合ラベル基材3と、粘着剤層4と、を有する。
【0019】
剥離紙2は、粘着剤層4の裏面側に仮着するもので、その表面側に剥離剤層5を有するとともに、その裏面側に位置検出用マーク6を所定ピッチであらかじめ印刷してある。位置検出用マーク6は、当該擬似接着ラベル1を任意のプリンター(図示せず)に装填して移送および印字する際の擬似接着ラベル1の位置決めに用いる。
【0020】
複合ラベル基材3は、ラベル基材としての表面ラベル基材7および裏面ラベル基材8と、擬似接着剤層9と、を積層してあるもので、裏面ラベル基材8(複合ラベル基材3)の裏面側に上記粘着剤層4を積層している。
擬似接着ラベル1は、各種の用途に利用可能であり、図1に示した例では、擬似接着ラベル1を、たとえば配送伝票として使用するもので、複合ラベル基材3(表面ラベル基材7)には、荷受人および荷送人その他必要な情報をあらかじめ印刷してある管理票10、および受領証11などとして、分離用切り目12の部分で分離することができるようにしてある。
【0021】
表面ラベル基材7および裏面ラベル基材8は、擬似接着ラベル1の利用形態に応じて、上質紙、コート紙、サーマル紙、合成紙、さらには合成サーマル紙など任意の基材を採用することができる。
【0022】
擬似接着剤層9は、水分を含む擬似接着剤、すなわち、水系混合物からなる接着剤として、液状ポリイソプレンゴムとメタクリル酸メチルとのグラフト共重合体を含有する接着剤が望ましく、たとえば株式会社レヂテックス製のレヂテックスCFW−25R(合成ゴムラテックスを主成分とする可剥離性接着剤)を採用することができる。
擬似接着剤層9は、水系混合物からなる当該接着剤を表面ラベル基材7および裏面ラベル基材8の間に塗布したのち、常温放置、熱風乾燥あるいは高周波乾燥などの乾燥工程を経て、これを形成するものである。
【0023】
ただし、擬似接着剤層9における凝集力(層間剥離強さ)は、表面ラベル基材7および裏面ラベル基材8の凝集力、および粘着剤層4による粘着力よりこれを小さくしておく。
【0024】
こうした構成の擬似接着ラベル1は、剥離紙2を剥離して、粘着剤層4により複合ラベル基材3を利用形態に応じて任意の被貼付け体(たとえば配送荷物M)に貼り付けることができる。
図3は、擬似接着ラベル1(複合ラベル基材3)を配送荷物Mに貼り付けた状態を示す断面図であって、貼り付けた複合ラベル基材3から表面ラベル基材7を剥ぎ取ることができる。
すなわち、表面ラベル基材7の端部を摘んで引き剥がそうとすれば、相対的に凝集力が低い擬似接着剤層9の部分が、図示のように層間剥離面13において層間剥離を起こして表面ラベル基材7(管理票10あるいは受領証11)を裏面ラベル基材8の部分から分離することができる。
【0025】
表面ラベル基材7の裏面および裏面ラベル基材8の表面は、接着剤としての活性を失っている擬似接着剤層9が露出するのみであるので、表面ラベル基材7を裏面ラベル基材8に再度貼り付けることは不可能となる。
【0026】
図4は、擬似接着ラベル1を製造する製造方法を説明する概略説明図であって、図4(1)は、複合ラベル基材3の製造工程の説明図、図4(2)は、擬似接着ラベル1の製造工程の概略説明図である。
図4(1)に示すように、裏面ラベル基材8のロールを帯状に繰り出し、擬似接着剤9A(水系混合物からなる接着剤)を塗布して擬似接着剤層9を積層し、さらに、表面ラベル基材7を重ね合わせて三層構造とし、乾燥機14により乾燥工程を経て、複合ラベル基材3を製造する。
【0027】
図4(2)に示すように、剥離紙2のロールを帯状に繰り出し、粘着剤4Aを塗布して粘着剤層4を積層し、さらに、上述の複合ラベル基材3を重ね合わせて五層構造とし、ダイカット機15により必要な切り目を形成して、擬似接着ラベル1を製造する。
【0028】
したがって、擬似接着ラベル1の製造工程としては、粘着剤4Aや擬似接着剤9Aの塗布処理、剥離紙2、表面ラベル基材7および裏面ラベル基材8の積層処理、さらには乾燥機14による乾燥処理のみでよく、設備の大型化およびコストの上昇なく、擬似接着ラベル1を製造することができる。
さらに、複合ラベル基材3の製造と、この複合ラベル基材3の剥離紙2への積層処理とを別工程で行うことができるので、複合ラベル基材3における擬似接着剤層9の乾燥・定着安定化ための時間を必要に応じて確保することができる。
また、図4(1)の工程で、裏面ラベル基材をタック紙(剥離紙、粘着剤、上紙が積層されたもの)に入れ替えることで疑似接着ラベル1を製造することも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 擬似接着ラベル(実施例、図1、図2)
2 剥離紙
3 複合ラベル基材
4 粘着剤層
4A 粘着剤層4の粘着剤(図4、図5)
5 剥離剤層
6 位置検出用マーク
7 表面ラベル基材(ラベル基材)
8 裏面ラベル基材(ラベル基材)
9 擬似接着剤層
9A 擬似接着剤層9の擬似接着剤(図4、図5)
10 管理票
11 受領証
12 複合ラベル基材3における分離用切り目
13 擬似接着剤層9における層間剥離面(図3)
14 乾燥機(図4、図5)
15 ダイカット機(図4、図5)
M 配送荷物(被貼付け体、図3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベル基材と、
このラベル基材に積層する擬似接着剤層と、を有する擬似接着ラベルであって、
前記ラベル基材は、表面ラベル基材と、この表面ラベル基材の裏面側に積層する裏面ラベル基材と、からこれを構成し、
前記擬似接着剤層は、水系混合物からなる接着剤からこれを形成するとともに、前記表面ラベル基材と前記裏面ラベル基材との間にこれを積層し、さらに、
前記裏面ラベル基材の裏面に積層する粘着剤層と、
この粘着剤層の裏層側に仮着する剥離紙と、
を有することを特徴とする擬似接着ラベル。
【請求項2】
前記擬似接着剤層は、水分を含む擬似接着剤を前記ラベル基材に塗布したのち、乾燥工程を経て、これを形成したことを特徴とする請求項1記載の擬似接着ラベル。
【請求項3】
前記水系混合物からなる接着剤は、液状ポリイソプレンゴムとメタクリル酸メチルとのグラフト共重合体を含有することを特徴とする請求項1または2記載の擬似接着ラベル。
【請求項4】
ラベル基材と、
このラベル基材に積層する擬似接着剤層と、を有する擬似接着ラベルの製造方法であって、
前記ラベル基材として、表面ラベル基材と、この表面ラベル基材の裏面側に積層する裏面ラベル基材と、を準備し、
この表面ラベル基材とこの裏面ラベル基材との間に、水系混合物からなる接着剤から形成する擬似接着剤層を積層し、乾燥工程を経て複合ラベル基材とするとともに、
この複合ラベル基材と剥離紙との間に粘着剤層を積層して擬似接着ラベルとすることを特徴とする擬似接着ラベルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−163597(P2012−163597A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21546(P2011−21546)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【出願人】(000130581)サトーホールディングス株式会社 (1,153)
【Fターム(参考)】