説明

擬似移動床分離のための改良された機器

本発明は、擬似移動床における吸着分離のための機器(SMB)であって、閉ループにおいて操作する直列の複数の基本領域Zを含み、前記領域のそれぞれは、流体の逐次的注入または抽出のための2つの連続する点の間に、体積VAを有する吸着剤固体の単一の床Lと、非選択的空体積Viを含み、前記領域の大部分は、それぞれが、同一の吸着剤Sの同一の体積VAと、実質的に同一でありかつVに等しい非選択的空体積とを有する通常の基本領域であり、特定の基本領域と呼ばれる少なくとも1つの特定の基本領域Zをさらに含み、該特定の基本領域は、Vより高い非選択的空体積Vと、VAより低い体積VAを有する吸着剤Sの単一の床Lとを含み、Sは、Sの体積吸着容量Cより高い体積吸着容量Cを有し、Zの全体の吸着容量C×VAは、Zの床Lの吸着剤固体が固体Sでなく固体Sであるかのように計算されるZの全体の吸着容量よりも通常の基本領域のそれぞれの全体の吸着容量C×VAにより近い、ものに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留により分離困難な天然生成物または化学生成物を分離する分野に関する。そのためには「クロマトグラフィーの」または「擬似移動床」または「擬似向流」または「擬似併流」の方法または分離機器として公知の一群の方法および関連の機器が使用されるが、本明細書においてはそれらを「SMB」法と呼ぶこととする。
【0002】
関連する具体的ではあるが包括的な分野は以下の通りである:
・ 直鎖状パラフィンの分枝状パラフィン、ナフテンおよび芳香族化合物からの分離;
・ オレフィン/パラフィンの分離;
・ パラ−キシレンの他の芳香族C8異性体からの分離;
・ メタ−キシレンの他の芳香族C8異性体からの分離;
・ エチルベンゼンの他の芳香族C8異性体からの分離。
【0003】
製油所や石油化学コンビナート以外でも、数多くの他の用途が存在し、引用され得る例としては、グルコース/フルクトースの分離、クレゾールの位置異性体の分離、光学異性体の分離などが挙げられる。
【背景技術】
【0004】
SMBクロマトグラフィー分離は、当該技術において周知である。一般的に、擬似移動床は、少なくとも3つ、場合によっては4つまたは5つのクロマトグラフィーゾーンを含み、前記ゾーンのそれぞれは、少なくとも1つの床またはカラム部分によって構成され、2つの連続する供給または抜き出し点の間に含まれる。典型的には、分別されるべき少なくとも1つの供給材料Fおよび1つの脱着剤D(場合によっては、溶出剤とも呼ばれる)が供給され、少なくとも1つのラフィネートRおよび抽出液Eが抜き出される。供給および抜き出し点は、時間の経過とともに改変され、典型的には、床の底部の方に、同期形態でオフセットされる。
【0005】
定義により、機能ゾーンのそれぞれは、番号指定される;
・ ゾーン1=(抽出液中に含まれる)所望の生成物を脱着させるためのゾーンであって、脱着剤Dの注入と、抽出液Eの除去との間に含まれる;
・ ゾーン2=ラフィネート化合物を脱着させるためのゾーンであって、抽出液Eの除去と、分別されるべき供給材料Fの注入との間に含まれる;
・ ゾーン3=所望の生成物を吸着させるためのゾーンであって、供給材料の注入と、ラフィネートRの抜き出しとの間に含まれる;ならびに
・ 好ましくはゾーン4=ラフィネートの抜き出しと、脱着剤の注入との間に位置する。
【0006】
従来技術には、供給材料の擬似移動床分離を実施することが可能な種々の機器および方法が極めて詳しく記載されている。具体的には、特許文献1〜8が挙げられ得る。前記特許には、SMBの機能が詳細に記載されている。
【0007】
SMB機器に含まれるのは、典型的には、少なくとも1つ(多くの場合は2つ)のカラムであり、吸着剤の床Aが、前記カラム中に配され、吸着剤の床Aは該プレートPによって分離され、プレートPは、種々の吸着剤床へのまたはそれらからの流体の分配および/または抽出のための室C(単数または複数)と、順次に流体を分配および抽出するためのプログラム化手段とを有する。
【0008】
所定の機器では、1つ以上のカラムだけではなく、特有の吸着剤の床を有する複数の吸着器(adsorber)が使用され、それらは分離され、移送ラインを介して結合されている。
【0009】
一般的に、流体の全部もしくは主流束のいずれかが、特許文献1に記載のフローチャートに従ってカラムを通過して移送されるか、または、その流束の大部分または全部が、特許文献7に記載の方法に従って抜き出されるかのいずれかである。
【0010】
SMBからの流体の分配および抽出のプログラミングされた手段は、典型的には、下記の二つの主要なタイプの技術の内の一つである:
・ それぞれのプレートについての、流体を供給または抜き出すためのプログラミングされた複数のオンオフバルブ;前記バルブは、典型的には、対応するプレートのすぐ近く位置し、特に、各プレートPについて、少なくとも4つのプログラミングされた2方向オンオフバルブを含み、それぞれ、流体FおよびDを供給し、流体EおよびRを抜き出すことが可能となっている;または
・ プレート集合物への/からの流体の供給・抜き出しをするための、多方向回転式バルブ。
【0011】
プレートPのそれぞれには、典型的には、複数のラインまたは「分配/抽出多岐管」を介して供給される複数の分配器−混合器−抽出器(distributor-mixer-extractor:DME)パネルが含まれる。プレートは、どのようなタイプや表面形状(geometry)であってもよいが、特に、パネルは、カラム断面内に隣接するセクタを形成し、例えば、パネルは、特許文献9の図8に記載されるような有角のセクタ(対称性に供給される(多岐管))、または、特許文献10に示されるように平行なセクタ、例えば、円周から切り出されたもの(二対称性(bi-symmetrical)の供給を有する)を有する。好ましくは、分離カラムは、二対称性供給を有する平行セクタタイプのDMEプレートを含む(本発明において、「パネル」と「セクタ」という用語は、区別することなく使用される)。より好ましくは、吸着剤は、密に充填される。このことは、所与のカラムにおいてより大量の吸着剤が使用され得、所望の生成物の純度および/またはSMBの供給材料の流量が増加させられ得ることを意味している。
【0012】
それぞれの床の上での分配は、先行する床から出てくる流束(カラムの主軸方向に沿って移動する主流体)を集めることを必要とし、補助的または二次的な流体をこれに注入する一方で、可及的に大きな程度にこれらの2つの流体を混合する可能性、または、集められた流体の一部を取り除き、これを抽出し、機器からこれを送る可能性、および続く床上で流体を再分配する可能性を必要とする。
【0013】
このことは、プレートPの中で、分配(注入/抽出)のための室Ci,kを使用することにより達成され得、それは、混合室とは別であっても、あるいは混合室とを兼ねるものであってもよい。1つ以上の室を有するプレートPは公知であり、これは、所与の時間において異なる流体によって別々に供給されてもよく(または抜き出されてもよい)、または、所与の時間に同一の流体を用いて同時におよび並行して供給されてもよい(または抜き出されてもよい)。第一の場合では、プレートは、複数の分配ネットワークを有していると呼ばれるが、それに対して第二の場合では、固有の分配ネットワークがある。
【0014】
すべてのSMB機器の共通する問題点は、種々のゾーンおよび流体をプレートに供給するためのおよびプレートから流体を抽出するための回路の体積において、SMBの操作中の供給および抜き出し点に対する改変の間に遭遇させられる、液体によって生じる汚染を最小にすることについての問題点である。操作シーケンス中に、プレートPのライン、室または供給ゾーンが、プロセス流体によってもはやフラッシュされない場合、それは、液体がよどむデッドゾーンになり、別のプロセス流体がその中に移動する場合にのみ再度移動させられる。SMBの機能はこれが異なるプロセス流体であるということを意味しているので、デッドゾーン中の流体は、必然的に、実質的に異なった組成を有する液体によって置き換えられる。短い時間間隔にわたって、実質的に異なる組成物により流体を混合しまたは移動させることは、それ故に、組成の不連続性を許さない理想的な操作に対して混乱(perturbation)を誘導する。
【0015】
別の問題は、プレートの種々のゾーンの間の圧力における非常に小さい圧力差のために、同一プレートの種々のゾーンの間、より一般的には、単一のプレートの分配/抽出系全体で再流通が起こり得ることにあり(しかし頻繁)、これはまた、その後に、理想的な操作と比較して混乱を引き起こす。
【0016】
再流通およびデッドゾーンに関連するこれらの問題を解決するために、さまざまな技術が、当業界においてすでに公知である:
a)単一のプレートにおいて、特に比較的高純度の所望の生成物または脱着剤を使用して、分配/抽出系をフラッシュすることが提案されている。当該技術は、所望の生成物の汚染をその抽出に際して回避することができる。しかしながら、フラッシュ流体の組成は、典型的には、それが置き換えようとしている液体とは大きく異なるので、これは、理想的操作に不利益である組成の不連続性を誘導する。この第1のフラッシュを行うバリエーションは、典型的には、「高い濃度勾配を有する短継続期間フラッシュ(short duration flushes with a high concentration gradient)」を行う。そのようフラッシュは、短い時間間隔で終了し、組成的な不連続性の効果が抑制される;
b)特許文献11において記載されるように、別の解決方法は、主流束の大部分をカラムの内部の方に、当該流束の小部分、典型的には流束の2〜20%を外側の方に、隣接するプレートの間の外側バイパスラインを介して通過させることからなる。隣接するプレートから得られるフラッシュを用いてプレートにおいて分配/抽出系をフラッシュすることは、典型的には、時間の大部分の間、または連続的に行われ、分配/抽出系のラインおよびゾーンは、もはや「デッド」ではなく、フラッシュされる。バイパスラインを介したフラッシュの実施を伴うそのような系は、特許文献11の図1に示され、本出願の図1において単純化された方法で繰り返される。
【0017】
前記分離装置の調節の際に遭遇させられる、他の大きな問題は、ループ内の個別の「非選択的な空体積(non-selective free volume)」である。「個別の(individual)」という用語は、以降において、回路内において均一に分配されていない非選択的な空体積のあらゆる部分について用いられることになる。この用語は、以下により正確に定義される。典型的な例は、あるカラムを別のカラムに接続している導管、または、カラム底部からそのカラムの頭部へリサイクルさせる導管(吸着剤が単一のカラムに装填される場合)であり、当該導管(単数または複数)と関連する設備の全て(例えば、ポンプ、測定またはサンプリングの手段、除去ループ等)である。当該タイプの空体積の吸着剤は、選択的な吸着を行わないので非選択的である。
【0018】
特許文献12〜15には、リサイクルポンプ並びに種々のサンプリングまたは分析機器によって生じる「非選択的な空体積」によって混乱が引き起こされ得るという事実が説明されている。
【0019】
特許文献12には、(抽出物が、分離されるべき生成物を含む流束であるならば)抽出物の抜き出し点が床n−1からの出口と床nからの出口との間にある時点から、リサイクルポンプの送達を増加させることによって個別の非選択的な空体積を相殺することが提案されている(6頁)。実際に、抽出物が第n段の床(他の段より大きい非選択的な空体積を含む)から取り出される時に、送達は増加させられる。この送達の増加により結果として、当該特許の実施例1B(本発明に合致する)において見られ得るように、当該期間の間に全床に対する流量が増加することとなる。これにより、結果として、シーブおよび吸着器より大きい(および非任意的な)液圧荷重(圧力降下等)を有するという不利益がもたらされることになり、装置内のプロファイルにおける混乱により、結果として、相殺なしで得られるだろう純度と比較して純度が改良されたとしても、非任意的操作がもたらされる。
【0020】
特許文献15においても、前記非選択的体積が位置するゾーンの流量を改変することによる非選択的な空体積によって引き起こされる混乱の問題が克服されている。特許文献15および特許文献12において推奨されている解決法は、本質的に異なっており、特許文献12は、リサイクルポンプからの送達、従って吸着器全体における送達を増加させているのに対して、特許文献15は、(供給材料または脱着剤の)注入流量を増加させているが、同時に抜き出し(抽出物またはラフィネート)の流量を同等な量だけ低減させて、流量の増加が、吸着器の一部(一つのゾーン)のみによって影響を受けるようにされる。それ故に、特許文献15における方法の一部に対して流量の増加が制限されたとしても、それにもかかわらず、サイクルの一部に対してそれは存続し、特許文献12において起きたのと問題と同じ問題が生じる。特許文献15は、本発明を行うための何等の明確な手段も示唆しておらず、注入および抜き出しの流束(これらは、一般的に、主流体の流量よりも相当低い)が受けなければならない流量の大きな変化によって誘導される問題の実際の影響に関する情報を与えないことも強調されるべきである。
【0021】
特許文献13には、それぞれの注入流(供給材料または脱着剤)または抜き出し流(抽出物またはラフィネート)がリサイクルポンプを通過する毎に切替時間の期間、それ故に、非選択的な不連続なセクションの体積を増加させることが提案されている。しかしながら、当該特許は、それが行われ得るために2つの条件を課している:
・ それぞれの回路は、別々に順序変えされなければならない。このことは、導入されるまたは取り出される流束のそれぞれが、nの位置のバルブまたはn個のオンオフバルブによって管理されなければならないことを意味する(8頁)(これでは、1個以上の回転バルブによって供給が確保される擬似移動床の場合のような補償態様が除かれる);
各ゾーンは、少なくとも2つの床を有していなければならない。あるゾーンからの出口が、効果が修正されるべき異方性(例えば、リサイクルポンプの非選択的な空体積)を通過させるある特定の時間に、このゾーンは、1つの床だけ短縮される(9頁)。この条件は、床の数が少ない場合(例えば4〜12)に特に、極めて制限的であり得る。
【0022】
さらに、補償の有無に拘わらず切替時間テーブルにおいて理解され得るように、方法の制御はより複雑となり(特許文献13の10および11頁)、このことにより、当該方法が非常に実施困難なものとなっている。
【0023】
特許文献14には、不連続な非選択的セクションの体積に等価な体積だけ床nの体積を低減させて、全体的に、当該床が他の床の体積と同じ体積を有するようにさせることが提案されている。これは、示されるように(7頁26行)、混乱の大部分を排除することができるが、幾分かの混乱は残る。しかしながら、当該場合に、床nは、他の床より少ないモレキュラーシーブを含む。修正は、それ故に、理想的ではなく、特に、考慮下の生成物が最も強く吸着される生成物である場合にはそうである。これは、分離されるべき生成物が最も強く吸着される生成物である場合に際だった問題である。
【0024】
いくつかの有利なバリエーションは、非同期の置換の使用を行うことによって当該タイプの装置の機能を改良することができる。簡略化された方法で、このような非同期の置換は、特許文献16において示されるように再流通ポンプ(単数または複数)のデッドになった体積(単数または複数)を補償するように、特許文献17に示されるように、再流通ポンプにわたって一定のリサイクル流量で操作して流量および圧力における突然の不規則性を除くように、または、最後に、少なくとも2つのクロマトグラフィーゾーンであって、それぞれが、非整数の床または吸着剤と等価であるもので操作するように作用する。この後者のバリエーションは、特許文献18〜21において示されるように、Varicolの名称の下に知られている。これらの3つのバリエーションは組み合わされ得る。
【0025】
しかしながら、非同期のバリエーションは、追加的な複雑さを誘導する。入来および流出流体と連絡して置く多方向回転バルブおよび吸着カラム(単数または複数)中に配置される床は、1つの同期タイプの置換のみを可能にすることが留意されるべきである。非同期置換のために、複数のオンオフバルブが不可欠である。
【0026】
従来技術は、吸着固体(用語「吸着剤」はそれに等価である)を生じさせる種々の方法を開示する。実際に用いられる吸着剤は、行われる分離に依存する。工業的に非常に重要な、8個の炭素原子を含む芳香族化合物留分からのパラキシレンまたはメタキシレンの分離の場合、ゼオライト系吸着剤が使用される。
【0027】
このようなゼオライト系吸着剤の使用は、当該技術において周知である。特許文献22〜25は、特に、バリウムおよびカリウムまたはバリウム単独と交換されたアルミノケイ酸塩を含む吸着剤(特許文献26)は、C8芳香族化合物留分からパラキシレンを分離する際に効果的であることを示している。
【0028】
前記吸着剤は、液相または気相方法、好ましくは、特許文献1において記載された方法に類似の擬似向流タイプの方法における吸着試薬として用いられ、とりわけ、芳香族C8留分(8個の炭素原子を含む芳香族炭化水素を含む留分)に適用可能である。
【0029】
上述の引用文献では、ゼオライト系吸着剤は、ゼオライトと15〜20重量%の不活性バインダーとから主としてなる粉体の形態、または塊状物の形態にある。
【0030】
ゼオライトは通常、シリコアルミン酸塩のゲルを核化および結晶化させて粉体を得ることにより合成され、工業的なスケールでその粉体を使用することは特に困難(取扱時の圧力降下が大きい)であり、粉体化された材料に特有の欠点を示さない顆粒または粒子の形態にある塊状物を使用することが好ましい。
【0031】
そのような塊状物は、板状微結晶、ビーズ、または押出物のいずれの形態であったとしても、一般的には、活性要素(吸着に関して)を構成するゼオライト粉体と、結晶を結合させて粒子の形態にし、かつ、使用時に付される振動および移動に抵抗する十分な機械的強度を粒子に与えることを目的とするバインダとによって構成される。
【0032】
そのような塊状物の調製は、例えば、ゼオライト粉体を、バインダ30〜15重量%に対してゼオライト粉体70〜85重量%程度の割合のクレー様ペーストを有するペーストに形成し、次いで、ビーズ、板状物または押出物に成形し、高温で熱処理してクレーを焼成し、ゼオライトを再活性化することによる。場合によっては、バリウム交換は、粉体ゼオライトのバインダとの凝集の前および/または後に行われる。それ故に、特許文献27(5頁32〜33行)には、Xゼオライト/バインダ比が、重量で70/30から90/10まで変化することが示されている。特許文献26(第6カラム42〜44行)には、XまたはYゼオライトは、一般的には75重量%から98重量%まで変動する濃度で、前駆体中に存在し得ることが示されている。特許文献28(6頁23行)には、バリウムにより交換された、20%のクレー様バインダを含むXゼオライトの形態の吸着剤が提案されている。
【0033】
十分の数ミリメートルまたは数ミリメートルの粒子サイズを有するゼオライト体(zeolitic body)が得られるが、このものは、バインダおよび粒子のサイズが当該技術の通常の方法において選択される場合、満足のいく全体的な特性(特に多孔度、強度、および耐摩耗性に関して)を有する。しかしながら、そのような塊状物の吸着特性は、不活性な凝集化バインダの存在のため、活性な出発粉体と比較して大幅に低減させられている。
【0034】
吸着剤固体の床(またはバッチ)の主たる特徴は、吸着容量、すなわち、それが吸着することができる流体の体積対吸着剤の床(バッチ)の体積の比である。一般的に、かつ本発明により通常、この容量を測定するためにドビニン体積(Dubinin volume)が選択される。したがって、ドビニン体積は、吸着されるべき化合物とは別であり、吸着剤にのみ依存する:それは、非特許文献1に記載されるようにドビニン/ラドゥシュケビッチ(Dubinin/Radushkevich)の関係を用いて計算される。
【0035】
関係式:logV=logV−D(logP/Pは、吸着材料に吸着される窒素の体積Vを相対圧力P/Pに結び付ける。ドビニン体積は、体積Vであり、これは、吸着剤材料のミクロ孔中に凝縮することができる窒素蒸気の最大体積である。それは、吸着剤の重量(グラム)当たりの窒素蒸気の体積(cm)(標準状態に換算)で表される。
【0036】
測定に先だって、サンプルは、500℃で12時間にわたり、真空(P<5×10−6Torr、すなわち、6.7×10−4Pa)中に予備処理される。次いで、測定は、MicromeriticsからのASAP2010M型装置により行われる。0.01〜1P/P間の少なくとも35点の圧力テーブルを用いて等温線のグラフが作成される。logVの値が(log(P/P))に対してプロットされる。ドビニン体積は、(log(P/P))が1〜2(すなわち、0.039<P/P<0.1)である点の線形回帰直線の原点における縦座標から得られる。測定の不確定性は、±0.003である。
【0037】
ドビニン体積が分かれば、床の体積、この床に充填された吸着剤の重量、および体積吸着容量は容易に求められ得る。例えば、直径7mおよび高さ1.13mの床(体積43.49m)に、ドビニン体積0.22cm/gを有する吸着剤37834kgを装填する、と考えてみよう。この床の吸着容量は、8.32mとなるであろうし、あるいは分離に利用可能な体積割合は、19.14%である。以下の本明細書において、本発明者らは、(C、またはCもしくはCもしくはC)を、吸着剤の床またはバッチの吸着容量と定義することとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】米国特許第2985589号明細書
【特許文献2】米国特許第3214247号明細書
【特許文献3】米国特許第3268605号明細書
【特許文献4】米国特許第3592612号明細書
【特許文献5】米国特許第4614204号明細書
【特許文献6】米国特許第4378292号明細書
【特許文献7】米国特許第5200075号明細書
【特許文献8】米国特許第5316821号明細書
【特許文献9】米国特許第6537451号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2003/0127394号明細書
【特許文献11】米国特許第5972224号明細書
【特許文献12】仏国特許発明第2721527号明細書
【特許文献13】仏国特許発明第2721528号明細書
【特許文献14】仏国特許発明第2721529号明細書
【特許文献15】米国特許第6896812号明細書
【特許文献16】米国特許第5578215号明細書
【特許文献17】米国特許第5762806号明細書
【特許文献18】米国特許第6136198号明細書
【特許文献19】米国特許第6375839号明細書
【特許文献20】米国特許第6712973号明細書
【特許文献21】米国特許第6413419号明細書
【特許文献22】米国特許第3558730号明細書
【特許文献23】米国特許第3558732号明細書
【特許文献24】米国特許第3626020号明細書
【特許文献25】米国特許第3663638号明細書
【特許文献26】米国特許第3960774号明細書
【特許文献27】欧州特許第0154855号明細書
【特許文献28】欧州特許第0115068号明細書
【非特許文献】
【0039】
【非特許文献1】ローエル(LOWELL)著、「キャラクタリゼーション・オブ・ポーラス・ソリッズ・アンド・パウダーズ:サーフェス・エリア、ポア・サイズ・アンド・デンシティ(Characterization of Porous Solids and Powders: Surface Area, Pore Size and Density)」、マイクロポア・アナリシス(Micropore Analysis)」、オランダ(NL) ドルドレヒト(Dordrecht)、クルーワー・アカデミック・パブリッシャーズ(Kluwer Academic Publishers)、2004年、第9章、p.143〜145
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0040】
(発明の簡単な説明)
本発明の主題は、従来技術の機器と比較して、特に、個別の非選択的体積の存在に起因する非選択的な空体積を有する1つ以上の特定のゾーンの存在と結び付けられる課題および性能低下と比較して改良された性能を生じる擬似移動床分離用の機器である。
【0041】
提供される性能における改良は、標的対象に応じて、考慮下の機器を用いる分離法において用いられる仕様および制御パラメータを適応させることによって異なり得る。1つ以上の改良は、例えば、脱着剤の要求量の低減、脱着剤/供給材料比の低減、所望の生成物の純度または回収収率の増加または方法の生産性の増加を含み得る。これらの対象および提供される任意の他の利点は、当然、少なくとも所定程度に組み合わされ得る。
【0042】
驚くべきことに、このまたはこれらの改良は、このまたはこれらの特定の基本ゾーン(particular elementary zone)において、
a) 特に、非選択的な空体積を補償するために、低減した体積の吸着剤床;
b) 通常の基本ゾーンに用いられた吸着剤の吸着容量と比較して増加した量の吸着容量を有する特定の吸着剤または特定の吸着剤組成物
を共同使用することによって得られ得ることが発見された。
【0043】
本発明はまた、特定の分離のため、特に、キシレン(特にパラキシレンまたはメタキシレン)を(8個の炭素原子を含む)C8芳香族化合物留分から分離するための機器の使用に関する。
【0044】
本発明はまた、オレフィン炭化水素、または1種以上の直鎖パラフィン炭化水素を、他の化学族の炭化水素を含む炭化水素の混合物から分離するための機器の使用に関する。
【0045】
最後に、本発明は、Nバッチの吸着剤から始まる、吸着剤を擬似移動床SMB機器に装填するための対応する方法に関する
【発明を実施するための形態】
【0046】
(発明の詳細な説明)
したがって、SMB技術を使用して得られ得る分離性能を改良するために、本発明は、擬似移動床吸着によって供給材料Fを分離するための機器であって、閉ループにおいて操作する直列の複数の基本ゾーンZを含み、前記ゾーンのそれぞれは、(供給材料または溶出液の)逐次的注入または(抽出液またはラフィネートの)逐次的抜き出しのための2つの連続する点の間に、体積VAを有する吸着剤固体の独自の床Lおよび吸着剤がないループにおける移動のための、非選択的空体積Vと称される体積を含み、少なくとも3つのゾーンZは、それぞれ、VAに実質的に等しい体積を有する独自の床と、Vに実質的に等しい非選択的な空体積とを含み、前記ゾーンは、通常の基本ゾーンと称され、
ゾーンZの中から、特定の基本ゾーンと称される少なくとも1つの基本ゾーンZをさらに含み、これは、通常のゾーンとは異なり、Zは、Vより大きい非選択的な空体積Vと、VAより小さい体積VAを有する吸着剤固体の独自の床Lとを含み、
同一の吸着剤平均固体Sが種々の通常のゾーンの床に用いられ、Sとは異なる吸着剤平均固体Sが前記特定の基本ゾーンZの床に用いられ、Sの体積吸着容量Cは、固体Sの体積吸着容量、すなわち、Cより大きく、全体的な吸着容量C×特定の基本ゾーンZのVAは、Zの床Lの吸着固体が平均固体Sではなく、平均固体Sであるかのように計算されるZの全体的な吸着容量よりも通常の基本ゾーンのそれぞれの全体的な吸着容量C×VAにより近くまたはこれに等しい、ものを提案する。
【0047】
このことは、従って、次の関係式が満足させられることを意味する。
【0048】
|C×VA−C×VA|≦C×VA−C×VA
特定の基本ゾーンZの全体の吸着容量の差は、通常の基本ゾーンのそれぞれの全体的吸着容量に対して、好ましくは少なくとも30%、非常に好ましくは少なくとも70%低減させられる。
【0049】
したがって、好ましくは
|C×VA−C×VA|<0.7×|C×VA−C×VA|、
非常に好ましくは
|C×VA−C×VA|<0.3×|C×VA−C×VA|、
である。
【0050】
理想的には、すべてのゾーンの全体的な吸着容量は等しく、
|C×VA−C×VA|=0
である。
【0051】
典型的には、(V+VA)に極めて近い、例えば(V+VA)とは多くとも3%しか違わないか、または同一である、全体的体積(V+VA)が使用される。
【0052】
用語「平均固体」は、単純に、吸着剤固体が必ずしも均質というわけではないことを意味しているが、均質であってもよい。
【0053】
機器の一実施態様において、吸着容量が異なった(少なくとも)2種の吸着剤が使用され、前記2種の吸着剤の混合物の比率は、通常の基本ゾーン(複数)と特定の基本ゾーン(単数または複数)との間で変えられる。一般的に、吸着剤平均固体Sは、それ故に、それぞれCおよびC(C>C)の異なった体積吸着容量を有する少なくとも2種の吸着剤固体SおよびSの混合物であり、Sは、機器中に含まれる吸着剤固体であり、最も高い体積吸着容量を有し、通常の基本ゾーンの床のそれぞれにおけるSの割合は、ゼロであるかまたは特定の基本ゾーンZの床LにおけるSの割合より小さい。
【0054】
この選択肢では、特定の基本ゾーンZの体積吸着容量は、このゾーンにおいて、通常のゾーンのそれぞれにおいて用いられるものより大きい割合で存在するより高い体積吸着容量を有する吸着剤固体Sを用いることによって増加させられる。
【0055】
通常の基本ゾーンの床は、場合によっては、吸着剤平均固体Sを、吸着剤固体Sの割合0で含み得る。
【0056】
通常の基本ゾーンの床は、場合によっては、体積吸着容量Cを有する独自の均質な吸着剤固体Sによって構成され得る。この場合、吸着剤平均固体Sは、より高い体積吸着剤容量、すなわちC(C>C)を有する少なくとも1種の他の吸着剤固体Sを含む。
【0057】
したがって、本発明を実施するための一つの方法は、通常の基本ゾーンにおいて用いられる吸着剤のミクロ孔体積より大きいミクロ孔体積を有する吸着剤固体を作り、かつ、これを特定の基本ゾーン(単数または複数)に設置することである。
【0058】
バインダによって塊状化させたゼオライトの結晶を含むゼオライト系吸着剤が使用される場合、バインダは、典型的には、吸着剤性能に関しては不活性である。分離のために有効なミクロ孔体積を増やすために、種々の手段が提案されてきた:より凝集性の高いバインダの使用が既に提案されており、これは、用いられるバインダの量、全部または一部のバインダのゼオライトへの変換、または、ゼオライト化を低減させることができる。この操作をより簡単に実施するために、カオリン族に属するゼオライト化可能なバインダが使用され、このバインダは、500〜700℃の範囲の温度で焼成されたものである。
【0059】
当該方法において、FR-2 767 524 A1には、少なくとも一部のバインダのゼオライトへの変換前に20重量%を超えないバインダ含量(3頁25〜27行)を有し、および変換後に多くとも10%の量の不活性材料を有する(4頁4行)吸着剤が提案されている。同様に、国際特許出願WO-99/10096には、塊状物の実際的なバインダ含量は、吸着剤の全質量の一般的に30%、好ましくは20%を超えないことが示されている(3頁11〜12行)。同文献には、バインダのゼオライトへの変換後、得られた吸着剤は、一般的に、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%の活性フォージャサイトタイプのゼオライトおよび多くとも15%、好ましくは多くとも10%の吸着に対して不活性な材料によって構成されることが示されている(3頁23〜26行)。US-3 119 660には、4Aゼオライト粉体をクレー様バインダと混合することによって製造された組成物は、約0.56の容量因子(capacity factor)を有することが示されている(14カラム62〜64行)。同文献のテーブルIV(カラム15)には、これらの同一の塊状物は、少なくとも一部のバイダのゼオライトへの変換の後、バインダの変換工程のために選択された操作手順に応じて0.70〜0.74の範囲の吸着因子(adsorption factor)を有することが示されている。
【0060】
一つのバリエーションは、カオリンの粒子をモールディングし、次いで、カオリンをゼオライト化することからなる:原理は、D W Breck, John Wiley およびSonsによる「Zeolite Molecular Sieves」, New York, p 320 ffにおいて議論される。この技術は、95重量%までのゼオライト自体と残留非変換バインダとによって構成されるAゼオライトまたはXゼオライトの粒子を得るのに首尾良く適用される。
【0061】
考慮下の分離に応じて、本発明によると、当業者は、特定の基本ゾーン(単数または複数)において用いられた吸着剤の体積吸着容量を増加させるための任意の適切な方法を用いることができる。
【0062】
有利には、同一の製造運転(例えば、連続的な製造運転または同一の方法を用いる並行製造運転)からの典型的に多数のバッチから製造された同一の吸着剤から2タイプの吸着剤を作ることも可能である:これは、各バッチの吸着容量を測定し、特定の基本ゾーンのために最も高い容量を有するバッチを選択することによって行われ得る。
【0063】
したがって、本発明はまた、擬似移動床吸着による分離用の機器であって、n個(nは3〜30の範囲である)の基本ゾーンZに、吸着剤のN個(Nは60〜3000の範囲である)の製造バッチの形態で利用可能な吸着剤を装填する方法であって、
a) 製造バッチのそれぞれの体積吸着容量は個々に測定される;
b) これにより得られた体積吸着容量の個別の測定から、通常の基本ゾーンに装填される第1の吸着剤Sが選択され、Sのものより大きい体積吸着容量を有し、特定のゾーンZに装填される第2の吸着剤Sが選択され、該機器は、上記のような機器である、方法を提案する。
【0064】
機器はまた、いくつかの特定の基本ゾーンを含み得、第2の吸着剤Sの少なくとも一部は、それ単独で若しくは第1の吸着剤Sの一部と混合されて、前記特定の基本ゾーンのそれぞれに装填されて、得られかつ前記ゾーンに装填された吸着剤は、少なくとも1つの挙げられた不等式が満足させられるか、または、理想吸着容量に対応する等式:|C×VA−C×VA|=0が満足させられるようにされる。
【0065】
同一の製造運転のバッチからの異なる吸着剤の使用は、異なる製造ラインを利用しなければならないということを回避することができる。
【0066】
例えば、SMB分離装置であって、24個の基本ゾーンZを含み、23個が通常のゾーンであり1つが特定のゾーンZであるものを目的としたモレキュラーシーブのための製造運転からの選択を引き出すことが可能である。例えば、100tのモレキュラーシーブが装填されなければならないならば、このものは、1tのバッチ、例えば、単位1tの製造バッチに詰め込まれ得る。各バッチについて、ドビニン体積(または、厳密に比例した方法で窒素以外の化合物の吸着された体積、例えば、分離されるべき炭化水素)を測定することが可能である。平均ドビニン体積または体積で表されるそれに相当するもの、例えば、19%について、100%のバッチは、典型的には、18〜20%の範囲であるだろう。次に、最良の容量(例えば、吸着のために体積の平均19.85%を有する)を有する4.2%のバッチを選択することが可能である;製造運転の残りは、吸着のために体積の18.95%の平均容量を有することになる。次に、通常の基本ゾーンに装填された吸着剤の残りのものより5%高い平均吸着容量を有する吸着剤が、特定のゾーンZに装填されることになる
本発明はまた、特定の分離を実施するための機器の使用に関する。
【0067】
特に、本発明は、キシレンを分離するため、例えば、パラキシレンまたはメタキシレンを、8個の炭素原子を含む芳香族炭化水素の留分から分離するための機器の使用に関する。
【0068】
本発明はまた、オレフィン系炭化水素を、他の非オレフィン系炭化水素と混合されて前記オレフィン系炭化水素を含む留分から分離するための機器の使用に関する。
【0069】
本発明はまた、少なくとも1種の線状パラフィンを、線状パラフィンではない他の炭化水素と混合された前記線状パラフィン(単数または複数)を含む留分から分離するための機器の使用に関する。
【0070】
(図の説明)
単一の図である図1は、本発明による擬似移動床分離機器の一部を図示する。
【0071】
図1には、部分的かつ簡略化された形で、24の吸着剤固体の床L、L、・・・、L22、L23およびL24(Lに相当)を含むカラムが示されている。前記床のぞれぞれは、斜線が加えられた長方形によって表されている。カラムの2つの連続する床の間に、本発明者らは、斜線が入れられていない非選択的な空体積を示しているが、これは、供給されかつ抜き出される種々の流体の分配/抽出の系のための、カラムの内部空体積に相当し、これはまた、カラムの中を移動する主流体によってフラッシュされる。
【0072】
非空体積、例えば、分配器/抽出器プレートの金属部分の体積または前記プレートの支持ビームの体積は、非選択的空体積として算入されない。
【0073】
通常、吸着剤の粒子の間の体積、および吸着剤の粒子の内側の体積も、考慮に入れられない。
【0074】
最後に、ループにおけるカラム中または外部バイパス中を移動する流体の接近することのできない体積も考慮に入れられない。これは、例えば、カラム中を移動する主流体によっても、また、外部バイパス中を移動する主流体によってもフラッシュされず、1以上の入来また外出流体によってのみフラッシュされる入来流体(供給)および外出流体(抜き出し)の供給/抽出のコネクタの体積の場合である。
【0075】
対照的に、「非選択的空体積」はまた、カラムの外側に所定数の体積を含む:
・ それぞれの基本ゾーンについて、外側バイパスラインの内部体積が存在するならば(図1において、Zの1’、2、および3’、ならびにZ23の4’、5、および6’)、流体分配の外側の分配器プレートおよび抽出相の制限された流量のフラッシングを可能とするように、外側バイパスラインの内部体積は考慮に入れられる。対照的に、既に言及されたように、基本ゾーンに相当する非選択的空体積は、バイパスラインの操作中に主流体によりフラッシュされない体積を考慮に入れない(図1において、上流の多方向バルブ(不図示)までまたは種々の上流2方向バルブ(不図示)までの、機器の逐次操作を制御するコネクタ1、3、4および6)。主流体によりフラッシュされず、1以上の入来または外出流体によってのみフラッシュされるコネクタがカラムに入る場合、そのバルブも、カラムにおけるループとして移動する主流体との「混合ボックス」へのその流入点の上流の部分について考慮に入れられない(この混合ボックスは、図1に示されない)。
【0076】
・ 主流体を(適切ならば2つのカラムの間)に移行させるためのラインまたはカラム底部から当該同一カラムの頭部へリサイクルさせるためのラインに相当する個別の体積。これらの種々の個別の体積は、典型的には、これらのラインの内部体積を含むが、機器中の流体の閉ループ移動を可能にするポンプ(単数または複数)またはコンプレッサ(単数または複数)の内部体積も含む。それらはまた、分析計等の測定装置の内部体積を含み得る。
【0077】
吸着剤固体のそれぞれの床Lは、通常、本発明により、基本ゾーンZに属するが、これはまた、非選択的空体積Vを含み、この非選択的空体積Vは、典型的には、複数の異なる明確に区別される非選択的空体積からなる。
【0078】
通常、本発明によると、2つの連続する吸着剤床の間に位置するプレートに相当する各非選択的空体積(点線として示される中間線を有する2つの連続する吸着剤床の間のハッチングされていない体積)の半分は、すぐ上流の吸着床Lを含むゾーンZに適用され、他の半分は、すぐ下流の吸着剤床Li+1を含むゾーンZi+1に適用される。
【0079】
図1の機器は、双方向矢印の線1/1’、3/3’、4/4’、6/6’によって示されるような、共通の分配/抽出ネットワークを有している。吸着剤床Lに加えて、ゾーンZは、上流の分配系の非選択的空体積(カラムの塔頂)の半分と、下流の分配系の非選択的空体積(床LとLとの間)の半分とを含んでいる。それにはまた、外側バイパスライン2が存在するならば、外側バイパスライン2の内部体積を含み、すなわち、この場合、ライン1’、2および3’の内部体積も、非選択的空体積として計算に入れられるが、コネクタ1および3の体積は計算に入れられない。
【0080】
床L22の下のゾーンZ23は、ゾーンZの要素と同様の要素を含む。吸着剤の床L23に加えて、それは、上流の分配系の非選択的空体積(床L22とL23の間)の半分と、下流の分配系の非選択的空体積(床L23とL24との間)の半分とを含んでいる。それはまた、存在するならば外側バイパスライン5の内部体積、すなわち、この場合、ライン4’、5および6’の内部体積を含んでおり、これも非選択的空体積として計算に入れられるが、コネクタ4および6の体積は計算に入れられない。本発明によると、ゾーンZおよびZ23、並びに同じ中間ゾーンのすべてが通常の基本ゾーンであり、それぞれが、実質的に同一の吸着剤床の体積および実質的に同一の非選択的空体積を有している。
【0081】
対照的に、ゾーンZ24は特別である:それは、リサイクルライン7ついで9、並びにリサイクルポンプ8に相当する、個別の追加的な非選択的空体積を含む。これらの追加的な個別の非選択的空体積は、通常の基本ゾーンのそれぞれの非選択的空体積と比較して無視できるものではない。その結果として、これらの追加の非選択的空体積の有害な作用を修正するために、より小さい体積の吸着固体が、ゾーンZ24の吸着床L24のために用いられる。
【0082】
本発明によると、ゾーンZ24(これは、上記の特定の基本ゾーンZに対応する)において、他のゾーン(通常の基本ゾーン)において用いられる平均吸着剤Sとは異なる平均吸着剤Sが用いられる。この吸着剤Sは、通常の基本ゾーンにおいて用いられる吸着剤固体Sの体積吸着容量Cより高い体積吸着容量Cを有しており、それによって、それは、吸着剤の床L24の体積の低下を相殺し、その全体的な吸着容量は、維持され得る。
【0083】
特に、Sは、高い体積吸着容量を有する均質な吸着剤Sまたは第一の量のそのような吸着剤Sと別の適切な量の吸着剤Sとの混合物によって構成され得る。
【0084】
(実施例)
(実施例1:従来技術に合致)
パラキシレン20%、オルトキシレン25%、メタキシレン50%、およびエチルベンゼン5%からなる供給材料からパラ−キシレンを分離した。
【0085】
擬似移動床SMB分離設備は、内部直径7mのカラム中に設置された24個の吸着剤固体床を含んでいた。カラム塔頂から番号が付けられた、1〜23番の床は、同一の高さ1.13mであった。リサイクルポンプも含め、1〜23番の床の共通の体積の10%の非選択的空体積を有するリサイクルラインが、カラム塔底にある24番の床から、カラム塔頂に位置する1番の床までを接続していた。
【0086】
このリサイクルラインは、23番床と24番床との間に位置する注入/抽出点と、1番床の上流の塔頂に位置する注入/抽出点との間に含まれる基本ゾーン内に位置していた。このリサイクルラインは、それ故に、24番吸着床に相当する特定の基本ゾーンに属していた。
【0087】
この非選択的体積の効果を相殺するために、従来技術によれば、24番床の体積は、相当分の体積だけ低減させられていた。この24番床は、それ故に、高さ1.13mではなく高さ1.02mであった。
【0088】
採用された吸着剤固体Sは、床の全てにおいて同一である独自の均質な吸着剤、すなわち特許FR-2 789 914の実施例1(7〜8頁)または特許US-6 884 918の実施例1(第6カラム)に記載されているようにして製造されたBaXタイプのゼオライトであった。Dubinin-Radushkevich法を用いて測定されたそのミクロ孔体積は、0.22cm/gであった。
【0089】
使用された溶出液は、パラジエチルベンゼン(para-diethyl benzene:PDEB)であった。平均温度は175℃、圧力は1.5MPaであった。
【0090】
床の分配は次の通りであった:
・ ゾーン1に5床;
・ ゾーン2に9床;
・ ゾーン3に7床;
・ ゾーン4に3床。
【0091】
採用された置換時間は、70.8秒であった。種々のゾーンにおける液体流量は次の通りであった:
・ ゾーン1;30.06m・min−1
・ ゾーン2;25.87m・min−1
・ ゾーン3;32.66m・min−1
・ ゾーン4;22.58m・min−1
【0092】
これらの条件下、本発明者らは、パラ−キシレン純度99.73%およびパラキシレン収率95.6%を得た。
【0093】
(実施例2:本発明に合致)
実施例1の場合と同じ分離を、同様に24床を含む同じ直径のカラム内で同じ条件(圧力、温度、置換時間)下、ゾーンあたりの床の分配も同一として、同じ溶出液PDEBを使用して実施した。リサイクルラインも、実施例1の場合と同じであった。
【0094】
1〜23番の床において使用された吸着剤固体Sも上述の実施例1において使用されたものと同じであり、これらの床の高さも1.13mであった。
【0095】
実施例1に対する唯一の相違は、塔底にある24番床に関連していた:その高さは同様に、1.13mではなくて約10%だけ低減させられて1.02mとされたが、本発明によると、24番床において、他の床において用いられた吸着剤固体Sとは異なる吸着剤固体Sが用いられた。
【0096】
吸着剤固体Sは、特許FR-2 789 914の実施例2(8〜9頁)または特許US-A-6 884 918の実施例2(カラム6〜7)において記載されたようにして製造された。ミクロ孔体積0.244cm/gがこのようにして得られた。24番床の吸着剤固体Sの体積吸着容量は、それ故に、機器の残りにおける吸着剤固体Sの体積吸着容量より約10%大きく、これは、24番床に相当する特定の基本ゾーンZにおける吸着剤体積の低減を相殺していた。
【0097】
これらの条件下に、本発明者らは、パラキシレン純度99.74%およびパラキシレン収率96.2%を得た。この収率は、実質的に同じパラキシレン純度であるのに対し、従来技術において得られた収率より実質的に高い。
【0098】
本発明の範囲は、上記記載に限定されるものではなく、当業者は、自由に、従来技術に含まれるあらゆる適切な特徴を自由に採用することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明による擬似移動床分離機器の一部を模式的に示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬似移動床吸着によって供給材料Fを分離するための機器であって、
閉ループにおいて操作する直列の複数の基本ゾーンZを含み、前記ゾーンのそれぞれは、逐次的注入(供給材料または溶出液)または逐次的抽出(抽出液またはラフィネート)のための2つの連続する点の間に、体積VAを有する吸着固体の独自の床Lと、ループにおける移動のための吸着剤を含まない、非選択的な空体積Vと称される体積とを含み、少なくとも3つのゾーンZは、それぞれ、VAに実質的に等しい体積を有する吸着剤の単一の床と、Vに実質的に等しい非選択的空体積とを含み、前記ゾーンは、通常の基本ゾーンと称され、
ゾーンZの中から、特定の基本ゾーンと称される、通常のゾーンとは異なる少なくとも1つの基本ゾーンZをさらに含み、Zは、Vより大きい非選択的空体積Vと、VAより小さい体積VAを有する独自の吸着剤固体の床Lとを含み;
同一の吸着平均固体Sが、種々の通常のゾーンの床のために用いられ、Sとは異なる吸着平均固体Sが、前記特定の基本ゾーンZの床のために用いられ、Sの体積吸着容量Cは、固体Sの体積吸着容量、すなわちCより大きく、特定の基本ゾーンZの全体的な吸着容量C×VAは、Zの床Lの吸着固体が固体Sでなく固体Sであるかのように計算されるZの全体的な吸着容量よりも通常の基本ゾーンのそれぞれの全体的な吸着容量C×VAに近い、機器。
【請求項2】
|C×VA−C×VA|<0.7×|C×VA−C×VA|である、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
|C×VA−C×VA|<0.3×|C×VA−C×VA|である、請求項2に記載の機器。
【請求項4】
|C×VA−C×VA|=0である、請求項3に記載の機器。
【請求項5】
吸着平均固体Sは、少なくとも2種の吸着剤固体SとSの混合物であり、該少なくとも2種の吸着剤固体SおよびSは、それぞれ異なる体積吸着容量CおよびCを有し、C>Cであり、Sは、機器に含まれる吸着剤固体であり、最も高い体積吸着容量を有し、通常の基本ゾーンの床のそれぞれ中のSの割合(%)は、ゼロまたは特定の基本ゾーンZの床L中のSの割合(%)未満である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の機器。
【請求項6】
通常の基本ゾーンの床のそれぞれ中のSの割合(%)はゼロである、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
通常の基本ゾーンの床のそれぞれ中の吸着剤平均固体は、体積吸着容量Cを有する独自の均質な吸着剤固体Sによって構成され、吸着剤平均固体Sは、少なくとも1種の他の吸着剤固体Sを含み、該吸着剤固体S1は、より高い体積吸着容量、すなわちCを有し、ここでC>Cである、請求項1〜6のいずれか1つに記載の機器。
【請求項8】
キシレンを、8個の炭素原子を含む芳香族炭化水素の留分から分離するための請求項1〜7のいずれか1つに記載の機器の使用。
【請求項9】
パラキシレンを分離するための請求項8に記載の使用。
【請求項10】
オレフィン系炭化水素を、少なくとも一部が非オレフィン性である他の炭化水素との混合物として前記炭化水素を含む留分から分離するための請求項1〜7のいずれか1つに記載の機器の使用。
【請求項11】
少なくとも1種の線状パラフィンを、線状パラフィンではない他の炭化水素との混合物として前記線状パラフィン(単数または複数)を含む留分から分離するための請求項1〜7のいずれか1つに記載の機器の使用。
【請求項12】
擬似移動床吸着による分離用の、n個(ここで、nは、3〜30の範囲である)の基本ゾーンZを含む、機器に、同一の製造方法を用いて吸着剤のN個(Nは60〜3000の範囲である)の製造バッチの形態で利用可能な吸着剤を装填する方法であって、
a) 製造バッチのそれぞれの体積吸着容量は、個別に測定され、
b) それによって得られた体積吸着容量の個別の測定から、通常の基本ゾーンに装填される第1の吸着剤Sが選択され、Sの体積吸着容量より大きい体積吸着容量を有する第2の吸着剤Sが選択され、これが、特定のゾーンZに装填され、該機器は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の機器である、方法。
【請求項13】
機器は、複数の特定の基本ゾーンを含み、第2の吸着剤Sの少なくとも一部が、前記特定の基本ゾーンのそれぞれに、単独でまたは第1の吸着剤Sの一部と混合されて装填され、得られる吸着剤は、請求項2または3の少なくとも1つの不等式または請求項4の等式が満たされる、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−506091(P2011−506091A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538825(P2010−538825)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001677
【国際公開番号】WO2009/101282
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(509119887)イエフペ (21)
【Fターム(参考)】