説明

攪拌機構

本発明は、流体を攪拌する回転攪拌部本体(2)を有する攪拌機構に関する。この攪拌部本体(2)は、攪拌部本体のハブ(3)に取り付けた攪拌ブレード(4)を有している。攪拌部本体(2)は、更に攪拌部本体で攪拌して分散させるために空気等のガスを供給するガス供給装置(5)を有している。ガス供給装置は、攪拌部本体(2)のハブ(3)とともに回転する分配ブッシング(6)を含むとともに、ガスを受け取る内部空間を有している。分配ブッシング(6)とその内部空間は、共回転出口ライン(7)と流体連結状態にあり、出口ライン(7)の出口開口は、攪拌ブレード(4)の近傍に配置されるとともに、攪拌部本体(2)内又は近傍の流出領域に配置され、所望の位置で対応する所望の方向にガスを放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を攪拌する攪拌部本体と、攪拌部本体のハブに取り付けた攪拌ブレードと、を有する攪拌機構に関する。また、この攪拌機構は、攪拌部本体で攪拌する空気等のガスを供給するガス供給装置を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
攪拌機構を有する多くの化学反応装置やバイオ反応装置では、少なくとも一つの反応相手がガス状の開始成分として存在し、反応が生じる。この攪拌機構は、ガス状成分を細かく分配し、ガス状成分が少なくとも部分的又は完全に溶液に溶けて反応装置で進行する反応に加わるように、ガス状成分と流体との間に大きな境界面を提供する。
【0003】
したがって、この攪拌機構はガスを分散させなければならない。ガスを分散させるという課題は、通常、例えば、反応相手を導入するために粘度の異なる流体を混合したり、固体物質をけん濁したり、熱を熱交換要素に伝達したり、溶剤を気化するために表面に流体を循環したり、固体物質を析出して結晶化したりする追加的な主目的とともに生じる。
【0004】
主目的を最適に解決するために、これまでにも種々の攪拌部本体が開発されており、それらは、搬送方向、すなわち、半径方向及び/又は軸方向、攪拌ブレードの数、攪拌ブレードの形状及び攪拌段階の数が異なっていてもよい。
【0005】
例えば、米国特許US4371480A及び独国実用新案公報DE9201820U1には、攪拌部本体によってガスが引き込まれる攪拌機構が開示されている。
【0006】
逆に、外部ガス供給部を有する攪拌機構が知られており、この機構では、ガスが攪拌部本体内に引き込まれず、ブロワーやコンプレッサによって又は蓄圧器から供給される。従来の攪拌機構の幾つかの例がこれに記述されている。
【0007】
国際公開特許公報WO2008/083673A2には、上述のタイプの攪拌部本体とガス供給装置を有する攪拌機構が開示されている。このガス供給装置では、攪拌部本体の下に又は側部にガスが供給され、このガスが攪拌部本体によって分散されている。この攪拌機構では、ガスが攪拌部本体から比較的遠くにある攪拌部本体の側部及び/又は下に供給され、分配されている。
【0008】
欧州公開特許公報EP0847709A1には、特に流体を攪拌するガス供給攪拌部本体として使用される攪拌部本体が開示され、ガス、例えば空気が流体に供給されている。このガス供給攪拌部本体では、攪拌部本体の攪拌軸の下に位置する放出ポートを有する供給チューブを介してガスが供給されている。必要に応じて、幾つかの供給チューブを攪拌部本体の下及び/又はそれから離間する側に設けてもよい。この場合、ガスはこれらのチューブを介して攪拌機構の攪拌部本体の流出部へ供給される。
【0009】
欧州登録特許公報EP1055450B1は、ガスが共回転分配要素を介して供給される攪拌機構を示している。
【0010】
上述の攪拌機構から分かるように、外部ガス供給部を有する攪拌機構が二つの異なるケースに分割され得る。
【0011】
これに固定された供給ラインを介して、例えば、攪拌部本体の下に配置されたチューブ又は攪拌部本体に隣接する側に配置されたチューブ、又はリング形状のガス分配器、攪拌部本体の下に配置された所謂リングシャワーを介してガスが供給されてもよい。このようなリングシャワーは、攪拌部本体へ供給されるガスが排出可能であり、外周に沿って配置された幾つかの開口を有している。
【0012】
また、欧州登録特許公報EP1055450B1に開示された攪拌機構の場合のように、共回転分配要素を介してガスを供給することができる。しかしながら、この攪拌機構の攪拌部本体は、実際にガスを供給するとともに前述の主目的の一つを満足しなければならないので、ガスを供給するための回転分配要素が、実際の攪拌部本体の外側に配置され、最適なガスの供給を妨げている。
【0013】
ガス供給装置の従来の実施の形態では、流体によって誘発される振動を防止するために、剛性の高い支持体を必要とする幾つかの個別部品を含んでいる。また、腐食を防止するために高価な材料の二相鋼、合金又はチタンを使用する必要がある。したがって、従来のガス供給装置は、一般的に構造が複雑で、幾つかの部品を含み、製造が複雑でコストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第US437480A号
【特許文献2】独国実用新案公報DE9201820U1
【特許文献3】国際公開特許公報WO2008/083673A2
【特許文献4】欧州公開特許公報EP0847709A1
【特許文献5】欧州登録特許公報EP1055450B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、非常に簡単な構造であるとともに大きなコスト削減を達成した攪拌機構の攪拌部本体に対してガスを供給するとともに、流動力学上望ましい攪拌部本体又は攪拌ブレードの位置で目標のガス放出を達成することである。特に、ガスは攪拌機構の主目的に悪影響を及ぼすことなく最適に分散されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、流体を攪拌する回転攪拌部本体を有し、この攪拌部本体が、攪拌部本体のハブに取り付けた攪拌ブレードを有するとともに、前記攪拌部本体で攪拌して分散させるために空気等のガスを供給するガス供給装置を有する攪拌機構であって、前記ガス供給装置は、前記攪拌部本体の前記ハブとともに回転する分配ブッシングを含むとともに、前記ガスを受け取る内部空間を有し、前記内部空間は、共回転出口ラインと流体連結状態にあり、前記出口ラインの出口開口が、前記攪拌ブレードの近傍に配置されるとともに、前記攪拌部本体内又は近傍の流出領域に配置され、所望の位置で対応する所望の方向に前記ガスを放出することを特徴としている。
【0017】
本発明の攪拌機構では、出口開口を有する共回転出口ラインが攪拌ブレードの近傍に設けられたことによって、それらの支持と取り付けが簡素化されている。また、これらの出口ラインは、流動力学上好ましい攪拌部本体及び/又は攪拌ブレードのあらゆる位置で目標とする方法でガスを放出することが可能である。ガスは、共回転ラインを通って分配ブッシングから対応する所望の出口開口に導かれる。攪拌ブレードの近傍で、且つ攪拌部本体内又は近傍の出口ラインに出口開口を配置することによって、ガスが最適に分散されるとともに攪拌機構の主目的の達成に支障をきたすことはない。
【0018】
また、ガス供給装置は、回転分配ブッシングの内部空間と密封流体連結状態にあるスタンディング供給ラインを含むことが好ましい。ガス状の成分は、単一の中央供給ラインを介して攪拌部本体に供給されるので、攪拌部本体とガス供給装置を含む攪拌機構の構造を顕著に簡素化できる。スタンディング中央供給ラインは、攪拌部本体のハブと共に回転する中央分配ブッシングの内部空間と密封流体連結状態にある。
【0019】
したがって、本発明の攪拌機構は、中央ガス供給ラインを含み、このラインが同様な共回転出口ラインを有する分配ブッシングのような共回転装置と流体連結している。このように、構造的に顕著に簡素化されたガス供給部がこのタイプのガス供給装置を有する攪拌機構で実現されている。
【0020】
攪拌機構において非常にコンパクトな構造を達成するために、回転分配ブッシングが攪拌部本体のハブと共軸で、その下に配置されている。これによって、回転攪拌機構の最適に空間が節約された機構と構造が作られている。
【0021】
特に、本発明において、出口ラインの出口開口によって形成されるガス供給位置は、攪拌部本体が占める体積内に配置される。それによって、出口ラインは、本発明の攪拌機構において、攪拌ブレードの近傍でガスを解放するための最適な位置の自由な選択が可能となる。供給されたガスの流出の方向と流出の位置の両方を攪拌部本体の夫々の設計を考慮して最適に選択することができる。
【0022】
分配ブッシングからの出口ラインは、攪拌ブレード及びそれらの放出開口から分かれて延出してもよいし、出口開口がブレードよりも上に位置してもよい。放出開口や出口ラインの出口は、攪拌部本体のブレードの領域に位置しても良く、放出開口が攪拌部本体のブレード間に位置する設計も可能である。
【0023】
他の実施例によれば、送出ラインが攪拌部本体の攪拌ブレードと一体的に設けられてもよい。
【0024】
スタンディング供給ラインからの移行部と、出口ラインが分配ブッシングの内部空間と流体連結し、攪拌部本体と共に回転する分配ブッシングは、スタンディングから回転部品への移行部での損失流体の量が可能な限り小さくなる。したがって、移行領域に信頼できるシールを提供するように設計されるべきである。本発明により静圧シールがこの移行領域に設けられても良いし、望ましいシール機能を実施する軸方向又は半径方向のギャップを有する実質的に磨耗のない機構が設けられても良い。
【0025】
要約すれば、本発明の攪拌機構で重要なことは、構造的に簡素化された供給ラインで可能な限り少数の個別部品で攪拌部本体を構成することである。したがって、単一の中央ガス供給部が固定されるとともに、ガス受け取り空間を形成する内部空間を有する回転分配ブッシングと協働する。次に、共回転出口ラインは、この中央共回転分配ブッシングから供給され、攪拌ブレードの近傍に配置されるとともに、攪拌部本体内又は近傍の流出ゾーンに配置された出口開口を有する共回転出口ラインは、攪拌機構を最適化するとともに、反応におけるガスの加入を改良するように供給されたガス流に対して所望の方向を提供するために、最も好ましい位置で供給されたガスを放出できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
次に、本発明の好ましい実施の形態が、単なる例示であり限定を意味しない添付の図面を参照して更に詳細に説明される。
【0027】
図1は、本発明の攪拌部本体とガス供給装置を備えた攪拌機構の概略側面図である。
【0028】
図2は、本発明の変形態様の攪拌部本体とガス供給装置を備えた攪拌機構の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
これらの図面において同じ又は類似の構成要素は同じの参照番号が付されている。
【0030】
図1は、全体の参照番号1が付された攪拌機構の第1の実施の形態を示している。この攪拌機構1は、液体を攪拌するための回転攪拌部本体2を有している。この攪拌部本体2は、攪拌ブレード4が取り付けられたハブ3を含んでいる。また、この攪拌ブレード4が所望の形状とデザインを有してもよい。
【0031】
また、攪拌機構1は、全体の参照番号5で示されるガス供給装置を含み、このガス供給装置が、分散させるために空気等のガスを攪拌部本体2に供給する。ガス供給装置5は、攪拌部本体2のハブ3ととともに回転する分配ブッシング6を含んでいる。この分配ブッシング6は、ガスを受け取る内部空間を有している。分配ブッシング6及び/又はその内部空間は、共回転出口ライン7と流体連結状態にあり、共回転出口ライン7は、所望の位置で対応する所望の方向にガスを放出する。更に、ガス供給装置5は、回転分配ブッシング6の内部空間と密封流体連結状態にあるスタンディング供給ライン8を含んでいる。図1に描かれた一実施の形態では、共回転出口ライン7が、攪拌ブレード4とは別に形成されている。
【0032】
図1に描かれた攪拌機構では、1つの中央スタンディング供給ライン8がガスを供給するために設けられている。分配ブッシング6は、ガスを受け取る内部空間を有する攪拌部本体のハブ3と共軸で、且つ、その下に配置されている。スタンディング又は固定供給ライン8と回転分配ブッシング6は、互いに密封流体連結状態にある。この構造体は、スタンディング供給ライン8と回転分配ブッシング6との間の遷移部のシールでの損失流体の量が可能な限り少なくなるように選択される。この目的のために、この遷移領域に静圧シールを設けることができ、固定供給ライン8と回転分配ブッシング6との間の密封接続が、軸方向又は半径方向ギャップを有する磨耗のない機構で実施される。
【0033】
本発明の攪拌機構1において、固定供給ライン8を介して回転分配ブッシング6の内部空間に導入されたガスは、所望の適切な位置でガス供給装置5の共回転出口ライン7を介して放出される。この供給位置は、攪拌部本体2内にある。しかしながら、対応する所望の方向を有する共回転出口ライン7の放出開口でのガスの放出且つ解放も可能である。出口ライン7の放出開口は、攪拌ブレード4の領域に配置されても良いし、攪拌ブレード4の間に配置されてもよい。しかしながら、それらの開口は、攪拌ブレード近傍であって常に攪拌部本体内に配置される。出口ライン7の放出開口は、攪拌ブレード4の上に配置されてもその下に配置されても良い。出口ライン7の出口開口にとって最も好ましい位置と最も好ましい放出方向は、攪拌器2のタイプによって最適に選択され得る。特に、設置コスト及び/又は材料コストの節約は、供給装置5のコンパクトな設計で達成され得る。出口ライン7もまた共回転するので、流体によって引き起こされる振動を防止するために設けられる出口ラインの剛性支持体を取り除くことができる。
【0034】
本発明の攪拌機構1は、この発明の基づいた設計によって比較的コスト効率が良く、且つより簡単な構造を有している。したがって、本発明の攪拌機構1の攪拌部本体2は、供給されたガスを非常に効率的に攪拌して分配することができ、反応装置のガスと流体の最適な反応条件を実現することができる。
【0035】
図2は、出口ライン7並びにそれの放出開口の配向と配置の他の実施の形態の一例を示している。この一例では、出口ライン7が攪拌ブレード4に一体化されている。図2の攪拌機構1´の詳細は、図1の攪拌機構1の詳細と同じである。したがって、より詳細な説明は不要であり、省略する。
【0036】
本発明は、図示の実施の形態に限定されず、当業者が本発明の範囲を越えることなく必要に応じて行う多くの変更及び修正が可能である。例えば、出口ライン7の実施の形態の組み合わせが実行可能であり、その場合、出口ライン7は、その一部が攪拌ブレード4に一体化され且つ一部が攪拌ブレードから分離されている。次に、共回転出口ライン7の放出開口は、攪拌部本体2と異なる位置に交互に配置されても良いし、放出開口自体が既存のガス流に対して夫々望ましい流れの方向成分を与えるように形成されても良い。しかしながら、本発明により、これらの放出や出口開口は、攪拌ブレードの近傍で且つ攪拌部本体内に配置されるべきである。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を攪拌する回転攪拌部本体(2)を有し、この攪拌部本体(2)が、攪拌部本体のハブ(3)に取り付けた攪拌ブレード(4)を有するとともに、前記攪拌部本体で攪拌して分散させるために空気等のガスを供給するガス供給装置(5)を有する攪拌機構であって、前記ガス供給装置は、前記攪拌部本体(2)の前記ハブ(3)とともに回転する分配ブッシング(6)を含むとともに、前記ガスを受け取る内部空間を有し、前記内部空間は、共回転出口ライン(7)と流体連結状態にあり、前記出口ライン(7)の出口開口が、前記攪拌ブレード(4)の近傍に配置されるとともに、前記攪拌部本体(2)内又は近傍の流出領域に配置され、所望の位置で対応する所望の方向に前記ガスを放出することを特徴とする攪拌機構。
【請求項2】
前記ガス供給装置(5)は、前記回転分配ブッシング(6)の内部空間と密封流体連結状態にあるスタンディング供給ラインを備えることを特徴とする請求項1に記載の攪拌機構。
【請求項3】
前記回転分配ブッシング(6)は、前記攪拌部本体のハブ(3)と同軸であるとともに前記攪拌部本体のハブ(3)より下方に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の攪拌機構。
【請求項4】
前記出口ライン(7)は、前記攪拌ブレード(4)に対して別個に延出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の攪拌機構。
【請求項5】
前記出口ライン(7)は、前記攪拌ブレード(4)に一体化されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の攪拌機構。
【請求項6】
前記固定供給ライン(8)と前記回転分配ブッシング(6)との間の密封接続は、静圧シールで実施されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の攪拌機構。
【請求項7】
前記固定供給ライン(8)と前記回転分配ブッシング(6)との間の密封接続は、磨耗のない軸方向又は半径方向ギャップ機構で実施されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の攪拌機構。

【公表番号】特表2012−529363(P2012−529363A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514378(P2012−514378)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003410
【国際公開番号】WO2010/142406
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(595009408)エカト・リュール・ウント・ミッシュテヒニック・ゲー.エム.ベー.ハー (3)
【氏名又は名称原語表記】EKATO Ruhr− und Mischtechnik GmbH
【Fターム(参考)】