説明

支持体、ガラス基板積層体、支持体付き表示装置用パネル、および表示装置用パネルの製造方法

【課題】ガラス基板間へ混入した気泡や塵介等の異物によるガラス欠陥の発生を抑制し、エッチピットを発生させることなく既存の製造ラインで処理することができ、耐熱性に優れ、経時的な剥離強度の上昇がなく、密着したガラス基板と樹脂層とを樹脂層を傷つけることなく容易かつ短時間に分離することができるガラス基板積層体の提供。
【解決手段】オルガノアルケニルポリシロキサンと分子末端のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含む硬化性シリコーン樹脂組成物を支持基板表面上で硬化させることにより形成された、剥離性表面を有する硬化シリコーン樹脂層を有する支持基板からなる支持体、および、該支持体の硬化シリコーン樹脂層表面にガラス基板が積層された、ガラス基板積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、有機EL表示装置等に用いられるガラス基板を支持する支持体、該支持体の製造方法、該支持体を用いたガラス基板積層体の製造方法、支持体を含むガラス基板積層体、該ガラス基板積層体を用いた表示装置用パネル製造用の支持体付き表示装置用パネル、および、該ガラス基板積層体を用いた表示装置用パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置(OLED)、特にデジタルカメラや携帯電話等の携帯型表示装置の分野では、表示装置の軽量化、薄型化が重要な課題となっている。
この課題に対応するために、表示装置に用いるガラス基板の板厚をさらに薄くすることが望まれている。ガラス基板の板厚を薄くする一般的な方法としては、表示装置用部材をガラス基板の表面に形成する前または形成した後に、化学エッチングを用いてガラス基板をエッチング処理し、必要に応じてさらに物理研磨して薄くする方法が行われる。
【0003】
しかしながら、表示装置用部材をガラス基板の表面に形成する前にエッチング処理等をしてガラス基板の板厚を薄くすると、ガラス基板の強度が低下し、たわみ量も大きくなる。そのため、既存の表示装置用パネルの製造ラインで処理することが困難になるという問題が生じる。
また、表示装置用部材をガラス基板の表面に形成した後にエッチング処理等をしてガラス基板の板厚を薄くすると、表示装置用部材をガラス基板の表面に形成する過程においてガラス基板の表面に形成された微細な傷が顕在化する問題、すなわちエッチピット(etchpit)の発生という問題が生じる。
【0004】
そこで、このような問題を解決することを目的として、板厚の薄いガラス基板と支持基板とを樹脂層を介して貼り合わせて積層体とし、その状態で表示装置を製造するための所定の処理を実施し、その後、ガラス基板表面と樹脂層の剥離性表面とを剥離する方法等が提案されている。
例えば、特許文献1には、ガラス基板と、支持基板とを積層させてなるガラス基板積層体であって、上記ガラス基板と上記支持基板とが、剥離性表面を有し、さらに非粘着性を示すシリコーン樹脂層を介して積層されていることを特徴とするガラス基板積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/018028号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、剥離性表面を有し、非粘着性を示すシリコーン樹脂層が、主鎖構造中にアルケニル基を有するポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとの間の付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物からなることが開示されている。また、使用されるアルケニル基を有するポリシロキサンの構造としては、下記組成式(3)または(4)で表される化合物が開示されている。なお、組成式(3)および(4)においては、mは2以上の整数、nは0を含む整数を表す。
【0007】
【化1】

【0008】
また、メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記組成式(5)で表される化合物が開示されている。なお、一般式(5)においては、aは0を含む整数、bは1以上の整数を表す。
【0009】
【化2】

【0010】
しかしながら、本発明者らが特許文献1に記載のこれらの化合物を用いて検討を行ったところ、樹脂層を備える支持基板とガラス基板とを積層させてなるガラス基板積層体を作製後に長期間放置した後、ガラス基板を樹脂層表面から剥離する際に、ガラス基板が樹脂層表面から剥がれずにその一部が破壊されたり、樹脂層の樹脂の一部がガラス基板上に残存したりして、歩留まりが極端に低下してしまう場合があった。
また、400℃程度の高温環境下で製造プロセスが実施されるTFTアレイなどの表示装置用部材の製造のために上記ガラス基板積層体を適用した場合、樹脂層中や樹脂層と両基板間の界面に発泡が生じたりする不具合が生じており、更なる改良が必要とされていた。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべく、耐熱性に優れ、積層されるガラス基板との間での経時的な剥離強度の上昇が抑制され、さらに積層されたガラス基板を破壊することなく短時間に剥離することができ、TFTアレイの製造など高温条件下の製造プロセスにも適用できるガラス基板を支持するための支持体、および、その製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、該支持体を用いたガラス基板積層体、支持体を含むガラス基板積層体の製造方法、表示装置用パネルを製造するための支持体付き表示装置用パネル、ガラス基板積層体を用いた表示装置用パネルの製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、従来技術について鋭意検討を行った結果、支持体中の硬化シリコーン樹脂層を構成する化合物間の架橋反応が充分に進行していないことを見出した。さらに、その結果、硬化シリコーン樹脂層の耐熱性が不十分となることや、硬化後の樹脂層表面に残存したヒドロシリル基が加水分解反応を経てシラノール基となり、積層時のガラス基板のシラノール基と縮合反応をすることにより剥離強度が上昇するという不具合が生じることを見出した。
本発明者らは、上記の知見をもとに、特定の構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有する付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物を使用することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、
支持基板と支持基板の片面に設けられた剥離性表面を有する硬化シリコーン樹脂層とを有する、該硬化シリコーン樹脂層表面にガラス基板を積層するための支持体であり、前記硬化シリコーン樹脂が、下記線状オルガノポリシロキサン(a)と下記線状オルガノポリシロキサン(b)とを含む硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物であり、前記硬化シリコーン樹脂層が、前記硬化性シリコーン樹脂組成物を前記支持基板表面上で硬化させることにより形成された硬化シリコーン樹脂層であることを特徴とする支持体である。
線状オルガノポリシロキサン(a):アルケニル基を1分子あたり少なくとも2個有する線状オルガノポリシロキサン。
線状オルガノポリシロキサン(b):ケイ素原子に結合した水素原子を1分子あたり少なくとも3個有する線状オルガノポリシロキサンであって、かつ、前記ケイ素原子に結合した水素原子の少なくとも1個が分子末端のケイ素原子に存在している線状オルガノポリシロキサン。
【0014】
第1の態様においては、硬化性シリコーン樹脂組成物における全アルケニル基に対する全ケイ素原子に結合した水素原子のモル比(水素原子/アルケニル基)が0.7〜1.05であることが好ましい。また、支持基板の材料が、5%加熱重量減温度が300℃以上の材料からなることが好ましい。また、支持基板がガラス板、シリコンウエハ、合成樹脂板または金属板であることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様は、支持基板と支持基板の片面に設けられた剥離性表面を有する硬化シリコーン樹脂層とを有する、該硬化シリコーン樹脂層表面にガラス基板を積層するための支持体、を製造する方法において、下記線状オルガノポリシロキサン(a)と線状オルガノポリシロキサン(b)を含む硬化性シリコーン樹脂組成物を支持基板の片面に塗布して硬化性シリコーン樹脂組成物の層を形成し、次いで前記硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させて前記硬化シリコーン樹脂層を形成することを特徴とする支持体の製造方法を提供する。
線状オルガノポリシロキサン(a):アルケニル基を1分子あたり少なくとも2個有する線状オルガノポリシロキサン。
線状オルガノポリシロキサン(b):ケイ素原子に結合した水素原子を1分子あたり少なくとも3個有する線状オルガノポリシロキサンであって、かつ、前記ケイ素原子に結合した水素原子の少なくとも1個が分子末端のケイ素原子に存在している線状オルガノポリシロキサン。
【0016】
本発明の第3の態様は、上記支持体の硬化シリコーン樹脂層表面にガラス基板を積層することを特徴とするガラス基板積層体の製造方法を提供する。
本発明の第3の態様においては、上記ガラス基板の厚さは0.05〜0.4mmであることが好ましい。
【0017】
本発明の第4の態様は、支持基板とガラス基板とそれらの間に存在する硬化シリコーン樹脂層とを有するガラス基板積層体であり、前記硬化シリコーン樹脂層が、下記線状オルガノポリシロキサン(a)と下記線状オルガノポリシロキサン(b)とを含む硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物からなり、前記ガラス基板と硬化シリコーン樹脂層との間の剥離強度が前記支持基板と硬化シリコーン樹脂層との間の剥離強度よりも低いことを特徴とするガラス基板積層体を提供する。
線状オルガノポリシロキサン(a):アルケニル基を1分子あたり少なくとも2個有する線状オルガノポリシロキサン。
線状オルガノポリシロキサン(b):ケイ素原子に結合した水素原子を1分子あたり少なくとも3個有する線状オルガノポリシロキサンであって、かつ、前記ケイ素原子に結合した水素原子の少なくとも1個が分子末端のケイ素原子に存在している線状オルガノポリシロキサン。
【0018】
第4の態様においては、前記硬化シリコーン樹脂層が、支持基板表面に接触しかつガラス基板表面には接触していない状態にある前記硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させ、硬化性シリコーン樹脂組成物硬化後に前記ガラス基板表面に接触させて形成された層であることが好ましい。また、硬化性シリコーン樹脂組成物における全アルケニル基に対する全ケイ素原子に結合した水素原子のモル比(水素原子/アルケニル基)が0.7〜1.05であることが好ましい。また、支持基板の材料が、5%加熱重量減温度が300℃以上の材料からなることが好ましい。また、上記支持基板がガラス板、シリコンウエハ、合成樹脂板または金属板であることが好ましい。また、ガラス基板の厚さが0.05〜0.4mmであることが好ましい。
【0019】
本発明の第5の態様は、上記ガラス基板積層体のガラス基板表面上に、表示装置用パネルの構成部材の少なくとも一部を形成してなる、表示装置用パネル製造用の支持体付き表示装置用パネルを提供する。
【0020】
本発明の第6の態様は、先のガラス基板積層体のガラス基板表面上に、表示装置用パネルの構成部材の少なくとも一部を形成し、その後ガラス基板と硬化シリコーン樹脂層付支持基板とを分離することを特徴とするガラス基板を有する表示装置用パネルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐熱性に優れ、積層されるガラス基板との間での経時的な剥離強度の上昇が抑制され、さらに積層されたガラス基板を破壊することなく短時間に剥離することができ、TFTアレイの製造など高温条件下の製造プロセスにも適用できるガラス基板を支持するための支持体、および、その製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、該支持体を用いて得られるガラス基板積層体、該ガラス基板積層体の製造方法、該ガラス基板積層体を使用して得られた表示装置用パネル製造用の支持体付き表示装置用パネル、および、該ガラス基板積層体を使用した表示装置用パネルの製造方法を提供することもできる。
【0022】
より具体的には、本発明における支持体の樹脂層の樹脂は、特定の付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物である硬化シリコーン樹脂からなり、この特定の硬化性シリコーン樹脂組成物は、線状構造を有し少なくとも片方の末端に水素原子が結合したケイ素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを原料成分の1つとする点に特徴を有する。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、他のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと比較して反応性が高く、硬化反応後の硬化シリコーン樹脂中に残存するケイ素原子に結合した水素原子が少ない。その結果、硬化シリコーン樹脂の経時的な加水分解反応が起こり難く、剥離強度等の物性の経時的変化が少ないという特徴を有する。このため本発明においては、ガラス基板積層時および積層後に樹脂層とガラス基板間の剥離強度の変化、特に剥離強度の上昇が起こり難いという特徴を有する。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの反応性が高いことより、硬化反応の完結度が高くなり、得られる硬化シリコーン樹脂の耐熱性も向上する。そして、適切な低剥離強度を安定に長時間維持することができることより、ガラス基板剥離の際に樹脂層が破壊され難く、ガラス基板積層体において、密着したガラス基板表面と樹脂層の剥離性表面とを容易かつ短時間に剥離することができる。
さらに、本発明の支持体を用いたガラス基板積層体の製造方法によれば、ガラス基板と樹脂層との間へ混入した気泡や塵介等の異物によるガラス欠陥の発生や、エッチピットの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る支持体付き表示装置用パネルの一実施形態の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る支持体、支持体を含むガラス基板積層体、支持体付き表示装置用パネル、および表示装置用パネルについて、図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の支持体付き表示装置用パネルの一実施形態の模式的断面図である。
同図に示す支持体付き表示装置用パネル10は、本発明に係る支持体20を備えているもので、支持基板12、樹脂層14、ガラス基板16、表示装置用パネルの構成部材18をこの順で積層した積層構造を有する。なお、各層の厚さは、該図によって限定されない。
なお、支持基板12と樹脂層14とは本発明に係る支持体20を構成し、支持体20とガラス基板16とは本発明に係るガラス基板積層体30を構成し、ガラス基板16と表示装置用パネルの構成部材18とは本発明に係る表示装置用パネル40(支持体20がないもの)を構成する。
まず、本発明に係る支持体20、ガラス基板積層体30、表示装置用パネル40、支持体付き表示装置用パネル10を構成する各層について説明する。
【0026】
<支持基板>
本発明で使用される支持基板12は、後述する樹脂層14を介してガラス基板16を支持し、ガラス基板16の強度を補強するためのものであれば、特に限定されない。
支持基板12の材質としては特に制限されないが、工業的な入手の容易性の観点より、ガラス、シリコン、合成樹脂、金属等が好適な例として例示される。なかでも、支持基板12としては、ガラス板、シリコンウエハ、合成樹脂板または金属板であることが好ましい。
【0027】
支持基板12の材質としてガラスを採用する場合、その組成は、例えばアルカリ金属酸化物を含有するガラス(ソーダライムガラスなど)、無アルカリガラスなどの種々の組成のガラスを使用できる。中でも、熱収縮率が小さいことから無アルカリガラスであることが好ましい。
ガラス基板16と支持基板12に用いるガラスとの線膨張係数の差は、150×10−7/℃以下であることが好ましく、100×10−7/℃以下であることがより好ましく、50×10−7/℃以下であることがさらに好ましい。ガラス基板16のガラスと支持基板12のガラスとは同一材質のガラスであってもよい。この場合は、両ガラスの線膨張係数の差は0である。
【0028】
支持基板12の材質としてプラスチック(合成樹脂)を採用する場合、その種類は特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアクリル樹脂、各種液晶ポリマー樹脂、シリコーン樹脂などが例示される。
【0029】
支持基板12の材質として金属を採用する場合、その種類は特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、銅などが例示される。
【0030】
支持基板12の耐熱性は特に制限されないが、該支持基板12上にガラス基板16を積層した上で、表示装置用部材のTFTアレイなどを形成する場合は耐熱性が高いことが好ましい。具体的にはその材料サンプルを空気雰囲気下、10℃毎分のスピードで加熱して行った場合の重量減量がサンプル重量の5%を超えるときの温度を、5%加熱重量減温度と定義し、該温度が300℃以上であることが好ましい。更に350℃以上であることがより好ましい。
この場合、耐熱性の点では上記したガラスはどれも当てはまる。
耐熱性の観点より好ましいプラスチック材料としては、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、各種液晶ポリマー樹脂等が例示される。
【0031】
支持基板12の厚さは特に限定されないが、本発明のガラス基板積層体を現行の表示装置用パネルの製造ラインで処理できる厚さであることが好ましい。例えば、現在液晶表示装置に使用されているガラス基板の厚さは主に0.5〜1.2mmの範囲にあり、特に0.7mmが多い。本発明では主にこれよりも薄いガラス基板を使用することを想定している。この際、ガラス基板積層体の厚さが現行のガラス基板と同程度の厚さであれば、現行の製造ラインに容易に適合できる。
例えば、現行の製造ラインが厚さ0.5mmの基板を処理するように設計されたものであって、ガラス基板の厚さが0.1mmである場合、支持基板の厚さと樹脂層の厚さとの和を0.4mmとする。また、現行の製造ラインは厚さが0.7mmのガラス基板を処理するように設計されているものが最も一般的であるが、例えば、ガラス基板の厚さが0.4mmならば、支持基板の厚さと樹脂層の厚さとの和を0.3mmとする。
【0032】
本発明におけるガラス基板は液晶表示装置に限られるものではなく、また本発明は、ガラス基板積層体を現行の表示装置用パネルの製造ラインに適合させることのみを目的とするものではない。したがって、支持基板12の厚さは限定されるものではないが、0.1〜1.1mmの厚さであることが好ましい。さらに、支持基板12の厚さは、ガラス基板16よりも厚いことが好ましい。また、支持基板12がガラス板である場合は、特に0.3mm以上であることが好ましい。支持基板12がガラス板である場合、その厚さは0.3〜0.8mmであることがより好ましく、0.4〜0.7mmであることがさらに好ましい。
【0033】
上述した各種材料で構成される支持基板12の表面は、支持基板としてガラス基板を採用する場合は、研磨処理された研磨面でもよく、または研磨処理されていない非エッチング面(生地面)であってもよい。生産性およびコストの点からは、非エッチング面(生地面)であることが好ましい。
【0034】
支持基板12は第1主面および第2主面を有しており、その形状は限定されないが、矩形であることが好ましい。ここで、矩形とは、実質的に略矩形であり、周辺部の角を切り落とした(コーナーカットした)形状をも含む。
支持基板12の大きさは限定されないが、例えば矩形の場合は100〜2000mm×100〜2000mmであってよく、500〜1000mm×500〜1000mmであることが好ましい。
【0035】
<樹脂層(硬化シリコーン樹脂層)>
本発明に係る樹脂層14は、上述した支持基板12の第1主面上に固定され、ガラス基板16が積層されたガラス基板積層体においては、第1主面および第2主面を有するガラス基板16の第1主面に密着している。ガラス基板16の第1主面と樹脂層14との間の剥離強度は、支持基板12の第1主面と樹脂層14との間の剥離強度よりも低いことが必要である。すなわち、ガラス基板16と支持基板12とを分離する際には、ガラス基板16の第1主面と樹脂層14との界面で剥離し、支持基板12の第1主面と樹脂層14との界面では剥離し難いことが必要である。このため、樹脂層14はガラス基板16の第1主面と密着するが、ガラス基板16を容易に剥離することができる表面特性を有する。すなわち、樹脂層14は、ガラス基板16の第1主面に対してある程度の結合力で結合してガラス基板16の位置ずれなどを防止していると同時に、ガラス基板16を剥離する際には、ガラス基板16を破壊することなく、容易に剥離できる程度の結合力で結合している。本発明では、この樹脂層表面の容易に剥離できる性質を剥離性という。一方、支持基板12の第1主面と樹脂層14とは相対的に剥離しがたい結合力で結合している。
【0036】
本発明のガラス基板積層体30において、樹脂層14とガラス基板16とは粘着剤が有するような粘着力によっては付いておらず、固体分子間におけるファンデルワールス力に起因する力、すなわち、密着力によって付いていることが好ましい。
一方、樹脂層14の上記支持基板12の第1主面に対する結合力は、ガラス基板16の第1主面に対する結合力よりも相対的に高い。本発明ではガラス基板16の第1主面に対する結合を密着といい、支持基板12の第1主面に対する結合を固定という。
また、樹脂層14の柔軟性が高いので、ガラス基板16と樹脂層14との間へ気泡や塵介等の異物が混入しても、ガラス基板16のゆがみ欠陥の発生を抑制することができる。
【0037】
樹脂層14のガラス基板16の第1主面に対する剥離強度を相対的に低くし、樹脂層14の支持基板12の第1主面に対する剥離強度を相対的に高くするために、硬化性シリコーン樹脂組成物を支持基板12の第1主面上で硬化させて硬化シリコーン樹脂からなる樹脂層14を形成し、その後に硬化シリコーン樹脂からなる樹脂層14にガラス基板16を積層して密着させることが好ましい。本発明における硬化シリコーン樹脂は剥離紙などに使用される非粘着性の硬化シリコーン樹脂と同様の樹脂であり、ガラス基板16と密着させても剥離強度は低い。しかし、硬化シリコーン樹脂となる硬化性シリコーン樹脂組成物を支持基板12表面で硬化させると、硬化反応時の支持基板表面との相互作用により接着し、硬化後の硬化シリコーン樹脂と支持基板表面との剥離強度は高くなると考えられる。したがって、ガラス基板16と支持基板12とが同じ材質からなるものであっても、樹脂層と両者間の剥離強度に差を設けることができる。
【0038】
ガラス基板16の第1主面に対する剥離強度と支持基板12の第1主面に対する剥離強度に差を設けた樹脂層14の形成は、上記方法に限られるものではない。例えば、硬化シリコーン樹脂表面に対する密着性がガラス基板16よりも高い材質の支持基板12を用いる場合には、硬化シリコーン樹脂フィルムを介在させてガラス基板16と支持基板12とを同時に積層することができる。また、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化による接着性がガラス基板16に対して充分低くかつその接着性が支持基板12に対して充分高い場合は、ガラス基板16と支持基板12の間で硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させて樹脂層14を形成することができる。支持基板12がガラス基板16と同様のガラス材料からなる場合であっても、支持基板12表面の接着性を高める処理を施して樹脂層14に対する剥離強度を高めることもできる。例えば、ガラス材料からなる支持基板12表面にシラノール基の濃度を高める処理を施して樹脂層14との結合力を高めることができる。
【0039】
付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物は、線状のオルガノアルケニルポリシロキサンと線状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと触媒等の添加剤を含む硬化性の組成物であり、加熱により硬化して硬化シリコーン樹脂となる。本発明における樹脂層14は、具体的には、線状のオルガノアルケニルポリシロキサンである線状オルガノポリシロキサン(a)と特定のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである線状オルガノポリシロキサン(b)とを含有する付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化せしめてなる硬化シリコーン樹脂の層である。一般に、他の硬化性シリコーン樹脂に比較して、付加反応型の硬化性シリコーン樹脂は硬化反応がしやすく、硬化収縮も低く、硬化物の剥離性の程度が良好である。本発明における付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物は、そのうちでも特に剥離強度の経時的変化が少なく、耐熱性が優れている。また、一般に、付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物は形態的に溶剤型、エマルジョン型、および無溶剤型の組成物が使用されている。本発明における硬化性シリコーン樹脂組成物もまたいずれの型の組成物も使用可能である。
【0040】
線状オルガノポリシロキサン(a)と線状オルガノポリシロキサン(b)とを含有する付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物としては、公知のものを使用できる。例えば、特表2005−509711号公報(国際公開番号:WO2003/044084)やその引用文献には、紙やプラスチックフィルム上に撥水性で剥離性のシリコーン膜を形成するための付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物が記載されている。しかしこれら公知の付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物から得られる硬化シリコーン樹脂は、剥離紙などの用途に使用されるものであり、本発明の用途については示唆がない。また、剥離性が高いという効果が本発明の用途と共通するものの、耐熱性等の本発明に要求される効果については示唆するところはない。
以下に樹脂層14の形成に使用される硬化性シリコーン樹脂組成物について詳述する。
【0041】
<線状オルガノポリシロキサン(b)>
本発明における硬化性シリコーン樹脂組成物は線状オルガノポリシロキサン(a)と線状オルガノポリシロキサン(b)とを含む。このうち、線状オルガノポリシロキサン(b)はオルガノハイドロジェンポリシロキサンの1種である。線状オルガノポリシロキサン(b)は、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子あたり少なくとも3個有する線状オルガノポリシロキサンであって、かつ前記ケイ素原子に結合した水素原子の少なくとも1個が分子末端のケイ素原子に存在している線状オルガノポリシロキサンである。
【0042】
一般に、線状のオルガノポリシロキサンの両末端の1官能性単位はM単位と呼ばれ、両末端以外の2官能性の単位はD単位と呼ばれ、n個のD単位を有する線状のオルガノポリシロキサンの構造は、M(D)Mで表される。また、各単位の平均組成を表す場合、M(D)で表されることもある。
本発明における線状オルガノポリシロキサン(b)は、2個のM単位の少なくとも一方にケイ素原子に結合した水素原子が存在していることを特徴とする。より好ましい線状オルガノポリシロキサン(b)は、2個のM単位のそれぞれにケイ素原子に結合した水素原子が存在し、かつn個存在するD単位の一部のD単位にもケイ素原子に結合した水素原子が存在する、線状オルガノポリシロキサンである。また、線状オルガノポリシロキサン(b)は、他の線状オルガノハイドロジェンポリシロキサンと併用することもできる。他の線状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、M単位にケイ素原子に結合した水素原子が存在せず、D単位の一部のみにケイ素原子に結合した水素原子が存在する線状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0043】
線状オルガノポリシロキサン(b)または線状オルガノポリシロキサン(b)と他の線状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの混合物としては、下記式(1)で表される平均組成の線状オルガノポリシロキサンが好ましい。以下、この平均組成式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンをオルガノハイドロジェンポリシロキサン(1)という。
(Mα(Mβ(Dγ(Dδ ・・・(1)
ただし、Mはケイ素原子に結合した水素原子が存在しないM単位、Mはケイ素原子に結合した水素原子が存在するM単位、Dはケイ素原子に結合した水素原子が存在しないD単位、およびDはケイ素原子に結合した水素原子が存在するD単位を表し、αは0以上2未満の数、βは0でない2以下の数でα+β=2、γは0を超える数、δは0以上の数でγ+δ=nである。より好ましいオルガノハイドロジェンポリシロキサン(1)は、αは0以上1未満の数、βは1以上2以下の数、γは1以上の数、δは1以上の数である。なお、国際公開第2007/018028号パンフレットに記載の式(5)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンはβ=0の化合物である。
【0044】
線状オルガノポリシロキサン(b)は、上記式(1)において、βが1以上2以下の数である化合物である。好ましい線状オルガノポリシロキサン(b)は、αが0以上1未満の数、βが1以上2以下の数、γが1以上の数、δが1以上の数である化合物である。
単位はケイ素原子に結合した水素原子を2個または3個有してもよいが、好ましくは1個有する。D単位はケイ素原子に結合した水素原子を2個有してもよいが、好ましくは1個有する。M単位、D単位、好ましいM単位、好ましいD単位は下記式で表されるものであることが好ましい。R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数4以下のアルキル基もしくはフルオロアルキル基またはフェニル基を表す。R〜Rは好ましくはすべてメチル基である。
【0045】
【化3】

【0046】
単位が存在する場合(δが0でない場合)、DとDの存在比であるγ/δは、分子中のケイ素原子に結合した水素原子の密度を表す指標である。この存在比(γ/δ)は、0.2〜30が好ましく、特に0.5〜20が好ましい。この存在比が小さすぎると硬化シリコーン樹脂中に未反応のケイ素原子に結合した水素原子の残存量が多くなることより、硬化シリコーン樹脂のガラス基板に対する剥離強度の経時的変化が大きくなり、また耐熱性の低下をもたらすおそれがある。また、存在比が大きすぎると、硬化シリコーン樹脂の架橋密度が低下するため、耐熱性の低下をもたらすおそれがある。
【0047】
単位とD単位の存在比を表すβ/δは、15≦(β/δ)×1000≦1500であることが好ましい。より好ましくは15≦(β/δ)×1000≦1000であり、特に15≦(β/δ)×1000≦500であることが好ましい。(β/δ)×1000が15よりも小さいと分子量が大きくなり、あるいは官能基の立体障害が大きくなり、反応性が低下することより、硬化シリコーン樹脂のガラス基板に対する剥離強度の経時的変化が大きくなるおそれがある。一方、(β/δ)×1000が1500よりも大きいと、架橋密度が小さくなるため、強度等の物性が充分な硬化シリコーン樹脂が得られないおそれが生じる。
【0048】
前記式(1)はオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおけるオルガノシロキサン単位の平均の組成を示すものであり、線状オルガノポリシロキサン(b)の個々の分子は、αは0または1である整数、βは1または2である整数でα+β=2、γは1以上の整数、δは0以上の整数である。
線状オルガノポリシロキサン(b)以外のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの個々の分子は、αが2、βが0、γは0以上の整数、δが1以上の整数であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。なお、これら分子においてDとDがいずれも多数存在する場合、DとDの配列はランダム共重合鎖構造であってもブロック共重合鎖構造であってもよい。通常は環状シロキサンの開環重合で共重合鎖が形成されることより、開環した環状シロキサンのブロックがランダムに共重合した構造を有すると考えられる。
【0049】
前記のように線状オルガノポリシロキサン(b)としては個々の分子が線状オルガノポリシロキサン(b)であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンばかりでなく、線状オルガノポリシロキサン(b)と他のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの混合物(その平均組成が前記式(1)で表されるもの)であってもよい。その場合、使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの全モル数のうち、線状オルガノポリシロキサン(b)は20モル%以上含まれることが好ましい。20モル%未満であると、ケイ素原子に結合した水素原子が残存し易くなり、経時的に樹脂層14/ガラス基板16界面の剥離強度が上昇しやすく好ましくない。硬化シリコーン樹脂の耐熱性および樹脂層14とガラス基板との剥離強度の経時安定性がより優れる点で、線状オルガノポリシロキサン(b)の含有量は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。
【0050】
<線状オルガノポリシロキサン(a)>
本発明における硬化性シリコーン樹脂組成物は、線状オルガノポリシロキサン(b)と反応する線状オルガノポリシロキサン(a)を含む。線状オルガノポリシロキサン(a)は、アルケニル基を1分子あたり少なくとも2個有する線状オルガノポリシロキサンである。なお、アルケニル基を有する線状オルガノポリシロキサンを、以下オルガノアルケニルポリシロキサンともいう。
【0051】
アルケニル基としては特に限定されないが、例えば、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2−プロペニル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキシニル基、などが挙げられ、中でも耐熱性に優れる点から、ビニル基が好ましい。
【0052】
線状オルガノポリシロキサン(a)において、アルケニル基はM単位またはD単位に存在し、M単位とD単位の両方に存在していてもよい。硬化速度の点から、少なくともM単位に存在していることが好ましく、2個のM単位の両方に存在していることが好ましい。また、M単位のみにアルケニル基を有するオルガノアルケニルポリシロキサンは、それが高分子量になるほど1分子あたりのアルケニル基濃度が低くなり硬化シリコーン樹脂の架橋密度が低下するため、耐熱性の低下をもたらすおそれがあることより、M単位とともにD単位の一部にもアルケニル基を有していることが好ましい。
【0053】
線状オルガノポリシロキサン(a)としては、下記式(2)で表される平均組成の線状オルガノポリシロキサンが好ましい。
(M(M(D(D ・・・(2)
ただし、Mはアルケニル基を有しないM単位(前記M単位と同じ)、Mはケイ素原子に結合したアルケニル基を有するM単位、Dはアルケニル基を有しないD単位(前記D単位と同じ)、およびDはケイ素原子に結合したアルケニル基を有するD単位を表し、aは0〜2の数、bは0〜2の数でa+b=2、cは0以上の数、dは0以上の数でc+d=nである(ただし、b+dは2以上)。より好ましい式(2)で表されるオルガノアルケニルポリシロキサンは、aが0以上1未満の数、bは1以上2以下の数、cは1以上の数、dは1以上の数である。
【0054】
単位はケイ素原子に結合したアルケニル基を2個または3個有してもよいが、好ましくは1個有する。D単位はケイ素原子に結合したアルケニル基を2個有してもよいが、好ましくは1個有する。アルケニル基としてはビニル基が好ましい。M単位、D単位、好ましいM単位、好ましいD単位は下記式で表されるものであることが好ましい。R〜Rは、それぞれ独立に、前記と同様に炭素数4以下のアルキル基もしくはフルオロアルキル基またはフェニル基を表す。R〜Rは好ましくはすべてメチル基である。
【0055】
【化4】

【0056】
前記式(2)はオルガノアルケニルポリシロキサンにおけるオルガノシロキサン単位の平均の組成を示すものであり、線状オルガノポリシロキサン(a)の個々の分子は、aは0または1である整数、bは1または2である整数でa+b=2、cは1以上の整数、dは0以上の整数である。線状オルガノポリシロキサン(a)は1分子あたりアルケニル基を2個以上有することより、b+dが2以上である。オルガノアルケニルポリシロキサン(a)は他のオルガノアルケニルポリシロキサンとの混合物であってもよいが、通常オルガノアルケニルポリシロキサン(a)のみが使用される。ただし、オルガノアルケニルポリシロキサン(a)は2種以上のオルガノアルケニルポリシロキサン(a)混合物であってもよい。なお、異なるLa値を示す2種のオルガノアルケニルポリシロキサンを併用すると、より有利な効果が得られる。
また、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの場合と同様に、前記式(2)はオルガノアルケニルポリシロキサンにおいてDとDがいずれも多数存在する場合、DとDの配列はランダム共重合鎖構造であってもブロック共重合鎖構造であってもよい。なお、オルガノアルケニルポリシロキサン(a)としては国際公開第2007/018028号パンフレットに記載の式(3)や同式(4)で表されるオルガノアルケニルポリシロキサンを使用できる。
【0057】
オルガノアルケニルポリシロキサン(a)の重量平均分子量Mwは、1,000≦Mw≦5,000,000の範囲にあることが好ましい。より好ましいMwは、2,000≦Mw≦3,000,000であり、さらに好ましくは、3,000≦Mw≦1,000,000である。Mwがこの範囲とすることにより、加熱硬化時に揮散することがなくなり、また、高粘度となりすぎず作業性が良好となる。
さらに、オルガノアルケニルポリシロキサン(a)の100グラムあたりのアルケニル基の当量数Laで表して、0.001≦La≦1.0の範囲にあることが好ましい。より好ましいLaは0.0015≦La≦0.9であり、さらに好ましくは0.002≦La≦0.9である。Laをこの範囲とすることにより、硬化シリコーン樹脂の耐熱性が良好となり、また硬化シリコーン樹脂の層とガラス基板との剥離強度の経時安定性が向上する。
【0058】
硬化性シリコーン樹脂組成物における線状オルガノポリシロキサン(a)と線状オルガノポリシロキサン(b)との含有比率は特に限定されないが、線状オルガノポリシロキサン(b)中のケイ素原子に結合した水素原子と、線状オルガノポリシロキサン(a)中の全アルケニル基のモル比(水素原子/アルケニル基)が0.7〜1.05となるように調整することが好ましい。なかでも、0.8〜1.0となるように含有比率を調整することが好ましい。ケイ素原子に結合した水素原子とアルケニル基とのモル比が1.05を超える場合には、硬化シリコーン樹脂の長期間放置後の剥離力が上昇しやすく、剥離性が十分でない可能性がある。特に、LCDなどを製造する場合には、ガラス基板を積層後、かなりの期間経ってから支持体を剥離する場合が多く、長期間放置後の剥離性は大きな問題となる。また、ケイ素原子に結合した水素原子とアルケニル基のモル比が0.7未満である場合には、硬化シリコーン樹脂の架橋密度が低下するため、耐薬品性等に問題が生じる可能性がある。
【0059】
ケイ素原子に結合した水素原子とアルケニル基のモル比が1.05を超える場合に長期間放置後の剥離力が上昇する原因は明らかではないが、長期間放置により、積層体端部より空気中の水分徐々に浸入し、硬化シリコーン樹脂中の未反応のヒドロシリル基(Si−H基)が加水分解され、ガラス基板表面のシラノール基との間でなんらかの反応が関与しているものと考えられる。従って、樹脂層14中には、実質的に未反応のケイ素原子に結合した水素原子が残存していないことが好ましい。
【0060】
<その他構成成分>
本発明における硬化性シリコーン樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤が含有されていてもよい。添加剤として、通常、ケイ素原子に結合した水素原子とアルケニル基の反応を促進する触媒(付加反応用触媒)を使用することが好ましい。この触媒としては白金族金属系触媒を用いることが好ましい。白金族金属系触媒としては、白金系、パラジウム系、ロジウム系などの触媒が挙げられ、特に白金系触媒として用いることが経済性、反応性の点から好ましい。白金系触媒としては、公知のものを用いることができる。具体的には、白金微粉末、白金黒、塩化第一白金酸、塩化第二白金酸などの塩化白金酸、四塩化白金、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、あるいは白金のオレフィン錯体、アルケニルシロキサン錯体、カルボニル錯体などがあげられる。
触媒は、線状オルガノポリシロキサン(a)と線状オルガノポリシロキサン(b)との合計質量に対する質量比で、2〜400ppmが好ましい。より好ましくは、5〜300ppm、さらに好ましくは8〜200ppmである。
【0061】
本発明における硬化性シリコーン樹脂組成物には、さらに、触媒とともに触媒活性を調整する目的で触媒活性を抑制する作用のある活性抑制剤(反応抑制剤、遅延剤等とも呼ばれる化合物)を併用することが好ましい。活性抑制剤としては、例えば、各種有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物などが挙げられる。さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、各種シリカ、炭酸カルシウム、酸化鉄などの無機フィラーなどを含有していてもよい。
また、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレンなどの有機溶媒や水などの分散媒は、硬化シリコーン樹脂を構成しない成分であるが、硬化性シリコーン樹脂組成物の塗布のための作業性向上などの目的で本発明における硬化性シリコーン樹脂組成物に配合して使用することができる。
【0062】
<樹脂層の形成>
前記のように、硬化性シリコーン樹脂組成物を支持基板12の第1主面上で硬化させて硬化シリコーン樹脂からなる樹脂層14を形成することが好ましい。そのために、硬化性シリコーン樹脂組成物を支持基板の片面に塗布して硬化性シリコーン樹脂組成物の層を形成し、次いで硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させて硬化シリコーン樹脂層を形成する。硬化性シリコーン樹脂組成物の層の形成は、硬化性シリコーン樹脂組成物が流動性の組成物の場合はそのまま塗布し、硬化性シリコーン樹脂組成物が流動性の低い組成物や流動性のない組成物の場合は、有機溶剤を配合して塗布する。また、硬化性シリコーン樹脂組成物の乳化液や分散液などを使用することもできる。有機溶剤などの揮発性成分を含む塗膜は、次いでその揮発性成分を蒸発除去して硬化性シリコーン樹脂組成物の層とする。硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化は、揮発性成分の蒸発除去と連続して行うことができる。
【0063】
硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化は上記方法に限られるものではない。例えば、硬化性シリコーン樹脂組成物を何らかの剥離性表面上で硬化して硬化シリコーン樹脂のフィルムを製造し、このフィルムを支持基板と積層して支持体を製造することができる。また、
硬化性シリコーン樹脂組成物が揮発性成分を含まない場合、上記のように、ガラス基板16と支持基板12の間に挟持して硬化させることができる。
【0064】
硬化性シリコーン樹脂組成物を支持基板の片面に塗布して硬化性シリコーン樹脂組成物の層を形成する場合、塗布方法は特に限定されず、従来公知の方法が挙げられる。公知の方法としては、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法が挙げられる。このような方法の中から、組成物の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、硬化性シリコーン樹脂組成物に揮発性成分を配合していない場合、ダイコート法、スピンコート法またはスクリーン印刷法が好ましい。溶剤などの揮発性成分を配合した組成物の場合、硬化前に加熱等で揮発性成分を除去してから硬化させる。
【0065】
硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させる条件としては、使用されるオルガノポリシロキサンなどの種類によって異なり、適宜最適な条件が選択される。通常、加熱温度としては50〜300℃が好ましく、処理時間としては5〜300分が好ましい。
より具体的な加熱硬化条件は、触媒の配合量によっても異なるが、例えば、硬化性シリコーン樹脂組成物中に含まれる樹脂合計量100質量部に対して、白金系触媒を2質量部配合した場合、大気中で50℃〜300℃、好ましくは100℃〜270℃で反応させて硬化させる。また、この場合の反応時間は5〜180分間、好ましくは60〜120分間とする。
【0066】
樹脂層が低シリコーン移行性を有していれば、ガラス基板を剥離した際に、樹脂層中の成分がガラス基板に移行しにくい。低シリコーン移行性を有する樹脂層とするためには、樹脂層中に未反応のシリコーン成分が残らないように硬化反応をできるだけ進行させることが好ましい。上記のような反応温度および反応時間であると、樹脂層中に未反応のオルガノシリコーン成分が実質的に残らないようにすることができるので好ましい。上記した反応時間よりも長すぎたり、反応温度が高すぎたりする場合には、オルガノシリコーン成分や硬化シリコーン樹脂の酸化分解が同時に起こり低分子量のオルガノシリコーン成分が生成して、シリコーン移行性が高くなる可能性がある。樹脂層中に未反応のオルガノシリコーン成分が残らないように硬化反応をできるだけ進行させることは、加熱処理後の剥離性を良好にするためにも好ましい。
【0067】
なお、樹脂層と支持基板との高い固定力(高い剥離強度)を付与するために、支持基板表面に表面改質処理(プライミング処理)を行ってもよい。例えば、シランカップリング剤のような化学的に固定力を向上させる化学的方法(プライマー処理)や、フレーム(火炎)処理のように表面活性基を増加させる物理的方法、サンドブラスト処理のように表面の粗度を増加させることにより引っかかりを増加させる機械的処理方法などが例示される。
【0068】
上記硬化シリコーン樹脂からなる樹脂層14の厚さは特に限定されず、ガラス基板16の種類などにより適宜最適な厚さが選択される。なかでも、5〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましく、7〜20μmであることがさらに好ましい。樹脂層の厚さがこのような範囲であると、ガラス基板16表面と樹脂層14との密着がより良好となる。また、気泡や異物が介在しても、ガラス基板16のゆがみ欠陥の発生をより抑制することができる。また、樹脂層14の厚さが厚すぎると、形成するのに時間および材料を要するため経済的ではない。
なお、樹脂層14は2層以上からなっていてもよい。この場合「樹脂層の厚さ」は全ての層の合計の厚さを意味するものとする。
また、樹脂層14が2層以上からなる場合は、各々の層を形成する樹脂の種類が異なってもよい。
【0069】
樹脂層14は、その剥離性表面の表面張力が30mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以下であることがより好ましく、22mN/m以下であることがさらに好ましい。下限については特に限定はないが、15mN/m以上であることが好ましい。
このような表面張力であると、より容易にガラス基板16表面と剥離することができ、同時にガラス基板表面との密着も十分になる。
【0070】
樹脂層14はガラス転移点が室温(25℃程度)よりも低い、またはガラス転移点を有しない材料からなることが好ましい。上記のようなガラス転移点であれば、非粘着性を維持しながら適度な弾力性も併せ持つ事が出来、より容易にガラス基板16表面と剥離することができ、同時にガラス基板表面との密着も十分になるからである。
【0071】
また、樹脂層14は優れた耐熱性を有していることが好ましい。例えば、ガラス基板16の第2主面上に表示装置用パネルの構成部材18を形成する場合に、本発明のガラス基板積層体30を高温条件下の熱処理に供し得るからである。本発明における前記硬化シリコーン樹脂はこの熱処理に耐える充分な耐熱性を有する。
より具体的には、本発明における前記硬化シリコーン樹脂からなる樹脂層14の熱分解開始温度は、ガラス基板積層状態で400℃以上とすることができる。この耐熱温度は、420℃以上がより好ましく、430℃〜450℃が特に好ましい。上記範囲内であれば、TFTアレイの製造プロセスなど高温条件(約400℃以上)下においても樹脂層の分解が抑制され、ガラス基板積層体中の発泡の発生などがより抑制される。
【0072】
なお、熱分解開始温度は、次の測定方法で表される。
50mm角の支持基板(厚さ=約0.4〜0.6mm)上に樹脂層(厚さ=約15〜20μm)を形成し、同じく50mm角のガラス基板(厚さ=約0.1〜0.4mm)をさらに積層した物を評価サンプルとする。そして、該サンプルを300℃に加熱したホットプレートに載置し、10℃毎分の昇温スピードで加熱し、サンプル内に発泡現象が確認された温度を熱分解開始温度と定義する。
【0073】
また、樹脂層14の弾性率が高すぎるとガラス基板16表面との密着性が低くなる傾向にある。一方、弾性率が低すぎると剥離性が低くなることがある。本発明における硬化シリコーン樹脂はこの要求性能を満たす弾性率を有する。
【0074】
<支持体>
本発明に係る支持体20は、図示例においては、上記した支持基板12と樹脂層14とから構成される。樹脂層14表面は良好な剥離性能を示すため、その上の積層されたガラス基板を破壊することなく剥離することができる。そのため、ガラス基板を支持するための支持体として好適に使用できる。また、他の用途としては、有機EL照明用ガラス基板の支持体などが挙げられる。
【0075】
<ガラス基板>
ガラス基板16は、その上に後述する表示装置用パネルの構成部材18を形成して、表示装置用パネルを製造するためのガラス基板である。
本発明で使用されるガラス基板16の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法で製造することができる。例えば、従来公知のガラス原料を溶解し溶融ガラスとした後、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法、リドロー法、引き上げ法等によって板状に成形して得ることができる。また、市販品を用いることもできる。
【0076】
ガラス基板16の厚さ、形状、大きさ、物性(熱収縮率、表面形状、耐薬品性等)、組成等は特に限定されず、例えば、従来のLCD、OLED等の表示装置用のガラス基板と同様であってよい。
【0077】
ガラス基板16の厚さは特に限定されないが、0.7mm未満であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.4mm以下であることがさらに好ましい。また、0.05mm以上であることが好ましく、0.07mm以上であることがより好ましく、0.1mm以上であることがさらに好ましい。
【0078】
ガラス基板16は第1主面および第2主面を有しており、その形状は限定されないが、矩形であることが好ましい。ここで、矩形とは、実質的に略矩形であり、周辺部の角を切り落とした(コーナーカットした)形状をも含む。
【0079】
ガラス基板16の大きさは限定されないが、例えば、矩形の場合は100〜2000mm×100〜2000mmであってよく、500〜1000mm×500〜1000mmであることが好ましい。
【0080】
このような好ましい厚さおよび好ましい大きさであれば、本発明のガラス基板積層体30はガラス基板16と支持体20とを容易に剥離することができる。
【0081】
ガラス基板16の熱収縮率、表面形状、耐薬品性等の特性も特に限定されず、製造する表示装置用パネルの種類により異なる。
ただし、ガラス基板16の熱収縮率は小さいことが好ましい。具体的には熱収縮率の指標である線膨張係数が150×10−7/℃以下であることが好ましく、100×10−7/℃以下であることがより好ましく、45×10−7/℃以下であることがさらに好ましい。その理由としては、熱収縮率が大きいと高精細な表示装置を作り難くなるためである。
なお、本発明において線膨張係数はJIS R3102(1995年)に規定のものを意味する。
ガラス基板16は、例えば、アルカリガラスや無アルカリガラスなどからなる。中でも、熱収縮率が小さいことから無アルカリガラスであることが好ましい。
【0082】
上述したガラス基板16の表面は、研磨処理された研磨面でもよく、または研磨処理されていない非エッチング面(生地面)であってもよい。すなわち、作製する表示パネルの要求精度に応じて平坦性を満たす物を適宜選択すればよい。
【0083】
<ガラス基板積層体>
本発明に係るガラス基板積層体30は、図示例においては、上記した支持基板12、樹脂層14、ガラス基板16から構成される。
上述したように、樹脂層14は剥離性表面を有し、ガラス基板16や表示装置用パネル40(表示装置用パネルの構成部材18が形成されたガラス基板16)を容易に剥離することができる。より具体的には、樹脂層14表面とガラス基板16表面との間の剥離強度が、8.5N/25mm以下であることが好ましく、7.8N/25mm以下がより好ましく、4.5N/25mm以下が特に好ましい。上記強度内であれば、剥離時の樹脂層の破壊や、ガラス基板等の破壊などが起こりにくく、好ましい。下限については、ガラス基板が樹脂層上で位置ずれを起こさない程度の密着力を有していればよく、通常は1.0N/25mm以上であることが好ましい。
なお、後述する実施例欄で示す密着性の指標である密着強度の経時安定性評価後の剥離強度も、上記範囲内であることが好ましい。
【0084】
樹脂層表面とガラス基板表面との間の剥離強度は、次の測定方法により表される。
25×50mm角の支持基板(厚さ=約0.4〜0.6mm)上の全面に樹脂層(厚さ=約15〜20μm)を形成し、25×75mm角のガラス基板(厚さ=約0.1〜0.4mm)を積層した物を評価サンプルとする。そして、該サンプルの支持基板の非吸着面を両面テープで台の端に固定したうえで、はみ出しているガラス基板(25×25mm)の中央部を、デジタルフォースゲージを用いて垂直に突き上げ、剥離強度を測定する。
【0085】
一方、樹脂層14表面と支持基板12表面との間の剥離強度は、9.8N/25mm以上であることが好ましく、14.7N/25mm以上がより好ましく、19.6N/25mm以上が特に好ましい。上記剥離強度を有する場合、ガラス基板等を樹脂層から剥離する時にこの支持基板と樹脂層の剥離は起こり難く、ガラス基板積層体からガラス基板等と支持体(支持基板と樹脂層の積層体)とに容易に分離することができる。上記のように、支持基板上で硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させることで、この剥離強度を容易に達成することができる。また、樹脂層14表面と支持基板12表面との間の剥離強度があまりに高すぎると、支持基板の再利用等のために支持基板と樹脂層の剥離が必要となった際に、その剥離が困難になるおそれがある。したがって、樹脂層14表面と支持基板12表面との間の剥離強度は29.4N/25mm以下が好ましい。
また、樹脂層14表面と支持基板12表面との間の剥離強度は、樹脂層14表面とガラス基板16表面との間の剥離強度よりも、10N/25mm以上高いことが好ましく、15N/25mm以上高いことが好ましい。
【0086】
<ガラス基板積層体の製造方法>
ガラス基板積層体の製造は、前記支持体の樹脂層14の表面にガラス基板を積層する方法(積層方法)が好ましい。しかし、ガラス基板積層体の製造方法は、この積層方法に限られるものではないことは、前述の通りである。積層方法では、ガラス基板の第1主面と樹脂層の剥離性表面とは、非常に近接した、相対する固体分子間におけるファンデルワールス力に起因する力、すなわち、密着力によって結合させることができると考えられる。したがって、この場合、支持基板とガラス基板とを樹脂層を介して積層させた状態に保持することができる。以下、前記支持体の樹脂層の表面にガラス基板を積層する方法によるガラス基板積層体の製造方法を説明する。
【0087】
支持基板に固定された樹脂層の表面にガラス基板を積層させる方法は特に限定されず、公知の方法を用いて実施することができる。例えば、常圧環境下で樹脂層の表面にガラス基板を重ねた後、加圧チャンバーを用いた非接触圧着方法、ロールやプレスを用いて樹脂層とガラス基板とを圧着させる方法などが挙げられる。加圧チャンバー、ロール、プレスなどで圧着することにより、樹脂層とガラス基板とがより密着するので好ましい。また、気体による加圧、およびロールまたはプレスによる圧着により、樹脂層とガラス基板との間に混入している気泡が比較的容易に除去されるので好ましい。真空ラミネート法や真空プレス法により圧着すると、気泡の混入の抑制や良好な密着の確保がより良好に行われるのでより好ましい。真空下で圧着することにより、微少な気泡が残存した場合でも加熱により気泡が成長することがなく、ガラス基板のゆがみ欠陥につながりにくいという利点もある。
【0088】
支持体とガラス基板とを積層させる際には、ガラス基板の表面を十分に洗浄し、クリーン度の高い環境で積層することが好ましい。樹脂層とガラス基板との間に異物が混入しても、樹脂層が変形するのでガラス基板の表面の平坦性に影響を与えることはないが、クリーン度が高いほどその平坦性は良好となるので好ましい。
【0089】
<表示装置用パネルの構成部材>
本発明において、表示装置用パネルの構成部材18とは、ガラス基板を使用したLCD、OLED等の表示装置において、ガラス基板上に形成された部材やその一部をいう。例えば、LCD、OLED等の表示装置においては、ガラス基板の表面にTFTアレイ(以下、単に「アレイ」という。)、保護層、カラーフィルタ、液晶、ITOからなる透明電極等、各種回路パターン等の部材、またはこれらを組み合わせたものが形成される。また、例えば、OLEDからなる表示装置においては、ガラス基板上に形成された透明電極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層等が挙げられる。ガラス基板と構成部材18からなる表示装置用パネル40は、上記部材の少なくとも一部が形成されたガラス基板である。したがって、例えば、アレイが形成されたガラス基板や透明電極が形成されたガラス基板が表示装置用パネル40である。
【0090】
<支持体付き表示装置用パネル>
支持体付き表示装置用パネル10は、図示例においては、支持基板12、樹脂層14、ガラス基板16、表示装置用パネルの構成部材18から構成される。
なお、支持体付き表示装置用パネル10には、例えば、アレイがガラス基板の第2主面に形成された支持体付き表示装置用パネルのアレイ形成面と、カラーフィルタがガラス基板の第2主面に形成された他の支持体付き表示装置用パネルのカラーフィルタ形成面とを、シール材等を介して貼り合わされた形態も含まれる。
【0091】
また、このような支持体付き表示装置用パネル10から、表示装置用パネル40を得ることができる。つまり、支持体付き表示装置用パネル10から、ガラス基板16と支持基板12に固定されている樹脂層14とを剥離して、表示装置用パネルの構成部材18およびガラス基板16を有する表示装置用パネル40を得ることができる。
また、このような表示装置用パネルから表示装置を得ることができる。表示装置としてはLCD、OLEDが挙げられる。LCDとしてはTN型、STN型、FE型、TFT型、MIM型が挙げられる。
【0092】
<支持体付き表示装置用パネルの製造方法>
上述した支持体付き表示装置用パネルの製造方法は特に限定されないが、上記したガラス基板積層体のガラス基板表面上に、表示装置用パネルの構成部材の少なくとも一部を形成することが好ましい。
【0093】
ガラス基板積層体のガラス基板表面上に、表示装置用パネルの構成部材の少なくとも一部を形成する方法は特に限定されず、表示装置用パネルの構成部材の種類に応じて従来公知の方法が実施される。
例えば、OLEDを製造する場合を例にとると、ガラス基板積層体のガラス基板の第2主面上に有機EL構造体を形成するために、ガラス基板の第2主面上透明電極を形成する、さらに透明電極を形成した面上にホール注入層・ホール輸送層・発光層・電子輸送層等を蒸着する、裏面電極を形成する、封止板を用いて封止する、等の各種の層形成や処理が行われる。これらの層形成や処理として、具体的には、例えば、成膜処理、蒸着処理、封止板の接着処理等が挙げられる。これら構成部材の形成は、表示装置用パネルに必要な全構成部材の形成の一部であってもよい。その場合、その一部の構成部材を形成したガラス基板を樹脂層から剥離した後、残りの構成部材をガラス基板上に形成して表示装置用パネルを製造する。
【0094】
<表示装置用パネルの製造方法>
上述した支持体付き表示装置用パネルを得た後、さらに、支持体付き表示装置用パネルにおけるガラス基板の第1主面と樹脂層の剥離性表面とを剥離して、表示装置用パネルを得ることができる。上記のように、剥離時のガラス基板上の構成部材が表示装置用パネルに必要な全構成部材の形成の一部である場合には、その後残りの構成部材をガラス基板上に形成して表示装置用パネルを製造する。
【0095】
ガラス基板の第1主面と樹脂層の剥離性表面とを剥離する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、ガラス基板と樹脂層との界面に鋭利な刃物状のものを差し込み、剥離のきっかけを与えた上で、水と圧縮空気との混合流体を吹き付けたりして剥離することができる。好ましくは、支持体付き表示装置用パネルの支持基板が上側、パネル側が下側となるように定盤上に設置し、パネル側基板を定盤上に真空吸着し(両面に支持基板が積層されている場合は順次行う)、この状態でまず刃物をガラス基板−樹脂層界面に刃物を侵入させる。そして、その後に支持基板側を複数の真空吸着パッドで吸着し、刃物を差し込んだ箇所付近から順に真空吸着パッドを上昇させる。そうすると樹脂層とパネル側ガラス基板との界面へ空気層が形成され、その空気層が界面の全面に広がり、支持基板を容易に剥離することができる(支持体付き表示装置用パネルの両面に支持基板が積層されている場合は、上記剥離工程を片面ずつ繰り返す)。
【0096】
また、上述した表示装置用パネルを得た後、さらに、得られた表示装置用パネルを用いて表示装置を製造することができる。ここで表示装置を得る操作は特に限定されず、例えば、従来公知の方法で表示装置を製造することができる。
【0097】
例えば、表示装置としてTFT−LCDを製造する場合、従来公知のガラス基板上にアレイを形成する工程、カラーフィルタを形成する工程、アレイが形成されたガラス基板とカラーフィルタが形成されたガラス基板とをシール材等を介して貼り合わせる工程(アレイ・カラーフィルタ貼り合わせ工程)等の各種工程と同様であってよい。より具体的には、これらの工程で実施される処理として、例えば、純水洗浄、乾燥、成膜、レジスト液塗布、露光、現像、エッチングおよびレジスト除去が挙げられる。さらに、アレイ・カラーフィルタ貼り合わせ工程を実施した後に行われる工程として、液晶注入工程および該処理の実施後に行われる注入口の封止工程があり、これらの工程で実施される処理が挙げられる。
【実施例】
【0098】
以下に示す実施例において作製されるガラス基板積層体に関して、次に示す項目の評価を行った。
【0099】
[剥離性評価]
ガラス基板積層体を10組用意し、ガラス基板の第2主面を定盤に真空吸着させたうえで、ガラス基板積層体の1つのコーナー部のガラス基板と樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、上記ガラス基板の第1主面と上記樹脂層の剥離性表面との剥離のきっかけを与えた。そして、ガラス基板積層体の支持基板の第2主面を90mmピッチで複数の真空吸着パッドで吸着した上で、上記コーナー部に近い吸着パッドから順に上昇させることにより、ガラス基板の第1主面と樹脂層の剥離性表面とを剥離した。この処理を用意した10組のガラス基板積層体に対して連続して10回行い、何組の積層体がガラスの割れや吸着層の破壊なく剥離できたかを評価した。
【0100】
[耐熱性評価]
ガラス基板積層体から50mm角のサンプルを切り出し、このサンプルを300℃に加熱したホットプレートに載置し、10℃毎分の昇温スピードで加熱し、サンプル内に発泡現象が確認された温度を熱分解開始温度と定義し、この温度の高低をもって評価した。
【0101】
[密着強度の経時安定性評価]
ガラス基板積層体の長期間放置状態で進行する樹脂層中の残存ヒドロシリル基の加水分解現象を短期間で再現するために、高温・高湿度下に曝し、その後改めて高温に曝す事で、耐久性(経時安定性)を評価した。
具体的にはガラス基板積層体から25×75mm角のサンプルを切り出し、このサンプルの支持基板側のみ25×25mm角を切り取った物を評価サンプルとした。この評価サンプルを80℃、95%相対湿度に保たれた恒温・恒湿オーブン内で20時間保持した後、210℃に保たれた恒温オーブンで更に4時間保持した。そして、常温に冷却した後、評価サンプルの支持基板の非吸着面を両面テープで台の端に固定したうえで、はみ出している薄板ガラス基板(25×25mm)の中央部を、デジタルフォースゲージを用いて垂直に突き上げ、剥離モードおよび剥離強度を測定した。
一方、別に評価サンプルを用意し、上記試験を行わずに剥離モードおよび剥離強度を測定し、初期値として記録しておいた。
【0102】
(合成例1)オルガノハイドロジェンシロキサンAの合成
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン5.4g、テトラメチルシクロテトラシロキサン96.2g、オクタメチルシクロテトラシロキサン118.6gの混合物を5℃に冷却し、撹拌しながら濃硫酸11.0gをゆっくり加えた後、さらに水3.3gを1時間かけて滴下した。温度を10〜20℃に保ちながら8時間撹拌した後トルエンを加え、シロキサン層が中性になるまで水洗および廃酸分離を行った。中性になったシロキサン層を減圧加熱濃縮してトルエン等の低沸点留分を除去し、下記式(6)において、k=40、l=40のオルガノハイドロジェンシロキサンAを得た。
【0103】
【化5】

【0104】
(合成例2)オルガノハイドロジェンシロキサンBの合成
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン5.4g、テトラメチルシクロテトラシロキサン19.2g、オクタメチルシクロテトラシロキサン296.6gを原料として用いる他は、合成例1と同じ方法で、上記式(6)において、k=100、l=8のオルガノハイドロジェンシロキサンBを得た。
【0105】
(比較合成例1)オルガノハイドロジェンシロキサンCの合成
ヘキサメチルジシロキサン6.5g、テトラメチルシクロテトラシロキサン192.4gを原料として用いる他は、合成例1と同じ方法で、下記式(7)において、a=0、b=80のオルガノハイドロジェンシロキサンCを得た。
【0106】
【化6】

【0107】
(合成例3)アルケニル基含有シロキサンDの合成
1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン3.7g、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン41.4g、オクタメチルシクロテトラシロキサン355.9gに水酸化カリウムのシリコネートをSi/K=20000/1(mol比)量加え、窒素雰囲気化で150℃、6時間平衡化反応させた後、エチレンクロロヒドリンをKに対して2mol量添加し、120℃、2時間中和した。その後、160℃、666Paで6時間加熱バブリング処理して揮発分をカットして、100gあたりのアルケニル当量数La=0.9、Mw:26,000のアルケニル基含有シロキサンDを得た。
【0108】
(合成例4)アルケニル基含有シロキサンEの合成
1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン1.9g、オクタメチルシクロテトラシロキサン889.8gを原料として用いる他は、合成例3と同じ方法で、100gあたりのアルケニル当量数La=0.002、Mw:91,000のアルケニル基含有シロキサンEを得た。
【0109】
(実施例1)
初めに縦280mm、横280mm、板厚0.5mm、線膨張係数480×10−7/℃、5%重量減温度560℃のポリイミド樹脂シート(宇部興産社製ユーピレックスADシートAD110)を支持基板として用意し、純水洗浄、UV洗浄して表面を清浄化した。
次に、リモートプラズマ法にて表面を活性化処理した後、オルガノハイドロジェンシロキサンAとアルケニル基含有シロキサンDを、全アルケニル基と全ケイ素原子に結合した水素原子とのモル比(水素原子/アルケニル基)が0.9となるように混合し、このシロキサン混合物100質量部に、下記式(8)で示されるアセチレン系不飽和基を有するケイ素化合物1質量部を混合し、白金金属濃度が100ppmとなるように白金系触媒を加えて、硬化性シリコーン樹脂組成物を得た。この組成物を、支持基板の第1主面上に縦278mm、横278mmの大きさで、スクリーン印刷にて塗工した(塗工量15g/m)。さらに、210℃にて60分間大気中で加熱硬化して、厚さ15μmの硬化シリコーン樹脂層を形成し、支持体Aを得た。なお、支持体Aのシリコーン樹脂層の表面張力は20.5N/mであった。
HC≡C−C(CH−O−Si(CH (8)
【0110】
支持体Aの硬化シリコーン樹脂層の剥離性表面と該硬化シリコーン樹脂層と同じサイズで厚さ0.4mmのガラス基板(「AN100」。線膨張係数38×10−7/℃の無アルカリガラス板:旭硝子株式会社製)の第1主面とを、室温下、真空重ね合わせ装置にて両基板の重心が重なるように重ね合わせ、そして、加圧チャンバー内で0.49MPa×5分間静置し、ガラス基板積層体A(本発明のガラス基板積層体)を得た。
【0111】
ガラス基板積層体Aについて上記再剥離性評価、耐熱性評価、密着強度の経時安定性評価を実施した。なお、ガラス基板と硬化シリコーン樹脂層との間で剥離が進行する再剥離性試験の結果より、ガラス基板と硬化シリコーン樹脂層との間の剥離強度は、支持基板と硬化シリコーン樹脂層との間の剥離強度よりも低いことが確認された。
再剥離性:10/10(10組すべてが剥離可能)
耐熱性(熱分解開始温度):430℃
密着強度の経時安定性:初期値=2.9N/25mm、加速後=3.2N/25mm
【0112】
(実施例2)
初めに縦720mm、横600mm、板厚0.4mm、線膨張係数38×10−7/℃のガラス板(「AN100」。旭硝子株式会社製)を支持基板として用意し、純水洗浄、UV洗浄して表面を清浄化した。
次に、オルガノハイドロジェンシロキサンBとアルケニル基含有シロキサンDを、全アルケニル基と全ケイ素原子に結合した水素原子とのモル比(水素原子/アルケニル基)が0.9となるように混合し、さらにそのシロキサン混合物とn−ヘプタンとを1/1の重量比で混合して、シロキサン混合物の溶液を得た。溶液中のシロキサン混合物100質量部に対して、前記式(8)で示されるアセチレン系不飽和基を有するケイ素化合物1質量部を混合し、白金金属濃度が100ppmとなるように白金系触媒を加えて、付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物の溶液を得た。
この溶液を、支持基板の第1主面上に縦718mm、横598mmの大きさで、ダイコーターにて塗工した(塗工量20g/m)。次に、210℃にて60分間大気中で加熱硬化して、厚さ15μmの硬化シリコーン樹脂層を有する支持体Bを得た。なお、支持体Bの硬化シリコーン樹脂層の表面張力は20.5N/mであった。
【0113】
次に、縦720mm、横600mm、板厚0.3mm、線膨張係数38×10−7/℃のガラス基板(「AN100」。旭硝子株式会社製)の第1主面(後に硬化シリコーン樹脂層と接触させる側の面)を純水洗浄、UV洗浄して清浄化した。
そして、上記支持基板の第1主面上のシリコーン樹脂層の剥離性表面とガラス基板の第1主面とを、室温下、真空重ね合わせ装置にて両基板の重心が重なるように重ね合わせ、そして、加圧チャンバー内で0.49MPa×5分間静置し、ガラス基板積層体B(本発明のガラス基板積層体)を得た。
このような実施例2に係るガラス基板積層体Bにおいて、ガラス基板および支持基板は、硬化シリコーン樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、凸状欠点もなく平滑性も良好であった。
【0114】
ガラス基板積層体Bにおいても上記再剥離性評価、耐熱性評価、密着強度の経時安定性評価を実施した。なお、ガラス基板と硬化シリコーン樹脂層との間で剥離が進行する再剥離性試験の結果より、ガラス基板と硬化シリコーン樹脂層との間の剥離強度は、支持基板と硬化シリコーン樹脂層との間の剥離強度よりも低いことが確認された。
再剥離性:10/10(10組すべてが剥離可能)
耐熱性(熱分解開始温度):440℃
密着強度の経時安定性:初期値=3.9N/25mm、加速後=4.0N/25mm
【0115】
(実施例3)
初めに縦720mm、横600mm、板厚0.6mm、線膨張係数38×10−7/℃のガラス板(「AN100」。旭硝子株式会社製)を支持基板として用意し、純水洗浄、UV洗浄して表面を清浄化した。
次に樹脂層を形成するための樹脂としてオルガノハイドロジェンシロキサンAと、アルケニル基含有シロキサンDとアルケニル基含有シロキサンEの95質量%/5質量%混合物を、全アルケニル基と全ケイ素原子に結合した水素原子とのモル比(水素原子/アルケニル基)が0.9となるように混合し、このシロキサン混合物100質量部に、前記式(8)で示されるアセチレン系不飽和基を有するケイ素化合物1質量部を混合し、白金金属濃度が100ppmとなるように白金系触媒を加えて、溶剤を含まない付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物を得た。
そして、この組成物を支持基板の第1主面上に縦718mm、横598mmの大きさでスクリーン印刷装置にて塗工した(塗工量20g/m)。次に、180℃にて60分間大気中で加熱硬化して、厚さ20μmの硬化シリコーン樹脂層を有する支持体Cを得た。なお、支持体Cの硬化シリコーン樹脂層の表面張力は20.0N/mであった。
【0116】
次に、ガラス基板として縦720mm、横600mm、厚さ0.1mm、線膨張係数38×10−7/℃のガラス基板(「AN100」。旭硝子株式会社製)を用いて、支持基板の第1主面上の硬化シリコーン樹脂層の剥離性表面とガラス基板の第1主面とを、室温下、真空プレスにて両基板の重心が重なるように貼り合わせ、ガラス基板積層体C(本発明のガラス基板積層体)を得た。
このような実施例3に係るガラス基板積層体Cにおいて、ガラス基板および支持基板は、硬化シリコーン樹脂層と気泡を発生することなく密着しており、凸状欠点もなく平滑性も良好であった。
【0117】
ガラス基板積層体Cにおいても上記再剥離性評価、耐熱性評価、密着強度の経時安定性評価を実施した。なお、ガラス基板と硬化シリコーン樹脂層との間で剥離が進行する再剥離性試験の結果より、ガラス基板と硬化シリコーン樹脂層との間の剥離強度は、支持基板と硬化シリコーン樹脂層との間の剥離強度よりも低いことが確認された。
再剥離性:10/10(10組すべてが剥離可能)
耐熱性(熱分解開始温度):440℃
密着強度の経時安定性:初期値=3.6N/25mm、加速後=3.6N/25mm
【0118】
(実施例4)
本例では、実施例3で得たガラス基板積層体Cを用いてLCDを製造する。
2枚のガラス基板積層体Cを準備して、1枚はアレイ形成工程に供してガラス基板の第2主面上にアレイを形成する。残りの1枚は、カラーフィルタ形成工程に供して、ガラス基板の第2主面上にカラーフィルタを形成する。
アレイが形成された積層体C1(本発明の支持体付き表示装置用パネル)と、カラーフィルタが形成された積層体C2(本発明の支持体付き表示装置用パネル)とをそれぞれ支持基板が外側になるようにシール材を介して貼り合わせ、両側に積層体が着いたLCDの空セルを得る。
【0119】
続いて、積層体C1の第2主面を定盤に真空吸着させ、積層体C2のコーナー部のガラス基板と樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ガラス基板の第1主面と樹脂層の剥離性表面との剥離のきっかけを与える。そして、積層体C2の支持基板の第2主面を24個の真空吸着パッドで吸着した上で、積層体C2のコーナー部に近い吸着パッドから順に上昇させる。その結果、定盤上に、積層体C1の支持基板が付いたLCDの空セルのみを残し、樹脂層が固定された支持基板を剥離することができる。
【0120】
次に、第1主面にカラーフィルタが形成されたガラス基板の第2主面を定盤に真空吸着させ、積層体C1のコーナー部のガラス基板と樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ガラス基板の第1主面と樹脂層の剥離性表面との剥離のきっかけを与える。そして、積層体C1の支持基板の第2主面を24個の真空吸着パッドで吸着した上で、積層体C1のコーナー部に近い吸着パッドから順に上昇させる。その結果、定盤上にLCDセルのみを残し、樹脂層が固定された支持基板を剥離することができる。こうして、厚さ0.1mmのガラス基板で構成されるLCDの空セルが得られる。
【0121】
続いて、LCDの空セルを切断し、縦51mm×横38mmの168個のLCDの空セルに分断した後、液晶注入工程および注入口の封止工程を実施してLCDセルを完成する。完成されたLCDセルに偏光板を貼付する工程を実施し、続いてモジュール形成工程を実施してLCDを得る。こうして得られるLCDは、特性上問題は生じない。
【0122】
(実施例5)
本例では、実施例2で得たガラス基板積層体Bを用いてLCDを製造する。
2枚のガラス基板積層体Cを準備して、1枚はアレイ形成工程に供してガラス基板の第2主面にアレイを形成する。残りの1枚は、カラーフィルタ形成工程に供して、ガラス基板の第2主面にカラーフィルタを形成する。
アレイが形成された積層体B1(本発明の支持体付き表示装置用パネル)と、カラーフィルタが形成された積層体B2(本発明の支持体付き表示装置用パネル)とをそれぞれ支持基板が外側になるようにシール材を介して貼り合わせ、両側に積層体が着いたLCDセルを得る。その後実施例4と同様の手順で各々のガラス基板の第1主面と樹脂層の剥離性表面とを剥離する。
こうして、厚さ0.3mmのガラス基板で構成されるLCDの空セルが得られる。
続いて、ケミカルエッチング処理によりそれぞれのガラス基板の厚さを0.15mmとする。ケミカルエッチング処理後のガラス基板の表面には光学的に問題となるようなエッチピットの発生はみられない。
その後、LCDの空セルを切断し、縦51mm×横38mmの168個のLCDの空セルに分断した後、液晶注入工程および注入口の封止工程を実施してLCDセルを形成する。形成されたLCDセルに偏光板を貼付する工程を実施し、続いてモジュール形成工程を実施してLCDを得る。こうして得られるLCDは、特性上問題は生じない。
【0123】
(実施例6)
本例では、実施例3で得たガラス基板積層体Cを用いてOLEDを製造する。
透明電極を形成する工程、補助電極を形成する工程、ホール注入層・ホール輸送層・発光層・電子輸送層等を蒸着する工程、これらを封止する工程に供して、積層体C3(本発明の支持体付き表示装置用パネル)の薄板ガラス基板上に有機EL構造体を形成する。
続いて、封止体側を定盤に真空吸着させたうえで、積層体C3のコーナー部のガラス基板と樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ガラス基板の第1主面と樹脂層の剥離性表面との剥離のきっかけを与える。そして、積層体の支持基板の第2主面を24個の真空吸着パッドで吸着した上で、積層体C3のコーナー部に近い吸着パッドから順に上昇させる。その結果、定盤上に有機EL構造体が形成されたガラス基板のみを残し、樹脂層が固定された支持基板を剥離することができる。
続いて、ガラス基板をレーザーカッタまたはスクライブ−ブレイク法を用いて切断し、縦41mm×横30mmの288個のセルに分断した後、有機EL構造体が形成されたガラス基板と対向基板とを組み立てて、モジュール形成工程を実施してOLEDを作成する。こうして得られるOLEDは、特性上問題は生じない。
【0124】
(比較例1)
オルガノハイドロジェンシロキサンCとアルケニル基含有シロキサンDを、全アルケニル基と全ケイ素原子に結合した水素原子とのモル比(水素原子/アルケニル基)が0.9となるように混合し、さらにそのシロキサン混合物とn−ヘプタンとを1/1の重量比で混合して、シロキサン混合物の溶液を得た。溶液中のシロキサン混合物100質量部に対して、前記式(8)で示されるアセチレン系不飽和基を有するケイ素化合物1質量部を混合し、白金金属濃度が100ppmとなるように白金系触媒を加えて、付加反応型の硬化性シリコーン樹脂組成物の溶液を得た。この溶液を使用した以外は、実施例3と同様の手順で積層体Dを作製した。
【0125】
得られた積層体Dを用いて、上記再剥離性評価、耐熱性評価、密着強度の経時安定性評価を実施した。
再剥離性:10/10(10組すべてが剥離可能)
耐熱性(熱分解開始温度):390℃
密着強度の経時安定性:初期値=3.4N/25mm、加速後=8.8N/25mm(一部樹脂層に破壊が観察された)
【符号の説明】
【0126】
10 支持体付き表示装置用パネル
12 支持基板
14 樹脂層
16 ガラス基板
18 表示装置用パネルの構成部材
20 支持体
30 ガラス基板積層体
40 表示装置用パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と支持基板の片面に設けられた剥離性表面を有する硬化シリコーン樹脂層とを有する、該硬化シリコーン樹脂層表面にガラス基板を積層するための支持体であり、
前記硬化シリコーン樹脂が、下記線状オルガノポリシロキサン(a)と下記線状オルガノポリシロキサン(b)とを含む硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物であり、
前記硬化シリコーン樹脂層が、前記硬化性シリコーン樹脂組成物を前記支持基板表面上で硬化させることにより形成された硬化シリコーン樹脂層であること
を特徴とする支持体。
線状オルガノポリシロキサン(a):アルケニル基を1分子あたり少なくとも2個有する線状オルガノポリシロキサン。
線状オルガノポリシロキサン(b):ケイ素原子に結合した水素原子を1分子あたり少なくとも3個有する線状オルガノポリシロキサンであって、かつ、前記ケイ素原子に結合した水素原子の少なくとも1個が分子末端のケイ素原子に存在している線状オルガノポリシロキサン。
【請求項2】
前記硬化性シリコーン樹脂組成物における全アルケニル基に対する全ケイ素原子に結合した水素原子のモル比(水素原子/アルケニル基)が0.7〜1.05である、請求項1に記載の支持体。
【請求項3】
支持基板の材料が、5%加熱重量減温度が300℃以上の材料からなる請求項1または2に記載の支持体。
【請求項4】
支持基板がガラス板、シリコンウエハ、合成樹脂板または金属板である、請求項1〜3のいずれかに記載の支持体。
【請求項5】
支持基板と支持基板の片面に設けられた剥離性表面を有する硬化シリコーン樹脂層とを有する、該硬化シリコーン樹脂層表面にガラス基板を積層するための支持体、を製造する方法において、
下記線状オルガノポリシロキサン(a)と線状オルガノポリシロキサン(b)を含む硬化性シリコーン樹脂組成物を支持基板の片面に塗布して硬化性シリコーン樹脂組成物の層を形成し、次いで前記硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させて前記硬化シリコーン樹脂層を形成することを特徴とする支持体の製造方法。
線状オルガノポリシロキサン(a):アルケニル基を1分子あたり少なくとも2個有する線状オルガノポリシロキサン。
線状オルガノポリシロキサン(b):ケイ素原子に結合した水素原子を1分子あたり少なくとも3個有する線状オルガノポリシロキサンであって、かつ、前記ケイ素原子に結合した水素原子の少なくとも1個が分子末端のケイ素原子に存在している線状オルガノポリシロキサン。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の支持体の硬化シリコーン樹脂層表面にガラス基板を積層することを特徴とするガラス基板積層体の製造方法。
【請求項7】
ガラス基板の厚さが0.05〜0.4mmである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
支持基板とガラス基板とそれらの間に存在する硬化シリコーン樹脂層とを有するガラス基板積層体であり、
前記硬化シリコーン樹脂層が、下記線状オルガノポリシロキサン(a)と下記線状オルガノポリシロキサン(b)とを含む硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物からなり、前記ガラス基板と硬化シリコーン樹脂層との間の剥離強度が前記支持基板と硬化シリコーン樹脂層との間の剥離強度よりも低いことを特徴とするガラス基板積層体。
線状オルガノポリシロキサン(a):アルケニル基を1分子あたり少なくとも2個有する線状オルガノポリシロキサン。
線状オルガノポリシロキサン(b):ケイ素原子に結合した水素原子を1分子あたり少なくとも3個有する線状オルガノポリシロキサンであって、かつ、前記ケイ素原子に結合した水素原子の少なくとも1個が分子末端のケイ素原子に存在している線状オルガノポリシロキサン。
【請求項9】
前記硬化シリコーン樹脂層が、支持基板表面に接触しかつガラス基板表面には接触していない状態にある前記硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させ、硬化性シリコーン樹脂組成物硬化後に前記ガラス基板表面に接触させて形成された層である、請求項8に記載のガラス基板積層体。
【請求項10】
前記硬化性シリコーン樹脂組成物における全アルケニル基に対する全ケイ素原子に結合した水素原子のモル比(水素原子/アルケニル基)が0.7〜1.05である、請求項8または9に記載のガラス基板積層体。
【請求項11】
支持基板の材料が、5%加熱重量減温度が300℃以上の材料からなる請求項8〜10のいずれかに記載のガラス基板積層体。
【請求項12】
支持基板がガラス板、シリコンウエハ、合成樹脂板または金属板である、請求項8〜11のいずれかに記載のガラス基板積層体。
【請求項13】
ガラス基板の厚さが0.05〜0.4mmである、請求項8〜12のいずれかに記載のガラス基板積層体。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれかに記載のガラス基板積層体のガラス基板表面上に、表示装置用パネルの構成部材の少なくとも一部を形成してなる、表示装置用パネル製造用の支持体付き表示装置用パネル。
【請求項15】
請求項8〜13のいずれかに記載のガラス基板積層体のガラス基板表面上に、表示装置用パネルの構成部材の少なくとも一部を形成し、その後ガラス基板と硬化シリコーン樹脂層付支持基板とを分離することを特徴とするガラス基板を有する表示装置用パネルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−46174(P2011−46174A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198761(P2009−198761)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】